あと2年。中国が直面する、習近平へ批判大噴出の「悲惨な未来」
【ロシア政治経済ジャーナル】2018.08.13 49  北野幸伯

中国国内で習近平国家主席に対する批判が拡⼤、「⽶中関係を壊したのは習近平だ」という様な論調まで沸き起こっています。なぜここまで習⽒は攻撃されているのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは⾃⾝の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、批判理由は「永らくトップの座に居座り続けている習近平」に対しての不満であり、今後中国国家は成熟期の混乱に⼊るので沈静下も難しいだろうとの持論を展開しています。

習近平の悲劇(避けて通ることができない…)

ローウィー国際政策研究所、シニアフェローリチャード・マクレガーさんの動画を⾒ていました。

習⽒の栄光は既に頂点過ぎた可能性:ローウィー研究所マクレガー⽒

この中でリチャードさん、こんなことをいっています。
⼈々が習主席に対し反対意⾒を⾔い始めています。
習主席の栄光は頂点に達したのかもしれません。
つまり頂点を⼤幅に過ぎ⼈々は批判する問題を探しています。

そして、興味深いことに、習近平が⽶中関係を破壊したと批判しているというのです。どう考えても、貿易戦争をはじめたのはトランプですが、中国⼈は、そのことで習を⾮難している。

最近、「習近平批判が増えている」という話、RPEでも何度かしました。例えば
「習近平は知能が低い」。中国が閲覧不可にした⼤学教授の論⽂
2020年、なぜ中国の習近平は「神」になったことを後悔するのか?

こういう動きを⾒て、⼤昔からの読者さんは、「予想通りの展開になってきたぞ」と思われることでしょう。

習近平は、何を間違えたのでしょうか? 国家主席の任期を撤廃して、「終⾝国家主席」への道を開いたこと??? それも「愚かな決断」ではありますが…。悲劇の原因は、別のところにあります。
実をいうと、習の悲劇は、「不可避的なもの」なのです。なぜ???

避けられない国家ライフサイクル

13年前、34歳だった私は、⼀冊⽬の本を出版しました。『ボロボロになった覇権国家』といいます。この本のメインテーマは、「アメリカ発の危機が起こって、この国は没落しますよ」でした。予想通り08年、アメリカ発「100年に⼀度の⼤不況」が起こり、アメリカは没落しました(「アメリカ⼀極時代」が終わり、「⽶中⼆極時代」が到来した)。

中国については、どうでしょうか? p127にこう書いています。

中国は、2008年・2010年の危機を乗り越え初めは安くてよい製品を供給する「世界の⼯場」として、その後は1億3,000万⼈の富裕層を抱える巨⼤市場として、2020年ぐらいまで成⻑を続けるでしょう。


05年時点で、
・08〜10年に危機が訪れる
・しかし中国はそれを乗り越える
・成⻑は2020年まで

とあります。「成⻑は2020年まで」については、まだわかりませんが、それでも、予想通り成⻑は鈍化しつづけています。

なぜ、13年前に現状を予想できたのか? 「国家ライフサイクル理論」によってです。簡単な理論で、「国にも、ライフサイクルがある」。ざっくりわけると、前の体制からの

移⾏期(=混乱期)
成⻑期(前期と後期がある)
成熟期
衰退期

これで、13年前、「中国は、まだ成⻑期の前期だから、08年〜10年に起こる危機を短期間で乗り切るだろう」と予想できた。

もう少し、中国の「国家ライフサイクル」を⾒てみましょう。中国は1949年の建国から1978年末まで「移⾏期」「混乱期」でした。賢いトウ⼩平が改⾰を宣⾔したのは、78年末。だいたい1980年から成⻑期に突⼊した。⽇本は朝鮮戦争のおかげで1950年から成⻑期に⼊った。つまり、中国は、⽇本から30年遅れているのです。

1960年代、日本は「安かろう悪かろう」で急成長
1990年代、中国は「安かろう悪かろう」で急成長
1970年代、日本は「世界の工場」になった
2000年代、中国は「世界の工場」になった

