チャイナ崩壊論の崩壊の崩壊ナノダ!

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中国崩壊本の崩壊カウントダウン
The Not-Coming Collapse of China 
【Newsweek】2017年10月27日(金)17時30分
 出版 問題を抱えた中国経済は早晩破綻する――根拠なき崩壊論に訪れる曲がり角「反中本」はなぜ生まれ、どう消費されてきたか高口康太(ジャーナリスト)

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世界最大の人口を擁する中国の経済を予測することは専門家でも難しい(北京)Kim Kyung Hoon-REUTERS
一世を風扉した「中国崩壊本」が今、曲がり角を迎えている。

中国崩壊本とは「中国経済は数々の問題を抱えており、早晩破綻する」と主張する書籍や雑誌のことだ。いわゆる「反中本」の中でも、主に経済に論考が限定されている。アメリカにも存在するが、日本での出版数が圧倒的だ。

「世界第2位の経済大国を自称するが、統計はごまかしが横行している。実際のGDPははるかに少ない」「軍事費や治安維持費が右肩上がりに増えており、高成長を維持できなければ国家が破綻する」「中国の暴動・ストライキの数は年10万件超。成長率が下がれば国が持たない」「不動産バブルは既に限界」……といった個々の事象を基に、中国経済が立ちゆかなくなると結論付けるのが一般的だ。

05年の反日デモ、08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件、10年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件、12年の日本政府による尖閣国有化に伴う反日デモと、日中間で衝突が起きるたびに中国崩壊本は出版されてきた。

曲がり角を迎えている最大の理由は、10年以上前からオオカミ少年のように「間もなく崩壊する」と言い続けたのに中国経済が一向に崩壊しないからだ。「崩壊詐欺」とも批判を浴びている。

そして、本の売れ行き自体も低調になった。「あの手の本には一定の支持層がいるが、大きく売り上げを伸ばすためには中国との『事件』が必要」と、中国崩壊本を何冊も手掛けてきた日本人編集者は言う。「現在、日中関係は安定しているので、ある程度は売れるもののそれ以上の大きな伸びは見込めなくなった」    
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このような本が売れた背景には、日本社会の変化がある。00年代以降、排外主義的な傾向が強まり、「ネトウヨ」と呼ばれるネット右翼が台頭。ナショナリズムによりどころを求める風潮も広がった。

しかし中国崩壊本を買っていたのは彼らだけではない。ネトウヨ層の中核は実は40代とされるが、彼らは主にネツトを利用し紙媒体とは隔絶した空間に生きている。出版社によれば、崩壊本の主要読者層は60代前後。著名作家の本は確実に1万部は売れる。

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出版不況の中、一定数が売れるので書店も販売スベースを確保し、平積みして陳列する。日中間でトラブルや事件が起きたときに「中国のことを知りたい」と書店に訪れた一般読者が、大々的に並ぶ中国崩壊本を手に取る――というサイクルが成立してきた。

こういった本には制作コストの安さというメリットもある。多くの場合、経費をかけた現地取材をすることなく、中国国外で活動する反共産党の中国語メディアの記事をネタに複数の中国ウオッチャーが対談。それを書き起こした内容を編集して書籍化されている。

例えばよく使われる「中国の治安維持費は国防費をしのぎ、経済成長率を上回るペースで毎年増加している。治安維持費の増加に中国経済は耐えられない」というネタは、もともと香港紙が14年頃に取り上げ始めた。11年に中国政府の「公共安全支出」が国防費を上回ったことが、「治安維持費と国防費が逆転、外敵よりも人民を敵視する中国政府」という文脈で広まった。

しかし、公共安全支出は警察、武装警察、司法、密輸警察などの支出の合計。密輸監視を治安維持費と呼ぶべきかどうか疑問が残る。また警察関連が公共安全支出の約半分を占めているが、16年は4621億元(約7兆8600億円)と対GDP比で0.62%にすぎない。ちなみに日本の警察庁予算と都道府県警察予算の合計は3兆6214億円、対GDPで0.67%だ。

中国のGDPは公表値以上?

中国の経済統計が握造されているとの指摘も定番だ。ただ統計制度の未成熟ゆえ、逆にGDPを過小評価している可能性もある。公式統計に把握されない地下経済はどの国にもあるが、制度が未成熟な途上国ほど規模は大きくなる。中国の地下経済規模は先進国以上とみられ、これを加算したGDP規模は統計を大きく上回ゐかもしれない。

論理的に統計の矛盾を突き、崩壊論を導こうとする著者もいる。経済評論家の上念司は『習近平が隠す本当は世界3位の中国経済』(講談社)の中で、輸入量と実質経済成長率の相関が不自然な点から、中国の統計は提造であり、そのGDPは今でも日本以下だと主張する。これに対し、神戸大学経済学部の梶谷懐教授は「実質経済成長率を算出するためのデフレーター(物価指数)が不正確なことに起因している。ごまかしではない」と批判する。

