もんじゅ抜本見直し 文科省が規制庁に報告
【産経ニュース】2016.9.24 00:06

政府が高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)について、廃炉を前提に抜本的に見直す方針を決めたことを受けて、文部科学省の田中正朗研究開発局長が23日、原子力規制庁を訪問し、経緯を報告した。

 田中局長は、「これまで運営主体の特定を進めてきたが、今後は廃炉を含めた抜本的な見直しについても検討していく」と説明。その上で、原子力規制委員会の勧告への回答については、「本年中の政府方針の決定を受けて対応したい」と述べた。規制庁の荻野徹次長は「検討を待ちたい」と話し、規制委として年末以降の回答を待って対応する方針を示した。

 もんじゅをめぐっては、規制委が昨年11月に文科相に対し、新たな運営主体を特定するか、見つけられない場合はもんじゅの在り方を抜本的に見直すよう勧告。「半年をめど」とした回答期限から4カ月以上が経過していた。
高速増殖炉もんじゅをはじめ、原子力行政は、福島原発事故があろうがなかろうが、感情的に原子炉や高速増殖炉に拒否反応をする無責任な人々は一定量存在し、福島原発事故で更に無関心層が反原発へと流れた。原子力政策はつくづく日本の悪い面が出ている。物事を決められないで、ずるずる先延ばしにしてしまう。

資源のない日本、石油が止まれば日本は立ち行かないどころか、日本人が生存するのが難しくなる可能性が高い。物流が止まり、食料の生産や水道電気が止まれば死者が万単位ででるだろう。1970年代に日本が原発を導入したことは間違っていなかった。やむを得ない決断だ。原発の導入は一部の人間が利権目当てで導入したと主張する人達は、国民の生命に関して無関心である。原発導入は間違っていると言う人達は国際政治や安全保障をまるっきり考慮していない無責任な人達だと思う。

確かに、もはや老朽化し始めた高速増殖炉もんじゅを再稼働させるより、再設計したプルトニウムを燃やす方法を考えなくてはならない。

反原発派はプルトニウムを嫌い地球上に核廃棄物を残すことが悪だと主張しておきながら、核廃棄物を最も効率的に処理する高速増殖炉もんじゅを悪の化身の如く非難するのは矛盾するし、筋が通らない。

もんじゅは、高速炉の核燃料サイクルにおける基幹的技術の一つだが、その廃止論は、既に商用化されている軽水炉の核燃料サイクルまでも否定したい無責任な反原発派の人々が増長しかねない。原子力発電の主流である軽水炉そのものまでも否定し、非常に乱暴な反原発・反サイクルを主張するだろう。管直人、小泉純一郎、細川護煕ら無責任な元首相たちが「原発即ゼロ」を盲目的に唱えていることは非常に醜い。そんなに嫌なら自分が首相の時にもっと大胆に原子炉を廃炉に動かずにいて非常に狡く醜い。

政府も、もんじゅを廃炉にするならば、もんじゅに代わる新たな核処理方法を考えなくてはならない。

「夢の原子炉」といわれたもんじゅの廃炉方針が事実上固まり、政府の原子力政策への影響は避けられない。核燃料サイクルは、資源小国の日本が原子力を準国産エネルギーとして利用し続けるのに欠かせないリサイクル技術だ。もんじゅに代わる高速炉のビジョンを作れなければ原子力政策は長期的な展望を示せず、原発再稼働への理解が得にくくなる恐れもある。

 経済産業省幹部は「もんじゅの存廃と核燃料サイクルとは、分けて考えてほしい」と強調する。サイクル政策を通じたウランの有効利用は、日本のエネルギー安全保障(安定供給)で重要な役割を担うからだ。

 日本は原発の燃料であるウランの全量を輸入に頼る。ただ、1度取り換えれば1年以上発電できるうえ備蓄しやすく、使用済み核燃料を再利用できるため、準国産と位置づけられる。

 消費分以上の核燃料を生み出す高速増殖炉が実現すれば、将来はウランの輸入が要らなくなり、資源の獲得競争や価格高騰のリスクを回避できる期待がある。

 このため、政府はもんじゅ抜きでも高速増殖炉の研究を継続する。日本原子力研究開発機構の実験炉「常陽」(茨城県)を再稼働させ、フランスが2030年ごろの運転開始を目指す次世代高速炉の実証炉「ASTRID(アストリッド)」でも共同研究を行う構想が浮上しているが、課題も多い。

 常陽には発電機能がなく、現状では基礎的な研究にしか使えない。アストリッドについてもまだ基本設計の段階で資金計画が確定しておらず、「国のエネルギー政策に関わる研究を、自国内に施設を持たないまま海外に依存していいのか」と懸念する声もある。

 福島第1原発事故で安全神話が崩れた後、政府の原子力政策は迷走している。

 昨年、東日本大震災前に3割だった原発の発電比率を2割強に回復させる目標を掲げた。だが、老朽原発の建て替えや新増設など長期的な戦略は封印したまま、核燃料サイクルの維持が危ぶまれる事態に至った。原子力と今後どう向き合うのか、政府は方針を明確にする必要がある。