1980年代、「ジャパンアズナンバーワン」。日本は、世界一の経済大国になると、誰もが確信した
2010年代、「チャイナアズナンバーワン」。リーマン・ショックでアメリカが沈み、「中国が覇権国家になる!」と主張する人たちがたくさんいる
どうですか? ピッタリ30年遅れでしょう。もしそうであるのなら、

1990年、日本でバブル崩壊、暗黒の20年スタート
2020年、中国でバブル崩壊、暗黒の20年スタート

となるはずです。まあ、習近平は、「日本のバブル崩壊」と「ソ連崩壊」を詳しく研究させているそうなので、多少時期はずれるかもしれません。しかし、「国家のライフサイクル」は、人間の生老病死同様、「不可避なプロセス」なのです。中国がこれから「また二けた成長を始めました」とかありえません。

習近平の悲劇

習近平の根本問題はなんでしょうか? そう、彼が国家主席になった「時期」です。彼が国家主席になったのは2013年3⽉。しかし、共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席には、2012年11⽉になり、この時から実権を握っていました。

ライフサイクルで⾒ると、彼が国家主席になったのは、成⻑期後期です。⽇本でいえば、1980年代にあたる。賃⾦⽔準は上がり、経済成⻑率は鈍化し、他国に企業がドンドン逃げていく。これは、「成⻑期後期」の典型的パターンであり、習にはどうすることもできない。彼が国家主席になった2013年の記事を⾒てみましょう。

産経新聞2013年8⽉9⽇付。
⽇本貿易振興機構(ジェトロ)が8⽇発表した「世界貿易投資報告」によると、今年上期(1〜6⽉)の⽇本企業の対外直接投資額は、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが前年同期⽐55.4%増の102億ドル(約9,800億円)で過去最⾼を記録、対中国向けの2倍超に膨らんだ。昨秋以降の⽇中関係の悪化や⼈件費の⾼騰を背景に、中国向け直接投資は31.1%減の49億ドルまで落ち込み、⽣産拠点の「脱中国」が鮮明になった。
(同上)

「昨秋以降の⽇中関係の悪化」とは、いうまでもなく「尖閣国有化による関係悪化」のことです。
ジェトロの現地調査では、ASEANのうち、上期の⽇本による対外直接投資が1位だったインドネシアは、⾃動⾞メーカーの新⼯場建設や拡張ラッシュに伴い、部品や素材メーカーの進出が加速している。
上期投資額で2位のベトナムは、チャイナ・プラス・ワンの有⼒候補で、現地の⽇系事務機器メーカーの⽣産台数が中国を上回ったという。
(同上)


これが、5年前に起こっていたことです。まさに、「国家ライフサイクルどおり」といえるでしょう。

これから中国は、「成⻑期から成熟期の移⾏にともなう混乱」にむかっていきます。⽇本の「バブル崩壊」に匹敵する危機が訪れるのでしょうか? それとも、もっと⼤きく、「体制崩壊」まで進む?

私は、「体制崩壊」まで進む可能性もあると⾒ています。中国共産党には、まず「中国全⼟を統⼀した」という正統性がありました。その後は、「中国共産党のおかげで、経済成⻑する」という正統性を確保した。しかし、経済成⻑が⽌まる2020年以降、共産党には、「独裁を正当化する理由」が何もなくなります。

繰り返しますが、習近平は、⽇本のバブル崩壊と、ソ連崩壊を熱⼼に研究させています。それで時期はずれるかもしれません。しかし、「国家ライフサイクル」は変更不可能なのです。
中国は米国を本気にさせてしまった。

最近私が検索するネットのニュースは、習近平独裁の終焉とか、習近平失脚、米中貿易戦争トランプ楽勝、陥没した一帯一路とか、中国製造2025は幻想といったような記事が溢れかえっている。

