日銀が金融政策の枠組みを「量」から「金利」へ修正したのは、「現実路線」への転換といえる。1~2年で市場に出回る国債が枯渇する恐れがある中、円高が進んだ場合などに備えて金融機関の収益をできるだけ悪化させずにマイナス金利を深掘りできる態勢を整えた。だが、年80兆円の国債購入量を減らした場合、緩和の縮小と受けとられる恐れもある。

 現在、日銀は発行額の3分の1超の国債を買い占めている。日銀は今回の枠組み修正で、将来的に緩和手段が手詰まりとなるリスクを未然に防ぐことにした。

 さらに「総括的な検証」ではマイナス金利の悪影響も詳しく解説。国債の大量購入とマイナス金利の組み合わせで長い期間の国債利回りが予想を超えて低下してしまい、国債で資金を運用する金融機関の収益が悪化して金融仲介機能を低下させる恐れがあると指摘した。

 日銀には今回、「量」へのこだわりを捨て去ることで、長い期間の国債の買い入れ量を減らして金利を調整し、こうした「副作用」を少なくする狙いもある。

 しかし、市場からは「量的緩和の限界を公に認められず、枠組み変更でごまかした苦肉の策」(証券系エコノミスト)との厳しい見方も出ている。今後も日銀の国債保有残高は増え続けるものの、日銀幹部は、新たに買い入れる国債を年80兆円から少しずつ減らす可能性を認める。

 日銀の黒田東彦総裁は21日の記者会見で、枠組みの修正は「テーパリング(緩和縮小)ではない」と強調した。だが、国債買い入れ量が減れば、市場は緩和縮小とみなし、金利が急変動する懸念は否めない。

 一方、消費者物価指数は5カ月連続で前年割れし、2%の物価目標達成が見通せなくなっているにもかかわらず、日銀は今回、追加緩和カードを温存した。

 米国の利上げや英国の欧州連合(EU)離脱交渉など世界経済の先行きが見えにくくなる中、過度な円高が進んだ場合に備えて次回以降に選択肢を残す道を選んだ形だ。(藤原章裕)
日銀は異次元緩和の「総括的な検証」を行い、9月21日に発表した。
2013年春に、2年で物価を2%上昇を目標に掲げ、異次元金融緩和政策を始めた。大量の国債を購入しても、マイナス金利の導入しても、円安になった分輸入物価が上昇しても物価上昇率も経済成長率も賃金も低迷したままである。

物価を2%上昇するには円安による輸入物価上昇では話になりません。個人消費と設備投資が必要です。個人消費を伸ばすには給料が増え景気をよくする必要があるのですが、企業は設備投資もせず内部留保に走るだけでは日銀の物価上昇は達成できるわけもない。

企業が投資を増やすためには、国が財政投資を行う必要があるが、国は逆に緊縮財政で支出を絞っているのだから、当初のアベノミクスではなくアベコベミックスになってしまっている。

今回の日銀の新政策は・・・
(1)マイナス金利の深堀は、今回は行なわない。
(2)長期金利(10年国債金利)がほぼ0%で推移し続けるよう、長期国債の売買を行なってコントロールする。
(3)株式ETFの買い入れについて、TOPIX型の買い入れ比率を高める(日経平均型は買い入れ比率が低くなる)。

記者会見で黒田日銀総裁は、金融緩和をさらに強化したと説明しても、マイナス金利を止めると言うことは、実質的にテーパリングである。日銀はいったい何を目指しているのか、それどころか何を決めたのかが、正直私にはよくわらかない。

最近、当ブログで金融証券ネタが少なくなってきた。
正直、金融・証券・経済に対する興味が無くなったのではないが、もどかしいのだ。

予想通り、マイナス金利はやるべきではなかった。マイナス金利によって金融機関の収益が悪化し、年金や保険運用を圧迫し、GPIFも運用に失敗だと言われてしまっている。私は間違いではないと思うのだが、目先評価損を出せば素人さん達にそう言われてしまうのも事実である。マイナス金利の国債を漫然と保有し続ける方が無責任だと思う。

Business Journal 2016.04.20

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2016/8/10(水) 午前 4:46 
予想通りの劇薬であったと思う、日本は貸出金利がもともと低く、引き下げ余地が乏しかった。内需も弱いマイナス金利が実体経済に効果をもたらすことはなかった。
金融政策で、デフレは脱却できないことはもはやわかりきったことになっている。

マイナス金利は愚策だった、意味が無いとまでは、言わないが、マイナス金利で円安を狙ったのなら失敗と云わざるを得ない。

デフレがいつまでたっても脱却できないのはアベノミクスが真のアベノミクスになっていないからだ!日本のような経済が成熟した国の成長を考える時は、需要不足をどう解消すべきなのだが、2013年アベノミクスは大型補正予算を組み政府支出という需要を創出して劇的に変化した。

