南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に参加していた陸上自衛隊が、2016年7月11〜12日に作った日報をめぐり、稲田朋美防衛相が虚偽答弁をしたのではないか、と共同通信などが報じている。
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時事通信

共同通信によると、 稲田防衛相は2017年2月、当初は「廃棄済み」とされていた日報が陸上自衛隊内で見つかったことについて、「事実を公表する必要はない」とする決定を了承した。

「複数の政府関係者」をソースにしたこの記事によると、2月15日、防衛省で「緊急会議」が開かれた。こうした面々が集っていたという。

稲田氏や事務方トップの黒江哲郎事務次官、豊田硬官房長、岡部俊哉陸上幕僚長、湯浅悟郎陸幕副長らが出席。情報公開請求に「廃棄済み」とした日報が陸自に電子データで残されていたことについて、事実関係を公表するか対応を協議した。

非公表の理由として、「陸自のデータは隊員個人が収集したもので公文書に当たらない」ことがあげられ、稲田防衛相は異議を唱えずにこの方針を了承したという。

共同通信はこの問題点について、こう言及している。

国会でも虚偽の説明をしたことになり、防衛相辞任を求める声が強まり、安倍晋三首相も任命責任を問われるのは確実だ。

同様の問題は朝日新聞も7月19日付の朝刊で報じている。稲田防衛相はこの日の午前、「隠蔽(を了承したとか、非公表を了承したとかいう事実は全くありません」と否定。また、菅義偉官房長官も会見で「大臣は明確にないと私にも電話で報告している」としている。

そもそもこの日報は、南スーダン現地の細かな状況が記録されているものだ。

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防衛省                                                                                                  陸自は2011年から17年5月まで、南スーダンのPKOに参加し、道路などの整備に当たっていた。
駐留するジュバでは2016年7月、数日間で300人以上の死者を出す大規模な「戦闘」が発生。その駐留を不安視する声が相次いだ。

日本政府は「戦闘ではなく大規模な武力衝突」との見解を貫いてきたため、これが「戦闘」か「武力衝突」かについて、国会で大きな議論となった。

「戦闘」とするならば、安全保障法制に基づいた「駆けつけ警護」などの新任務を付与された陸自部隊のPKO派遣そのものが揺らぐおそれがあるからだ。

一方、話題になった日報には「戦闘」という言葉が多用されている。たとえば、「UN施設近辺で偶発的に戦闘が生起する可能性があり、流れ弾には注意が必要である」(7月12日)というような形に。

この「戦闘」という言葉が多用されている日報。もともと防衛省は「廃棄した」と説明していた。
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AFP / 時事通信
                                                   そもそもこの日報を2016年9月に情報開示請求したのは、ジャーナリストの布施祐仁さんだ。請求は12月、「廃棄した」との理由で不開示となっていた。

その後、12月末になって、自民党行政改革推進本部(本部長・河野太郎衆院議員)の要請を受けた防衛省が再調査し、統合幕僚部に電子データが残っていることが判明。2月になって報道各社などに公開された。

ただ、問題はこれで終わらなかった。2017年3月には、陸自内にもデータが残っていたことが発覚。「今更陸自にあったとは言えない」と、データの削除指示まで出されていたことがNHKの報道で明るみになった。

つまり、自衛隊内で組織的な隠蔽があった、ということになる。

こうした対応について、稲田防衛相は3月16日の国会では、民進党の今井雅人議員に一連の隠蔽について問われ、「報告されなかった」と答弁している。
2月に会議があったとすれば、この点が「虚偽答弁」になるということだ。


稲田氏はこの問題を調査するため、防衛相直轄の「防衛監察本部」による特別防衛監察を指示している。その理由については、こう答弁している。

「特別防衛監察の中で徹底的に事実関係を調査させた上で、しっかりと、文書管理のあり方、また、防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任でしっかりと改善していきたいと考えております」

