Ddogのプログレッシブな日々@ライブドアブログ

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2014年11月


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2014年11月10日 俳優 高倉健さんがお亡くなりました、83歳でした。俳優 高倉健、本名小田剛一さんは最後まで名優 高倉健を演じ続けました。

高倉健さんが亡くなってNHKスペシャル 高倉健という生き方~最後の密着映像100時間~という追悼番組が放送されました。報道ステーションの追悼特集で取り扱われた左翼史観による歪んだ高倉健像と異なり、愚直な日本男児を演じ続け日本人を愛し続けた、高倉健がそこにいました。

これは2012年9月8日放送「プロフェッショナル 仕事の流儀」を再編集したものです。上記のリンクは直ぐに切れると思います。リンクが着れる前にFC-2動画クリックしてご視聴ください。 切れた後は下のYouTubeで「プロフェッショナル 仕事の流儀」を視聴してください。

抜粋・文字興しby Ddog
――銀幕の中に生きることにこだわり素顔を見せることがほとんどなかった高倉さん 
1:11これから何十年も生きてるわけじゃないんだから 本音の話をちょっと そろそろしておかないと                                      ――― (略)                                          1:51 結局だから 映画が何なのかよくわからない (俳優人生が)始めるときは 生きる為にやっていたんですけどね  良い俳優になりたいとおもったからだろうね。たぶんギャラじゃないよね、それは、そこには来たような気がするね。 

――胸に秘めてきた覚悟の言葉が語られました

――かなり感情がたかぶられているようですが
2:45 まいった

――自ら語った孤高の生き方、名優心の軌跡です                    
高倉健という生き方 ~最後の密着映像100時間~
 
――残された時間についての記者の質問に                        
4:30 ある年齢になると考えだすよね 両親と別れたりさ、いろんな人と別れるじゃないの、そういうのが重なると人の命というのは どう努力したって 限りがあるっていうことを 意識するようになるよね。  

――幼少期生まれ育った九州の炭鉱町で気性が激しい人達にもまれて育った  
8:08 1年に何回も死体を見ましたよ 学校に行くとき けんかで 昨日ここでけんかがあったて ムシロかけられてね。盆踊りとか夏になると必ず1回や2回は死体を見たね。

10:10 米軍の落下傘が開かなくて落ちた死体とか たくさんみましたよ 落ちたところへ消防団より おれ達ガキのほうが勝手知ったる山だから 速かったしね 

なまなましい死体だよ おちたばっかりだもん 死骸を見ても怖くない 今考えればすっさまじいことですよね。 

17:30 ぼくはね ものすごく気が短いんですよ 実は非常に激しい NHKで言うことじゃないですけどね 今までにありましたよ「この野郎 殺してやろうかな」と思うこと 何回もありますよそういうことは だからああいう役をやるんでしょうね やったらお袋が悲しむんですよ 刺青やったりするのね・・・ 僕の中にはとってもあるんです あの血が 血ですねそれは よく今まで罪犯さないでここまで来たなと思いますよ 

――役作りの為に過酷な筋力トレーニングにも取り組みました。任侠映画シリーズは高倉さんをトップスターに押し上げた、毎日朝方まで行われる撮影、それが何年も続くと 高倉さんは心をすり減らしていきます。

20:11 俳優が何だかなんだかわからなくときだったんでしょうね 毎朝遅れてさ 1時くらいしかでないけど9時でだしとけ ・・・って。朝は来ない来てもセリフがロレロレで喋れない そういうのが何年も続き、だんだんなーなーになってくる
まともにやったら体が持たない・・やっぱ自分の体を守る為の防衛本能なのね 理屈を言えばだけど 

――かわいがられていた俳優小林念侍さんは、当時高倉健さんが 失踪騒ぎをおこしたことを明かしました。ポルシェに乗って銭湯に行く途中の助監督を乗っけ3ヶ月旅にでちゃったんですよ・・・それはすごいストレス解消法でしたよ・・・・最高に煮詰まっていたんだろうね。

――そんなある日 高倉さんは映画館に足をはこびます 上映されていたのは自らの主演映画 その客席の様子に衝撃をうけました。                  
22:30 通路も全部(観客が)座っているんだよ ドアが開いちゃって閉らないという 何回か劇場見に行ってね これ何なのかって 思ったことがあるよ わかりません 僕には 何でこんなに熱狂するのかなというのは 明らかに(観客は)観終わったあと 人が違っているものね 

――疲れ果て全力で演じてない自分に 夢中になってくれている人達 湧き上がってくる思いがありました いったい俺は何をやっているのだろう  俳優となって21年目45歳の時 高倉さんは大きな決断をしました。映画会社を辞め独立したのです。       
――敢えて厳しい道を選ばれていますか?                        
23:55 いやー・・・選んだんだね・・・やるって言ったから・・・それは運命ということでしょうね。やっぱり同じパターンのやくざ者ばかり何十本もやってても、それはやっぱ自分が変われないなぁと思って、志願して出てったんだけど・・・それは行った人しかわからない・・・・やっぱり何かそれは良い俳優になりたいと思ったからだね・・・