日本では経済循環における需要の注入と漏出を考える必要がある。注入には投資(設備投資や住宅投資など)、政府支出(公共投資を含む)、年金給付、輸出などがある。一方、漏出には貯蓄、税金、社会保険料、輸入などがある。

需要でも注入が漏出より大きければ経済は拡大し、反対に注入が漏出より小さければ経済は停滞に向かって均衡する(マイナス成長)。

13年度のアベノミクスの一年目は、真水で10.5兆円の補正予算に見られるように経済循環において需要の注入が大きかった。また異次元の金融緩和など(金融緩和だけでなく経常収支の赤字)による円安の経済効果もある程度あった。円安の効果としては輸出増・輸入減、株価上昇による所得効果による消費増が考えられる。

14年度のアベノミクスの2年目から一転して財政は緊縮型に大転換した。

補正予算は前年度から5兆円も減額された。これは注入の大幅減少である。また消費税率が5%から8%に引上げられ、8兆円の所得(購買力)が消費者から国・地方自治体に移転した。この8兆円は経済循環からの漏出になる。したがって14年度は注入が5兆円減り、漏出が8兆円増えた。

14年度中に大型の第二次補正予算を組むこともなくなく15年度もそのような気配は全くなかった。これではアベノミクスが頓挫するのも当たり前である。

安倍政権も財政再建派の罠に堕ち、消費税増税を行ってしまったからだ。
消費税増税を行う必要などないどころか、消費税増税は日本のデフレ脱却を妨げる要因である。

デフレを脱却したいのであれば消費税引き下げ、消費税減税である。


9日の東京市場は、欧米市場でのドル安・株安を引き継いでリスクオフ心理が強まり、日経平均は前日比900円超下落。ドル/円は一時、114.20円と2014年11月以来の安値を記録した。そして長期債のマイナス金利はスイスに次いで2例目。

これは、日銀が敢えて導入したマイナス金利が導入したことにより達成させたい円安株高と意図したことと真逆の結果になってしまっている。

マイナス金利だから115円で踏みとどまっているという可能性もなきにしも非ずだが、マイナス金利という劇薬を飲み込んでしまったからには誰も経験したことがない未踏の領域に踏み込んでしまったのだから、我々の想定外の副作用が次々に起きるであろう。

長期金利がマイナスとは、お金の借り手が利息をもらえるという異常事態に突入する。年金や保険などの運用で一段の環境悪化が避けられない状況となってきた。

金利低下で利ザヤが縮小し銀行収益を悪化させるという、マイナス金利政策の負の側面に焦点が当たり、金融株売りにつながっている。投資家がリスク回避姿勢を強め、質への逃避としての円買いが強まっていることも日本株を押し下げている。一般的に株価が急落すれば割安感が意識されるが、足元で通期予想の下方修正が相次ぎ、下値不安は高まる一方だが。回帰トレンドでは明日16000円を割れれば一旦底かもしれない。

ドル/円が一時、心理的節目の115円を割り込んだ。政治的な国際協調があれば安心感も広がるが、今月はG20が中国で開かれる。市場が荒れた場合には協調して対応するなどといった、各国の強い決意が市場に伝わるような声明や要人発言が出やすいのだが、開催は2月後半中国だ、スケジュール的にまだ間がある。   
目先、10日のイエレンFRB議長の議会証言が注目だが、この状況では米国の追加利上げに対して慎重なメッセージを出すしかないだろう。株価が反転しても、米金利は上昇せず、ドルが125円の方向に戻していくのは難しいのではないか?
日本は貸出金利がもともと低く、引き下げ余地が乏しかった。内需も弱いマイナス金利が実体経済に効果をもたらすことはないだろう。円安を狙ってのマイナス金利と思うが、現状まだわからないが、マイナス金利で円高に振れているのだから、日銀の意図とは違う方向に向いているわけなので、マイナス金利は愚策のような気がする。

むしろ、マイナス金利になれば郵貯銀行や金融機関の経営がおかしくなり破綻する可能性とか、マイナス金利による負の効果の方が気になる。

何よりもゼロ金利にもどそうとしたら金融引き締めになってしまうのだ。

私は、マイナス金利の発表を知った瞬間このマイナス金利は直観としてこれは悪手だ!違うだろう!切り札を切るのが早すぎる!目先マーケットは底打ちして自力反発できる、このタイミングではなく、中国経済がもっと悲惨な状況で日本に悪影響が出た時に切るべき札だと・・・・思った。一時600円近く上がったマーケットに強く違和感を感じた。

単純に考えれば、マーケットにプラスだろう。マイナス金利は円安⇒企業業績上昇⇒株高。マイナス金利で国債などで運用している銀行資金が、国債投資から企業融資が増え設備投資、住宅投資が増え景気が上向く。消費者もマイナス金利下では明日まで貯蓄して資産が目減りするより、今すぐ支出しようとするため消費を押し上げるはず。