共同通信は、2月15日の緊急会議の2日前にも、「陸上自衛隊側から、電子データが保管されていた事実などについて報告を受けていた」とも報じている

2度も報告を受けていたという報道どおりだとすれば、稲田防衛相は「隠蔽を自ら了承していた」という状況において、「特別防衛観察」を指示したということになる。

こうした稲田防衛相の対応について、日報の情報開示請求をした布施さんは、BuzzFeed Newsの取材に「いわば大臣が隠蔽にお墨付きを与えた形。文民統制という自衛隊の運用からも大きな問題がある」と批判する。
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時事通信                                            
「結局2月15日の時点で報告されていたということが事実であれば、5ヶ月間、国民を欺き続けていたということになる。知った時点で大臣として公表するべきだった」

また、布施さんは安倍晋三首相の責任にも言及する。

「稲田大臣をかばう姿勢に終始していた安倍首相の責任が問われる事案でもあると思います」

実際、安倍首相は3月17日の国会でこう答弁している

「もとより閣僚の任命責任は総理大臣たる私にあります。その上で、稲田大臣には、徹底的な調査を行い、改めるべき点があれば大臣の責任において徹底的に改善し、再発防止策を、再発防止を図ることにより、その責任を果たしてもらいたいと考えております」

布施さんは言う。

「自衛隊の最高指揮官も、新任務付与の政治判断をしたのも、安倍首相です。本来であれば、首相が防衛省内部だけではない、第三者を入れた徹底的な調査を指示すべきだったのではないでしょうか」

「そうしなかったためにこの問題が、ここまで放置されてしまった」

菅官房長官は7月19日午前の記者会見で、稲田防衛相の更迭、辞任について問われ、こう答えている。

「仮定のことについて答えるのは控えたい」

BuzzFeed Newsでは、黒塗り日報の全文をこちらで公開しています。日報PDF

南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊の日報問題で、稲田朋美防衛相が組織的隠蔽を了承していたか否かをめぐり、報道が混乱している。背景には、日報問題に関する特別防衛監察の報告書が近く公表されるが、稲田氏らの責任を回避した内容に、防衛省・自衛隊の一部が不満を持ち、リークが続いている可能性が指摘される。これは、陸上自衛隊側の反旗・反乱なのか。安倍晋三内閣を揺さぶる、稲田氏の指揮管理能力の欠如。識者の中には「稲田氏は自ら責任を取るべきだ」との声もある。


 20日の在京朝刊各紙は、日報問題をめぐり、方向性が分かれた。

 産経新聞は「非公表 次官ら主導か」「稲田氏 隠蔽了承を否定」「求心力失いスケープゴートに」との見出しで、防衛省の岡部俊哉陸上幕僚長が2月15日、黒江哲郎事務次官と面会し、陸上自衛隊内で「廃棄済み」としていた日報の電子データが発見された事実を伝えた-と報じた。

 そのうえで、「非公表方針は黒江氏ら防衛省上層部が主導して決めた可能性が出てきた」「(報道の背景は)稲田氏や黒江氏に不満を持つ陸自幹部が情報源ではないか」と伝えた。稲田氏の隠蔽了承を否定する見方だ。

 非公表が「次官の意向」という点では、毎日新聞や東京新聞も同様だが、「稲田氏は了承した」と記している。

 一方、朝日新聞は「稲田氏に日報の存在報告」とのタイトルで、2月中旬に日報問題の対応を協議した防衛省内の幹部会議の数日前にも、陸自側から稲田氏に電子データの存在が報告されていた可能性があると報じた。

 読売新聞も「(稲田氏が)2月15日に防衛省内で開かれた会議で、日報のデータが陸自内で保管されているとの報告を受けていたことが、政府関係者への取材でわかった」としている。

どうして、報道が混乱し、情報が漏れるのか。

 旧防衛庁・航空自衛隊OBである評論家の潮匡人氏は「防衛省による特別防衛監察の報告書は事実上完成している。公表直前というのがポイントだ」といい、続けた。

 「報告書は『稲田氏の関与や了承はなかった』という結論になっているようだ。一方、日報の隠蔽に関わったとして、統合幕僚監部や陸上幕僚監部、中央即応集団などの幹部がズラリと並ぶとされる。『トカゲの尻尾切りではおかしい』との思いが、現場からの声として挙がったのではないか」