反対に中国国内では、貿易戦争とか中国製造2025という言葉が中国の検索サイトからバンバン削除されているそうだ。

中国が、貿易戦争を勝てないと思い始めたからであろう。経済が傾いていることが習近平の責任となってしまう。米国と経済戦争をしていることは、国民には内緒なのだそうだ(笑)

習近平政権は、発足当初、経済は李克強首相の担当であったが、習近平が独裁を強めてしまった結果、経済が傾けばすべて独裁者習近平の責任という喜劇的状況に追い込まれているようだ。

トランプの仕掛けてきた要求は、貿易のルールを守れ、知的財産を守れという正論に対し、中国はそれに対し感情的になり、中国封じ込めだと逆恨みしているのが現状だ。話がかみ合わなくて、解決の目途はない。貿易戦争は米中冷戦に突き進むしかないだろう。

アメリカは、もしかすると水面下で中国に対して準備を始めた可能性がある。

先日、ヒストリーチャンネルで、パールハーバーの攻撃後、白人男性から、女性や黒人が戦争に向かって米国の本気スイッチが入った当時のアメリカのドキュメンタリーを見た。スイッチが入った米国は狂ったように戦闘機、軍艦、戦車を量産し、軍需物資を大量産しだした。工場労働者の多くが女性で、女性の社会進出の切っ掛けとなった、また、日本から絹のストッキングの供給も絶たれたことから、女性がズボンパンツを履くきっかけとなった。軍隊の総数も、パールハーバー直前全軍で45万人ほどだった兵員が、白人男性はもとより、女性も、黒人も軍隊に入隊し僅かな期間で最終的には1600万人の軍隊へと膨張する姿を描いたものだった。

開戦緒戦連戦連勝だったうえ、神国日本は寡兵でも無敵だと信じてやまなかった、帝国陸海軍幹部に見せたら、腰を抜かしてしまうような内容であった。

米国は、明らかに動員計画、軍事物資調達計画を開戦前に既に用意していたはずである。そうでなければ絶対にあのような短期間で、兵員の驚異的な膨張や、民生工場の軍需工場化の転換など絶対に不可能だただろう。

今と当時とはまるで違うかもしれないが、第二次世界大戦への時代の流れは、戦争へと流れていった。日本間違いは、日英同盟を廃し、その後三国同盟を締結し、そして最大の誤算がヒトラーのポーランド侵攻による第二次世界大戦の勃発である。

枢軸国に対して開戦したくてしかたなかった米国、ノモンハンで寡兵の日本軍に大損害を受け、日本軍とは戦いたくなかったソ連、米国を戦争に引きづり込まないと戦争に勝てないと思った、チャーチル率いる英国、同じく蒋介石の中国国民党、大きな流れが太平洋戦争開戦へと流れていた。

当時米国を知る日本人の多くは米国を恐れてはいたが、庶民レベルでは神国日本、無敵の日本軍だと盲信し、英米をバカにしていた空気が、朝日・毎日新聞の煽りで、開戦やむなしという結論に至ってしまったと思う。

現在と当時を比較して考えるとき、中国共産党をナチスに置き換えると、流れが見えてくる。欧米に蔓延る平和主義が、当時のナチスがラインラント地方に武力進出し、第一次対戦で失った領土の回復運動を黙認し、従来の秩序を破壊するナチスに遣りたい放題にさせた。中国の夢政策も清王朝の最大版図領土回復という妄想、南シナ海で人工島を作り、国際秩序を破壊し、次の覇権国となる野望を抱いている。まるで、ヒトラーが世界征服を企んだのと同じようだ。

中国も従来の秩序を破壊し、やりたい放題であった。中国がヤバイと警告の声を上げたのは日本の保守派、そして、米軍やピーターナバロ初めとする米国、トランプ大統領が動き始め、議会も気が付き始めた。最近EUもようやく中国のヤバさに気が付き始めたところである。

