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まえがき
 2016年1月29日、日本銀行は政策決定会合でマイナス金利を準備預金に導入することを決定した。年初来の株安・円高のトレントに何とか歯止めをかけようと、意表を突いた政策の導入である。

 黒田総裁の心意気や良しであるが、残念ながらまったく無駄な行為である。
 2013年4月、2014年10月と、過去2度の金融緩和は、その後の円安・株高を生
み、絶大な効果を発揮したと評価されてきた。
 「アペノミクスの一環として日銀によるアグレッシブな金融緩和は不可欠な要素」として、そのために黒田総裁を指名した安倍政権は、出だし好調で円相場は80円から125円、日経平均は8000円から2万1000円近辺までの、円安・株高を演出した。
 したがってアベノミクスは、学界においても一定の評価を得ることができ、今後も期待されている。
 しかし、この円安・株高とアベノミクスはまったくIrrelevant(無関係)なのである。
 本来アベノミクスに関係なく、円か暴落し、株が暴騰するタイミングにあっただけの話である。アベノミクス、が役に立ったわけでも、邪魔したわけでもない。ひたすらに無関係だったのである。

 2012年12月に上梓した拙著『不連続の日本経済』のなかで、”経済の低迷から脱するには何か起こらなければならないのか。いちばん大事なのは時間の経過である。経済も相場も時間の関数であるから時間の経過が最重要のファクターである。時間が十分経過すればバーティカル(垂直的な上昇)な動きの端緒、が出てくること、その後の動きを正しく予測していた。アベノミクスも黒田日銀総裁もないときである。
 要は、2012年暮れ以降は円か暴落し、株価が暴騰する時間帯に入ったのである。
 アベノミクスや黒田日銀といった人為ではなく、神意あるいは宇宙のルールでそうなっただけなのである。

 しかし、宇宙のルールで、2015年の半ばに円は125円86銭をつけ、日経平均は2万952円をつけ、天井をみてしまった。

 もともとアベノミクスなどというもので円安や株高になったわけではなく、自然のリズムでそうなっただけのものが、2015年半ばには自然のリズムで天井をつけてしまったのである。

 したがって、当然のことながら大幅な株安・円高の流れに入っている。
それを人為そのものであるマイナス金利などで止めようというのは、まったく見当違いな政策である。つまり政策では何をやっても止まらないのである。

 ところが相場も捨てたものではない。
 日本はすでにデフレを脱却している経済であるため、この株式相場の下げの日柄が終わる2016年末には底をみて、再び日経平均が上昇に転じるのである。そうなると、この日銀によるマイナス金利も、場合によっては「賢明な措置だった」と評価されることになる可能性もある。そのあたりが、経済学で相場を律するという、見当違いな作業が生み出す悲喜劇である。

 日本の株式相場はすでに大底を2008年10月にみているので、いまから始まる世界デフレのなかでも相対的に安定した推移をたどるものと思われる。


 問題は為替相場である。
2011年10月の75円53銭が円の最高値であるが、黄金分割で律すると、1949年4月の1ドル360円の決定からの62年目の日柄で出た、由緒正しき時間を踏んだ円の最高値である。ところが、為替相場はドルの時間帯でも由緒正しき時間を踏む必要かおる。

 そのドルからみた由緒正しき時間は、米国デフレが最も深化する2022年と考えるのが正しいだろう。ドルの非公式の切下げが始まった1968年3月の金二重価格制の導入からの54年目という由緒である。

 いまから6年後の2022年3月にドルの底がくることが考えられる。では、円の天井75円53銭と2022年3月のドルの底と、どちらがより円高なのか。

 次なるドル安の底を黄金分割で律すると、360円の固定相場から計ると65円(47ページ)、2015年6月5日の高値125円86銭から計ると、ペンタゴンの高さ59円を減じて66円86銭となる。

 したがって、どうも次のドルの底は65円か良いレベルではないかと思い始めている。

 なぜ65円になるのか。「相場がそこまで行きたがっているから」というの、が答えだろう。

 為替相場は記号である。ファンダメンタルズで為替をみるのは間違いである。
 ゼロ金利時代にマイナス金利にしたからといって、いまさらファンダメンタルズでもないだろう。すでに世界はゼロ金利なのだから、金利は役目を終え、為替相場がもっぱら、景気の安全弁としてつかわれる時代である0金利の世界で景気が調節できたインフレ時代とは別のデフレ時代の発想が必要だろう。