要は、原子力の次のエネルギーをどうするかだが、大本命の核融合炉は茨城県東海村に隣接する那珂市にある、日本原子力研究開発機構 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所の敷地内で、次世代のトカマク型プラズマ実験装置「JT-60SA」の建設が進んでいる。建設開始は2013年1月。2014年後半には真空容器と呼ばれる装置の重要部分の組み立てが始まった。磁界を生成するコイルはすべて超電導コイルである。2018年には建設が完了し、2019年には模擬燃料による超高温プラズマの実験が始まる。建設完了時には、超電導コイルを用いるトカマク型プラズマ実験装置としては世界最大となる見通しである。2030年~2050年には本格的な核融合発電が始まる予定である。

高速増殖炉はあくまでも、プルトニウムの処理手段として実用化すべきではないかと思う。

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茨城県東海村に隣接する那珂市にある、日本原子力研究開発機構 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所の敷地内で、次世代のトカマク型プラズマ実験装置「JT-60SA」の建設が進んでいる(写真1)。建設開始は2013年1月。2014年後半には真空容器と呼ばれる装置の重要部分の組み立てが始まった。磁界を生成するコイルはすべて超電導コイルである。2018年には建設が完了し、2019年には模擬燃料による超高温プラズマの実験が始まる。建設完了時には、超電導コイルを用いるトカマク型プラズマ実験装置としては世界最大となる見通しである。

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写真1 建設中のJT-60SA。2014年12月時点の様子。真空容器は、内装用の入り口を残してほぼ組み立てが完成した。

トカマク型プラズマ実験装置は、ドーナツ状のプラズマを磁気で閉じ込める技術で、1950年代にソビエト連邦(現ロシア)で考案された。「磁気コイル中のトロイダル型(ドーナツ状)容器」をロシア語で表現した言葉の略字が「トカマク」となる。


ムーアの法則並みに性能が向上

 トカマク型は、これまで最も核融合発電炉の実用化に近い技術とされ、各国が開発競争を繰り広げてきた(図1)。そして日本はその競争を牽引してきた。

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 図1 1990年半ばまで、トカマク型核融合技術はムーアの法則と肩を並べる勢いで向上した。縦軸の核融合3重積とは、プラズマの密度、閉じ込め時間(保温時間)、プラズマの温度の積で、エネルギー投入量に対する出力エネルギーの比(Q値)にほぼ比例する。

 1990年代半ばまで開発競争の成果は目覚ましく、性能指標が約2年で2倍になる勢いだった。ムーアの法則に従うトランジスタ微細化技術の進歩に肩を並べていたのである。そして、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)のトカマク型プラズマ閉じ込め装置「JT-60U」は、1996年にイオン温度5.2億Kと核融合発電に必要な温度である1億K以上を達成(写真2)。さらに、投入エネルギーに対する出力(熱)エネルギーの比(エネルギー増倍率、Q値)が1.25と、世界で初めて1を超えた。

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 写真2 JT-60SAの先代となるJT-60U。オレンジ色の環状の部位は常電導トロイダルコイルである。1996年には短時間ながら5.2億Kを実現。2006年には、1億Kのプラズマを28秒間維持することに成功した。2008年に実験を終え、解体された。現在は、那珂核融合研究所の敷地内に“移築”されている。D-D反応用装置だったが、わずかに起こる核融合反応によって中性子が発生し、装置が放射化しているため、当面、建屋内に保管する必要があるという。

この開発競争のポイントは、加熱技術と“保温性能”の向上だった。1億K以上という超高温を実現するには、なにはともあれ加熱技術が必要になる。その際、加熱するそばから熱が逃げだしては温度が上がらないため、保温性能も重要になる。

 加熱技術として代表的なのは、(1)オーミック加熱、(2)RF加熱、(3)中性粒子ビームの打ち込み(NBI)、の3つである。(1)は、ドーナツ状のプラズマの中心軸に設置した「中心ソレノイド(CS)コイル」に電流を流すことで、プラズマ内に誘導電流が流れることを利用する。プラズマという導体中に電流が流れるとジュール熱が発生するのである。(2)は、マイクロ波など高周波の電界を使って電子レンジと同様な原理で加熱する技術。(3)は、小型の粒子加速器で荷電粒子を加速し、最後にそれを中性粒子に変換してプラズマ内に打ち込む技術である。「ガンダムのビームライフルみたいなもの」(日本原子力研究開発機構 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部長 JT-60SA計画日本側プロジェクトマネージャの鎌田裕氏)。装置の見た目もよく似ている(写真3)。


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 写真3 JT-60SAで用いる中性粒子入射装置(NBI)。写真右側にトカマク型の“炉”がある。


