Ddogのプログレッシブな日々@ライブドアブログ

政治経済軍事外交、書評に自然科学・哲学・聖地巡礼・田園都市ライフ、脳の外部記憶媒体としてこのブログを利用しています。2020/11/30以前はGoogle検索でキーワードを入れると常に上位にありましたが、日本のトランプ大統領デモを紹介した記事が米国でバズって以降検索アルゴリズムから排除され検索ヒットされにくい状態です。是非ブックマークをお願いします。このブログをご訪問していただいた方の知識や感性として共有できれば幸せに思います。

『情報力』佐藤優、鈴木琢磨を読む-1 日本とアジアを考える⑦

『情報力』情報戦を勝ちぬく“知の技法”佐藤優、鈴木琢磨 (イースト・プレス・1680円)

http://www.yukan-fuji.com/archives/2008/06/post_14447.html
鈴木琢磨氏(毎日新聞編集委員)は“北朝鮮ウォッチャー”のなかでも、資料を丹念に読んだり、現場での取材に重点を置いたりと、いわゆる「社会部的な手法」で、多くの“特ダネ”をモノにしている。なかでも、金正日の最愛の人といわれた在日朝鮮人出身の故・高英姫夫人の生い立ちや、プロレスラーだった父親の人生を追いかけたリポートは出色だった。
 本書は、鈴木氏とインテリジェンス(諜報)の分野では“超売れっ子”となった佐藤優氏との北朝鮮問題をテーマにした対談集である。この中で鈴木氏は、北朝鮮の後継者問題について、「2010年8月25日」を“後継者デビューの日”だと予測し、その後継者はすでに金正日に代わって、「舞台裏を動かしている」と言う。その後継者は誰なのか? それを読み解くカギは? インテリジェンスの最前線がスリリングに明かされる1冊。

最近最も知的好奇心をそそられるのが、佐藤優氏である。今日こうやって佐藤氏の著作を楽しんでいる私であるが、はたしてこのことは喜ぶべきか、悲しむべきか少々複雑な心境です。できれば、現役の外交官として、辣腕を揮っていてほしかったと思うのですが、佐藤氏の活躍には実は裏が有りそうな気にもなっています。だいたい、自由に日本のインテリジェンスの内幕を書いているが、彼がインテリジェンスの人間であるがゆえに、果たして何処までが真実なのか?逆に疑りたくもなる。なぜなら彼が現場へ復帰した場合、問題になりそうな情報も混じっている箇所も見受けられる。佐藤氏は現場復帰しないと腹をくくっているのか?それとも佐藤氏を在野に置き、逆に日本の当局が高度なインテリジェンス活動をさせているのか?真相は如何に?と思ってしまいます。10年か20年もすれば実は当時佐藤氏の活動は・・・といった真相が出てきそうな気もします。

本書でありますが、北朝鮮関連では、手島龍―氏との共著『インテリジェンス -武器なき戦争』
http://www.ryuichiteshima.com/books/intelligence/intelligence.htm
高永哲氏との共著『国家情報戦略』
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2724456
この2冊はすでに読みましたが、本書にも出てきますが、陸軍中野学校のことが取り上げてあります。
よく金正日が「チョンマルナカノヤ!(本当に中野だ!)」と射撃訓練で命中した場合賛辞を送るのだそうです。この中野は陸軍中野学校のナカノを意味するそうです。
北朝鮮に限らず、国民党やインドネシア、ビルマ、マレーシアなど、日本の陸軍中野学校のインテリジェンスの影響力の痕跡を見ることができる。
■金正目が着目した陸軍中野学校の「インテリジェンス遺産」 P177~179
佐藤:あるテレビ局で北朝鮮の報道担当努めていた方から聞いたのですが、北朝鮮は、どうも戦時の陸軍中野学校「東京.中野区」の教材を使いながら情勢分析しているというのです。
鈴木:旧陸軍の諜報、防諜、宣伝など、秘密戦の教育や訓練を目的とした学校ですね。戦
後はその跡地に警察大学校が建っていました。
佐藤:日本が戦時に持っていた過去のインテリジェンスの遺産から・いい部分をピツクアツプして北朝鮮が使っている。ですから、いま北朝鮮が進めている工作活動は・陸軍中野学校が当時考えたものと似ているのです。
鈴木:かつて金正日の料理人努めていた藤本健二氏によると・射撃訓練で弾丸が的に命中したときに、金正日が「チヨンマルナカノヤ!(本当に中野だ!)と称えていたそうです。彼は「すばらしい!」という意味として「ナカノ」の名前を何度も繰り返し使ったという。これはじつにすごい言葉だと思います。我々日本人が封印してきたインテリジェンス遺産を、金正日が完全に消化して使いこなしている証左です。金正日は陸軍中野学校に関する資料を徹底的に集め、中野学校を取り上げた日本映画もすいぶん観たそうです。
佐藤:戦後、朝鮮半島は日本の植民地支配から解放されました。陸軍中野学校の優秀な人材は、戦争が終わったからといって、ただちに任務を終えたわけではなかった。彼らのうち一部は、現地にとどまって工作活動を続けたと推定されます。そのへんは『アメリカの日本改造計画』(イースト・プレス、2006年)での関岡英之さんとの対談でくわしく話しました。
鈴木:日本に戻らす北朝鮮にとどまり続けた陸軍中野学校のメンバーと金日成が、いったいどのように交錯したのか。ここは歴史の空白であり、おもしろい話です。金日成は優秀な日本人を帰国させることなく、人材として利用しました。人材を養成しなければ、新しい国家は運営していけません。金日成は国家運営のハードの部分だけではなく「インテリジェンス」にいち早く目をつけ、陸軍中野学校のメンバーを北朝鮮に残したのではなかったか?そしてまた、中野学校の人たちも、北朝鮮に残ることが自分の使命だと感じていたのではないでしょうか。中野学校の人たちがどんな活動をしていたかということは、いまもわかってはいません。「チョンマルナカノヤ!」の話を聞いて、私はハッとしました。
中野学校の遺産は時空を超えて北朝鮮に生き続けているのです。

■敗戦後を見据えた、驚くべき工作ネットワーク
佐藤陸軍中野学校に関して、そのほとんど全容が著されている本があります。中野学校のOBが出版した限定版の『陸軍中野学校』・(中野校友会編、原書房・非売晶・1978年)です。千ページ近いこの本には、一冊ずつナンバーが付されていて、一般には売られていません。ただし、国立国会図書館、東京千代田区永田町には所蔵されていますから、手に取って読むことはできます。
鈴木中野校友会の『陸軍中野学校・は時折、古本屋で高値で売られていますね。平壌にも
あるはすです。
佐藤:陸軍中野学校にはかなりのことが書かれているのですが、私が気づいた中で、中野学校が深く関与したにもかかわらず、書かれていないことが二つあります。ひとつ目は、中野学校の国内工作についてです。吉田茂(元首相1878~1967)は戦時、近衛文麿(元首相1891~1945)と結託して終戦和平工作を図りました。この動きがスパイに察知され、吉田は昭和二十年二月に憲兵隊に拘束されています。しかし、『陸軍中野学校』には、この吉田拘束事件に関係したことが書かれていないのです。中野学校をはじめ、戦前の特務機関のレベルはそんなに低くありません。当時、日本の中でイギリスと通じた大規模なスパイ事件があったことは事実だと思う。「英米と日本が単独講和し、ソ連が太平洋戦争に参戦する前に戦争を終結させよう」と考える勢力が日本国内にあったことは当然でしょう。
鈴木陸軍中野学校が吉田茂にからんでなんらかの工作活動をやっているにせよ、戦後に影響があることを考慮してか、『陸軍中野学校』には何も書かれていない、というわけですね。

佐藤:『陸軍中野学校』にもうひとつ書かれていないことは、戦後の中野学校の活動につい
てです。昭和17年の段階で、中野学校は「このままいくと日本は完全に負ける」と見ていた。日本は昭和21~22年には完全に占領され、占領軍による傀儡の日本政府ができるだろうと彼らは考えていたのです。そこで、中野学校の人たちは、アメリカの植民地統治、たとえばフィリピンにおける植民地政策の研究をしています。戦後にできるであろう傀儡日本政府に、どうやって中野学校から諜報要員を送り込むか。日本の国家体制がおかしくなったときに、どうやって傀儡政権をゲリラ戦でつぶすか。そんなことを昭和17年あたりの段階で彼らは考えていたのです。中野学校の人たちは、日本が植民地支配していたありとあらゆる場所に「残地諜者」を置きました。
鈴木:つまり、中野学校の"海外支部"を各地に準備したのですね。
佐藤そうです。残地諜者のネツーワークを使い、日本の国家体制が崩されたときには横のネツトワークを使って立て直そう、という戦略を立てていたわけでて朝鮮半島に関しても、なんらかの工作計画宰野学校が持っていたと考えるほうが白然と思います。

鈴木:先ほどの話に戻れば、「チヨンマルナカノヤ!」に象徴されるように・金正日がいま
でも陸軍中野学箸意識しているのは間違いない。中野学校は北朝鮮の工作活動の原点になっているはすです。
佐藤:話露軍中野学校だけに限定する必要はありません。戦後、北朝鮮に残った旧陸軍の情報将校や下士官で、現地の奥さんと結婚して完全に北朝鮮に居ついてしまった人がいると考えるほうが自然です。心はつねに日本、東京を向いている。同時に北朝鮮に対しても、ある種のインテリジェンス技法を教授する。そういった旧陸軍情報専門家から得た技法が北朝鮮の工作員にも生かされていると考えても、論理の飛躍はないと思います。北朝鮮は気球を使った宣伝ビラ作戦を非常によく使いますが、これも中野学校の手法をまねてしる偽札作戦にしても、中野学校が登戸研究所とタイアップしてかつて本格的にやっていた手法です。蒋介石(1887~1975)政権の偽札を登戸研究所が刷り、その偽札を使って中野学校出身者が軍需物資を調達するとともに、中国でインフレを起こすという作戦です。北朝鮮が進めている一連の工作の原型は、陸軍参謀本部第二部(情報担当)の先例中にあると私は見ています。
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「海洋国家」日本の戦後史 を読む シリーズ日本とアジアを考える⑥

「海洋国家」日本の戦後史 
宮城大蔵著(評:山岡淳一郎)
ちくま新書、720円(税別)【日経ビジネスオンライン】(評)山岡 淳一郎
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080717/165649/?P=1
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080717/165649/?P=2
タイトルを見て、思わず手に取った。と、いうのも、海運や造船をモチーフにした歴史ノンフィクションの執筆にとりかかっており、これは見逃せない、と職業的直感が働いたのだ。ところが……表紙扉を開いて、やや肩透かしを食らった。
 「アジア」と日本の外交史が書かれており、期待していた海運に関する記述はほとんどない。「海洋国家」日本というタイトルは、象徴的な意味でつけられたようだ。ふつうならゴメンナサイ、早とちりでした、と閉じてしまうのだが、章立てを眺めていて、興味がわいてきた。
 1.「アジア」の誕生―バンドン会議と日本のジレンマ/2.日本の「南進」とその波紋―独立と冷戦の間で/3.脱植民地化をめぐる攻防―日英の確執、中国との綱引き/4.戦後アジアの転換点―1965年/5.アジア冷戦の溶解―米中接近と「中国問題」の浮上……と戦後の復興期から70年代後半までの「アジア」と日本の政治関係の変容が描かれている。
 読みだすと、これが面白い。蕎麦屋に入ったら、焼肉が出てきたのだけれど、食べてみたらすこぶる美味い。しっかり平らげ、満足。そんな新書である。
 とくに東南アジアの大国インドネシアと日本の政治家とのかかわりが整理されて描かれている点が、新鮮だ。
 これまでにも、首相だった岸信介が戦後処理で、スカルノ大統領と総額8億ドルの賠償をまとめた1957年頃から、自民党とインドネシア要人の間に政治資金の還流ルートができていたらしいことは、資料で読んでいた。
 背景に、日本の工業力とインドネシアの石油やボーキサイト、ゴムなどの資源を結びつけ、日本を「アジアの工場」にして経済力を高めさせる一方でアジアの物資不足を解消させ、社会不安を取り除いて、共産主義の浸透を防ごうとする米国の思惑があったことも、知られている。
 あるいはスカルノ大統領の第三夫人だったデヴィ夫人(日本名:根本七保子)が、日本とインドネシアの経済交流に積極的役割を担った話も聞きかじっていた。65年9月のクーデターでスカルノを追い落としたスハルトは、共産党の関係者とみられる人びとを数十万人も虐殺したといわれる。デヴィ夫人は、夫の失脚後、フランスに亡命した。そのタレント姿からは想像もできない現代史の凄絶な修羅場をデヴィさんはくぐっている。
 しかし、どれも断片的な知識で、わたしにとってインドネシアはどこか遠い存在だった。本書は、そのバラバラの点と点を結んでくれた。
 太平洋戦争で近隣諸国に多大な犠牲を強いた日本は、サンフランシスコ講和条約の発効で米国を中心とする連合国の占領を解かれ、国際舞台に復帰した。しかし、足もとのアジアにはスムーズにとけ込めない。サンフランシスコ講和会議に中国、朝鮮は招待されず、インドやビルマは出席を拒否。インドネシアは講和条約に調印したものの、賠償条件に不満で、議会が条約を批准しなかった。

