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【ワシントン=酒井恒平】防衛省は弾道ミサイルを大気圏外で迎撃するイージス艦搭載の迎撃ミサイルを陸上に配備する「イージス・アショア」導入を決めた。防衛省幹部が明らかにした。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威の高まりを受け防衛網づくりを加速する。2018年度予算の概算要求に設計費を盛り込む。宇宙ごみと人工衛星の衝突などを防ぐため、自衛隊に宇宙監視部隊を新設する。

 
防衛省幹部は相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえ「一刻も早く弾道ミサイル攻撃から全国を常時、継続的に防護する能力を抜本的に向上させる必要がある」と説明。イージス・アショアの導入方針を決定したと明言した。当初、18年度は調査費を計上する予定だったが、前倒しした。

イージス・アショアは1基あたり約800億円かかる。開発中のミサイル「SM3ブロック2A」を用いれば全国を2基でカバー可能だ。概算要求段階では米側との協議が間に合わず金額を示さない。18年度予算編成時の17年末に金額を決める。「SM3ブロック2A」は三菱重工業が開発に参画している。

北朝鮮は国際社会の警告を無視し弾道ミサイル発射を強行する。10日には米領グアム沖への弾道ミサイル発射を予告。兆候を察知しにくい移動式発射台による攻撃や、複数のミサイルを同時発射する「飽和攻撃」を繰り返す。日本にとり迎撃の難易度が上がった。

現在のミサイル防衛網は二段構えだ。まずイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃。撃ち損ねると地上から地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で撃ち落とす。イージス・アショアはイージス艦のSM3を陸上に配備する形式で、防衛網の厚みが増す。

防衛省はミサイル防衛の新装備として、イージス・アショアや地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の検討を進めてきた。現在の防衛大綱や中期防衛力整備計画(中期防)にイージス・アショア導入は明記されていない。防衛省幹部は「年末までに今回の導入方針を整理する」と話した。THAADも引き続き検討課題とする。

イージス艦に関しては、ミサイル防衛に対応するのは現在4隻で2隻が改修中だ。防衛省は18年3月までに1隻の改修を終える予定だったが、今年12月に前倒しする。

宇宙空間を巡っては、開発進展で人工衛星を破壊しかねない宇宙ごみや国籍不明の不審衛星の存在が問題となっている。防衛省は宇宙監視レーダーの開発に18年度から着手する。18年度は設計費用を計上し設置場所も決める。

宇宙関連部隊は1954年に発足した自衛隊にとって初めてで、航空自衛隊に置く。収集した情報は米軍、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共有する。安全保障上、宇宙空間の重要性は増しており日米連携を進める。

中国やロシアが開発に力を入れる最新鋭ステルス機に対応した次世代レーダー開発にも着手し、18年度に約196億円の開発費を求める。電波情報の収集能力を高め、固定式ではなく運搬可能とする。24年度からの運用を目指す。

こうした方針を日本側は17日の日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で米側に伝える見通しだ。日米防衛態勢の強化に向けた具体策に位置付ける。

▼防衛省の来年度予算の概算要求ポイント
○陸上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」導入決定。設計費を計上
○航空自衛隊に宇宙監視部隊を創設。監視レーダーの設計費用を計上
○最新鋭ステルス機に対応した次世代レーダーの開発着手。約196億円を計上

緊張高まる朝鮮半島において、日本のBMD能力の充実は喫緊の課題である。
日本を狙うミサイルの多くは直近で発射実験が繰り返されている。

従来の北朝鮮のスカッドを改良したミサイルは液体燃料を注入する為、液体燃料を注入している段階で、その兆候を衛星から察知できるので、米軍による策源地攻撃が可能であると考えられてきた。

衛星や航空偵察で察知したら、航空機や巡航ミサイル等で攻撃して排除し、それでも排除できなかった射程1500km級のノドンミサイルが、1発2発、日本に向けて発射され、それを日本のイージス艦がSM-3で迎撃し、それで迎撃が充分に可能であると考えられてきた。

日米は北朝鮮のミサイル開発能力をけっして見くびっていたわけではないが、弾道弾を開発するより、それを迎撃するミサイルの方が、数百倍開発が困難であるから、ロシアや中国のミサイルはすべて撃墜することは不可能でも、北朝鮮のミサイルは迎撃可能ではないかと、最新技術と予算を投入しBMDを開発してきた。

