麻生財務相が海外の円安批判に反論、「筋としておかしい」
[東京 28日 ロイター] 麻生太郎財務相は28日午前の臨時閣議後の会見で、最近の円安は極端な円高が修正される過程だとして、海外当局関係者の円安批判は「筋としておかしい」と反論した。ギリシャ危機にあおられてユーロ安の恩恵を大いに受けていたドイツや、断続的な為替介入でウォン相場の低位安定を図っていた韓国に、最近の円相場の動きを批判する資格があるとは考え難い。少なくとも今の日本は為替介入をしているわけではない。
<円安は付随的な結果>
財務相は、これまで日本が国際通貨基金(IMF)などを通じて欧州救済に向けた資金拠出を続けてきたことに触れ、「日本はやるべき時にちゃんとやっている」と主張。最近の円安は「デフレ不況からの脱却が優先順位の一番であって、円が結果として安くなっているというのは、付随的に起きている話」だと位置付けた。
さらに、リーマン・ショック前後に対ドルで100円付近だった円相場が、その後75円付近まで上昇する間、ドルやユーロが下落したことに対して日本は「ひとことも文句を言わなかった」とし、「たかだかそれが、10円か15円戻したのを、いちゃいちゃ(批判を)言ってくるのは、筋としておかしい。直接聞かれたら言う」と退けた。円安は「極端に円高に振れていた、行き過ぎていた円高が修正されつつある」動きだとあらためて述べた。
<日銀の金融緩和のみでは市中にお金が出回らない>
政府がこの日の臨時閣議で了解した経済見通しに関しては「世界経済の下振れリスク懸念が以前より薄らでいる」ことや、緊急経済対策の実行などを通じて「現実のものになってくる」との見通しを示した。
政府の2013年度経済見通しは、実質成長率見通しがプラス2.5%。消費者物価指数(総合)がプラス0.5%と5年ぶりに上昇に転じ、国内総生産(GDP)デフレータもプラス圏に浮上することで、物価変動を含む名目成長率はプラス2.7%と16年ぶりに実質成長率を上回る見通し。
財務相は来年度の2.5%成長について「状況としては、可能性を高めてきている外部的な要素もある。こうした見方を反映した」と説明。「まずは緊急経済対策を速やかに実施するところから始めないといけない」とした上で「いくら日銀の金融が緩和されても、実需がなければ、市中にお金が出回ることはない」とも述べ、成長戦略が必要との認識を重ねて示した。
<通常国会、最大の課題は補正と来年度予算>
きょう召集の通常国会では、安倍政権の課題として「極めて停滞していた経済、不況からいかに脱却し、成長軌道に乗せるかが一番大きい」として、今年度補正予算案や来年度予算案を「1日も早く実行せしめて、結果として、景気が回復していく実感を国民に持ってもらう。日本が再び元気を取り戻せる状況となるには、これにかかっている。一番大きな問題はこの一点」と述べた。
来年度予算の政府案で、一般会計総額が92兆6100億円と過去最大規模へ膨らむことには「(これまでの予算で)公債発行額が税収より大きかったのが、逆転できて収まったところが、やっと少し一歩、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の話(赤字削減目標)に対して近づいたかな、との感じがある。予算編成をやったものとしては、そちらのほうが大きい」と回答。「この(国債発行額と税収が)逆転できるかと、1月末までに(編成が)できるかが、正直私の最大の関心だった。その点は一応よかった」と表明した。
<世論調査、予算編成のスピード感評価か>
報道各社が週末に実施した世論調査で、安倍政権が60%を超える高い支持率を得たことには「景気対策が優先順位の一丁目一番と思っていた。安倍内閣で補正、続けて本予算と、経済対策に絞って集中的に、かなりスピード感を持ってやってこられたことが、支持率が上がっている状況になっているのではないか」と分析した。
(ロイターニュース 基太村真司;編集 宮崎亜巳)
リーマンショック後、円の実質実効為替レート水準はウォンより4割程度高いイメージだ。為替を主たる背景として日本の輸出企業が窮地に追い込まれたことは想像に難くない。
1月24日に発表された12年貿易収支で改めて確認されたように、日本はもはや巨大な貿易赤字国であり、通貨が安くなること自体に十分な道理はある。そもそも政治要因が浮上する昨年11月以前から、日米金利差が無くても円安は進んでおり、その背景には需給構造が円売りに傾斜しつつあるという事実があった。
また、需給のみならず、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の置かれた状況に鑑みれば、円安基調が根付くために必要な日米金利差は今後1―2年以内に動き出す芽も出始めている。そう考えると、円相場は放って置いても緩やかに軟化する筋合いにありそうである。
