原子力規制委員会の暴走には目に余るものがあるのだが、厳しい原子力規制委員会が審査中の、関西電力高浜原子力発電所3、4号機の再稼働に対し、福井県や大阪府などの住民9人が求めた運転差し止めの仮処分を、4月14日福井地裁の樋口英明裁判長が認め、運転差し止めを命じる暴挙が行われた!三権分立が機能しているといえば機能していることに間違いはないが、一地方裁判所裁判官が判断する問題なのだろうか?一地方裁判所の裁判官が判断を下すにはあまりに負荷が大き過ぎると私は思う。民主主義の欠点の1つであると私は思う。
電力安定供給や地球温暖化防止に重大な負の影響をもたらす決定だ。
仮処分によって原発の運転が禁止されるのは、今回が初めてで、奇矯な判断である。 福井地裁では昨年5月にも今回と同じ樋口英明裁判長が大飯原発の運転差し止めを命じる判決を下しており、司法が関電の目指す原発再稼働に重ねて待ったをかけた形だ。
運転差し止めの影響が及ぶ範囲は極めて広くかつ深い。仮処分なので、決定と同時に効力が発生するためである。
高浜3、4号機は、原子力規制委員会による安全審査が進んでおり、今秋の再稼働への見通しが開けつつあったが、当面その可能性は遠のいた。
【今週の焦点】国富流出3・7兆円…原発停止で傷口広がる日本経済 【産経ニュース】2015.4.19 21:32
原発の運転を禁止する司法判断が全国で乱発されれば、国内原発の再稼働が大幅に遅れる恐れがある。原発停止の長期化により、電力会社は度重なる電気料金の値上げを余儀なくされ、企業や家庭も重い負担を強いられている。火力発電の燃料費増大による国富の流出や電気料金の高騰が続けば、日本経済にとって大きな重しとなる。
■相次ぐ電気料金値上げ
経済産業省の試算によると、原発停止に伴う天然ガスや重油などの燃料費の増加分は、平成26年度で年間3・7兆円にものぼる。関西電力は昨年12月、電気料金の再値上げ(家庭向け平均10・23%)を経産省に申請した。燃料費負担の増加で、関電の27年3月期連結決算は1610億円の最終赤字となる見込みだ。
九州電力も27年3月期は1150億円の最終赤字を予想する。川内(せんだい)原発1、2号機が再稼働すれば、月200億円の収益改善効果が見込まれるが、再稼働できなければ、「再値上げは避けられない」(九電幹部)という厳しい状況だ。
東京電力は経営効率化を進め、27年3月期に5210億円の黒字を計上する見通しで、27年中は再値上げをしない方針だ。しかし、新潟地裁では柏崎刈羽原発(新潟県)の運転差し止め訴訟が続いており、泉田裕彦知事も再稼働に慎重な姿勢を崩さない。司法判断を受けて地域住民の反発が強まれば、原子力規制委員会の審査に合格しても再稼働できない恐れがある。
■安定供給は確保したが
原発を持つ電力9社は今夏の電力需給見通しで、原発の再稼働なしでも、需要に対する供給余力を示す予備率は3%を確保し、安定供給に最低限必要な電力を確保できるとした。
しかし、今夏の需給見通しは火力発電所の点検先送りや、他社からの電力融通などを前提とした数字だ。設備の酷使によるトラブルで発電所が停止すれば需給逼迫は避けられない。北海道電力は電力需要がピークとなる8月に8・7%の予備率を確保するが、苫東厚真4号機(出力70万キロワット)が1基停止しただけで、供給力が需要を下回ることになる。原発停止をこれ以上長引かせることは許されない。(宇野貴文)
日本の世論は、原発に対して過剰な反応をするようになってしまった。
福島原発事故が影響したことには間違いないが、相次ぐ電気料金値上げは放射能より実害がある。原発停止による国富の流失をこれ以上させてはならない。
円安となったが、運よく原油価格が暴落してくれたおかげで、原発停止による国富の流失は辛うじて軽減できている。
