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【英国】
イギリスはヴァンガードvanguard型SSBN 4隻、アスチュートAstute型SSN 3 隻、トラファルガーTrafa1garSSN 4隻の合計11隻の原子力潜水艦を保有している。

イギリスにとって最大の課題は、海上核抑止力の維持であり、潜水艦技術の維持である。特に潜水艦建造能力の劣化が激しい。

 イギリスはヴァンガードで常続的抑止哨戒を維持しているが、その後継艦建造である新型潜水艦ドーレットノート型があまりに巨額となるため、予算の承認が一時危ぶまれた。

この費用見積りは2006年時点で200億ポンド(28600億円)であったが、2010年には260億ポンド(3兆7000億円)となった。2015年にはこれがさらに310億ポンド(4兆4300億円)に増加するとともに予備費100億ポンド(1兆4300億円)が加わり、合計410億ポンド(5兆え600億円)となった。これに反対する組織は、維持費等を含めた合計費用が2,050億ポンド(29兆3000億円)に達すると批判している。後継艦建造の可否は最終的に議会投票にかけられ、2016年7月建造ようやく建造が認められた。
※1ポンド143.7円

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だが、問題はそれだけではなく、基地の問題が重なる。ブリクジット問題が英国を悩ませているが、英国がEUから離脱した場合、スコットランドの独立問題が再燃する。いや再燃しはじめている。スコットランドが独立した場合、スコットランドのファスレーンにある英国海軍クライド海軍基地を他に移動しなければならない。ところが、代替基地と考えられるデヴォンポート海軍基地は基地の5キロ以内の人口が16.6万人もあり、事故発生時の危険性が国防省の基準を超え困難が予想される。 

2014年のスコットランド独立に関する住民投票は切り抜けたが、イギリスのEU離脱がこの問題に再度火を付けかねず、これは将来的な課題になるだろう。

また、イギリス潜水艦技術の劣化は、アスチュートにおけるロールス・ロイス製原子炉の問題、BAEシステムズが監督した作業や装置の品質への懸念、浸水事故等というかたちで表面化し、アスチュートの完成が4年遅れた。

これは潜水艦建造間隔が長いことが原因という見方もある。なお、アスチュートでは設計した最高速力が出せなかった。これは東芝の再建問題に似ている。東芝の再建問題のもとを糺せば、米国の原子炉メーカーであったウェスチングハウ社を買収した為に降って湧いた災難なのである。米国がスリーマイル島事故の後、新しい原子力発電所が建設されなかった為に、買収したウェスチングハウ社が建設しようとした原子力発電所が建設できないでいる為に損失が膨らんでいる為である。

日本の航空産業のようにブランクが空いたり、ノウハウが一度失われると容易に技術を復興することは難しい。ゼロ戦や二式大艇を生んだ、日本の航空機産業も終戦から7年間の空白は70年経った今も埋められたか難しいところである。英国の造船、特に最も高度な潜水艦を英国が今後建造し続けられるか、人財や技術の継承など今後難しくなり始めてきている。ヴァンガード型後継のドーレットノート新SSBNが予定通り建造できるのか不安が残る。

原子力弾道ミサイル潜水艦ドーレットノート型

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●ヴァンガード後継 ドーレットノート型

 現在4隻就役しているヴァンガードVanguard型SSBNの代艦として、ヴァンガード後継型Vanguard Successor Classの建造計画が進められている。議会の文章ではDreadnought submarine programme:とされているが、世界の艦船などは未だにヴァンガード後継型としています。

1993年から1999年にかけて就役したヴァンガード級(トライデントD5 SLBMを16基搭載)は、25年の耐用年数を想定しているので、2018~2024年にその代替更新期を迎える。

イギリスは核抑止力2本柱のひとつ、空軍の戦略爆撃機を1998年に廃棄、2006年にヴァンガード型の退役後も潜水感による核抑止力を維持すると発表、2010年にもこの決定が再確認されたことで、ヴァンガード型の後継艦ドーレットノート型の設計が2012年にBAEシステムズ社に発注された。

