環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案は9日、参院特別委員会で与党などの賛成多数で可決された。本会議に緊急上程され可決、成立した。太平洋を取り巻く日米など12カ国が巨大経済圏を目指す協定だが、次期米大統領のトランプ氏が脱退を表明しており、発効は困難で漂流する可能性が高い。

 TPP参加国の中では米国抜きの発効を模索するべきだとの声もあるが、アジア地域での中国の存在感が一段と増すとの見方もある。TPPを軸としてきた安倍政権の通商政策の見直しは必至だ。

 TPPは、参加国の中でも経済規模の大きな日米が国内手続きを終えることが発効の条件となっている。TPPは参加国の間で昨年10月に大筋合意にこぎ着けたが、トランプ氏はTPPで国内の産業が不利益を被るとして、来年1月の就任日にTPP脱退を通告し、代わりに2国間交渉を求める考えを示している。

 安倍首相は米国抜きのTPPは「意味がない」と発言している。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)関連法案が国会で承認された。保護主義に流れず、自由貿易の拡大を成長の礎にしようとする日本の意思を内外に示した。

しかしながら現状条約では米国が参加しなければTPP発行は事実上不可能である。

私は、TPPに賛成の立場をとってこのブログでは持論を展開しているが、ここにきて米国のTPP不参加は、折角甘利明元再生大臣が舌が癌になるまで交渉を続けたのに発行できなければ、気の毒でしかたがない。

野党が主張するように無駄だとは思わない。TPP関連法案の成立は自由貿易を堅持する立場上必要であり、米国の不参加はむしろTPPを日本主導の21世紀の大東亜共栄圏にする大チャンスの到来ではないかと思っている。

だが、依然国内には左右両派を問わず反対意見が多く、保守派も分裂気味である。

「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は、同年、「GDPは約4兆8000億円減少」「全産業で約190万人の雇用減」という影響試算を出している。
さらに、アメリカのタフツ大学も今年1月、「日本のGDPは10年間で0.12%(約56億4000万円)減少、約7万4000人の雇用減」という影響試算を公表。これらは政府とはまったく真逆の評価だ。
(略)
・リンゴやミカンなどの果樹農家が打撃を受け、水産業・関連産業で500億円の生産額減少
・残留農薬や食品添加物などの安全基準が大幅に下がる
・薬の臨床試験や検査が大幅にカット。また、ジェネリック薬品が作れなくなる可能性
・医薬品はさらに高額となり、タミフル1錠7万円のアメリカ並みかそれ以上に
・健康保険料が現在の2〜3倍になり、国民皆保険も解体される可能性
・パロディなどの二次創作物が特許権に反するとして巨額の損害賠償を求められるように
・政府はプロバイダを規制できるようになるため「知る権利」「表現の自由」が大きく損なわれる
・外国企業から訴えられるために最低賃金引き上げができなくなる
 そして、最大の問題が、「ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)」だ。前述した遺伝子組み換えの食品表示などもISD条項が問題の根本にあるが、それはISD条項が企業などの投資家を守るためのものであるためだ。しかも、国内法ではなく国際仲裁機関が判断を下すISD条項は、〈最高裁判所の判決よりも、ワシントンD.C.の世界銀行にある仲裁判断の決定が効力を生じることになっている〉(前掲書より)。これは日本国憲法76条第1項「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」に反することになる。さらに〈私たちに憲法上保障されている基本的人権もTPP協定によって損なわれていくことになる。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるが、TPPでは貧富の格差がさらに拡大して、金持ちでないと医療も受けられず、安全な食料も手に入らなくなってくる〉のだ。
TPPは日本を破滅に導くと言う主張に対して、どうしても私は鵜呑みにできない。

反対派の最大の反対理由がISDS条約項だ、日本の最高裁判所の判決よりワシントンDCにある世界銀行の仲裁裁判所が優先し、米国を利する条約というより国際的企業や投資家を利する条項であるということがTPP反対派の根拠となっている。

もともとISDS条項は投資家が外国人であるという理由で不当な扱いを受けるのを防ぐというのが本来の目的である。日本の規制にはほとんど内外格差がない。反対派はわざと隠しているのだが、内外格差のない規制は訴訟の対象になりません。

政府は日本の規制は人ではなく、行為に対してかけるものだから、どの国の人や企業であろうとも必要な規制はかけていくことができる。しかし、反対派はS.D.Meyers事件Metalclad事件Etyl事件等をこの条項の悪用の事例としてあげ、米国のコングロマリットが悪用し、日本の国益が著しく損なわれると主張している。
輸入品が増えることによって国内の農畜産物が大打撃を受けることは明々白々で、廃業に追い込まれる生産者は続出するだろう。となれば、食料自給率も低下するのは必然だ。日本の食料自給率は2015年のデータでもカロリーベースで39%と主要先進国のなかでも最低水準なのだが、農林水産省は2010年の試算でTPPが発効されれば食料自給率は14%に低下すると発表している。それでなくても命に直結する食を海外に依存している状態であるのに、もしも気候変動で農作物が凶作となり輸入がストップしても、そのとき国内に広がっているのは生産者のいない荒廃した農地だけだ。
(略)
さらに〈私たちに憲法上保障されている基本的人権もTPP協定によって損なわれていくことになる。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるが、TPPでは貧富の格差がさらに拡大して、金持ちでないと医療も受けられず、安全な食料も手に入らなくなってくる〉のだ。
危機は煽ったもの勝ちな側面はある。例えば、「TPPはアメリカの陰謀であり、日本が植民地化される」「TPP賛成という者は亡国の徒だ」と左右両派より危機を煽る
TPP亡国論とでもいうべきものは、私は胡散臭く感じてならないのだ。

