毎年波乱の年末相場だが、米投資会社サード・アベニュー・マネジメント傘下のジャンク社債ファンドが10日、投資家からの解約受付を停止すると発表し、米国のジャンク債市場が世界的危機となるかもしれない前兆が出始めたのではないかと、騒然としている。2008年10月のリーマンショックが起きた1年前2007年8月サブプライム問題の深刻化を背景に、BNPパリバ傘下のミューチュアル・ファンドが、投資家からの解約を凍結すると発表したことがあった。なにやらいやな予感だ。

アングル:ハイイールド債急落で米景気の強さに懸念
【ロイター】2015年 12月 15日 16:05 JST

[ニューヨーク 14日 ロイター] - 指標となる高利回り社債の急落を受けて、投資家が考えるよりも米国経済は健全な状態ではないとの不安が広がっている。

実質的にジャンク債を集めた代表的なハイイールド債の指標とされる「iシェアーズiBOXX米ドル建てハイイールド・コーポレート・ファンド」(HYG.P)は年初からの下落率を12%に広げた。競合する商品の「SPDRバークレイズ・ハイ・イールド・ボンドETF」(JNK.P)も年初からマイナス13.4%となっている。

金融危機から7年を経た現在、大半をディストレス債に投資するファンドの一部が破綻した最近の出来事は、債券市場が先行きの株式市場と経済全体を襲う数々の問題の重要指標になるとみている投資家にかつての記憶を思い起こさせた。

アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏は「流動性に支えられしばらく続いてきた市場は、特に政策の誤りと、または市場のアクシデントの可能性の双方に対して特に脆弱だ」として、低金利を維持し債券の購入で債券市場を支えてきた米連邦準備理事会(FRB)の長年にわたる政策に言及。

その上で「金融政策の方向性の違いと」、一部のエネルギー比率の高い社債などの「市場セグメントにおける流動性の問題に鑑み、今日の投資家は両方を懸念している」と指摘する。

株式・債券市場の投資家の疑問は、ハイイールド債市場の不振がより経済全体の落ち込みの前兆なのかどうかだ。

欧州やその他の国々の金融政策は全般的に緩和的なのに対し、米国のFRBは労働市場に健全性の兆しがみられるとして、16日に引き締めサイクルを開始する見通しだ。

指標となるS&P500種指数は史上最高値の終値からわずか5%低い水準にすぎず、投資適格社債の発行は依然として高水準となっていることから、FRBの利上げは景気に対する新たな信任投票ともみることができる。

FRBの対応と米国市場の反応は大きく誤っているのだろうか。高利回り債をウォッチしているファンドマネージャーとアナリストは、その可能性があるとみている。

フィッチ・レーティングスによると、最低15億ドルのハイイールド債のデフォルトは少なくとも13カ月連続で続いており、2008─09年の金融危機のピークにみられた記録にわずか1カ月と迫っている。

一部の社債投資家が必要とする利回りと、彼らがリスクフリー資産に求める利回りの相対的な格差、すなわちスプレッドは当時と同じほどに広がっている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのハイイールド・マスター指数によると、14日の市場で比較可能な国債とジャンク債の間の平均スプレッドは7.10%ポイントで、2012年6月以降で最もワイド化した。11日の幅広い相場の急落により、ハイイールド債のスプレッドは一日としては2011年8月以来となる大幅な拡大だった。

「2016年に景気後退に陥る可能性のある領域に入った。特に中西部の複数州における地域においてだ」と、ヘネシー・ファンズ(HNNA.O)のポートフォリオマネジャー、ブライアン・ピーリー氏は指摘する。同氏は「原油価格の調整の中のある時点で、消費者に対する原油安のメリットが労働市場における雇用の喪失に代わる」とみている。

先週はサード・アベニュー・マネジメントが7億8900万ドルのファンドを償還停止し、清算する方針を発表した。ディストレス債を専門に扱い、13億ドルを運用するストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズも後にファンドの一部の償還を停止した。ルシダス・キャピタル・パートナーズもファンドを清算し、来月に9億ドル相当の運用資産を顧客に返還する計画だ。

