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藻から作るバイオ燃料 小さな藻が航空機を飛ばす日
[IHI、ユーグレナ、デンソーなど]日経ビジネス】2015.06.08No.1794

微細藻類から取り出した油で、バイオ燃料を作る研究が進んでいる。
枯渇せず、二酸化炭素削減や食料需給の改善など、メリットも多い。
安定大量培養という課題を克服し、2020年の実用化を目指す。

 5月21日、晴天。鹿児島市内にあるIHIの敷地内に設置された1500m2の屋外プールにこの日、太陽の光がさんさんと降り注いでいた。暖かい風を受けて波立つエメラノレド色の水面には数え切れないほどの気泡が浮かんでいる。

 [泡がたくさん浮かんでいるのは、藻が元気に増えている証拠です]。こう話すのは、IHI新事業推進部の斉藤真美子主査だ。同社はこのプールで「ボツリオコツカス」と呼ばれる微細藻類を培養している。

 微細藻類はその名の通り、顕微鏡を使わなければ見えないほど小さい。この小さな藻が今、「地球が抱える飢餓問題やエネルギー不足の解消に貢献する」と、世界中の企業や研究機関から注目を集めている。理由は単純明快。次世代のバイオ燃料の原料となるからだ。

 微細藻類は他の植物と同じように、C02(二酸化炭素)と水を吸収し、日光を浴びることで光合成をする。この結果、栄養源となる炭水化物を生み出すが、さらに脂肪
酸や炭化水素などを作り出して細胞内にため込む種類がおり、これがバイオ燃料の原料になる。

 バイオ燃料の原料と聞いてまず思い浮かぶのが、トウモロコシやサトウキビだろう。確かにこれまでは、これらの「食べられる植物」からバイオ燃料を作るのが通常だった。ただし、当たり前だが、食べ物を燃料に変えてしまえばその分、人間の食べ物が減る。今後、予想される人口増を踏まえると、食べ物以外の植物から燃料を生み出す新たな技術の開発が不可欠だ。そこで注目され始めたのが、微細藻類というわけだ。

イメージ 3 藻を原料とするメリットは他にもある。一つは、効率よく油を生成できる点。 IHIによると、微細藻類は、同じくバイオ燃料の原料となるヤシの実と比べ、同じ面積の土地当たり2~10倍のバイオ燃料を作れるという。

 日光とC02が存在して培養プールさえ作れれば、どんな場所でも育てられるのも利点だ。植物の生育に適さない乾燥地や痩せた土地、極論すれば砂漠でも育てられる。さらに工場などから出るC02を吸収するため、C02排出量の削減にも大きく貢献できる。

最終目標は「ジェット燃料」 こうした力に着目し、藻の培養技術の研究に乗り出す国内企業が近年、続々と登場している。冒頭で紹介したIHIは、神戸大学、バイオベンチャーのちとせ研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で5月、大規模な藻の培養施設を鹿児島で稼働させた。この他、バイオベンチャーのユーグレナ(東京都港区)やデンソーなども、微細藻類から作るバイオ燃料の研究を進めている。

 藻から取り出した油は、原油と同じように燃料や化学製品の原材料など様々な用途に使える。そんな中、各社が究極の目標に据えるのが、航空機向けの「ジェット燃料」を供給することだ。実用化のめどとするのは東京五輪が開催される2020年。「世界からの訪日客を微細藻類由来のバイオ燃料で飛ぶ航空機で迎えたい」-。関係者は一様にそんな夢を口にする。

 では、なぜジェット燃料なのか。航 空大手で構成する国際航空運送協会 (IATA)は、2050年までに航空業界全 体のC02排出量を2005年比で半減する目標を設定。これを達成するため、 2020年には、航空機が排出するC02量に上限を設ける行動計画もまとめた。

 にもかかわらず、航空機は自動車と異なり代替燃料の開発がほとんど、進んでいない。電気や水素で動く「エコカー」は既にあるが、航空機では、燃料効率の高い液体燃料に頼り続ける公算が大きい。つまり、C02排出量を大幅に減らすにはバイオ燃料の活用が不可欠だということだ。各社は、そこに大きなビジネスチャンスを見いだしている。

 ここで、微細藻類からバイオ燃料を作るまでの工程を見ておこう。

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工程は大きく5つ。①藻を大量に培養し②水中から回収③藻を乾燥させ④油を搾り出し⑤精製するーという流れだ。④で出る搾りカスは、家畜の飼料にしたり固形 燃料などに転用したりもできる。