崩壊本も代わり映えのしない内容の繰り返しではさすがに飽きられるように思えるが、それは大きな間違いだ。

嫌韓・反中のネット掲示板では、日々似たような情報が繰り返し論じられる。議論や新たな情報の収集が目的ではなく、ただひたすらに会話を途切れさせないこと、コミュニケーションを続けることが目的化している――と、社会学者の北川暁人は著書『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHK出版)で指摘する。中国崩壊本も同じことで、読者にとって新しい情報や議論はむしろ邪魔かもしれない。

出版不況で書籍も雑誌も発行部数は激減している。新書の場合、20年前は初版2万部が当たり前だったが、現在では1万部ならいいほうだ。売り上げが減れば制作費を削らざるを得ない。

中国崩壊本は、書き下ろしより短期間・低コストで作ることができる対談本が多数を占める。

一定数の売り上げが見込め、かつ制作コストも安い中国崩壊本は出版社にとってありかたい存在だ。「物書き」たちもひたすら高潔であろうとすれば、自著の出版は永遠にできない。

「少し過激なタイトルを付けることで、それなりにしっかりした内容の本が出せるのなら、必要悪だと割り切っている」と、前述の編集者は言う。「日本で海外事情を紹介する本は全く売れなくなった。海外関連の本を出さないと割り切る選択肢もある。ただ、日本人には海外に関する知識を身に付けることが必要ではないか」。「羊頭狗肉」ならぬ「狗頭羊肉」の戦略といえるかもしれない。

あと一歩で「反中本」作家に 中国崩壊本に優れた内容が隠れているケースもある。その好例が在米中国人ジャーナリスト陳破空の『赤い中国消滅~張子の虎の内幕~』(扶桑社)だろう。これぞ崩壊本というタイトルだが、同書の前半は著者が89年の民主化学生運動に参加し、弾圧されて亡命するまでの半生を描いた自伝。香港経由での国外逃亡ルートの実態をはじめ、亡命を勧めた公安当局者の話など知られていない内容が盛りだくさんだ。後半は現代中国の分析だが、「消滅」をあおるような記述はない。

ハイレベルで学術的な「中国崩壊」論争も存在する。

東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授と神戸大学の梶谷は共著『超人国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト』(東京大学出版会)の中で、元経済産業省官僚の津上俊哉が書いた『中国台頭の終焉』(日本経済新聞出版社)を批判した。

津上は中国経済の専門家で、安易な崩壊論に与する筆者ではない。丸川と梶谷も津上の分析力を認めつつ、「中国の潜在成長率の積算根拠」「投資過剰による成長行き詰まりがもたらすマイナス要素の大きさ」「人口予測の妥当性」といった、一般読者には理解が難しい専門的な部分に議論を集中して津上の「崩壊論」を批判した。

津上と梶谷はその後もブログで議論を続けたが、一連のやりとりで明らかになったのは中国経済予測の困難さだ。

知識が豊富な専門家でも、公式統計や報道が未成熟で、かつ急激に成長と変化を続ける中国経済の正確な予測は難しい。また、専門的な議論は一般読者にはとっつきにくい。

その隙間にうまく入り込んだのが、手軽に制作できて読みやすい崩壊本なのだろう。

私はこれまで中国崩壊本は書いたことがない。しかし、『共著本の題名を『なぜ中国人は愚民なのか』に変えられ、反中本作家の仲間入りする寸前の経験をしたことはある。

「中国を知りたい」という一般読者がこうした崩壊本を手に取れる状況が続けば、中国に対する正確な理解や分析はいつまでたっても日本社会
に広がらない。最近は崩壊本の売れ行きが低迷するなか、過大評価と過小評価のどちらにも振れない客観的な本が出版されるようになってきたが、まだその動ぎは心もとない。

中国本の売れ筋が変われば、日本の対中認識も変わる。正確な中国認識は日本の「国益」にほかならない。この転換が実現できるのか。書き手と出版社、そして読者も試されている。 ■
私が初めて中国バブルが崩壊すると確信したのは「やがて中国の崩壊がはじまる」ゴードン チャン/著(2001年)を読んでからであった。あれから16年、中国は崩壊せず今や日本を軍事的に圧迫するようになった。あれから16年やっとその”やがて”がやってきたと私は思っている。だが、中国の工作員若しくは、工作員から依頼を受けたライターが、必死に"中国崩壊論は嘘"、だと言う話を流布している。

論拠としているのは、10年以上前からオオカミ少年のように「間もなく崩壊する」と言い続けたのに中国経済が一向に崩壊していないことを挙げている。「崩壊詐欺」とも批判を浴びている。

中国崩壊論は単なる日本人の願望にすぎないのだろうか?確かに日本人は口には出さないが、心の奥底では、下品で粗野でパクリしか能がない現代中国人を軽蔑し明らかに下に見ている。

経済はバブルとバブル崩壊の繰り返しであると刷り込まれた日本人にとって、中国がバブル崩壊になるのは自然の摂理だと考えている。

ゴードンチャンのやがて中国の崩壊が始まるが出版された後、2003年10月ゴールドマンサックスがBRICsレポートを発表し、私も2003年末にバロンズの日本語訳で読んだ。