ファンドの破綻や流動性状況を超越して市場で実勢価格に基づき容易に売買が行われる能力は、一年のうちで今ごろに損なわれることが多い。

さらに、オッペンハイマーファンズのクリシュナ・メマニ最高投資責任者(CIO)によると、エネルギー価格の下落の度合いは大半の投資家が予想したより大きく、米国の製造業から新興国のコモディティ輸出企業に至るまで圧力が加わっている。

メマニ氏は「実際に市場で最悪のリスクは、FRBの金融引き締めやドル高、そしてクレジットスプレッドのワイド化を原因とする米好景気の減速だ。米国経済にはふらついている部分がかなりある」と指摘した。
リーマンショック後、リーマンショック級の危機が再び起きないよう銀行の規制は強化され、G7の国ではショックは起きにくいはずであるが、米連邦市場員会(FOMC)で、金融危機後初めて米利上げ実施が予想されるなか、米国債の利回りが上昇。ジャンク債の高利回りという「魅力」が相対的に低下したのは必然なのかもしれないが、ジャンク債市場がいわば炭鉱のカナリアの可能性もある。
さらに原油安はリスク商品からの資金流出に拍車をかけた。WTIは期近の1月物は一時1バレル35.78ドル程度まで下落し、約6年10ヵ月ぶりの安値をつけた。産油国の高水準の生産で原油の需給が緩んだ状態がしばらく続くとの見方から先物市場では売りが出やすい状態が続いている。先般、OPECの総会が開かれたが不思議なことに減産するという国はどこもなく今までのOPEC総会では考えられない状況が続いている。米国の利上げが決定すれば原油の値下がりは止まるとの見方が大勢を占めてはいるが、中国の需要低迷が大きいのではないかと私は思う。
米国のシェール関連企業の多くがジャンク債を発行し、資金を調達していたが、原油価格の急落で経営悪化の懸念が強まっている。
しかしながら、過去の金利上昇時のジャンク債のパフォーマンスは悪くない。フィデリティ投信によると、過去3回の長期金利上昇局面(02─05年、08─09年、12─13年)における米ハイイールド債の上昇率は平均36.6%にのぼる。デフォルト率も「ジャンク」というイメージほどではなく、PIMCOによると過去1年間で2.3%程度だ。実際、米国の金利が上昇しだしてからどうなるか依然見極める必要がある。
ジャンク債よりも、来年はやはり中国発のチャイナショックになるかどうかが気になって仕方がない。
習近平国家主席はあの手この手で景気テコ入れに躍起だが、時間稼ぎにしかならない。この巨大な船は沈む。日本を道連れにしてーー。

コマツを襲う「需要半減」という悪夢
中国関連の代表銘柄とされる世界第2位の建機メーカー・コマツがいま、その中国事業で頭を抱えている。

中国経済が凄まじい勢いで失速する中で、同社の稼ぎ頭だった中国ビジネスが破滅的な打撃を受け、尋常ではない落ち込みから抜け出せなくなっている。

〈2015年第2四半期の中国の需要は、前年同期比▲50%減少しました〉

コマツが10月末に投資家向けに作成した資料には、主力商品である建設機械の需要が「半減」したという衝撃の実情が記されている。

コマツの各種投資家向け資料によれば、実は年初の1-3月期からすでに中国での需要は〈▲58%〉と激減していたという。そのため、コマツは4月時点から2015年度の需要減を見込んで、今年度は〈▲20~25%〉との予測を立てていた。

しかし、そんなコマツの想定を「生ぬるい」とあざ笑うかのように、中国経済は猛烈な勢いで急落下。〈政府による景気刺激策の効果は見えず〉、中国経済がフリーフォール状態で落ちていく中、『需要半減』から逃れられない隘路にはまっている。

コマツ幹部は言う。

「建機部門はほんの4年前には中国で年間3,000億円以上を売り上げていた。それが今年は、半期でわずか約350億円です。市場回復の兆しは見えない。新しい建機を売りまくるビジネスモデルが通用しないので、メンテナンス事業などで稼ぎを取りこぼさないように注力しているのが現状なのです」

開発ラッシュに沸き、都市のあちらこちらで建機が砂埃を巻き上げていた光景は、ほんの少し前まで各地で見られた。が、経済が失速を始めると、開発案件は軒並みストップ。中国ビジネスで「わが世の春」を謳歌した大手企業を一転、奈落の底へ突き落としている。