現在、米国全体は、パールハーバーの後のようにまだスイッチが入ったわけでは無いが、軍とホワイトハウス・議会は中国をこれ以上放置できないとようやく気が付いたばかりだ。トランプ大統領政権は本気で、習近平を潰しに動き出したと思う。

貿易戦争は経済問題ではなく、安全保障の戦略の一環である。戦前日本をABCD包囲網で囲み、数々の無理難題を日本に突き付けた状況に似ている。トランプ大統領も安倍首相ともに中国包囲網を構築しだした。米朝首脳会談にトランプが応じたのは、はまさにその一環である。米中貿易戦争も、けっしてトランプの気まぐれではない。
米国のトランプ政権は2019年度の国防予算を決定すると同時に、中国の軍事力増強に関する年次報告を発表した。この2つの動きにより、トランプ政権が中国とロシアを既存の国際秩序への脅威とみなして、大幅な軍事力強化によって対決していく基本姿勢が明らかとなった。

■公約を実現するトランプ大統領

トランプ大統領は8月13日、2019会計年度の国防権限法案に署名した。上下両院がすでに可決した同法案は、今年(2018年)10月からの新会計年度にトランプ政権が合計7170億ドルの国防費を使うことを定めている。

この国防費は近年でも最大額で、オバマ前政権の最後の国防予算となった2017年度からは16%もの大幅増加となった。

今回の国防費増額はトランプ大統領が選挙戦当時から主張してきた「力による平和」「強いアメリカ」「米軍を世界最強に」という公約の実現という意味を持つ。トランプ氏は大統領選挙戦中から、オバマ政権の国防費削減を「現状打破勢力を伸長させ、米国の対外利益を侵食する」として厳しく批判してきた。

中国とロシアを「仮想敵」として名指し

トランプ政権は新国防予算で、中国とロシアを実質上の仮想敵として米軍の戦力を強化する策を打ち出した。たとえば新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)の増強、ステルス戦闘機F35の大幅な増強、海軍艦艇多数の新建造、各種、各地域でのミサイル防衛の強化に始まり、核戦力についても中国やロシアの核増強に対抗する効率強化策を打ち出した。

この新国防予算の最大の特徴は、中国とロシアとをはっきり名指しして「米国が主導して保持してきた国際秩序を侵食し、破壊する勢力」と定義づけ、そのための具体的な軍事策を明確にしたことである。

中国に対しては、南シナ海の軍事拠点拡大を不当で危険だとして、「インド太平洋地域の安定化」に向けた軍備拡充の5カ年計画を打ち出した。さらに中国を世界最大規模の多国間海上演習「環太平洋合同演習」(リムパック)に参加させることを禁止し、米国内の大学に開設された中国政府機関「孔子学院」への国防総省からの補助支出を制限することも明文化した。

また、すべての米政府機関や米政府と取引のある企業・団体に対し、中国通信機器大手「中興通訊」(ZTE)や「華為技術」(ファーウェイ)など中国政府とつながりのある企業の製品を使うことを禁止した。同時に、台湾への兵器供与の増加など台湾防衛の強化策も打ち出し、中国当局との対決を鮮明にした。

同時にこの国防支出法はロシアに対しても、「ロシアの米国や欧州のその同盟諸国に対する侵略を抑止するための対策」を増強することを公約し、欧州の同盟諸国の対ロシア防衛への支援強化を明記した。とくにロシアのウクライナからのクリミア奪取には強く反対し、ウクライナに2億5000万ドル規模の軍事支援をすることを打ち出していた。

米国内の反トランプ勢力は「トランプ大統領は米欧同盟を亀裂させた」と非難しているが、こうした諸策はトランプ政権が北大西洋条約機構(NATO)を堅持する姿勢を反映していると言ってよい。

■覇権獲得に向けて軍拡する中国

この国防予算成立の3日後の8月16日、トランプ政権の国防総省は中国の軍事力に関する報告書を発表した。同報告書は中国の軍拡が顕著となった2000年から、法律に基づき国防総省が毎年一度作成して議会に送ることになっている。

