Clyde Russell

[ローンセストン(オーストラリア) 1日 ロイター] - 今回の石油輸出国機構(OPEC)合意のキモとなるのは、これは実は減産ではなく、むしろグローバル市場でダブついている原油を部分的に解消するだけ、という点だ。

日量120万バレルの減産というOPEC合意によって、グローバル石油市場がタイトになることはほぼ確実だが、それでも来年上半期は大量の原油が市場に出回る可能性が高い。

ロシアなど非OPEC産油国が、さらに日量60万バレル減産するという約束を守るとしても、やはり状況は変わらないだろう。

もちろん、合意が発表された当初の市場反応からは、需給バランスが大幅にタイト化すると投資家が予想していることがうかがえる。米原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物CLc1は4.21ドル上がり、1バレル49.44ドルと、9.6%の上昇となった。

OPECが2008年以来となる減産合意を発表した際、WTI先物も1日の変動幅としては2月以来最大となる10%の上昇を記録している。過去最高水準にあった原油価格は、グローバル金融危機とその後のリセッション(景気後退)の影響を受けて急落していた。

表面的には、今回の原油価格の動きは、世界的な石油供給がかなり大幅に減少するという展望に反応している。まさにOPEC加盟国の閣僚たちが目論んだ通りである。

だが、もう少し詳細を掘り下げてみれば、OPEC減産合意の規模、そしてその最終的な影響について疑念がわいてくる。

大きな問題は、ウィーンで発表され、1月実施を予定する減産合意が、10月時点でのOPEC生産量を基準としているという点である。当時、OPEC生産総量は過去最高水準にあったからだ。

<過去最高からの減産>

OPEC最大の生産国であるサウジアラビアは、日量120万バレルという減産合意の相当部分を引き受け、生産量を日量48万6000バレル削減し、1005万8000バレルとする予定だ。

だが、この数字は、今年1月時点でのサウジアラビアによる生産日量1025万バレルに比べてわずかに低いだけである。つまり、サウジアラビアが予定どおりに減産したとしても、1年前の生産量とほとんど変わらないのだ。

30日合意で意外だった点の1つは、イラクが日量21万バレル減らし、生産量を435万1000バレルとすることに合意したことだ。だが、それでも今年1月の生産日量425万バレルに比べれば多い。つまり減産に合意した後でさえ、前年比ベースでは増産となる。

イランは1月以降、10月水準よりも増産となる合意を獲得。割当量は日量9万バレルだけ増加し379万7000バレルとなる。これは、今年1月のイランの生産日量305万バレルに比べて、100万バレル近くも多い水準である。30日に発表された120万バレルの減産とは好対照の数字だ。

他の主要湾岸産油国でも、今年1月の生産量と比較した場合、2017年1月以降の割当量はほんのわずか減少しているにすぎない。

クウェートは今年1月の日量280万バレルに対し270万7000バレルの生産を認められた。アラブ首長国連邦の割当量は287万4000バレルで、1月の289万バレルから微減にとどまっている。

<生産量は実質的に横ばい>

OPEC全体では、今回の減産合意の基準とされている今年10月の生産量は日量3382万バレルだった。

この総生産量から日量120万バレルを引くと約3260万バレルとなる。これは今年1月のOPEC生産量とまったく同じである。

ロシアは、OPEC諸国の減産の動きに同調すると約束している。両者が共同歩調を取るのは2001年以来となるが、世界最大の産油国であるロシアがどのレベルを基準として減産するのかは直ちには明らかにされなかった。

仮にロシアが10月の生産量を基準にすると仮定すれば、日量30万バレル減産の場合、生産量は、旧ソ連崩壊後の最高水準だった日量1120万バレルから1090万バレルに減少する。これは今年1月の同国生産量1088万バレルを上回っている。

実質的に、OPECとロシアの計画は、両者を合わせた生産量を今年1月の水準まで戻そうということであり、これが持続的な価格上昇に向けた刺激として十分なのかどうかという疑問が残る。

減産合意が遵守されるのかという懸念はさておき、今回発表された削減によって、需給バランスをしっかりと供給サイド有利に傾けるというのは難しい課題に思われる。

今回の合意に参加していない、特に米国とカナダの生産者は、少しでも価格が上昇すれば、その機を逃さず生産量を増やすだろう。

加えて、もし市場構造がより逆ザヤ方向に動く、つまり先物価格が先に行くほど期近より安くなる状況が生まれれば、現状では在庫となっている数百万バレルの一部が市場に放出される可能性が高い。

さらに、原油価格が現在のような上昇を続ければ、中国と、そして程度は小さいもののインドが、戦略的備蓄用の石油購入ペースを緩めるだろう。そうなれば、アジアの石油輸入国上位2カ国で需要の伸びが弱まることになる。

結局のところ、OPECが今回の減産合意で達成するのは、原油価格の底打ちと、OPECの影響力がまだ残っていると市場が理解するだけにとどまるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
8年ぶりOPEC減産合意後、マーケットはWTI原油価格ぼ60ドル~70ドルを目指すのではないかと期待して上昇しているが、アラム石油が上場するまで仮そめの合意だろうと思う。まあ、短期勝負なら一度は1バレル60〜70ドルもあり得るかもしれません。