「法律なき法の力」による日本原電への死刑宣告
【池田信夫】2015年04月04日13:57
原子力規制委員会は、日本原電敦賀2号機について「重要施設の直下に活断層がある」との「有識者調査」の最終評価書を受け取った。敦賀2号機については、これで運転再開の可能性はなくなり、廃炉が決まった。
しかしこの有識者会合なるものは単なるアドバイザーであり、これは彼らの意見書にすぎない。活断層についての耐震設計指針は2013年にできたものだから、1982年に設置許可を受けた敦賀2号機には遡及適用できない。要するに、この評価書にはまったく法的拘束力がないのだ。
これは田中委員長も認めており、「審査の参考資料にする」とのべている。これを根拠として運転停止命令は出せないが、彼らが安全審査を先送りすれば、敦賀2号の「40年の寿命」は2027年には来るので、廃炉になる。つまり規制委員会は、原子炉等規制法にもとづく停止命令を下さないで、敦賀2号機に「死刑宣告」したのだ。
アガンベンが『例外状態』で指摘したのは、法治国家と称する国で拡大している、こういう事態である。カール・シュミットが「主権者は例外状態について決断する者だ」と定義したとき、彼が想定していた例外状態は戦争だったが、それ以外にも例外状態は遍在する。強制収容所でユダヤ人を600万人も虐殺したとき、それは何の立法もされない例外状態だった。
主権者(君主や独裁者)が官僚機構の日常的な業務についてすべて法的に決定することはできないのだから、実際の「法的な決定」の大部分は官僚の裁量によって行なわれる。この点をアガンベンは、デリダの『法の力』の読み替えで示した。
この原題の"force de loi"という言葉は、英語ではrule of lawと同じ意味だが、フランス語(や原義のラテン語)では「法的な力」という意味で、政令などの(立法によらない)国家の命令を意味する。つまりそれは実定法なき法的な強制力という意味で、<法律の力>とでも表記すべきものなのだ、とアガンベンはいう。
彼は『ホモ・サケル』で、こうした例外状態としての強制収容所がシュミットの主権理論の必然的な帰結だと批判したが、今やそういう例外状態は世界に遍在する。国連決議なしにイラクを攻撃する米軍から、政令さえなしに原発を廃炉にする原子力規制委員会に至るまで、<法律の力>はヒトラーの時代よりはるかに大きくなったが、人々はそれに気づかない。
このように「裁量行政による例外状態が拡大すると、警察国家の暴走が起こる」とシュミットに対して指摘したのは、ベンヤミンだった。『政治神学』はそれに対する回答として書かれ、シュミットは「実定法は例外状態を含んで成立する」と主張したのだが、歴史はベンヤミンが正しいことを証明した。
主権国家のコアにあるのは、このような例外状態を広げて<法律の力>を浸透させ、それが自明だと国民に思わせる力である。それさえできれば、あとは国民が「自発的に」主権者の意向を忖度して国家に従う。その意味で現在の日本は、ナチス・ドイツより完成された主権国家ともいえよう。
>主権者(君主や独裁者)が官僚機構の日常的な業務についてすべて法的に決定することはできないのだから、実際の「法的な決定」の大部分は官僚の裁量によって行なわれる。
>国連決議なしにイラクを攻撃する米軍から、政令さえなしに原発を廃炉にする原子力規制委員会に至るまで、<法律の力>はヒトラーの時代よりはるかに大きくなったが、人々はそれに気づかない。
池田氏の意見は正論である。原子力規制委員会の暴走は、戦前の関東軍の満州事変と同じく、国民の代表である議会の統制が届かないと言う意味で同じである。
原子力規制委員会と地裁の裁判長の暴走は国家存続を危険に曝すのだ!
