コラム:貿易赤字と訪日外国人数が語る「未来図」
ロイター】2014年 07月 25日 14:31 JST

田巻 一彦

[東京 25日 ロイター] - 2014年上半期の貿易赤字が過去最高の7兆5984億円になった。一方、同じ時期の訪日外国人数が過去最高の626万人にのぼった。この2つの数字から浮かび上がることは、国内製造業の空洞化とそれを埋めるヒントが外国人観光客にあるということだ。

国内観光を振興するだけでなく、購買傾向から「ヒット商品」を生み出すことが可能になり、それが新しい産業を生み出す力になると予想する。

<輸出不振に自動車の陰>

貿易赤字の急増には、原子力発電所の休止によるエネルギー輸入の増加だけでなく、輸出の低迷が大きな要因として存在する。

政府・日銀はいずれ輸出は回復するとの見通しを維持しているが、6月は前年比マイナス2.0%と落ち込んだ。東南アジア諸国(ASEAN)経済の減速などが影響しているようだが、詳細にみると別の姿も浮かんでくる。

例えば、対米自動車輸出は米自動車市場が活況にもかかわらず、減少傾向が続き、6月も前年比7.5%減となった。

この背景にあるのは、ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)、マツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)などのメキシコ工場が今年初めから本格稼働し、輸出拠点になっていることだ。野球に例えれば「四番打者」の自動車の国内生産能力の低下は、世界景気が回復しても、輸出が増えない可能性を強く示唆している。

かつての主軸・電機は、すでに輸出産業の座から滑り落ちており、輸出のエンジンは、外側からの見た目に比べ、かなり出力ダウンしているのが実態だ。

ここで市場の一部には、自動車メーカーなどは連結ベースで利益を出しているのであるから、貿易赤字を悲観することはない、との声も出ている。確かに株価から見れば、そういう結論になっても不思議ではないが、国内の雇用という面からみれば、生産設備の海外移転は、決して楽観できない点を含んでいる。

<訪日外国人からのプレゼント>

それでは、打つ手はないのか──。そこで注目すべきは、もう1つの今年上半期のデータである訪日外国人の増加ぶりだ。政府は2020年の東京オリンピックを1つの目標として、年間の訪日外国人数を昨年の1000万人から2倍の2000万人に引き上げようとしている。

外国人観光客の増加は、国内観光産業に関連する雇用を増加させ、関連する生産の引き上げに大きな影響を与える。

特に高齢化を背景にした人口減少に悩む地方経済にとって、美しい環境は貴重な観光資源になり、再活性化への大きなきっかけをつかむことになるだろう。

外国人観光客増加の効果は、実はそれだけにとどまらない。米国のビッグデータ活用などに詳しいエコノミストの斎藤満氏は、訪日外国人が国内で購入した物品の傾向を分析することで、新しいヒット商品を見つけ出すことができ、それをきっかけに新たなビジネスが生まれる可能性が高まると指摘する。

訪日外国人の購買データを集積できれば、個々の企業がわざわざ、NYやパリ、ロンドンなどにアンテナショップを作って、試験的なビジネスをする手間を省くことができる。

また、斎藤氏は「米国に比べて遅れているビッグデータ集積と解析システムの構築、そのデータをビジネスに活用するノウハウの大きな習得チャンスになる」と指摘する。

外国人への販売が伸びることは、見方によっては「輸出の増加」と捉えることもできる。また、日本で購入した高級な果物の人気が海外で広がれば、それを捉えて輸出増加の計画を展開することもできる。

訪日外国人の増加は、「一石何鳥」にもなり得る「宝の山」と言っても言い過ぎではないだろう。

経済のグローバル化と企業の多国籍化が急速に進んできたこの10年、国家や政府という概念とのズレが、かつてないほどに顕在化してきた。貿易赤字の増大と好業績の輸出企業の共存は、そのことを浮き彫りにした。

