特定秘密保護法案の修正案が11月26日衆議院本会議で可決され、参議院での審議が開始された。

山田肇

特定秘密保護法案が衆議院を通過し、参議院での審議が始まった。マスメディアを中心に依然として反対意見が多く聞こえるが、僕にはよく理解できない。

反対意見の第一は「対象範囲があいまい」である。法案は対象範囲を防衛・外交・特定有害活動・テロリズムの四分野としているのだが、これの何があいまいなのだろう。法案中の「その他の重要な情報」という表現をとらえて、恣意的に何でも指定される恐れがあるというのだが、与野党合意で「その他の重要な情報」のいくつかはすでに削れられた。そもそも、すべてを列挙するのが不可能な場合に、法律では「その他」が用いられる。しかし、「その他」として含まれるのは、その法律の目的の範囲にある場合に限られ、拡大解釈は許されない。

福島での公聴会では、原発に関する情報が特定秘密として秘匿される恐れが繰り返し指摘されたようだが、原発情報であっても、四分野に関わるもの以外を秘匿できないことは明らかだ。原発の設計図は特定秘密にはならないと政府はすでに答弁している。政府は原発輸出を進めているが、輸出の際には設計図を相手国に渡すのだから、特定秘密に指定できるはずはない。

鳥越俊太郎氏や岸井成格氏らが反対集会を開いている。これらの人々が繰り返し言及するのが西山事件である。しかし、西山事件が起きたのは1972年、40年前の出来事である。僕には、他に言及できる例がないから西山事件を持ち出しているとしか思えない。特定秘密保護法はまだ成立していないのだから、今なら、政府が秘匿し国民が不利益を被っている情報を抉り出し報道することができる。報道によって、事実をもって法案の危険性を指摘するのが、反対するジャーナリストの責任ではないか。

衆議院での参考人質疑では、田島泰彦上智大学教授が反対の立場で発言している。田島教授はアルジェリア人質事件で被害者名公表を要求し、橋下徹大阪市長についての週刊朝日差別報道の際には、サンデー毎日で「橋下氏の本質に迫るためのノンフィクション的な一手法」とコメントした人物である。一方で「監視社会を拒否する会」の代表者として街中への防犯カメラ設置に反対する。自分のプライバシーは徹底的に守る一方で、他人のプライバシーや防衛・外交などの秘密暴露は躊躇しない田島教授のような人物しか参考人にできない反対派には説得力はない。
衆院本会議で特定秘密保護法案が与党とみんなの党などの賛成多数で可決。

▽特定秘密は(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ活動防止-の4分野で安全保障上必要なもの。安全保障を「わが国の存立に関わる外部からの侵略に対して国家、国民の安全を保障すること」と定義

▽特定秘密を漏(ろう)洩(えい)させた公務員らへの罰則は最高懲役10年

▽特定秘密の有効期間は上限5年で、政府が必要とすれば更新が可能。期間が30年を超える場合は内閣の承認が必要。原則として期間は最長60年に限る

▽60年を超えて延長できる例外は「暗号」「人的情報源」「武器、航空機などの情報」「情報収集活動の手法、能力」など7項目

特定秘密は行政機関の長が指定。特定秘密を5年間指定しなかった行政機関は指定資格を失う

▽特定秘密の指定や解除の基準が安全保障に資するかどうか独立した立場で検証、監察する新たな機関の設置を検討

▽衆参各院や各委員会が秘密会などで公開しない場合、特定秘密の提供を義務付ける。特定秘密の取り扱いや保護措置は国会で検討。政府は毎年、特定秘密の運用状況を国会に報告し、公表