そんな単純な話ではないことは、小学生ではないのだから誰も信用しない。
第一、銀行は融資したくとも、企業の資金需要があるわけではないのだから、そう簡単に企業融資が増えるわけがない。また、国債利回りと足並みをそろえて投資や年金基金の収益率が低下するため、消費者は不十分な年金を補うため、通常よりも貯蓄を増やさざるを得なくなる可能性がある。高齢化が急速に進む日本において、消費はさらに減り、結果として景気は一段と減速、ソブリン債需要が高まり、中銀による国債買い入れ・紙幣増刷が増え、利息がほとんどつかない証券の需要は一段と増す。悪循環に陥る可能性が高いのではないか!

マイナス金利は、円を調達通貨として他の通貨で運用する円キャリートレードが増えるので円安要因ではあが、現在の世界の金融市場環境は中国経済の崩壊が顕著で明らかにリスクオフ局面だ!この局面で、いくら低金利の通貨であっても、それを売ろうという動きは続きにくい。中国経済崩壊のリスクオフ局面では金利が低くても安全資産の国債を買う動きが助長されるので、マイナス金利の効果はかなり限定的と思う。

以上の私の文章箇所を抜き出したのだが、予想通り円安にならないどころか円高にになる愚策だった。日銀がやっていることは間違いだとは言い切れないが、マーケットは容易に制御できるもいのではない。
永井靖敏大和証券 チーフエコノミスト
[東京 23日] - 日銀は21日、長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)と金融緩和の継続期間明確化(オーバーシュート型コミットメント)を柱とした「新しい枠組み」(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)を発表した。

会合後の記者会見で黒田東彦日銀総裁は、金融緩和をさらに強化したと説明。同日、米連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で現状維持を決定し、イエレンFRB議長は記者会見で年内1回の利上げが適切と強調した。

まず、FOMCについては、利上げの可能性を指摘するエコノミストもいたが、あくまでも少数派で、市場の関心は声明文や記者会見に集まっていた。声明文では、「フェデラルファンド(FF)金利引き上げの根拠は強まった」と、利上げに向けて一段と踏み込んだ表現を使っている。同じ表現が8月下旬の米ジャクソンホール会議での講演で用いられていたことから、「サプライズ」とまでは言えないが、イエレン議長のペースで議論が行われた様子が読み取れる。

つまり、声明文は年内利上げを示唆する内容だと筆者は見ている。「世界の経済金融動向を引き続き注意深く監視する」とした記述が残った点は気掛かりだが、「年内利上げの障害」とまでは言えないだろう。

今回は3人のメンバーが利上げを求めて反対票を投じた。3人が反対票を投じたのは、2014年12月以来のこと。2016年末のドットチャート(FOMC参加者が考えるFFレートの適正値)を見ても、6月時点から下方修正されたが、「年内利上げなし」は17人中3人に過ぎない。

<10年債利回り以外の変動幅が拡大する恐れ>

一方、日銀については、追加緩和や枠組み変更の有無について、直前まで見方が分かれる中、「総括的な検証」と同時に、「新しい枠組み」が発表された。黒田総裁は、金融緩和を強化したと説明している。

1つめの柱の「イールドカーブ・コントロール」は、過度なイールドカーブのフラット化を避けることを狙い導入した。「総括的な検証」の中でも、金利の各ゾーンが経済・物価に与える影響を実証分析し、中短期ゾーンの効果が長期ゾーンよりも大きかったとしている(ただし、構造変化で、長期ゾーンの効果は過去に比べると高まっている可能性についても指摘している)。

加えて、過度なフラット化は、金融機能の持続性に対する不安をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす恐れもあるとまとめている。

声明文で、「イールドカーブ・コントロールを、新たな枠組みの中心に据える」とした一方、(長期国債の)「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース」と記載している点が、「新しい枠組み」を分かり難くしている。

確かに、「長期金利」と「量」の両にらみの政策運営を実施することは、不可能ではない。長期国債が一種類しかない世界なら、金利水準と買い入れ額を同時に決定することはできないが、実際には様々な年限が存在する。また、操作の出発点は「10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)」と現在の水準であり、目標としている水準に幅を持たせている。

だが、不可能ではないとしても、今後イールドカーブをにらみながら、金融政策決定会合で「量」を調整することになるため、問題含みの感は否めない。枠組みの中心は「イールドカーブ・コントロール」としているため、超長期金利が「趣旨」に反する水準まで低下(あるいは上昇)すれば、「量」を調整する必要があるが、その「趣旨」を読み取るのが極めて難しいからである。

金融政策決定会合前の調整の思惑浮上や、予想外の調整を受け、ボラティリティーが高まる恐れがある。10年債利回りについては、日銀の新たな政策運営目標に加わったことで、安定的に推移しようが、その分、他のゾーンの変動幅が拡大する可能性がありそうだ。

