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[東京 10日 ロイター] - 日経平均.N225が15年ぶりに2万円を回復したが、ドル/円JPY=EBSや日本の長期金利は落ち着いた動きを続けている。一段の円安が増益期待を高めたり、インフレ期待が強まっていることによる株高ではないようだ。

実体経済がさえないなかで、世界的な金融緩和が株価を急激に押し上げている構図の中に日本株もあり、経済や各市場間とのギャップには警戒感も広がりつつある。

<バーナンキ前FRB議長のブログ>    

バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長がブログを始め、市場関係者の間で話題になっている。そのなかで注目されている指摘の1つが、世界で広がる低金利についての記述だ。
中央銀行(FRB)が、政策金利を低くしているから、世の中の金利が低くなっているわけではなく、世の中の金利(均衡する実質金利)の水準が低いから、政策金利が低くなるのだと指摘している。つまり景気や物価が上がらないから、もしくは近い将来上がるという期待が小さいから政策金利も自然と低くなるというわけだ。

日本の低金利は、日銀が「異次元緩和」によって国債を大量に購入し、金利を人為的に低くしているからという見方は多い。しかし、それを可能にしているのが、バーナンキ前議長が言うように、低い均衡実質金利の水準、つまり日本の低成長や低物価が長引くとの予想であるとすれば、高値を更新し続ける日経平均には「違和感」が否めないことになる。

低金利はビジネスや投資活動を活発化させるほか、利回りの相対的な比較でも株高をもたらす材料になる。いわゆる不景気の株高だ。しかし、歴史的な金融緩和が、歴史的な低金利と歴史的な株高を「同居」させている現在の状況が、いつまでも続くと考えるにはリスクもある。

「ドイツでは景気に過熱感も出始めている。経済が弱い国のために、ECB(欧州中央銀行)は緩和をやめることができないでいるが、今の金融緩和環境がいつまでも続かないリスクも考慮に入れておくべきだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。

<見えない日本企業の「実力」>

株価を大きく構造分解すれば、企業業績とPER(株価収益率)だ。日本全体の景気が悪かろうと企業業績さえ良ければ株高は正当化される。日本企業のガバナンス改善や株主還元への積極的姿勢、ROE(株主資本収益率)の向上も好材料として、海外の長期投資家は日本株を買い続けている。

NNインベストメント・パートナーズ(旧:アイエヌジー投信)のマルチアセットブティック統括責任者のヴァレンタイン・ファン・ニューウェンハウゼン氏は「株価は直接的にはGDPではなく企業業績で決まる。日本企業の利益は伸びているし、日本株のPERはそれほど高いわけではない」と話す。

しかし、日本企業の持続的な増益基調が見えたわけではない。2014年度の平均ドル/円レートは110円程度であり、120円程度の水準が15年度も続けば、10─15%増益程度は期待できる。

しかし、16年度も円安が続くとは限らない。「円安効果を除いて本当に稼ぐ力を付けているかは、企業経営者自身もよくわかっていないようだ」とニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は指摘する。

日経平均の予想PERはバブル期まではいかないが、歴史的に見てレンジの上限に近い17倍後半まで上昇。増益をかなり織り込んだ水準にある。

また、一段の円安による企業利益の上積みは、期待しにくい状況だ。ドル/円も120円台半ばに上昇してきているものの、高値3月10日に付けた122.40円には及ばない。

さらに07年6月22日に付けた124.14円や02年1月31日に付けた135.20円にはまだ遠い。
米利上げ期待が後退していることもあるが、日本のインフレ期待が一向に強まらないことも、ドル/円の上値を押さえている。2年2%の物価目標に届かないことは日銀の追加緩和期待も高めるものの、「インフレがイメージできず、インフレを前提にしたポジションは組みにくい」(三井住友信託銀行・為替セールスチーム長の細川陽介氏)という。

<「歪み」もみえる日本株>

さらに日本株もしくは日経平均にも「歪み」が目立つ。特に「官製相場」といわれるように公的マネーの買いが日本株の需給に大きな影響を与えている。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2014年12月末時点の国内株式の運用比率は19.80%と、9月末の17.79%から2ポイント上昇。運用資産額と収益額を用いて試算した買い入れ額は3カ月間で約1兆7000億円に上った。日銀も年間3兆円のETF(上場投資信託)買いを予定している。
今年に入っては再び海外勢が買いの主役に戻ってきたが、海外勢も「日銀やGPIFの公的マネーの買いへの期待が大きい」(外資系証券エコノミスト)という。公的マネーを「売らない主体」と目した思惑が相場を歪めている可能性は小さくない。

またTOPIXに対する日経平均の「独走」ぶりも目立つ。日経平均は15年ぶりの水準に達したが、TOPIXはまだ約8年前の水準を回復したにすぎない。

日経平均とTOPIXの比率であるNT倍率.NTIDXは10日、一時12.55倍まで上昇し、昨年2度止められた節目水準を突破し、2013年12月以来の高水準となってきた。当時は過去最高の12.74倍まで上昇したが、その後は、日経平均が約2300円下げる大きな調整が待っていた。
日経平均の大台突破で達成感も出ている。こうした「歪み」の修正には十分注意が必要だろう。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
15年ぶりのザラバ(立会時間中)2万円であった。長い道のりであった。

しかしながら、引けは現物の日経平均がSQ値2万0008円47銭より安い19907.63円の陰線、テクニカル的には日経平均・日足は上下に短いヒゲを伴う「小陰線」。
瞬間的ではあるが、15年ぶりに2万円乗せを果たし達成感が出た。明日は統一地方選挙、これで一旦株価は調整に向かうだろう。ただし、中長期期的には2万円は通過点にすぎない。

1985年~89年のバブルの時や1999年~2000年のITバブルの時のように地に足がついてない2万円ではない。官制相場であると言われるが、PER17.64倍はバブルではない。

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