▽首相は毎年、特定秘密の運用状況を有識者に報告し、意見を聴かなければならない。首相は特定秘密の指定や解除、公務員らが秘密を扱えるか調査する「適性評価」が適正に実施されているか行政機関を指揮監督する。必要があれば説明を求め、改善を指示
私も特定秘密法案について熟考したうえで、賛成もやむを得ないと結論をだした。
国には「知る権利より「知らさない権利」、いや「知らさない義務」が国にはある。インテリジェンスの側面から考えると、スパイ防止法がない、日本において、公務員は情報を外に情報を漏らさないのは当たり前のことだ。
日本は他国と比較して、情報漏洩に対する処罰がかなり軽い。守秘義務規定に違反した公務員の処罰は、現在はせいぜい懲役1年だ。それより厳しい処罰を受ける可能性があるのは自衛隊の職員だけで、防衛機密の漏洩は懲役5年、その機密情報が日米安保条約から得たものである場合は懲役10年の刑が科されるだけだ。まさにスパイ天国である。
特定秘密保護法は、国家にとって特に秘匿が必要とされる安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、これを漏らした公務員らに罰則を科すというものだ。この法案に対しては「秘密の範囲があいまい」と反対派は指摘している。
もう一つ官僚が、安全保障にかこつけ都合の悪い情報を拒む可能性がある。
政治家が、官僚の言うことをチェックする為に第三者、学者に相談しようとしても漏洩につながるなどどうもまだ問題がある。インテリジェンス上秘密にすべき情報と、官僚が自己保身をするような情報をきちんと分別できるかどうか・・・・
制度設計もいいかげんなうえに監視機関が曖昧なので運用は非常に難しいかもしれない。反対派の意見も確かに一理ある。
しかしながら、この法案が廃止されれば、日本のインテリジェンス能力に悪影響を及ぼす。この法案については運用しながら適宜改正していくべきではないかと思う。
特定秘密保護法案をめぐり、安倍晋三首相は26日の衆院国家安全保障特別委員会で、特定秘密の指定や解除の運用状況をチェックする第三者機関について「私は設置すべきだと考えている」と前向きな意向を表明した。第三者機関設置は日本維新の会が強く求め、首相も応じた形だが、特定秘密をどこまで開示するかなどの制度設計は未定のまま法案は採決された。

与党は維新との修正協議で第三者機関の設置に難色を示し、修正案では付則での「設置検討」にとどめていた。だが26日、確約を迫った維新の山田宏衆院議員に対し、首相は「設置すべきだ」と表明。官邸側の事前の打ち合わせでは想定していなかった答弁だった。

そもそも第三者機関の扱いは政府原案に明記されず、野党との修正協議の過程で急浮上した。首相は法成立後、内閣官房に第三者機関設置に向けた「準備室」を設け、そこで具体的な検討に着手することも明らかにしたが、準備不足は否めない。

実際に設置した場合、特定秘密を知る立場になる人物の選定基準や適性評価の実施、特定秘密の開示の是非などの課題があり、運用面に不安を残している。
当初の政府案では盛り込まれなかった第三者機関の設置だが、野党との修正協議後、付則において「設置検討」するとされた。準備不足は否めず実際の運用に不安を覚えます。
日本主戦後今まであまりにもインテリジェンスに問題がありすぎた。
日本は元はインテリジェンス大国であった。日露戦争の時に明石元二郎大将(当時の階級は大佐)が、当時の国家予算は2億3,000万円程であった中、山縣有朋の英断により参謀本部から当時の金額で100万円(今の価値では400億円以上)を工作資金として支給されロシア革命支援工作を画策し、ロシア革命は明石元二郎の力によるところが大きい。
戦前もインテリジェンス能力はけして低くはなかった。陸軍中野学校を最後に戦後日本のインテリジェンス能力は格段に下がってしまった。戦後地下機関は存在したが各情報機関が内閣情報会議や合同情報会議に重要な情報を提出することは少なく、直接、内閣官房長官や首相補佐官に伝えられるが多くはない。そのため、実際に機能しているとはいい難い。
特定秘密法案は自衛隊の諜報機関を有効に働かせることができる。
日本が戦争を本気で回避したいのであれば、インテリジェンス能力を向上させるべきなのである。この特定秘密法案を反対する人はプロ市民でオスプレイに反対し、原発に反対する護憲派の人が多い。まあ・・・戦争反対と念仏のように唱える。そういった人たちは論理ではなく感情で反対している人達だ。特定秘密法案は問題があるが、そういったこの法案に反対する人達の多くはクソだと思う。