【北京=藤本欣也】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の中国訪問で両国関係が改善する中、有事の際に互いに軍事支援すると定めた「中朝友好協力相互援助条約」の存在が改めて関心を集めている。昨年来、中朝関係悪化を背景に中国側が参戦義務はないと主張していたためだ。両国の「伝統的友誼」の復活を受け風向きが変わるのは必至で、米国が北朝鮮へ武力行使するのはより困難となった。

 29日付の中国各紙は1面トップで中朝首脳会談の記事を掲載、共産党機関紙、人民日報は「中朝の伝統的友誼を高めることが両国の共通利益であり、戦略的選択である」と主張した。

 中国は朝鮮戦争(1950~53年)に人民義勇軍を参戦させ、多大な犠牲を払って北朝鮮を救った。「血で固めた友誼」と表現されるのはこのためだ。

 61年には中朝友好協力相互援助条約を締結。第2条に「一方の国が攻撃され戦争状態に陥った場合、他方の国は全力で軍事援助を与える」とする自動介入条項が盛り込まれた。

 しかし北朝鮮が核・ミサイル開発を強行し軍事的緊張が高まった昨年、中国官製メディアが同条項の無効を主張して注目された。

 人民日報系の環球時報は昨年8月、「北朝鮮が米領を脅かす弾道ミサイルを発射し、米国の報復を招いた場合、中国は中立を保つべきだ」との社説を掲げた。

 同条約に基づく中国の軍事支援を当てにするな-という中国当局による北朝鮮向けの政治的メッセージと受け止められた。

 当時、専門家の間で中国に参戦義務がない論拠の一つとされたのが、同条約の第1条「中朝両国は世界平和を守るため、あらゆる努力を払う」という規定だった。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮はこれに違反しており、中国に参戦義務はない-という論理だ。

 ただ今年に入り北朝鮮は「非核化」の意思を表明。核・ミサイル発射実験も自制している。北朝鮮は同条約に基づく中国の軍事支援をちらつかせながら、米国との交渉に臨む構えだ。

 一方、中国側が「自動介入条項を負担に感じているのは事実」(中国専門家)。29日の中国各紙は「伝統的友誼」を強調するが、以前のように「血の友誼」とは表現していない。

 とはいえ、米国の対北武力行使に反対なのは中国も同じだ。今後は中朝の伝統的友誼を強調し同条項無効論を抑えることで、米国を牽制していくとみられる。
新華社によると「韓国と米国がわれわれの努力に善意で応え、平和の実現に向けて努力するなら」という条件付で、金正恩は「朝鮮半島の非核化に尽力する」と話し、「朝鮮半島の非核化問題は解決可能だ」とも述べた。

北朝鮮は非核化を宣言せざるをえなくなったが、具体的に何を非核化するのかは言及していない。

日米が言う非核化とは、北朝鮮が全ての核を破棄したうえで、全ての施設で核査察を受け入れるのを「非核化」としているが、そうした要求を呑むとは考えられない。

中国は北朝鮮の核問題を「これで解決した」とすることで事実上支持し、貿易戦争で中国経済を破壊しようとする米国に敵対姿勢を取ル方向に流れる。

トランプ大統領はもしかしたら本当に天才かもしれない。いままで、米国をいいように翻弄し続けてきた国中朝が、手を握るしか道が無いので、金正恩が、あれほど嫌っていた中国へ行き、北朝鮮が嫌いな習近平も、中朝会談を受け入れざるを得なくなった。

中国と北朝鮮は2017年5月以降、中国の要請を無視して核実験や弾道ミサイル実験を行い、関係が悪化していた。一時は中国人民解放軍が中朝国境に集結し、北朝鮮爆撃の準備と見られる演習も行っていた。

もしかしたら、トランプは金正恩を抱き込み中国に向ける駒にする可能性もあるかもと考えだしていたのだが、金正恩は中国を選んだ。

中朝が和解せざるを得なくなったのは、トランプ政権3人目の国家安全保障問題担当補佐官にジョン・ボルトン氏を起用したからだ。

米朝会談を受け入れた後に、イランや北朝鮮に対する軍事力行使を主張するボルトン補佐官を起用したことに、金正恩は衝撃を受けたにちがいない。

習近平もまた、同じくかなりヤバイと思ったに違いない。そこで、敵対し合った中朝は再び手を結ぶしか選択肢が無くなったのである。

ボルトン補佐官は、ジョージ・W・ブッシュ政権時代に国務次官(軍備管理担当)を務めた際には、2003年のイラク侵攻を主唱。ここ数年は保守派の論客として北朝鮮の核問題に対して強硬姿勢をとるよう主張しているほか、15年のイラン核合意の破棄も訴えている。