―― 一本の映画の出演の依頼が着ました、八甲田山、旧陸軍の遭難事故を描いた超大作、舞台は零下30度の冬山、そこで3年にわたる過酷な撮影前代未聞の撮影でした、この映画に高倉さんは俳優人生を掛け臨みました。猛烈な吹雪の中、高倉さんはじめ多くが凍傷になりました。

25:45 それはつらいよね あの雪の中で 体どんどん痩せていくしね じっとしているだけで痩せるんだよね 寒いって 

――3年におよぶ撮影の間 高倉さんは他の仕事をすべて断りました。経済的に苦しくなり次々と財産を処分し現金にかえました。

27:21いまでも覚えているけど 初めて買ったマンションね それからベンツのSL
SLも覚えてるねー・・・・二人乗りの・・・ 売り食いしたんだよ・・・CMもやっていない 何もやらない あれだけにかかりきりでやったから 

――高倉さんは心からやりたいと思える役だけを選び 全身全霊で挑んでいきます不器用だけれど 己の本分を全うしようと 懸命に生きる男を演じ続けました  
31:15笑うとか 泣くとか 怒るとか 刺青入れて 人を斬るとか 芝居には色々あるんだけど こういう人生もあって みなさんどう思いますかという こういう生き方も 悪くないんじゃないですか ということをちょこっと見せたいとかね その人の人生体験と言うか それが俳優さんの価値なんでしょうね 一番勉強されているのは 俺かもしれないね こういうのが良い人間だよということだよと お金もらいながら 教わってきたのかもわからないね 

――しだいに高倉さんは自らに向け一つの問をつきつけるようになります 自分はその役にふさわしい生き方をしているだろうか?

32:32 本人の生き方かな 生き方がやっぱり 出るんでしょうね テクニックではないですよね 柔軟体操も毎日いいトレーニングでやるとやわらかくなる あと本読んで勉強すればある程度の知恵もつくよね ああ、そういう 生き方っていうのは・・・
たぶん一番出るのもその人の・・・普段の生き方じゃないですかね- やー偉そうなこというようですけれど 

――懸命に生きてる人を演じる為には 自らも懸命に生きてはいなければならない
誰よりも映画に打ち込んでいなければならない 高倉さんは最愛の母が危篤になった時も誰にも言わず 撮影を続けました 

34:00 えーでも いま考えたらね 肉親の葬式誰も行ってませんよ それは結構自分に架してる おれはそれで撮影中止にしてもらったことはないよという 俺の中ではそれは あの プライドですね えー言ったら当然中止にしますって・・・3日間4日間中止にしますって なったと思うけど 一度も行ったことが無い 一回もないですね それはどこかで 俺はプロですよと思っていますよ

――苦しいと思われやってこられた?

34:44それは 捨てているもんだと思いますよ 別に捨てなくって やろうと思えばできるんだもんね

――映画の為に多くのものを捨てました 40歳で離婚してからは 家庭的な温かささえ遠ざけ その後独身を貫きました 生きていることは切なく 生きていることは愛おしい 高倉さんはすべてを背負って カメラの前に立ち続けます
演技には生き方が出ると自らを律してきた40年 やわらかい笑顔の向こうに どれだけの日々があったのでしょうか?

――50年以上俳優をやってきて長かったですか?
46:15まあ長かった・・たらながいしね あっというまといえばあっというまだしね

――背負われてきたものは?
46:33まあ無いよそんなもの 

――今の夢は?
46:47夢?なんだろね・・・いろんな国の人と映画を撮りたい。日本だけじゃなくてね それはなんというか強烈な・・・なんというかね 私が出てると日本人だよね そういう俳優になりたい 僕は中国人やりたいとか えーベトナム人になりたいとか思ったことが無い。どんなに舞台が何とかと言われても 何の興味も感じない 
日本人しかやりたくないと思っているから   
映画はかなわないですよ それ以外のピッピッピと刺激するもの 終り 

――高倉健と言う俳優が居ました 信じた生き方を愚直なまでに貫き通した人生でした

このドキュメンタリーを見て驚いたのは、高倉健さんの日常が私の想像していたよりもストイック。プロ中のプロ。現場では座らないで立っている。体を鍛える。ウォーキングを欠かさない。食べ物に気を遣う。酒・タバコはいっさいやらない。それでいて、ロケ現場に見学にきた人たちや撮影スタッフには、限りなく気を遣う。自分には厳しく、他人には優しい。

このドキュメンタリーを見るかぎり、カメラで撮影している間、いつでもどこでも高倉健なのだと・・・・。映画であろうが、密着ドキュメンタリーであろうが、高倉健さんは高倉健さんを演じているかもしえない。いや高倉健さんもやはり生涯、高倉健を演じていたのではないかと思います。それがプロの流儀だと思っていたからこそ、プライベートは明かさず、テレビにもほとんど出演しなかったのかもしれません。


俳優・高倉健さんの訃報が公表され、メディアは連日その死を悼む声を伝えている。高倉さんを30年取材したライターが、その知られざる素顔を明かした。

「本人の生き方が必ず芝居に出るんですよ」
 
 11月10日、悪性リンパ腫のため83歳で亡くなった高倉健さんは口癖のように語っていた。もともと食うために始めた俳優業だった。だが、「悔いなき人生」にこだわり、役になりきり人々を魅了した。出演作205本の大半で、「前科者」、社会の底辺を生きる人々を演じた。

