川崎重工はこのたび、防衛省より陸上自衛隊向けの新多用途ヘリコプター(その1)を受注しました。旧聞となりますが、川崎重工業は3月28日、陸自新多用途ヘリコプター(UHX)の開発を防衛省から受注したと発表した。
なお、「UH-X」は、陸上自衛隊の多用途ヘリコプターUH-1Jの後継として、兵員・物資の輸送等の各種任務に使用される機体です。
今回の開発は、現在、当社にて量産を行っている陸上自衛隊向け観測ヘリコプター「OH-1」を改造母機として考えており、「OH-1」の技術・製造基盤を最大限に活用することにより、開発に関わる技術リスクを低減するとともに、ライフサイクルコストの低減を図ることができます。当社は、これまでに防衛省向けのヘリコプターでは、陸上自衛隊向け観測ヘリコプター「OH-1」の主契約者として国産開発を行うとともに、陸上・航空自衛隊向け輸送ヘリコプター「CH-47」や陸上・海上自衛隊向けヘリコプター「OH-6」など、各種ヘリコプターの豊富な納入実績があります。また、海上自衛隊の掃海・輸送ヘリコプター「MCH-101」の国産製造会社として、現在も納入を行っています。
また民間向けでは、国産初のヘリコプターである「川崎式BK117ヘリコプター」をドイツのMBB社(※)と共同開発し、1983年の初号機納入以来、現在までに消防・防災や警察、報道、ドクターヘリなど各種用途向けに計153機を納入しています。
今回当社がUH-Xを受注したのは、当社の各種ヘリコプターの開発・製造・修理などに関する豊富な実績と技術力・信頼性が高く評価されたものと考えております。
当社は、今回のUH-X受注を機に、同機の開発体制構築を精力的に進めるとともに、今後も防衛省向けおよび民間向けヘリコプター事業に一層注力していきます。
※MBB社(メッサ-シュミット・ベルコウ・ブロウム社)は、現在のECD社(ユーロコプタードイツ社)です。
UHXは技術研究本部が23年度から開発に着手しているUH1多用途ヘリの後継機で、師団・旅団飛行隊、方面ヘリ隊などに配備、陸自の「動的防衛力」の主力装備となる。
UHXは防衛省が総経費279億円を投入して27年度までに試作、29年度まで技術・実用試験を実施、その後、量産に移り、UH-1Jの後継機として120機程度導入する事を検討中である。調達価格は、UH-1Jと同等以下で140機生産の場合1機約10億円を見込んでいる。
OH-1観測ヘリコプター
諸元
全長 全幅 全高 最高速度 航続距離13.4m |
11.6m |
3.8m |
270km/h |
550km |
川崎重工業は、同社が開発したOH1観測ヘリをUHXの改造母機とし、タンデム複座の機体を大型化してキャビンを設置することで同規模の競合機に相当する機能を持たせる。885軸馬力(shp)の三菱TS1-10エンジンを、技術研究本部が2006年(平成18年)度から2011年(平成23年)まで「ヘリコプター用エンジンの研究」で開発中の1,300shpの新エンジン「XTS2」へ換装する。ローターハブとトランスミッションの改良、ローターブレードの防錆処理の強化、アビオニクスを換装して操縦系統を改善する。装備品や補用品を共通化することで操縦士と整備士のスキルアップの効率化するというものである。
これによりUH1では難しかった洋上長距離飛行も可能となり、島嶼防衛のような離島の作戦でも中心的な役割を果たすことができる。
川崎重工業は、これまで蓄積した同機の技術・製造基盤を活用、開発に当たっては技術リスクを抑えると同時に機体のライフサイクルコストの低減を実現させたいとしている。
技本によるとUHXは重量約5トンで、最高速度140ノット(約260キロ)以上、行動半径230キロ以上で、各種作戦、災害派遣活動、国際平和維持活動などに活用できる機体を目指す。
【ロンドン共同】キャメロン英首相は9日、10日の初訪日を前に共同通信の書面インタビューに答え、日本との武器(防衛装備品)の共同開発について「ヘリコプターなど多くの防衛分野で協力できる」と述べた。欧州連合(EU)と日本の経済連携協定(EPA)について、年内の交渉入りも求めた。
キャメロン氏は今回の訪日で野田佳彦首相と会談、武器の共同開発に大枠合意する見通し。開発の方法や対象の詳細は決まっていないが、装備名を具体的に挙げることで、今後の協議に弾みをつける狙いがあるとみられる。
日本政府は昨年12月、武器輸出三原則の緩和を表明しており、英国との武器開発は日本が米国以外の国と組む初のケースとなる。
2012/04/10 11:30 【共同通信】
3月28日のUH-X川崎重工受注の発表は既にキャメロンイギリス首相と共同声明の打ち合わせが出来上がっている段階での発表だ。
共同開発されるヘリの可能性としては対潜哨戒へりSH60-Jを拡大改良したSH-60Kの後継機も考えられるが、最も喫緊な案件は攻撃ヘリAH64Dロングボウアパッチ・ブロックⅡの後継機問題だろう。
イギリスが日本との共同開発を目指しているのはこのUH-Xではなく、1機220億円と高額すぎて13機で調達を打ち切ったAH-64Dアパッチの後継機ではないだろうか?もし、日英共同開発がこのUH-Xであったのならキャメロン首相の来日直前に川崎重工にUH-Xを正式発注のニュースを流さないはずだ。