トランプ大統領が米国のリベラルメディアの言うようにボンクラ大統領であったのなら、ボルトン元国連大使の起用という奇手は考えもできなかったろう。

トランプ大統領の「米国第一」チームが完成
ボルトン元国連大使の起用で、取り巻きは全員ナショナリストに
【JBpress】2018.3.29(木) Financial Times

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年3月24・25日付)
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米大統領、マクマスター補佐官を解任へ 後任はボルトン元国連大使
ジョン・ボルトン元米国連大使。米メリーランド州で(2017年2月24日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Mike Theiler〔AFPBB News〕


 もし外交を罵る米国に「顔」をつけることができるとしたら、漫画キャラクターの「アステリックス」のような長いひげを生やし、ジョン・ボルトンという名前で通っているだろう。

 巷に飛び交う冗談では、ボルトン氏は気に入らない戦争に出会ったことがないと言われる。これは控えめな表現かもしれない。

 ドナルド・トランプ氏の新たな大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就任するボルトン氏は、平和的な揉め事を見て、大砲で状況を改善できないと思うことがめったにない。

 米国一のタカ派上院議員の一人に数えられた故ジェシー・ヘルムズ氏は、「ジョン・ボルトンはアルマゲドンが起きたときに隣に立っていたいと思うような男だ」と言った。

 ジョージ・W・ブッシュ元大統領の政権で倫理担当の主任弁護士を務めたリチャード・ペインター氏は、「ボルトン氏の起用は戦争への誘い、ひょっとしたら核戦争への誘いだ」とツイートしている。

 実際には、決断を下すのは大統領だ。大統領のアドバイザーはアドバイスする。

 だが、ボルトン氏の存在により、トランプ氏の最も無分別な本能が目立つようになる。これがイラン核合意の将来と米朝対立にもたらす意味合いは暗澹としている。

 ボルトン氏は昨年、「トランプは最初の機会が訪れたときに、この忌まわしいイラン合意から米国を解放できるし、そうすべきだ」と語っている。

 当時大統領の首席戦略官を務めていたスティーブ・バノン氏の要請を受け、イラン核合意を取り消す方法を示す5ページのメモを書いた。

 この数カ月は幾多の場面で、北朝鮮を先制攻撃するよう米国に迫った。ブッシュ政権のメンバーだったときには、キューバと対立すべきだと訴えていた。

 ボルトン氏は、ウィンストン・チャーチルが「war-war(戦争)」の対語として「jaw-jaw(議論)」と呼んだものへの軽蔑を露わにしている。

 また、国連大使として、国連ビルは10階分なくなってもいいと言ったのは有名な話だ。すでに人材が枯渇している国務省については、蔑むように語っている。

 そのボルトン氏の起用は、トランプ氏の国際的関与における好戦的な局面の到来を告げているのだろうか。その答えは、ほぼ間違いなくイエスだ。世界がこの人事に留意すべき理由が3つある。

 まず、ボルトン氏の前任の補佐官のポストを退任するH・R・マクマスター氏は、トランプ氏の抑止役を果たした。

 マクマスター氏は、やはり退任するレックス・ティラーソン国務長官と同じように、職務の遂行ぶりについて大きな批判を浴びたが、どちらも大雑把に言って「パックス・アメリカーナ」のルールブックに従っていた。

 マクマスター氏は苦労して北大西洋条約機構(NATO)を支持する言葉をトランプ氏の演説に盛り込んだ。

 一方のボルトン氏はNATOと、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官が「古い欧州(注1=イラク戦争に反対したフランス、ドイツ両国を指して使った言葉)」と呼んだものに懐疑的だ。