 全判がゼロに固定されるとき、世界景気のスタビライザーあるいはイクオライザーして為替相場の振幅が増大するのは不可避だろう。
 覚醒する大円高である。

 二〇一六年二月
                                        若林 栄四

   覚醒する大円高◎目次
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Chapter
まえがき

 私はこうして
 相場をとらえている


    多くの人が「絶対に」と思っているときは疑うべきである

    利上げに踏み切った米国と緩和を続ける日欧……011 
    金利を上げればドル高になるのか?……………015
    「絶対に起こらない」と思うことが起こるのが相場である……017

    長期の値動きをみなければ相場はわからない

    上がったものは下がり、下がったものは上がる……019
    5年程度の分析では本質は何もわからない……020
    ノイズ・トレーディングでは大きく儲けることはできない……022

    経済指標よりも相場の動きが先である

    相場は自ら動きたいほうへ動く……………024  
    デフレ下での利上げという米国の愚かな政策……026
    2016年は米国発の波乱相場が幕を開ける…………028

    「相場を予測する」ということの意味

    「いつ、いくらになるのか」でなければ意味がない……030
    黄金分割とペンタゴンとの出会い……031
    黄金分割とは「自然な均衡」である……033
    ペンタゴンの形は黄金分割に則っている……038
    30年近く研究しても、まだ新たな発見が出てくる……040                
    1995年4月の1ドル=79円75銭に秘められた意味                 
    ベストセラー『大円高時代』の内容はただのカンだった……043
    1995年4月はエポックメイキングな日柄だった……045

    相場の波動を読む方法

    チャートは四半期足がふさわしい……049
    なぜ為替相場にはテクニカル分析なのか……053
    相場の世界の主語は「人」ではなく「相場」である……056

Chapter
  私はこうして
  相場と対峙している


    欲望と恐怖のゲームに打ち勝つ方法                       
    損切りよりも利益確定がむずかしい……060
    「どうせ銀行のカネだから」という考え方がいい結果を生んだ……062

    勝って当然、負けても当然

    負けるときには理由がある……067
    運を長持ちさせるコツ……070
    相場と博打は別物……071

    相場の流れに乗るための心構え

    【心構え その 1】上がると思ったら買い、下がると思ったら売る……074
    【心構え その2】相場観に間違いがないなら我慢する……075
     【心構え その3】ポジションは儲かっているときに増やすもの……076
     【心構え その4】少数派に身を置く……077
    【心構え その5】波動に乗り遅れたら様子をみる……07

Chapter
覚醒する大円高
―――為替相場の時期と水準を予測する

    125円86銭は完璧なドルの高値

    2011年末から続いたドル高(円安)の波動は終れっている……082
    値頃と日柄が見事に黄金分割に一致している……084

    2016年は”大ドル安”の始まりである

    利上げに関するニュースがノイズとなった……090
    1ドル=100円ぐらいまでは道理に合う……091
    2016年後半には米国経済の弱さが世間でも明らかになる……093
    ドル/円にはドルと円の2つの日柄が関係している……096
    最後の大円高(大ドル安)は短期で終わる……099
    ユーロ/ドルは2017年第3四半期まで下げ基調
    2016年4~6月から下げのタイミングに入る……102
    ユーロは「ドルの裏側」という存在に過ぎない……103
    2022年にユーロは解体される……107

    ユーロ/円と豪ドル/円も2017年の第3四半期に転機がくる

    ユーロは対円で100円を割り込む……109
    豪ドル/円の90円超えは困難……113

Chapter 
米国発の波乱相場が訪れる
―――株式相場の時期と水準を予測する


    日経平均は1万4000円まで下がる

    日経平均の日柄の起点は1989年がふさわしい……118
    値頃と日柄の両面から天井を打った……122
    米国株の日柄に支えられた日経平均……125

   デフレの本格化とともに暴落する米国株

   2008年から2022年はデフレが深化する時期である……に127
   長期金利も株価も大きく下がる……131
   チャートもNYダウが暴落する予兆を示している……134

   米国の株価はとこまで下げるのか

   2016年末に1万2500ドルまで下がる……140
   2022年第1四半期に6700ドルまで下がる……146

   テックバブルの崩壊が米国株価急落の引き金になる

   景気に関する指標は頭打ちである……148
   「ユニコーン」という名のバブル企業……150

   2022年の米国発デフレショックと日本株への影響

   すでにデフレを脱却している日本への影響は少ない……154
   2017年以降、日経平均は上昇に転じる……156
   米国や欧州とは異なる時間軸を進んでいる……157