だが、国家の枠組みから簡単に離脱できない国民のベースでは、雇用の減少は大きな脅威だ。その穴を訪日外国人の増大をきっかけに埋める方向になれば、「暗い未来」ばかりを想定せず、「明るい将来」を展望するきっかけになると指摘したい。

●背景となるニュース

貿易収支、上半期の赤字が半期ベースで過去最大=財務省 [ID:nL4N0PZ02E]
最近街を歩けば沢山の外国人旅行者にを見かける。改札機の前で困ってたり、地図を広げている外人さんを見ると、時間があるときは声をかける。
その昔は英語でMay I help you? と聞けばよかったが、最近は非英語圏の人も多いので日本語でまずは声をかけています。結局、たどたどしい英語で会話するのだけれど、一応目的は達成できます。東南アジアの方々は一応日本語を理解する人が多いので英語で話しかけるより日本語の方がよさそうです。

ネットでも外国人による日本愛の記事を多く見るようになりました。


などなど、日本愛で溢れるサイトが大流行です。テレビでも和風総本家だとか、Youは何しに日本へ など、日本人の愛国心というよりは日本のことを日本人に理解させる番組もだいぶみかけます。バラエティ動画を視聴!バラ動画 


昨年日本にやってきた外国人の数1000万人を達成した。我が国の国際観光産業は、2020年のオリンピック誘致の成功もあって、日本最大の成長産業になっています。

1000万人の訪日外国人が達成できたのは円安傾向で、外国人にとっての相対的な観光コストが下がっていること、格安航空LCCの本格的なスタートにより、外国人にとっての日本への観光旅行コストが下がっていることが大きい。特に富裕層が増えつつある東南アジアからの観光客、そのなかでもタイやマレーシアは訪日のためのビザを免除したことで大きく伸びた

訪日客が1000万人になると、名目国内総生産(GDP)は2.6兆円増え、2012年比でGDPを0.1%分押し上げる見通しで、これは大きい。「サンリオピューランド」では、外国人観光客はなんと前年比5割増となって、発足以来、初めて営業黒字を計上した。
 
訪日外国人がよく訪ねるのが、東京から富士山に立ち寄り、京都や大阪へ向かう「ゴールデンルート」と呼ばれるコース。人気のある訪問地は東京、京都、大坂、北海道、沖縄、箱根、広島、長崎、奈良、名古屋、日光だという。私が住む横浜が入っていないのだが、横浜や神戸といった日本における異国情緒が楽しめる都市は外国人からすれば人気は高くはないのだろう。

1000万人を突破したとはゆえそれでも世界の観光立国とは比較にならない。国際観光客到着数によるとフランスは8000万人、米国7000万スペイン・中国は6000万人、イタリア・トルコ・ドイツ・イギリス・ロシア・タイ・・・・観光客が訪れる。日本はようやく27位である。

日本社会が海外から観光客を引き受ける体制が整っていない。レストランなどでも外国人客が来ると言葉が出来ないからといって立ち往生してしまう店員は少なくない。まったく外国語が話せなくても、臆することなく「これがお勧めです」と身振り手振りでコミュニケーションする中国の店とはだいぶ様子が異なっている。

政府は、2030年に訪日観光客3000万人を超えることを目標に据えている。また、オリンピックで多くの外国人観光客の来日が予測されることから受け入れ体制を整えなくてはならない。日本国内はWiFi環境が整っていない為早急な整備が必要だ。海外カードが使えるATMや通貨両替所の数など、「観光立国」実現のための日本側の受け入れ整備が急がれている。