2018年版の同報告書は「中国の軍事と安全保障の発展についての年次報告書」と題され、中国の戦略目的は「地域的かつグローバルな中国の存在の拡大」だと定義づけていた。

つまり、中国は東アジアや西太平洋で米軍の抑止力を崩し、覇権を獲得するために、陸海空三軍だけでなく宇宙軍までを強化しているのだという。また、米国や日本、日米同盟にとっての脅威として、中国の西太平洋での爆撃能力の増強や海兵部隊の大増員を指摘していた。

トランプ政権のこうした中国への厳しい対決と抑止の姿勢が、2019年度の国防予算で実行に移される、というわけである。

■トランプ政権が目指す「力による平和」

トランプ政権の対外戦略は、昨年12月に発表された「国家安全保障戦略」と今年1月に発表された「国家防衛戦略」という2つの重要政策文書が基本となっている。

国家安全保障戦略は、トランプ政権の安全保障面における基本認識を明示していた。つまり、中国とロシアという2つの軍事志向の現状打破勢力によって、現在の国際情勢に危険が迫り、米国とその同盟諸国が築いてきた自由民主主義や人権尊重、法の統治に基づく既存の国際秩序が重大な脅威にさらされている、という認識である。

国家防衛戦略では、米国がこの危険な国際情勢に対して軍事力による抑止政策を強化することを強調していた。特に、トランプ政権の防衛政策の基本として、「戦争を防ぐ最善の方法は、想定される戦争への対応の準備をして、勝利できる能力を保つことだ」とする点が特徴だった。

こうした「力による平和」の実現、そして、中国とロシアを脅威とみなして軍事的な抑止力を強化することが トランプ政権の国際安全保障政策である。今回の国防予算と中国軍事力報告という2つの動きによって、まさにその事実が確認されたというわけだ。
現在の日本は、第二次世界大戦前と相似しているが、幾つかちがう。日英同盟に当るのが日米安保であり、日本は再和にもこれを破棄していない。そして、反英米同盟である三国同盟に当るようなものが上海機構だとか、AIIB、一路一帯構想なのだが、これに加担していない点だ。

小沢一郎らが率いた民主党政権続いていた場合、日米安保を破棄して、中国と同盟していたかもしれない。もしそうだとしたら、日本は戦前と同じく途轍もない間違いをしていたかもしれない。

時代の流れは、明らかに中国共産党を滅亡の方向へ導いている。

これは日本の知識層であれば誰でもそう思うはずである。なぜなら日本の知識層の記憶の深層には、800年前から語り継がれるあの名文が刻まれているからだ。


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。 

遠くの異朝をとぶらへば、秦の趙高漢の王莽梁の朱忌唐の禄山、これらは皆、旧主先皇の政にも従はず、楽しみを極め、諫めをも思ひ入れず、天下の乱れんことを悟らずして、民間の愁ふるところを知らざつしかば、久しからずして、亡じにし者どもなり。 

近く本朝をうかがふに、承平の将門天慶の純友康和の義親平治の信頼、これらはおごれる心もたけきことも、皆とりどりにこそありしかども、間近くは六波羅の入道前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま、伝え承るこそ、心も詞も及ばれね。 

800年前から日本で語り継がれる盛者必衰の理は、人類社会の変わらぬ定理なのである。

覇権国の寿命と循環

米国の政治学者ジョージ・モデルスキー(1926-2014)によると、近代が15世紀に始まって以降、世界政治には約一世紀を周期とする五つの超長期サイクルがあったという。一つの大国がまず25~30年間にわたる世界的な戦争によって覇権を確立した後、自らのリーダーシッブで世界規模での経済発展をもたらす。だが、やがて覇権を支える能力が衰えて競争者が出現し、国際秩序の崩壊が生じて、次の新たなサイクルヘと移行するというのだ。