 確かに、特別防衛監察の対象は「防衛省の職員」とされ、稲田氏ら政務三役は含まれていない。

 「身内」の調査では真相に行き着かないとの見方も防衛省内ではくすぶり続けていた。

 稲田氏は19日、隠蔽了承報道を否定している。

 菅義偉官房長官も20日午前の記者会見で「大臣(=稲田氏)は昨日、非公表や隠蔽を了承したことはない(と説明した)。2月15日に対応を決める緊急会議を開催した事実はなく、その2日前に説明があったこともない」「(稲田氏の政治責任は)まず防衛監察本部ができるだけ早く徹底した調査を行い、その結果を報告することが大事だ」と述べた。

 現場の感覚はどうなのか。

 防衛省関係者は「(2月15日の会議は)議事録が残らない秘密会合だった可能性が高い。役人感覚として、これだけ重要な問題を大臣(稲田氏)に報告しないはずがない。複数の幹部が証言している通り、最高幹部だけを集めた会議は確実に行っている。隠蔽問題で、背広、制服組だけが悪者にされ、本来、政治的責任を問われなければならない稲田氏が無罪放免となることへの反発は間違いなくあった」と語った。

自衛隊の元幹部も「自衛隊は一度決められたことには、必ず従う。日報は作らないといけないものだし、秘密にすべき内容は含まれていなかった。確かに『戦闘』という言葉を使っていたため、公表をためらった側面はあっただろう。ただ、この日報の扱いについて、統合幕僚監部や内局が勝手に取り決めることはないはずだ」と話した。

 仮に、防衛省・自衛隊の最高幹部による緊急会議が事実で、稲田氏に報告され、了承していたことが事実ならば、稲田氏は「国会=国民」に対して虚偽答弁したことになる。

 自衛隊は、2011年の東日本大震災や昨年の熊本地震などで、体と命を張った活動を展開して、国民の幅広い支持を得た。北朝鮮をはじめ、東アジア情勢が緊迫するなか、国民の生命と安全を守るために、自衛隊には高い士気が求められる。

 そんなときに、防衛省・自衛隊内で混乱していていいのか。

 自民党内や防衛関係者の中にも、「稲田氏は、特別防衛監察の報告書公開後、混乱の責任を取って自ら防衛相を辞任すべきだ」との声がある。

 前出の潮氏は「稲田氏の現場を軽んじるような服装や言動などに、自衛隊内には閉塞(へいそく)感、不満がたまっていた。こうしたなか、一方的に悪者にされてしまった防衛省・自衛隊幹部の同期生、あるいは部下などが悩み尽くして『内部告発』したのだろう。組織の士気を低下させ、混乱を招いた稲田氏の責任は重い」と語っている。
加計学園騒動で、全面敗北した、反安倍、反日護憲勢力、官僚&一部自民党内反安倍派は、加計学園騒動を有耶無耶にするために、南スーダンの日報問題を出してきた。これは左翼マスコミの加計学園問題の事実上の敗北宣言に等しい。

しかしながら、内閣改造も近いこの時期に、この問題が蒸し返されるのか、少々納得ができない。この問題は自衛隊が南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された際に、日報を紛失したかどうかが焦点になっている。

2011年7月に独立した南スーダンは2013年末以降、内戦状態になった。

陸上自衛隊は2011年から南スーダンのPKOに参加してきた。現地では、道路などの整備に当たってきた。

陸自が駐留したジュバでは2016年7月、数日間で300人以上の死者を出す大規模な「戦闘」が発生していた。ジュバでは2016年7月、政府軍と反政府勢力による大規模な戦闘が起きて、治安情勢が悪化。現地の部隊が作成した日報には「戦闘への巻き込まれに注意が必要」といった記載があり、停戦合意などPKO参加5原則との整合性が問われた。

2016年9月にジャーナリストの布施祐仁さんが防衛省に情報開示請求したところ、「廃棄した」との理由で12月に不開示となっていたという。

その後、自民党行政改革推進本部(本部長・河野太郎衆院議員)の要請を受けた防衛省が再調査し、統合幕僚部に電子データが残っていることがわかった。2017年2月公開された日報は、その当時、陸自が置かれていた状況を如実に記している。