   日本経済の将来は明るい

   他の多くの国に比べれば日本はまともである……159
   国としての運気が上昇しつつある……160

   中国株が世界に与える影響は軽微

   公表されている経済指標は信用できない国……164
   2017年第4四半期に1000ポイントとなる……168

Chapter
下落する原油と暴騰する金(ゴールド)
―――コモディティ相場の時期と水準を予測する


    40年半の日柄のすさまじさを物語る原油相場

    2008年7月の147ドルは歴史的な天井……172
    2017年の第3四半期に20ドルまで下落する……174 

    金(ゴールド)は米国のデフレを背景に暴騰する

    1920ドルは理由のある天井だった……178
    2016年6月から2000ドルに向けて暴騰する……181
    FRBが駆け込み利上げをした背景……185


Chapter
相場は神意に基づいている
―――「マッドードッグ(狂犬)・ワカ」奮戦記


    ゴルフ三昧で太平楽を決め込む……190
    相場観よりも相場学が重要だと気付く……192
    相場は謙虚な人間を好む……196
    上司達に恵まれて生き残れたカ-ター・ショック……199
    身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ……201
    相場の運の分かれ目はほんの紙一重……210
    人間の運命も相場も神意に基づいている……211

付録
2016年の
米国大統領選挙について

    なぜトランプは高い支持平を得たのか……222   
    共和党のその他の大統領候補者の顔ぶれ……221
    今後も共和党は民王党に勝てない……226


「1ドル65円になる」伝説のディーラーが断言
若林栄四氏が為替相場の行方を大予測

鈴木 雅光 :JOYnt代表 【東洋経済オンライン】2016年03月08日

「2011年末から続いたドル高の波動は完全に終わった」

旧東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)時代などに、「伝説の為替ディーラー」としてその名をとどろかせた若林栄四氏。最近では、2011年の円高から円安への転換をズバリ的中させたことでも知られる。現在、ワカバヤシFXアソシエイツ代表取締役である同氏は、今のドル円相場について、ベストセラーとなっている「覚醒する大円高」(日本実業出版社)で冒頭のように断言する。

歴史的に見てドル安の流れは止まらない

それに続いて、若林氏の口から出た言葉は、さらに衝撃的だった。

2月に入り、ドルは一時1ドル110円台まで売り込まれた。足元では、ドル安は一服したようにも見える。だが、ドル安の流れはこれで止まらず、さらにドル安が進むと言うのだ。

「相場は波動なので、上がったものは下がり、下がったものは上がる。ドルは1ドル75円54銭という安値から約3年8カ月で、66%も上昇した。これだけ上がれば、今度は下がるのが自然の流れだ」。

過去、ドルが暴騰した後には必ず暴落が来ている。

第1次ドル暴騰は1978年10月から1982年10月で、この間、ドル円は1ドル176円から278円まで56%のドル高となり、その後は20%程度のドル暴落となった。

第2次ドル暴騰は1995年4月から1998年8月で、この時のドル円は、1ドル79円から147円まで85%のドル高になった後、31%のドル暴落となっている。

「今回は2011年10月から2015年6月までの66%ものドル高であり、その後のドル下落率が20~30%と想定すると、20%のドル安なら1ドル100円程度、30%のドル安なら1ドル88円程度までドル安円高になる。相場は一度走り出すと19カ月くらいは一方向に進むので、目先は2017年1月にかけて、1ドル88~100円のドル安は十分に起こりうる」

しかも、2017年1月前後でいったん反発したとしても、最終的にはドル安のクライマックスが2022年2月に示現すると若林氏は予測する。それが、1ドル65円という大円高だ。

「今、この数字を言っても笑われるだけだが」と前置きをしながらも、「黄金分割で計ったところ、1ドル65円は十分にありうる水準」と言う。
なぜ2016年末前後が、大きな節目になるのか。

「多くの人は、現在の1ドル113円台を見て、『いくら何でも65円はない』と考える。しかし、1990年4月の時点で1ドル160円前後だったドル円は、1995年4月に79円75銭になった。ドルは対円でほぼ半値になったのだ。それを考えれば、現在の1ドル113円が6年後に1ドル65円になっても不思議はない。それが相場だ」

