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防衛装備庁技術シンポジウム2018  

戦闘機用エンジン(XF9)の研究進捗状況について
○枝廣美佳*1、山根喜三郎*1、平野篤*1、及部朋紀*1

1.背景及び目的 

将来の戦闘機に、ステルス性、高速性能及び 高運動性を付与するには、機体の抵抗低減のみ ならず大推力とスリムな形状を両立させた戦闘機 用エンジンの搭載が不可欠である。

 本研究は、大推力とスリムを両立させた推力15 トン級の戦闘機用エンジンシステム(プロトタイプ エンジン)の試作を行い、地上での性能実証を行 うものである。 

2.研究の進捗 

防衛装備庁航空装備研究所では将来戦闘機 用エンジンの実現に向けた研究を平成 22 年度よ り行っている。

これまでに「次世代エンジン主要構 成要素の研究」、「戦闘機用エンジン要素に関す る研究」で、エンジンの各種構成要素と、エンジン の核となる高温高圧部構成要素を組み合わせた コアエンジンについて、最新技術を適用した高性 能化に取り組んだ。

これらの成果を踏まえ、「戦闘 機用エンジンシステムに関する研究」では、高性 能な構成要素を最適に組み合わせシステムイン テグレーションした、推力 15 トン級のプロトタイプ エンジン(以下「XF9」という。)を試作し、平成 30 年 6 月末に完成した(図1)。

また、将来戦闘機に 推力偏向ノズル搭載の選択肢を確保するために、 「推力偏向ノズルに関する研究」も現在実施して いるところである。

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図1 戦闘機用エンジン研究の流れ 

XF9 の断面図を図 2 に示す。XF9 は、アフタ バーナ(以下「AB」という。)付きの低バイパス比 ターボファンエンジンであり、当研究所において 研究を行った XF5(推力5トン級)から、大推力化 とともに、最新技術の適用により大幅な性能向上 を図ったものである。

外部から空気を取り込むエ ンジン入口はファン3段、圧縮機6段で構成され、 ファンの単位面積当たりの流量向上と高圧力比 化を図ることで、スリムな形状での大推力エンジン を可能にした。圧縮機は、動翼全段にディスクと ブレードを一体構造とするブリスク構造を適用す るとともに、軸長を短縮することで軽量化を図った。 

燃焼機は新たな燃焼方式である広角スワーラ燃 焼方式を採用し、加えて二重壁複合冷却構造に よる効率的な冷却方式を適用することで、燃焼機 出口温度約 1800℃という世界トップレベルの燃焼 温度を可能にした。

また、将来戦闘機においては、 従来機よりも電力需要が一層高まることを想定し、 小型軽量化を図りつつも大容量の発電が可能と なるよう、新しくスタータ・ジェネレータを搭載した。 

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図2 XF9 断面図 

平成31 年度末にかけて、エンジンの各種性能を取得する 試験を実施する計画である。

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 図3 XF9 の運転状況 

*1航空装備研究所エンジン技術研究部 エンジンシステム研究室 
防衛装備庁技術シンポジウム2018会場で、タービン入口温度1800度、最大推力15トンを達成する試験映像を見た。

ちょうど放映中のTVドラマ下町ロケットのロケットエンジンバルブ開発シーンと重なり胸が熱くなってしまった。

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 アフターバーナー使用の最大推力15トン。さらに2017年には現用各戦闘機用エンジンを上回る摂氏1800度のタービン入口温度(燃焼器出口温度ともいう)を達成していることなどから、日本の航空エンジン技術は、米・英・露と比較しても引けを取らないレベルに達した。

高運動を実現するハイパワー、正面面積の低減によるステルス性向上と機内容積の有効活用可能となるスリムなエンジンであることから、別名 「ハイパースリムエンジン」と呼ばれている。

さらに、将来戦闘機に求められる高出力マイクロ波も照射できるフェイズドアレイアクティブレーダーや、高出力レーザーに十分な電力供給可能な発電能力も兼ね揃えている。

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ここでも説明員の方にいろいろとお話を聞いた。

現在、GoogleでXF-9と検索すると、当ブログの記事
が、1ページ目のwikiの次に掲載されているので、もしかしたら読んでいたのかもしれませんが、私はブロガーで、XF-9エンジンをほぼ世界一のエンジンだと賞賛した記事を書いたところ、IHIの開発関係者と思われる方より、「世界最高ではない、日本は器用貧乏で、自国が一番と言っていると、中国人と同じ。」という投稿を貰ったと言ったところ。

烈火の炎ごとく顔を赤くして、本当にそうか?と聞くので、「自称ですので本当かどうかは正確にはわかりませんが、文章の内容からして・・・おそらく」と、スマホで記事の投稿を見せました。「情けない発言だ」と強く憤っていました。
XF-9はあなたが言うようにほぼ世界一ではなく、現在のところ世界一だと力強く主張されました。

わたしが、ほぼ世界一としたのは、F-35に搭載されているF-135エンジンがタービン入口温度:2000 度(正確には2000ケルヒンですが、私が2000度と誤って思い込んでいました) 最大推力19トン超(191.35kn)ですからねーと言ったところ。

もし、XF-9-1をF-22 ラプターのエンジンF119から、F-35用単発機用エンジンF-135エンジンのようにエンジンの内径を太くして手を加え改造したならば、間違いなく上回ると豪語されていました!