ドーレットノート型新SSBNは、新型原子炉PWR 3を搭載するが、搭載するSLBMトライデントD5は16基から12基に減少する。建造計画も3隻~5隻説と決まってはいない。現時点での水中排水量は17,000トン程度といわれ、1番艦の就役は2028年を予定しているから,ヴァンガード型の艦齢延長も必要となる。ただしイギリスの昨今の財政事情や,来年にはスコットランド独立の再投票も控えていることから、計画が予定どおり進められるのか、先行きはかなり不透明だ。

ちなみに、近未来2050年の近未来のコンセプト可潜戦闘艦(The Dreadnought 2050 concept)とは名前こそ同じだが、異なる艦であると思う。

 2050年の弩級戦艦 Dreadnought 2050 2015/9/30(水) 午後 11:59

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原子力弾道ミサイル潜水艦ヴァンガード型 
Vanguard class nuclear-powered submarine

これほど個性的なフォルムの潜水艦は他に無い。レゾリューション型原子力潜水艦の後継艦で、現在全部で4隻が就役しており、常時1隻が任務についている。

要目
水中排水量 15,980 トン
全長 149.9 m 全幅 12.8 m 吃水 12 m
主機関 ロールス・ロイスPWR2型原子炉×1基/蒸気タービン×2基
推進器 ポンプジェット 1軸 出力 27,500馬力
速力 水中:25 ノット (46 km/h) 
潜行深度 600m
乗員 135名(士官14名 兵員121名)
兵装 533mm魚雷発射管 4門(スピアフィッシュ魚雷)
潜水艦発射弾道ミサイル(トライデントD5) 16基
レーダー タイプ1007 レーダー
ソナー タイプ2054 複合ソナー


原子力攻撃潜水艦 トラファルガー型(Trafalgar class submarine

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設計はスウィフトシュア型原子力潜水艦を元に、吸音タイルの利用やポンプジェット推進(タービュレント以降)の導入といった幾つかの改良が施されている。
就役は1983年から1991年にかけて7隻建造されたが、3隻が退役済で4隻が就役中である。4隻とも改装されトマホーク巡航ミサイルを発射可能である。
本艦型最後の1隻は2024年まで運用される予定である。

要目
排水量 水中:5,200t、水上:4,800 t
全長 85.4m  全幅 9.8m
機関 ロールス・ロイスPWR1型加圧水型原子炉×1基/蒸気タービン×2基/ポンプジェット推進 15,000馬力 
最大速力 水上20kt、水中29kt 潜行深度 600m
乗員 130名
探索装置 タイプ2020、2019、2007、2026 ソナー タイプ1007 レーダー
攻撃/索敵潜望鏡
兵装 533mm魚雷発射管×5 トマホーク対地巡航ミサイル ハープーン対艦ミサイル スピアフィッシュ及びタイガーフィッシュ及び機雷



原子力潜水艦アスチュート型(Astute class submarine)


最盛期には18隻を数えたイギリス海軍の攻撃原潜も現在はトラファルガーTrafalgar型4隻と、新型アスチュートAStute型3隻の計7隻である。

アスチュート級は2010年に1番艦が就役し、トラファルガー型と同数の7隻が計画されている(7番艦の就役は2024年の予定)。

建造計画は1994年から始まり、当初はトラファルガー型第2バッチと呼ばれ,兵装搭載量の5割以上増と静粛化の向上が求められた。艦の各システムは自動化を進めた結果、トラファルガー型の130名から98名へ大幅に減少した。

 潜舵は戦略原潜のように艦首船体に配され、セイルのマスト類は非貫通型である。 1番艦は2001年に起工されたが、進水は2007年,就役は2010年と建造期間は長い。現在3番艦まで就役しており、3隻が建造中、1隻は計画段階で、7番艦は2024年就役の予定。

