イメージ 1出口の見えない不況、きつい人間関係……。
 
この時代をどのように生きぬいていったらいいのか。
 
困難に直面した人たちが絶望せずに生き続けたのはなぜか。
 
心の中の回復していく力とは。誰もが「弱者」にならうる時代に届けたい1冊。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
江川紹子さんといえばオウム事件で有名になりましたが、言わずとしれた日本の女性ジャーナリストの第一人者です。
 
時に左翼的な彼女の主張に私は違和感を感じることもありますが、ジャーナリストとしての彼女の視点を私はとても尊敬しています。
 
彼女が本書で取り上げたのは、「郵便不正事件」で無罪となった村木厚子さんと、アフガニスタンの軍閥に人質にされ解放された常岡浩介さんです。
 
二人とも拘束された極限状況の中を生きて、ともすれば絶望に陥りがちな状況を長く経験したにもかかわらず希望をもって生き続ける勇気について紹介しています。
 
 
 
このお二人は特別な人というのではなく、印象は二人とも物腰の低い極普通の人だといことです。でもお二人とも元気で、江川紹子さんは極限でも絶望しない生き方を分析されていましたが、物凄く秀逸です。ですが、これをコピペすると薄い本なので著作権違反にになってしまいそうですので・・・要約します。
 
楽しみをみつける

まず一つは、どういう状況でも楽しみをみつけるということです。

たとえば、村木さんの場合、逮捕、起訴されました。他の人、つまり検察の調書を言うなりに認めた人は、起訴されるとどんどん保釈になるわけですよ。拘置所にずっと留め置かれて、いつ出られるかわからない。検察庁だけでなく、裁判所もなかなか保釈を認めなかったのです。そういう意味では、裁判所は責任があると思わなければいけないと思うんですが。
 
さて、いつ出られるかわからないというときに、彼女がやったことは、まず、体を壊さないこと、これを目標にしたというんですね。また彼女は本を読むことがとても好きなので、こういうときでもないと、なかなかじっくり本を読めないから、長編ものでもじっくり読もうと思った。
拘置所にいる間に一五〇冊くらい本を読んだらしいのです。
 
そして拘置所ではラジオが入るのだそうです。ニュースだけではなくて、いろんな番組があって、夜は大阪の拘置所なので、野球の阪神戦の中継がある。村木さんは、それまで野球にそれほど興味はなかったのに、聞いているとだんだんルールがわかってきた。で阪神戦ばかりやっているので、阪神ファンになりましたと言っていました。いつ出られるかわからないという拘置所のなかでも、自分のいまある環境のなかで何か楽しみをみつけるというのは、すごいなあと思いました。

常岡さんは自分を拘束している人たちと話をして、あるとき、魚がたくさん釣れたことがあったらしいのです。早く処理しなければいけないということで、常岡さんが魚なら日本人に任せろ、と言ってたくさん魚をさばいてあげたそうです。あるいは、ムスリム圏の人たちは、トイレで紙を使わずに水で流すことが多いらしいのですが、その人たちは水をつかわずに土でこすったりしていた。そういうのっておもしろいですねと、ニコニコしながら、文化のちがいをみつけておもしろがっているというところもありました。そういう究極の環境でも、常岡さんは楽しみをみつけるすごい人だなと思いました。

無理に勝とうとしない

二つ目は、無理に勝とうとしないことです。相手がいることですけれども、勝とうとしない。でも自分の原則は曲げずに、あとは柔軟に対応するということです。
村木さんは検察官の取り調べをうけているときに、弁護士から「ここは検察官の土俵だ」と言われるわけです。だったら私に勝てるわけなんかないじゃない、ということで次に何をやるかというと、勝てないんだったら、せめて負けないようにしようと思ったんだそうです。
負けないことってどういうことかというと、心にもないこと、自分の経験していないことを言わないこと、それだけは原則として曲げない。
だけど相手を説得するということはもうできないだろうということで、聞かれたことには精いっぱい答えるけれども、一生懸命説得して相手の気持ちを変えようということは最初からしないと思ったんだそうです。負けないということだけをしようとしました、と彼女はおっしゃっていました。自分の原則は曲げない、それを守りつつ検事にはきちんと話したそうです。

常岡さんは、相手を説得しようもないわけです。ですから、相手となるべく会話をするなかで、日本はムスリムの国を侵略したことはないよ、という話だけはしていたそうです。とにかくじっくり待とうということで柔軟に対応していました。

これを読んで、先の二人に通じるところがあり、無理に相手に勝とうとしない、でもゆずれないところがある、というのが勇気をもつひとつの源かなと思いました。

強いプロ意識

三つ目に二人に共通しているのは、非常に強いプロ意識があったということです。自分の仕事に対する、意識、誇りをもっていた。
たとえば、常岡さんは、拘束されたときにカメラも財布もぜんぶとられてしまったそうです。
それからメモ帳もペンも。結局ぜんぶ返ってこなかったそうですが、とにかくメモさえとれない状況だったのに、そのわりには、何日に何があったと、とてもよく覚えています。細かく言うんです。
どうして覚えているんですかと聞くと、今日は何日だ、ということを毎日見張りの人と話して、それから何をやったと、一日目からぜんぶ反すうしながらいたというんです。頭のなかに書いているメモ帳を常に読みあげているという状況です。常岡さんはその記憶をもとにいま文章を書いているそうなので、何が書かれているか、とても楽しみにしているわけです。