コマツに次ぐ国内2位の建機メーカーの日立建機も惨状は同じ。同社の主力商品である油圧ショベルの中国における需要データを示す資料によれば、直近の10月は前年同月比で▲43%と目も当てられない。さらに見ると、9月は▲49%、8月は▲51%、7月は▲52%、6月は▲54%と、コマツ同様に「需要半減ショック」に襲われていることがわかる。

中国で油圧ショベルの評価が高いコベルコ建機の社員も言う。

「中国ビジネスが難しいのは、上下の反動が大きすぎて、常識では考えられないような動きをすることです。毎年、春節(2月)明けの3~4月が建機の販売ピークで、普段の月の4倍ほど売れます。それが今年は、控えめに見積もった販売目標にも届かなかった」

中国経済は2ケタの驚異的な成長を続ける黄金期こそ終了したが、今後は7%前後の成長率は維持できる「新常態(ニューノーマル)」に入っていくから安心ーー。中国政府はそう喧伝しているが、足元で起きていることは新常態というより異常状態にほかならない。

アクセル全開で走っていたところに急ブレーキをかけたかのような景気の失速に、中国ビジネスを手掛ける企業各社は大パニック。どこまで経済が落ちていくのか、その一歩先も見通せない恐慌状態に脅え出した。

とうとう「市場縮小」が始まった
自動車メーカー各社はいま、「市場縮小」に慌てふためく。

変調が始まったのは今年4月。景気の先行きを不安がりだした中国市民の消費が一気に冷え込み、右肩上がりだった新車販売が前年同月比でマイナスに転落した。実質的にマイナス転落したのは反日デモが吹き荒れた'12年以来だが、4月以降も5月、6月、7月、8月と前年比マイナスが止まらず、市場が収縮モードに突入したのである。

トヨタ社員が言う。

「独フォルクスワーゲンや米ゼネラルモーターズ、韓国の現代自動車などの外資各社が、中国市場の旺盛な需要を取り込もうと、工場増設などで生産能力を引き上げた矢先のことだった。

そこへきて急激に車が売れなくなったから、在庫が一気に膨れ上がった。外資系メーカーは在庫一掃セールさながらで値引き競争を仕掛け、『100万円値引き』まで出た。利益を削ってでも数を売ろうとする消耗戦になっている」

10月には焦った中国政府が減税措置のテコ入れ策を講じて、販売数は立て直した。が、それは需要を先食いした一時凌ぎにすぎない。追い打ちをかけるように、中国の株式市場で株価が暴落すると、市民の消費意欲はまた減退、株価下落→販売減→在庫増→値下げ・・・という負のスパイラルに陥ろうとしている。

前出のトヨタ社員が言う。

「今年度は、自動車各社の中国工場稼働率が5割まで落ちると言われるほどです。現代自動車はあまりの不振で、販売台数の開示を一時見送っていた。日本勢は過剰な値引き競争には参戦していませんが、利幅は薄くなってきた。

トヨタはこの半期で中国での販売数を伸ばしたのに、中国分の利益は100億円弱の減益。会社全体で慎重な業績見通しを立てているのも、チャイナリスクを意識すれば慎重にならざるを得ないからです」

巨大工場を作った矢先に市場が萎み、格安競争に走る大手企業が軒並み巨額赤字に陥った「デフレ末期の日本」に似た風景になってきた。

撤退したくてもできない
実際、中国のモノの「売れなさぶり」は尋常ではない。元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島香織氏が言う。

「今秋に北京に行きましたが、2000年代前半には中国最大のショッピングモールとまで言われ、大勢の人でごった返していた『SOHO現代城』に人がいない。高級ブランドコーナーは閑古鳥が鳴き、店員が暇そうに私語をしていた。

人気の複合商業施設だった『銀河SOHO』もガラガラで、テナントは空き店舗ばかり。家電量販店などが集まり、北京のシリコンバレーと言われる『中関村』も元気がない。中国人はネットで安いモノを探して買うばかりです」

こうした事態を受けて、仏高級ブランドのルイ・ヴィトンが一部店舗を閉店するなど、企業の「撤退戦」が加速。日本勢もその波に呑まれ、撤退や合弁解消、事業構造転換などを余儀なくされるところが続出している。