要目
水中排水量7、519トン、全長97メートル、幅11.3メートル、主銭。兵装は533ミリ魚雷発射管(魚雷、トマホークSLCM合計38本)。
排水量 水中:7,800t 全長 97m 全幅 10.7m  
機関 ロールス・ロイスPWR2原子炉×1基/蒸気タービン2基1軸、出力27、500馬力最大速力 水中 29kt 潜行深度 300m以上
乗員 98名
探索装置 タイプ2076 統合ソナー タイプ1007 レーダー
兵装 533mm魚雷発射管×6 トマホーク対地巡航ミサイル ハープーン対艦ミサイル スピアフィッシュ 機雷(ミサイルと魚雷の合計数は38基)



【フランス】
フランスと言えば、昨年オーストラリアの次期潜水艦入札で日本のそうりゅう型と競い、オール日本を蹴落とし見事に落札したことが印象的である。12隻という大型入札に何としても勝ちたかったのは日本ではなく、国策として潜水艦を輸出したかったフランスだったのである。


フランスはイギリスと違い自国用の原子力潜水艦のと輸出用の在来型潜水艦も建造しており、自国の需要だけでは潜水艦の建造技術を維持しきれない分、潜水艦の輸出を国策として力を入れている。フランスの海軍艦艇を建造する造船企業であるDCNSの株式の過半数はフランス政府が保有している。

原潜建造を目指すブラジルでスコルペヌ改造型を建造する事業は、DCNSの業務にブランクが空かないように政府が獲得したものであるという。 DCNSはこうした環境の下で、従来ドイツ製の209型を保有していたブラジル、チリ、インド、並びに初め
て潜水艦を取得するマレーシアにスコルペヌ型潜水艦を売り込むことに成功している。

原子力弾道ミサイル潜水艦ル・トリオンファン型( Le Triomphant class submarine)

フランス海軍第2世代の戦略原潜で、1997~2010年に同型6隻が計画されたが2隻が中止となり4隻が就役した。
1~3番艦までは新造時、射程6,000kmのM45 SLBMを搭載していたが、4番艦はより長射程(9,000km)のM51.1を備えて就役しており、1番艦3番艦もこれに換装済みである。さらに新型核弾頭を有するM51.2の搭載計画も進みつつある。



要目
水上排水量 12,640t 水中排水量 14,565t 
全長 138m 全幅 12.5m 吃水 12.5m
機関 加圧水型原子炉×1基/原子力ターボ・エレクトリック方式 ポンプジェット 1軸41,500馬力(予備)発電用ディーゼルエンジン2基 1,500kW
速力 水中:25ノット
船体構造 単殻式 乗員 111人
武装 533mm魚雷発射管 4門 L5魚雷 エグゾセSSM
M45(M51(2010年以降)潜水艦発射弾道ミサイル 16基
レーダー 航海レーダー ソナー DSUV 61B 曳航パッシブソナー
DMUX 80 艦首パッシブソナー DUUX 5 舷側ソナー
その他 攻撃/探索潜望鏡

原子力攻撃潜水艦 リュビ型(Rubis class submarine)

リュビ型はフランス海軍最初の攻撃型原子力潜水艦である。
1983年~1993年にかけ6隻が就役。
排水量は水中2,670tと、攻撃型原子力潜水艦で最小である。元の船体は通常型潜水艦のアゴスタ級のそれを流用し、さらにソナーや兵装管制システムについてもほぼ同じである。

フランス海軍の原子力潜水艦の推進方式は原子力タービン・エレクトリック推進で、静粛化の面では有利だが、システムの複雑化、信頼性の低下、重量の増大などの問題がある。イメージ 16
要目
排水量 水上:2,385t 水中(原型/アメティスト改正後):2,670t/2640t
全長 72.1m/73.6m 全幅 7.6m 吃水 6.4m
原子力タービン・エレクトリック方式 - K48型加圧水型原子炉(48MW)×1基
ターボ交流発電機×2基 9,500shp
最大速力 水中25kt(46km/h) 航続距離 (平均/最大):45日/60日
運用深度 300~500m
乗員 65名(士官8名、下士官兵57名)
兵装 533mm(21inch)魚雷発射管×4基 - 魚雷(L5、F17)およびSM39エグゾセ対艦ミサイル×14、または機雷
探索装置 DMUX20(複合ソナー)DSUV62C(曳航ソナー・アレイ)DRUA33(水上探索レーダー)電子機材 TITAC(戦闘情報システム)SEAO/OPSMER(指揮支援)Minicin(統合航海)Syracuse2(衛星通信)ARUR13(ESM)