【大前研一のニュース時評】原発ゼロ論議 「3割節電」国民に覚悟あるか 2030年の電源構成 【ZAKZAK】2015.04.19
経済産業省は2030年時点の望ましい電源構成「ベストミックス」について、原子力発電の比率を東日本大震災前の約28%から大きく減らし、21-22%前後にする方向で調整するという。一方、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーは最大限に導入し、23-25%と原発を上回る。
電源構成は経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」で議論し、今月内にも決めるが、いろいろ突っ込みたい部分が多い。
13年度の電源別発電電力量構成比を見ると、火力発電が約88%で過去最高。原子力発電はほぼゼロで、残りの10%強が再生可能エネルギーで賄われている。その再生可能エネルギーの比率を高くするのは、年末の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に向け、二酸化炭素など温暖化ガスの排出量を少なく見積もる必要があるからだ。
そこで、ほぼ9割を占める火力発電のうち、石炭は30%弱、LNG(液化天然ガス)は25%、石油火力も5%未満に減らして5割台にするよう調整する。
ただ、再生可能エネルギーを23%に高めても、安定した供給ができるのは水力発電の7%前後。それ以外の16%は安定供給がしにくい太陽光や風力などだ。そのため、他の電力指数に大きなしわ寄せがくることも考えられる。
また、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを10%以上にした場合、現実的にはグリッド(送電網)の増強費用など大きなコストがかかる。さらに、電力が余りすぎたときの蓄電施設にも、かなりの費用がかかる。これらは電気料金に影響するだろう。
一方、原子力は20%ぐらいでしばらくは維持する。原子力の比率が25%になると新増設や建て替えが必要になるが、現時点では新増設はしない方針だ。政府は原発の運転期間を原則40年としているが、その場合、原子力の比率は15%程度になる。ただ、原子力規制委員会の安全審査に合格すると最長20年運転を延長できるので、21-22%まで増やせるとみているのだ。
しかし、原子力は国民的コンセンサスがなかなか得られない。国が国民に対して、私が分析した福島第一原発の事故原因と再発防止策を説明していないこともその一因だ。
福島第一原発事故の原因は、突き詰めると「すべての電源が失われる全電源喪失の状況が長時間続いたこと」にある。そこで、「いかなる状況でも電源と原子炉の冷却源を確保すること」を私は求めた。それさえできていれば、最低限、原子炉がメルトダウンするような深刻な事故は起こらない。私が「大飯原発の3号機、4号機については再稼働しても大丈夫」と主張したのは、私の報告を参考に関西電力が大幅な設計変更を施したからだ。
政府がこのまま原発を再稼働しようとしても、国民のコンセンサスは得られない。したがって、「原発ゼロ」というシナリオを作っておくべきだ。その場合、他の電源を求めるのではなく、すべての国民が「3割節電」に協力することが必要になる。
むしろ、その覚悟があるのかないのかの議論を先にやるべきではないか、と私は考える。
確かに国民の大半は福島原発事故で思考を停止してしまっている。
危機に目を背け、茹でガエル状態になっている。原発ゼロがどれだけ自分の身に負担を背負うことに成るのか、国民一人一人には実感がないのだ!
焦点:「水素社会」に及び腰の中小企業、赤字覚悟の決断下せず
【ロイター】2015年 04月 14日 23:24 JST
[東京 14日 ロイター] - アベノミクス成長戦略が重要施策と位置付ける水素インフラ関連事業への参入をめぐり、中小企業には戸惑いの声が目立つ。
水素社会の実現に向けて、政府は規制緩和を進め、高額な水素スタンド設置費に補助金も出すなどして積極参入を促しているが、経営体力のない中小企業には「いつ採算が取れるのか」との不安が根強い。「水素社会」への参加企業のすそ野を今後どう広げるか。政府がさらに手厚い支援策を求められる可能性もありそうだ。
<社内で意見まとまらず>
「社内で意見がまとまらなかった」――。政府は2月末から1カ月間、燃料電池車の普及に必要な水素スタンド設置への補助金募集を行ったが、応募を見送ったある中堅ガス事業者はその理由をこう打ち明けた。補助金を受けてスタンドを設置しても、何年も続く赤字のリスクは確実だ。「どこまで覚悟できるか、飛び込む決心がつかなかった」。