イギリスはF4EJに代わる日本のFX選定で、F-22ラプターを米国が日本に輸出しないと決定した後、ユーロファイター・タイフーンを導入するよう官民総力をあげ日本に対し売り込みを図ってきた。日本も米国がその気なら非米国製戦闘機を導入するぞと、F-22との交渉の駆け引きも兼ね、タイフーン導入に前向きであった。私はユーロファイタータイフーンの方がFXとしてふさわしいと考えたが、多くの専門家も同じ意見で、タイフーンに導入に期待していた。だが、ルーピー鳩山が引っ掻き回した沖縄問題で悪化した日米関係の修復を考慮してFXはF-35を選定した経緯がある。
AH-64Dアパッチの後継機 については、防衛省は現在のところまだ正式な候補機を挙げていない。現在までに海兵隊のAH-1の最新型AH-1Z バイパー、調達を中止したAH-64ブロックⅡの生産型のAH-64D ブロックⅢ、OH-1の重武装化改修型、独仏が共同開発したティーガーなどが有力候補として噂されている。
川崎重工はAH-1S後継機(AH-X)選定の際にOH-1重武装化改修案を提示していた経緯がある。UH-X開発と同時並行で、AH-64D後継機をイギリスと共同開発するのではないだろうか?日本の国産防衛用航空機開発は米国からの度重なる干渉との戦いの歴史でもある。
かつて、P3Cを導入する前に国産の対潜哨戒機の開発を目指したがロッキード事件で明らかになったように、P3Cを買わされ。FSX(F-2)問題も米国に潰された経緯がある。今回英国との共同開発も、水面下で秘密裏に行われていると私は想像しています。AH-64DブロックⅡが生産を中止するというので日本がこれ幸いに調達を止めるというのは、官僚体質の防衛省が決断するほは不自然極まりないと感じていました。調達中止を決定する前より日英での折衝が始っていたと私は推測します。そしてOH-1重武装化改修機AOH-1もしくはAH-2の実現は予想以上に早いかもしれません。
AH-1Z Viper
AH-64D ブロックⅢ
ティーガー
AH64D後継機がOH-1の武装強化に決定した場合主契約者は川崎重工となり、富士重工は踏んだり蹴ったりとなってしまいます。
富士重工が防衛省に「反乱」 防衛産業再編の引き金を引くか 【清谷防衛経済研究所】2009/09/02
戦闘ヘリ発注中止「500億円払え」 富士重工、請求へ 2009年9月2日3時0分
http://www.asahi.com/politics/update/0902/TKY200909010460.html
10年度の概算要求でも防衛省がアパッチの予算計上を見送ったため、富士重は「今後の受注が復活することはない」と判断。未回収のライセンス料約400億円に加え、すでにボーイング社から購入した3機分の部品代金100億円弱も請求する。
だ、そうです。
陸幕は攻撃ヘリ、アパッチを62機調達するから、と富士重工にライセンス生産させておいて、気が変わったからと、10機で調達を打ち切ったわけです。
で、本来残りの52機の価格に含まれるはずのラインの償却費やらライセンス料やらを払ってくれといったところ、「そんなの関係ねえ」と断られたわけです。
そこで改めあたらめて防衛省に費用分を払え、払わないと訴訟を起こすぞと詰め寄っているわけです。
もっとも昨年から富士重工が防衛省を訴えるという話は聞いていました。
ところが他の国と違って機数、調達期間、予算総額を決めて契約しないので、裁判起こしても負けるだろうというので迷っていたらしいです。
つまりこんなビッグビジネスを、官と業界は馴れ合いの口約束でやっていたことになります。
ですが、このままラインを遊ばせておいてもそれには資産として課税の対象になりますし、経営者は株主から形成責任を追及されて訴訟を起こされかねません
名機戦闘機「隼」などを生み出した中島飛行機の流れをくむ富士重工は、防衛産業からの撤退を決意し防衛省を訴えたのだと思う。 富士重工のHPを閲覧するとよくわかります。富士重工の、航空宇宙産業(航空宇宙カンパニー )のページに簡単にたどり着けない。 企業としてもはやビジネスにならないと判断したのだと思います。
現在富士重工が手がけているのは、海自初等練習機「T-5」、空自初等練習機「T-7」(いずれもプロペラ機)、空自飛行点検機/救難捜索機「U-125/U-125A」(ジェット機)で、民間航空部門と共有できるものばかりである。
防衛産業としてのドル箱であった回転翼機、「UH-1J」と「AH-64D」の生産が終れば事実上撤退状態でもある。
ただし、富士重工の名誉の為に補足しますが、航空機の名門中島飛行機のDNAは決して無くなったわけではありません。
現在日本において無人機技術は富士重工がNo1である。FXの次の第六世代の戦闘機は無人と有人戦闘機のハイブリッド化が予測され、日本の防衛産業において富士重工が撤退するのは大きな損失であると思います。
富士重工はまた、JAXAと共同で極超音速機の研究の研究にも参入しています。太平洋を2時間で横断できる極超音速旅客機のシステム検討を進めています。また、マッハ5で飛行するために必要な空力技術、耐熱技術、推進技術などの要素技術に関する先行研究を進めています。さらに、その技術は宇宙輸送機へと発展する技術と期待されています。