「僕がいちばん大切に思うのは心ある人としての生き方、一つのことを貫く生き方。そういう人間は少なからず孤独な作業に命をさらしている。その状況で揉まれに揉まれ悶え苦しんだ者だけがやさしくてしなやかな心を持つことができる」(「アサヒグラフ」1994年8月5日号)

 ライターとして30年近く取材した谷充代さんは、そんな高倉さんの素顔を見た一人である。その顔は世の中で言われる「寡黙で不器用な男」とは違った。

「高倉さんの一番の趣味はおしゃべりだったと思います。気の置けない人との会話が大好きで、夜型のため、話し始めると、周りを寝かせてくれませんでした」

 人を笑わせるのも好きで、ユーモアのセンスがあった。一度縁を結ぶと、何年たっても冠婚葬祭では贈り物や便りを届けた。その優しさと気づかいの陰には高倉さんの深い孤独があったのではないかと谷さんは見る。

「寂しがり屋で、心を通じ合っていたいというメッセージだと思います。心の奥深いところに埋められない穴があったのではないでしょうか。以前、健さんが愛する人たちを喪(うしな)った悲しみを語ってくれたことがあります」

 高倉さんは、最愛の母が亡くなったとき、撮影中で葬儀にも行けなかった。いつも旅先には鞄に母の写真を忍ばせ、部屋の一番いい場所に飾り、花を手向けたという。

 自宅の全焼、江利チエミさんとの離婚と、「かけがえのないものが一瞬にして消え去る」体験もした。再婚はしなかった。

「情が深い人だったから、人に情をかけると際限なくなるので、自分をあえてストイックな状態に置いたのではないか。まるで修行僧のようでした」

去る11月10日に亡くなっていたことが明らかとなった俳優・高倉健さんを巡る報道について、テレビ朝日系で放送された『報道ステーション』の内容が、あまりに酷すぎると物議を醸している。

これは高倉さんの一斉に死が報じられた、同番組11月18日夜の放送分で、その中で、高倉さんが活躍した時代をなぞるように、「戦後の日本の映像」として学生運動の映像を流したり、当時、こうした運動に参加していた人を「街の声」としてレポートし、その男性から「たった一人の男の思いが時代の革命のエネルギーになっていくのかなという話をしてた」というコメントをピックアップ、高倉さんの功績に関する紹介や死を悼む声とは懸け離れた「別の内容」を紹介していた。そのため、放送直後からネット上では「こじつけだ」「全共闘を美化してやがる」「BPOの審議にかけるべき」といった批判が噴出している。

多くの視聴者が指摘するように、高倉さんが生前に全共闘世代の活動家たちを礼賛した事実はなく、強いて言えば、高倉さんの主演で大ヒットとなった映画の公開時期と、学生運動が盛んであった時期が近かったという程度という接点に過ぎない。同番組に対する批判が相次ぐ中、果たして局側がどのような対応を行うのか、注目されるところだ。

文・葛西敦規  
全共闘を美化した左翼も、反日中国においても高倉健さんは愛されていたようです。もっとも江沢民が反日教育をする前の日中関係は熱烈友好の時代でしたから・・・1979年に中国で公開された高倉健さん主演映画君よ憤怒の河を渉れ』が時代を代表する映画となったようで、あの中国人ですら高倉健さんの魅力に魅せられたようです。

中国人も熱狂、高倉健さんの「生きる流儀」
「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見て思う

佐藤 智恵 :作家・コンサルタント  【東洋経済】2014年11月27日

中国で異例の報道
高倉健さんの逝去のニュースを受けて、筆者は海外がどんな反応をするかに注目していました。高倉さんは、『ブラック・レイン』(1989年公開)など、ハリウッドのヒット映画にも出演していたにもかかわらず、欧米メディアはほとんど放送しませんでした。

対照的に大々的に報じたのは中国です。中国では18日夜、国営の中央テレビが、25分間にわたって高倉さんを惜しむ特集を放送。これには驚きました。普段は日本のことを批判してばかりいる放送局が、高倉さんを大々的にたたえたのです。

その後も、外務省が哀悼の意を示したり、共産党系の新聞が追悼記事を掲載したりなど、異例の対応が続いています。そして、よく反日デモの参加者からペンキや卵を投げつけられていた、あの北京の日本大使館に、今、ファンから花が届けられています。

高倉さんは、近年、海外の映画人と映画を制作することに取り組んでいました。NHKのインタビューでも、「いろんな国の人と映画を撮りたい。日本だけじゃなくてね」と夢を語っていました。そうした中で、チャン・イーモウ監督の『単騎、千里を走る。』(2006年日本公開)に出演しました。

しかし、中国人にとって、高倉さんといえば、何と言っても映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年)です。この映画は、「文化大革命」(1966~1976年)後に中国で初めて公開された外国映画。無実の罪を着せられながらも、真実を追求していく検事を演じ、中国の民衆から圧倒的な支持を受けました。高倉さんは自由の象徴であり、あこがれでした。プロフェッショナルの仕事は国境を超えるのだと、今回の中国での報道を見て思いました。