ところが、世界最貧国であるにもかかわらず、北朝鮮は、ウクライナから 旧ソ連の液体燃料式エンジン「RD250」を不正に入手したことで、格段の進歩を遂げてしまった。
【ワシントン時事】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は14日、英国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家などの分析に基づき、北朝鮮が発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、非合法に入手した旧ソ連製エンジンの改良型を搭載していた可能性が高いと報じた。専門家らは、ウクライナ中部ドニプロ(旧ドニエプロペトロフスク)にある工場を流出元とみているという。

北朝鮮のミサイル技術が予想を上回るペースで向上した背景には、闇ルートを通じた国外からの高性能エンジン調達があったことになる。
IISSの専門家マイケル・エレマン氏は、発射画像の分析から、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「火星12」とICBM「火星14」は旧ソ連の液体燃料式エンジン「RD250」の改良型を搭載していたと指摘。過去2年以内にロシアを経由して鉄道で北朝鮮に持ち込まれた可能性が高いという。工場の運営企業やウクライナ当局は、同国から流出した可能性を否定している。(2017/08/15-06:51)
更に、固体ロケットエンジンの旧ソ連のSLBM SSN-6をソ連崩壊のどさくさで入手し、SLBMの開発と、その改良ミサイルを開発してしまった。

固体ロケットの場合、液体燃料と違い燃料注入する必要が無いので、巡航ミサイルや航空機による策源地攻撃が困難である。

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北朝鮮は「日本列島が焦土化されかねない」と朝鮮中央通信を通し恫喝し、あからさまに日本が標的であることを公言するようになった。まさに日本は危急存亡の危機を迎えている。

7月28日付の米国防情報局(DIA)の分析概要では「北朝鮮はICBM級を含む弾道ミサイルで運搬する核弾頭を生産した」と指摘し、「7月時点で核爆弾の数を最大60発と推定」している。

もはや北朝鮮は、ミサイル搭載可能な核弾頭を保有してしまっているのである。 
日本全土を覆域とする射程1500km級のノドンを200~360発、ムスダンを40~50発 スカッドを800発(内、西日本を射程に収める射程1000kmのスカッドERが100発程度)を保有していると推定される。

奇襲性が増し、射程も伸び、同時発射能力の向上、命中精度も格段に向上した北朝鮮の弾道弾ミサイルを迎撃することが、日々困難となってきている。

なかでも、当局が一番脅威に考えていることが、多数のミサイルを一斉に発射を行う、ミサイル飽和攻撃である。

日米海軍のイージス艦はイージス艦どうし、単なるデータリンク機能より一段高度なシステムである共同交戦能力(CEC)が付与されている。北朝鮮が、同時に複数発射した場合、一隻のイージス艦は2発程度しか対応できないのだが、共同交戦能力(CEC)によって、攻撃目標の重複を避け、複数の脅威に複数で対処することが可能であるが、ミサイル飽和攻撃にどれだけ対処できるかは、未知数である。

現在日本にはイージス艦を6隻(内BMD能力があるイージス艦が4隻、2隻がBMD搭載に改装中)保有し、2隻が建造中である。一方米海軍はイージス艦をBMD搭載艦が太平洋に16隻(横須賀母港イージス艦12隻中8隻)駐留している。

米国が北朝鮮を攻撃するのではないかと緊張した2017年4月にはBMD能力があるイージス艦が日米海軍合わせ20数隻が集結していた。その為、理論的には同時に50発程度の弾道弾を迎撃能力を持ってはいたが、もしそれ以上打たれれば、完全に迎撃することは不可能である。

2016(平成28)年2月の米国防省「朝鮮民主主義人民共和国の軍事及び安全保障の進展に関する報告」によれば、北朝鮮は、トクサ及びスカッド用のTELを合計して最大100両、ノドン用のTELを最大50両、IRBM(ムスダンを指すと考えられる)用のTELを最大50両保有しているとされる。