 保温性能は、正式には「閉じ込め時間τE」と呼ばれる。この向上には、魔法瓶のような容器としての性能に加えて、コイルの磁界の強さの向上、プラズマを安定的に維持する技術やプラズマからの粒子損失を防ぐ技術の向上などが関係している。一般に、容器が大きくなるほど、体積に対する表面積の比(比表面積)が小さくなり、保温性能は高まる。このため、トカマク型装置の保温性能の改善は、装置の大型化と歩調を合わせている。

 
実用化への「あと1歩」に20年超が経過へ

 1990年代半ばの時点で5.2億Kという温度やQ=1.25を達成したにもかかわらず、いまだに実用化できていないのはなぜか。

 実は、JT-60Uを含むこれらの装置はいずれも、模擬燃料として重水素(D)だけを用いていた。核融合発電を実用化するには、このDと3重水素(トリチウム、T)の核融合であるD-T反応を実現する必要がある。DだけでもD-D反応という核融合反応が起こるが、それを発電に用いるには10億K以上の超高温が必要となる。1億~5億Kでの反応率は非常に小さく、実用化には結びつかない。

 また、Q=1.25という値も実用化にはまだ足りない。理由は、ここでの出力エネルギーは熱の状態で、そこから蒸気タービンで発電すると、得られる電力量は熱エネルギーの6割以下、平均的には4割前後にとどまってしまうからだ。このため、Q>3が発電の最低条件となる。商業運転時の採算性を考えると、トカマク型核融合炉では、Q=50~60という値の実現が必要とされている。ちなみに、連載の後半で触れる海外の核融合ベンチャーの中には、蒸気タービンを用いない新しい発電技術を提唱している企業もある。

 Q値の最終目標とQ=1.25とはまだ開きがあるが、D-T反応であれば、同じ温度でも核融合反応の反応率が飛躍的に高まる。しかも、核融合反応の結果として放出されるα粒子(4Heの原子核)がプラズマを加熱するブースターの役割を果たす。加えて、さらなる大型化で保温性能の向上も見込める。こうした点から、D-T反応を扱う核融合炉であれば、実用化に必要な条件は達成可能と考えられている。

 ただし、D-T反応による核融合炉を実現するには、幾つかの高い技術的ハードルがある。(1)炉内の核融合反応で放出される高速中性子を増殖させた上でリチウム(6Li)に衝突させ、トリチウム(T)を発生させて炉内に注入する仕組み「ブランケット」の実現が必要、(2)放射性物質であるトリチウムの厳重な管理技術が必要になる、(3)プラズマ内の不純物(α粒子など)を排出する仕組みである「ダイバーター」の開発も必要、(4)これまでにない大型の炉が必要、といったハードルだ。


紆余曲折のITER計画、総費用の膨張にブレーキ掛からず

 これらの技術に基づくD-T反応の核融合実験炉を開発するには当初から巨額の費用が掛かると見られていた。しかも、D-T反応や大型のプラズマには未知の部分が多く必ず成功するとは限らない。失敗時のリスクを減らすために、国際協力で炉を建設しようとしたのが、「International Thermonuclear Experimental Reactor(国際熱核融合実験炉、ITER)計画」である。欧州(EU)、日本、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7カ国・地域が参加する巨大プロジェクトとなっている。

 達成を目指す諸性能や稼働目的は、準定常運転時でQ=10以上のプラズマを3000秒維持すること、プラズマを維持するための投入電力をやや減らした自己点火運転時でQ=30以上のプラズマを300~500秒維持すること、ブランケット、ダイバーターなどの動作確認、環境・安全性確保の実証などだ。これらを実証した後は、再び各国・地域が独自に商用炉の原型となる原型炉(DEMO炉)の開発を進めることになっている。

 ただし、このITER計画は茨の道を歩んできた。プロジェクトが発足したのは1985年。当初は核融合の出力(熱出力)が1GW規模の発電炉を作る計画だった。建設完了予定は2013年。2016年にも炉として稼働させる予定だった。ところが、建設費総額が1兆円相当を超える見通しに各国が反対したため、発電実験を開発目的から外し、しかも出力規模を最大500MW(0.5GW)に縮小することで、総費用を50億ユーロ(計画当時の為替レートで約5700億円相当)に圧縮した。

 2000年代前半には実験炉の建設地を巡って、日本の青森県六ヶ所村、フランスのカダラッシュ、カナダのオンタリオ州クラリントンの間で誘致合戦になった。カナダが途中で誘致合戦から降り、六ヶ所村とカダラッシュの一騎打ちになったが、建設地がある国が建設費の多くを負担する必要があったことなどから日本が降り、2005年6月にカダラッシュに決まった。

 ただしその際、あたかも交換条件のように、人材の多くを日本から提供することが決まった。事実、ITER計画の推進母体となる組織「ITER機構(IO)」の機構長はこれまで日本人が務めてきた。初代機構長は、外務省出身の池田要氏、2代目は、2010年当時に文部科学省の核融合科学研究所 所長だった本島修氏が選ばれた。ただし、本島氏の任期は2015年7月で切れ、3代目は欧州から機構長が選ばれる見通しだ。一応任期を全うしての交代ではあるが、継続しない、あるいは日本人でなくなるのは「計画が大幅に遅れ、総費用も大幅に膨らんでいることへの責任を取らされた格好」(ある核融合技術者)との見方もある。