なお、「新しい枠組み」では、日銀は、マネタリーベース残高の拡大方針を継続することにコミットしており、長短金利は「操作を行う」だけで、「物価安定の目標」の達成前の引き上げも想定した形式になっている。

ゼロ%という10年債利回りの操作目標水準には、「現状程度」という根拠しかない。理屈の上では、期待インフレ率の上昇により実質金利が低下することで、長短金利の操作目標が過度に緩和的になった場合、「新しい枠組み」を維持したまま、金融政策決定会合で引き上げることができる。

ただし、現実問題として、「物価安定の目標」を「できるだけ早期に実現する」としていること、期待インフレ率を正確に計測することができないことなどから、達成前の引き上げは困難と筆者は考えている。

こうしたリスクが想定されるなか、両にらみの政策運営が採用された背景には、これまでの政策運営を正当化する狙いや、量的緩和の有効性を主張するボードメンバーへの配慮があったと思われる。「総括的な検証」を受け、「量」の政策運営目標を完全に廃止し、「長期金利」に切り替えると、「日銀の量的金融緩和政策は失敗した」という印象を与える。

失敗の印象は、期待に働きかける効果を弱めるため、日銀としては、政策運営の無謬性を強調し続ける必要がある。また、「新しい枠組み」に対して、ボードメンバーの中から多くの反対票が出ると、政策運営の持続性に対する疑念が高まる。

<将来の修正余地がある分、政策効果も小さい>

「新しい枠組み」の2つめの柱の、「オーバーシュート型コミットメント」については、声明文に「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」と、金融緩和の継続期間について具体的な条件を明示した。従来は「物価安定の目標を達成するまで」と、曖昧な表現にとどめていた。

黒田総裁は「両者(2つの柱)が相まって緩和を強化した」と説明しているが、筆者は強化されていない(物価上昇にはつながらない)と考えている。まず、「イールドカーブ・コントロール」は、現状のイールドカーブを基準にしている。スティープ化するリスクを抑えることはできたが、「過度なフラット化は望ましくない」というメッセージを市場に出したことで、フラット化する可能性も低下した。

「オーバーシュート型コミットメント」についても、「物価安定の目標」の達成が近づき、市場が金融緩和解除を織り込みつつある局面では、プラスの影響を期待できるが、現時点では全くといっていいほど織り込んでいない。金融緩和解除が見通せない状況で、解除条件を明示しても、人々の行動に影響を与えない。

これまで日銀が金融緩和解除の条件を曖昧にしてきた背景には、出口の波乱を弱めるためだと筆者は考えていた。すでに極めて積極的な金融緩和を実施しているため、ある程度の波乱は避けられないが、物価上昇後、長期金利の水準に何らかのキャップを付けることで、長期金利の急上昇が景気失速を招き、物価下落につながるというシナリオ回避に注力すると予想していた。

「新しい枠組み」のままだと、金融緩和解除までは10年債利回りは現状のゼロ%程度に釘付けされ、コミットメント終了後、急上昇することになりそうだ。当然のことながら、その前に、「さらに新しい枠組み」が作られると思われる。「新しい枠組み」は、将来の修正余地がある分、政策効果も小さいと見た方がよさそうだ。

*永井靖敏氏は、大和証券金融市場調査部のチーフエコノミスト。山一証券経済研究所、日本経済研究センター、大和総研、財務省で経済、市場動向を分析。1986年東京大学教養学部卒。2012年10月より現職。
今回の日銀の決定が追加緩和であって、カネ余りによる国内株高(余剰資金が株式市場に流入)や円安(余剰資金が外貨建て資産に流入)、あるいは景気回復(経済全体が金余りになる)を一段と推し進める、ことにはなりそうもない。

金利については、長期金利はマイナスからゼロへするということは、金利の上昇ですし、資産の買い入れ額を増やすわけでもないので量的緩和でもない。追加緩和というより、実質テーパリング=金融引き締めのように見えるのは私だけではないだろう。
[東京 23日 ロイター] - 日米中銀会合の2大イベントを通過し、ドル/円JPY=EBSに下落圧力がかかっている。日銀は金融政策の新たな枠組みを導入したが、金融緩和余地は大きくないと市場は受け止めている。米連邦公開市場委員会(FOMC)も利上げを見送り、先行きの金利予想を引き下げた。

1ドル100円割れはいったん回避されたものの、心理的節目をめぐる攻防は続きそうだ。

<日銀新スキーム効果に疑問>

日銀が金融政策の新たなスキームを発表した後、ドル/円は、いったんショートカバーが先行し102.79円に上昇した。しかし、持久力に乏しく、21日の市場では、100.30円まで下押し、22日は100.10円と大台割れ寸前までに軟化した。