しかし、気になるのは、この大円高が株式などのマーケットに及ぼす影響だろう。目先で見ても、1ドル88~100円までドル安が進めば、日本経済への影響は無視できない。株価の行方が気になるところだ。

「黄金分割の重要日柄(=日数、期間)のひとつに27年というのがある。これは162カ月の2倍に相当する。日経平均株価が平成バブル後の安値である7604円(当時)をつけた2003年4月は、バブル天井1989年12月29日の3万8957円からの160カ月目だ。誤差の範囲だが、ほぼ162カ月と見て良いだろう。そして、そこからさらに162カ月目が、2016年12月にあたる。ここに向かって、株価は再び下落する。

その時の日経平均株価は、場合によっては1万円を割り込むかも知れない。逆に言えば、27年という日柄が整理されれば、その後は上昇へと転じる可能性がある。したがって今、日本株の買いポジションを持っている投資家なら、今夏前後までの戻りでいったん、手持ちの日本株を売却。キャッシュポジションを高め、2017年1月から再び日本株のポジションを増やすべきだろう」。

ただ、無傷で済まないのが米国の株式市場だ。若林氏は、2022年にかけて米国経済が大デフレ局面に突入することを指摘する。その根拠を、米国の長期金利に求めている。

過去に遡って米国の長期金利を見ると、

1861年=6.45%(天井)

1901年~1902年=1.98%(底)

1920年=5.67%(天井)

1941年=1.85%(底)

1981年=15.84%(天井)

となっている。

日本株が2017年初から上昇に転じるワケ

「天井をつけたのが1861年、1920年、1981年であり、インフレの60年サイクルとほぼ一致している。一方、底を付けたのは、インフレピークから見て40年半前後のサイクルだ。1920年から1941年は例外で、これは1920年がインフレの60年サイクルにあったからだが、1941年の底から1981年の天井までは、見事に40年半となっている。このサイクルをあてはめると、1981年の天井から2022年にかけて、金利が大底に向かって進む。この間、米国経済は大デフレに陥っているだろう」。

大デフレが進むなか、NYダウは「2016年12月末までに1万2500ドル。そこでいったん戻すだろうが、米国経済が大デフレに突入したことを確認したうえで、2022年第1四半期にかけて6700ドルまで下がる」というのが、若林氏の見方だ。

それにしても、米国が大デフレ、株価暴落に見舞われるなか、なぜ日本株は2017年1月から上昇に転じられるのか。

「日本は一足早く大デフレを経験した。下がり続けたものはいつか上昇に転じる。デフレも行き着くところまで行き、均衡が破れれば、物価の下落に歯止めが掛り、上昇へと転じる。その時、世界の投資家は日本の株式市場に注目し、日本株は長期上昇局面の入り口に立つ」

そのチャンスを逃さないようにするためにも、日本株のポジションを持つ投資家は、今のうちから徐々にキャッシュポジションを高めておくのが良さそうだ。
さすがに現時点で1ドル65円になると言われてもリアリティがない、だが若林栄四氏は65円を予想している。www

円高が進行する最中、長期的に円安になると一人逆張りの主張したのは若林栄四氏だった。時に当らない部分もあるが、若林氏の相場観は無視できないというより、私は若林氏の言動には常に注意している。若林氏は常に少数派に身を置き、逆張りの若林氏が今度は円高と言い出した。

ちなみに1997年の著書”ドルの復活 円の失速―1ドル200円、長期円安時代の到来”という本をだしています。1998年までの円安は当てていますが、この本によれば今頃1ドル200円です。

若林栄四氏の著作
黄金の相場学 2005~2010 2004/12 円安予想(2006年1ドル161円で外すが、その後円高と2004年12月の時点で、米国のサブプライムローン問題を明確に指摘)
「10年大局観」で読む 2019年までの黄金の投資戦略2009/2/17(2011年に、1ドル=74円の円高と予測、2011年に株価の大底を当てる)
・2012年2月円高の最終局面であり、1ドル74円になったら全力でドルを買え。
・対ユーロでも円安は進むが、大きな変動はない。
・高金利通貨は急落のリスクがある。
・日経平均は2012年10月に12000円になる。
・2013年まではニューヨークダウは弱含みが続く。
・金価格は2000ドルになる。
・日本株の買い時は2013年10月になる。
当り外れはあるが1ドル74円がドルの底値というのは当たった。
この本では75円が円の大天井と言っていたはずですが・・・その後の株高は当たっています。