観光客増の価値は、人口減少傾向にある日本にとって、非常に大きい。滞在人口が増えることは、国内消費が増えることそのものだ。だが、観光立国は、日本経済再生に資するだけではない。訪日外国人の数が増え、日本の文化・生活・食材などを体験してもらうことで日本のファンを増やし、日本のブランド力、世界における日本の存在感や発信力、ひいては外交力を高めるものだ。観光立国との連動におけるポイントは、「アジア」と「ローカライズ」だ。外国人観光客を増やすためには、近隣であり、成長の著しいアジア各国が最大の顧客となる。そういったターゲット国に対して、ドラマなどのテレビ番組、ゲーム・マンガ・アニメ、ファッション、日本食、デザイン、ハイテク製品などの日本関連コンテンツのローカライズ(字幕・吹き替え・現地規格への対応等)を進めることが日本ブランドの浸透を促す。ぜひとも、3000万人目標を早期に達成し、さらなる高みを目指したい。


 政府が行った訪日観光客へのアンケートでリピーターとなる理由のトップは「自然の景色」で、次いで「特別な興味の対象となる店や場所(IT グッズ、アニメ、コスプレ、その他)」である。このことは外国人観光客は都市部の特別な場所以外では都市部自体から離れた、ありふれた里山や自然の多くある場所にもっと行きたがっていることを示唆していると考えられる。豊かな自然や独自の文化、洗練された都市、世界から高く評価される和食など、潜在的な観光資源でいえば、日本は世界トップクラスの観光立国となる可能性を持っているはずだ。


日本には、各地域に魅力ある観光資源が多数存在する。しかし、外国人にとってなにが面白く、興味を引かれるかは、当の日本人にはなかなか分からない場合が多い。

外国人観光客にとって東京での最大の観光名所は築地だ。だが、こういう感覚は我々日本人には分からない。同様に京都の俵屋や吉兆は、外国人観光客からの人気が近年非常に高まっている。吉兆の外国人客は以前10%程度だったものが、最近は25%、4人に1人まで増えているという。

佐賀県神崎市白角折(おしとり)神社境内に樹齢1000年の楠の大木も、ドイツ人ブロガーがブログで取り上げて以来、ドイツ人観光客の観光名所になっている。

ニセコにオーストラリアからの観光客が激増していることは有名だが、この事例も、日本人目線では分からないニセコの良さをオーストラリア人が発見し、投資が始まったものだ。スキー場としての質や規模だけでなく、彼らにとっては、時差も少なく、温泉もあり、日本食も食べられることが魅力的な観光資源に映り、人気に拍車がかかったのだ。オーストラリアから観光客が来るようになると、地元も英語化など勝手に対応していく。地元にとっては、1泊だけで帰ってしまう日本人よりも、一週間宿泊する外国人のほうが上客だからだ。

こういった外国人観光客からの人気スポットは、口コミで広がってゆく。インターネット時代の今日、外国人観光客による口コミの効果は絶大だ。外国人観光客を増やすため、日本人が良いと思うものを一方通行で海外に発信するのではなく、外国人に日本の良さを発見してもらい、勝手に発信してもらうという発想が重要だ。

日本を訪れた外国人に、彼らの目線で、日本人は知らない日本の新たな魅力を発掘し、発信してもらう。日本人には当たり前でも、外国人にとっては、他人と一緒に入る温泉や、浴衣、旅館での部屋食、畳の上で寝ることなどが斬新であったりするわけだ。




1:アメヤ横丁(0:40~)2:明治神宮(1:18~)3:両国国技館(1:47~)4:新宿御苑(2:30~)5:銀座・有楽町(3:07~)6:東京都庁舎(3:44~)7:築地市場(4:14~)8:渋谷(5:36~)9:隅田川(6:06~)10:皇居(6:32~)11:上野公園・東京国立博物館(7:08~)12:東京スカイツリー(7:46~)13:原宿(8:02~)14:金龍山浅草寺(8:55~)15:江戸東京博物館(9:38~)16:洗練されたレストラン(10:22~)17:秋葉原電気街(11:01~)18:東京証券取引所(11:31~)19:六本木(11:59~)20:お台場(12:30~)21:代々木公園(13:16~)22:根津・谷中(13:59~)23:温泉(15:01~)24:高尾山(15:45~)25:東京での食事(16:39~)東京の魅力が詰まったこの映像に、外国人からは様々な反応が寄せられていました。