日本の政府と民間が一体となって新興国向けに、従来の半分の100億円弱で小型衛星を製造して打ち上げるサービスを売り込む。NECが東京都内に国内最大級の衛星工場を新設してコストを抑制。IHI子会社などが小型ロケットで打ち上げ費用を抑える。官民が協力して、年間13兆円とされる宇宙ビジネスで先行する米欧勢を追い上げる。

イメージ 1 内閣府の宇宙戦略室が次期宇宙基本計画の柱として、ベトナムやタイなど東南アジア向けの衛星打ち上げ事業推進の検討に入った。衛星の製造とロケット打ち上げの総費用を大幅に抑制できるメドがたったことから、2013年度以降、官民で営業や生産の体制を整える。17年度以降に年4基程度の打ち上げを狙う。

衛星を製造するNECは約100億円を投じて同社の府中事業場(東京都府中市)に新工場を建設する。同工場は延べ床面積が9900平方メートルと大きく、1.2トン程度の小型衛星を同時に8基製造できるようになる。

宇宙空間を疑似的につくりだす大型の試験設備を備える。センサーなど基幹部品の製造から耐久試験まで一貫して手掛け、地上にデータを送る通信機器といった基幹装置の部品標準化も進める。この結果、従来より2割安い約60億~80億円で供給できるという。

一方、打ち上げ用小型ロケット「イプシロンロケット」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHI子会社のIHIエアロスペースが開発。13年夏、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)で初号機を試験的に打ち上げる予定だ。

JAXAの計画では、国産ロケット「H2A」の補助ロケットなどの技術を活用することで、費用をH2Aの3分の1以下にする。試験発射の段階でノウハウを蓄積し、打ち上げの際の自動化を徹底して人的コストも削減する。また点検や管制業務の作業を簡素化して、打ち上げまでの作業期間を従来の7分の1の6日に短縮する見通し。本格運用する17年度以降は30億円以下での打ち上げが可能になる。

小型衛星用のロケットは、米国、欧州などが既に保有している。小型衛星はアジアの新興国を中心に、地震や津波、台風など災害監視用の衛星打ち上げ需要が見込めることから、各国が受注にしのぎを削っている。衛星製造とロケットの打ち上げ費用が従来の半分程度になれば、米欧の宇宙大手と比べても価格競争力を確保できる。日本は政府開発援助(ODA)などを含め、官民一体での売り込みを強める方針だ。
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2012年の直木賞作品 池井戸潤氏の下町ロケットを昨年暮れに遅ればせながら読んだ。いや、これまた読み始めたら止まらない一気読みできる作品でした。
「下町ロケット」の魅力は、日本の中小企業の限りない可能性と過酷な現実をリアルに描いている事です。丹念に物作りをする日本の中小企業の魅力と開発者達の夢が詰まった物語ですが、次から次に襲う無理難題!それをひっくり返し逆転に次ぐ逆転の爽快な物語です。日本のビジネスの弱点でもある特許ビジネスの大切さを警告する側面もある。技術開発においての特許の重要性・良い特許と悪い特許の違い・特許によるビジネス等が、実にわかりやすくエンターテイメント満載で書かれています。でも事実は小説より奇なりというくらいですから、開発の現場では日々このようなことは起きているのかもしれません。そのようなことを感じさせる優れた作品でした。
東京都大田区の町工場街にある、佃製作所の社長の佃航平は、元・宇宙航空科学開発機構(JAXA)のロケット開発主任だったが、宇宙ロケット打ち上げ失敗の責任を取って、実家の町工場を継ぐ。

実家の町工場では小型エンジン用のバルブを製造していたが、大口客先との取引を失って赤字転落した上に、大手メーカーから特許侵害による巨額の損害賠償訴訟を起こされ、先行き不安になっていたところ、運よく特許訴訟のエクスパートの弁護士が見つかる。

弁護士のアドバイスで、今まで取得していた特許の周辺特許まですべて抑えるという特許戦略に転換すると、思わぬ大魚が釣れる。

日本の宇宙開発を代表する「帝国重工」の宇宙ロケット開発部隊だった。帝国重工は自社開発のバルブの特許を申請したところ、佃製作所の特許があるために特許が認められなかったのだ。

ロケットはバルブを多数使用する。佃製作所の特許がないと帝国重工は世界の宇宙ロケット開発競争で優位に立てないことがわかった。

帝国重工の財前宇宙航空部宇宙開発グループ部長は赤字経営の佃製作所に乗り込み、バルブの特許を20億円で買いたいと持ちかけるが…。

「佃品質、佃プライド」を合言葉に、自社部品を供給してロケットを飛ばすという夢を実現したい佃と、ライセンス料を払ってキーコンポーネントは内製したい帝国重工のせめぎ合い。

佃の製品にケチをつけて、あわよくば不合格にしたい帝国重工の監査チームに、佃の元銀行員の財務責任者が通告する。

「なにか勘違いされていませんか、田村さん」、「そんな契約などなくても、我々は一向に困ることはありません。どうぞ、お引き取りください」…

町工場の職人が手作業でつくる部品は、大手メーカーの機械でつくる製品よりはるかに品質が勝っていた。ところが、思わぬことが起こる…。

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※ドラマと本とでは若干登場人物が異なるようです。
下町ロケットの話は液体ロケットの最重要部品(キーデバイス)であるバルブ制御技術をめぐる話で、イプシロンロケットは固体ロケットなので同じロケットといっても根本的に異なる技術の話なのだが、もしかすると日本は固体ロケットで、マーケットを征するかもしれません。日本のものづくりの未来は明るいかもしれません。