 建設地がカダラッシュに決まってからも、ITERの建設はすぐには始まらなかった。実験でトリチウムを扱うことなどを懸念したフランス政府がその建設計画に対して許可をなかなか出さなかったからだ。ようやく許可が下り、建設作業が始まったのは2010年7月。計画の発足から25年が経過していた。

 ITER計画は費用面でも前途多難だ。50億ユーロだった建設費総額の見積もりは、2009年には100億ユーロ、2010年には150億ユーロ(2兆円超)まで増え、皮肉にも当初計画の予算を大きく超えてしまった。2014年、学術誌の「Nature」などは「ITERの建設費総額は500億米ドル(約6兆円)に近づいている」という見積もりを発表した。

 こうした建設費の膨張に対して、米国国内ではITER計画から再び脱退する主張が強まっている。例えば、2014年6月には米国上院議会が事実上の脱退法案を可決した。米国は独自のレーザー核融合に注力するため、2000年前後の一時期、ITER計画から脱退して再び復帰した経緯がある。

 これらの紆余曲折の結果、現在の建設完了見通しは公式には2019年だが、実際には2023年ごろになると見られている。D-T反応の核融合実験の開始は2030年ごろになりそうだ。

順調に建設が進む“影のITER”

 日本はITER建設地をフランスに譲った代わりに、人的資源以外にもう1つの“特権”を確保した。それが、冒頭で触れたJT-60SAだ。名前こそかつてのJT-60シリーズを踏襲しているが、実際にはEUとの共同プロジェクトである。それまでのJT-60シリーズが常電導による巨大なコイルを用いていたのに対して、JT-60SAは、超電導コイルを用いるため、大型化したものの見た目はむしろスリムになった。

 JT-60SAの第1の目的は、ITERの技術的バックアップで、「サテライトトカマク」とも呼ばれる。D-T反応は試さず、重水素(D)だけでプラズマの制御実験を進める。ただし、それ以外はITERよりも先進的な設計を採用した。ITERの次に各国が実現を目指す原型炉を先取りした格好になっている。装置についての費用は約435億円だが、日本とEUがほぼ折半する。周辺システムの費用200億円は日本が独自に負担するが、総額600億円超で、ITERの1/100という低コストで済む見通しである。

 ITERに比べて費用が安い理由はまず、寸法がITERの約1/2(体積では約1/8)の規模であること、電流はITERの1/5であること、D-T反応を扱わず、システムが簡素で済むこと、コストが高いコイルが先進的な設計のおかげなどでITERよりも少なくて済むこと、同じ東海村でかつて稼働していたJT-60Uの周辺装置を一部使えることなどが挙げられる。ただし、低コストの実現で決定的だったのは、ITERほど「船頭」が多くないことだという。「7カ国・地域で意見や技術水準を一致させるのは非常に大変」(ある核融合技術者)。対して、JT-60SAは、EU(実質はイタリアとスペイン、フランス、ベルギー、ドイツ)と日本の2カ国・地域で進められ、意思決定が容易だという。

10m規模の装置の許容誤差は±1mm

 JT-60SAは建設開始こそ、ITERの遅れに引きずられて5年ほど遅れ、2013年1月となったが、それ以後の建設作業はITERとは対照的に非常に順調に進んでいる。2014年秋には真空容器と呼ばれる実験装置の重要部分の組み立てを始めた(写真4)。既に「ポロイダルコイル」と呼ぶ、ドーナツ形状のプラズマと平行に設置する磁気コイルの実装もほぼ完了した(写真5、6)。2015年中には、トロイダルコイルというドーナツの腕に巻きつく形のコイルの実装が進められる見通しである。建設完了は2018年、D-D反応など模擬燃料での実験開始は2019年の予定だ。

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写真4 建設中のJT-60SAの真空容器部分。真空容器の外径は10m (写真:那珂核融合研究所)

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写真5 作製中の超電導ポロイダルコイル。超電導材料には、NbTiまたはNb3Snを用いている。直径3cm弱の超電導導線を何重にも巻いて作製する。

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写真6 ポロイダルコイル(EF4)の試作版断面。

 建設作業で神経を使うのはその精度の確保だという。プラズマは、その形状が設計値からわずかでもずれると、そのズレが拡大し、ディスラプションと呼ばれる炉の損傷の可能性がある運転停止につながってしまうからである。「直径10m規模の装置で許される誤差は±1mm。土台を作製したのはスペインだが、見事にこの精度を満たしてきた」(JT-60SA計画日本側プロジェクトマネージャの鎌田氏)。
 
 装置の設置や組み立てはレーザー光を用いた測量、測距技術で精度を確かめながら進めているという。
画期的なブレークスルーがあったとのことで、ロッキード社やMITでは10年内に低コストな核融合炉が実用化するとの報道があり、更に前倒しになる可能性がある。
米ロッキード、10年以内に小型核融合炉実用化へ 【ロイター】2014年 10月 16日 13:24 