唐獅子牡丹 全歌詞 作詞・作曲:水城一狼・矢野 亮、唄:高倉健
一.
義理と人情を 秤(はかり)にかけりゃ
義理が重たい 男の世界
幼なじみの 観音様にゃ
俺の心は お見通し
背中(せな)で 吠えてる
唐獅子牡丹(からじしぼたん)

二. 
親の意見を 承知ですねて
曲がりくねった 六区の風よ
つもり重ねた 不孝のかずを
なんと詫びよか おふくろに
背中で泣いてる 唐獅子牡丹

三.
おぼろ月でも 隅田の水に
昔ながらの 濁らぬ光
やがて夜明けの 来るそれまでは
意地でささえる 夢一つ
背中で呼んでる 唐獅子牡丹

四.
エンコ生まれの 浅草育ち
やくざ風情と 言われていても
ドスが怖くて 渡世はできぬ
ショバが命の 男伊達
背中(せな)で吠えてる 唐獅子牡丹

五.
白を黒だと 言わせることも
しょせん畳じゃ 死ねないことも
百も承知の やくざな稼業
何で今さら 悔いはない
ろくでなしよと 夜風が笑う

六.
親にもらった 大事な肌を
入墨(すみ)で汚して 白刃の下で
積もり重ねた 不幸の数を
何と詫びよか おふくろに
背中(せな)で泣いてる 唐獅子牡丹

七.
流れ流れの 旅寝の空で
義理にからんだ 白刃の喧嘩(でいり)
馬鹿な奴だと 笑ってみても
胸に刻んだ 面影が
忘れられよか 唐獅子牡丹

昭和38年生まれの私にとって任侠映画、網走番外地の任侠を演じた高倉健より、昭和52年の八甲田山、幸せの黄色いハンカチ、昭和53年の野生の証明以降の過去の影を背負った愚直な男を演じた高倉健のイメージがつよい。









①高倉健 プロフェッショナル仕事の流儀 2012 追悼 のコピー







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うんりゅう 海上自衛隊ギャラリーより
[東京 27日 ロイター] - 防衛省は、軍事装備品の輸出を後押しする新しい資金援助制度の創設に向けた検討に入る。武器を日本から調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本企業などを金融面で支援。政府開発援助(ODA)では扱えない相手国の軍事力向上に協力できる体制を整える。

日本との安全保障関係を強化することが狙いだが、世論の反発など実現には紆余曲折が予想される。

<16年度予算に反映>

防衛省は、有識者による研究会を12月中旬にも立ち上げる方向で調整している。輸出案件の発掘から相手国や競合国との交渉、輸出に当たっての資金援助、修繕・管理まで、「輸出を促進するためのすべての問題を議論する」(関係者)という。

研究会には安保政策や武器輸出に詳しい有識者のほか、金融や法律の専門家、防衛産業の関係者などに参加を打診した。複数の関係者によると、2016年度の予算要求に具体的な施策を盛り込めるよう、来夏までに提言をまとめる予定だという。

制度の本格的な検討はこれからだが、政府内では独立行政法人や特殊会社を通じて財政投融資を資金援助に使う案などが浮上している。途上国が日本から武器を購入する際に有償・無償で援助をしたり、相手国の産業振興につながる共同開発・生産に参画する日本の装備メーカーに、低利融資を提供することなどを想定している。

また、輸出した武器を使いこなす訓練や修繕・管理の支援に、退役自衛官などの人材を派遣する機能を付加することも議論されている。

「ファンド機能と実行部隊。国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)をミックスしたようなイメージだ」と、関係者は話す。既存の政府系機関を活用する以外に、新組織を設立する必要性も、研究会の議論に上る可能性がある。

<シャングリラの公約>

日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出を許可する防衛装備移転三原則を導入した。5月の東アジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演した安倍晋三首相は、南シナ海をめぐって中国と緊張状態にある東南アジア諸国連合(ASEAN)の海洋安全保障を支援することを約束した。

しかし、それ以降に決まったASEAN向けの協力は、ODAを使ってベトナムの海上警察、漁業監視部隊という非軍事部門に船舶を無償供与する案件のみ。官民の一行が需要を探りにマレーシアへ飛んだほか、ASEAN各国を日本に呼んで装備品の展示会を開催、掃海艇の造船所に案内するなどしているが、軍隊向けの武器輸出は具体化しそうな案件がまだない。

防衛省はODAで許されていない軍事支援向けの資金援助や、需要の発掘、修繕・管理の協力体制を整えることで、装備品の輸出を促進したい考え。「三原則の見直しで審査プロセスは整ったが、積極的に武器移転を進めるような制度が構築できているわけではない」と、関係者は話す。「新たな三原則が生きるかどうかは、今後の政策次第だ」と語る。

一方で、実現には財務省や経済産業省、外務省など関係省庁との調整のほか、武器輸出拡大への反発が予想される世論の説得が必要になる。関係者は「この仕組みは必要だ、そうみんなに理解してもらえるようにしないといけない」と話す。

防衛省の報道官はロイターの取材に対し、「防衛装備移転についてはさまざまな検討をしているが、何も決まっていない」としている。
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12式地対艦誘導弾 陸上自衛隊フォトギャラリーより