彼女(村木さん)は労働省で仕事を始めた人なのです。拘置所に入っても(刑務官の)労働条件のことを考えているなんて、ああこの人はプロだなと思いました。
そういう意味では、仕事に誇りをもってやってきたということが支えになったのだろうと思います。

自分を見る客観的な視点を見失わない

四つ目は、自分を見る客観的な視点を見失わないということです。冷静さというものも、失わないでいる。現状はどういう状況にあるのかということを、常に冷めた目で確認している。
たとえば、村木さんは逮捕されて、検事から「あなたは確実に起訴されます」と言われます。

そうすると、起訴されて裁判なんかやりたくないと思うけれども、やりたくないと考えてもあまり意味はないだろう、それではそういうことを念頭において物事を考えていこうとします。
客観的に、余計な希望を考えないようにしようという、あるいは、こんなことさえなければ……となくなったもののことを考えていまの不幸を思っても意味があるのか、と思い、とりあえず、いまの状況にどう対処すればよいのかということを考える。彼女はどうして、そういうふうに考えられるようになったかというと、共働きで、子どもが二人いたことによるそうです。
ところが、村木さんは上の子どもがまだ小さいときに急に海外出張を命じられ、子どもを保育ママさんに、一カ月近く預けて海外出張に行ったそうです。だから、どうしようどうしようと思うことはたくさんあったけれども、考えているのではなく、とりあえず、いまできることに集中して考えるという癖がついたのだろうとおっしゃっていました。

考えてもしかたのないことはとりあえず置いておいて、いまできることは何なのか、いまあるものは何なのかということを考える。

逮捕されて、彼女は自分の地位を失いました。そのなかで家族との絆を再確認したり、自分はいままで漫然と生きてきたけれども、自分のことを信じてくれる人がこんなにたくさんいるということに気づいたりする。失ったものを嘆くのではなく、いまあるものを大切にしたということが、彼女を冷静なままに保っていったのだと思います。

常岡さんも冷静さを失わないで、自分の置かれた状況を考えて、次にどうするかということを考えたそうです。

彼自身もイスラム教徒なので、身代金をとることに失敗したときに殺されなかったことから、その後は殺されるということは別の理由が出てこないかぎりないだろうということを分析して、これからのことを考えていたということです。

ラマダンが終わるとお祝いをするんです。その楽しいときに、「常岡を粒致したのは、金をとるのが目的だったのに、金を取るのに失敗して、もうお荷物だ。こういう不景気の元凶みたいなやつを抱え込んでお祭りに入るのは、不愉快だ」と考えると思うので、そのときが解放のチャンスだと思ったそうです。

常に自分を客観的にみて状況を冷静に判断するなかで、どうすれば解放されるか、いうことを考えることができたのだろうと思いました。
何を目標にして生きていけばいいのかと

人間関係をつくっていく力

五つ目に、コミュニケーションをとる力が大きかったと思います。コミュニケーションをとる力というと、最近は、言いすぎだという人もいますが、私がいま一言っているのは、プレゼンテーションで自分をよく見せようといっているわけではなく、人間関係をつくっていく力ということです。

常岡さんは、自分を拘束した人といろいろと話をしているようです。

常岡さんが、これ(拘束していた司令官の携帯電話)を使ってインターネットができるんだというと、そのインターネットをやってみろと言われたので、電話会社に連絡をとってインターネットをつなげるようにした。
村木さんは、拘置所というすごく制約の多いところではありますが、これは自分のふつうの生活とは違うと割り切って、拘置所の看守の人たちとも会話をしながら、あたえられたなかで快適にしていたそうです。

人と人との関係をつくっていくことが、なにか勇気を持ち続けることにつながるのかなと思います。
  
本書は3.11前に岩波から出版された本です。普通は岩波出版と言うだけで私は本を手に取りませんが、香山リカさんと江川紹子さんの共著ということで読んでみた。彼女達はどちらかといえば政治思想的には私と意見は違います。
 
しかしながら、心が折れた時、彼女達の優しさが感じる書籍を読むと心が癒され元気になります。3.11以後お二人の共著は心に沁みるのであります。
 
最後に、本書で紹介されていましたが四〇年以上前の強盗殺人事件(布川事件)で免罪となった桜井昌司さんが獄中で書いた「空」という詩があまりに素晴らしかったので紹介します。

空は

足もとから始まっている

そう思えたとき

いつも見上げていた

希望やしあわせが

自分の隣にあるのも気付いた

空は

空は足もとから広がる