市場では、今回導入した日銀の新スキームにおいても、追加的な金融緩和は容易ではないとの見方が多い。マイナス金利の深掘りが今後の追加緩和の手段となりそうだが、「先行する欧州中央銀行(ECB)の議論を見ても、金融機関の収益への影響の観点からも、金利の下げ余地は大きくない」と、あおぞら銀行の市場商品部部長、諸我晃氏は指摘している。

ECBのマイナス金利は現在0.4%。日銀はマイナス0.1%であり、ECBの水準まで深堀りするにしても余地は0.3%ポイントしかない。

さらに日銀がマイナス金利を深堀りした場合、そのままなら長期金利も低下する可能性が大きいが、今回決めたように長期金利をゼロ%付近に固定しようとするなら国債購入の量を縮小せざるを得なくなるかもしれない。「事実上のテーパリングと受け止められて嫌気されれば、円買いが強まるおそれもある」(国内金融機関)という。

<米側にも円高リスク材料>

日本が休日だった22日午後、財務省と金融庁、日銀が3者会合を開き、出席した浅川雅嗣財務官が「仮に投機的な動きが続くなら、必要な対応を取らざるを得ない」と発言。為替介入も辞さない姿勢を示したことが伝わると何とか1ドル100円の大台割れは回避された。足元は、欧米株高を受けたリスク選好の円売りにも救われ、100円後半まで値を戻している。

国際的に非難を浴びるかもしれない実弾の為替介入は難しいとの見方が市場でも多いが、「株安や円高が急激に進行すれば、日銀が追加緩和するかもしれない」(邦銀)との警戒感もくすぶる。ドル/円で90─95円、株価1万5000円となれば警戒水位との見立ても聞かれる。

イベントを通過したことで、ドル/円のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)は低下しており、「一気にドル安方向に突っ込んでいく様子ではない」(りそな銀行のクライアントマネージャー、武富龍太氏)とみられている。

ただ、米側のドル高・円安材料も大きく後退している。21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げを見送り、先行きの金利見通しも引き下げられた。金利先物が織り込む12月利上げの見方は依然50%超だが、長期的な米金利の「天井」が低くなる中では、12月に利上げが実施されたとしても、先行きの利上げに期待がつながらなければ、ドル高・円安方向の力は弱いかもしれない。

さらに米国には大統領選挙という円高材料になりかねないリスクイベントが控える。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は「クリントン候補とトランプ候補の支持率が逆転するようなら、あらためて100円割れのリスクがある」と指摘する。26日(日本時間27日午前)の第1回テレビ討論会に注目が集まりそうだ。

(平田紀之 編集:石田仁志)
毎年金融証券関係者には恐怖のオクトーバーサプライズの季節がやって来る。
今年は何だろう?

円がこれだけやっても90円台に突入するのはサプライズにはならない・・・
トランプ大統領誕生も恐ろしいが11月。

このニュースを根拠にドイツ銀行の破綻が噂されています。

確実視されるアメリカの利上げを受け、為替は円安に振れ株価も上昇の動きを見せるなど、ようやく日本にとって好ましい流れとなった観もありますが、「ドル高が欧州の金融危機を招く」と指摘するのはメルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さん。津田さんはその論拠を記した上で、迫り来る欧州金融危機は日本にとって対岸の火事ではないと警鐘を鳴らしています。

欧州金融危機の足音
米国は景気が回復して、利上げの方向であるが、一方、欧州では銀行が破綻する可能性が出てきた。ドイツ最大のドイツ銀行とイタリア3位の銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナと同国1位のウニクレーディト、バンカ・カリージェである。今後、どうなるのであろうか? その検討。

米利上げが確実
イエレンFRB議長とフィッシャーFEB副議長の8月26日の講演会とその後のコメントで、9月利上げの可能性が増したと市場は見て、1ドル=103円まで円安になったが、9月2日の雇用統計は、予想に比べて低かった。しかし、年内の利上げは確実で、9月の可能性もあるということで、1ドル=104円になっている。

米国の景気は上昇しているが、金融緩和を世界で行ったために、歴史的長期金利の低下が進行している。このことで、日本を除く世界は株高になっている。このままにすると、バブルが起きると米国のFRBは心配になり、利上げを志向している。しかし、どうもこれだけではないようである。これは後で説明する。

これにより、円安になり、日本だけは今まで円高に向かい株安のままに放置されたことで、PERが低く他の市場に比べて割安になっている。よって、日本の株価は1万7,500円程度まで上昇する可能性がある。というように、ここまでであれば、日本バンザイであるが、しかし、ドル高になることで問題が出てくる。それは欧州の金融危機である。

9月2日ドイツ銀行のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)は、同行立て直しを1からやり直す。昨年に新戦略を発表したものの、同行の時価総額は半分以下に減ってしまったので、追加の支店の閉鎖や投資を減らすというが、ドイツ銀がコメルツ銀との合併を検討したが、共倒れになると拒否されたようである。それほど、ドイツ銀行は危機的な状態になっているようである。