 バイオ燃料を取り出すまでには幅広い分野の製造技術やノウハウが必要になる。そのため多くの企業がIHI同様、各分野に強みを持つ企業らと組んで開発チームを形成している。

ユーグレナは2月、新たに米エブロンラマスグローバルと組み、バイオ燃料の精製実証設備を建設すると発表。デンソーは藻の搾りカスを有効利用するため、飼料会社と組んで魚のエサなどへの転用を模索している。

大量培養・回収コストに課題実は、微細藻類からバイオ燃料を作る基礎技術そのものは既に確立されている。ユーグレナが作るバイオ燃料は実際、神奈川県藤沢市にあるいす`自動車の工場の送迎バスが使用している。

 問題は「コスト」だ。ジェット燃料の相場は「1リットノレ100円程度」(IHI新事業推進部の成清勉次長)。ところが、国内企業の現時点での生産コストは、IHIの場合で「検討中の大規模化を実現しても500円程度」(成清次長)。デンソーも「目標とする値段からは程遠い」(渥美欣也・事業企画担当部長)という。

 「藻は放っておいても育つはず。なぜそんなにコストが掛かるのか」。そんな疑問を持つ向きもあるだろう。コストが掛かる理由は大きく2つ。「屋外での培養が難しいこと」と、「水中からの回収に手間が掛かること」だ。

 もちろん、専用の容器中など安定した環境で培養するのは難しくない。ただ、これでは増やせる藻の量に限界がある。大規模施設での培養が不可欠だが、ここで深刻な問題が生じる。他の藻や生物が培養プールに混入する「コンタミネーション」 
だ。

「育てていた藻が1日でいなくなり、全く別の種類の藻がプールを占領していたなんてこともよくある」(デンソー基礎研究所の福田裕章室長)という。

 藻を水中から回収するのも難題だ。名前に「微細」と付くだけあって、藻の一つひとつは極めて小さい。網目の細かいフィノレターでろ過できたとしても、乾燥させるのに苦労する。遠心分離機にかける方法もあるが、「広大なプールから集めた藻を遠心分離機にかければ膨大なエネルギーを消費する。その消費量が、藻から作るエネルギー量を上回っては意味がない」(ちとせ研究所の藤田朋宏・最高経営責任者)。

 これらの問題にどう取り組むかは企業によって異なる。カギを握るのは藻の「種類」。その持|生に合わせて個別の問題解決法を編み出している。

 デンソーは、育てる藻に「シュードコリシスチス」と呼ばれる種類を選んだ。この藻は酸t生を好む抒|生を持つ。培養液のpH(ペーハー)値をヨーグルトとほぼ同じレベルの酸性にしておけば、他の藻や生物が育ちにくくなり、コンタミネーションを抑制できる。

 IHIは増殖スピードの速い藻をさらに育種(品種改良)することで、他の藻に負けずに育つようにした。回収問題の対策としては、藻が集まって直径0.1mm程度の塊になるように改良。水面に浮きやすい性質も持たせ、回収しやすくする工夫を施した。

 世界のエネルギー市場をワードし続けている石油。だがこれも、太古の時代に地中に蓄積した藻類などが変化したものだとされる。微細藻類は石油と異なり、工場や航空機から排出されるC02を吸収し、何度でも再生できる。21世紀の新しい循環型エネノレギーになる可能性を秘めた小さな藻。巨人な航空機を飛ばす日を夢見ながら、今日もどこかで培養されている。 (杉原淳-)
未来ビジョン #29 藻で日本が産油国に! ゲスト:筑波大学大学院教授 渡邉信


ユーグレナは日本のマイクロソフトやグーグルになりえるのか?