カルビー社員が言う。

「中国では合弁会社を作って『かっぱえびせん』などを製造・販売していましたが、この11月に合弁を解消しました。われわれの商品は7~8元(135~155円)なのですが、現地メーカーの類似品は5~6元で売ってくる。年間500億円の売り上げ目標を立てていたが、実際は5億円。厳しかった」

パナソニックは'80年代から中国でのテレビ生産を手掛けてきたが、今年年初に工場を閉鎖し、中国でのテレビ自社生産から撤退した。パナソニック幹部が理由を語る。

「韓国や台湾企業との激安競争がもう限界を迎えている。かつて『松下』のテレビは中国で一大ブランドでしたが、いまは安いことが重視される。中国では人件費も上がり、一般消費者向けの商売はきつくなるばかり。だから工場も閉鎖し、事業転換して、業務用ビジネスへ路線をシフトする決断をくだした」

日本勢が巨大市場の中国を目がけて、大企業から中小企業まで、我先に新規ビジネスを始めようと進出ラッシュに沸いたのはほんの数年前のことである。それがいまは、乗っていれば沈んでしまう泥船から逃げ出すかのような地獄絵図と化している。

「中国では飲料用缶を製造販売していましたが、価格競争が激化した。これ以上続けても利益が取れないという状況になってきたので、早々に撤退を決意しました」(東洋製罐グループHD社員)

中国事情に詳しいジャーナリストの姫田小夏氏も言う。

「中国でビジネスをする日本企業の集まりが今夏にあったのですが、いかに撤退するかという話題で持ちきりでした。実は、中国事業の撤退というのはそう簡単にはできない。

まず、従業員を解雇するための労使交渉が非常にタフネゴシエーションで、巨額の補償金をふっかけられるリスクがある。また、日本企業が撤退すると地元の雇用が減るので、地方政府の役人が申請書類を受理しないなどの手を使って、抵抗してくる。

外資系企業の中には、こうした事情をわかっていて、夜逃げ同然で逃げ出すところが少なくない。しかし、日本企業は真面目でそこまでできない。事業がうまくいかずに赤字が膨らむのに、撤退できないという二重苦にもがき始めている」

「マカオの悲劇」が日本を襲う
すべり落ちる中国経済が、日本企業を、日本経済をむしばむ。それはいま始まったばかりで、本格化するのはまさにこれから。2016年はテロよりチャイナリスクの猛威が日本全体を巻き込んでいくことになる。

クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏が言う。

「中国経済が悪化する流れは当面変わりません。実は中国の不動産バブルはすでに崩壊している。が、それを表面化させないために、不動産投資をしている大企業などに金融機関が追い貸しをしているのが実態です。

これは時間稼ぎをしているだけでいずれ限界を迎える。そのとき、不動産投資をしている大企業が破綻する可能性もあり、そのショックは日本の輸出企業を中心に波及し、日本の株価を引き下げる」

日本総研副理事長の湯元健治氏も言う。

「中国の株式市場はいま落ち着きを見せていますが、安心はできません。中国企業の債務残高は莫大で、GDPに占める割合が約157%。日本企業が'80年代のバブル時にGDP比で約132%の債務を抱えていたことを思えば、これが不良債権化したときのインパクトははかりしれない。

こうした実体経済の問題がクローズアップされれば、再び今夏のような暴落劇が起きても不思議ではない。その時は世界同時株安になる可能性があり、日本株も逃れられない」

中国人観光客による「爆買い消費」もそろそろ終わる。

すでに兆候が出ていて、これまで爆買い消費に支えられて業績絶好調だった大手百貨店の11月の売上高が、前年同月でマイナスに転じた。百貨店業界では、「マカオの悲劇」が日本を襲うとの声も聞こえてきた。

マカオの悲劇とは、中国からのVIP客で沸いていたマカオが、中国経済の失速などで客足が途絶え、収入の激減が止まらないことを指す。その実態は凄まじく、マカオのGDPは7-9月期が前年同期比で約24%減、4-6月期も約26%減と、一経済圏のGDPを大きく揺るがすほどになっている。