原子力攻撃潜水艦シュフラン型(Suffren class submarine)

フランス海軍第2世代の攻撃原潜で、1~4番艦が建造中、5~6番艦も計画中である。1998年に計画され2010年より建造が始まり、当初2015年には就役する予定だったが、予算上の問題もあり就役は2018~2029年の予定。
排水量は水中排水量5,300t、全長99.5mで過小過ぎたリュビ型の約2倍大型化した。その為国産のMdCN巡航ミサイルの運用能力も付与される。
要目
排水量 水上:4,765t 水中:5,300t 全長 99 m 全幅 8.8 m 吃水 7.3 m
機関 原子炉ターボ・エレクトリック方式ポンプジェット推進
最大速力 水上14kt 水中25 kt (46 km/h) 潜航深度300m以上
乗員 60名
兵装 SCALP エグゾセ F21ブラックシャーク魚雷24本                533ミリ魚雷発射管4門。



【ドイツ】

ドイツといえばUボート、潜水艦の宗主国である・・・であった。冷戦終結後の軍縮のため自国用の潜水艦が6隻になったものの、燃料電池潜水艦で世界をリードするなど技術力は高い。

212A型潜水艦(U-Boote der Klasse 212)
世界初の実用燃料電池AIP潜水艦、ドイツで6隻イタリアで4隻が2005年~2017年5月に就役したばかりである。
要目
排水量 1,450トン 水中排水量 1,830トン
全長 57 m 全幅 7m 吃水 6m
機関方式 ディーゼル・エレクトリック方式
主機関 電動機: シーメンス Permasyn×1基 (1,700kW)
推進器 ハイスキュー・プロペラ 1軸 電力 ディーゼルエンジン:MTU 16V 396×1 (3.12MW)AIP: HDW PEM燃料電池U31: 30-40kW×9基U32以降: 120kW×2基
最大速力 水上: 12ノット 水中: 22ノット
航続距離 水上: 8,000 海里 (15,000 km)/8ノット時
水中: 420 海里 (780 km)/8ノット時
乗員 27名
兵装 533mm魚雷発射管×6:(魚雷×12または機雷×24)

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サルヴァトーレ・トーダロ(Salvatore Todaro, S 526) 

イスラエル用のドルフィンDolphin型、シンガポールの218SG型、北欧諸国に向けた新型艦等のビジネスもあり、輸出市場で大きなシェアを持っている。いや、持っていたと過去形になる恐れがある。 

ドイツ潜水艦は、不幸にも、韓国に輸出するのではなく、ご丁寧にライセンス生産を許したが為に、例の「K国の法則」が発動してしまったのだ!

K国の法則」は、社会科学だとか、儒教の弊害とか歴史や地政学等の学問で論ずる域を超え、もはやオカルトの領域かもしれない(笑)

Kは勿論コリアのKで、K半島(国、組織、土地、人)と関われば関わるほど運勢が悪くなる、 とんでもなく不運になると言う悪の法則が発動しています。

ベストセラー209型に代わる高性能艦214型が韓国に輸出した途端に、ドイツ潜水艦輸出に暗雲が漂い出した。

 214型はドイツ海軍向けの212型をやや大型化したうえで非磁性鋼などの機微技術(武器、あるいは、民生品であっても大量破壊兵器などに転用できる物に関する技術)を除外した輸出仕様で、214型は212型の発展系ではなく、ベストセラーの輸出用潜水艦209型で開いたマーケットを維持するよう、カタログスペックを見栄え良く無理やり近代化し、大型化した為、問題が多発した。ギリシャ向け1番艦は、キールのHDWで建造され、たが、この1番艦の試験では水漏れなどの深刻な問題が発生しており、ギリシャ側が引き受けを拒否する事態となった