□	アジアの海を漂流する日本、バンドン会議に碇を降ろす

日本はアジアで浮いていた。
 そんな日本が「脱植民地化」で次々と主権国家が誕生するアジアに再デビューしたのは1955年の「アジア・アフリカ会議」。インドネシアの開催地の名をとって「バンドン会議」とも呼ばれる。会議では、「平和共存」を志向するインド、中国、インドネシアと、これを「平和攻勢」ととるパキスタン、トルコ、フィリピンなど自由主義陣営が激しく衝突した。冷戦構造を反映して、平和宣言案はまとまらない。
 そこで国連憲章を尊重し、経済問題を強調した日本の玉虫色の平和宣言案が見直される。中国代表の周恩来が日本案に賛同したのを機に流れが変わり、「バンドン宣言」が発表された。著者は記す。
〈「反共最大の大物」として共産主義を相手に立ち回るのではなく、経済によって日本とアジアを広く繋げること、それがバンドン会議に際して日本が選ぶことになった方針であった〉
 吉田茂は「賠償は一種の投資である」と発言したが、実務レベルでも賠償支払いが現金ではなく、生産物や役務の提供で行われた。日本企業が商品を輸出し、相手国の建設プロジェクトを請け負う形が定着する。インドネシアと日本の賠償交渉では、トップ会談に先立って、財界から送り込まれた特使がスカルノにこう述べたという。
〈日本には古来兄弟の契りを誓い合う際、共に血をすすりあって行う習慣がある〉〈岸総理とスカルノ大統領が共に血をすすりあって日「イ」両国が兄弟の交わりをすることが出来るようご援助を得たい〉(外務省外交記録)
 自民党とインドネシア要人との政治資金のパイプは、こうしたドロドロとしたアジア的情念(?)でつくられた、ともいえようか。
 岸―スカルノ交渉の過程で、表題「海洋国家」日本の発想のもとになったと思われる出来事が起きている。インドネシア政府は、旧宗主国オランダの資本を接収すると、たちまち経済運営に行きづまった。インドネシアは1万7千以上もの島々からなる群島国家だ。接収を察知して、オランダ資本の船が逃避したために海運が途絶したのである。
物流が滞り、物価は高騰。インドネシアは、日本に賠償による船舶調達を要請する。最終的に51隻の船舶、賠償金額の四分の一が海運関係に支出された。名実ともに「海」でアジアと日本は繋がった。その分、賠償疑獄も船舶関係で多数生じている。
 親米派のスハルトもまた日本との関係を重視した。佐藤政権末期、沖縄返還が目前に迫る72年5月9日、スハルトは不可解な訪日をしている。おりしもポスト佐藤の座をかけて福田赳夫(福田康夫首相の父)と田中角栄(田中真紀子衆議院議員の父)が壮絶なバトルをくり広げていた、という。著者は、こう断定する。
〈スハルトの狙いは、(中略)福田赳夫が来る自民党総裁選で勝利することであった〉
 福田はスハルト体制を支持する日本側の中心人物だったのである。豪外交文書にも〈石油取引に関するコミッションが福田派に流れることになった……〉とある。
 ところが、総裁選では、「コンピーターつきブルドーザー」田中角栄が勝った。田中政権は、従来の非公式ルートではなく公式チャンネルで石油開発の借款を行う、とスハルト側に通告。間接的に福田派の糧道を絶とうとした。74年1月、インドネシアを訪れた田中は、ジャカルタで反日暴動の嵐に巻き込まれる。宿舎は暴徒に囲まれ、田中はヘリコプターで脱出した。
 それから3年後、首相に就任した福田が東南アジアを歴訪する。「心と心のふれ合う相互信頼関係」で、日本がASEANとインドシナ諸国の橋渡しをすると示した「福田ドクトリン」は、熱烈な歓迎を受けた。心と心のふれ合いに、再び非公式な資金パイプが通ったのだろうか……。

□ 田中角栄とのリンクが見えてきた

じつは、田中角栄の評伝をわたしは「草思社」(民事再生の途上)のウェッブ・マガジンに連載しているのだが、ずっとインドネシアでの反日暴動の背景が気になっていた。あれは、石油利権に絡んだものであり、田中の行動を米国の石油メジャーが牽制した結果だろう、とみていた。日本とアジアの関係も、しょせん米国の手のひらで泳がされているなかで培われたのだ、とさめた見方をしていた。恥ずかしながら、スハルトの動きはノーマークだった。こうしてスハルト―福田のラインを整理して示されると、なるほどと合点がいった。
 つまり、米国の強い影響下にある日本もインドネシアも、その権力闘争の内部では、むしろ米国のパワーを利用する勢力が根を張ってきたのだ。ここのカラクリが大衆からは見えにくい。
 現在、世界的な経済格差が広がる一方で、イスラム教徒は増えている。そのひとつの軸が人口2億4千万人(世界第4位)のインドネシアだ。イスラム教徒は人口の76パーセント以上を占める。資源を介した日本とのつながりは、いまもなお深い。賠償から経済援助、石油利権による非公式な政治資金パイプという先人のまいた種は、今後、吉と出るか、凶と出るか……。
 それを占うためにも、いま一度、田中角栄の歩みをたどりなおそうと考えている。草思社も、先月、東京地裁で民事再生の認可が決定した。もう少しで再出発だ。本書が与えてくれた視点を、田中角栄伝にも生かしたい。良書とは、楽しみながら、発想や思考モデルのバトンタッチができる本だとわたしは思う。
(文/山岡淳一郎、企画・編集/須藤輝&連結社)
上記書評は日経ビジネスオンライン山岡氏の書評だが、私も同感であった。蕎麦屋に入って焼肉ではないが、川勝平太の「海洋国家論」の亜流か、地政学的本を期待して読んだら、インドネシアを軸とした、日本とASEAN諸国、印度パ、キスタン、中国、英国、アメリカの複雑に絡まった、戦後史のテキストとして、秀逸な内容であった。
日本の戦後東南アジア外交のテキストとして期待を超えた内容であった。私は、「回転寿司へ行ったら、ちゃんとした割烹料理が出てきた」といった印象だったとしよう。

バンドン会議の各国の思惑が面白い。バンドン会議=AA会議アジアアフリカ会議
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BC%9A%E8%AD%B0

教科書では、『1955年、インドネシアのバンドンで開かれた会議、日本を含むアジアアフリカ29カ国が集まる。反帝国主義、反植民主義、民族自決の精神。 冷戦における、西側陣営でも東側陣営に属さない第三世界の存在を確立。 アメリカ、ソ連の対立を緩和する立場、会議において「世界平和と協力の推進に関する宣言」を採択した。 』といったことしか書いていない。私の知識もその程度だ。

最も熱意をもって、バンドン会議を推進したインドネシアであったが、中国共産党の取り扱いが意見の割れるところだった。印度とパキスタンは100万人の犠牲者を出した第一次印パ戦争後で対立し、現在とは違い印度が中国共産党の出席を強く推し、パキスタンが阻止しようとした。印度のネルー首相は中共に好意的で、中共の勝利は農民革命の勝利であると錯誤していた。印度は中共とチベットパミール高原で、国境紛争を起こしている。ネルーは、中共がアメリカに封じ込められている為過激なイデオルギーに走った結果、国境紛争を起こすと考えた。(甘い)「平和共存」を高らかに宣言し「友好による封じ込め」を画策した。カシミールの帰属をめぐり対立中の印パ両国は激しく対立していた。パキスタンは中印が手を結びアジアの主導権をとることを嫌い、日本招致を強く主張し、日本が参加することとなった。

日本は日本で、親米英の吉田内閣を倒した鳩山一郎は、「対米自主」(中ソとの国交回復重視)路線であったが、重光外相(大東亜共栄圏大東亜共栄会議開催時の外相でもある)は反共の立場で、親米英路線であった。なんという歴史のめぐり合わせなのだろう。

日本と中共との戦後ファーストコンタクトはこの会議である。
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『アジア三国志』を読む-2 シリーズ日本とアジアを考える④より続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/14249428.html

『アジア三国志』を読む-3 シリーズ日本とアジアを考える⑤

第5章 インド―数が多く、ごたまぜで、勢いに乗っている P176から177
アウトソーシングは、インドにとって重要なビジネスだが、これまでのところは、ほとんどが他の地域とは隔絶した飛び地だけで繁栄していた。インドの場合、こうした企業の棲息するフラット化した世界とは、険しい山やジャングルに囲まれた高原がいくつもあって、それぞれが連絡を緊密にしている、という程度のものでしかない。あるいは、新首相が独立記念日にいった「高度成長の離れ小島」の群れという一言葉がふさわしいだろうか。この小島もしくは高原で、アウトソーシングやIT部門に従事するインド人は、およそ130万人いる。これは、人口の0.1%、労働人口の0.2%で、インドのGDPの5%を稼ぎ出している。マッキンゼーとNPOの業界団体インド・ソフトウェア協会(NASSCOM)の共同研究は、2010年にはアウトソーシングとIT産業がGDPの7%を稼ぎ、600億ドルの輸出を創出するだろうと予測している(2006年のインドの製品とサービスの輸出は合計1970億ドル)。この産業に従事するインド人220万人が、600万人の雇用を間接的に生み出していると考えられている。CLSA証券のように、2200万人という数字を出している好意的な分析もある。しかし、インドの労働人口は4億5000万人にのぼる。4億4270万人、もしくは4億3570万人が、アウトソーシングの恩恵をこうむっていないことになる。インドでは、世界はフラットになどなっていない。
世界が多少ともフラットになったと人口のほとんどが感じるには、別の分野で職を得る機会を増やす必要がある。製造、土木建設、鉱業、食品加工に加え、輸送、配達、小売のようなローテクのサービスが、それにあたる。うれしいことに、すでにそういったことがはじまっている。インドは所得が低いから、手作業がいっぱい必要なことをやるには、世界一安上がりな場所であるはずだ。いい換えれば、労働集約型の製造で、中国と競争する力がある。
「なるほど・・・フラット化した恩恵を被っている印度は外ズラのイメージにすぎない。印度がフラット化したのは、世界と接している入り口だけか・・・。」
印度は、中国が通った開発工程表のプロセスをなぞって行くことになるであろう。中国の得意とする労働集約型の企業は印度へ移っていくことであろう。また、その余地も大きい。印度の更なる勃興が中国の衰退原因となる可能性を含まれているのではないかと、私はこの章を読み思った。

第6章 環境問題―中国・インドの成長の壁
環境問題の隠された目的の一つが、中国印度などの新興国の先進国による押さえ込みであるが、建前上語られることは無いが、もはや公然の目的となっている。
これに対し、印度中国は、京都議定書に抵抗してきたが、両国共に、自国の生活環境が壊滅的に悪化してしまった。もはや開発優先で、地球環境を無視することは許されないことを自覚するようになってきた。
2007年4月の中国の温家宝首相は党指導部向け演説でもっと迅速に構造改革を行なって経済成長の効率的手段を講じないと、中国の天然資源と環境は経済発展を支えられなくなるだろう…中国は汚染の排出を減らす責任を負わなければならないと述べた。
2007年8月の独立記念日に、シン首相も同様の発言をした。現代化の荒波と震競争のさなかで、われわれは資源の節約という大事なことを忘れてはならない---白然はみんなの必要を満たすだけのものをあたえてくれるが、貧欲は満たしてくれない、というガンジジーの言葉を肝に銘じようではないか…世界中の人々が、地球温暖化に大きな懸念を抱くようになっている。われわれも心配しなければならない。燃料やエネルギーの消費を、もっと経済的にする必要があるそれが人類と後世に対するわれわれの義務だ
2007年、ブッシュ大統領までもが、ポスト京都議定書の交渉で役割を担う用意があると宣言した。
P235~236
インドは中国よりもはるかに貧しく、インド企業はいまのところ日本企業の直接の競合相手とは見なされていない。また、インドは、日本政府がずっと中国と白国の努力のちがいを示すために喧伝している「自由と繁栄の弧」の一部である。中国の台頭に拮抗させるためにインドを強くする手段が、そこでまたひとつ増えることも、日本にとっては魅力的だろう。
共産党の一党独裁を維持し、外圧で国内を改革するという、ごく自然な衝動ゆえに、中国はポスト京都議定書の取り決めに真剣に取り組むはずだ。インドをそこに加えるには、日本が音頭をとって財政面での補償や安価なテクノロジー支援を提供する必要がある。

第8章 発火点と危険地帯
①パキスタン:印度中国が緊張すると、イスラム過激派の巣窟となっているパキスタンは中国との同盟を強化し、発火点となりうる危険な存在となってきた。

②チベット問題:次のダライラマを決める場合必ず騒乱となり、チベットを印度をはじめ国際社会がどう処理するか?

③東シナ海、尖閣諸島問題:海洋資源の共同開発の方向性が見えてきている。

④台湾問題:エモット氏は米国が台湾を見捨てる可能性は非常に少ないとしている、(私もそう思う)台湾が独立宣言をしたり、中国が、米国は台湾を見捨てたと見誤らないことを祈るだけだ。

⑤朝鮮半島:極めて起こりうるだけでなく、極めて危険が高い。金正日の後継争いは混乱が発生しその場合、中国が北朝鮮に侵攻する可能性が極めて高い。
遠からず、アジアを戦場とした新たな愚行が行われることであろう。

第9章 アジアのドラマ

ビルエモット氏の九つの進言
①米印の親善の強化。アジアのバランスオブパワーに役立てる為に、米国が印度を更に後押しする。核の拡散防止にも役立つ。

②米国主導で、印度中国を温暖化防止のテーブルに引きずり込み、当初は先進国が資金を出すにしても、両国が成長すればした分相応の負担が増える仕組みを構築すること。

③国際社会の舵取りに日印中の3国を組み入れる。G8を拡大するか、国連の常任理事国に日本インドを加えるべきである。私(Ddog)はG8をG7の枠で残し、国連に印度、日本、ブラジル、ドイツを加える案を支持したい。

④国際企業の幹部は、日中印の過去の10年間を見るのではなく、今後10年間どう変化するかを考えなければならない。日本市場を過去の市場軽視する国際ビジネスマンは多いが、これは間違っている。日本のGDPは依然世界第2位で、老齢化社会を向かえ、生産性の向上に血眼になっており、改革は着実に進んでいる。日本の企業資金が潤沢になればM&Aが盛んになる。

⑤日本は歴史問題のを完全な過去の問題とする努力をするべきとしている。
歴史問題のエモット氏の不見識はすでに述べたが、パール判事の意見書を銘記することには賛成だ。*旧日本軍の残虐行為と、戦争を国家政策の道具として使った告発についての分離することは十分可能であろう。
*731部隊に対しては再度蛮行を非難する声明を首相が発表することまでは受け入れられるが、南京事件は再度謝罪する必要が無い。
*靖国神社を政教分離の例外として、国営化するエモット氏の意見には考慮するものがある。代替国立慰霊施設が問題の根本解決とならないことをエモット氏も見抜いている。
*エモット氏も実行が難しいとしているが、ホワイトハウス主導で、日米欧の政治歴史法学者からなる特別委員会を設置し、東京裁判を再吟味する。世界にとって大変な毒薬で、結果次第で大変な騒乱となりうるし、中国、韓国の影響を排除することも難しいだろう。実現不可能だがいいアイデアである。

⑥中国共産党の一党独裁の体制を変えることは不可能にしても、中国の国益と米国、日本印度との協調関係の利益の為、透明性を高める努力をすること。

⑦印度周辺諸国との緊張緩和、貿易の自由化を進め、隣国の関係改善の権限を隣接各州に請け負わせる。国としての外交が失敗続きであるので、これは名案かもしれない。

⑧エモット氏は東アジアサミット国で定期的な討議を提言している。日印中が定期的な話し合いを持つ東アジアの枠組みASEAN+3+3での話し合いが望ましいが、地域統合を目指すとはエモット氏は考えていないようだ。