2039年までにBRICsのGDPの合計が、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアのGDP合計を上回り、さらに2050年には、GDPの順位が、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシア、イギリスの順になると予想したレポートだった。同時期の2004年頃のレポートで、チャイナコンセンサスというものがあると言う裏情報を書いたレポートも読んだ。2008年北京オリンピック~2010年の上海万博までは高度成長するので、中国に投資すべきだが、2012年の胡錦濤政権が終わるころには、中国バブルが弾けるというものだった。

現実にはBRIC'sを煽ったゴールドマンサックスは2012年頃からBRIC's投資を大幅に減らした。X-Dayはいつかは解らないが、中国工作員以外の経済学の素養を少しは持つものであれば、中国経済がやがて行き詰まるのは誰の目にも明らかだ。

このNewsweekのライター高口康太氏は根拠なき中国崩壊論だと批判するが、全く批判になっていない。そもそも中国の経済統計が全く当てにならないことはこの高口氏も認めているが、だからといって、地下経済を含めると中国のGDPが公表数字より高くなると言う下りは噴飯ものである。

世界中の国の統計から売春や麻薬取引等の地下経済の数値は除外されており、中国のGDPが正しい数値であれば公表数字以上になるのは当たり前である。それがなるかもしれないと書くこと自体中国のGDPの数値がインチキだと認めているようなもので、インチキな数字を批判する中国崩壊論に対する反論になっていない。

中国崩壊論側は中国の軍事費と対国内治安維持費用が経済成長を上回る勢いで伸びているから、やがてソ連のように破綻すると言っているのに、「中国の治安維持、公安関係費用が日本の警察費用対GDP比率0.6%台で同じである」では、反論になっていない。

ソ連崩壊はいい加減な統計に基ずく経済運営と自己増殖していった軍事費が増大していったから、崩壊した。今の中国はある意味で崩壊前のソ連以上に軍事大国化している。維持費用に天文学的な費用の掛かる金蛾掛かる空母を建造し、信じがたいペースで軍艦を建造し、開発に莫大な費用が掛かる戦闘機開発を同時に何機種も行っている。

いくら日欧米から技術をハッキングし、外華内貧とはいえ戦闘機や爆撃機を開発し配備すると、国家財政が破綻することは火を見るより明らかだ。軍事費は再投資されないただひたすら国家財政に負担が掛かる勘定である。普通に考えたならば、崩壊論サイドと高口氏どちらが正しいかなど議論の余地すら無い。

高口氏が主張するように、最近中国崩壊本が粗製濫造されすぎ、書いてあることはほぼ同じで、もうごちそうさまであることは間違いない。加えて、崩壊していないではないかといったことから、中国崩壊本の売れ行きに陰りがでたのも事実だろう。

だが、中国が崩壊していないから中国崩壊は間違っていると主張することは、東海地震が来ないからと言って、東海地震は来ないと言っているようなものである。

「中国崩壊論」を煽りすぎるのが問題であるのも確かで、中国が崩壊といっても、14億人が地球上から一瞬にして消えてなくなるわけではなく、中国人と名乗る14億人は存在し続ける。

「中国崩壊論」でも、
①例えば黄巾党の乱のように過去の歴史に倣い反乱軍が蜂起して、崩壊するような、「条件付き崩壊論」。 
②中国の崩壊は始まっており、表に現れてはいないが、表面化して完全崩壊までに何年もかかる、「崩壊水面下進行論」。
③実質はすでに崩壊しているにもかかわらず表面上虚偽を重ね崩壊していないように取り繕っている「偽装論」
④既に崩壊は始まり、ある部分崩壊しており、崩壊を取り繕っていて、最後に地方の軍閥が反旗を翻し最後は中国が分裂するだろうという「複合論」
大別すると、大きく4つに分類される。

確かに崩壊論は代わり映えのしない内容の繰り返しだと批判されているが、説得力があるデータを提示している。中国には数多くの欠点弱点短所があり、中国はいつ崩壊してもおかしくないと結論つけている。実際、不安定であることに間違いはないし、中国の矛盾が限界点に達し、超えることを崩壊と定義するならば、中国経済崩壊は嘘と断定することはできないと思う。

では、なぜ未だ崩壊しないか?

