27日の日露首脳会談で、北方四島の共同経済活動に向けた官民の現地調査団派遣、元島民の墓参円滑化などで合意できたことに、日本側は「目指していた成果は刈り取れた」と安堵している。ただ、互いの主権が絡む本格的な交渉はこれから。露側が譲歩する可能性は低く、領土問題解決に向けての道のりは依然、厳しい。

 「日本にとっても、ロシアにとっても恩恵をもたらす歴史的な試みだ」

 安倍首相は会談後の共同記者発表でこう胸を張った。そして、隣に立つプーチン氏に熱い視線を送りながら「ウラジーミルと手を携えて、平和条約締結への道を2人で進んでいきたい」と訴えた。

 しかし、安倍首相が「平和条約」に4回言及したのに対し、プーチン氏は1回のみ。プーチン氏は露側に利益が大きい経済協力の合意内容を淡々と読み上げた末、ようやく触れた平和条約については「解決は日露両国の国民に受け入れられるものでなくてはならない」と原則論に終始した。

 日本側はもともと、プーチン氏が来年3月の大統領選を勝ち抜くまで領土交渉で大きな決断をするのは困難とみていることから、今回の反応はある程度折り込み済み。今後、実績を積み重ね、信頼強化を続けることで、プーチン氏の決断を促す長期戦略を描く。

 ただ、積み重ねる実績を得られるかも微妙だ。共同経済活動の協力の可能性を探る現地調査団派遣では、採用する事業が決まれば双方の法的立場を害さない「特別な制度」の議論が始まる。しかし、露側は「ロシアの法律に矛盾しないよう実現する」との姿勢を崩していない。

 初めて実現する航空機による墓参についても、プーチン氏は記者発表で「ロシアが直行の航空便を保障する」と明言したが、日本政府高官は記者団に「調整中だ」と説明するなど食い違いも見せている。航空機の利用が恒常的な措置なのか、一度限りかも詰め切れていない。

 一方、日露両政府は今回の首脳会談にあわせ、官民などによる医療やエネルギーなど28件の経済協力の具体化で合意した。安倍首相が領土交渉を動かすため、昨年5月に提案した8項目の経済協力プランに基づくものだが、ロシア側には交渉を長引かせつつ成果だけを得る「食い逃げ」の懸念がつきまとう。(モスクワ石鍋圭)


日露共同記者会見での安倍晋三首相とプーチン露大統領の発言要旨は次の通り。


 4年ぶりにモスクワを訪問することができ大変うれしく思う。温かく迎えていただいたプーチン大統領とロシア国民の皆さまに心から感謝を申し上げたい。

 山口・長門で大統領を迎えた昨年12月。北方四島の元島民の切実な思いを託した手紙を真剣なまなざしで読んでくれた。君の姿は私のまぶたにいまも焼き付いている。大統領は記者会見で「心を打たれた」と率直に語ってくれた。

 初めて、北方四島の元島民の方々に航空機を利用してお墓参りをしていただくことが決まった。6月中に国(くな)後(しり)島と択(えと)捉(ろふ)島のお墓にお参りしていただきたい。長い間、国後島の古釜布1カ所に限られていた出入域手続きの場所を今後増やす。本年は歯(はぼ)舞(まい)群島の付近に設置することで合意した。

 北方四島における共同経済活動についても話し合った。エコツーリズムなど北方四島ならではの観光を盛んにする。その最初の一歩として5月中にも官民による現地調査団を派遣することで合意した。これは歴史的な試みだ。新しいアプローチを通じ両国民間の信頼を増進させ、ウラジーミルと私の間で平和条約を締結したい。私が昨年、ソチで提案した8項目の協力プランも着実に前進している。

 首脳会談では北朝鮮について時間を割いて話した。ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、6カ国協議の重要なパートナーだ。引き続き緊密に協力し、北朝鮮に対し安保理決議を完全に順守し、さらなる挑発行為を自制するよう働きかけていくことで一致した。シリア情勢、テロとの戦いをはじめ、世界が直面する課題はロシアの建設的な役割なくして解決できない。国際社会で日本とロシアがいかに協力を進めていくべきか、真剣にそして率直に議論した。