欧州金融危機
このコラムでも何遍もドイツ銀行が登場したので、覚えていると思うが、世界最大のデリバティブ扱い量であり、石油価格の下落、英国のEU離脱でデリバティブで大損、ソロスの空売りなど、ドイツ銀行の破綻を読んで、ヘッジフォンドは動いている。

最大量の企業倒産保険であるCDSの引受け手であり、このドイツ銀行が破綻すると、CDSも無効になり、他の企業や銀行も連鎖倒産になる可能性が高い。しかし、誰が倒産するか、事前にはわからない。

このため、ドイツ銀行が倒産すると、世界の金融機関は資金が凍結し、流動性不安になる。どの銀行が倒産するか見えないからである。リーマンショックと同じようになる。一番大きな影響を受けるのは、欧州の金融機関であり、イタリアの1位、3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナとウニクレーディト、バンカ・カリージェであり、現時点でも不良債権が多く、不安定であり、この両行が倒産して、続いて多くの欧州の銀行が破綻する可能性がある。

世界大恐慌がドイツから発生する可能性が高いということになる。

ECBのマイナス金利の深掘りで、ドイツでも預金者から手数料を取る方向になり金庫が売れ始めて、預金を引き出しているようだ。このように銀行から預金がなくなり、銀行安定化のための預金準備率を維持するために、貸出や投資を削る必要があり、銀行の経営を圧迫することになる。

このため、ECBのマイナス金利深掘りが欧州銀行を不安定にしている。

欧州の継続する金融危機
欧州は、なぜ、ギリシャ危機から危機が続いているかというと、景気対策として、財政出動ができない。対GDP比3%以内の財政赤字しか認めないために、財政出動ができないので、一度、景気が悪くなると、通貨調整機能もなく、景気回復が絶望的になり、若者は職を得るためにドイツなどに移民する必要が出てくることになる。

英国はホンドを維持したので、通貨調節機構が働き、EU離脱選挙後、それ以前より景気が良くなっている。ホンドの大幅下落でそうなっている。

EU圏では、ドイツが支配するECBが金利を決めるので、金融政策を自国の事情では変更できない。このため、マイナス金利などというユーロ安にする政策を継続することになる。輸出には有利であるが、輸入には不利である。また、弱い国に対する補助金がないので、この差を埋めることもできない。日本国内を見ると、地方交付税があり、地方の基礎的な環境を維持できているが、これがない。

このような環境であり、EUは脆弱な連合になり、弱小国の経済が回復しないで、度々、金融危機になるのである。反対に、ドイツはバブル状況になる。

このような脆弱な連合で、ECBドラギ総裁はマイナス金利を深掘りして、金融機関を痛めつけて、特にドイツ銀行の立て直しをできなくしているようである。

なぜ、欧州は危機にならなかったのか
危機が継続する環境であったが、危機がなぜ、起きていないのかというと、1つがドイツが危機になると、ギリシャ危機のように追加的に資金を入れていた。2つには、移民を入れて需要を高めていた。3つにマイナス金利でユーロ安にして、貿易量を拡大した。

しかし、この条件が変化する。1については、ドイツが先に金融危機になる。2については、テロ多発で移民を入れなくなったことで、需要拡大はなくなる。3については、マイナス金利の負の面が出て、銀行倒産が起きる。それと銀行倒産時の安全性を担保できる英シティがEUではなくなる。

米国が立ち直った理由
ユーロ圏や日本と違い、なぜ、米国は立ち直ったのかという疑問が出ると思うが、移民が多く生産人口が増加している。ドルが基軸通貨であり、ドルでのビジネスが多く、安定的である。特にドル・リンク地域・国が多いので、為替リスクが少ない。自国市場が大きく、為替で輸入を止めることで市場を取り戻せる。経済が不調であれば、簡単にドル安にできる。基軸通貨国の特権があるので、このようなことができる。そして、米国は、景気回復になってきた。

今後の予測
欧州の金融危機は、ドル高になるので資金がドルに向かう事になる。預金する手数料を取る銀行から、金利が高い米国の銀行に預金を移すはずであり、銀行経営はEUでは難しくなる。

欧州の経済が大きく崩れると、中国の輸出先でもあり、中国経済も崩壊する可能性が出てくる。米国と日本は中国の国際法無視で、厳しく貿易面でも対応するので、輸出量を増やせない。

日本は、米国の景気上昇で、円安になり経済は復活することになるが、中国と欧州経済の動向により、その影響も受ける可能性があるし、米国も影響を受けることになる。

米FRBは、欧州や中国の景気下落時、自国景気も下がると見て、その時に金利の操作ができるように、政策ツールを増やしておくことを今から準備をしてるようにも見えるのである。

とすると、日本の投資家や企業も、円安になり株価は上昇するが、その後、欧州の動向を見る必要がありそうである。

さあ、どうなりますか?