反対派の主張を読むと仮定の状況による脅迫である。だが、TPPは高水準の貿易自由化と公正なルールを掲げ、通商協定の世界標準たり得る先進性を備えている。

TPPは法の支配や市場経済が不十分な中国が主導するのではなく、日米など自由主義国が構築する自由貿易のルールであって、米国の陰謀というのは日本人が持つ米国に対する超巨大国家のイメージを悪用した、政治的なプロパガンダであり、危機煽動マスコミ言論人達の商売ネタに思えてならない。第一、米国側からもTPPは日本の陰謀だと言う主張をする輩がいて、それをトランプ支持者達は真に受けている。

TPP反対派は農協の利益を代弁しているに過ぎないような気がする。農協など貿易の自由化によって不利益を得る人たちや、衰退産業(家電製造・印刷など)で働いている人、規制で分厚く守られている人たち(医療・農業・電気・ガス・運輸など)にとっては、TPPは陰謀なのである。

不況の出版界や衰退する新聞やメディアにとって、危機だ陰謀だと喧伝することは、ご飯を食べていくうえでの貴重なである。TPPは陰謀であり危機ということで商売にしている言論人やマスコミは多数見受けることができる。

明日にも日本国債は紙切れになり預金が封鎖されると危機を煽り、商売を続けている言論人は掃いて捨てるほどいるが、そういう人達ほど諭吉が大好きなのである。

安倍内閣発足以降、来年は大恐慌になると言う本は影が薄くなったが、10年、20年続けて来年こそは大恐慌の再来だとか、地震でも恐慌でも言い続ければいつかは当たるかもしれない。
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いかがわしいノストラダムスの大予言の系譜である危機煽動言論は割りのいい商売であり、TPP亡国論もそのネタにされていると思う。

日本の農業は、TPPで絶滅だと反対派は主張するが、地産地消の考え方が強い日本で、日本の農業が絶滅することはありえないし、世界各国で進む日本食ブームにのって、日本の農水産物は高級職食材として、世界に売れる可能性が高いような気がする。日本の農業はもしかすると高成長産業の卵であるような気がする。TPPは野菜果物などの農水産物を海外に輸出する切っ掛けとなると思う。また、我々庶民にとっては、格安な食材が輸入されることは歓迎である。

農水産物は輸入と国産はおのずと棲み分けることになり、日本産の食材は高級ブランド化するのではないかと思う。

またTPPのもう一つの本質が中韓排除の国際戦略であるが、そのことに焦る中国韓国のプロパガンダがTPP反対派に隠し託されていると私は思うのである。 

TPPは中国を蚊帳の外に置くことにより中国経済に対する過度な依存を避け、米国が経済的な優位をアジア太平洋地域において維持し、中国を抑制するための戦略的枠組みであった。TPPが頓挫すれば各国が対中傾斜を強め、中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に主導権を握られ、日米が推し進める中国排除の国家戦略に影響を及ぼしてしまう。


今回トランプ次期大統領のTPP離脱宣言で、域内での中国の影響力は高まる可能性は高い。それが中国が経済、軍事両面での覇権主義的傾向を強めることにならないか、警戒を怠るわけにはいかない。

だが、トランプ次期大統領はTPPに頼らず独自に中国との対決する姿勢を取り始めた。台湾を国際社会に再登場させることにより、中国封じ込めに動くようだ。

[ワシントン 5日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。

米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直接コンタクトを取っていなかった。

トランプ氏と蔡氏の電話会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて米国政府に抗議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和、民主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を損ないかねないと警告した。


もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘する。

同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏との10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変更を示すものではないとして、火消しに追われている。

しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であるスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お好きなように」と述べた。

元米高官を含む専門家らは、台湾首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないとみている。

トランプ政権の国務長官候補の1人とみられているジョン・ハンツマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、対中政策において台湾は「有益なレバレッジポイント」であることが証明されるかもしれないと語った。

同じく国務長官候補に挙がっているトランプ氏のアドバイザーで対中タカ派のピーター・ナバロ氏とジョン・ボルトン元国連大使は共に、アジアの領有権問題で主張を強める中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を提案している。

だがこうした戦略は非常にリスクを伴うと、オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)で東アジア政策を統括するアジア上級部長を務めたエバン・メデイロス氏は指摘。「中国は1990年代半ばに、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと非常に明確に伝えてきた。これは米国が試すべき問題だろうか」