いま日本経済は2四半期連続のマイナス成長だが、中国人の爆買いによってなんとか支えられている面が大きい。この支えがなくなれば、景気は足場を失って崩れ、本格的なリセッション(不況)に突入するだろう。

「これまで中国経済に強気の姿勢を見せていた日本銀行も、態度を変えた。12月2日、岩田規久男副総裁が岡山県での懇談会で、『最も重要と考えているのは、中国経済が一段と減速し、わが国経済に悪影響を与えるリスク』との旨を語り出した。日銀が警戒し始めた意味は重い」(全国紙経済部記者)

中国市場の死は、きっとサドンデス(突然死)として訪れる。その日を指をくわえて待つのではなく、もう動き出したほうがいい。

「週刊現代」2015年12月19日より
なんとも怖い記事だ。世界の株式市場が安定的な方向に向かう気配が感じられない日々が中国の株バブル崩壊以降続いている中国市場への警戒は怠ってはならない。

今年の8月11日の中国のバブル崩壊で「中国は土地・不動産バブルの崩壊で」中国元の切り下げを発表しようとしが「株バブルの崩壊で」切り下げたと発表したという、「土地不動産のバブル崩壊」と「株バブルの崩壊」では崩壊の重みが全然違うと。「土地不動産と株」では立て直しに20-30年間も違ってくるということである。

株バブルの崩壊」についても投機筋は長期化すると言っていたが、上海総合指数は8月に付けた安値から現状では短期間に20%も上昇している。日本では1980年代の土地、不動産バブルの崩壊から立ち直るのに15-20年近くかかっている。だが中国の場合、土地は政府からの賃借権であって資本主義とは異なり中国の土地不動産バブルの崩壊は立ち直ることができるのか実際のところわからない。

 中国は現状、輸出主導から金融立国をめざし、国内景気消費主導の成長へ 転換を計ろうとはしているが、上の週刊現代の記事からは非常に難しい状況であると思う。

中国は銀行への行政指導や金利の自由化をすすめ、市場を通じた金融政策に移行していくとの見方を示し、10月には預金金利の上限を撤廃したが、まだ当局は100%自由化には遠い状況にある。まだ本格的な自由化は行われていない状況にある。

中国人民銀行は強い人民元の国際化をすすめるためにSDR入りを強くのぞんでおり、今回のSDR入りを人民元国際化の第一歩であると大変昂揚しているが、中国で改革が実を結ぶのか疑問だ。 
中国はなにやら高揚しているが…
最近、中国政治・経済が急速におかしくなってきた。

本コラムでも以下のようにテーマ、視点を分けて、中国の政治・経済問題を取り上げてきた。

○急ぎすぎた覇権(中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183

○経済成長率の低下(衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている?データが語る「第二のリーマン・ショック」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183

○無理なAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想(日米が参加しないAIIBの致命的欠陥。中国は必ず日本に水面下で参加を求めてくる http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42865

その中国で、珍しく国民の気持ちが高まるような出来事が起こった。国際通貨基金(IMF)が11月30日の理事会で、中国人民元をSDR(IMFの特別引き出し権)の構成通貨に採用することを正式に決めたのだ。これは、中国という国のメンツをくすぐる出来事だ。

SDRとは、IMF加盟国の準備資産を補完する手段として1969年に創設した国際準備資産である。ただし、SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもない。

むしろSDRは、IMF加盟国の「自由利用可能通貨」に対する潜在的な請求権であり、SDRの保有者は、保有するSDRと引き換えに、「自由利用可能通貨」を入手することができる。その際、SDRの価値を決める通貨バスケットは「自由利用可能通貨」から構成される。

従来「自由利用可能通貨」として、IMFはドル、ユーロ、円、ポンドを指定していたが、それらに人民元を加えたのだ。これをもって、人民元も国際通貨の仲間入りと囃し立てる人もいる。

一般論として、IMFが人民元をドルや日本円と並ぶ世界の主要な通貨として採用するとしたことで、加盟国との間の資金のやり取りなどに人民元が活用していくといわれている。通貨の世界でも中国の存在感が高まったというわけだ。

これによって、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)での取引の自由化も加速すると予想され、世界の金融界での中国の存在感がますます高まる、という見方がある。