『国際戦略コラム有料版』より一部抜粋 著者/津田慶治
確実視されるアメリカの利上との書き出しからして、曲りや(相場下手)の文章である。直近記事を書いていなかったので、証拠を残していないが、9月利上げは無いと思っていた。利上げは大統領選挙直前である11月もない。やったとしても12月にやるかどうか微妙だろう。


今回は米国の利上げが無く、引き金は引かれなかったが、ドイツ銀行がヤバイことだけは間違いないようだ。ちょtっと怖いものを見たい方は、↓のリンクへ
以上 煽動記事満載のMONY VOICEの記事ですから話半分で読まないと相場を読み間違えますが・・・今回はどうもちょっと気になります。

中国と関係を深めるドイツが今後ますます苦境に立つことは間違いないであろう。
 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は講演で、マイナス金利の深掘りや量的緩和拡大の可能性について言及した。サプライズ重視から市場との対話重視への路線変更との指摘もあるが、9月の総括的検証を踏まえて、金融政策は変わるのだろうか。

 筆者は、黒田総裁は天の邪鬼(あまのじゃく)だと指摘していた。それは、セオリーからやるべき手段とタイミングがわかっているときにはあえてやらず、意表を突くように政策を打ち出してきたからだ。それは、やるべき時にやらないで、じらす戦法でもあった。

 このやり方は、しばしば優秀な官僚が好む手だ。意表を突く政策を打ち出しアイデアマンとしての力量を見せて尊敬を集めつつ、当たり前の政策のときにはわざとタイミングをずらして相手が恩義を感じるようにする。民間の優秀なビジネスマンでもやりそうなことだ。

 学者は基本的にそういう対応はしない。理論に基づく議論であり、外部からの予測可能性を高める。例えば、有名なテーラー・ルールでは、インフレーションや国内総生産(GDP)といった経済変数に従って政策金利が決まる。具体的には、実際のインフレ率とインフレ目標との乖離(かいり)、実際の実質GDPと潜在GDPの乖離(GDPギャップ)によって、中央銀行が政策金利を決める。

 背景には、望ましい金融政策についての理論がある。こうしたルールに基づき金融政策を行うのが、学者からみた金融政策である。実際のインフレ率や実質GDPは誰にも分かるので、このルールを知っていれば、中央銀行の金融政策は9割方読めることになる。

 オークンの法則によると、実質GDPと失業率の間には負の相関がある(GDPが増えると失業率が下がる)ので、テーラー・ルールは、インフレ率と失業率から望ましい政策金利を導き出すともいえる。さらに、失業率とインフレ率の間で負の相関があることを示したフィリップス曲線を使えば、失業率(またはインフレ率)から金融政策を予測することもできる。

 こうした学者からのアプローチは、マスコミが言う「市場との対話」とは異なるものだ。外部から観測可能な客観的データがあれば、中央銀行の行動を予測できるからだ。

 マスコミや市場関係者が、「中央銀行と市場の対話が必要だ」と言うときには、中央銀行と市場関係者の間で意見交換をすべきだという意味であることが多い。そうした話は、金融政策のフレームワークではまずない。市場関係者はすなわち金融機関関係者であるが、金融政策は失業、GDPなどのマクロ経済に影響を与えるものであって、個々の金融機関の経営問題を考慮する必要はないからだ。

 金融機関としては事前に金融政策を知りたいという要望はあるだろうが、こうした意味で、日銀が市場との対話を重視することは本来あり得ない。

 9月の総括的検証を踏まえて、日銀がどう変わるかといえば、サプライズ重視から、サプライズなしの、じらし戦術になるだけではないだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

注目されていた日本銀行の「総括的な検証」と、金融政策の「新しい枠組」が発表された。おおむね予想された通り「2%のインフレ目標」を無期延期し、マネタリーベース(現金供給)という指標を実質的に取り下げる方針転換である。

 ただこの発表は難解な「日銀文学」で書かれており、行間を読まないと意味が分からない。普通のビジネスマンが理解するのは容易ではないと思われるので、ここではその内容をやさしく解説し、それが何を意味するのかを考えてみよう。

黒田総裁の失敗を認めた「総括的な検証」

 まず「総括的な検証」を読んでみよう。これは黒田総裁が就任してから3年半たって初めての総括だが、内容は常識的なものだ。ここでは「2%の『物価安定の目標』は実現できていない」と率直に認め、その原因を次の3つに求めている。

・原油価格の下落
・消費税率引き上げ後の需要の弱さ、
・新興国経済の減速と国際金融市場の不安定な動き

 この説明には無理がある。黒田総裁が最初に狙ったようにマネタリーベースの激増によるフォワード・ルッキングな(将来を見越した)期待形成が実現すれば、こういう要因は無関係だ。国民がみんな「2年後に物価が2%上昇する」と期待していれば、目先のブレは影響しないからだ。