THE PUZZLE OF THE CCP'S LONGEVITY                                                                  共産党支配が崩壊しない理由

 中国 【Newsweek 2017.10.24】
何度も終焉を予測されながら一党支配が続いているのは体制崩壊の「必要条件・十分条件」がそろわないから共産党は周到な対策を重ねるが永続を信じるのは危険だ
ミンシン・ペイ(クレアモント・マッヶンナ大学ヤング国際戦略研究所所長)

中国では10月18日に共産党の第19回党大会が始まり、習近平国家王席を筆頭とする党最高指導部の新たな顔触れが決まる。それにしても、なぜ中国の一党支配体制は――多くの有識者の予想に反して――向に崩壊しないのだろう。

実を言うと、共産党支配の終焉という予言は過去に3度、集中的に現れている。

最初は89年6月の天安門事件の後。あれだけ多くの民衆の血が流れた以上、もはや共産党政権は「天命」を失い、遠からず自滅する。多くの人がそう考えた。
第2波は、91年にソ連が崩壊した時だ。楽観的な人たちは小躍りして、次は中国共産党の番だと信じた。

第3波は00年代の前半。当時は中国の銀行が大量の不良債権を抱えていたから、このままだと中国経済は崩壊し、共産党の一党独裁も持続不能になると考えられた。

しかし、周知のように、いずれも見当違いだった。

なぜ予測は外れたのか。さまざまな理由が考えられる。まず第1波と第2波の予一言については、今にして思えばタイミングが悪かった。直後に鄧小平が、予想外の大胆な経済改革を打ち出したからだ。

党存続の危機を感じ取った鄧は、国民の支持を取り戻す唯一の方法は経済的な繁栄だと信じていた。天安門事件で瀕死の状態に陥り、ソ連の崩壊という追い打ちに遭った中国共産党は、わらにもすがる思いで鄧の下に結集し、経済の改革・開放を加速し、その後20年に及ぶ急成長をもたらした。

金融システムのメルトダウンが体制崩壊につながるという予測も、タイミングが最悪だった。そうした予言を記した書籍や新聞記事のインクが乾かないうちに、中国はWTO(世界貿易機関)加盟を果たし(01年12月)、輸出を急激に増やし、気が付けば中国は世界的な経済大国となっていた。

一連の予測が外れた原因は、タイミングのまずさだけではない。政治体制の崩壊は、それが民主的なものであれ独裁的なものであれ、もともと起こる確率が極めて低いのだ。

英ケンブリッジ大学の調査によれば、政治体制が崩壊する確率は平均して2・2%前後。つまり、誰かが体制崩壊を予測しても、100回中98回までは外れるということだ。

独裁体制が民衆蜂起によって崩壊する確率も同様に低い。別な調査によれば、1950~2012年の間に権力の座を追われた独裁者は473人いるが、そのうち民衆の反乱によって追放されたのはわずか33人(7%)だ。

体制崩壊の事例を精査してみると、独裁体制の終焉には必要条件と十分条件の両方がそろわなければならない。
必要条件は、比較的に分かりやすい。

インフレ率や失業率の上昇、経済成長率の低下などだ。経済的な恩恵がなければ民衆は独裁体制を支持せず、反乱が起きやすくなる。支配層のエリートによる腐敗や権力乱用も、同様に民衆蜂起のリスクを高める。                                  

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体制崩壊の引き金は予測不能

まずは社会的な緊張が高まり、そこにラジカルな反体制の政治勢力が出現すること。一般論として、これが革命の必要条件だろう。また軍事政権などの強権的な支配層が無能で非効率的な統治を続けていれば、そうした体制を支えてきた産業界のエリートから見放され、結果として体制崩壊を招く可能性が高まる。

しかし、こうした必要条件だけでは体制崩壊の「引き金」にならない。無能な独裁政権が上述のような弱みや失敗の兆候を見せながらも権力の座を維持している例はたくさんある。

つまり、体制崩壊には必要条件に加えて、いくつかの十分条件がそろわねばならない。ところがこちらは概して偶発的な事象であり、予測不能。

筆者が70年代以降の体制崩壊の歴史を通覧した限りでは、一般に独裁政権崩壊の直接的な引き金となる事象には4つのタイプがある。選挙での不正、軍事的な敗北、近隣国での独裁体制崩壊、そしてアラブの春のような偶発的暴動の民衆蜂起への拡大だ。ちなみに、97~98年のインドネシアの例を除けば、経済危機が体制崩壊の引き金となったことは一度もない。この点は留意しておくべきだろう。

次に、これら4つの引き金を中国に当てはめてみよう。まず、選挙をめぐる混乱はあり得ない。まともな選挙制度は中国に存在しないからだ。軍事的敗北も、中国がアメリカと戦うことを選択しない限り考えにくい。

隣国の体制崩壊という点では、ソ連崩壊の際は危なかったが、鄧小平の経済改革のおかげで乗り切れた。そして偶発的な暴動が起きても、たいていは反乱にまで拡大せずに収束している。

暴動の拡大には社会の幅広い層の支持が必要だし、その後に首都で大規模な抗議行動を組織できるような政治勢力を必要とするからだ。仮にそうした大衆運動が組織できたとしても、政権崩壊には直結しない。政権の崩壊にはエリート層、とりわけトップレベルの軍人や政治家の離反が必要だ。

天安門事件で崩壊寸前の危機を経験した中国共産党は貴重な教訓を学び、革命が起きにくくするための緻密な防御システムを構築している。大学や工場、研究機関、都市や農村に張り巡らせた共産党の情報提供網は、どんなに小さな問題の兆しも見逃さない。国民を監視し、大衆の蜂起を素早く鎮圧するための巨大な治安部隊の構築にも莫大な資金を注ぎ込んでいる。