耳を疑うようなニュースが入ってきた
しかしIMFは、国際的に使われている通貨を「自由利用可能通貨」と認定するだけで、IMFの認定によって市場が本質的に変わるわけではない。あくまでIMFが市場の結果を追認するだけだ。

今回の決定は、人民元が自由な市場で取引され、価格が自由に変動することを意味していない。人民元には中国政府の制約が多いという問題もある。今は変動相場制の時代であり、変動相場の中で人民元が「自由に使われるか」どうか、それが、真の「国際通貨」であるかどうかのメルクマールになるだろう。

なにしろ、SDRといっても、通貨危機に備えて加盟国に配るものなので、危機になってSDRを差し出し、交換性の乏しい人民元を手に入れるのは考えにくい。いってみれば、SDRは滅多に使われない「仮想通貨」みたいなもので、その換金に人民元が使われるのはもっと考えにくいのだ。

人民元が自由な為替市場の中で取引されるかどうかは後で論じるとして、先週、にわかには信じがたいニュースが聞こえてきた。

「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」という報道だ(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201512/2015120300938&g=int)。

AIIBの資金調達のため、発足当初に発行する債券が「格付け無し」になる見通しとのことだ。国際機関債で無格付けというのは聞いたことがない。おそらく、中国が「独自の国際ルール」を作ろうとしている、ということだろう。

中国がAIIBの設立に精力的だったのは、中国中心ルールの経済圏がどうしても欲しいからだ。これを少し説明しよう。

中国はこれまで自国経済への影響からTPPへの参加は消極的だった。というか、いまのTPPでは中国が参加できない理由がある。TPPでは貿易だけでなく投資の自由化(TPP第9章)も含まれていたからだ。中国は社会主義であるので、生産手段の私有化を前提とする投資の自由化を基本的に受け入れられない。

なお、余談であるが、TPP反対論者からよく出されるISDS条項(編集部注:外国企業や投資家が国を訴えることができるようにする制度)も、この投資自由化に関係する。以下に述べるように、ふつうはまず問題ない。

中国がTPPに参加できない理由
ISDS条項はこれまでの日本の投資協定にも何度も入っていた。日本でも20件以上、ISDS条項が入った投資協定が結ばれている。

それらのISDS条項について、これまで日本が行使されたことは一度もない。ISDS条項で訴えられているのは国内のルール整備が未熟な新興国だ。日本はこれまでもずっとISDS条項を結んできたが、ガードが堅いほうの国なので、訴えられたことはない。外務省も含めて日本政府の役人はけっこう厳密にやるからだ。

このISDS条項は、これでアメリカからオーストラリアがやられたと評判になったもの。しかし、実情は、アメリカとオーストラリアの間の協定ではISDS条項はなかったのに、アメリカのフィリップモリス社は、香港の子会社を使って、オーストラリアを訴えたのだ。

もし、このように日本もやられるなら、とっくにやられているはずだが、日本の法律は外国企業に対して酷い差別的な扱いをしていないので、さすがのアメリカも手出しができなかったわけだ。

中国は投資の自由化を最も嫌うので、ISDS条項は日本には有利だが中国には不利な制度だ。日本のTPP反対論者はまるで中国の走狗のような発言をしていた、というわけだ。

また、TPPでは国有企業が大きな障害になる(TPP第17章)。外国企業が国有企業と対等な競争条件で事業を行うことができるように、国有企業への有利な条件での貸付け等は制約されるからだ。

国有企業が大半を占める中国は、国有企業民営化などに迫られる可能性が高い。このため、この条項は、中国の国家体制を揺るがすことにもつながりかねない。

国有企業が多く、GDPの3分の1程度を占めているマレーシアやベトナムがよくTPPに参加したものだ。これらの国は、今後国営企業を民営化するなどの大改革を行う決意なのだろう。

さらに、知的財産の関係でも、知的財産保護の弱い中国がTPPに参加するハードルは現状ではかなり高い(TPP第18章)。

以上のように、投資自由化、国有企業改革、知的財産保護において、中国はTPPに参加したくてもできない状態なのだ。特に、投資自由化と国有企業改革は、中国の体制問題に発展する可能性があるので、まず克服できないだろう。