10年後・・・小型で低コストな「核融合炉」が誕生する?
【FUTURUS TECHNOLOGY】2015年8月21日斉藤 精一郎 TECHNOLOGY

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                                                   (略)

「核」という言葉に拒否反応を起こすひとも多いだろうが、核融合は核分裂とはちがう作用だ。核分裂では重い原子が分裂して別の物質に変わることでエネルギーを出すが、核融合では軽い物質がくっつく際にエネルギーを出す。

核分裂よりも発生する放射性物質は少なく、また原理的に暴走することがなく、燃料は無尽蔵に入手可能だといわれていて、以前から将来のエネルギー源として期待されてきたが、その実現は非常に難しく、まだ実用には至っていない。

しかし、MIT(アメリカ・マサチューセッツ工科大学)が核融合炉の現実性を一気に高めるという研究発表を行った。同大学のウェブサイトで紹介されている。

10年後に核融合炉が実用化される?

核融合の科学者が聞き飽きた定番ジョークにこういうものがある。「核融合炉の実用化にはあと30年かかる。ただし、いつまでたっても”あと30年”のままだろうがね」というものだ」という一文でこのMITの記事ははじまる。しかし、ついにその期間が“10年”に短縮されそうだというのだ。

その進化の大きなカギとなるのが新しい磁場技術だ。希土類-バリウム-銅酸化物(REBCO)の超伝導テープを使うことで、強力な磁場を作り出すことができる。それが、超高温のプラズマを封じ込めることを可能にし、従来想定されていたよりもずっと小型の核融合炉を実現するというのだ。小型にできるということは、より低コストで、短い期間で建設できるようになることを意味する。

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A small, modular, efficient fusion plant – Massachusetts Institute of Technology
 

核融合においては、重水素などの物質をたいへんな高温(1億度以上)に熱しないといけない。その状態では物質はプラズマ状態(電荷を帯びたガス)になる。強力な磁場を形成することができれば、その超高温のプラズマを、核融合炉の中心に封じ込めておくことができる。逆に、それができなければ核融合炉は実現しないといっていいだろう。だから磁場の形成が重要なのだ。

そして、核融合反応の効果は、磁場の強さの4乗に比例して大きくなるという。したがって、磁場が倍になれば、核融合反応の強さは16倍になるというのだ! 今回採用される超伝導物質が作る磁場は、従来の倍の強さまではいかないものの、核融合反応を従来の10倍にまで高めるだけの強さはあるという。

低コストで建造可能

現在計画されている世界最大の核融合炉はフランスに建造中のITERだが、従来の超伝導技術をもとに設計されているため、その製造コストは400億ドルにのぼる。MITが計画している新し核融合炉は、その半分の直径で、はるかに少ないコストと短い期間で建設でき、それでいて同等のエネルギーを取り出すことができるという。

また、MITが開発した新しい核融合炉は、炉全体を解体することなくドーナツ型の反応炉から核融合コアを取り出せるようにして、仕様変更を容易にしたり、ブランケットと呼ばれる部分に固体ではなく液体の材料を使うことで、劣化したときの交換を容易にしたりというアイディアが盛り込まれている。

いま世界にある核融合の実験炉はすべて数秒間しか作動できないが、このMIT開発の新しい炉はITERと同様に連続運転が可能になる。現時点の設計では、運転に必要な電力の3倍の電力を出力できるにとどまるが、これは5〜6倍に改善できる可能性があるという。

核融合の実用化に関しては、まだ議論が必要だろう。前述のとおり原子力と比べると核廃棄物の排出は少なく、メルトダウンも起こりえないため、より安全ではあるようだ。しかし、多少なりとも核廃棄物が出ることは間違いない。また、建設にたいへんなコストがかかるいっぽうで運用が難しいので、作ったものの不具合が多くて運転できないなどということになったときの損失は大きいだろう。

しかし、将来的には原子力に代わるエネルギー源となる技術かもしれない。

日本は「もんじゅ」にこだわり過ぎた。文殊菩薩に肖った名称が廃炉を躊躇させたわけでもなかろうが、関係者、特に文科省には事態を解決して、何としても前に進めたいという熱意がなかったように思える。同時に、米国の政策に左右された面も大きい。

 20年の停滞と1兆円の空費はあまりにも酷い。国際社会の将来予測と原子力についての技術予測が十分できなかったことから来た停滞ではなかったか。

 福島第一原子力発電所事故の後は、原発を推進してきた小泉純一郎元首相までが感情的かつ無責任に原発全廃を主張するなど、少なからず政策決定に悪影響を与え混乱させた。

 しかし、平成26(2014)年末の総選挙で、「原子力は重要なベースロード電源で活用。原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発は再稼働」を公約に掲げた自民党の勝利で、全基停止していた原発が一部で再稼働し始めた。

 東日本大震災直後は深刻なエネルギー不足から計画停電なども行なわれ、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが注目された。その後は、「燃える氷」とも言われるメタンハイドレートなどの新エネルギーの開発にも注力されるようになった。