韓国での「孫元一」型の惨状は有名で、韓国も韓国で契約を破りブラックボックスを開けたり、未熟な冶金技術もあって、全艦稼働していない!潜水艦と言うより浸水艦である。
イメージ 24 韓国では対北朝鮮をにらみ潜水艦の建造に力を入れているが、実はその「技術」「人員」の両面で“お寒い事情”にあることが韓国メディアの報道で分かってきた。これまで4艦が完成したが、いずれも製造不良などで出撃できないなど問題が発生。しかも政府はそんな状況にあっても新たな大型潜水艦の建造を始めた。一方、本来ならエリートであるはずの潜水艦乗組員への志願も、劣悪な職場環境を嫌って減っているという。欠陥だらけの上、乗り手もいない潜水艦隊の前途は多難だ。(岡田敏彦)

潜水できない潜水艦

 韓国の潜水艦は、ドイツの独HDW社が設計した「214級」(約1800トン)をライセンス生産という形で建造、運用している。18年までに計9隻を建造する計画で、1番艦の「孫元一」は2006年に進水し、現在4番艦まで完成している。しかし厳密に言えば、一隻も“完成していない”ともいえる状態だ。

 韓国では新型艦の完成や運用開始などことあるごとにその優秀性をアピールし、マスコミと一体となって北朝鮮へのプロパガンダよろしく勇ましい活躍ぶりを宣伝するのが通例だ。しかし1番艦の孫元一は進水後、動静が聞かれなくなり、表舞台から消えてしまった。

 潜水艦といえば「海の忍者」、孫元一も秘密の任務を遂行中-と見る向きもあったが、実はこっそり工場に逆戻りしていた。

 朝鮮日報(電子版)など現地マスコミによると、試験的に運用したところ、スクリュー軸からHDW社の設計値を上回る騒音が発生した。敵艦からすれば、スクリューや動力の音は重要な探知材料となり、潜水艦にとっては致命的。このため推進軸を交換するという大がかりな修理を行った。それでも騒音は収まらず、実戦運用どころか近海を試験走行するだけだった。

 11年4月、再び修理に入ったものの解決方法が見つからず、結局20カ月以上もの間、工場内で放置されていたことが明らかになった。

 この間、2番艦の「鄭地」が07年6月、3番艦の「安重根」が08年6月に進水。1番艦の問題を解決しないまま量産するという常識外の行為がとられたが、その代償は大きかった。

3隻とも「運行停止」

 10年春ごろ、新鋭潜水艦3隻全てが運行停止になっていたことを朝鮮日報(電子版)など現地マスコミが明らかにした。問題となったのは艦橋と甲板を接続するボルトだ。

 1番艦は、航海中にボルトが緩む事故が06から09年までの間に6回発生。さらにボルトが折れたり緩んだりする事故が2年間に2番艦で6回、3番艦で3回発生。原因は当初、韓国製のボルトの強度不足とされたが、ボルトを本家ドイツのHDW社の規格に沿う物と交換しても「自然に緩む」という不可解な状況が解決できなかった。

 結局、韓国の技術者では問題を解決できず、ドイツHDW社の技術者が韓国へ出向いて調査。その結果、欠陥はボルトだけでなく、接続部本体の強度も不足していたことが判明。半年以上かけて金属板で周囲の補強を行い、ようやく解決したという。

 潜水艦の製造には特殊な超高張力鋼板を用いるが、この鋼板は加工が難しく、特に溶接の際に発生する熱の影響や残留応力で生じる問題の解決には綿密なノウハウが必要。設計図があれば作れるといった単純なものではなかったのだ。

 ともあれ、HDW社の出張サービスでなんとか修理を完了した3隻だが、本当のトラブルは深く静かに“潜行”していた。

わずか数日で「窒息」…欠陥はノンストップ


 「孫元一級潜水艦は、浮上することなく数週間の作戦行動が可能」-。海軍のこんな主張が真っ赤な嘘だったことが昨年10月、明らかになった。韓国SBSテレビなどによると、原因は動力を供給する燃料電池の不良にあった。

 潜水艦が最も脆弱(ぜいじゃく)なのは浮上した時。原子力潜水艦は浮上の必要がないが、ディーゼルなど通常動力の潜水艦は酸素を取り込むため、シュノーケル(空気取り入れ筒)を水面上に出せる浅深度まで浮上する必要がある。