中国経済の限界
TPPに参加できない中国の、国際経済におけるハンディキャップはきわめて大きい。そこで、投資自由化、国営企業改革、知的財政保護の必要のない、中国に有利なルールでの、経済圏を構築するために、AIIBを急いで設立しようとしていたわけだ。中国の言葉で言えば、「一帯一路」構想とそれを支えるAIIBである。

ところが、AIIBにも暗雲が出てきた。それが上に述べた報道(「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」)である。

中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBは、中国が中所得国の罠を突破するための手段と考えられているようだが、筆者から見ると、原理的に無理筋である。それを以下に示そう。

中国がそろそろ一人当たりGDP1万ドルの壁にぶち当たろうとしている。

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その突破には、これまでの先進国の例を見ると、社会経済の構造改革が必要である。それは、先進国の条件ともいえる、資本・投資の自由化である。

日本は、東京オリンピックの1964年に、OECD(経済協力開発機構)に加盟することによって「資本取引の自由化に関する規約」に加入し、資本・投資自由化に徐々に踏み出した。

当時は、第二の黒船といわれたが、外資の導入は経済の後押しになったわけで、それが功を奏して、日本の一人当たりGDPは70年代半ばに5000ドル、80年代前半に1万ドルを突破した。

資本・投資自由化をすれば、国有企業改革も当然やらざるを得なくなる。この意味で、中所得国の罠を突破できるかどうかは、いいタイミングで資本・投資自由化を行えるかどうかにかかっている。

それには、資本主義経済のほうが踏ん切りが付けやすいだろう。少なくとも国営企業改革はそれほど難問でないからだ。この点、中国の社会主義体制は、資本・投資自由化を行えないという致命的な欠陥がある。

やっぱり見通しは明るくない
資本・投資自由化がうまくいくと、為替の変動相場制を導入し、独立した金融政策が可能になる。日本やアメリカなどがそのケースだ。または、ユーロのように固定化された変動相場と、金融政策には独立性がない制度もある。

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これらは、上図のように国際金融のトリレンマとして、よく知られたことである。特に、独立した金融政策は、国内経済を維持するためにもっとも重要な経済政策手段を確保することになる。少なくともこれまでの先進国で、資本・投資自由化なしで経済発展してきた国はない。

中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBは、国際金融のトリレンマの中でいえば、自由な資本移動を否定し、固定為替制と独立した金融政策を行うという、これまで前例のない取り組みをおこなっているといえる。

論理的に考えて、それがうまくいく可能性は少しはあるものの、資本・投資自由化がないと持続的な経済発展は望めないという意味で、筆者は先進国では「原理的に無理筋」と考えているわけだ。

長い目で見れば、社会主義国の中国でも、こうした矛盾が出てくるはずだ。そうした視点からみたら、冒頭述べたようなおかしな問題が出てくるのは不思議ではない。

広州、香港、マカオで数千社の倒産が起こっているという話にも驚かない。中国では、破産法制は必ずしも完備しているとはいえない。しかも、日本のように手形不渡りで銀行取引停止という処分もないので、倒産がなかなか顕在化しない。

そうした国なので、例えば、香港の社債市場では、格付けなしの社債は珍しくない。であるから、AIIB債を無格付け発行したことも、別にニュースでないともいえるだろう。ただし、国際機関債で無格付けというのは聞いたことがないので、これが中国ルール、ということなのだろう。

中国ルールの経済圏(「一帯一路」構想)とAIIBが原理的な部分で致命的欠陥を抱えている以上、長い目で見れば中国政治・経済の見通しは明るくないといわざるを得ない。
人民元のSDR採用も一時の気休めにしかならないようで、中国はこれからデフレの苦しみに遭う。債務も積み上がり・・・・このさきどうなるか?産経新聞特別記者・田村秀男氏の記事
米連邦準備制度理事会(FRB)が今月16、17日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の利上げを決定する。昨年秋の量的緩和打ち止めに続き、2008年9月のリーマン・ショック後から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を終了する。その対外的衝撃はどうか。(夕刊フジ)
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 日本の株式市場は「織り込み済み」との見方が強いが、新興国市場のほうでは不安がくすぶっている。特に、あおりを大きく受けそうなのが中国である。