 いずれにしても、可採期間が有限な化石燃料に代わり、安定的かつ長期にわたり需要を満たし得る原子力エネルギー・サイクルの実用化が不可欠である点に変わりはない。

 これまでは原発問題が、国内の近場のエネルギー需給の視点だけで論議されてきた面は否めない。しかし、原発を含む核エネルギーの論議は、今後の世界人口の増加と、日本が技術立国で行くか否かという基本に立ち返って考える必要がある。

 同時に、原子力は核兵器に関係しており、軍事や安全保障と不可分の技術でもある。日本は非核3原則によって核兵器を製造・保有するわけではないが、日本に対して核兵器が使用された場合は甚大な被害を受ける。

 新しい各種原子炉の開発とともに、廃炉や延命技術、また核兵器に伴う防護法も含めた原子力技術の蓄積こそが技術立国を目指す日本の立ち位置ではないだろうか。原発廃止論者は感情が先に立ち、こうした広い視点を忘れているように思えてならない。

2050年頃の世界

 地球温暖化の抑制と急増するエネルギー需要への当面の対処、そして長期的には急増する人口と開発途上国の文明化への支援という、長短2つの視点からのアプローチが必要ではないだろうか。

 世界の人口は現在73億5000万人であるが、年間7000万人増えており、早ければ2050年頃に100億人を突破するとみられる。

 今日、人口3万人以上の国は210カ国であるが、そのうちの約4分の3に相当する149カ国は低・中所得の発展途上国に分類されている。

 これまでは化石燃料のほとんどを先進国が消費してきた。しかし日本人的思考では、発展途上国の国民も等しく文明の恩恵を享受する権利がある。日本は発展途上国の文明国への仲間入りを支援する意志と能力を持ちうる国であると自負する。

 その場合、早晩化石燃料だけでは成り行かないことは火を見るよりも明らかである。クリーンが強調される風力や太陽光利用の再生可能エネルギーは、規模の割には発電効率が悪く、また安定供給に不安がつきまとう。

 2015年時点で、日本は44基の原発を有したが、世界には31カ国・地域で426基が稼働している。特に中国のエネルギー需要は著しく、運転・建設中の48基に加え、225基が計画中とされる。しかし、沿岸配置で安全性に問題があり、日本にとっては懸念材料である。

 インドやその他の国でも需要拡大が予測され、地球温暖化の抑制などもあり、国際社会では「原子力ルネッサンス」として原子力への回帰傾向にある。

 こうした観点からも、日本は一刻も早く原子力エネルギーで自立を図り、同時にその技術をもって発展途上国を支援する方向を目指すのが賢明であろう。

 計画停電が終了して以降、原発なしでもやっていけるじゃないかという意見も聞かれた。それは原油輸入に多大の国益が消費され、電力料金の値上げなどが家計や企業を圧迫している現実を無視したものであった。

 また、中国の原油需要はうなぎのぼりで、その皺寄せは日本が受ける。同時にアザデガン油田(イラン)に見たように、米国の都合でイランへの経済制裁に同調を強いられ、油田の権益を放棄させられた。漁夫の利を得たのは中国である。このように国際情勢に翻弄され、多大の投資も無に期しかねない。

 眼前の発想しか持ち得ない日本では、明日の自立が危ぶまれる。近視眼的視点を脱却して、長期的視点、全地球的視点からの考察が欠かせない。それこそが、技術立国を目指す日本の生き延びる道でもあろう。

エネルギー供給体系

 原発では使用済み燃料が最大の問題である。濃縮ウランを燃料として使用すると、使用済み燃料から自然界に存在しないプルトニウムが生成される。これを抽出してウランとの混合酸化物にすると、MOX燃料が得られる。

 使用済み燃料の再利用で核燃料サイクルを確立することができる。従来英仏に委嘱していたMOX燃料の加工が日本でできるようになって、初めて自前の核燃料サイクルの完成となる。

 日本で稼働している原発の多くは低濃縮ウランを原料とする軽水炉であるが、MOX燃料は軽水炉でも使用でき、これはプルサーマルと呼ばれる。

 日本は福島第一原発の事故まで55基の原発を運転し、MOX燃料を使用するプルサーマル2基も含め、運転中の事故そのものはなかった。

 高速増殖炉は使用済み燃料から生成されるプルトニウムを燃料としながら増殖させ、また放射性廃棄物を減殺させるので「夢の原子炉」と呼ばれる。

 ただ、原型炉「もんじゅ」を新基準に沿うように改修するためには約6000億円を要し、年間の維持費は200億円とも言われる。これでは金食い虫以外の何ものでもない。

 そこで、もんじゅのデータ、他国における同種の研究、さらに今日ではコンピューターを駆使した模擬実験や理論研究などから得られる知見をもとに、次の段階である実証炉に進む道や、フランスで開発中の高速増殖炉に参加する道など、いくつかの選択肢もある。