モデルスキーによると、過去500年の間に、ポルトガル(1494~1580年)、オランダ(1580~1688年)第一次英国(1688~1792年)、第二次英国(1792~1914年)、米国(1914~2030年?〕が、覇権国としての機能を発揮しつつ、交代してきた。これらの大国は、主たる敵対国であるスペイン、フランス、ドイツ、日本、旧ソ連などの挑戦をいずれも退けてリーダーシップを担ってきた。

モデルスキーの長波理論

 パワー・トランジッションに関する国際政治理論としては、もう一つ、近代以降の世界では、国際秩序の構築と維持に主導的な役割を果たす大国が、周期的に次々に交代してきたとみる「覇権サイクル論」を挙げることができる。この種の議論はさまざまな論者によって唱えられたが、その代表的なものとして、ジョージ・モデルスキーの「長波理論」がある。これは、近代以降の世界システムにおいては、約 100 年ごとの周期で、世界大国(あるいは世界指導国 )が登場し、交代してきたとみるものであり、その概要は、図 1 に示す通りである。15 世紀末から今日までの間に五つのサイクルがあり、第 1 サイクルではポルトガル、第 2 サイクルではオランダ、第 3・第 4 サイクルでは英国(第 4 サイクルでは英国の「返り咲き」が起こった)、そして、今日も継続中の第 5 サイクルでは米国が、それぞれ世界大国として国際秩序形成を主導してきたというのが、モデルスキーの歴史観である。
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モデルスキーのパワー・トランジッション

 モデルスキーによれば、各サイクルは次のような動態を示し、約 100 年ごとにパワー・トランジッションが起こるとされる 。

①約 100 年に一度、「世界的な拡がりをもった、1 世代ほどの期間にわたる、相当に激しい、その結果としてある一つの国が世界指導国としての地位を保有するに至るような戦争」である「世界戦争」が起こる。その後に、新たな「世界大国」が登場する。

②新しく登場した世界大国は、自ら掲げた世界的な課題の解決にリーダーシップを発揮して秩序を運営する。

③だが、その課題をうまく解決できなかったり、課題自体が変化したりすると、リーダーシップの非正統化が生じる。

④やがて、力の構造が分散的になり、新しい課題を掲げる「挑戦国」が現れる。

⑤挑戦国と世界大国との間に秩序をめぐって新たな世界戦争が起き、その後にまた新たな世界大国が登場する。

 モデルスキーの議論で特徴的なのは、世界戦争の結果新たな世界大国となるのは、それまでの世界大国でも挑戦国でもない場合が多いとみていることである。両者は大戦争を戦ってともに疲弊してしまうからである。モデルスキーが、新たな世界大国になることが多いと説くのは、世界大国の側のナンバー2 の国である。ただし、世界大国は、第 4 サイクルの英国のように「返り咲き」をする場合があるとされる。

 それでは、どのような国が世界大国になるのであろうか。モデルスキーは、「世界指導国の条件」として以下の 4 点を挙げている。

①島国性(または半島性)
 これまでの全ての世界大国は、国土を海に囲まれた島国、あるいはそれに準ずる半島国であった。島国は、大陸国に比べて「余分の安全」と世界交通路へのアクセスを手にすることができ、半島国もそれに準ずる。

②安定性と開放性
 全ての世界大国は、安定性と開放性をその最盛期の特色とする社会を有していた。
安定した社会は、移民や旅人や出世の途を求める人々を引きつける「取り込み力」や、当該国家を世界の尊敬の的とし、「主導的社会」、すなわち発展のモデルとみなされるようになる。さらに、社会の開放性は、「他国との連携を作り出し維持する能力」と結びついている。

③主導的経済(lead economy)
 経済の分野で傑出した成果を挙げることは、世界大国にとっての「折り紙」であるが、それは、GDP 総額で測られる経済の単なる規模や、一人あたり GDP で測られる豊かさの度合いだけではない。世界大国を特徴づけるのは、むしろ産出物の構成や、そのうち技術革新に向けられる部分の比率である。これまでの世界大国は、いずれも、世界経済の成長の中心としての性質を持つ「主導的経済」を有していた。主導的経済の条件は、その時代における最先端の技術革新が盛んに起こっており、世界経済を牽引する産業分野で先頭を走っていることである。技術革新のもたらす利潤は、世界大国に、「世界を舞台とする事業に乗り出し世界的な問題に責任を負うための余剰利潤」を供給する。