これで、ベトナム・フィリピン・インドネシアに日本の潜水艦、地対艦ミサイルを売り込むことができる。
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チョークポイントに地上発射対艦ミサイルと日本の潜水艦を配備すれば中国海軍は袋のネズミである。

ロイター通信の27日の報道によると、日本は武器輸出を支援する資金援助制度を創設し、日本製武器を購入しようとする国、他国と共同開発に取り組む日本企業に資金援助を提供することを検討している。これは日本の新たな武器輸出三原則に続く、武器輸出の「正常化」に向けた最新の動きだ。

ロイター通信は、「これは安倍晋三首相が主導する平和主義から外れる歩みを加速し、中国の怒りを買う可能性がある」と報じた。道紀忠華シンクタンク首席研究員の庚欣氏は27日、環球時報の記者に対して、「日本は徐々に、局部から全局面へと、戦後になり国際社会から与えられた専守防衛の位置付けを打破しようとしている」と指摘した。

東洋経済オンラインは27日、「日本の政府開発援助(ODA)の規定には、武器購入や武器開発などに使用できないという規定がある。防衛省は新たな援助制度を創設することで、武器輸出の道を切り開こうとしている」と伝えた。4人の消息筋はロイター通信に対して、「日本政府は一歩目として、専門家による会議を開き、日本企業の武器輸出活動および海外との国防工業協力に資金を提供する方法について具体的な提案を行う。国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)にならい、政府支援機関を創設し、軍事プロジェクトに優先的に資金を援助することが考えられる」と述べた。朝日新聞は、「防衛省は専門家の会議を開き具体的なプランについて検討し、来年の正式な実施を目指す」と報じた。

ロイター通信は、「最近検討中の一連の潜在的な取引(オーストラリアへの潜水艦の輸出、インドへのUS-2水陸両用機の輸出、外国企業との輸送ヘリの共同開発など)により、日本政府は資金を獲得する可能性がある。同時に防衛省高官は、東南アジア諸国と共同開発プロジェクトを推進し、国防工業のつながりを強化すると同時に、中国とのパワーバランスを整えようとしている。情報によると、日本の高官はインドネシアとマレーシアを訪れ、取引に関するリサーチを行った」と報じた。朝日新聞は、「日本の武器輸出はすでに正常化に向かっている」と論じた。

防衛省は本件に関するコメントを避けている。防衛省の報道官はロイター通信に対して、「防衛装備については、さまざまな選択肢を検討しているが、現時点では何も決定していない」と述べた。

庚氏は27日、環球時報に対して、「日本の武器輸出は、大勢の赴くところだ。安倍首相は防衛装備の輸出により、自身の政治学と経済学を融合させ、相互作用を形成しようとしている。しかし安倍首相の計算は、実現困難だ。東アジアを含むアジア太平洋は発展の時代にある。日本政府の、戦後の国家の位置づけを変えようとするやり方は、日本の国家イメージを損ね、割に合わない。日本の武器輸出緩和の動きは、地域の軍事構造に一定の不確定性をもたらす。しかし日本には、地域の安全・軍事バランスを覆すような影響力はない。中国も自国の安全と安定を、日本の慈悲に委ねることはない」と分析した。

新たな武器輸出三原則により、日本は広範な条件下で武器装備・技術を輸出できるようになった。これは日本の武器輸出推進の、唯一の具体的な動きではなくなっている。週刊ダイヤモンド(電子版)は、「三菱重工や富士通などの軍需企業は今年6月、世界最大の武器見本市・ユーロサトリに出展し、警戒・監視、輸送、災害救助、掃海などの武器輸出市場を積極的に開拓し、買い手を集めようとした」と報じた。防衛省の関係者は、「武器輸出三原則を改訂してから、陰に隠れていた日本軍需産業が、大きな転機を迎えた」と語った。

ロイター通信は27日、「安倍政権は意欲的だが、多くの日本企業は武器輸出を望んでいない。日本の分裂した国防工業において、武器輸出によって経営を維持できる企業は多くない。武器生産企業も、この経営範囲を公にしようとしていない」と報じた。三菱重工の役員はロイター通信の取材を受けた際に、「軍需産業の拡大は当社のことではなく、政府が何をすべきか決めなければならない。当社は海外への武器輸出に積極的ではない」と述べていた。朝日新聞は、「日本政府のこの動きは、批判を受けるばかりか、実現も難航するだろう」と報じた。
「これは安倍晋三首相が主導する平和主義から外れる歩みを加速し、中国の怒りを買う可能性がある」 
そんなことロイターには一切書いていない。
[東京 19日 ロイター] - 日本から潜水艦を輸入することを検討しているオーストラリアが、リチウムイオン電池を搭載した最新鋭艦の建造を日本側に打診したことが明らかになった。ドイツなども自国の潜水艦を売り込もうとしているが、オーストラリアは隠密性に優れた自衛隊の潜水艦を評価。両国は合意に向けて協議を進めている。

日本の現行潜水艦は鉛蓄電池を使用している。しかし、複数の日豪関係者によると、オーストラリアはより高性能の潜水艦を希望。日本が来年度から建造するリチウムイオン電池を積んだ最新鋭艦に「高い関心を寄せている」と、関係者の1人は話す。