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ユーグレナをはじめとするバイオ燃料は、再生可能エネルギー(再エネ)全量買取制度の対象である。原油への依存を減らしたい日本としては、是非とも推進したいエネルギーだが、昨年からの原油価格暴落は、ユーグレナの未来に少なからず影響を与えている。

バイオ燃料は植物を原料とするが、ガソリンや天然ガスと違って原料はほぼ無尽蔵である。これが太陽光や風力と同様、再エネとみなされる理由だが、燃やせば化石燃料と同じく二酸化炭素(CO2)を排出するが、バイオ燃料は温暖化防止に役立つとみなされている。

植物は光合成により大気中からCO2を吸収するので、燃やして排出するCO2は元に戻っただけで、理論上大気中のCO2総量は増えないことになる。この考え方を「カーボンニュートラル」と呼ぶ。

バイオ燃料は実用化がかなり進んでいる。ドイツでは、再生可能エネルギー消費の67%を占めている(2011年の実績)。米国では、2005年の「エネルギー政策法」によってバイオ燃料導入の数値目標が定められた。

ドイツでは、2014年上半期の電力消費に占める再生可能エネルギーの割合が、過去最高の28.5%に到達することとなった 。ドイツは、2025年までに総電力消費の40~45%、2035年までに55~60%、そして2050年までに80%を再生可能エネルギーでまかなうという目標達成にむけて、着実に歩みを進めている。

だが、脱原発中心ののドイツのエネルギー電力政策は私から言わせれば間違っている!失敗だと言っても過言ではない。

環境保護テロリストが支配するドイツの考えるエネルギー政策が間違っていることはバイオ燃料政策でも同じことが言える。
脱原発の大義名分でバイオ燃料に補助金を原料を作農家などに支給している。ドイツやEUのバイオ燃料(バイオエタノール)の生産においては、原料はとしてとうもろこしや小麦、てん菜などが利用されている。とうもろこしおよび小麦はでん粉原料作物でもあり、てん菜は砂糖の原料となる。このため、EUにおけるエタノール生産は、砂糖またはでん粉需給と関係が深い。
原油価格が高騰すると、高騰をキッカケに食糧価格も値上がりし、原料である食糧の仕入れ確保が困難になってしまうのである。 2008年エネルギー価格が高騰し食糧の競合で食料価格が高騰してしまった!
シカゴ商品取引所の相場を見ると、2007年から2008年にかけて、トウモロコシと大豆の価格は最大3倍、小麦価格は最大2.7倍まで値上がりした。また、2008年には、ハイチやホンジュラスなどで食糧を求めて暴動が発生した。

リーマンショック後、金融商品から逃げ出したファンド資金が穀物市場への流入、ロシアなど一部の生産国による輸出制限、そして、穀物がバイオ燃料に転用されたことによって、原油価格高騰と穀物価格が急騰してしまう悪循環が起きてしまう。

 2007年のトウモロコシの世界生産量は7億8479万トンで、そのうち、42.3%が米国で生産された(出所:世界統計白書による)。同じ時期、米国で8382万トンのトウモロコシが燃料用に使われた(出所:米農務省)。この数字は、同年の世界のトウモロコシ生産の増加量にほぼ匹敵する。

 米エネルギー省は、「2008年の穀物価格暴騰の主犯はバイオ燃料ではない」という内容のリポートを出したが、バイオ燃料への転用の影響が大きかったことは否定できない。

 トウモロコシは家畜の飼料に使われるから人間の食糧と関係なさそうだが、飼料のコストが上がれば、食肉価格も上がってしまう。また、バイオ燃料補助金を狙って、小麦・大豆畑をトウモロコシ畑に変えることが増え、生産品種が偏ってしまう。この結果、食糧とエネルギーが競合してしまうのだ。


この問題をユーグレナをはじめとする日本のバイオ技術で屋外での大量培養に成功し大幅のコストダウンにも成功した。

ユーグレナなどの微細藻類は極めて効率的に光を吸収し、バクテリア並みに成長が早い。また、細胞内には脂質が多く含まれており、一部の藻類は石油や天然ガスの主成分である炭化水素を生産する。
1990年前後、微細藻類を使ったバイオ燃料の研究が、米エネルギー省傘下の研究所で盛んに行われた。現在,米国で数十社の藻類ベンチャーが立ち上がっているのは、それらの研究成果が基となっている。シェブロン、ボーイングといった大企業も藻類市場に注目し、ベンチャーとして参入した。
ところが、タンクでは培養できたが、屋外で大量に培養できず、なかなかビジネスにならなかった。
革新日本企業のバイオ技術は、大量培養技術に数万種の藻類の中から原料として最適な種を選別し、大量に培養に成功した。特にユーグレナ社の技術は一歩抜き出たと思う。
このところの原油価格の下落は世界経済にとってある意味では望ましいことだが、だが・・・競合する原油価格が下がると、依然コストが高いこのバイオ技術の実用化のハードルを上げてしまうのだ・・・・皮肉なものだ。