④全世界に力を及ぼす(power projection)ための政戦略組織
 世界大国には、自らの選択する世界秩序を維持し、世界戦争に勝利できる能力が必要である。そのため、これまでの全ての世界大国は、「世界の大洋に乗り出して来る他のすべての国に対して決定的な優位に立てるだけの」海軍力を有していた。現在では、世界大国のパワー・プロジェクション能力には、海軍力に加え、空軍力および宇宙を軍事的に利用する能力も含まれよう。

 図 1 に示されるモデルスキーの歴史解釈によれば、近代以降これまでに登場した挑戦国の中で、世界大国になり得た国はない。その理由は、これまでの挑戦国が、これらの 4 条件を満たしていなかったことにあると、モデルスキーはいう。

 これまでに登場した挑戦国は、いずれも国土は広く、人口は大きく、資源も豊富で、GDPは大きかった。しかし、当時の世界大国に比べて島国性に乏しかったし、国内の安定性も「芳しいものではな」く、その影響は、開放的な社会ではなく、「強制された統合や……閉鎖的な大勢を生み出す方向に」働いた。経済面では、挑戦国の「経済運営の実際の記録と技術革新に基づく成長の実績」は、当時の世界大国に比べて概して貧弱であった。さらに、挑戦国は海軍の発展を目指したものの、その「努力の成果はどれも実らなかった」。

結論から言えば、モデルスキー理論に当てはめれば、中国は米国への挑戦者であって次の覇権国に成り得る条件を有していない。

中国は、経済的な台頭とともに軍事的にも台頭し、近年は、海軍力および空軍力の著しい増強と近代化を行っている。

しかしながら、米国のパワー・プロジェクション能力は、依然として中国をはるかにしのいでおり、しかもこのところ米国優位性の維持は高く、能力が逆転するという見通しは、現時点では大きくない。

 しかも、中国が、「島国性」あるいは「半島性」を有したこれまでの世界大国と同様の「余分の安全」と「海上交通路への接近」を確保し得るかどうかには海軍力の構築を図っているが、日本の海自にさえ抑え込まれている。

 また、中国が共産党による一党独裁の政治体制を維持する限り、これまでの世界大国のような社会の安定性と開放性を実現できない。一党独裁の下で情報や教育を統制し、チベット、ウイグル新疆などの分離・独立運動も力によって抑圧するといった社会が、そのような力を発揮できるとは考えにくい。

中国の技術革新には、依然として限界がある。中国社会の閉鎖性やその政治体制に対する不信感があいまって、外国企業も、中国における研究開発や、中国企業との技術協力には及び腰である。こうしたことを考えると、中国が共産党による一党独裁の政治体制を維持する限り、たとえその経済規模が世界一となるとしても、米国をしのぐ主導的経済となることができるかどうかは明らかではない。

 このように、中国は、モデルスキーの挙げる世界大国の 4 条件を現時点では満たしておらず、今後も、現在の政治体制が維持される間は容易には満たすことができないのではないかと考えられる。

トランプ大統領が、挑戦者で国際秩序を荒らす中国を叩くのは、覇権国である米国大統領として当然のことであり、挑戦国中国のトップ習近平が独裁を選択したのは大きな間違いであった。己の力の限界を知らず、個人崇拝と独裁を選択したのは自業自得である。覇権国の挑戦国は、次の覇権国になり得ないのである。米国は中国経済を潰しに本気となった。独裁者は米国への挑戦の失敗の責任を負わされるのである。
習近平の悲劇は独裁者の道を選択したことにあり、同情する余地はまるでないのdらる。

■次の覇権国は?



執筆中