⑨米国が80年代の日本たたきと同じことを中国にしないことが望まれ、また日印中以外の小国へもバランスオブパワーの見地からも対話を欠かさないこと。

最後に結論として2020年のアジアが「まことしやかな悲観主義」と「見込みが高い楽観主義」とに分かれているとの結論だ。

私の要約では本書1/10もフォローしてはいない。中身が濃い本であった。詳細は、本書を是非、買って読むことをお勧めします。
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③日本とアジアを考える■『アジア三国志』を読むー1 より続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/14212296.html

④日本とアジアを考える■『アジア三国志』を読むー2

『アジア三国志』を読むー1ではだいぶ、本書の歴史認識の悪口になってしまった。ビルエモット氏の「日はまた沈む」、「日はまた昇る」に、近著「日本の選択」(ピータータスカ氏との共著)は示唆に富む内容で、私はエモット氏に敬服している。本書も、アジア各国を上から目線ではあるが、中印関係の視点のほか、各国を診るエモット氏の視点は、私(Ddog)に限らず、プロの日本人エコノミストやジャーナリストに欠けている視点をエモット氏は彼の鋭い視点で分析している。経済・国際関係に関心がある自称インテリと思う者は読むべき一冊である。

第1章 アジアの新パワー・ゲームP28~29
米欧諸国が一九世紀や二〇世紀のように我が物顔にふるまうのは無理だということは、すでにわかっている。いまでは、パワーがもっと均等に世界各地に分散してしまった。それに、将来の世界や地域の出来事を形作る主役は、もはや米欧諸国のみではない。中国やインドなどの国も、影響を及ぼすだろう。
(略)
唯一の超大国となったことを、アメリカのネオコン評論家チャールズ・クローサマーは二極の時代と評した。
その時代は、すでに終わっていないとしても、イラク戦争後のアメリカの弱さだけではなく、もっと基本的かつ永続的な原因によって、やがて終わりを迎えるだろう。
(略)
台頭するアジアの強さと、その強さが増すにつれて、アジアの勃興するパワーが国際問題での発言力を強めていることにある。
未来を予測する人々は、アジアの経済力は今後も上昇するといっている。とはいえ、そうした予測は、合っているかまちがっているかはべつとして、もっとも重要な点を見落としている。明白な結果、予想される結末に焦点を絞り、なおかつ遠い将来に目を向けているため、こういった予測は実用には耐えない。もっと差し迫った重要な点は、経済成長はプロセスであってゴールではないということだ。
予測される結果を達成するためには、社会、政治、教育、経済、軍事や外交の面まで含めて、国が劇的に変わる必要がある。
七年か八年ごとに経済規模が倍になるというぺースの成長は、国がまっすぐに針路を保ってアクセルを踏みつづけるというプロセスでは成り立たない。それには、国がたえず抜本的な改革を維持するようなプロセスを必要とする。ビジネスの世界では、「破壊的テクノロジー」についての論議が活発になっている。これからのアジアには、破壊的改革が満ちあふれるだろう。すでに世界は混乱に陥れられ、アメリカ中西部やイタリア南部の農工業後進地帯の雇用に不安が生じている。だが、アジアそのものと、アジア地域のすべての国と、国同士の関係にも混乱が起きるだろう。アジア内部の混乱というプロセスが、世界を揺るがすもっとも大きな要因になるかもしれない。

第2章 アジア創造
この50年のアジアの発展を顧みた場合1930年代日本のエコノミスト赤松要の「雁行形態論」の慧眼を評価している。日本が先頭の「雁」となって産業を発展させ、日本が向上すると、低付加価値・低技術の産業が他の国々に移る、大東亜共栄圏の経済思想でもある。エモット氏は評価しながらも、日本がアジアのパイオニアとして、西欧列強に立ち向かったその努力をさも当たり前のように書き流し、他のアジア諸国がどれだけ恩恵を受けたかについて、もう少し評価すべきと私は不満に思った。
2005年の東アジアサミット、ASEAN+3(日中韓)+3(豪NZ印)を将来の地域共同体と見なすには時期尚早で問題があると評していることには私も異存がない。

第3章 中国―世界の中心の国、問題の中心
エモット氏P62~111と多くのページを割いているが、私(Ddogは最近中国関連の書籍はここ半年で数えていないが20冊以上は読んでいる。)も読んだ、スーザンLシャーク「中国」危うい超大国、ジェームズマン「危険な幻想」や、もはや古典となりつつあるゴードンチャンの「やがて中国の崩壊が始まる」などの引用を元に中国の問題点を洗っている。エモット氏の結論の一つとして取り上げたいのが、中国ではやがて中国共産党が瓦解して民主政治へ移行していく楽天的予想には問題が多いことを指摘している。中国が民主的政権に平和裏に移行しないことは同意できる。しかしエモット氏は、ジェームズマン「危険な幻想」やコロンビア大のネイサン教授が支持する、中国共産党非脆弱説をとる。その根拠として、日本における自民党政権が1955年から数ヶ月を除きずっと日本を支配し続けていることが、共産党には参考になるという。『中国共産党の一党独裁が続かないほうに賭けるのは愚かといえる。』(P110)とのことだが、福田改造内閣の命脈はいつまで続くか心もとない。諸行無常を理解する日本人には、エモット氏の判断は間違っているように見える。中国は易姓革命の歴史を持つ国である認識に欠けてもいる。


<蛇足>
読書人として怒りを感じる副島隆彦:「中国 赤い資本主義は平和な帝国を目指す」も図書館から借り、目を通した。期待通り、直近読んだ中国関連図書で最低のデキで読むに耐えなかった。あまりの酷さに笑ってしまった。大学生の卒論でももう少しマシなものを書くであろうと思えるほど酷い内容だった。まだ、素人の私のブログの方がましのようだ。さらに立ち読みだが「時代を見通す力」は更に酷い。読書人ならあの程度の内容で、「時代を見通す力」などと書かれては片腹痛し!金を出して読む本ではない!天下のPHP出版ともあろうものが、出版図書の質をチェックすべきだ!松下幸之助が泣いているぞ!

第4章 日本―パワフル、脆弱、老齢化
さすがエモット氏、実によく研究されている。内閣改造で脱小泉改革へ動き出した福田内閣だが、外人の評価が気になるところだ。エモット氏の視点はするどい。小泉構造改革の虚構性と、虚構性の裏で密かに進行する見えない改革について言及している。外人に評価が高い、小泉構造改革だが、エモット氏は、小泉構造改革路線なるものは、元々あった流れを加速する役目を果たしたが、小泉改革は創造的なものは無く、小泉自身単なる役者にすぎない。しかも、例えばマーガレットサッチャー元英国首相と比し、田舎芝居の三文役者程度にしか、小泉氏をエモット氏は評価していない。

そのかわり、1990年代を通して徐々に目に付きにくい形で政治を改革する法律が通り、経済改革も進んでいることをウォッチしている。電気通信、輸送、エネルギー、金融サービス、食料、酒、小売など、規制緩和となり競走にさらされるようになった。大手銀行が15行から3社、石油会社が14社から4社、大手セメント会社が7社が3社・・・と企業再編も進んでいる。エモット氏は日本では「見えない革命」が起きていると評価している。企業関連の法律、政策、労働市場、資本市場、金融システム、国の役割などで、見えない革命の効果は10年ほどの間に明らかになるとしている。

中国の政治家がなにを望もうが、中国の世論は日本を敵視し、ナショナリストになっている。中国の台頭と北朝鮮の脅威を前に、日本の政治がいっそうナショナリストの傾向を強めているとエモット氏は指摘。
より強固な防衛態勢、北朝鮮に対する強い態度、中国との交渉で揺るぎない姿勢を保つことでは、超党派のコンセンサスができあがっている。自衛隊を統括する防衛庁が、2007年に防衛省に昇格し、政策を提案できるようになった。このコンセンサスは、憲法を改正して・平和条項の制約を取り払うところまでは進んでいないが、短命だった安倍政権ですら、そうすべきだと提案している。2007年9月に安倍首相が辞任したことで、憲法改正の見込みは低くなった。だが、いずれ実施されるだろう。しかし、アジア太平洋地域のあらたな力強い友好関係に、日本が戦略的に重要であるというコンセンサスは、すでにできあがっている。2007年12月、日本はオーストラリアとの「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に調印した。正式な同盟条約ではないものの、1951年の日米安全保障条約以来、日本がこのたぐいの合意を結ぶのは、はじめてのことだった。日豪共同宣言には、惰報共有や合同軍事演習といった項目も盛り込まれている。当時のオーストラリア首相ジョン・ハワードは、日本との軍事的結びつきは、「アメリカを除けば地域のどの国よりも緊密なものになるだろう」と述べている。だが、日本が狙うもっと大きな獲物は、アジアの反対側にあった。インドである。
(略)
それまで日本とインドは、ほとんど没交渉だった。接触を拡大する現在の努力は、きわめて低いべースからはじめられた。(略)
しかし、政府高官の精力的な働きかけもあって、これが大きく変わりつつある。インド政府関係者は、将来どうなるのかが読めないままに、日本に好意をよせられているのを歓迎しているようだ。インド政府は、2007年を「日本年」として、会議や文化行事をふんだんに執り行なった。(略)
インドと日本のあいだで、「経済パートナーシップ合意」が結ばれようとしている。インドにとって日本は最大の支援国で、1986年以降、寛大な円借款を中心に援助が行なわれてきたが、ここへきてその額は中国をしのぎ、インドは日本のODAの最大受益国となった。(略)2007年9月の海軍合同演習には、日本、インド、オーストラリア、シンガポール、アメリカが参加した。(略)
エモット氏も日本が今後付き合うべき友人は誰か明確に示唆している。

⑤日本とアジアを考える■『アジア三国志』を読むー3へ続く
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■『新脱亜論』を読む-2 ③日本とアジアを考える より続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/14112867.html

③日本とアジアを考える■『アジア三国志』を読む-1

米国が今後トランスフォーメーション戦略により、世界で唯一の超大国の地位を降りようとしているが、政界引退後のキッシンジャーをはじめ現政権に至るまで私益を優先するクリントン氏らの政治家等による中国優遇政策により、米国の対中対アジア戦略の軸がぶれることがある。

地政学的見地からすれば、米国は海洋国家である。地政学をその国家戦略原理とする米国の国家としての国家戦略はぶれてはいない。勃興する中国を押さえる布石として、印度を重要な駒としての役割を与えた。かつてソ連を封じ込める為にキッシンジャーが行ったように中国をソ連への要石として使った役割を、今度中国を封じ込める為の要石の役割を印度にさせるのである。ブッシュJr政権が後世評価を受けるとしたら、米国とインドの連携強化の一石を敷衍したことであると思う。

■『アジア三国志』―中国・インド・日本の大戦略
ビル・エモット著 伏見威蕃 訳 2008年6月 日本経済新聞出版社 B6判 401頁
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4532353130
第1章 アジアの新パワー・ゲーム
第2章 アジア創造
第3章 中国―世界の中心の国、問題の中心
第4章 日本―パワフル、脆弱、老齢化
第5章 インド―数が多く、ごたまぜで、勢いに乗っている
第6章 環境問題―中国・インドの成長の壁
第7章 横たわる歴史問題
第8章 発火点と危険地帯
第9章 アジアのドラマ
21世紀の主導権と巨大な権益を巡り、三つどもえの争いを繰り広げるアジア3大国―中国、インド、日本。かつて一度も、アジアで強国が3カ国も共存したことはない。この混迷の時代を、世界とアジアはどう乗り切るべきか?3大国の均衡状態が崩れるとき、グローバル経済と国際政治に何が起きるのか?アメリカに対抗しうる大国の地位を、アジアの一国が手に入れるとき、世界はどう揺れ動くのか?国家戦略を現地取材から描き出し、21世紀アジアの巨大な可能性と、その裏に潜むリスクを解説。大ベストセラー『日はまた昇る』の著者が満を持して放つ最新作。

■『アジア三国志』におけるビルエモット氏の歴史認識について

原題は[Rivals-How the power struggle between China India and Japan will shape our nex decade] 三国志は伏見氏の妙訳と思う。

本書は欧米人の視点で、日中印三ヶ国をアジアのライバルととらえ経済的見地より比較する視点については、本書は読むべき価値はある。

英国人であるビルエモット氏の歴史観は欧米人のそれであるので、東京裁判正当史観であり、歴史認識はお粗末極まりない。もっとも、東アジアの現代史を英文で勉強する場合、1920年台~1945年の日本は英米からすれば敵国であり、日本に好意的に書かれた資料よりは、反日的資料が大多数を占めていることは想像がつく、ビルエモット氏の不勉強を非難するのも多少酷かもしれない。私達日本人が東京裁判史観の呪縛から開放され、当時の世界情勢の真実(日本側から観た世界観)に近い歴史認識と、それを基にした現代日本人の歴史の見直しを、第二次世界大戦の戦勝国がわからすれば、歴史の改竄(かいざん)と非難したいのだろうが、我々日本人側からすれば歴史を改竄してきたのは、戦勝国の欧米人側である。

私は南京その他大陸で、シンガポール、マニラ、香港などで日本軍が関係の無い民間人を多数虐殺してしまったことまでは否定しない。私は、幸いなことに戦争というものを経験していな。安全な書斎で本を読み、PCでブログを書いている人間に、戦争の極限状態を語る資格は無いかもしれないが、戦場の極限状態での価値基準と、平和な日常との価値基準は同列に扱うことが愚かなことであるぐらいの判断はできる。

現代でも、最前線の戦場のような極限状態では、アフガンやイラクで米兵は平気で民間人を誤射射殺している。ベトナム戦争での米軍韓国軍の残虐行為、旧ユーゴスラビアで繰り広げられた民族浄化、アフリカで頻発する残虐行為など、世界中どの民族においても、極限の心理状況に陥った場合、普通に起き得るべきことであると思います。

戦場や極限状態においては、身を守る為に相手を日常的に殺傷する行為は、極自然な行為であると思います。自分がいつ相手に殺されるかもしれないという、戦場での疑心暗鬼と追い詰められた極限の環境におかれた場合、疑わしきは殺戮する。また、そうしない場合逆に絶命する友軍を見続ければどうなるか?平和な書斎で善悪を論じる価値観と異なって当然である。人間は生物として自己防衛本能からくる虐殺行為は、国家指導者の指導方針や民族性の原因ではなく、生物としての人類共通の行動原理して、認識すべきものである。

ビルエモット氏は南京事件捏造部分に反論する日本に対して批判を加えてはいるものの、南京事件の前に中国軍によって引き起こされた日本人を虐殺した2事件に触れていない。
済南事件・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%88%E5%8D%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6
通州事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E5%B7%9E%E4%BA%8B%E4%BB%B6

近年済南事件・通州事件は日本軍の自作自演で南京大虐殺と相殺してはいけないと主張する腐れ左翼の生き残り達が主張している。被害者の多くが朝鮮人であっても当時は日本人であり、歴史的事件として、南京事件に比べ著しく不公平な取り扱いを受けている。

義和団事件における中国人の残虐性は当時から有名であり、虐殺の実行者は中国人自身が行ったものである。また、現代中国でも天安門事件、チベット、2005年の反日運動の中国人の暴徒、聖火巡行騒動における中国人の生態を見れば、この両事件の残虐行為の凄惨さは身の毛がよだつほどのものであったろう。

南京事件での被害者30万人はありえない数字で、プロパガンダであっても。南京で殺害された中国人は存在したのも事実かもしれない。ただその多くの大部分は民間に逃げ込んだ国民党軍人であることに間違いは無い。連戦連勝で、物資不足も深刻ではない時期の日本陸軍に、武士道精神と皇軍意識が欠如していたとは思えない。南京で便衣隊と誤認されて虐殺された人々が存在したとしても、中国人だからといった民族浄化で殺戮したわけではない。

当時の当時の日本軍の現地士官・下士官・兵士達は皆、済南事件・通州事件を知っていて、その後の皇軍兵士の中国人を扱う深層心理に影響を及ぼす判断材料となったことも否定できない。最も非難されるべきは、両事件を必要以上に憎悪を掻き立てる記事を書きたてた、朝日・毎日などの大新聞ではないだろうか?