最新テクノロジーの助けを借りて、共産党は情報の流れを厳しく統制している。そのため大規模な反体制運動を組織することは不可能に近い。

そして、中国共産党が天安門事件後も権力を維持できたのは、国民の広い支持を得るために政策を変化させる見事な能力を見せたからでもある。

なかでも最も重要なのは、経済発展に対するすさまじい集中力だ。共産党は、経済的繁栄のみが政治的正当性を生み出せることを熟知している。

国民の支持を得るもう1つの強力なツールはナショナリズムの醸成だ。中国人は一党独裁政権を好まないかもしれないが、欧米諸国には中国を封じ込めようとする陰謀があるという宣伝工作を徹底すれば、。多くの国民が愛国主義の旗の下に結集する。

こうして共産党政権に耐久力がある理由を並べ立てると、中国には政変など起き得ないという印象を与えるかもしれない。だが崩壊の予測と同様に、政権存続の予測も当てにならない。

たとえ政権存続の予測の的中率が平均98%あるとしても、突然、予想外に政権崩壊は起こり得る。そうでなければソ連は今も存在していただろうし、あまたの独裁者も政権を追われずに済んだはずだ。


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                                                                                                           それでも消えない崩壊リスク

中国共産党の将来にっいての予測に歴史的経験を適用するならば、確実に言えることは、共産党が重大な課題に直面する可能性は高いということだ。今でこそ政権崩壊の確率は小さくても、急に確率が高まる可能性はある。

人間は変化が徐々に起こると信じて、直線的に未来を見ようとする傾向がある。さらに、願望が将来予測に影響を与える。

社会経済的変化の大半は直線的に起きるかもしれないが、政権崩壊は直線的ではない。崩壊のリスクは長期間低水準にとどまっていても、突如として急上昇する。中国の場合、中所得国であることから、今後20年の間に崩壊のリスクが高まると予想される。

独裁政権の崩壊に関する研究で分かった2つの発見が中国に適用できる。

第1に、前述のケンブリッジ大学の研究によれば、独裁体制下で民主化につながる政変が起きるリスクは、中国のように中所得国の地位を達成すると3倍近く高くなる。近代化された社会には、政治体制を自力で変える能力が生まれてくるからだ。

第2に、石油が豊富な赤道ギニアを除いて、独裁政権に支配された中所得国は財産権の保護が不十分で、腐敗が著しいため、持続的な経済成長を達成し、高所得国になるととができない。

言うまでもなく、経済が停滞すれば共産党政権の存続は危ぶまれることになるだろう。

もちろん、中国は例外であり歴史の法則は適用されないという見方もあるだろう。だが共産党政権が永続するという主張に対して、私たちは健全な懐疑を抱き続けたほうがいい。


かつてマークートウェインが、「予言は難しい。特に未来についての予言は」と言ったように。
>天安門事件で崩壊寸前の危機を経験した中国共産党は貴重な教訓を学び、革命が起きにくくするための緻密な防御システムを構築している。大学や工場、研究機関、都市や農村に張り巡らせた共産党の情報提供網は、どんなに小さな問題の兆しも見逃さない。国民を監視し、大衆の蜂起を素早く鎮圧するための巨大な治安部隊の構築にも莫大な資金を注ぎ込んでいる。
最新テクノロジーの助けを借りて、共産党は情報の流れを厳しく統制している。そのため大規模な反体制運動を組織することは不可能に近い。

中国共産党は鉄壁の情報統制を行っている。それでも中国のインテリ層は天安門事件があったことは勿論のこと、日中戦争中に日本軍と直接対峙したのが国民党軍で、第二次大戦中逃げ回り英気を養い、帝国陸軍によって疲弊した国民党を国共内戦で中国本土から駆逐したのが中国共産党であることは知っている。

だが、ネット上で公にそのようなことが議論できない。現代において、ネット上で検索できないものを信用できない傾向にあり、中国人も当局が規制していることは知ってはいても、反日教育と荒唐無稽な抗日ドラマで刷り込まれたファンタジーの歴史を否定することは、なかなか難しい。

反日教育を受けた世代で、抗日ドラマが荒唐無稽なファンタジーだと気が付かない頭の悪い層は少数派ではないのは事実。

建前上中国共産党が帝国陸軍と戦って勝利し、中国大陸から駆逐したことになっている。世界にまき散らすその虚偽の歴史は悪循環になって中国に還ってくる。

中国人の時の政権に正統性を与えるのは、歴代皇帝が、「天命を受けているかどうか」ということが重要である。天命とは、民衆を統治するにふさわしい「徳」のことである。またその徳があると民衆が認めることである。