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予想物価上昇率の動向(出所:日銀)

 実際には上の図のように、マネタリーベースの拡大はまったくきかず、予想物価上昇率はずるずると下がって来た。この原因は2013年後半から、円安(ドル高)による輸入インフレが起こったからだ。

 つまり人々の予想は、インフレ率の実績に連動してバックワード・ルッキングに決まるのだ。日銀総裁が何%といったかなんてほとんどの人は知らないので、それをもとにして投資する経営者はいない。

 したがって日銀は「マネタリーベースについては、長期的な増加にコミットする」、つまり短期的な追加緩和はしない。注目されたテーパリング(国債買い入れの減額)については、黒田総裁が記者会見で「将来必要な額はその時々の経済によって上下すると思う」と認めたように、年80兆円という国債の買い入れ額は減るだろう。

 要するに、インフレ目標もマネタリーベース拡大も国債買い入れも失敗した、というほぼ全面的な敗北宣言だ。これは(私も含めて)多くの経済学者が指摘してきたことであり、3年半たってから失敗を認めたのは遅きに失したとはいえ、日本では珍しい。

支離滅裂な「新しい枠組」

 ところがこれを踏まえたはずの「新しい枠組」は分かりにくい。その2つの柱は「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」だが、両方とも意味不明だ。

 まずイールドカーブ・コントロールとは「日本銀行が指定する利回りによる国債買入れ」によって長期金利の利回りをゼロに固定するというものだが、9月20日現在の10年物国債の名目金利はマイナス0.07%だ。

 つまり長期金利ゼロというのはゼロ以下に下がらないようにするのだから、金融引き締めになる。これは金融政策としては理解できないが、日銀のマイナス金利政策で収益に大きな影響が出ている銀行業界への配慮だろう。

「オーバーシュート」に至っては、まったくナンセンスだ。「総括的な検証」でフォーワード・ルッキングな期待形成が不可能だと認めたのに、2%を「2%を超えるまで」と変えても不可能が可能になるはずがない。

 このように「総括的な検証」が客観的事実を認めているのに「新しい枠組」が支離滅裂なのは、データを検証した日銀の事務方と枠組を決めた黒田総裁との間に意見の対立があったことをうかがわせる。

「日本橋」で何が起こっているのか

 では日銀で何が起こっているのだろうか。黒田総裁になって日銀の事務方もリフレ派になったと誤解する向きもあるが、企画局の主流派は白川前総裁の時代とほとんど変わらないので、彼らは面従腹背だ。

 マネタリーベースの拡大で物価が上がると信じている幹部はいない。それが不可能であることは、福井総裁の時代に確認ずみだからである。以下は想像だが、彼らの会話はこんな感じだったのではないか。

日銀企画局の幹部(以下「日銀」) 総裁、総括的な検証によると、インフレ目標も量的緩和もマイナス金利も失敗だったという結論が出ました。
黒田 それは困るな。1つぐらいうまく行ったものはないのか。
日銀 円安はききましたが、これはマネタリーベースと無関係です。為替にきいたのは実質金利の低下ですが、これは実体経済がよくないからです。
黒田 それじゃかっこ悪いから、「金利コントロールに切り替える」ということにしよう。これならFRB(米連邦準備制度理事会)と同じだろ?
日銀 いや、あれは短期金利です。うちはもうマイナスにコントロールしてますよ。
黒田 じゃ長期金利もコントロールすればいいじゃないか。
日銀 それじゃ昔の規制金利の時代に戻ってしまいます。国家社会主義ですよ。
黒田 うるさいな。アベノミクスは国家社会主義なんだよ。


 そんなわけで矛盾だらけの文書が発表されたわけだが、ともかくも撤退に舵を切ったのはいいことだ。日本の官僚機構には、帝国陸軍の昔から「進むを知って退くを知らず」という伝統があるので、今回のように官僚機構みずから方向転換するのは珍しい。

 これは日銀が霞が関ではなく、日本橋にあることも影響していると思われる。霞が関では、ある省の決定が他省庁に影響する場合は合議(あいぎ)と呼ばれる各省折衝で関係各省すべての合意を得ないと閣議決定できないが、日銀は合議に入っていない。

 このため白川前総裁が安倍首相のバッシングを受けたときも霞が関は守ってくれなかったが、日銀の独立性は高い。黒田総裁としては不本意だったと思うが、彼が決めれば「Uターン」して玉砕を避けることができるのだ。

 しかし難しいのは、これからの退却戦だ。330兆円以上に積み上がった国債を日銀が売ることは不可能なので、安倍政権が財政を健全化し、金利の急上昇(国債の暴落)を防ぐことが大事だ。これからは政府と日銀の「総力戦」になる。