映画戦場に架ける橋で描かれていたように、捕虜収容所で残虐行為があったとこはあったことは、大英帝国の崩壊の原因となった英国人からすれば許し難いことであろう。しかし、第二次世界大戦後の日本人捕虜収容所でイギリス人が旧日本兵にした行為すら認識が無い。エモット氏は、かの大英帝国が印度やタスマニア、アフリカ各地で行った残虐行為を棚に上げ、日本人が第二次世界大戦で行った蛮行をもとに、近年日本における、脱東京裁判史観の伝播を非難している。流行語で表現すると本書の「上から目線」は読んでいて不愉快であった。本書におけるエモット氏の歴史認識は朝日新聞の歴史認識と大差が無い。エモット氏の欧米人の偽善的な歴史認識には、反吐が出る。

『アジア三国志』を読む-2へ続く
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/14249428.html
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①日本とアジアを考える■『新脱亜論』を読む-1からの続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/14111745.html


②日本とアジアを考える■『新脱亜論』を読む-2
最近反米主義者や財界官僚ジャーナリストの一部で唱えられる「東アジア共同体」構想は、失神しそうなほど非見識な暴論であると私も思う。
中国においては、高揚するナショナリズム(=反日運動)の制御が難しくなりつつある。1994年8月に制定された侮日政策「愛国主義教育実施綱要」に基づく反日教育、南京虐殺記念館の拡充の成果である。また、韓国建国以来一貫した反日運動は「親日・反民族行為真相究明特別法」の施行に至った。この両国は民主的な健全な国家かつ、とても友好国ではない。侮日政策をとる両国に対し、軍事的支持無き外交には限界があるかもしれないが、我が国は、屈辱的なまでに寛容な態度をとっている。冷戦下のソ連と対峙していた頃ならばいざ知らず、冷戦崩壊後の今日特定アジア各国の愚行を放置し、表面上なお且つ友好親善を求めようとする外交姿勢や「東アジア共同体」を唱える人々は、理解に苦しむ。
無教養な一般人(韓流ドラマ愛好者)ならいざしらず外交当局が全くの無知蒙昧で東アジア政策を行っているようには思えない。わざと特定アジア各国への反感を国内として醸成し、地政学的見地から大陸との距離をとる深謀遠慮の政策ではないかとも考えてしまう。

100年200年後はわからないが、2008年の世界において「東アジア共同体」に共鳴するのは不見識で、正気の沙汰ではない。

日英同盟廃棄の慙愧(ざんき)P263~265
日本は海洋国家である。されば理の当然として、協調し同盟する相手国も海洋国家でなければならない。日露戦争を眼前に控えた明治35(1902)年一月に締結され、大正10(1921)年12月にワシントン会議での四国条約をもつて廃棄されるまでの20年にわたり日本の安全保障を確固たるものたらしめたものが、日英同盟であった。
第二次大戦での敗北によって日本は新たに日米同盟を結ぶことによって穏やかな「戦後60年」を打ち過ごすことができた。アメリカとは大西洋と太平洋に挟まれた巨大な「島」である。
日米同盟という、日英同盟に代わる「海洋国家同盟」の形成である。
第二次大戦後、日本ほどの完璧な平和を「冷戦」という大戦争の中で経験した国は他には存在すまい。日本は冷戦下における日米同盟の完全な受益者であった。近現代史において中国、ロシアはほとんど恒常的に日本の対抗勢力でありつづけた。日本がこの勢カに抗するには日英同盟や日米同盟といった海洋覇権勢力と連携するより他に安全保障の道はなかったのである。
日本の不幸は日英同盟廃棄から日米同盟成立にいたる30年であった。この間、日英同盟が廃棄されて間もない大正12(1923)年には日本の不吉な将来の予兆ででもあるかのように関東大震災が発生、大正13(1924)年にはアメリカで排日移民法成立、昭和2(1927)年には南京事件、山東出兵、昭和3(1928)年には張作霖爆殺事件、昭和5(1930)年にはロンドン軍縮会議、浜口雄幸首相狙撃事件、昭和6(1931)年には柳条湖事件を経て満州事変勃発、昭和7(1932)年には上海事変、満州国建国、五・一五事件、昭和8(1933)年には国際連盟脱退、昭和11(1936)年には二・二六事件、昭和12(1937)年には盧溝橋事件から支那事変へ突入、昭和14(1939)年には第二次大戦勃発、昭和15(1940)年には日独伊三国軍事同盟成立、昭和16(1941)年には真珠湾攻撃により大東亜戦争開戦、昭和20(1945)年には広島、長崎に原子カ爆弾投下、ソ連による対日宣戦布告、連合国軍に対する日本の無条件降伏、第二次大戦終焉、とつづいた。
ワシントン体制の成立によって日英同盟が廃棄され、同体制の下で中国に関する九国条約が調印された頃から、日本は国際的孤立を深め、列強に根深い不信と猜疑心を抱かれ、協調すべき友邦をもつことなく、ひとり中国大陸に踏み込んで衝き動かされるようにして全土の支配占領に走った。支那事変は苦心惨憎たる戦いであり、ついには英米の強カな介入によって勝算定かならずも大東亜戦争への突入を余儀なくされた。

今後日本が、かつての日英同盟と同じ-、海洋の強大な覇権国家アメリカと同盟して生きて
くのか、大陸国家との連携を深めつつ生きていくのか、近現代史は日本が採用すべき方途を示している一日本は予見しうる将来まで日米同盟の下で生きていくより他に道はない。本書の読者であればこのほとんど自明の主張をここでさらに敷桁するのは無礼であろう。

文明の生態史観と現代P269~273
問題は現代である。中国の発展にみられるように、現代は第二地域(中国・インド・ロシア・東南アジア・イスラム諸国)の勃興期である。経済発展の速度は第一地域(旧世界において高度の文明国になることに成功した西欧諸国と日本)より第二地域の方が速い。しかし、梅樟はここで次のように喝破する。
「生活水準はあがっても、国はなくならない。それぞれの共同体は、共同体として発展してゆくのであって、共同体を解消するわけではない。第二地域は、もともと、巨大な帝国とその衛星国という構成をもつた地域である。帝国はつぶれたけれど、その帝国をささえていた共同体は、全部健在である。内部が充実してきた場合、それらの共同体がそれぞれ自己拡張運動をおこさないとは、だれがいえるだろうか」どうやら現代そのものを考える視点がここで与えられたように思う。少なくとも日本の近代を顧みれば、巨大なユーラシア大陸の中国、ロシアから朝鮮半島を経て吹いてくる強い気圧の等圧線からいかにして身を守るか、これが最大のテーマでありつづけた。古代における白村江の戦いも元寇も、秀吉の朝鮮出兵もそのことを証す歴史的素材であるかも知れない。それらはいずれも対馬海峡の荒い海流に遮られて「箱いり」のような条件の中で育ってきた日本に生じた、ある種
の偶発的な出来事であったように思われる。中央アジア的暴力が日本の中心部を脅かして、日本の変化を誘ったという証拠はない。

日本が恒常的な中央アジア的暴カに対時させられるようになったのは、一九世紀の末葉以降である。ここで改めていう中央アジア的暴力とは遊牧騎馬民族のことではない。中心勢力は大清帝国やロシア帝国という日本を脅かした強大な勢力を指す。中央アジア的暴力は必ず朝鮮半島を通じて日本に及ぶというのが、極東アジアの地政学的な構図である。
近代日本を悩ませつづけたものが朝鮮半島であったのは地政学的な真実である。維新後の幼弱な日本にとっての最大の焦点が朝鮮半島であった。大陸勢力と海洋勢力がせめぎ合う朝鮮半島の地政学上の位置は日本にとって宿命的なものであった。
もう一度、復習しておこう。清国の属領であった李氏朝鮮において農民暴動「東学党の乱」が起こるや、李朝は直ちに清国に援軍を要請、これを機に日本が出兵、日本が提出した日清共同による李朝内政改革提案を清国が拒否して日清戦争が勃発した。「定遠」「鎮遠」を擁する清国北洋艦隊に挑んで辛くも日本はこの戦争に勝利した。日本が手にしたものが遼東半島、台湾、澎湖諸島であった。清国の敗北は列強による中国大陸の蚕食を誘った。南下政策の手を緩めないロシアにとって極東アジアの戦略的要衝遼東半島の確保は至上の戦略であり、独仏を加えた強圧的な三国干渉によって日本は遼東半島の返還を余儀なくされた。
山東省で蜂起した漢人の排外主義武力集団が北京に迫り、清国に進出していた列強八カ国の連合軍がこれに対抗した義和団事変を奇貨として、ロシアは満州に大量兵力を投入しここを占領し居座ってしまった。満州がロシアの手に落ちたという事実はすなわち朝鮮半島において日露が直接対峙(たいじ)することと同義であった。
ロシアの満州での権益拡大に強い嫌悪感を抱いたのがイギリスであり、ここに日英同盟が成立する。世界最大の海軍大国イギリスと同盟関係を結ぶことによって、日本は非白人国で唯一の帝国主義勢カとして発展した。日英同盟によってフランス、ドイツなどをイギリスが牽制、日本は国力のすべてを当時世界最強の陸軍大国であったロシアとの戦争に投入し、これに勝利した。日清、日露の両戦役は朝鮮半島の地政学が日本にとって宿命的なものであることを心底知らしめた歴史的戦争であった。
世中国、ロシアというユーラシア大陸から迫り出す高気圧に対抗して日清、日露の両戦役を戦った日本は、その後、第一次大戦の勃発によってヨーロッパ勢力が後退した中国をみずからの勢カ圏に組み込むことを企図した。
しかし、この事実が同じく中国への勢力拡大を急ぐアメリカと日本との関係を悪化させ・ワシントン会議において日英同盟の廃棄を余儀なくされた。日本はアングロサクソン勢カの支持を失って、中国というユーラシア大陸の懐の深い中心部で泥沼に足を捕られ、悲劇的な自減への道を突き進んでいった。しかし第二次大戦での敗北によってユーラシア大陸との断絶を強要された日本は、新たに日米同盟を結ぶことによって西側社会の一員として迎えられ、穏やかな「戦後六〇年」を打ち過ごすことができた。
宮沢喜一内閣の時期のことである。アジア太平洋問題に関する首相の私的怨談会が設置され、私も委員の一人に指名された。第一回の怨談会のゲストスピーカーとして梅悼忠夫が出席した。
「日本が大陸アジアと付き合ってろくなことはない、というのが私の今日の話の結論です」と話を切り出して、委員全員が呆気に取られるというシチュエーションを私は鮮烈に記憶している。
私どもは子供の頃から、真ん中にユーラシア大陸、左にヨーロッパとアフリカ、太平洋の向こうに南北アメリカ大陸が位置する四角の平面地図の図柄を頭の中に刷り込まれてきた。平面図ではなく、地球儀を北極の方から眺めると、一段と巨大な中国、ロシアというユーラシア大陸の中心部を、北米、日本、台湾、東南アジア、西ヨーロッパなどの周辺部が取り囲む、そういう図柄がみえてくる。
日本の近代はまさにこの図柄の中に凝集されているといえよう。日清、日露の両戦役は旧世界の中心部からの高気圧線に抗する戦いであり、この戦いに勝利して後に中心部中国に攻め入り、協調と同盟の関係を築くべき「海洋勢力」イギリスとの関係を放灘させられ、もう一つの巨大な海の「島」アメリカと対決して自滅した。
東アジア共同体に日本が加わって「大陸勢力」中国と連携し、日米の距離を遠くすることは、日本の近代史の失敗を繰り返すことにならないか。私が危慎しているのはこのことである。日米同盟を基軸とし、台湾、東南アジア、インド、さらにこれにオーストラリア、ニュージーランドを加え、これらがユーラシア大陸を牽制しながらみずからの生存と繁栄を図るという生き方が賢明な選択であるとを日本の近代史の成功と失敗は教えていると私は思うのである。

反米主義者達は、日米関係は日本が一方的に米国の植民地として搾取され続け、日本の国益となっていないことを主張する。確かに私も国益を無視した対米従属には反対だが、「東アジア共同体」構想はもっと反対である。日本のとるべき道は海洋国家+α(日米加豪NZ+ASEAN+印度)との連携協調である。

政策当局から聞こえてくる「東アジア共同体」は、日米安保条約を対等な日米同盟にする為の米国に対する揺さぶりであるなら問題ないが、「東アジア共同体」を真に受けて考える一部元腐れ左翼の連中や、陰謀史観に目が曇る一般無教養人が叫ぶような、「東アジア共同体」的な中国朝鮮と同盟関係を持ってはいけない。

ちなみに、カノ国の法則に従えば、朝鮮半島と同盟した国は敗戦・没落するのである。「東アジア共同体」構想絶対反対!竹島、尖閣諸島で妥協は無い。

アジア三国志を読むへ続く
http://blogs.yahoo.c
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日本とアジアを考える■『新 脱亜論』を読む-1

先週今週とアジア関係の本を重点的に読んだ『新脱亜論』渡辺利夫著『アジア三国志』ビルエモット著『海洋国家日本の戦後史』宮城大蔵著『中国が予測する北朝鮮崩壊の日』綾野 富坂聰編『情報力』鈴木琢磨 佐藤優著 私が偏って読書しているのかもしれませんが、各著者により多少の意見の差異は当然あるが、共通していることがある。日本が進むべき道は中国朝鮮の大陸国家との共同体、協力関係ではなく、日本は海洋国家として、海洋国家との連合協力関係の構築である。