中国の歴史では徳を失った政権は正統性がないものとされ、民衆によって転覆されてきた。そして新たに天命を受けた政権がそれに取って代わる易姓革命が繰り返されてきた。

易姓革命は中国4000年の伝統である。いわば中国人の血肉となった思想である。そうした伝統的思考法はおいそれと消え去るものではない。

中国共産党が歴史を改竄し、正統性にこだわるのは、建前上でも正統性が失われてしまったら、中国共産党政府はかつての歴代王朝がそうであったように民衆による打倒の対象となってしまう。

近代中国は、アヘン戦争の敗北以来、列強諸国にさんざん搾取され続けた恥辱の歴史に終止符を打ち、民族の栄光を取り戻したのがほかならぬ中国共産党であったという建国神話である。

帝国陸軍がとても残虐で、南京虐殺を行い、大陸各地で三光作戦「殺し尽くし・焼き尽くし・奪い尽くす」(中国語: 杀光、抢光、烧光)>を行ったと刷り込んでいる。 
悪魔のような帝国陸軍を打ち破り民衆を解放したのは中国共産党である。だから中国共産党政府には正統性があるという建国神話なのである。

中国共産党はそのことを一番よく知っているからこそ、歴史をねつ造し、人民に「日本鬼子を追い出したのは、英雄的な中国共産党である」という嘘だらけの「建国神話」を臆面もなくまき散らしている。

「中国共産党による建国神話」の建前が崩壊し嘘が白日の下にさらされたならば、中国人民は中国共産党から天命が失われたと感じ、中国共産党政府を倒すべく一斉に立ち上がるであろう。

中国共産党政府の命運が尽き、崩壊するのはその時である。天命を失ってなお存続しえた王朝は中国の歴史上ひとつもない。もちろん中国共産党「王朝」も例外ではない。

わたしは、ほぼ毎日中国情報サイト「サーチナ」を観察しているのだが、中国人達が大挙日本に観光しに来て、学校教えられた日本と現実の日本とのギャップに疑問を感じる中国人が増えてきた。


中国共産党がネットを規制しても、日本に来れば、歴史の真実を中国民衆が知ることとなる。中国共産党政府が今現在まき散らしている歴史が真っ赤な嘘であることを中国人は知り始めてきているのである。中国共産党に正統性どころか、そもそも天命が無いこをどこかの点で叫べば、燎原の火のように炎上し、あっけなく倒れることすらあるような気がしてならない。

中国が歴史論争を歴史戦と言うのか?それは共産党にとって戦争なのだ。
歴史の真実に中国共産党の最大の弱点なのだ。中国共産党は、金盾(グレートファイアウォール)と呼ばれる世界最大のネット検閲システムを構築し、国民を海外の情報から遮断しているのだ。そうしないと海外から流れ込んでくる真実の情報がやがて中国共産党政府が崩壊するからなのだ。

中国共産党政府を倒すのは自衛隊でも、米軍でもない。武力侵攻や経済制裁といった外部からの物理的、経済的な攻撃よりも、13億の中国人民の蜂起である。

中国人民に真実の歴史を知らせることができれば、自らが覆い隠そうとしてきた歴史の真実が国民にあきらかにされることー。それはすなわち、中国共産党政府が易姓革命という歴史の審判の席に引きずり出されることを意味する。

その時が崩壊論の言うところの崩壊かもしれない。

執筆中

IS CHINA COMING BACK?
中国経済の「復活」にIMFがお墨付き
GDP 今年の成長率予測を上方修正減速が続くトレントは底を打った?

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                                                                                                             近年、減速が続き、昨年にはGDP成長率が26年間で最低の6.7%を記録した中国経済。だがここに来て再び上昇気流が吹き始めたかもしれない。

IMFは10月10日に改定した世界経済見通しで、中国の今年のGDP成長率を7月の予想より0.1ポイント高い6.8%に上方修正した。「金融緩和策と供給側の改革によって、今年上半期に予想を上回る成長を遂げたことを反映した数字だ」とした。

来年については6.5%に減速すると予測したが、これも前回の予想を0.1%上回っている。IMFは、中国当局が大型の公共投資を通して「十分な拡大経済政策を維持し、2010~20年の問に実質GDPを倍増させるという目標を達成する」ことを期待していると指摘した。

中国自身もIMFの楽観的な見通しに賛同している。中国共産党第19回全国代表大会の開幕を目前に控えた先週、国家統計局の寧吉喆(ニン・チーチョー)局長はこう胸を張った。「6.5%という今年の目標値を問題なく達成できるのは確実だ。中成長または高成長を維持しているため、目標値を上回る可能性もある」とはいえ、明るい兆しの陰には潜在的なリスクも数多く残っている。

IMFは、輸出型から内需型への移行の遅れや債務拡大の懸念を指摘。さらに、信用膨張を食い止める努力を加速させなければ成長に急ブレーキがかかる恐れがある、とも念押ししている。                                      シャーロクト・ガオ

A SOCIALIST UTOPIA BUILT ON SAND
根拠なき礼賛と悲観のツケ
Q&A 社会主義幻想が崩壊した後は数字をうのみにした台頭論へ
         現実離れした神話こそが過剰な脅威論の元凶となった