「台湾問題は政治的にとても慎重さを要する問題であり、中国にとっては、他の何かと取引をすることはないであろう非常に優先度の高い利益だ。もし米国が台湾と正式に外交関係を結ぶことを決めたなら、北東アジアで軍事危機が起きてもおかしくはない」と同氏は語る。

米共和党政権時代のホワイトハウス高官で、2002─2006年に米国の在台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)台北事務所元所長のダグラス・パール氏は、トランプ氏の側近らのアプローチは、中国が現在よりも弱く、米国が強硬姿勢を取れる立場にあった1990年代に基づいているようだと話した。

「問題は、中国政府が1996年に(軍備の)10カ年増強計画を決めた。そのようなことを再び受け入れなくてはならない必要性は全くないだろう」と同氏は述べた。

<中国試し>

パール氏によれば、中国の習近平国家主席には、来年の党大会で地位固めをしたいという思惑があり、「台北事務所を正式な外交機関にするというような柔軟な態度を習氏が見せれば、ライバルたちの餌食(えじき)となる。そのような事態は起こさないだろう」との見方を示した。

また、米上院外交委員会のクリス・マーフィー民主党議員は、北朝鮮の核問題や通商問題で中国に圧力をかける方法として台湾を利用することは逆効果だと指摘している。

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、トランプ氏と同氏の政権移行チームに助言する人たちも、40年来の「1つの中国」政策をあからさまに破ることには警鐘を鳴らしているという。

その結果、トランプ氏はまず、日本や他のアジア同盟国を動揺させないよう、米政策転換の兆しというような形ではなく、個人的な問題として電話会談を要請した。

だがその後トランプ氏が、為替操作や関税や南シナ海問題をめぐり、中国を非難するツイートを行うと、一部のアジアの国からは中国を故意に挑発して、危険なまでに緊張を高めることになるのではないかとの憶測を呼んでいる。

ニクソン大統領の歴史的訪中(1972年)の際に通訳を務めた元米外交官のチャス・フリーマン氏によれば、中国当局者は現在、トランプ氏の大統領としての意図がどのようなものとなるのか静観しているのだという。

「彼ら(中国)はトランプ氏を侮辱したくもなければ、同氏と感情的に対立したくもないと考えている」と同氏は指摘。「トランプ氏に対し、『疑わしきは罰せず』というのが当初の反応だろう。同氏が自分のしていることの重大さを理解しておらず、周囲の人たちに操られている可能性もあると」と語った。


台湾の蔡英文総統との電話会談や、一連の中国批判のツイートなど、トランプ次期米大統領の対中戦術は、厳しい両国関係の訪れを予感させている。だがロイター・ブレーキングビューズのコラムニスト、ピート・スウィーニーは、これこそがまさにトランプ氏の戦略だと指摘する。
(David Brunnstrom記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
有難いことである、TPPを締結しなくとも、米国は中国を封じ込めることに傾いている。

次期米大統領のトランプ氏が就任時に離脱を正式表明しても、域内で米国に次ぐ経済力を持つ日本には、合意を現実の自由貿易に生かす方策を探り、その他11カ国の結束を主導する責務がある。もちろん米国の翻意を表面上促すべきだが、米国が加入しなくてもいいと内心思っている。

ならば日本は、米国抜きでTPPもしくはTPPに代わる新貿易ルールは新しい21世紀の大東亜共栄圏をアジア太平洋地域に構築できる絶好のチャンスと思う。

TPP参加国の首脳は米大統領選後に開いた先月の会合で、発効に向けた国内手続きを進めることを再確認した。日本が11カ国を取りまとめ、TPPを事実上日本主導に変えることができるかもしれない。
 
今後はTPPを米国抜きで発効させ、米国の参加を待つことについて、加盟国間で具体的な協議に入るべきだろう。もとより、TPPは米国が加わらないと発効できない規定になっているので、再交渉が求められる。

米国以外の11カ国は、米市場での利益に期待して合意した。その構図を崩し、「ガラス細工」と評される内容を修正するのが困難なのだが、日本は推進役として、TPPを換骨奪胎するチャンスでもある。TPP不人気の最大要因であるISDS条約項をどさくさまぎれに骨抜きにしたっていいだろう。

ISDS条約項を骨抜きにすればこれまでTPPに関心を寄せてきたインドネシア、タイ、台湾などにも参加を促すチャンスでもある。TPPの合意が遅れたのは米国の譲歩をしない強引な姿勢があまりにも酷かった為であり、米国を抜きにTPPを再交渉すれば、TPPをより納得できる相互主義的な自由貿易協定にブラッシュアップすることが可能であると思う。TPPは日本主導の海洋国家による自由貿易同盟に育てるべきだと思う。さすれば4年後米国は頭を下げて毒が抜かれたTPPに再加盟を考えるだろう。

2016/11/12(土) 午前 11:44