【書評】『新 脱亜論』渡辺利夫著
2008.6.22 09:38
このニュースのトピックス:文学・書籍
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/080622/bks0806220938007-n1.htm
 ■誰を友とすれば幸福か?
 著書の渡辺氏は「福沢諭吉が『脱亜論』(明治18年)を執筆した時の気分が私にもよく理解できるように思える」と書く。
 福沢は「日本の生存のための唯一の方途は隣国と『謝絶』し、みずからのアイデンティティを東洋にではなく西洋に求め、そうして初めて日本の自立が可能になると主張した」という。しかし、歴史は福沢の思惑と反対に動き、東アジアに強くコミットし、折角築いた明治の栄光を大正と昭和の20年で崩壊させた。
 日清・日露戦争に至る歴史を繙(ひもと)きつつ韓国併合に至る道は、いわば一本道だったのではないかと著者は解釈する。軍事力において劣勢の日本がロシアに勝利し得たのは、国際環境についての判断力にすぐれ、イギリスと組んで背後を固めたからだった。その日本は第二次大戦で無残な敗北を喫し、国家的危機に陥った。
 著者がこの書を書いた動機は福沢諭吉、陸奥宗光、小村寿太郎のリアリズムを振り返りつつ、日本は「誰を友としていた時に幸福であり、誰と関わった時に不幸であったか」を知りたかったからだという。
 結論として日英同盟、日米同盟という海洋国家同盟こそが日本の選択であるべきだ。「東アジア共同体」に日本が加わって「大陸勢力」中国と連携し、日米の距離を遠くすることは、日本の近現代史の失敗を繰り返すことになると断ずる。
 「東アジア共同体」というのは全くの錯覚であって、福沢が「亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と指摘した悪友とは清国と朝鮮である。福沢の言葉は激越だが実によく神髄を衝(つ)いて今も変わらない。その中国について著者は「地域覇権主義」を見据えよと説き、「東アジア共同体」という「鵺(ぬえ)」のような怪物に日本が飲み込まれることは避けなければならないと警鐘を鳴らしている。
 最後に中・韓の友人に「日本人が冷遇と侮蔑(ぶべつ)にいつまでも甘んじ続けるという前提は危ういのではないか」と凄(すご)んでいる。痛快だ。(文春新書・935円)
 政治評論家 屋山太郎
著者の渡辺利夫氏は、現在拓殖大学の学長、慶応大学博士課程終了。60年安保世代の年代の昭和14年生、この世代の方は、終戦直後に小学校へ入学してGHQの負の価値にたっぷり色づけされた左翼史観を注入され続け教育を受けたとあとがきに書いてある。しかし、本書の内容は、60年安保世代の持つ左翼史観とは大きく異なる。その理由として、近代現代史の中にストーリー性を感得しているのは「坂の上の雲」をはじめとする司馬作品を何度も読んできたからだろうとあとがきに書いてある。私も幕末明治の近代現代史は司馬遼太郎なくして語ることはできない。また、司馬作品を読んだことがある人間で、彼の史観に感化されなかった人間はいるのであろうか?本書は、司馬史観を共有する人間であれば当然共有できる内容である。また、地政学的知識があれば当然の帰結である内容だ。

アジアの経済発展は雁行型になると予測、計画され、事実そうなった。
明治維新後の日本は、迫り来る西洋の帝国主義にただ一人戦いを挑む孤独な侍であった。朝鮮に清国に対し共同で、対峙する構想を持ちその連携を模索したのであったが、頑迷な華夷秩序の世界に生きる両国には現実がまるで見えてなかった。(今も変わらない)
日本はそれでも、誠意をもって福沢諭吉ら官民あげて、華夷秩序を覆そうとする朝鮮清国の国士達を応援しつづけたが、やがて失望に変り、自ら富国強兵策を推し進め、朝鮮半島政策をめぐり日清戦争に至った。以来、経済としては日本が先頭に立ち周辺諸国が日本に引っ張られ発展を模索する雁行型経済発展の道を選んだ。しかし、民間では反西洋帝国主義に対してはなお、孫文などを援助した頭山満らなどの大アジア主義の理想を持ち続けられた。大アジア主義は尊皇攘夷思想の延長線にあると思うが、やがて軍部皇道派の青年将校や、石原莞爾らの八紘一宇思想、そして、大東亜共栄圏構想に受け継がれていった。
戦後日本の復興~高度成長期から90年代今日のアジアの経済発展はまさに雁行型であった。
東アジア共同体は可能かP280~P282
東アジア共同体は成立するか。改めて私見を問われれば、次の五つの理由により実現不可能であり、かつ実現すべきものとも考えない。
第一は、東アジアにおける経済発展段階の相違に由来する。少なくとも共同体であるからには域内は多分に同質的な市場でなければならない。賃金水準において圧倒的な格差をもつ東アジアにおいて労働移動の自由が保障された場合に起こる激しい政治的軋轍は、想像に余りある。発展段階において多分に同質的な国家の集合体であるEUと東アジアの決定的な違いがここにある。
第二に、もう少し遠目にみても、政治体制の相違が共同体形成の阻害要因にならないはずはない。一方には、政治的意思決定を大衆の広範な政治参加によって実現する民主主義国家があり、他方には、党指導部の意思決定が政府や国民のそれに優先する一党独裁国家が存在する。反日暴動をめぐる日中問の摩擦は、要するに異なる政治体制間の軋礫をその根因とするものであった。加えて東アジアにはソフトな、またはハードな権威主義国家が存在する。民主主義国家の集合体であるEUと東アジアはこの点で大きく異なる。
第三に、安全保障の枠組みにおいても東アジアは区々である。日米、米韓、米台、米比のようなアメリカを中心とする「ハブ.スポーク」の安全保障体系の中に組み込まれている国がある一万、中朝革朝友好協力相互援助条約)、露朝一露朝友好善隣協カ条約)のような関係も厳として存在する。グローバリゼーシヨンの現在においても、国家問の紛争処理の最後の手段が戦争であることはなお否定できない。東アジアにおいて国境紛争問題を抱えていない国がいくつあるだろうか。一旦緩急あらば、この分断的な安全保障の枠組みが悲劇的な結末を東アジアにもたらさないとはいえない。「悪の帝国」旧ソ連にNATO「北大西洋条約機構」をもって対時したという『共生感』がEU統合を強固たらしめた背後要因であろうが、東アジアはそうした共生感をまったく共有していない。
第四に、ASEANプラス3において最大の経済規模をもつ日中韓三国の政治関係が緊張を孕
んでおり、これが容易に解消できないと予想されることである。
韓国の反日感情は相変わらず強い。しかも近年の日韓関係は、日本・朝鮮半島関係として論じられねばならず、それがゆえに対応は一段と難しい。目立った傾向は韓国の「北朝鮮化」である。冷戦時代において封殺されてきた朝鮮半島の「血族的ナシヨナリズム」が、冷戦終焉に伴う南北代理対立の構図消滅と同時に高まりをみせた。核実験を敢行し、核兵器搭載可能なミサイルをすでに保有する北朝鮮と韓国が「一体化」することは、日本にとっての悪夢である。朝鮮半島における敵対勢力の阻止は近代日本の「国是」であり、日清、日露の両戦役はその国是に忠実なる戦いであった。
日中の政治外交関係は、昭和四七(1972)年の日中共同声明以来、最悪である。国内権カ
基盤強化を求めて展開された江沢民政権の「反日愛国主義路線」は草の根にまで及んだ。市場経済における敗者の群れ、膨大な数の失業者や社会的不満層が反日愛国主義路線に呼応した・新たに登場した胡錦濤政権は「対日新思考」をもって対日政策の路線変更を試みたものの、民衆レベルに根付いてしまった強い反日的センチメントに呪縛されて、身動きが取れない。国内の深化・拡大する社会的不満の捌け口として、反日愛国主義路線は中国の党・政府にとって不可避のものでありつづけよう。
中国の地域覇権主義をどうみるかP283~285
第五は、東アジア共同体の陰の隠然たる主役が中国であることに関連する。東アジア共同体を動かす最大の背景要因が中国の地域覇権主義であり、その向こうには台湾統一が見据えられている。国カの拡充を背景に軍事増強を図り、台湾を統一して外洋進出に成功することは中国積年の夢である。シーレーンを安定的に確保し、石油エネルギー輸入を万全なものとしなければ中国の発展は保障されない。中国という資源不足の超大国の発展それ自体が覇権的行動を余儀なくさせてもいる。

経済規模が拡大して国力が拡充し、それに応じて対外的交渉力が強化されれば、その国が国際社会の中で覇権を求めることは歴史的経験則である。大英帝国時代のパクス・ブリタニカ、戦間期から第二次世界大戦後のパクス・アメリカーナ、冷戦期のパクス・ルッソ・アメリカーナといわれる時代は、いずれも大国がみずからの国際的影響カの拡大に応じて自国中心の世界秩序を創出しようとして成った安全保障体系であつた。意識的にであれ無意識的にであれ、また好むと好まざるとにかかわらず・国家の発展が国際的覇権に結びつかなかつたという歴史的先例責出すことは不可能である・中国がパクス.シーカの時代を築くにはなお相当の時間を要するであろうが、少なくとも東アジアにおける覇権を求めて大いなるカをこの地域に注ぎつづけるとみてまちがいあるまい。
覇権は他国の覇権を認めず、前者が後者を全力で阻止するという行動をもってその特徴とする。中国の東アジアにおける覇権掌握のためには、もう一つの大国日本の覇権を封じ込めねばならない。中国が東アジア共同体の熱心な唱道者であるのは、その地域覇権主義に由来する。
大国化する中国に対抗して日本が、東アジアにおいて行動の自由確保し、みずからの存在を確実に証す決定的に重要な二国間関係が日米同盟である。中国が東アジア共同体を主唱するのも、日本を東アジア共同体に招き入れることによって日米の離間が可能であると踏んでいるならである。日米が離間し、中国が東アジア共同体の主役となるならば、中国の覇権確保は一段と確実なものとなろう。台湾の帰趨もこれによって決定される。
日本が東アジア共同体にいかなる態度をもって臨むべきか、答えは自明であろう。
②日本とアジアを考える■『新 脱亜論』を読む-2へ続く
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祝:米金融危機の第二回戦突破!! ■日本の株式は?喜んでばかりはいられない。
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■日本の株式は?
3月17日に日本の株式は11691円の底値を付けた米金融危機の第一回戦突破後の高値は14601円なので値幅で2910円、率にして24.9%上昇した。これを7月16日安値12671円に置き換えると10月の初旬に値幅計算してで15581円、率で計算すれば15825円になる。
しかし、週足の一目均衡表を見ていただくとお分かりの通り、厚い雲があり15000円を突破するには、好材料が重ならないと突破することができません。

もし突破するとしたら、好材料①原油価格の下落。②米国金融市場の安定化、③新興国市場の回復。④7月31日に集中する4-6月期の企業業績の予想外の好調日本国内の景況感の好転が重なれば突破できなくもないが、悲観的材料は数え切れない。

今後の日本株の相場イメージとして、3 月中旬の第一戦ベアスターンズ救済処理劇で一番底をつけ、反騰した後、2 番底をつけ反騰し、次10 月前後の3番底を形成する可能性
があるが、年初来安値11691円を割らずにいられるかが勝負の分かれ目になるかもしれません。割れれば年末年始にまた3ヵ月後との節目がやってきます。

① 原油価格の下落について土曜日に書きましたが追記します。一旦下落するとは思うが心理的なラインの100ドル以下には下がらないかもしれません。

しかし、原油高のサポート要因はまだある。08年6月に、OPECの生産余力は初めて、日量200万バレルを割り込んだ。これは、わずか世界の石油消費量(日量)の2.3%しかない。同時に、米国の原油在庫は急減し、現在、前年同期の水準だけでなく、過去5年間の平均も下回っている。

ニジェール・デルタ地域での武装勢力による政情不穏、ペルシャ湾地域の地政学的リスクが、再度高まっている。一説には、10、11月頃ブッシュ政権のうちにイスラエルがイランを攻撃するとの情報がインターネット上で流れている。ペルシャ湾ホルムズ海峡が封鎖されるようなことになれば、日量1,400万バレルの供給がストップし、30年前に堺屋太一氏の小説「油断」に近いパニックになる可能性がある。

私は、軍事衝突の可能性は限りなく低いと考えるが、イラン・イラク・イスラエルは大きな地政学リスクだ。また、8月から10月にかけ恒例のメキシコ湾「ハリケーン・シーズン」が到来する。今後2~3ヶ月、WTIは気象衛星の画像に敏感に反応すると思われます。

オリンピックが終了すると、オリンピックを成功させる為に原油を買い漁った中国の買い圧力が引き、中国国内でのガソリン価格の引き上げが予定されてもいます。
上に挙げた突発的リスクが無ければ、1バレル100~120ドル程度と考えるのが最も現実的かもしれません。

② 金融市場はなんとか目先の危機は回避できたが、不動産価格が下落して、不動産担保ローンに依存してきた米国の中産階級の崩壊は今後も続く可能性が大きい。
【ニューイングランド通信】
http://blogs.yahoo.co.jp/giantchee2/43367465.html

この困難な時期にポールソン財務長官とバーナンキFRB 議長が陣頭指揮を行っているのは、米国人だけでなく我々米国経済と密接に関わる数十億人にとっては当に僥倖である。3月のベアスターンズ救済処理、6月G8で強いドル政策の明確化、7月に入りECBへ乗り込みユーロの更なる利上げ阻止の説得、金融株の空売り規制、政府系住宅金融機関(GSE)住宅公社の支援策取りまとめといったマジックのような金融政策は経済史に特筆されることとなると思う。

今後、モノライン保険会社の支援策が紆余曲折が予想されが、最終的にポールソン・バーナンキの手腕により金融危機回避されよう。それだけこの両氏へは信頼が高まったと思える。

7月29日のケース・シラー住宅価格指数の発表があるが、予想では米住宅市況の底打ち感が出る内容を予想されている。注意して見て下さい。31日の4-6月期GDPも目先米国株の短期的上昇をもたらすかもしれません。