1ドル65円に現時点ではなるとは思えないが、2007年124円だったドル円が、2011年75円まで円高が進んだことを考えれば・・・・無きにしも非ず。もし1ドル65円になれば次はまた1ドル140円かもしれない。為替相場は大変動する。

私は海外居住をしたことはないが旅行には行く。大好きなハワイも円高が来るまで行く気がしない。2014年ハワイに行った時に1ドル=100円でも物価が高いと思っていた。120円台で行く人たちの気がしれなかった。実感からする円の価値は1ドル90円~100円あたりが妥当かと思います。

日本の企業業績はこれから下方修正になるかもしれない。米国は利上げが間違いでこれからリセッションに向かうと若林氏は主張する。米国の利上げこれ以上なければ1ドルは100円近辺は妥当になる。

だが、若林氏の米国のリセッション説は少数派であり、相場を大きく外す名人ジムロジャースが米国のリセッションを主張しているので、私はトランプが大統領にならない限り2016年米国のリセッションはないと思う。ドル安円高が米国景気を下支えし始めたのだ。

円高になると来日外国人数が頭打ちし減少するかもしれない?しかし、私は懸念していない。一度日本の良さを知ってしまった外国人観光客そう簡単に訪日を止めないだろう。なぜなら世界で一番安全な日本は旅行先として魅力的だからだ。欧州はテロの標的であり、中近東も全て危ない。日本は安心できる観光地なのである。

さて、某大手証券の無能なアナリスト、今泉某、吉野某が1ドル=130円と未だに言っている。あんな馬鹿に高い給料と経費をかける必用などない。初めから聞く耳を持っていなかったが、昨年から円高を予想している有能なアナリスト亀岡氏を冷遇する大和某大手D証券は馬鹿だ!


[東京 7日] - 新年度早々、ドル円相場は急落。5日にはハロウィーン緩和が実施された2014年10月31日以来、1年5カ月ぶりの円高・ドル安水準を記録した。理由は様々あろうが、一義的には米国金融政策の正常化プロセスへの不信が招いた動きと考えられる。

米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの政策金利見通し(ドットチャート)を見れば、長期見通し(Longer Run)のフェデラルファンド(FF)金利や実質国内総生産(GDP)成長率は、13年5月にバーナンキ前連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和縮小の方針を示唆し、正常化プロセスが始まって以降、低下の一途をたどっている。

引き締めを検討している最中に経済の地力が落ち込むという状況を見る限り、そもそも正常化という方向性自体が正しいのか疑問が抱かれて当然だ。かかる状況下、年内の米利上げは、よくて1回、順当にいけばゼロ回というのが筆者の想定である。

こうした状況下でのドル円の見通しは当然、円高方向であり、今後1年間で100円割れを臨む地合いも警戒したい。昨年央以降、ドル高が明らかに米経済を蝕み始めている兆候があるため、16年は円高の年になると考えてきたが、こうした見方はFRBではブレイナード理事が頻繁に口にしており、筆者も為替見通し作成上、同氏の主張を大いに参考にしている。

今次正常化プロセスの最大の特徴はその異様に長い助走期間であり、13年5月のバーナンキ議会証言から利上げまでに実に2年7カ月もかかった。だが、期待を織り込みやすい為替市場では実際の利上げ前からドル高が進み、実質実効ドル相場はその間、約18%も上昇した。

ブレイナード理事は講演で、ドル高が「FF金利にして75ベーシスポイント(bp)相当の金融状況の引き締め」になったと言及しているが、筆者も同感だ。FRBによる「孤高の正常化」が世界の運用資金を米国に惹きつけ、結果としてドル全面高を招き、これが製造業を中心として同国経済を痛めつけている印象は拭えない。これは要するに、ドル高を通じた「不況の輸入」であり、米国とて利上げで無傷ということはない。

足元ではドル相場の騰勢は小康を得ているものの、その実態はまだ「高止まり」と言った方が正しく、これが時間差を伴いながら金融引き締め効果を発揮し始めているのが現状と見受けられる。3月のドットチャート大幅下方修正は結局、過去2年余りのドル高相場が2、3回程度の利上げ効果を有し、これ以上の引き締めが難しくなっている実情を映し出しているのだろう。