政財界の要人が言及する「90円」の節目に達したのを機に、露骨な金融緩和策や踏み込んだ高官発言で海外勢を刺激し、国内政策の変更を強いられないよう、「巧い立ち回り」を考える時期に差し掛かっているのかもしれない。
麻生太郎副総理・財務金融相は、「平成の高橋是清」を目指しているのだろうか---。一般会計の総額が92兆6,115億円に達する2013年度政府予算案は、1月29日の臨時閣議で承認された。翌日30日の『読売新聞』(朝刊)に目を通した麻生氏はほくそ笑んだに違いない。なぜか。2月15~16日にモスクワで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議では日本がとっている政策について、ロシア側はG20の主要な議題にはならないと言明。現時点で財務次官級会合で取り上げる予定はまったくないとしています。
同紙本社グループ会長兼主筆の「ナベツネ」こと渡邉恒雄氏が主宰する夕食会「山里会」は、時の権力者をはじめ有力政治家をゲストとして招くことから永田町で知らぬ者はいない。
渡邉氏が心を許す大手メディア出身の評論家を中心に構成される同会の歴史は古い。故人で言えば、『東京タイムズ』出身の早坂茂三、『毎日新聞』OBの三宅久之氏らもメンバーだった。現在のメンバーは、『毎日』特別編集委員の岩見隆夫、時事通信社出身の屋山太郎、『読売』特別編集委員の橋本五郎各氏の他、現役のシニアクラスも参加している。
その山里会に麻生氏が招かれたのは、政府予算案の閣議決定が行われた数日前のことだった。ところが、渡邉氏はその席に『読売』の政治部長を同道してきたのである。そして件の政治部長に「麻生さんの言っておられることをよく聞くように」と命じたという。従って、同紙の論調がアベノミクス(安倍政権の経済政策)はもとより、政権交代後初めての新年度予算編成の中身に"好意的"となったのは自然の成り行きである。
三面トップの横大見出し「安倍流 苦心の編成―重点分野"民主と違う"」や二面の縦見出し「身近な施策も配慮」、さらに「デフレ脱却へ問われる積極策―中長期の財政健全化を怠るな」と題した社説も安倍予算に肯定的であった。だから麻生氏はニンマリとなったのだろう。
■高橋是清と同じコースを歩む麻生氏
ここで本題に入る。では、なぜ、麻生氏が高橋是清元首相を意識しているのか、である。1921年(大正10年)11月4日、原敬首相が東京駅で刺殺された。与党・政友会総裁の座に就いた高橋が後継首班に指名されたのは同13日。が、ワシントン軍縮会議条約調印・内閣改造失敗などで高橋内閣は7ヵ月の短命に終わる。
その高橋が再び表舞台に登場したのは犬養毅内閣が発足した1931年12月。ほぼ10年後のことだ。蔵相に就任した高橋は内閣発足当日に、浜口雄幸民政党内閣の井上準之助蔵相が決定した金本位制復帰を覆した。そして犬養は翌年1月に衆院解散を断行、不況脱出と景気回復をシングルイシューにした衆院選で少数与党の政友会に大勝をもらした。
高橋が行なった金輸出再禁止決定と積極財政が奏功したのだ。そこで登場するのが、当時の深井英五日本銀行副総裁である(後に総裁)。私大出身の国際派である深井は、自分の後継人であった高橋に積極財政を要請したのだ。来年からの無制限金融緩和と物価目標2%を盛り込んだ1月22日の政府・日銀の「共同声明」を想起させる。
ところで、坂野潤治東大名誉教授の名著『日本近代史』(ちくま新書)に次のような件がある。
〈 経済政策を唯一の争点とする選挙戦が功を奏するには、よほど特別な状況が必要であるが、1932年初頭にはその特別な状況が存在していた。世界大恐慌の下で金本位制に復帰した井上財政によって、不景気は都市部でも農村部でも深刻化し、失業者は街にあふれていた---。 〉
何やらデフレ不況に苦しむ昨年12月の総選挙が想起されるが、アベノミクスの喧伝によって株高・円安が実現して自民党大勝・第2次安倍内閣誕生の結果となったことだ。首相経験者である麻生氏が同内閣の副総理・財務金融相に就いたのは、まさに高橋是清と同じコースを歩んでいると言っていいだろう。
その麻生氏が次期日銀総裁人事のキーマンと言われている。同氏が武藤敏郎大和総研理事長(元財務事務次官・66年旧大蔵省入省)を推し、菅義偉官房長官は岩田一政日本経済研究センター理事長を推し、閣内に対立があると喧伝されている。だが、麻生氏は先述の「共同声明」発表にこぎつけたことで、みんなの党(渡辺喜美代表)が財務省、特に主計畑出身者の総裁指名に強く反対していることもあり、「武藤総裁」には拘っていないという。
では、誰が有力なのか。2月15日からモスクワで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議までに決定されるが、筆者の得ている情報では、渡辺博史国際銀行副総裁・CEO(元財務官・72年)が急浮上しているというのだ。国際性(英語力)と市場とのコミュニケーション力を求める麻生氏の条件に最適任である。決定はもちろん、安倍首相が行なう