 ウラジーミルとは7月の20カ国・地域(G20)首脳会議の際に会うことで合意。9月のウラジオストクでの東方経済フォーラムでの再会も楽しみにしている。


安倍晋三首相との協議は建設的な雰囲気で行われ、ロシアと日本の双方から、互恵的で多面的な協力をさらに発展させるとの意気込みが示された。日本はロシアの重要かつ有望なパートナーだ。

 わが国には、相互尊重と同権、互いの利益を考慮するという原則に基づき、2国間の最も複雑な問題も解決する用意がある。

 両国の接触が活発化していることに、首相ともども満足している。経済協力の面でも、状況が正常化しているのは喜ばしいことだ。政府間委員会で合意された優先プロジェクトは、工業と農業、保健、インフラ、イノベーション、小ビジネス、人文交流の分野で80にのぼる。

 首相とは、サハリンと北海道を結ぶガスパイプラインや、ロシアから日本への海底電力ケーブルの敷設計画、再生可能エネルギーといった分野での協力について話した。これらの有望なプロジェクトが実現すれば、日本は最短ルートによる手頃な価格で、エネルギー資源をまかなえるようになるだろう。

 原子力分野では、福島第1原子力発電所の汚染土壌浄化や放射性廃棄物の処理について、最先端の技術供与を提案している。

 当然、平和条約問題についても話した。その解決策は、両国の戦略的利益にかない、国民に受け入れられなくてはならない。この文脈で、南クリール諸島(北方領土のロシア側呼称)での共同経済活動について作業を継続し、近く優先プロジェクトのリストを作ることで合意した。

 協力の具体的な可能性を研究するため、今年夏には日本の関係者による南クリール諸島への渡航が行われる。ロシアはまた、日本の元島民に墓参を行ってもらう目的で、直行の航空便を提供する。これは人道問題であり、首相と一度ならず話してきた。

 私たちの意見では、朝鮮半島情勢は深刻に後退している。全ての関係国に対し、好戦的なレトリックを控え、建設的な対話を目指すよう呼びかける。6カ国協議の早期再開は、共通の課題だと考えている。(モスクワ 遠藤良介)
今朝ほど再び北朝鮮はスカッド系列の新型対艦弾道ミサイル「KN17」を発射し、最大高度は71キロで数分飛行した後に空中爆発し北朝鮮国内に落下した。

まあ、あいかわらずのチキンゲームで本当に瀬戸際のキワキワでを探るゲームだ。
朝鮮情勢が緊迫化するなか日露首脳会談が行われた。

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結局何にも決まらなかった・・・だが1mm程度は進んだか?いやそのように見えた錯覚程度かもしれない。

ロシアは領土問題を棚上げにして日露経済協議、協力を始めさせたいが、日本は領土問題解決なしに経済協力など受け入れるわけがない。

日ソの56年宣言(北方4島のうち2島返還)をどうするのだか・・・
ロシアはまったく返還する気がないのだが・・・日本から経済協力を引き出したい。
日本は4島返還しなければ日露平和条約は結ばない・・・・
結局ここから1mmも動かない。

双方が譲歩する話が出ては消え、2島返還で水面下で動いても、リークされ大騒ぎになり立ち消えになっている。日本も2島返還妥協なのか絶対4島返還なのかまったく方針が定まっていないのも大きな問題であることも事実だ。

安倍・プーチン関係がこれほどまでに濃厚となっても返還される目途は立っていない、このまま本当に還ってこない。

いま、北朝鮮を巡って米中関係がどうなるか非常に微妙な感じである。
北朝鮮を巡ってもし米中がG2で妥協して、オバマ政権以上にトランプが中国に骨抜きにされた場合、日露はお互いに妥協する必要が出てくるだろう。

北方4島を日露共同管理とする方法が理想だが日本は中国を封じ込める為に、戦略的に二島返還で折れ、長期的に四島に伏せんを残す形で妥協するべきなのかもしれない。残念ながら・・・・。

安倍首相ではもう日露問題解決は限界かも知れない、いっそ鈴木宗男と佐藤優に全権を持たせロシアと交渉させたほうがいいかもしれません。