日本とオーストラリアは10月に東京で防衛相会談を開催。ジョンストン国防相は江渡聡徳防衛相に対し、オーストラリアの潜水艦建造計画への協力を要請した。さらに11月12日にミャンマーで会談した安倍晋三首相とアボット首相は、防衛装備品の協力を進めていくことをあらためて確認した。

複数の関係者によると、両国は実務者レベルで月1度以上のペースで協議を重ね、現在は推進機関など技術的な仕様の議論にも入りつつあるという。

日本側には、潜水艦という機密性が高い防衛装備品の輸出に慎重な声もある。関係者によると、オーストラリアの予算と要求に合わせ、自衛隊の潜水艦とは仕様を変えたものを提案することになりそうだという。リチウムイオン電池を搭載した艦が輸出可能かどうかは検討中だが、別の関係者は「結構性能の高い潜水艦を出すことになるだろう」と話す。

複数の米軍関係者は、3カ国の海軍の相互運用性が高まるとして、オーストラリアが日本から潜水艦を調達する計画を歓迎している。16日の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際に会談した日米豪の首脳は、合同演習や防衛装備品で協力を深めることで一致した。関係者によると、武器システムは米国製を搭載する見通しだ。

<リチウム電池の優位性>

海上自衛隊のディーゼル潜水艦「そうりゅう」は、エンジンで発電した電気を鉛蓄電池に充電。潜航中は蓄えた電気を動力源にしている。数日ごとに海面近くまで浮上して充電する必要があるため、空気を必要としない推進機関AIP(非大気依存推進)も積んで連続潜航期間を2週間程度まで伸ばしている。

一方、来年度から建造するそうりゅうは、鉛蓄電池とAIPから大容量のリチウムイオン電池に切り替えることで、潜航期間が「格段に伸びる」(防衛省関係者)という。

海上自衛隊の潜水艦隊司令官だった小林正男・元海将は「安全に、かなり長い期間オペレーションができるようになる」と語る。AIPは使い切ったら基地に帰還しないと機能が回復しないが、リチウムイオン電池は「安全なエリアまで移動して再充電すれば能力が回復し、すぐに作戦海域に復帰できる」と、同海将は指摘する。

建造費は1隻およそ640億円と、現行型に比べて100億円以上高くなるものの、防衛省関係者によると、電池寿命が長く、15年間使った場合のライフサイクルコストは現在の1000億円よりも安くなるという。

<欧州勢が売り込み>

6隻の潜水艦を保有するオーストラリアは、2030年ごろに世代交代を計画。最大12隻の調達を検討しているが、独力で建造する能力に乏しく、日本に建造を発注し、完成品を輸入することを最有力の選択肢としている。

しかし、オーストラリア国内では産業の活性化や雇用の増加につながらないとして、国外で建造する案には与党内からも反発が強まっている。ドイツやフランス、スウェーデンも自国艦を売り込みたい考えで、入札にすべきとの声が広がっている。ドイツメーカーのティッセンクルップは8月、キャンベラを訪問してオーストラリア国内での建造を提案した。

ただ、日本以外はオーストラリアが求める4000トンクラスの大型ディーゼル潜水艦を造った経験がないうえに、いずれも現行そうりゅうと似た推進システムを採用している。さらに関係者の1人によると、各国の潜水艦の中で、日本のそうりゅうがトン当たりのコストが最も低いという。

アボット首相はかねてから「最も重要なのは、最高の能力を持った潜水艦を納税者にとって妥当な価格で調達することだ」と語っている。

日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出や他国との共同開発を認める防衛移転三原則を導入した。オーストラリアへの輸出が実現すれば、完成品を海外に売却する初のケースとなる。中国が南シナ海、東シナ海への進出を積極化する中、日本は装備品の協力を通じ、オーストラリアとの安全保障関係を強化したい考え。

日本の防衛省は「オーストラリアとは防衛装備品の協力でさまざまな協議をしているが、詳細は差し控える」とコメント。オーストラリアの国防省は「日本が電池の能力向上を検討していることは報道で承知しているが、潜水艦の推進機関について具体的なコメントはしない」としている。

(久保信博、ティム・ケリー)

ポストそうりゅう型次期潜水艦28SSについて 
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排水量 基準:2,900トン 水中:4,200トン 長さ82m,幅8.9m,速度20ノット,作戦潜行可能深度500m スターリング機関AIP潜水艦,555mm魚雷発射艦6門,ハープン対艦ミサイル発射可能
 X型舵,特殊吸音タイル装着,代替用低周波パッシブソナー・アレイタイル装着可能(片側100×12=1200個)

日本の潜水艦が技術的にも能力においても世界最高水準にある。
通常動力型としてもAIP潜水艦とし世界最大にして高性能のそうりゅう型は、現在、平成26年度計10番艦まで計画されていて、平成27年度に最終11番艦が予算請求される見通しである。なお、11番艦はAIPを積まず、ディーゼル+リチウムイオン電池となるプレ28SS型である。
※なお当初は、5番艦(SS-505)から、主蓄電池としてリチウムイオン蓄電池を搭載することで、艦の巡航速度を改善し高速航行可能な時間を増大させる予定となっていたが、財政上の都合でリチウムイオン電池の搭載は11番艦からとなる。