稲田朋美防衛相は日報の存在を知り、報告を受けていながら、国会で知らないと虚偽答弁をした疑いがもたれている。

私は、残念ながら、虚偽答弁をせざるを得なくなってしまったと思っている。

BuzzFeed Newsの公開した日報PDFには武装グループが襲撃してきた事や、敵と銃撃戦になった事が黒塗りされている。情勢5/6にはジュバ市内の戦闘と書かれ、流れ弾に注意は黒塗りされていない。

p43ジュバ市内の衝突事案についての項には、自衛隊宿営地のすぐそばにに砲弾が落下したり、銃弾が飛んできた事などは判明している。

しかし、実際に公開された資料から、宿営地が敵軍に包囲され戦闘状態になったのか、断定することは出来ないと私は思います。

駆けつけ警護の部隊であるにもかかわらず、十分な武器や弾薬も装備せず、PKO活動を続けさせたのでは、あまりに自衛隊員が気の毒でなりません。これではまるで、大東亜戦争の際、南洋の孤島に補給もなく、撤退もさせないという旧帝国陸軍の玉砕戦法と同じ轍を踏んでしまっているようにも見えます。

ジュバの陸自PKO部隊には装甲車両と言えば、小銃に耐えられるライトアーマーだけで、武器は軽機関銃数丁と自動小銃しか保有していません。一方反政府軍はロケット弾や破壊力の大きい兵器を持っていて、攻撃力では自衛隊など歯が立たない可能性が有った。もし戦闘状態になっていたのなら、よくぞ守りきった!現場にいた自衛隊員は皆、英雄ではないか!

南スーダンのような危険地帯にPKO部隊を派遣するなら、105mm砲を装備した16式機動戦闘車や、96式装輪装甲車を持たせるべきであった。

安倍首相は南スーダンで自衛隊員に犠牲が出たら辞任すると発言し、一応は責任を取る気概を見せましたが、気概などよりも、十分な装備が必要であって、装備を送れないのであれば、撤退はやむを得ない決断であると思います。

2017年5月27日に全隊員が無事帰国、日報そのものの全文は非公開なので推測するしかないが、結果として、戦闘が発生したか否かを公表せず、自衛隊に日報を破棄した事にしたことは、大失点であることに間違いない。自衛隊初の地上戦が行われたならば、首相や防衛大臣が知らない方がより問題が大きい。

戦闘行為が在ったなら、戦闘に巻き込まれたと、偽りなく報告すれば良い事で、あとの責任は首相や防衛大臣が取るから、任務を全うしてほしいというのが筋である。

防衛省からすれば、日報を破棄したのは防衛省の責任にされ、「戦闘」までしたのに恩賞も論功行賞もないのでは、武士も忠義が尽くすことができなくて当然である。

軍隊を派遣した以上、敵が襲ってきたら戦うのは当然の権利だ。問題点は、戦争を放棄した憲法9条と、国際社会の責務である平和維持活動が、矛盾しているのであるから、現憲法下では、起るべきして起きた事態である。

非武装で戦闘地域に派遣しておいて、敵に襲われたことを隠し、日報を破棄させて処分したのなら、誰かが責任を取らねばならない。安倍首相にも責任はあったが、ここは稲田防衛大臣の引責辞任が妥当であろう。

熟女という言葉ばこれほど当てはまる「稲田朋美」女史に防衛大臣の職責は重すぎた。いかに優秀な弁護士であっても、外見からは武将に必要な胆力を有しているようには見えない。ある意味で、稲田女史を防衛大臣に任命した安倍首相にも任命責任があったことは残念ながら否定できないだろう。ちなみに、防衛大臣が小池百合子であれば、堂々と公表していたかもしれない。

一方的に稲田大臣が虚偽報告をしたことが悪いと断罪するのは、あまりにも身勝手であり、憲法や、自衛隊の活動を日頃非難し、制限を加えるようなことをしてきた、野党や、反日護憲勢力、大手メディアに正義面をして断罪する権利があると私は思えない。

稲田大臣は、潔く引責辞任をすることはやむを得ないかもしれないが・・・・
8月3日の内閣改造の間、小野寺五典氏が代行し、8月3日の改造後二回目の防衛大臣を務めていただければ宜しいかと思います。

 「日報」問題で防衛省が揺れている。「疑惑ぬぐえず」「文民統制は機能しているのか」「隠蔽体質」「陸自の反乱」等々、メディアは相変わらずセンセーショナルに書きたてる。