 中国の株式市場は6月下旬の大暴落以降、当局による強権によって相場の底抜けを何とか食い止めてきた。FRBは9月にも利上げする予定だったが、中国など新興国市場の動揺を考慮して決定を先送りしたが、米景気の堅調ぶりからみてゼロ金利を続けるわけにいかなくなった。

 中国のほうは、習近平国家主席が執念を燃やしてきた人民元の国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨入りが実現した。その条件は元の変動幅拡大や株式など金融市場の自由化だが、外国為替制度は当面、元をドルに連動させる管理変動相場制を続ける。これだと米利上げとともに試練に直面する。

 米利上げでドル高に向かう。ドル高はすなわち元高となり、中国にはデフレ圧力が加わる。それを避けるためには、元を切り下げる必要があるが、するとワシントンから制裁を受ける恐れが高まる。

 共和党の大統領有力候補、ドナルド・トランプ氏は「中国は為替操作国」だとすでに非難しているし、大統領選と同時に行われる議会総選挙を控え、議員の多くが反発しよう。

 北京のほうも、元切り下げをためらわざるをえない事情を抱えている。元安となると、巨額の資本逃避が起きる恐れがあるからだ。現に、8月に中国人民銀行が人民元切り下げに踏み切ると、大量の資金が流出した。

 グラフは、中国企業(金融機関を除く)の債務と、企業向け平均貸し出し金利から製品出荷価格の増減率を差し引いた実質金利負担の対比である。最近では、名目の貸し出し金利は4%台半ばで、1年前の6%に比べて下がったものの、製品値下がりのために実質的な金利負担は急上昇してきた。今の平均実質金利は11~12%にも及ぶ。鉄鉱、家電、自動車、建設関連など中国の過剰生産能力はすさまじく、製品価格は12年4月以降、前年比マイナスが続き、しかも減少幅は拡大する一途である。

 支払いが困難になっている企業は、金融機関に債務返済を繰り延べてもらうほか、追加融資を受けている。さらに社債など債務証券を発行して資金調達している。

 この結果、債務は雪だるま式に膨れ上がっている。日本円換算でみると、14年3月に約1500兆円だった債務残高は15年3月には600兆円以上増えた。外貨建て借り入れも増えており、元を切り下げると、その分債務負担がかさむ。

 まさに巨大な債務爆弾である。「国際通貨元」は中身ぼろぼろの「悪貨」なのである。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
巨大な債務を抱えるなかで、中国政府はは2016年から新5ヵ年計画で年平均6.5%以上の成長目標をかかげる見通しである。中国は4-5年前から生産を成長目標としてかかげていたものを今年から中国は消費主導の経済を目指すと言っている。高い成長率を維持するために簡単に消費主導の経済に移行することなどそう簡単にできるものではない。あの重厚長大な生産設備や国営企業の工場をどうするのか?剰供給体質が残る鉄鋼・建設機械などはそれを撤去するだけで多額の費用がかかる。かと言って生産しても最近は製品価格が大きく値下がりし、生産すれば莫大な赤字を生むだけに前にも後にも進めない状況となってきた。日本のデフレ突入時よりすでに状況は悪化している。

中国は米国との中国潰し政策に嵌り、前に進むにも後にさがるも大変なマネーの負担となってきた。中国にとっては最近の原油の値下がりと共にあらゆる生産物の価格下落は果たして4-5年後にマクロ経済の減速が続くなかで、10年前に中国政府の手厚い庇護の基に生産を高めてきた企業をいかにうまく潰し、かつての国有企業を始末して、成長の芽を宿す企業を作れるようには思えない。

米国が中国潰し政策を続けている原油価格等の下げに伴う価格安は中国にとって末恐ろしい凶器となってきていることを知るのは5-10年後である。中国は物価下落の重みを感ずる日が必ず来るであろう。

米国株式は利上げ後どこかのタイミングで上がってくると思うが、問題は日本株の投資のタイミングである。・・・年末の安値は例年買いというのが定石なのだが・・・
米金利上昇は教科書では円安ではあるが、過去米国利上げ局面では円高になった、どの程度円高になるかが見極めるポイントではないか?中国と地獄へ道連れは勘弁してほしい。