水素スタンドは設置費用が1カ所5億円前後と高い。政府は少しでも参入企業の負担を減らすため、2013年度から総額200億円以上の補助金をつぎ込んで設置を促進しており、20年代半ばには補助金なしでも水素スタンド経営が自立できるというロードマップを描いている。
だが、実際に走っている燃料電池車の数はまだ少なく、スタンド事業の採算がいつ取れるのかは不透明だ。これまでに設置したのは、JX日鋼日石エネルギーや岩谷産業など大手事業者がほとんどだ。
政府は政策目標として15年度末に100カ所のスタンド設置をめざしているが、補助金交付が決まり設置が確定したのは、4月に決まった32カ所を含めて計76カ所。このままのペースでは、全国に約3万5000カ所あるガソリンスタンド並みの普及は、早期にはとても望めない。
岩谷産業の上田恭久・水素ガス部長は、同社自らが掲げる15年までに20カ所設置という目標に対しては「遅れていない」とする一方、JXなど一部の大手は「頑張っているが、残りはなかなか進んでいないという印象だ」と話す。
<地方自治体も支援策>
政府は今年度の水素スタンド関連事業の補助金として約96億円を予算計上し、さらにその対象を設置費だけでなく、スタンド運営に伴う人件費や水道光熱費などにも拡大した。今回の設置費に対する公募ではトヨタ自動車(7203.T)から燃料電池車「ミライ」が昨年12月に発売されたことも背景に、大手だけでなく、地方の中小事業者への交付も決まった。
水素社会の普及加速に向けて、地方自治体なども動き始めている。神奈川県横浜市で723万6000円のミライを購入すれば、国・県・市の補助金で400万円以下になる。東京都も20年までに都内35カ所をめざして水素スタンドの設置・運営費などの支援を決めた。
トヨタ、ホンダ、日産自動車の3社は水素インフラの普及促進で合意し、今年中ごろまでに具体的な支援策をまとめる予定。JXや岩谷も採算を度外視し、水素価格を1キロ当たりJXが1000円、岩谷は1100円とした。政府が20年の目標として設定した価格に相当し、目標を約5年前倒しで達成する戦略的な価格にした。
「ミライの発売当初からみると、行政やインフラ業界の方にはより前向きに、より積極的に、より具体的に行動していただいている」。トヨタの豊田章男社長は2月のミライのラインオフ式で、水素スタンドの普及スピードの印象をこう述べ、東京五輪が開催される20年に向けて「さらにスピードアップしていくのではないかと期待できる行動がみられる」と関係先に感謝の意を示した。
<「国を信じて飛び込む」>
しかし、過去に補助金を受け、政府の支援策を歓迎しているガス大手企業でさえも「いつ採算が取れるのか見えない状況に変わりはない。国を信じて飛び込むしかない」(幹部)というのが本音だ。
人気のミライでもしばらくは1日3台しか作れず、納車は3年後の2018年以降になる。今年はホンダも燃料電池車を投入する計画だが、水素スタンド設置については「1日に1台、客が来るかどうか。何年も開店休業状態だ」(中堅ガス事業者)、「水素社会が出来上がってからでは遅いが、もう少し考えたい」(別の中堅企業幹部)との反応が返ってくる。
補助金申請を検討する中小企業からは国にさらに手厚い支援を求める声も出たが、経産省は「もうめいっぱい。これ以上は厳しい」(担当者)と話しており、水素スタンド普及に向けてすべての関連企業が大きく動き出せる情勢にはまだなっていないようだ。
(白木真紀 編集:北松克朗)
水素社会に移行するだけで大きな苦痛とリスクを伴う。
まして、原子力の代わりに、風力・太陽光・地熱など再生可能エネルギーに置き換えることは、現実を見れば困難極まりない。
ロッキード・マーチン10年以内に小型核融合炉実用化へ 2014.10.16
もし、核融合炉が実用化して、大型発電機に応用できたのならば、私も原子炉に固執はしない。だが、未だ未知数の技術に頼るのは、高速増殖炉の原子力サイクル実用化と同じく、正しいエネルギー政策とは言えないのである。今のエネルギー政策においては、一刻も早い原発の再稼働が望ましいと思います。
焦点:原発再稼働へ崩された司法の壁、エネルギー政策「退行」も
【ロイター】2015年 04月 22日 17:17 JST
[鹿児島 22日 ロイター] - 鹿児島県の住民らが九州電力(9508.T)川内原発1、2号再稼働の差し止めを求めた仮処分で、鹿児島地裁は22日、申し立てを退ける判断を示した。反対派が再稼働阻止への「最後の砦」として頼んだ司法の壁を推進側が乗り越えた形となり、新規制基準で初となる原発再稼働が今夏にも実現する。