  OPEC減産合意で原油は世界供給不足へ、1バレル60ドル向かうとブルンバーグあたりは言っているが、所詮来年サウジの国営石油会社アラムコ石油が上場するまでで、上場したら、ゲーム理論の囚人のジレンマからすれば、ごとく裏切りしあうのではないかと私は思っている。お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマである。

上場するにあたり、石油価格が乱高下していては上場すれば世界最大の時価総額になるであろうアラムコ石油の株が高く売れないので、サウジアラビアが譲歩する形で少しでも原油価格を高く維持できれば、高い公開価格が設定でき、財政難に陥っているサウジ政府はイランには、減産ではなく増産凍結で譲歩たのも理解できる。


減産見送りの場合はWTI原油が30ドル割れへ下落するとの警戒感も台頭していた。しかし、OPECの減産合意を受け、WTI原油は11月29日の45.23ドル/バレルから30日には49.44ドルヘ急騰。市場はOPECの減産合意を好意的に受け止めている。

ロシアはオペックの減産合意を受けて、ノバク・エネルギー相は同日、原油生産を最大で日量30万バレル削減する用意があると表明した。だがロシアなど非オペック諸国が、どれくらい裏切らず、減産合意を遵守し続けることができるであろうか?

今回の減産合意でOPEC生産量が3、250万B/Dへ減産されれば、2017年は原油
供給が不足へ転じる試算と言われているが、不足し原油価格が上昇すれば、米シェールオイルが増産するだろう。短期間での大幅増産は想定しにくいが、将来増産されることがわかった段階で下落するだろう。勿論アメリカファーストのトランプ政権は増産にNOと言う訳がない。シェールオイルを手にした米国は中東から手を引くのだ。

米国が中東から原油を買うことをしなくなれば、中国が中東に顔を突っ込む形となるだろうが、金もないのに金があるように振る舞えるのもいつまで続くのだろうか?いつ中国経済が崩壊するかもわからない現状で、中国需要も予測通りに増えるのだろうか?

世界的にEVが今後爆発的に普及する兆しがあるなか、ガソリン車が今後需要が減れば原油の需要予測は将来的に右肩上がりではなくなる。


国営石油アラムコのIPOは原油需給を悪くせずに埋蔵資源を現金化できる新たな仕組みだと若きサウジの実力者ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は目論んでいる。サウジは原油を増産しなくとも現金を手に入れることが出来ると考えているようだが、これはかつてバブル期に日本のNTTが上場したことに等しいのではないかと私は思う。サウジ・アラムコ社の株価の需給が今後原油価格の騰落と密接にリンクするようになり、原油価格がオペック主導で調整することが難しくなるのではないかと私は思う。
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【東洋経済】2016.5.28
アラムコの確認埋蔵量は約2600億バレルと石油メジャー最大手・米エクソンモービルの10倍強だ。企業価値の正式な算定はこれからだが、2兆ドル(約220兆円)以上とサウジは見積もる。時価総額で、世界最大の米アップルのおよそ3倍と、市場関係者は沸き立つ。

IPOは2段階で行われる予定だ。まずアラムコ株の最大5%を売り出す。5%といえど1000億ドル(約11兆円)。14年の中国アリババIPOでの調達額250億ドルの4倍の規模になる。その後、石油メジャーなどと合弁で展開する、石油精製や石油化学関連会社の上場を検討する。
サウジ・アラムコの時価総額は現在産予想の範囲ではあるが、埋蔵石油量などから算定すれば、2~3兆ドル(220~330兆円以上)といわれています。

【Yahoo】 時価総額ランキング(米国)(下の画像参照)で見る限り12/2現在世界最大の時価総額のアップルが5859億ドル(約60兆円)。
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 サウジ・アラムコの予想時価総額がとてつもなく巨大であるかがわかります。

しかし上場はおよそ5%の株式を上場させる計画だ。5%といっても1000~1500億ドルです。ちなみに2014年に上場したアリババが過去最高の250億ドルです。

アリババと言えばソフトバンクの孫正義が出資したことで一躍中国市場でシェアを握ったことで有名fだが、そのソフトバンクの孫正義はサウジと先端技術ファンドを組む。 ソフトバンクがサウジと10兆円巨大ファンド、先端技術投資を加速
【ロイター】2016年 10月 14日 15:47 JST 

話が逸れたが、巨大な時価総額なIPOが市場に与えるインパクトは大きい。
アリババは上場後低迷し、ようやく戻ってきたところだ。
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問題は、5%だけしか初回に市場に放出しない点だ、おそらくサウジが財政に困る度、アラムコ石油株は放出するだろう。となると株価の需給が長期的に悪くなる。

まるで、バブル期に株式を放出してその後2回.3回と都度放出して、日本の株式市場を長期低迷させた原因を作ったNTT株の放出を世界規模でやるようなものに見えてしまうのは私だけだろうか?


サウジ・アラムコ石油上場すれば、原油価格のオペックの影響力が今後ますます減るだろう。となれば、今後ますます、原油価格は需要者優位で進む可能性が高い。
となれば、原油価格が長期的に上がり続けることはないと思う。