平成28年予算においてポストそうりゅう型次期潜水艦28SSが計画されている。そうりゅう型と28SSの最大の相違点はスターリングエンジンを廃してディーゼル+リチウムイオン電池+燃料電池となることだ。

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安倍政権はオーストラリアに日本の高度な潜水艦技術を供与しようとしているが、日本防衛にとってオーストラリア以上に直接的影響を持つ国が先進的潜水艦を渇望し続けている。それは台湾である。

強大な潜水艦艦隊を擁する中国海軍に対して、少数の、博物館入りしていてもおかしくない老朽潜水艦で立ち向かっている台湾は、アメリカ政府が約束した潜水艦の供与を13年間待ち続けてきた。しかしながら、その実現は遠のいてしまった。そこで先日、台湾海軍は「座して死を待つことはできない」と自力で潜水艦を建造する方針を打ち出した。

ところが「とても台湾が独自に先進的潜水艦を建造することは困難である」というのが多くの米海軍関係潜水艦専門家の見方である。そしてここに来て、「日本こそが台湾海軍の苦境にとって一縷の光明である」という声がささやかれている。

台湾には老朽潜水艦しかない

安倍政権が技術供与に積極的なオーストラリア海軍と同様に、というよりもそれ以上に、台湾海軍が保有している潜水艦は時代遅れの旧式潜水艦である。

現在、台湾海軍は海獅級潜水艦2隻(海獅、海豹)と海龍級潜水艦2隻(海龍、海虎)を運用中である。いずれの潜水艦も海上自衛隊やオーストラリア海軍同様に通常動力型(推進動力が原子力ではない)潜水艦である。

海獅級潜水艦は1973年にアメリカから台湾に供与された。アメリカ海軍でそれぞれ「カトラス」「タスク」と命名されていた「海獅」と「海豹」は、70年代初頭までアメリカ海軍に在籍していた。とはいえ、設計は第2次世界大戦期であり、台湾海軍に引き渡された当時でもすでに時代遅れの潜水艦であった(カトラスは1944年に起工、タスクは1943年に起工された)。

もちろん台湾海軍は、もはや博物館展示用と見なさざるをえない2隻の海獅級潜水艦を実戦用としてではなく練習用として運用している。したがって、台湾海軍の潜水艦戦力は海龍級潜水艦の2隻だけということになる。

その海龍級潜水艦は、1982年から86年にかけてオランダ海軍のズヴァルドフィス潜水艦を原型としてオランダで建造され、「海龍」は87年に、「海虎」は88年にそれぞれ就役した。これらの海龍級潜水艦といえども就役から既に4半世紀を経ているだけでなく、そもそも原型のズヴァルドフィス潜水艦は1960年代に建造された旧式潜水艦なのである。

<台湾海軍潜水艦「海龍」と台湾海軍ヘリコプター(写真:台湾海軍)>


島嶼国家防衛に欠かせない潜水艦

言うまでもなく台湾軍の主たる任務は、中国人民解放軍の侵攻を阻止することにある。そして、台湾海軍が重責を負っているのは、人民解放軍海軍(以下、中国海軍)が台湾周辺の海上封鎖を実施できないようにすることである。

台湾や日本のような島嶼国家に対する海上封鎖を実施したり、逆に阻止するために、極めて重要な役割を果たすのが潜水艦である。それも静粛性が高い現代の通常動力型潜水艦が、攻撃側にとっても防衛側にとっても海上封鎖の鍵を握っていると言われている。 

台湾同様に島嶼国家である日本は、日本周辺海域での外敵による海上封鎖に対抗するために高水準の潜水艦を保有している。ただし、海上自衛隊が現在運用している実戦用潜水艦は16隻であり、とても日本に対する海上封鎖に対処するには十分な数とは言えない。

一方、台湾や日本に対する海上封鎖を実施する可能性がある中国海軍は、通常動力型潜水艦を50隻以上(うち14隻は老朽艦の「明」級潜水艦、ただし毎年3隻以上の新造艦が誕生し続ける)も保有しており、日本に対しては無理でも、台湾を海上封鎖するためには十分な数の潜水艦を取り揃えている。

このような中国海軍と対峙している台湾軍は、骨董品に近い潜水艦を2隻しか実戦投入できないという極めて心細い状態が続いているのである。

約束を果たせないアメリカ

実は、中国海軍が現在のようにアメリカ海軍すら一目置くように強力に成長する以前の2001年、アメリカ政府(ブッシュ共和党政権)は台湾政府に通常動力型潜水艦8隻を供与する約束をした。

この当時の中国海軍潜水艦隊は、現在は退役が始まっている明級潜水艦と、既に姿を消したソ連製のロメオ級潜水艦という、当時においても旧式潜水艦で構成されており、ようやくロシアからキロ級潜水艦4隻を輸入したばかりであった(これらのキロ級潜水艦は、当時の中国海軍にとっては新型であったが、ロシアにとっては輸出用のダウングレードバージョンであった)。