■極超音速エンジン(スクラムジェットエンジン

ATLAではXF-9-1以上に世界を凌駕するエンジンを開発している。
ジェット燃料を用いるスクラムジェットエンジンである。

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国内にはラムジェットエンジンを搭載した超音速空対艦誘導弾(ASM-3)を実用化するなどM-3~M5の超音速巡航をするラムジェットエンジン技術は保有している。

しかし、より高速領域である極々超音速巡航を実現するするためのスクラムジェットエンジンは将来にむけ開発研究は必須である。

また、極超音速エンジンは諸外国が重要視して研究開発を進めている分野であり、日本では先行事業としてJAXAがスクラムジェットエンジンの基礎技術を研究しており一定の成果が得られている。

航空装備研究所とJAXAの研究協力に基づき実施し、極超音速飛行技術に関するデュアルユース技術の積極的に取り込み、耐熱材料技術及び機体形状の設計技術は、民生分野への展開を図ることにより航空宇宙分野への波及効果が見込まれることから、我が国の技術力の強化に資することが見込まれる。

JAXAとの研究協力体制を最大限に活用し、関連・類似技術である宇宙関連技術等に関する知見の活用、また、試験設備を最大限利用することによって、研究リスク及びコスト低減、研究期間の短縮を図ることを防衛省は目論んでいる。

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防衛装備庁は2017年12月に「極超音速飛行に向けた、流体・燃焼の基盤的研究」を宇宙航空研究開発機構(JAXA)と契約しました(*1)。
基礎研究を公募・委託する安全保障技術研究推進制度で採択された課題でJAXAは岡山大学と東海大学を分担研究機関として応募していました。

JAXAは二段式スペースプレーンや極超音速旅客機に向けて極超音速飛行の研究を行っています(*2)。米国の動向では近年ロッキードマーティンやボーイングが極超音機コンセプトを発表しています(*3)(*4)。


(以下 略)

ラムジェットエンジは、M3~5の極超音速領域に適しているが、更に、M4~15の極々超音速領域領域を巡航をするためには、スクラムジェットエンジンの開発が必要となる。ラムジェットエンジンとスクラムジェットエンジンはその動作が根本的に異なるため、ASM-3のエンジンをを改良・改善レベルの範疇では対応不可能である。

ラム(RAM)ジェットエンジンとはターボジェットエンジンのように機械的な圧縮機をつかうことなく、動圧、つまりラム圧により圧縮された空気に燃料を吹き付けて燃焼させて推力を得るエンジンをと呼ぶ。ラムジェットエンジンは超音速気流をラム圧(ram)により圧縮し亜音速まで減速させ、そこに燃料を噴射して燃焼した排気の反動で推進力を得るというものでM3~5程度の速度に適している。
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一方スクラムジェットエンジンは、エンジン内で亜音速まで減速させずに、燃焼を超音速燃焼(Supersonic combustion)を行うラムジェットエンジンである。


スクラム(SCRAM)とはSuper Combustion Ramの略である。スクラムジェットエンジンは燃焼速度の速さが要求されるため燃料には水素が用いられる。ラム(RAM)ジェットより高いマッハ数域M4~15という非常に高いマッハ数で運転することが可能であるで高いエンジン性能が要求される。次世代の宇宙往還機「スペースプレーン」や東京-ワシントン間を2時間で飛行できる極超音速飛行機のための新しい航空宇宙エンジンとして有望視されている。

スクラムジェットエンジンを成立させるための基礎技術について一定の成果が得られている宇宙航空研究開発機構(JAXA)との研究協力体制を最大限に活用し、関連・類似技術である宇宙関連技術等に関する知見の活用、また、試験設備を最大限利用することによって、研究リスク及びコスト低減、研究期間の短縮を図る予定である。

また、本研究では、従来研究されてきた水素燃料によるスクラムジェットエンジンとは異なり、ジェット燃料をエンジン高温部の冷却に用いた後に燃焼器に供給する再生冷却システムを適用したスクラムジェットエンジンによって、極超音速速度領域まで加速・巡航させる推進器技術を確立する予定である。ジェット燃料を用いる為より実用化した際、燃料が容易に入手可能となり運用効率が高くなる。