ただし、短期的な株価上昇ともみ合いが続いた後、秋か冬には再び底割れが予想される。NY ダウの10,000 ㌦割れも覚悟しておくべきと思う。


③ BRICs新興国市場
BRICsやその他新興諸国のうち、昨年10~11月をピークに中国インド等の資源消費国の株価はピークをつけ下落に転じた。今年の5 月以降はブラジル、ロシアなど、資源産出国の株価も反落に転じ、新興国株式市場は調整局面に入っている。インド、ASEAN などのアジアの資源消費国通貨の対ドルレートもあわせて下落している。原因はいわずと知れた原油資源高である。当初、新興国政府は、補助金等でガソリン等の公定小売価格の引き上げを遅らせてきたが、4~6月頃より耐え切れず公定小売価格の引き上げと同時に、金融引き締めが多くの国で実施された。これが旺盛だった新興国の内需には決定的な悪材料となった。先進国でも、内需の後退し、いかに資源産出国といえども無縁でいられるはずはなく、BRICsや新興国株価の調整が生じた。

原油価格の下落は即BRICsや新興国の景気が回復に向かうとは期待できない。金融引き締めの効果はタイムラグを伴うのと、原油価格の下落分は、公定価格維持に使われた財政負担の補填に使われる可能性が高い。しかし、国全体としてみれば、資源価格の下落に伴い、所得の資源産出国への移転は止まるので、資源消費国の景気の底打ちと回復の可能性が見えた途端に、急速な株価の上昇となる可能性はある。ただし、資源消費国を中心に、新興国の経済実態は悪い循環に陥っている為賭博の域を脱しない。

原油資源高→貿易赤字→景気の減速→外貨準備が漸減→自国通貨下落→輸入物価上昇→公定価格の引き上げ→金融引き締め→内需の低下→成長力の低下⇒悪くなり続けている。物価上昇率の加速、広範な国における引き締め政策の採用といった、既述の悪いサイクルは始まったばかりである。良いサイクルへの転換に賭けるには賭博に近く早すぎると思われる。

④ 日本の企業業績国内経済について
3月に1ドル100円を切った円ドル為替があった為、多くの輸出企業は弱気な業績予想を出した。その後円安に戻している為、上方修正する企業も散見されるが、北米市場のマイナスとの兼ね合いで、各社サプライズが出るような上方修正は少ない。

国内経済指標では、6 月の消費者物価指数がガソリンや食料品の値上がりを背景に前年比+1.9%の高い伸びとなったなかで、国内景況感が減速基調を強める中で、6月の雇用・所得関連統計、鉱工業生産指数などの経済指標の推移を見守りたい。

①~④までは、比較的日本株にとってプラスに働く可能性サプライズもあるが、
日本の株価を占う上で悪材料は事欠きません。

6月に買い越した外国人投資家も7月1~3週まで売り越しだった。6 月の株式投信への資金流入をみると、ボーナス月にもかかわらず、2,600 億円の資金流入にとどまり、6 月としては2003 年以来の低い資金流入となった。

また国内政治も福田首相が内閣改造に踏み切るのか否か、また年内に解散総選挙があるのかないのか、政治はマイナス材料にしかならない。

結論:目先13650~13750円のラインを当面抜けるかどうかで、10月の株価の位置が決まると思います。抜けなければ、10月に年初来安値11691円が意識され、13650~13750円のラインを突破すれば、15500~15800円の可能性があるが、10月も水準は12600円近辺かもしれません。

免責:勝手な予想を趣味で書き込んでいますので、外れても責任はとりません。
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祝:米金融危機の第二回戦突破!! 「ヤッター!」
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13658147.html
からの続き。

FRB、米財務省、SECの三位一体の連携で、米国の金融システムを安定化するために、FRB・財務省の勢カ圏外にあった米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)と米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)の両社を完全にFRBと財務省の配下にすることに成功した。

そして、問題の大手金融機関の決算発表17日18日を境に、3月と同様、金融、為替マーケットは機能しはじめ、米金融株は上昇し、原油価格が暴落しはじめた。

7月上旬までは、証券市場で株債券、米ドルが売りの、コモディティ(実物資産・商品)買いという、サブプライムローン危機発生以降のグローバルマネーの動きに変調が出始めたかもしれない。Fannie Maeの株価は11日6.68ドルまで下落したが、18ドルまで戻し、25日引値は11.55ドル。Freddie Macも11日3.89ドルが底値で、11.6まで戻し、25日引値は8.27ドル今回、投機筋による政府系住宅金融機関(GSE)の空売りで、空売った投機筋は火傷したに違いない。

SECの空売り規制は、ファニーメイとフレディマックの株価急落に対し、両公社を含む19の金融機関を対象に空売りを仕掛ける際には事前に株券を借りることを義務づけるもので、投機筋からしてみれば、堂々と後出しジャンケンをされたようなものである。日本でも2002年以降、空売り規制はかけられたままで、毒薬だが、暴落を食い止めるには適切な措置かもしれない。特にFRBバーナンキ議長は、日本の証券市場の動静を研究し尽くしているので、今回のSECの規制はバーナンキの入知恵であったかもしれない。

政府系住宅金融機関(GSE)の経営悪化騒動は、7月18日のシティグループの決算内容の如何によっては大恐慌へ突入する可能性は十分にあった。7月上旬まで、ポールソン米財務長官とバーナンキFRB議長は、米経済の現状について試練のときであると繰り返し指摘し、難局はここ数力月(2~3ヵ月)続くとの認識を示していた。ポールソン米財務長官とバーナンキFRB議長は相当老獪な策士と思わないといけない。

米当局はインフレを無視しているのではなく、むしろ強く気にしだしている。金融システムを安定させ、インフレを抑制させるには、難しい金融政策の舵取りが必要となる。あわせて、原油価格を更に下落させる必要がある。今後FRBはFF金利(短期金利)を上昇させて・公定歩合は据え置く政策をとる可能性がある。FF金利は今年11月0.25%、来年早々に0.25%上昇させ、公定歩合は据え置きの政策を進めるときではないか?

145ドル超まであったWTIは、25日引値では125.49ドルだ、投売りされた形跡もあるこの値動きは、投機筋の中にはすでに立ち直りが不可能のような状況のファンド勢も出たに違いない。

世界経済のグローバル化がもたらすインフレはBRIDsなど新興国の人口ボーナスが終了する2015年~2020頃まで継続することは間違いないし、穀物を中心とする新興国の労働人口の増加に伴うインフレは、まだ半年程度は継続すると考えているが、独歩高した原油価格は先進国需要減ですでに一段安の準備はできている。

米国で例年税金の還付時期である2月~5月はガソリン価格の上昇と在庫の減少が見られる。また、過去のブッシュ減税の還付時期もガソリン在庫の減少が観測された。米国のガソリン価格と原油価格の動きを観測すると両者は連動して動いているが、その在庫を見るとガソリン在庫の動きが原油価格の動きと連動している。

石油精製施設が集中するメキシコ湾岸をハリケーンが直撃したり、精製施設の老朽化に伴う事故などのガソリン価格高騰の撹乱要因もあるのかも知れないが、急速にガソリン在庫が増加してきており、米国の景況感悪化が指摘される中で、ガソリン価格の軟化となれば、実際の消費に回っていないとされるブッシュ減税だが、還付終了と共に、ガソリン需要は更に減退が予想される。希望的観測かもしれないが、世界の原油価格は、100ドル近くまで下落するのではないだろうか?

ただし、3月7月と危機を煽った米財務省とFRBが10月頃再度、第三の信用リスク到来発言をする可能性も十分に考えられる。また、10月といえば11月の大統領選挙を控え何が起きるかもわからない。ひょっとすると、イスラエルがイランを攻撃していることさえ考えられる。

イスラエルがイランを攻撃すれば原油価格は200ドルを目指すことになるのだが・・・・
とにかく、今の世界経済は、先々週最終回だったキムタクのドラマ「チェンジ」以上に面白い。
PS・DVDで借りた米国ドラマ「ヒーローズ」も現在6巻まで観たがもこれまた面白い。
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財務省ポールソン長官・FRBバーナンキ議長の2トップと、トップ下のSECコックス委員長が、見事に三位一体となった連携プレーで、崩壊したDF(DecayFinancecompany)をカバーし米金融危機の第二回戦突破した。いよいよ次は北京五輪の中国!

私は関係ないと思っているそこの貴方、貴方が知らないところで世界は、目先また救われた。「アメリカが勝手に借金して、世界恐慌の足音が聞こえるのに、賛美するとは何事か!」と反発される方もいるでしょう。彼らはは当たり前のことを、当たり前の時期に当たり前の仕事をしたまでのこと、ただそれだけだが、世界恐慌突入寸前で当面最悪の事態を阻止することができた。一方、当たり前のことが出来なかった東洋の島国の国民は未だに艱難辛苦に耐え忍んでいる。

7月25日朝刊日経新聞社説 
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20080724AS1K2400524072008.html
 なお道遠い米金融システムの安定化
 米下院は米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の支援策を含む住宅関連法案を可決した。週内にも成立する見通しで、住宅公社の経営危機に端を発した米国市場の不安はとりあえず収まりつつある。
 ただ、米国の金融システム全体への信認が回復したわけではない。米当局には問題の後追いにとどまらない積極的な対応が求められる。
 法案は、住宅公社への公的資金注入や緊急融資などの支援を可能にする内容。ファニーメイなど住宅公社2社は、買い取った住宅ローン債権や保有する住宅関連の証券化商品の価値が下落したため、大幅の損失を計上していた。このほか、住宅ローンの低利借り換えを促す措置など、借り手の救済策も法案の柱になっている。
 住宅公社が現在果たしている機能を考えれば、米政府が信用を補完する支援策を打ち出すのは当然だろう。2社が保有したり、保証したりしている住宅ローンの総額は市場全体の半分近い5兆ドルに達する。両社の機能が低下すれば、米住宅ローン市場は事実上凍結してしまう。
 海外の金融機関や中央銀行が保有する住宅公社2社関連の債券も1兆5000億ドルにのぼる。海外投資家は「米政府の暗黙の保証があり、信用度が米国債とほぼ同じ」という前提で債券を保有している。放置すれば、世界の金融市場が大混乱するのは必至だった。
 支援を決めても問題は残る。実際に公的資本が注入されるのか、公的な負担はどの程度に達するのかなどは不透明だ。支援が口先だけにとどまれば、不安感は消えない。
 一方、国の負担が巨額に上るとの認識が広がれば、財政赤字膨張への懸念から米国債が売られる可能性もある。支援策が実際にどう実行されるのかが注目されるところだ。
 中長期的には住宅公社のあり方を抜本的に見直すべきだ。暗黙の政府保証を受けつつ、民間企業として上場し、業容を拡大してきたことには以前から強い批判があった。この点は、ゆうちょ銀行など公的性格と民間企業としての性格を併せ持った金融機関のあり方を考えるうえで、日本にとっても教訓となる。 
住宅公社の経営不安は、住宅バブル崩壊に端を発する米国の金融システムの傷がなお深いことを浮き彫りにした。危機防止のためには公的資金の活用も検討すべきだろう。市場が混乱してから対応するばかりでは米国の金融システムはなかなか健全化しない。

FRBと米財務省は、「金融システムの安定化」の一点突破で世界恐慌阻止へ血路を開いたと私は見ている。
米下院は米連邦住宅抵当公杜(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公杜(フレディマック)の支援策を含む住宅関連法案を可決した。週内にも成立する見通しで、住宅公杜の経営危
機に端を発した米国市場の不安はとりあえず収まりつつある。

ポールソン財務長官はECBを説得し、ユーロの更なる利上げ阻止に成功し、次は全力で政府系住宅金融機関(GSE)救済法案の成立に成功した。Excellent!!

それに比べ、今日の事態を放置したマエストロ・グリーンスパンの威光は完全に地に堕ちている。
「日本経済を襲う二つの波」 http://www.bk1.jp/product/03009710 
リチャード・クー著  
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu172.htm 
 7/24参照
ワシントンではグリーンスパンの評価は地に堕ちたと言われている。中央銀行マンとしてバブルが実際に発生している最中、それに徹底的に警告を発することを怠ったグリーンスパンの責任は極めて大きいと言わねばならない。
政府系住宅金融機関(GSE)とはいえ、建前上2社とも民間企業で、強力なロビー活動を展開し、FRBと財務省が長い間手に負えなかった巨大金融機関が、ついにFRBと米財務省の軍門に下った。

この問題を長期間放置したのでは再びドルの信認が問われる展開になりかねないので、第一回戦ベアスターンズ救済劇と同様の迅速な措置が行われた。

ただし、あまりに巨大すぎ、JPモルガン・チェースのような引き受け手が政府もしくはFRB以外存在しない点でベアスターンズ救済劇とは異なる。両社の株主責任による負担では金融システムの構造破壊の責任が負えない限界にきたときに当局は考えているようだ。

現在のところ、最終的に国有化になることは避けたようであるが、FRB・財務省の勢カ圏外にあった2社は完全にFRBと財務省の配下に入るといえよう。7月初旬からにわかにFRBと財務省自らが危機を煽り、政府系住宅金融機関(GSE)の炎上させ、投機筋も加わって危機を自作自演で演出していた可能性も考えられる。政府系住宅金融機関(GSE)とFRB・財務省連合との私闘であった可能性すらある。(日本の失われた10年は、日銀と大蔵省の私闘が原因の可能性説がある。)

両社は、住宅ローン(サブプライムではなく、主にプライムローン)を集めて、それを担保に小口証券を作り、保証をつけて販売する証券化業務を行っている。証券化の残高は両公社で3兆6000億ドル。また、住宅ローンを買って運用する業務で、運用資産は両公社で1兆4000億ドルの合計5兆ドルで、日本の郵貯銀行の預金量を上回る。

問題になったのは証券化業務、とりわけ「保証」であった。両公社はこの業務を帳簿外で手がけてきた。ところが財務会計基準審議会(FASB)が簿外業務を連結対象にさせる新しい会計基準案が採用することとなり、両社の経営問題の劣化が取り沙汰され始めた。


米証券取引委員会(SEC)のコックス委員長が金融株の空売り規制の発表しておきながら、「金融規制システムの改革」と題して米国下院金融サービス委員会において、証言を行った。

7月初旬にFRBと米財務省、SECが、米国景気の危機感を訴える必要があったかどうか怪しい。バーナンキFRB議長は議会証言で、米国経済は試練に直面し難局は少なくとも数力月(2~3ヵ月)続き来年後半まで続くと厳しい認識をしていると発言し、投機筋にわざと公社2社を売りたたくようしむけ、公社2社を配下に入れるための信用リスクの演出だったのではないかと思えるのだ。

7月16日からの大手金融機関の決算発表は無事通過し、米株式市場は何もなかったかの如く上昇した。来年後半までかかると言ったことは嘘のようである。事実、一般企業の収益は予想以上に悪くない決算が続いている。