<基軸通貨の意向は絶対、日銀の抵抗は無駄か>

1―3月期を振り返って改めて痛感することは基軸通貨ドルの影響力の大きさに尽きる。08年の金融危機以降の円高局面を振り返れば明らかだが、基軸通貨を司るFRBがハト派化する状況で、日銀側がどのような抵抗をしても、円高の流れを変えるのは難しい。

言い換えれば、「日米金利差拡大が見通せない状況で円安を展望してもほとんど無駄」というのが経験則だ。これは予想というよりも摂理に近い。

身もふたもない言い方だが、ドル円相場の趨(すう)勢を決するのは今や黒田日銀総裁ではなくイエレンFRB議長となっている感が強い。上述したように、FRBの正常化プロセスが始まって以降、FOMCメンバーが想定する中立金利、平たく言えば「利上げの終点」は徐々に切り下がっている。

FRBにとっての「利上げすべき余地」が着実に縮小している中で、円安・ドル高シナリオを描くのが難しくなっているのは当然だ。また、足元では日本の貿易収支が断続的に黒字化し、相応の経常黒字が安定的に確保される状況が続いている。歴史に学べば、FRBのハト派化と日本の経常黒字の安定化は円高要因として盤石の存在感を示す可能性が高い。

こうした理屈は、3月10日にフルパッケージの包括緩和を決定しながら通貨上昇に見舞われたユーロ相場にも当てはまる。実際、ドルインデックスのウェイトに関し、ユーロが60%弱を占めていることを踏まえれば、FRBのハト派化によるドル安の按(あん)分は基本的にユーロに寄せられやすい。

かねて指摘してきたように、世界最大の経常黒字などに代表される通貨ユーロのファンダメンタルズの強さを踏まえれば、買われるだけの理由があるため、なおのこと、FRBのハト派化に応じてユーロは買われがちになる。

1―3月期における日米欧三極の中央銀行で起きたことを客観的に振り返れば、日銀がマイナス金利を導入し、欧州中銀(ECB)がマイナス金利幅の拡大や資産購入額拡大など踏み込んだ決定を行ったのに対し、FRBはメンバーのドットチャートにおけるドット(点)の位置をずらしただけだ。結果、為替市場では3月中旬のFOMC後、ドル相場が大きく値を下げており、その見合いでユーロ高や円高が進んだ格好になっている。

こうした動きを見る限り、「いかに策を弄しても、FRBのハト派化という大きな流れの前では無力」という事実を感じざるを得ない。日銀やECBによる踏み込んだ追加緩和や、通貨当局による為替介入も各通貨の通貨安要因に足り得るが、それは「FRBの正常化プロセスが続く限りは」という条件付きだ。13年4月以降の日銀による量的・質的緩和や14年6月以降のECBによるマイナス金利が円安・ユーロ安を演出できたのは、同じタイミングでFRBが正常化プロセスを推進していたからである。

ドルインデックスを一瞥すれば分かるが 14年半ば以降のドル相場上昇は誰が見ても一方的であり、イエレン議長をして「驚いた」と言わしめたほどのペースだった。この先、ドル相場の水準が調整すること自体、さほど不自然なことではないだろう。為替相場は常に「相手がある話」だが、その相手がドルである場合はもう片側の主張はほとんど斟酌されないという事実が1―3月期の為替相場が教えてくれた最大の教訓だ。

加えて、10―12月期には次期米大統領の顔が見えてくる。クリントン氏にしろ、トランプ氏にしろ、ドル高をけん制する姿勢では一致している。10年にオバマ大統領が打ち出した5年にわたる輸出倍増計画が、結果としてその後の円高局面とほぼ符合したことは苦い思い出である。

<購買力平価が示すドル円下落の「今後の節目」>

では、ドル円相場の下値はどこまであり得るのか。考え方はいろいろあるが、例えば実質実効為替相場(REER)で見れば円相場は直近2月分において長期平均(過去20年平均)から10%以上、下方乖離(かいり)した状態にあるため、「調整は始まったばかり」という状況に見受けられる。

正確には2月分のREERは長期平均に照らして約13%、下方乖離しているが、円が対ドル以外の通貨に対しても同様の調整を経験すると仮定した場合、ドル円は95円程度まで下落することで長期平均に収斂(しゅうれん)するイメージになる。

また、経済協力開発機構(OECD)や世界銀行が示す購買力平価が105円付近であるほか、歴史的に、ドル円の上値目途として機能してきた企業物価ベース購買力平価(1973年基準)が100円付近である。