 次に、ボルトン氏は米国民主主義の推進に我慢がならない。これはトランプ氏の世界観と相性がいい。

 一般的な見方に反し、ボルトン氏はネオコンではない。何しろネオコンは、米国の価値観は普遍的であるべきだと考えている。ボルトン氏は、米国の国益の積極的な推進を信じており、ネオコンとはかなり異なる。

 ボルトン氏は10年以上前の「FTとランチ」のインタビューで、同氏が熱烈に支持したイラク戦争はネオコンの抱く民主主義の思惑によって歪められてしまったと述べた。

 「我々がすべきだったことは、イラク人に向かって『君らは自分たちでやるしかない。ここにフェデラリスト・ペーパーズがある。幸運を祈る』と言うことだった」。合衆国憲法の着想となった論文に触れて、こう語っている。

 ボルトン氏はトランプ氏が大統領選挙に出馬するずっと前から、「米国第一」の政策を訴えていたわけだ。

 最後に、ボルトン氏の補佐官任命は、トランプ氏の「経営者革命」をほぼ完成させる。それと認識できる経営原則のないホワイトハウスの完成である。

 マクマスター氏は省庁間のプロセス全体において政策を調整する正直な仲介者として活動しようとした。たびたび成功したわけではないが、それでも努力はした。

 ボルトン氏は、合意形成の概念そのものを嫌う。これもまた、トランプ氏のアプローチと合致している。

 これはジョン・ケリー首席補佐官の破滅を告げているのかもしれない。

 バノン氏は、FTが22日に主催した「ニュースの未来」会議で、トランプ大統領は首席補佐官というポストそのものをなくしたいのではないかと思うと語っている。

 いずれにせよ、我々は「縛りを解かれたトランプ」の段階に入っている。

 ロナルド・レーガンはかつて、「You ain't seen nothing yet(こんなのは、まだ序の口だの意)」と述べた。トランプ氏についても同じことが言える。

 同氏はいま、米国第一を信じるナショナリストに取り囲まれている。反対意見を述べる人は消えつつある。パックス・アメリカーナは日に日に弱くなっていく。
トランプ大統領は、独裁者の習近平や金正恩よりしたたかで、本当に交渉の達人かもしれない。

中朝首脳会談は、「米韓同盟揺さぶり」ではなく、追い込まれた中朝のやむを得ない選択なのだ。

北朝鮮が本当に核を放棄するなら、在韓米軍の撤収くらいは受け入れるかもしれませんが、ただし、米国は、完全放棄と恒久的査察を求める。

2004年7月21日、韓国を訪問したボルトン国防次官は「最初にだまされるのはだました方が悪いが、二度だまされるのはだまされる方が悪い」と述べこの問題で、クリントン政権の融和政策に戻ることはなく「ジュネーブ枠組み合意」のレベルでの解決はあり得ないことを示唆し、リビア方式でのCVID(完全かつ検証可能で不可逆的核廃棄)こそが米国の求める解決策であることを示した。

北朝鮮からすれば、即時廃棄しなければ、米国から攻撃を受ける可能性が大きいと判断しているようだ。

状況から言えば、朝鮮半島の非核化は十分可能だ。つまり、北朝鮮の核武装放棄と在韓米軍撤収の交換は十分に起こり得る。

ただ現実には、本当に北朝鮮が核を放棄するか、信用できないから話が進まない
北朝鮮が核の放棄を約束しても誰も信じない……。

これまで何度も騙してきましたから中国の保証を取り付けて米朝首脳会談に臨むしかないのだ。核関連施設に中国の査察を受け入れる。中国ならということなのだろう。

金正恩の独裁者としての才能は私は数年前から評価(良い意味ではない)してきたが、ここ数年の金正恩の打った手に無駄な駒は無い。ほとんど間違っていない。

中国は北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」で共闘してくれ、と頼んできたからそれを受け入れた。金正恩が頭を下げてきたのですから、まずは自分のメンツも保てた。

米国は北朝鮮を先制攻撃するか、あるいは金正恩暗殺を実行するでしょう。ただ、北朝鮮に地上軍を本格的に派遣するつもりはない。中国は米国の攻撃・暗殺後に人民解放軍を北朝鮮に派遣し、核施設を破壊すればよい。米国に協力するわけです。ついでに北朝鮮に傀儡政権を押し立てるつもりだろうが・・・・。金正恩は生き残ると思う。