とにもかくにも、金融システムの安定化は、ドルの防衛でもある。ドル防衛の為には、政府系住宅金融機関(GSE)を影響下に置かないと、再び暴走しかねない。

FRBの舵取りは難しい、インフレを抑えつつ、信用不安の解消をする。バーナンキ:FRBの戦略は詰め将棋みたいなもので、金融システムの安定化⇒ドルの防衛⇒原油価格の暴落⇒インフレ抑制。といった譜を描いているのであろう。

事実、原油価格が暴落した。(画像をクリックしてください)
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http://www.miller.co.jp/kmp00/visitor/apps/cgi-bin/cv0cht00.cgi?code=0600&div=I

原油価格の行方(続:祝:米金融危機の第二回戦突破!!) へ続く
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13668546.html
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②アジアの幻想(新興国バブルの終焉)日米中人口動態俯瞰 ~ゴールドマンサックスBRICsリポートは正しいのか? からの続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13147662.html

■人口動態に見る「アジアの時代」の終焉

【アジア各国の人口ボーナス期と終了時一人当たりGDP】
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出所:国連「World Population ProspecttsThe2004Revision」世界銀行「World Deveropment Indicators」などをもとに日本経済研究センター作成したのをコピー

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一般にアジアは世界経済のエンジンとして今後も高成長を持続するイメージが先行しているが、上のグラフを見て意外に早く人口ボーナス期は終了してしまう。
人口動態を見る限り、アジア経済は今後、成長が減速し、「人口オーナス時代」を迎える。
日本はアジア諸国に先駆け、人口ボーナス期⇒出生率の低下⇒少子化の進展⇒高齢社会への移行⇒労働力人口の滅少⇒総人口の減少という順序で人口が変化してきた。2005年には総人口が減少を始めてしまった。今後は後続のアジアの国々でも同じことが、ほとんど同じ順番で起きる。

韓国、シンガポール、タイ、中国など国々では既に出生率が低下しており、今後急速に高齢化が進む予定である。ASEAN諸国、インドでは、今後所得水準の上昇とともに出生率
が低下し、2025年から高齢化が進む。

こうした人口変化の下でアジアの経済成長率は、労働力、資本(貯蓄率)、生産性(技術進歩)の3つの要因で決まると考える。高齢化が進展すると、老後に備えて貯蓄を積み増す人よりも、貯蓄を取り崩す人が多くなるので、経済全体の貯蓄率は低下し、これが資本蓄積を制約する。

日本では1950年~1970年が典型的な人ロボーナスの時代だった。これは高度成長の時代に当たる。人ロボーナス状態だったことが日本の高度成長を支えた大きな要因の1つだったのである。労働力の伸びが成長を支え、団塊の世代をはじめ、現役勤労者層が多かったため貯蓄率も高かった。さらには高齢者も少なく、そのための負担も小さかったため、手厚い賦課方式(高齢者の年金を現役世代の保険料収入によって支払う方式)の年金制度を作ることもできた。

日本の人ロボーナス期に幕が下りたのは、バブル崩壊と重なる1990年。1995年以降は人ロオーナスの時代に人っている。まず成長率が鈍化⇒労働力人口は減少⇒貯蓄率も低下している。何よりも、年金・医療などをめぐって勤労世代の負担が高まり、将来不安が増大してる。今日の日本の状況は人口動態から鑑みて必然性がある。

アジアに目を転じれば、現時点が人口ボーナス期であることが分かる。新興国アジアの高成長は人ロボーナスの時期に位置しているのである。
しかし、人ロボーナスの時期は間もなく終わってしまう。シンガポール、タイは2010年頃から、中国、韓国は2015年頃からという具合に、順番に人ロボーナスから人ロオーナスヘと移行していく。アジアの時代が終わる可能性があるのは、まさに人ロボーナスから人ロオーナスヘの局面変化によるものなのである。


これからのアジアの課題は、人ロオーナスに伴う諸問題にいかに対応するかである。日本は1970年~1995年にかけての25年(これは世界でも異例に速いスピードだった)をかけたが、アジア諸国も日本並みもしくはそれ以上のスピードで高齢化が進むと予測される。見通しではシンガポールと韓国は20年、ベトナムは15年で高齢化に備える準備期間が短いことも意味している。

また多くの国では、人ロボーナスが終了した時点でのー人当たりGDPがそれほど高くないと予想される。予想されるー人当たりGDPは中国9722ドル、インド7758ドルと日本の半分以下。十分な豊かさを達成できていない段階で人ロオーナス社会に人っていくことになる。

今後アジア地域では、今の日本に現れている人ロオーナス問題など人口変化によってもたらされる諸問題が次々に顕在化することになるだろう。
人口構造の変化によって成長率が低下するのは運命的なもので「アジアの時代はまもなくが終わるだろう」
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①アジアの幻想(新興国バブルの終焉)フラット化した世界~日米中人口動態俯瞰 からの続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13147348.html

日米中人口動態俯瞰
★米国の人口動態
【米国の人口ピラミッド推移】
http://www.china-europe-usa.com/level_4_data/hum/ani/ani_usa_2L.gif
http://www.china-europe-usa.com/level_4_data/hum/011_7c.htm

米国の最初のベビーブームは第一次世界大戦直後の1919年~1925年に最初のピークがある。米国経済の黄金の60’sはまさに、この第一次ベビーブーマー世代が40歳前後を迎える時期に当たる。
もう一つ付け加えるならば、この第一次ベビーブーマー世代が20代の時に第二次世界大戦があり、米軍が強かった理由でもあるかもしれない。

そして、その60年代に生まれた人達が40歳を迎える2000年~2005年が当にアメリカが唯一の超大国として世界に帝国として君臨した時代であったと思う。


中国は、毛沢東が支配した時代、イギリスを抜き去り世界第2位の大国となるべく大躍進政策を計画した、経済政策は失敗したが、人口は爆発的に増え続けることに成功してしまった。毛沢東は、「人多力量大」(人口の多さが力の大きさ)、「人不但有一张嘴,还有一双手,可以创造世界」(人の口は一つだが、手が二本あるので、世界が創造出来る)とも言い、10人以上子供を生んだ母親を、「光荣妈妈」(栄光の母親)の称号を与えた。
その結果、1970年代中国は年に1700万人からの人口が増える人口爆発状態となってしまった。そして1979年鄧小平は4つの近代化を実現すべく、一人っ子政策に政策転換した。これは、天津の一女性労働者が1978年に「一人っ子宣言」をしたのを契機に、天津医学院の女性医師が連名で「一人っ子提議書」を提出した。これを1980年党中央委員会と国務院が国策と位置づけ政策へ転換したのが人口計画育成法、所謂一人っ子政策である。

中国政府は、2007年の報告書の中で、今世紀半に迎える総人口のピークを15億人前後に抑え、その後、緩やかに減少していくように出生率を2・1以下に安定させるとしている。


■ゴールドマンサックスBRICsリポートは正しいのか?

ゴールドマンサックスBRICsリポートは、中国ロシアの高齢化や少子化による。生産年齢人口が急減し、同時に高齢人口が急増(人ロオーナス)の経済成長への影響につい、考慮されていないようだ。GSの成長見通しは、その点で楽観的だといえる。

人ロオーナスが経済成長に与える悪影響は十分に検討されていないように見える。国連や世界銀行の統計では、中国の人ロオーナス期を迎えるのは2015年とされ、中国経済の発展は、楽観的に見てあと7年~10年に過ぎない。2020年には中国は日本同様高齢化社会へ早くも突入するのだ。

GSの2006年2月のリポート「Will China grow old before getting rich?」において2003年のリポートでは平均GDP成長率を4.5%としていたものを5.3%に上方修正している。その根拠として、教育水準の向上効果、一人っ子政策の緩和などをあげている。
国連や世界銀行の統計に比べ、人口オーナスの影響を低く捉え、恣意性が感じられる。

③アジアの幻想(新興国バブルの終焉)人口動態に見る「アジアの時代」の終焉へ続く
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13147831.html
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①アジアの幻想(新興国バブルの終焉)フラット化した世界~日米中人口動態俯瞰

■フラット化した世界

私の机の奥にゴールドマンサックスのルーパ・プルショサーマン (Roopa Purushothaman)が2003年10月に書いた投資家向けのレポート「BRICsとともに見る2050年への道」(Dreaming with BRICs: The Path to 2050) が話題になっているという2003年秋バロンズに掲載されたダイジェスト版レポートをファイルしてある。最初にこのレポートを読んだ衝撃は少なからずあったが、今日と比べるとその実感に乏しく実現性を疑った。私は、現在でも必ずしもレポートの通りになるとは思わないが。ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字をとったBRICsという言葉はあれから5年が経ちすっかり市民権を得て、21世紀はBRICsの世紀であるとのようなレポートが巷に溢れている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/BRICs
確かに、BRICs諸国それに続くVISTA
http://ja.wikipedia.org/wiki/VISTA
やNEXT11
http://ja.wikipedia.org/wiki/NEXT11
と呼ばれる新興国の経済規模は、現在G6(米国、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア)の経済規模は、まだ比べようも無いくらい小さいが、2040年頃には先進国を上回り、その後は次第にG6の規模を大きく凌駕するとみられている。

ベルリンの壁が崩壊し、WWWインターネットが発達した現代は、国境がだんだん低くなり世界はフラット化しているといえよう。世界が個人ベースで同じフィールドで自由に競争をすれば、地球規模で、同質化が進むのはエントロピーの法則からすれば必然といえよう。同容器の中で水と油で分離していたものが、界面活性剤(触媒)を入れてかき混ぜれば交じり合う原理に似ている。同じ当然今まで豊かな国G7の中産階級以下の富が、新興国へ移転していくのは経済学的にではなく、物理学的な自然科学の法則に従っても必然なことだといえよう。

G7の中産階級に属する人々にとっては、かつてグローバル化自由貿易は経済の発展を意味したが、フラット化した現代においては、逆に没落を意味する。しかし日本は、資源も無く食料の自給率も低く、自由貿易を反対することはできない。

G7の中産階級に所属する私としては、日本が生き残るには、クールジャパンに代表される世界に歓迎される日本の洗練された文化と、世界の最先端唯一の技術を持つことを発見すると喜び、既成概念を覆すような技術革新を日本企業が次々に行っていることに希望を見出している。そして、BRICsの弱点を見つけても、やはり喜び、新興国が永遠に開発途上国に留まるよう呪詛している。

■日米中人口動態俯瞰(ゴールドマンサックスBRICsリポート)
2003年のリポートで、その後2050年の世界では、GDPは中国44.5兆ドル 米国35.2兆ドル インド27.8兆ドル 日本6.7兆ドル ブラジル6.1兆ドル ロシア5.9兆ドル 英国3.6兆ドル 独3.6兆ドル 仏3.1兆ドル 伊2.1兆ドルと。BRICs全体の経済規模はG6(日米英独仏伊)を追い越すと予測し、新興国投資ブームを生み出した。

このリポートはいち早く今日のBRICs諸国の隆盛を指摘した先駆的レポートして評価できるが、BRICs諸国に対して楽観的過ぎると思っている。なぜなら、新興国は永遠に人口が増えていくことはなく、やがて人口が減少し人ロオーナス期を迎えるという視点に欠けていると思う。

アナリストの経済分析手法に人口動態を鍵としてマクロ経済の成長を分析する手法がある。
人口ピラミッドというのは社会科で習われたかと思いますが、一国の人口変動のなかで、戦争や伝染病等の理由で人口が減少した世代が存在し、戦争終了直後の世代経済発展や医療技術革新で乳幼児の死亡率が下がり、人口が増加した世代。いわゆるベビーブーマー世代などがあり日本や米国などの先進国の人口は、インドのような開発途上国とは違いピラミッドのような形ではなく、釣鐘型になっているとなっています。もっともインドも近年完全なピラミッド型ではなくなってきています。
イメージ 1

出所)U.S. Bureau of the Census, International Data Baseのデータより野村アセットマネジメント作成 (2004年)

生産年齢人口が激増する一方、高齢人口がまだ少ない時代を人ロボーナス期といいます。
企業は豊富な労働力を安く使えるため成長が促進されます。
かつては20代で結婚し30歳前後で子どもが出来、子どもが成長し40歳前後で家を購入するとされました。人生において最大の買い物は家であるならば、人口ボーナスのピークを最大のベビーブーマー世代に当てはめて、経済を眺めると、その国の経済の隆盛と一致します。

ところが、かつて成長を支えた現役世代が50代60代そして後期高齢世代になり、少子化で生産年齢人口が相対的に少なり人口ピラミッドが崩れ頭でっかちな釣鐘状態となります。これを人ロオーナス期といいます。

オーナス(onus)とは英語で「重荷」を意味し、人口オーナスとは人口が経済発展にとって重荷となった状態をさします。人ロオーナスが経済成長に与える影響は、生産年齢人口が急減し、同時に高齢人口が急増する事態のことで、年金など高齢層向けの財政支出が拡大し、現役に高負担を強いる事になります。①将来の労働人口減少により成長率予測が鈍化し、貯蓄の担い手である労働人口の比率低下が、②国民貯蓄率を押し下げ、その貯蓄を原資とする投資率の低下が資本蓄積を押し下げ、成長も阻害されやすくなります。人ロオーナスが、③技術革新や経済改革の勢い、そして経済活力を低下させ、生産性(を押し下げる効果についても同様である。

★日本の人口動態。
【日本の人口ピラミッド推移】アニメーション
イメージ 2

http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/Pyramid_a.html
出所 国立社会保障・人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/

1945年が終戦で1946年~1950年にかけて生まれた世代が団塊の世代で、団塊の世代が40歳前後が日本のバブル経済1986年~1990年にかけてピークであったことが分かります。
もう一つの人口のピーク団塊ジュニア世代実は別の名をロスジェネ世代でもある。彼らが40歳を迎えるのは2010年から2015年であるが、彼らの結婚出産はずれ込み、家を取得するのは2015年~2020年頃になるか、家を取得することができる人間が限られる可能性があることを考えると、ここからの日本の政府の舵取りは重要である。今後の日本経済の成長、いやどれだけ希望が持てるかが重要である。(この話は人口動態に見る「アジアの時代」の終焉でまた取り上げる。)

②アジアの幻想(新興国バブルの終焉)日米中人口動態俯瞰 ~ゴールドマンサックスBRICsリポートは正しいのか? へ続く
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/13147662.html
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②サミットが終わって思う ■FRBの戦い から
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/12699395.html
  