政府は月内にも2030年時点の原発比率を2割とした電源構成(エネルギーミックス)を打ち出すとみられる。ただ、原発復権へのアクセルを踏み込む政府に対し、与党内からの反発だけでなく、エネルギー政策に関与する有識者からも「再生可能エネルギーにシフトする世界の潮流に背を向け、3.11以前に逆戻りする」との批判が出ている。
<落胆の脱原発派、川内1号は今夏に再稼働へ>
今回の鹿児島地裁の決定は、関西電力(9503.T)高浜原発3、4号の再稼働禁止を命じた今月14日の福井地裁の判断から大きく反転し、福井での勝利に歓喜した脱原発派にとっては、司法の後ろ盾を失う打撃となった。
脱原発弁護団全国連絡会の共同代表、河合弘之弁護士は22日、鹿児島市内で記者会見し、「今回の決定は3.11以前の判決と同様、旧態依然の中身だ」と批判した。河合氏は「裁判官独立の原則があり、(判断に)ばらつきがあるのは司法の構造としてはやむを得ない」とも述べ、悔しさを隠しきれなかった。
今回の決定に対して、九州電力の広報担当者は「川内原発の安全性は確保されているとの当社の主張が裁判所に認められ、妥当な決定をいただいた」とコメント。
現在、同1号は再稼働を前提とした規制委の「使用前検査」を受けている。九電は7月の再稼働を目指しており、順調にいけば今夏にも再稼働が実現する見通しだ。
<原発復権へ政府・与党が総仕上げ>
原発再稼働の是非をめぐり福井と鹿児島での司法判断に注目が集まる中、政府・与党は粛々と原発復権への地ならしを進めてきた。
その舞台は経済産業省に設置された有識者会議。お膳立てを担った自民党の原子力政策・需給問題等調査会は今月7日、2030年に「ベースロード電源」を東日本大震災前の水準である6割に戻すべきとする提言を安倍晋三首相に提出した。
ベースロード電源とは時間帯や季節に関わりなく高い稼働率で発電する電源のことで、一般には原子力、石炭火力、水力のことを指す。ただ、石炭火力は発電時に排出する二酸化炭素の量が多く、世界的な温暖化対策の流れに逆行するため増やしにくく、水力も国内で増やすには限界がある。
原発に批判的な秋本真利・衆議院議員(自民)はロイターの取材で、ベースロードを6割とした場合、「原子力は2割くらいになってしまう」と指摘。秋本氏は、「ベース6割と先に決めていくのは原発を動かしたいからだと思う。とんでもない話だ」などと述べ、所属政党が進める原発回帰の流れに不快感を示した。
<30年2割で延長・新増設も視野に>
東京電力(9501.T)福島第1原発事故を契機に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則40年間に制限しているが、事業者が延長を希望する場合は、原子力規制員会の認可を条件に、1回に限り上限20年の延長が認められている。
仮に40年ルールを厳格に運用した場合、2030年時点での国内原発の総出力は、建設中の中国電力(9504.T)島根3号と電源開発(9513.T)大間原発の2基を加えても約2200万キロワットと、震災前の規模(約4900万キロワット)の半分以下に落ち込む。
政府が2030年で原発比率20%を目指すとすると、運転期間の延長によって原子炉が退役するペースを緩やかにするか、原発の新増設や建て替えが必要となる。新しいエネルギーミックスが運転延長や新増設を視野に入れているとすれば、「原発依存度は可能な限り低減する」とした安倍政権の公約に逆行する流れになる懸念も否定できない。
<3.11以前に逆戻りか>
経産省の有識者議論に参加する東京理科大学大学院の橘川武郎教授はロイターの取材で、30年時点の電源構成について原発15%、再生可能エネルギー30%を主張する。「エネルギー構造を相当に変えていくというメッセージになる」と橘川氏は強調する。
同氏は「原発が減る分は、天然ガス火力が全国で15─20カ所で新しく建ち、パイプラインで繋ぐことができる。風力発電で余った電気は、水の電気分解で水素に変えて、そのままガスのパイプラインに混ぜてガスとして使うことができる。”パワー・ツー・ガス”という欧州では水素の主流となる使い方だ。原発を減らすことで、こうしたことが見えてくる」と力説した。
しかし、国内報道各社によれば、政府は30年時点の再生可能エネルギーは20%台が念頭にあるようだ。2009年4月、当時の麻生太郎首相は2020年時点で再生可能エネ20%との目標を打ち出していた。
橘川氏は「エネルギーミックスで原発も再生可能エネルギーも30年でともに20%台にするならば、3.11があっても(日本は)何も変わらなかったということだ」と話している。
(浜田健太郎 編集:北松克朗)
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