北朝鮮の同時ミサイル飽和攻撃に耐えるBMD体制を整える為には、一隻2000億円のイージス艦を建造するより、一基地800億円のイージスアショアを設置するほうが、圧倒的にコストパフォーマンスが高い。イージスアショアを日本の基幹防空システムである新自動警戒管制システム (JADGE: Japan Aerospace Defense Ground Environment)AWACS、開発中の日本独自の早期警戒機(ミサイル監視機)(日本版コブラボール)とリンクすることにより、まずはミサイル飽和攻撃にも耐えるBMD能力を構築すべきだと思う。

イージスアショアにはSM-3BLOCKⅡが配備されるが、1発20億円近くするSM-3BLOCKⅡであるが、大気圏外の宇宙空間で迎撃する方式であるから、日本目標のIRBM迎撃には能力を発揮すると思われる。

しかし、もし長射程のミサイルをロフテッド軌道で発射された場合は、最大射高1000kmを超え最大射高2450kmのSM-3BLOKⅡでも迎撃不能であり、ロフテッド軌道のミサイルを迎撃するには、THAADもしくはPAC3となるが、PAC-3は20-30Kmの射程しかなく気休め程度で、実質的にはTHAADしかロフテッド軌道で飛来するミサイルの迎撃はできない。

しかしながら、ロフテッド軌道で発射されるミサイルはまだ少数に留まっている為、日本がまず対応しなくてはいけない北朝鮮のミサイルで脅威で最大なものがノドンIRBMの飽和攻撃であると思う。日本が対応しなくてはならない、脅威の順番で行けば最優先課題となる。

ノドン級のIRBMを叩き落とす為、THAADよりイージスアショアが優先され配備が決まったのだと思う。THAADは必要なBMDのツールではあるが、イージスアショアよりコストがかかり、射程が200km級のレールガンと迎撃高度が重複するので、THAADに代わって、大急ぎレールガンを開発することも可能ではないかと思う。

もはやいかなる外交交渉、中国や米国と裏で何を取引したとしても、金正恩は核とミサイルは絶対放棄しないだろう。外圧で核を放棄したとあっては、独裁者としての権威は失墜する。

父、金正日は、「リビアのカダフィ、イラクのフセイン、両独裁者が米国に消されたのは核武装を放棄したからだ」と、遺訓を残した。金正恩は金王朝の存続の鍵は、核ミサイルであると父の遺訓を信じ、着実に開発を行い実用化してきている。

日本は今、北朝鮮が核ミサイル保有を前提とした弾道ミサイルの完全制圧および撃墜能力の構築を真剣に考えなければならない時に来ている。

策源地攻撃能力の取得など、憲法九条の改正を含め、日米安保におんぶにだっこの当事者意識の欠けた思考停止状態では、日本はかつてない悲劇を受ける可能性がある。

日本の核保有はすべきではないと私は信じているが、米国の「核の傘」に依存するだけでは、日本を守ることができなくなる可能性もある。これまで通り憲法九条に縛られたままで、核保有や核シェアリングの必要はないのかなど、真剣な核抑止論議が求められている。もはや森友や加計問題のような瑣末な議論をやっている場合ではない。

日本にとっては朝鮮半島の非核化は譲れない一線である。米中が裏で手をまわして決着するだろうなどという、空想的で希望的観測をしている場合ではない。

イージスアショアではロフテッド軌道のムスダンを撃ち落とすことができないので、大気圏内に突入した弾頭を撃ち落とすTHAADミサイルと、レールガンによる弾道弾撃墜能力の取得、1000mw級の高エネルギー固定レーザー照射器とPAC-3の併用などリアルで実質的な議論をする時ではないだろうか。





イージスアショア(Aegis Ashore)とは、文字通り陸に上がったイージスシステムである。イージスアショアのメリットは大きい。私が考えつくだけで7つはある。
①イージス艦を建造するよりも初期投資が圧倒的に少ない。
②貴重なイージス艦をミサイル防衛に専従させなくて済む。
③燃料費が不要、外部電力を利用できるなど、維持コストが少なくて済む
④ミサイル防衛に割く人員がイージス艦より比較的少なくて済む
⑤艦船と違いドック入りなどの長期使用不能な時期が無く、BMDに穴が開かない。
⑥イージス艦とSM-3ミサイルなどを共用するところが多く、総コストが下がる。
⑦既存の空自のレーダーサイトともリンクすることにより、より柔軟な対応ができる。



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