■日本はいかにすべきか?そして株、日本経済の行方。

現状の株式市場はサイコロゼロを経験し、騰落率も60%台の鍋の底をはっている状況であって、短期的にはいつ自律反発していくかの時にさしかかっている。

7月17日頃から米欧の金融機関の決算が発表になるがその辺が大底となって目先反発に向かう可能性だけは十二分にある。

しかし、外国人投資家が7月第一週再び売りこしに転じてきた。
http://www.tse.or.jp/market/data/sector/index.html

外国人の売り越しは、世界的な売りの一環であって、あたかも本格的な外国人離れを言う人違が多くなって不安感が強まっているが、スタグフレーションの指数でもある悲惨指数からいって、外国人の日本株買いのスタンスには大きな変化はないとは思うが、長期的に日本株が上昇する見通しは苦しい。

イメージ 1



日本経済の処方箋は「円高政策」と「賃上げ政策」に尽きる。

日本は米国に輸出して得た貿易黒字分をドルで受け取り国内に還流してきたが、85年のプラザ合意の大幅な円高にもかかわらず、競争力を失わない日本輸出企業の稼いだ外貨は貿易黒字となり、還流した資金は国内に投資され、80年代末日本はバブル景気に沸いた。米国からの貿易問題の圧力は大きく、1995年4月1米ドル80円を切る大幅な円高になった。


輸出企業は、国内にドルで得た代金輸出で得たドルを円に交換して国内に持ちかえろうとすると、日本は輸出超過で海外において保有されている円が少ないのでドル安・円高になる。円高が続くと日本の製造業の競争力が悪化する。米国にそのまま工場を国内に維持していればよかったのだが、米国の製造業は、新興工業国に工場を移し、そういった国は米ドルとのペック制であるため、日本の製造業は、為替+コスト安との戦いであるために、そこで、日本が国全体としてやってきたことは、受け取ったドルを米国に還流することで、円高を回避する方法であった。日本は輸出した代金を米国から回収していないに等しい。そうすることで、円高を回避することは出来るが、日本国内に資金が回らず、失われた10年を迎えてしまったのである。

長引くトンネルから脱出できなかったのは、日本が準備通貨として海外でドル保有していることにより、ドルを支えていれば、日本より利回りの高い米国債などを購入した方が運用上も有利だ。米国以外の国への支払いにも使える。そうしたこともあってドルのまま持ち続けた。

本来、そのドルを為替市場で売却し、円に換えて国内に持ちかえれば、所得や消費を増やし、日本経済は内需を喚起し、もっと高く成長することが出来たはずだ。それを阻止したのは、日銀の三重野であり、土地の総量規制の愚策をやった橋本龍太郎であったが、私は、土地の値上がりにヒステリックに騒いだ、日本国民自身に最大の責任があるのではないかと考えています。

確かに、円安は輸出メー力一にとってはプラスだろう。しかし、日本経済全体にとっては決してプラスではない。米国より資金が還流しないので銀行システムの流動性が不足する。国内でおカネが上手く回らなくなるうえに、実質輸出代金分の資本が回収出来ていないから日本の購買力が失われる。円安で輸入物価が上昇し、消費者の購買力はますます弱まる。日本で最も雇用の多い小売卸などの非製造業の中小企業は、収益基盤の国内市場が円安によって購買力が失われ縮小しているので、利益が上がらず賃金を増やせない。製造業の大企業は輸出で儲けられるだろうが、資金が還流してこないので、国内の賃上げには生かされない。輸出企業が利益を出しても国全体の賃金上昇にはつながらない。賃金が上がらなければ消費は増えない。そうして日本経済全体が落ち込んでいく。つまり、経常収支の黒字が定着すればするほど、逆に、日本経済の活力がなくなり成長カが下がる悪循環に陥ったのであった。日本の民間企業で賃上げが出来る企業はためらわず賃上げを行い、人材を確保すべきである。

一方、資本輸入国の米国は、毎年貿易赤字を続けながら、90年代以降その繁栄を謳歌してきた。日本は海外に工場を移転してまで、優秀で割安な製品を供給し、その上資本まで供給してくれるのだから、米国の消費水準が上がるのは当然だ。米国の繁栄と日本の停滞はワンセットであった。

そして、永年の悪事がたたり米国経済が遂に変調し始め、資源が高騰し始めた。今後の日本は円高こそ、国益とする政策が必要になるかもしれない。

日本の対米輸出は減速し、経常収支の黒字が縮小し、同時に資本輸出は減少する。外需は減退しよう。しかし、日本の内需は弱い。そういう時にはどうするだろうか。手っ取り早いのは、ドルを売って円に換えて国内に持ちかえることだ。これでは、橋龍と同じく米国に首を切られてしまうだろうが、米国が拉致問題を無視し、日米安保条約を踏みにじり、北朝鮮をテロ支援国家から除外しようとしている。

このことは日本にとって千載一遇の、チャンスである。私は日米安保条約は堅持すべきであるとは考えてはいるが、今度は日本が、より同盟関係を強めるのか、弱めるのか米国に対して対等にものが言えるチャンスであり、対等な日米同盟となる、第一歩とすべきではなかろうか?

ドルを防衛したい米国の思惑を最大限に利用すべき時ではないのではないかと思う。日本は着々とその準備に取り掛かっている。日本版HIAである。
http://www.asyura2.com/08/hasan56/msg/572.html


ドルで滞留した資金を日本国内で使えば、円高となり内需が増えて、円高は輸入コストを下げ、輸入コストの減少は、消費者の購買力を拡大する。円高でガソリン代が下がれば、その分は新しい購買力となって新たな消費に向けられよう。これは日本国内景気浮揚にとってかなりメリットがある。景気が浮揚すれば円高を受け入れる方向に動く。

円高による製造業への打撃は避けられない。特に、ドルペック制の韓国企業との競争が激しい半導体、薄型TVは苦境となるかもしれないが、韓国は今、ウォン安の弊害に苦慮しており、チャンスかもしれない。しかし、アジアとの過当競争による価格下落、さらに円高が重なると輸出額は大きく減少する。

日本は輸出頼みの経済では低賃金国との競争を絶えず意識していたため、賃上げには慎重にならざるを得ず、また日本国内の人口減に備え、内需振興のスローガンを叫んでも、内需型経済に転換することに失敗し、日本経済回復の力強さに欠けてきた。逆に言えば、賃金水準を国内で上昇出来るようになれば、消費が牽引する内需の拡大に結びつけることができる可能性を秘めている。

人件費抑制の原価低減ではなく、高付加価値の日本にしかできない価格決定権を獲得している製品に輸出を特化していくことであろう。

現在の資源バブルの時代は、産油国やオールドインダストリーに資金が集中する。資源国における活発なインフラ投資は、今後の世界経済のけん引役となるだろ。巨額の経常黒字を有し、省エネ先進国であり、輸送用機器や建設機械など産油国向けに「売れる」商品を持つ日本は、その中でも恵まれた存在といえる。また、資源国のSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)などの資金を、誰がどうやって惹きつけるかという点にも注目が必要となる。

そうなれば、賃金を抑える必要がなくなる。そうなると内需が喚起され企業としても利益が出やすくなる。所得が増え、消費が増え、消費者の二一ズを満たす新商品が創出されるという好循環に入る可能性がある。

国際間の競争も、いかにしてコストを低くするかではなく、いかにして付加価値を高めるかに切り替えることが必要だ。円高が進むと、製造業は円の手取り額を減らさないようにドルベースでの価格を引き上げようとする。そのためには、品質改良を行う。

金融に勤めている脳天気な人間の戯言かもしれないが、コストダウンの限界を超える円高に対しては、技術革新によって競争の少ない新製品を作り出す。「円高は製造業の新たな面を切り開く」とはそういうことだ。私が知りうる限りそのような企業は数限りなく存在するが、日本経済の浮揚と、国内株式の長期トレンドが上向くには、もう一度円高の洗礼を受けてからかもしれない。

円高政策と、高賃金政策は、日本経済の将来に楽観をもたらし、少子化対策にも役立ち、ついでに財政問題まで解決する可能性を秘めている。

円高によってもっと日本の本来持つ良いほうの可能性が前面に出てくるかもしれない。
円高により購買力が増し、国内市場が拡大すると、世界的なクールジャパンと評価される日本文化を背景に、新技術や新製品の開発がすすむかもしれない。日本の消費者の目が要求した品質の高いクオリティは、たとえガラパゴスと揶揄されても。かまわない。iフォンにはワンセグもついてはいないだろう。

東京は世界的な食の都とされ、京都・大阪・福岡・札幌も含めたら「食在日本」(食は日本にあり)世界一高級な食事は日本食だとも言われている。

日本の山々が緑で青々しているのは、けして環境に恵まれただけではない。江戸時代の人口の爆発期において、厳しい治水山林対策を行い、国土を維持してきたからである。
そして、日本も高度成長期公害問題が今の中国のように各地で問題化したが、元来日本人は八百万の神々を祭る国民であるため、環境問題にも厳しい。環境ビジネスは日本のお家芸として発展していくであろう。

日本人は世界一厳しい消費者で、高いクオリティーと伝統のセンスを持っている。依然日本市場は高い競争力を維持している。クールジャパンは日本の仕組み、制度、文化というものが、世界中に評価されているということだ。日本の文化というのは、世界でも特色のある文化だ。今後も新しい製品や技術がたくさん出てくることが期待出来る。

サブプライムローンで経済に変調を来たしている米国はこれまでのように新興国製品を買えなくなる。円高は、米国に代わる個人消費大国への変容する可能性がある。円高政策を打ち出せば、米ドルに代わり円を持とうとする国が増え円の流通量が増え、いずれはこけるであろう、ユーロや中国の人民元より、通貨としての価値は認められるかもしれない。世界的な個人金融資産を持ち、資産価格もしっかりしてくる。日本は衰退するのではなく、米ドルに代わって20年後基軸通貨になっている可能性もある。(基軸通貨には軍事力の裏づけが必要なので核兵器保有と憲法改正が前提だが・・・日本では無理か)


とはいえ、日本の輸出偏重の外需主導型の経済はそう簡単に止めるのは難しいだろう。
貿易黒字は製造業にプラスに見えるが、国全体の利益を押し下げて、結局、製造業の利益にならない可能性がある。「貿易黒字、円安政策」という産業構造を日本は真剣に再考すべき時がやってきたかもしれない。

①サミットが終わって思う。■米国のジレンマ へ戻る
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/12699034.html
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①サミットが終わって思う。■米国のジレンマ より続き
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/12699034.html

■FRBの戦い

投資家は神頼みでも済むが、政策担当者はそうもいかない。欧州中央銀行(ECB)の定例理事会は7月3日・昨年6月以来、13ヵ月ぶりにユーロ圏15力国に適用する政策金利を0.25%引き上げ年4.25%とすることにした。

重要なのは記者会見で、ECBのトルシエ総裁は、今後の金融政策について「ノー・バイアス(方向性はない)」と発言したことである。金融市場で浮上する追加利上げについては否定とも肯定もしないが、追加利上げは無い意味であると市場は判断した。

先日のブログにも、7月1日にトリシエ総裁とポールソン米財務長官の会談が重要になると書いたが、効果はあったようだ。7月1日の会談で、ポールソン米財務長官は次回の利上げ示唆だけは絶対避けてほしい、「ユー口がユー口圏のみの利害にとらわれた金融政策を続けていては世界のマネーはうまく作用しないであろう。」と懇願したのか、ユーロ圏では、物価が高止まりする一方、足元の経済指標は悪化しつつあり、ECBは来年にかけて政策金利の据え置きをせざるを得ないことを材料に説得に成功したのか?真相は定かではないが、ポールソン米財務長官は、ドル安阻止のためにECBは通貨利上げを示竣させないことに成功したようだ。

事実、ユー口圏は東欧やスペインなどの労働コストに上昇圧力がかかるので米国よりインフレ圧力は強く、今回の0.25%の利上げが7~8ヵ月後のユー口景気に重い雲となることは間違いない。そのため欧州では景気失速と物価上昇が同時に起こるスタグフレーションのリスクが米国より強い。ECBは来年にかけて政策金利の据え置きをせざるを得ないであろうし、場合によってはユー口圏の景気減速でユー口は利下げに追い込まれるのではないかと思う。年後半から景気が悪化するECBは来年9月までに1%一1.25%の利下げをするのではないかとの見方も強まってきた。

現状・ECBは実際に利上げし・FRBはインフレ警戒のメッセージを発する手法でこの場を切り抜けようとしている。ただ、FRBはインフレが次第に収束すると考えているようである。現時点では誰も予想できないかもしれないが、来年には世界経済がさらに減速し、その段階で各国中銀は利下げに転じる可能性すら考えた方がいい。FRBは当然石油価格も下落している前提だと思うが・・・・・・。

FRBの政策のおかげで、とりあえず悪い悪いと言われていた米国の景気も6月の雇用統計はほぼ予測の範囲内で、雇用状況は懸念したほど悪くなかった。

ニューヨーク原油先物相場が過去最高値を更新し続けるなか、米国が原油市場の投機マネー抑制に本腰を入れる動きも米議会で本格化し始めている。米商品先物取引委員会(CFTC)が投機マネーの監視強化や実態の解明にのりだしており、米議会でも複数の議員が投機マネー抑制の法案準備をしている。原油相場については、現状上昇が止まらないが、150~160ドルにでもなれば、需要が一段と減り、在庫が積み上がり、来年1~3月には1バレル90ドル~100ドル程度まで下がる可能性にFRBは期待をかけているのだろう。

米国が秋以降利上げに踏み切れば流動性資金の回収に入ることになり、ドル高となるので原油と商品相場は一気に急低下していくことになろうが、FRBの舵取りは極めて困難である。こちらも、バーナンキの舵取り頼みである。

それにしても、フレディーマックとファニーメイの問題は最後は国営化する以外救済することは難しいだろう。
[ワシントン 11日 ロイター] 米ホワイトハウスは11日、政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)について、議会が新たな監督関連法案を承認することが現時点で「最善策」だと述べた。

 ホワイトハウスのト二ー・フラット報道官は「ファニーメイとフレディマックについて現時点で達成可能な最善策は、GSEを監督する上院版の法案を議会が承認し大統領に送ることだ」と述べた。

 ニューヨーク・タイムズ(NYタイムズ)紙の報道について問われた同報道官は「内部の協議」とし、コメントを控え、ブッシュ大統領の経済顧問が「市場を常に注視している」と述べるにとどまった。

 NYタイムズ電子版は10日遅く、ブッシュ政権の複数の高官が、ファニーメイとフレディマックについて、問題が悪化すれば1社もしくは両社を政府の管理下に置く計画を検討していると報じた。この計画について説明を受けた複数の関係筋の話として伝えた。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-32715920080712

③サミットが終わって思う■日本はいかにすべきか?そして株、日本経済の行方。 へ続く
http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/12701979.html

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