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 一昔前は「日中友好」、近年は「中国台頭」、そして今は「中国崩壊」。日本の書店に並ぶ中国関連本の顔触れはその時々の日本の対中観を映し出す。

そうした中国イメージの混乱を経て、親中でも反中でもない冷静な視点が現れ始めた。そうした論者のI人であり、中国人民解放軍と中国共産党の関係を研究する東北大学の阿南友亮教授に、本誌・深田政彦が聞いた。

――日本の対中観が現実と乖離し始めたのはいつ頃か。


戦前の日本にも、中国の革命や近代化に大きな期待を寄せる声があった。その一方で、軍官民問わず「支那通」と呼ばれる専門家が現地での経験に基づき、中国の近代化が一筋縄ではいかないという見解を示していた。

戦後の日本では、そういった中国の近代化に悲観的な見方(中国停滞論)が「対中侵略の正当化」につながったとして、それをタブー視する風潮が強まった。また、マルクス主義が言論界においてプレゼンスを強めていったなかで「社会主義国となった中国は資本主義の日本よりもずっと先を行く先進国だ」という認識まで出現した。

――実際には日本が高度成長を遂げる一方、中国では大躍進運動夕文化大革命の混乱により悲惨な状況が続いた。

中国との交流が制限されていた当時の環境では、そうした悲惨な実態を覆い隠す中国共産党の巧妙なプロパガンダが日本人の対中認識に強い影響を及ぼしていた。そのプロパガンダと実態との間に大きなギャップがあるということが日本で広く認識されるようになるのは、70年代後半から80年代にかけてのこと。特に89年の天安門事件のインパクトは大きかった。

――それが日本の対中観が現実性を取り戻すチャンスだった。 


ところがおかしなことに、その後日本社会は、これまた中国共産党のプロパガンダという要素を多分に含んだGDPの統計を安易にうのみにするようになり、そこから今度は中国台頭論が出てきた。確かにこの30年で都市部の景観は大きく変わったが、1人当たりのGDPを見ればようやく8000ドルを超えたところ(日本は3万8000ドル、アメリカは5万7000ドル)。数億人の貧しい農民を抱える農村部を見れば、日本の高度成長と似て非なるものなのは明らかだ。

――中国台頭論が盛んなのは日本だけではないのでは。

「中国が新たな超大国となり、アメリカを中心とする既存の世界秩序に挑戦するのは必然の成り行きだ」とする台頭論は、アメリカでも盛んに議論されている。そうした台頭論は、1十1=2というシンプルな論理に基づいている。つまり、「14億の人口」+「経済発展」=「アメリカに匹敵する大国」というロジックだ。

だが経済発展に伴うすさまじいまでの格差拡大とそれを原因とする社会不安の深刻化を考えれば、I+1は1.4くらいにとどまるかもしれず、0.8といったシナリオさえも否定できない。つまり、経済発展によって国内体制がかえって動揺することも十分あり得る。

――日本は今では崩壊論のほうが盛んかもしれない。

深刻な矛盾を抱える中国の現状を正確に反映していない台頭論が日本国内で流布した結果として中国脅威論が生まれ、その台頭・脅威論に対するアンチテーゼとして崩壊論が浮上した。崩壊論には2種類ある。1つは中国に対する過剰なまでの対抗心と反発が、中国を全否定する主張に転化しているパターン。もう1つは過度な台頭・脅威論を沈静化させるために、現代中国が抱える諸矛盾と脆弱性をあえて強調するパターンだ。

いずれにしても日本社会、特に言論界が、中国の社会主義神話が虚構であったという教訓をきちんと生かして、共産党の新たな神話、すなわち経済成長神話の中身を冷静に吟味していれば、非現実的な台頭論に対する感情的反発がここまで高まることはなかったのではないか。

――実際に崩壊はあるのか。


そもそも崩壊を論じる前に、現在の中国が近代国家としての要素を十分に兼ね備えていないという点に注目する必要がある。憲法を根幹とする法治主義に基づいて国家が国内民衆の人権を保障し、その民衆が選挙などを通じて国家の運営に参画するという形による近代的な国家と社会の一体化がいまだにほとんどできていない。

特に人口の大半が暮らす農村部では、国家に対する当事者意識が全般的に低い。政治参加よりも自分の最低限の生活が確保できればそれでいいと考える風潮が濃厚だ。政治に対する諦めムードも漂っている。土地改革や経済発展を成し遂げたにもかかわらず、農村の生活水準は依然として非常に低い水準にあり、劇的に改善する見込みはない。

もちろん不満はいろいろあるが、共産党は民衆に銃口を向けることもいとわない人民解放軍や武装警察を抱えているため、人々は理不尽な現実でも受け入れるしかない。

大多数の民衆は、北京で盛り上がった民主化要求運動が共産党政権と正面衝突した際(天安門事件)、その事実を把握していなかった。現在でも天安門事件の存在すら知らない中国人は珍しくない。首都での異変が即国家体制の崩壊につながったソ連の例とは大違いだ。

――崩壊リスクはゼロ?