 ただ、原水爆の原料となるプルトニウムを使用する関係から、日本の核武装を恐れる米国の政策に翻弄されやすい。この呪縛を逃れるには、第5期科学技術基本計画(平成28~32年)でも打ち出された、核融合炉の研究に注力することである。

 核融合炉は「地上の太陽」とも言われるように、太陽で起きている核融合反応を地上に再現するもので、放射性物質を出さない究極のエネルギーである。人類に等しく文明生活を享受させる可能性があり、現在はかなり有望な段階に来ている。

 以上から、今後のエネルギーの主力は以下のように推移するとみられる。

   火力発電(化石燃料)⇒ 軽水炉(濃縮ウラン燃料)⇒          プルサーマル(MOX燃料)⇒ (高速増殖炉) ⇒ 核融合炉

核融合炉を目指せ

 高速増殖炉には懸念されるプルトニウムの蓄積問題がある。そうした危険性を全面的に払拭するのが核融合炉発電である。

 核融合炉は原子を電子と陽子、中性子に分解してプラズマ状態で起きる核融合反応で高温を得るものである。

 理論的には1グラムの燃料で石油8トンに相当するエネルギーが発生する。また、重水素、三重水素(トリチウム)、ヘリウム、リチウム間の反応で、二酸化炭素が発生しないので、地球温暖化防止に役立ち、燃料供給が止まれば原子炉が停止するので暴走もしない。

 ただ、太陽では自身の重力で燃料が閉じ込められているが、核融合炉では燃料閉じ込めの仕組みが必要である。摂氏約1億度にもなるプラズマを長時間にわたって個体の容器で閉じ込めることはできない。

 そこで高電流を流して発生する磁力線で編んだドーナツ型の磁器容器に閉じ込める方式や強力なレーザー光を照射してプラズマを作り出す方法などが有力視されている。どちらの方式でも瞬間的な核融合反応は確認されているが、持続させる段階には至っていない。

 なお、レーザー核融合は大阪大学が先頭を走っていたが、立花隆氏は取材で米国にいた時、(米国の)レーザー核融合で「持続可能性」が証明されたというニュースを聞き、「人類文明は確実な存続可能性を、エネルギー補給の観点から十年単位、百年単位でしか読めなかった。しかし、核融合技術を手にすると、千年単位、万年単位で読めるようになる」(「文藝春秋」2014.5)と述べている。

 筆者は大学院時代に核融合を専攻し、ドーナツ型の一種であるヘリオトロン方式の研究に携わり、磁気容器にプラズマを打ち込む実験を行った。それらの経験とその後の進展状況から、日本の核融合研究は世界のトップクラスにあるとみている。

 現在はEUと共同で「JT-60SA」という実験装置を設置(茨城県那珂市)し、超高温プラズマを長時間維持する技術の確立を目指している。すでに建設が進んでおり、2019年に運転開始予定である。因みにSAはJT-60(1990年代の日本の実験装置)の成果を受け継いだ「Super Advanced(超先進的)」から来ている。

 国際的には日本も関わる「国際熱核融合実験炉(ITER)」がフランスに設置され、JT-60SAの技術を踏まえ、2020年から実験を始める計画である。

 次の段階の原型炉はJT-60SAやITERの状況を見ながら設計が始まり、2032年から建設、2045年頃運転予定となっている。

廃炉や延命も重要な産業

 チェルノブイリで原発の爆発事故が発生してから30年が過ぎたが、廃炉の具体的な工程は今でも定まっていない。

 というのも、コンクリートなどと共に固まって残る核燃料の総量は1300トンとみられ、「固まった燃料は硬く、少量の分析試料を取り出すのも難しい」(「読売新聞」2016.1.31)状況であるからだという。

 一方、福島第一原発は想定外の津波で電源が切断され、炉心溶融(メルトダウン)が起きたものである。チェルノブイリと同等の「レベル7」であったが、放出された放射性物質の量は6分の1で、事故から40年後の2051年までに廃炉する工程が定まっている。

 今後は事故による廃炉もあろうが、使用期限を過ぎた原発の廃炉が多くなるとみられる。また、延命を図る原子炉も出てくる。

 廃炉(や延命)技術は、一朝一夕に確立できるものではない。正常運転停止後の廃炉とは違って、メルトダウンした福島原発の事故処理では燃料棒の位置、状況など不明のことばかりで試行錯誤が繰り返されている。

 宇宙線を使って、建屋を透視する技術や溶融燃料の位置や状態を調べる技術の開発も進んでいる。また、放射線を遮る工法の研究や多用途の活躍が期待されるロボット・アームの開発など、「禍を転じて福となす」チャンスでもある。

 軽水炉は30~40年が安全運転期間とされ、一部は20年くらいの延命も図られようが、多くは廃炉にされる。現在世界19カ国で136基の廃炉作業が進められているが、実際に廃炉を終えたのは米国・ドイツ・日本の13基のみである。その後の数年間で100基が廃炉されると見られている(「産経新聞」平成26.9.17)。