 「森友」問題や「加計」問題と共通しているのは、最も重要な本質的議論が抜け落ち、枝葉末節が肥大化していることである。加えて「日報」についての誤認識が重なり、騒動が拡大しているようだ。

 ことの発端は、南スーダンの国連平和維持活動(UNMISS)に派遣された陸上自衛隊が日々活動報告を司令官に上げる「日報」の文言である。

 自衛隊の国連平和維持活動への参加については、紛争当事者間で停戦合意なされていることが大前提である。陸自が派遣されていた南スーダンについては、近年、政府軍と反政府勢力の衝突が相次ぎ、停戦合意はすでに崩れているのではないかとの指摘があった。

本質的議論が抜け落ちた国会論争

 稲田朋美防衛大臣は、派遣継続の正当性を主張するため、日報にある「戦闘」の文言は避け、「武力衝突」と言い換えて国会で答弁した。

 この日報が情報開示請求されたが、防衛省は既に廃棄されたとして開示しなかった。その後、他の部署に残っていたことが判明したが、「今更あったとは言えない」として公開しないことにしたという。

 この時点で、稲田防衛大臣はその報告を受けていたのではないか。もしそうであれば、「(あったことを)報告を受けていない」との国会答弁は虚偽となる。大臣を含んだ組織的な隠蔽ではないかというのがこれまでの騒動の顛末である。

 そこには、南スーダンから撤収に至った状況判断、あるいは今後の国連平和維持活動に対する日本の姿勢は、PKO5原則はこのままでいいのか、といった本質的な議論は全くない。

 国連平和維持活動は「停戦監視、兵力の引き離し」といった伝統的な「第1世代の平和維持活動」から、現在は内戦型紛争に対する「第2世代の平和維持活動」に移行している。

 破綻国家(failed states)、あるいは民族差別、宗教対立、そして貧困などが原因となる虐殺、民族浄化が多発しており、人権侵害防止のため、難民支援、武装解除、社会復帰といった支援活動のみならず、住民保護や文民保護のため、武器の使用を含めた積極的関与が基本的方向性となりつつある。

 スポイラー(和平の妨害者)に対しては、中立性は不要というのが今の国連の方針であり、力の行使のための交戦規定(ROE)の明確化や国連部隊の自衛力の向上が求められている。

 このほか、紛争再発防止のための信頼できる抑止力提供など平和協力活動はリアリズムが導入された「第3世代の平和維持活動」に移行しつつある。

 このように平和協力活動自体が大きく変容しつつある今日、日本だけが、「武力衝突」か「戦闘」かといった「言葉遊び」をしなければならないような「PKO参加5原則」にしがみついて今後の国際平和協力活動に参加できるのか、できないとしたら日本は今後「第3世代の平和協力活動」には一切参加しないのか、あるいは「5原則」は変えてでも参加するのか、といった核心的な議論はスッポリ抜け落ち、日報の「隠蔽」有無といった極めて矮小化された議論に終始している。

「日報」とはどういうものか

 そもそも「日報」についての誤認識が今回の騒動に拍車をかけている面は否めない。

 筆者はイラク派遣航空部隊指揮官を2年8か月務め、日報を受ける立場にあった。もう8年以上も前のことになるので、当時とは違うかもしれない。また今回、防衛省で何が起こったのか知る立場にないので、現実とは齟齬しているかもしれない。こういう前提であえて述べる。

 日報の目的は2つある。1つは指揮官の指揮を適切にすることであり、もう1つは教訓を読み取り、今後の参考にするためである。

 このため、日報には日々の運用(作戦)に関すること、つまり天候や情勢、そして隊員の状況(特に健康状況)、任務実施内容(成果)、運用に影響を与える問題点などが報告される。

 指揮官は日報から現場状況を掌握し、指揮官として処置すべき事項、次なる運用などの構想を練る。そして権限を超えることについては上級指揮官たる統合幕僚長に報告し指示を待つ。

 当然、指揮官として処置すべき事項、次なる運用のための指示などは、司令部組織を挙げて検討することになる。そのため、幕僚は日報の内容を情報として共有しておかねばならない。