 しかし近年は、こうした大気に依存せず、長期の潜行を可能にする非大気依存推進(AIP)という技術が主流だ。中でも燃料電池を用いたAIPは水素と酸素から電気を生み出すもので、民間でもクリーンエネルギーとして注目されている。

 韓国の潜水艦もAIPを採用した。しかし連続潜行期間は、軍が主張する「数週間」をはるかに下回る「数日」だった。燃料電池が欠陥品だったのが原因だ。しかも3隻の燃料電池は軍に納入前から93回も故障し、納入後も102回停止していたことが国政監査で明らかになった。

 これを受け、納入を担当する防衛事業庁は「24時間の試運転を行った上で海軍に納入する」と宣言。昨年11月末、4番艦「金佐鎮」の引き渡し前テストで実施した。しかし、こうした形式的な対応には批判もあり、韓国のネットユーザーからは「数週間潜れるといいながら、テストがたった24時間とはどういうことか」との声が上がった。

 ところが政府は、トラブルが続出し解決策が示されず、しかも批判が起きている中で、さらに大型の潜水艦建造計画に着手した。

大型艦建造でトラブルも2倍?

 新型潜水艦は3500トン級で、水中から巡行ミサイルが発射できる仕様。北朝鮮が弾道弾発射可能な新型の潜水艦の配備を始めた-との情報から対抗措置としたもので、今月に鉄板の切り始めを実施した。しかし1800トン級の孫元一も満足に建艦できないのに、2倍の大きさの艦ではトラブルも2倍になりかねない。国民からはそんな危惧も出ている。

 一方、海軍は2月1日付で潜水艦司令部を創設することを決定した。ところが潜水艦を巡っては別の問題も存在する。海軍軍人が潜水艦に乗りたがらないのだ。

 冷戦時代、レーダーとミサイルが万能とされたころは、空軍戦力に比べ海軍は軽視された。特に水上艦は「池のアヒル」と揶揄(やゆ)され、イージス艦が登場するまで水上艦艇は肩身が狭かった。しかし一方で、レーダーで探知されない潜水艦の価値は向上。いまも潜水艦乗りは海軍のエリートなのだが、マイナス面もある。

トドメは「乗り手いない」

 潜水艦は一般的に艦内が狭く、真水の使用も制限され、水上艦のように風呂があるわけでもない。空気を出せば泡で居所がばれるため、換気も論外。脱臭装置はあるものの、トイレの臭いや生活臭はつきものだ。

 各国海軍軍人は潜水艦の任務の重要性をよく承知し、さらにエリートと認知されているため、潜水艦乗組員への志願も十分あるが、韓国では任務を嫌う軍人が多い。

 韓国の電子メディア「ネイバーニュース」は、海軍の「潜水艦副士官の志願状況」という資料をもとに志願率の低下を解説。副士官の潜水艦勤務志願率は07年には67%だったが、13年には36・9%という深刻な水準まで落ちたと報じた。しかも現状の勤務者のうち2~3割は劣悪な環境に耐えきれず、転出を希望しているという。

 現場のベテランになるべき副士官が定着しないのでは、練度の向上は至難の業だ。乗り手がいない上、トラブル満載の潜水艦。韓国の実情は深刻だ。(2015年1月27日掲載)
「K国の法則」は、韓国潜水艦に留まらず、ドイツ潜水艦マーケットに害を及ぼし始めた。

214型をポルトガルに2隻契約したが、ほぼ発注すると見られていたパキスタンが中国の潜水艦にひっくり返されてしまった。

ティッセンクルップ・マリン・システムズの子会社HDWスウェーデンのコックムス社を傘下に収めていたものの、2014年7月半ば強制的にサーブ社に売却させられ、同国のA26型潜水艦建造事業も失った。

さらに、インドもフランスに取られ、注目のオーストラリア次世代潜水艦ではフランスDCNSに敗れるなど、その後新たな大型契約が纏まっていない。恐るべし 「K国の法則」!