生存の危機に直面した民衆が国家権力に牙をむくという王朝交代劇が2000年間繰り返されてきた。そのサイクルを止めるために、国家が民衆の面倒をきちんと見て、国家と民衆の調和を達成するというのが中華人民共和国の当初の国是だった。ところが共産党は皇帝専制国家時代の貴族や官僚のように、権力を駆使して富を優先的に囲い込むようになり、民衆に対する社会保障、すなわち富の再分配をおざなりにしてきた。

そのような政権にとってリスクが高まるのは、最低限の生活すら保障されない民衆が大量に発生したときだ。中国では今でも台風、洪水、干ばつ、冷害、地震などといった自然災害の被災者が1年で億単位にも達する。経済の先行きがあまり芳しくないなかで、大規模な自然災害や環境破壊が続けば、既に相当深刻な社会不安に一層拍車が掛かることは容易に想像できる。そこに共産党内部での権力闘争の激化という状況が加われば、何か起きてもおかしくない。

――近著『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書)では、そうした緊張をはらんだ中国を直視する視点を提供している。

中国国内の緊張が外交の硬直化をもたらし、それが多くの国との関係を不安定化させている。人権問題を含む中国内部の矛盾と緊張が緩和されることなくして、日中関係の安定化は望めないII-そうした認識に立脚した対中政策を検討すべき時期に来ている。 ■


石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したこともない」
Much Ado About Nothing
【Newsweek】2017年10月17日(火)15時00分 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

08年の北京オリンピックの前後から、「反中国本」「中国崩壊本」はまるで雨後のたけのこのように日本で出版されてきた。

『中国崩壊カウントダウン』『中国の崩壊が始まった!』『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』......。あおりにあおったタイトルの本が今も書店には並ぶ。なぜ、この種の書籍の出版は続くのか。複数の「崩壊本」を執筆してきた中国問題・日中問題評論家の石平(せきへい)にジャーナリストの高口康太が聞いた。
◇ ◇ ◇

――いわゆる「中国崩壊論」に対する批判が最近高まっている。現実とは真逆ではないか、という指摘だ。あなたは崩壊本の代表的筆者として位置付けられている。

誤解があるのではないか。私自身のコラムや単著で「崩壊」という言葉は原則的には使っていない。対談の中で触れたことはあるが。

私の主張は「崩壊」というより「持続不可能」という表現が正しい。消費拡大を伴わず、公共事業と輸出に依存した、いびつな経済成長は持続不可能という内容だ。

――『中国──崩壊と暴走、3つのシナリオ』という単著もあるが。

書名は出版社の管轄だ。見本が送られてくるまで私がタイトルを知らないこともあった。出版不況の中、出版社がなるべく過激なタイトルを付けたい気持ちは理解できる。出版社がなければ言論人は本が出せない。

譲れない一線もある。それは人種差別だ。中国を批判しても漢民族を差別してはならない。この基準が守られないなら本の出版は撤回してもいい。実際に一度決まった書名を抗議して変えたこともある。

人種差別以外の場合では、書名を変えるよう出版社とよくケンカするがいつも私が負けている(笑)。

――では共著で言及している「崩壊」とは、具体的にどのような状況を意味しているのか。

(バブル経済崩壊で)日本も崩壊したが、日本人全員が路頭に迷ったわけではない。同様に中国経済もいきなりゼロになることはあり得ない。

ただし、中国共産党の体制は国防費と治安維持費の拡大、出稼ぎ労働者のための雇用創出など経済成長を前提としているため、成長がストップまたは鈍化すれば現体制を維持できない。私が言う「崩壊」とはこの意味だ。

――地方と中央の統計誤差など一部の問題をあげつらい、中国全体の危機に仕立てているのでは。

私は経済学者ではないので、細かい数字は論評していない。しかし中国の統計が正式な実態を把握していないことは間違いない。危機については前述のとおり構造的な問題だ。

――ドローンやキャッシュレス決済など中国発のイノベーションをどう評価するか。

中国の新しい経済については注目している。しかし私有財産が保護されていない中国では、時間も資金もかかる研究開発に取り組む姿勢が弱い。実際に中国人経営者との付き合いも多いが、企業の存続よりも家族の蓄財を優先している。

国外留学組の力もあり、一部企業は先進的な技術開発を進めているが、それが国家の産業構造を変えるものなのか、疑問を持っている。

――中国崩壊論は10年以上前から続いているが、いまだにその兆しは見えない。いつがXデーなのか?

いつ崩壊するなどと予言したことはない。持続不可能と指摘しているだけだ。ただし、誤算があったことは認めたい。中共(共産党)は胡錦濤(フー・チンタオ)政権末期の危機的状況に際し、成功体験である毛沢東時代を再現すべく習近平(シー・チンピン)に権力を集中させた。この対応力は私を含めチャイナウオッチャー全員が予想できなかった。それでも先送りしているだけで構造的問題の解消にはなっていないと思うが。

次の著書では自らの誤算と中共の変化について詳述する予定だ。

執筆中