■極超音速誘導兵器

・新空対艦誘導弾

新空対艦誘導弾(XASM-3)の研究開発成果
○石井崇*

1.開発目的

新空対艦誘導弾(XASM-3)は、80 式空対艦誘導弾(ASM-1)及び 93 式空対艦誘導弾(ASM-2)の後継として、F-2 に装備し、高性能な対空火器が搭載されている敵戦闘艦艇に対して、より効果的な対処を可能とすることを期待され開発された。

2.運用構想及び ASM-3 の概要

ASM-3 は、搭載母機である F-2 が敵の SAM(対空ミサイル)射程もしくはレーダー覆域外から射撃し母機のスタンドオフ性を確保しつつ、遠距離(長射程)であれば高空巡航、近距離(短射程)であれば低空巡航し、目標をシーカでロックオンし、命中、目標艦艇を無力化するとともに、超音速飛しょうにより、ミサイルの被撃墜率を低下させる。

また、敵の電波を識別できる機能を有し、脅威度の高い艦艇を選択して攻撃可能なシステムを有している。(図 1)

図 2 に ASM-3 の概要を示す。固体ロケットモータとラムジェットエンジンを組み合わせた IRR(インテグラル・ロケット・ラムジェットエンジン)を推進装置として搭載し、ラムジェット推進による超音速巡航を実現している。誘導制御装置はアクティブ電波とパッシブ電波の複合誘導方式となっており、高い耐妨害性を有する。弾頭・信管は高速で目標の外壁に命中する際の衝撃に耐え、艦内部で起爆する機能を有するものとなっている。

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図 1 運用構想図

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図 2 ASM-3 の概要

3.性能確認試験の概要

本開発は、平成 22 年度から平成 28 年度まで開発試作、平成 25 年度から平成 29 年度まで技術試験、平成 29 年度に実用試験を実施した。

技術試験では、試作した ASM-3 の性能が設計に適合するか否かについて評価するため、構成品等の細部からシステム全体まで段階的に確認した。

IRR 関連として、固体ロケットの推力を確認するための燃焼試験、作動時間全てにおける安定作動を確認するための全フェーズ試験等を実施した。

複合シーカ関連として、誘導性能、目標識別、耐妨害性等の機能・性能を確認するために野外試験、ECCM(Electric Counter Counter Measure)試験、キャプティブフライト試験等を実施した。

弾頭・信管関連として、鋼板を用いた貫徹試験、箱的や艦型標的(旧「いそゆき」)を用いた静爆試験等を実施し、貫徹性能及び破壊力の確認を実施した。

飛しょう体関連として、搭載する F-2 への影響を確認する母機適合性試験や投下・投棄試験等を行い、総合的な確認として、退役した護衛艦「しらね」を改修した艦型標的(図 3)に対して F-2 から発射を行った。本試験により、実飛しょう環境下において一連のシーケンスが正常に機能することを確認した。発射試験の様子を図 4 に示す。

本発表では発射を中心に試験概要を紹介する。

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図 3 艦型標的(旧「しらね」)

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図 4 発射試験の様子(若狭湾北方臨時射場)

*長官官房装備開発官(統合装備担当)付 第4開発室
・極超音速誘導弾

極超音速エンジン(スクラムジェットエンジン)の研究は、引き継がれ、31年度防衛関係費(概算要求)の主な事業である極超音速誘導弾の要素技術に関する研究(64億円)で予算化された。

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防衛省は、マッハ5以上の速度で飛行し、相手のレーダー網などをくぐり抜ける「極超音速巡航ミサイル」の開発に乗り出した。極超音速誘導弾は、核兵器に代わる次世代兵器とされており、相手のミサイル発射台などをたたく「敵基地攻撃能力」保有を持つ兵器である。
 
極超音速(音速の5倍以上の速度域)で巡航が可能な推進装置の実現のため、超音速の空気流中での燃焼を利用したスクラムジェットエンジンを用いるという。

平成31年度予算では、昨年より予算化された島嶼防衛用高速滑空弾も予算がついており、島嶼防衛用高速滑空弾も大型化すれば極超音速滑空ミサイルに発展することが可能である。極超音速巡航ミサイルも開発するということは、新空対艦誘導弾(ASM-3)に次いで、防衛省は極超音速兵器を新たに2種類研究開発することになる。

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極超音速誘導弾のスクラムジェットエンジンは水素燃料を用いず、ジェット燃料を用いる。ジェット燃料はエンジン高温部の冷却に用いた後に燃焼器に供給する再生冷却システムを採用する。高速度化、長射程化、燃料の入手性等を考慮した運用の容易さ等を実現するための技術だという。

個人的には、極超音速誘導弾を開発するのであれば、構造が簡単なラムジェットにすべきで、なにもより複雑なスクラムジェットエンジンで巡航ミサイルを作ることにどれだけ意味があるのか理解できない。