 「世界で廃炉が大きな産業になる可能性を持っている。日本が建設技術だけでなく、廃炉技術でも世界トップクラスになれるか、今が転換期」(同紙)という。

 余談であるが、宇宙線による測定技術は、ピラミッド内の空き室の探索や、マグマの移動探知による地震予知への応用としても研究されている。

おわりに

 地球温暖化の防止、人口の増大への対応、開発途上国の文明化、放射能汚染の危険性除去、さらには米国の干渉排除などの視点から、ほぼ満足な回答は核融合炉発電しかない。

 無害、無尽蔵の重水素などを燃料とするので、基本的に高レベル放射能の危険性はない。ただ、1億度のプラズマを閉じ込め核融合反応を起こす過程で中性子が発生し、炉壁を構成する物質が放射化する。これは、低レベル放射性破廃棄物として処分可能である。

 ただ想定外はいつでもどこでもあるわけで、多様なエネルギー源の組み合わせが有用である。

 原発では高速増殖炉のほかに、「次世代原子炉」とか「究極的軽水炉」などの名称で、緊急時は自動停止・自然冷却するが、燃料交換も炉内メンテナンスも不用で30~100年連続運転できる原子炉などの研究も進められている。

 ともあれ、エネルギーの安定確保と安全性の両立に向けた技術開発では熾烈な競争が行われており、「数年の断絶が命取り」と言われるほどで、「技術開発の灯を絶やさぬことが日本の国際競争力維持には不可欠」(同紙平成26.9.18)とされる。

 ただ、東大大学院工学系研究科の岡本孝司教授(原子力工学)の研究室でシビアアクシデント(過酷事故)対策を学ぶメンバー約20人のうち半数は中国、韓国、トルコなどの留学生(同紙平成26.9.19)だそうである。

 米国などは国防関連技術や高度技術などについては安全保障絡みで漏洩防止などの歯止めをしている。かつて日本人が米国で行った研究成果を持ち帰って問題になったことがある。

 日本も安全保障や技術立国の立場から、サイバー攻撃で先端技術を盗まれるなども頻繁になっており、高度な技術については国家的な視点から重視して対処する必要があるのではないだろうか。

(略)
 近年顕在化しつつある日本の科学技術力の地盤沈下と、中国の急速な追い上げがある。「科学技術で、既に中国は質量ともに日本を追い抜いた」と断言する識者もいるほどだ。

 完成当時は「夢の原子炉」と期待されたがトラブル続きで廃炉が事実上固まった高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)や、人為的なミスで3月に運用できなくなったエックス線天文衛星「ひとみ」など、ただでさえ「日本の科学技術は世界最先端」という自負心が揺らぐ事態が相次いでいるところだ。

 これに対して中国は、経済の急成長と並行する形で、国を挙げて科学技術のレベルを引き上げてきた。研究開発への投資額では既に日本をはるかに追い越し、2013年の時点では日本の18・1兆円に対して、中国は2倍近くの35兆円だ。その差は今後も広がっていくだろう。

 研究者らの数でも、日本の84万2千人に対して中国は148万4千人にのぼる。研究者が多ければ必然的に、一国の科学技術力を測る目安である全体の論文数や、論文が他人に引用される件数でも、日本は大差をつけられてしまう。

 今から15年ほど前であれば、科学技術で日本が中国をリードしていることは明白だった。しかしその後、中国は米露に続いて3番目に有人宇宙飛行を成功させ、月面探査車も走らせている。今年8月には、解読や盗聴が不可能とされる量子暗号通信の実験衛星を世界で初めて打ち上げた。

 また、海洋開発では、日本の「しんかい6500」を超える水深7千メートル級の有人潜水調査船が登場。民進党の新代表に選ばれた蓮舫氏がかつて「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言して注目されたスーパーコンピューターでも、計算速度の世界ランキングで中国産チップを用いた新型機が日本の「京」(神戸市)を抑えて世界一だ。

 科学技術政策を担う内閣府の幹部は、日本と中国の科学技術力について「10人中5人は『日本の勝ち』、3人は『中国の勝ち』、2人は『同レベル』と答える状況まで迫ってきた」と話す。

 まもなく今年のノーベル賞受賞者が発表される。ノーベル賞の中でも特に重みのある物理学、化学、医学・生理学の自然科学3賞では近年日本人の受賞が相次ぎ、その数はアジアの中でも群を抜いて多い。「日本の科学技術は世界最先端」であることを再確認できる名誉といえるが、忘れてはならないのが、受賞理由となった研究成果の多くが何年も前に得られたものだということだ。

 このことを言いかえれば、今後10年、20年経てば中国人が相次いでノーベル賞を受賞する時代が来るかもしれない。昨年初めて医学・生理学賞に女性薬学者の屠ユウユウ氏が選ばれたことは、今後の中国の受賞ラッシュを暗示しているようでもある。

 今さら言うまでもなく、資源に乏しい日本にとって科学技術は“生命線”だ。自らのスピード違反に絡めて自動運転の技術開発を論じる大臣に、日本の科学技術の明るい未来をどこまで期待すればよいのだろうか。