 通常、幕僚は自分のパソコンなどにデータとして保管し、いつでも見られるようにしている。個々の幕僚がパソコンに保有する日報は、この時点で個人の幕僚データとなり、公文書ではなくなる。

 現場から送られてくる文書自体は公文書であり、文書管理規則に従って保存期間が決められており、その期間が来れば廃棄される。だが、幕僚が自分のパソコンに保有するデータは公文書でも何でもなく、個人の資料に過ぎない。

 従って、公文書たる日報は、今回のように規則に従って廃棄されたとしても、個人のパソコンには同じ文書が残っている可能性は十分に考えられる。

 情報公開が請求できる文書は公文書である。個人のパソコンにある資料は、ただの私的資料であり、その対象とはなり得ない。まさにどういう資料を持っているかどうかは幕僚個人の勝手であり、まさにプライバシーそのものである。

重要な資料として個人所有される

 今回、廃棄したとされる日報が残っていたというのは、幕僚が自分のパソコンに個人の資料として持っていたものではないのかと推察する。

 (知り得る立場にないので細部は分からない)もしそうであれば、それは「隠蔽」でも何でもない。「隠蔽疑惑」は防衛省の説明不足によって生じた誤解に過ぎない可能性が高い。

 日報のもう1つの目的は教訓の取りまとめである。活動終了後、直ちに教訓が取りまとめられ、次なる活動の参考にされる。実戦における「戦闘詳報」と同じであり、次の作戦を立案する時に欠かせない重要な資料である。

 このため研究本部や幹部学校など教訓を取りまとめる部署にも日報は当然共有される。これをデータとして共有し、加工蓄積したものを分析することによって教訓を引き出す作業をするわけだ。

 公文書としての日報は廃棄されたとしても、幕僚の個人資料と同様、研究本部や幹部学校など教訓を引き出す部署にはデータとしての日報が残っていることは十分にあり得る。

 公文書は、廃棄されるとしても、教訓を生み出すためのデータや資料は、次なる活動の参考にするために廃棄することは普通あり得ない。だからといって、「残っていたのに隠蔽した」とはならない。残っているデータや資料は既に公文書としての日報ではないからだ。もちろん情報請求の対象とはならない。

 今回の騒動の結果、懸念されることがある。

 今後は個人のパソコンまで管理や規制が及ぶようになる可能性があることだ。そうなれば、大変な業務の障害になるであろうことは容易に想像できる。羹に懲りて膾を吹き将来に禍根を残さぬようにしてもらいたい。

 その他、今回の騒動で注意しなければならないことに、「言葉狩り」の前例を作らぬようにすることがある。

日報を書く自衛隊員を"縛る"べきではない

 日報を実際に書く担当者は通常、現場の2佐や3佐である。彼らには必ずしも政治状況が完璧に把握できているとは限らない。「戦闘」と書けばPKO5原則に抵触するから、「武力衝突」と書くべきだなどということに考えが及ばないのが普通だ。

 現場の忙しい中で、いちいち六法全書を片手に、政治を忖度しながら日報を書くようなことを現場に要求してはならない。

 そこまで現場に求めると、現場部隊は委縮し、事なかれ主義に走り、微妙な事象については報告を上げて来なくなる可能性がある。そうなれば指揮官に実情が伝わらなくなり、指揮官の指揮を誤らせることにもなりかねない。最もあってはならないことだ。

 日報は指揮官にとって極めて重要な情報源である。現場の担当者が軽易にありのまま、分かりやすく書けるようにしてやらなければならない。それから実情を読み取るのは指揮官の力量である。日報は政治の論争に使うべきものではないし、現場部隊を政争の具にしてはならないのだ。

 今回の騒動を見ていると、「加計問題」と同じような気がする。

 もともと問題がないところにメディアが無理やり騒ぎを起こし、本質的議論を避け枝葉末節の空騒ぎに終始する点だ。

 それに防衛省の説明不足が手伝って、「隠蔽」「陸自の独走」といったマスコミ受けするステレオタイプな虚像が自己増殖してしまった。これが今回の空騒ぎの現実なのではないだろうか。メディアも防衛省も冷静になって猛省すべきだろう。

執筆中