つまり、110円割れは「物価尺度に照らした然るべき節目」に向けた第一歩にも思われる。むしろ、今後1年のドル円の最大のテーマは100円割れを試すかどうかにあると考えたい。

*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。2012年J-money第22回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では1位、13年は2位。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月)
若林栄四氏は少数派が勝というのなら、今は円高が主流派ではないだろうか?
皆が円高を言い出した。

コラム:円高で懸念される外国人訪日客数、3兆円消費に影響も
【ロイター】田巻 一彦2016年 04月 8日 15:48 

[東京 8日 ロイター] - 外為市場で円高が進行している。市場関係者の多くは輸出企業の業績に対する打撃を心配しているが、もう1つ重大な懸念がある。アベノミクスの大きな果実である訪日外国人客が、減少に転じるリスクだ。昨年は3兆円の購買があったとの試算が出ており、足元でぐらついている国内消費の足を引っ張るようなら、景況感悪化に直結しかねない。

<円高に複合要因>

円高進展は急ピッチで、7日のNY市場では約1年5か月ぶりにドル/円JPY=EBSが107円台に下落した。

この背景として、1)米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースがより緩慢になるとの観測、2)世界経済の停滞によるリスクオフ心理の高まり──などが市場関係者から出ている。  

しかし、直近の市場をみていると、ドル安というよりも円独歩高の色彩が強くなっている。ある外資系金融機関の関係者は「アベノミクスに期待し、この3年間で円安と日本株高のポジションを構築してきた海外勢が、本格的にポジションをまき戻してきた可能性がある」と話す。

また、安倍晋三首相が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「通貨安競争は絶対避けなければならない」、「恣意(しい)的な為替市場への介入は慎まなければならない」と述べ、市場の介入警戒感が後退したことも影響しているようだ。

外為市場では、105円が意識され出し、輸出系を中心に日本企業の業績に対する懸念が台頭している。3月日銀短観によれば、大企業・製造業の今年度の想定レートが117円台と足元の水準から10円近く円安方向に設定されているからだ。

<円安効果はく落、外国人動向にリスク>

だが、もう1つ心配な分野がある。それは訪日外国人客の増加ペースに影響が出て、インバウンド効果に影が差すリスクだ。

2015年の外国人訪日客は、前年比プラス47.1%の1973万7000人と過去最高を記録。観光庁の試算では、外国人旅行客の日本国内における消費額は、同プラス71.5%の3兆4771億円にのぼった。

ビザ要件の緩和など政府の規制緩和策の効果が出て、国内消費を大幅に押し上げた。アベノミクスの果実の有力な1つと言える。

しかし、ある旅行関係者は、このインバウンド効果の増加の背景には「円安効果もかなり貢献している」と話す。その関係者が心配するのは、かつての超円高局面で外国人旅行客は急減したからだ。

急速に円高が進展した2009年、訪日外国人客は同マイナス18.7%の6789万人に落ち込んだ。11年は円高に原発事故も重なって同マイナス27.8%の6218万人に減った。

今回の円高が長期間継続した場合、訪日外国人客数に影響は出るのだろうか──。別の旅行関係者は、3─4カ月の時間差を伴って増加ペースが鈍る可能性があると予想する。

政府は2020年までの訪日外国人客数の目標を従来の2000万人から4000万人に倍増させたが、円高基調が定着してしまうと、この目論見に狂いが生じかねないだろう。

<外国人1人当たり消費額にも不安>

さらに直近では世界経済の減速感が強まっており、世界貿易機関(WTO)は7日、2016年の世界貿易量の見通しが前年比プラス2.8%と従来の同3.9%から伸びが鈍ると発表した。

中国など新興国経済の減速の影響が色濃く出ており、この「経済減速」が、インバウンド消費に打撃を与えそうだ。

この3年間は、訪日外国人客数と1人当たり消費額の両方が大幅に伸びてきたが、円高と「経済減速」によって、どちらも増勢に陰りが出かねないとの予想が関係方面から出ている。

足元における消費動向は、停滞感が強まっており、今年1─3月期の国内総生産(GDP)が2期連続でマイナスになると予想するエコノミストも少なくない。そこにインバウンド消費の鈍化が加わると、国内景気の下押し圧力が想定以上に強まることも想定される。

これから毎月、訪日外国人客数のチェックが必要になるだろう。