一方の台湾海軍は、現在と同様に老朽海獅級潜水艦2隻と旧式海龍級潜水艦2隻を運用していた。そこで、ブッシュ政権が8隻もの潜水艦を台湾に供与すると約束したため、それが実現すれば中国海軍と台湾海軍の通常動力潜水艦戦力は逆転するはずであった。しかし、アメリカには原子力潜水艦を建造する技術だけしか存在せず、通常動力型潜水艦を建造する技術は存在しなかった(そして現在も存在しない)。

つまり、ブッシュ政権が8隻の潜水艦を供与すると約束しても、アメリカ自身で建造して台湾に売却することは物理的に不可能であった。そのため、アメリカ政府が通常動力潜水艦を建造する能力を持った諸国の政府に働きかけて台湾のために建造させてアメリカ経由で台湾に供与する、というのが唯一可能な方法であった。

もちろんアメリカの同盟国や友好国でなければ話にならない上、潜水艦を建造する能力を保有する国は極めて数が少い(このような事情は現在も同様である)。アメリカ政府が声をかけられる国としては、スウェーデン、オランダ、ドイツ、フランス、それに日本が考えられた。

アメリカとしては、当時においても高水準の通常動力潜水艦を建造しており世界で唯一つ潜水艦建造メーカーを2社(三菱重工、川崎重工)も擁している日本が理論的には最適の候補であったのは当然と言えよう。しかしながら、武器輸出三原則に拘泥していた日本は、当初より交渉の対象から外さざるを得なかった。

<海上自衛隊「そうりゅう」級潜水艦(写真:海上自衛隊)>

また、小型で高性能の潜水艦を作り出しているヨーロッパ諸国のうち、ドイツとフランスはともに潜水艦技術を中国にも輸出している疑いが持たれている。そのため、交渉相手はスウェーデンあるいはオランダが有望と考えられた。しかし、それらのヨーロッパ諸国に対して、中国側から交易関係を餌にした猛烈な働きかけがなされ、アメリカ経由とはいえ台湾向けの潜水艦を建造することにゴーサインを与える政府はなくなってしまった。

このように日本政府は武器輸出三原則のために蚊帳の外にあり、ヨーロッパ諸国は中国との商売を壊したくないため話に乗らず、アメリカ自身は通常動力潜水艦を建造できない、といった事情のため、アメリカ政府が台湾政府に対して公式に約束したにもかかわらず、結局、約束から13年経った現在も台湾に対する8隻の潜水艦供与は宙に浮いたままの状況が続いている。

そして、その13年間で、中国海軍は8隻の新型キロ級潜水艦をロシアから輸入し、20隻以上の新型潜水艦を自力で建造し、近年建造している最新型通常動力潜水艦は海上自衛隊の新鋭潜水艦に勝るとも劣らない性能であるとも言われている。

一方、アメリカに実質的には見捨てられた状態が続いている台湾海軍は、わずか2隻の骨董品的潜水艦で警戒を続けているのである。

技術供与に伴う危険性は台湾もオーストラリアも同じ

現在のように、台湾海軍と中国海軍の潜水艦戦力の差が決定的になる以前から、アメリカ海軍戦略家の中には次のような提案をする者が存在していた。

「どうせヨーロッパ諸国にとっての中国は商売相手でしかなく、台湾防衛など本気で考えるはずがない。台湾向けの潜水艦を作れるのは日本だけだ。

しかし、日本政府には台湾防衛がすなわち日本防衛であるという認識が欠けており、ヨーロッパ同様に中国貿易に目が曇らされてしまっているようだ。おそらくアメリカ政府が働きかけても、日本政府は武器輸出三原則を★盾★にして、台湾向けの潜水艦建造や中古潜水艦の提供などには、手を貸さないであろう。

だが、このまま台湾海軍が丸腰に近い状態でいれば、いずれは東アジアのアメリカ艦隊も日本自身も中国海軍の圧迫を受けることになってしまう。幸い日本では三菱と川崎が交代で潜水艦を建造しており、潜水艦関係技術者がふんだんに存在している。それらの優秀な技術者の半数をアメリカに招聘して、アメリカで通常動力潜水艦を建造して台湾に供与するという方策を、アメリカ海軍はアメリカ政府や連邦議会に働きかけなければならない」

現在のところ、このような提言をアメリカ政府が受け入れて日本の潜水艦技術陣をアメリカに招聘する動きが出ている様子はない。

一方の安倍政権は、武器輸出三原則を見直して防衛装備移転三原則を打ち出しただけでなく、日本の潜水艦技術の移転をオーストラリア政府に約束した。

(ただし、日本の新鋭潜水艦には、スウェーデンのエンジン技術をはじめ日本以外のメーカーの技術が盛り込まれているため、安倍政権の言う「日本の潜水艦技術のオーストラリアへの移転」の範囲は明確ではない)

したがって、台湾に対する潜水艦そのもの、あるいは潜水艦技術の供与は、日本国内の行政的束縛という面からは可能な状況にあると見なすことができる。このような状況を受けて、アメリカ海軍関係者たちの間でも「いよいよ日本が潜水艦分野で台湾の救世主になる時がやって来た」との声も挙がっている。

ただし、台湾に潜水艦を売却したり、潜水艦技術を提供するとなると、台湾と中国の多層レベルでの密接な関係から判断して、日本の潜水艦技術が中国に流れ出してしまう可能性も否定できない。しかし、やはりアメリカ海軍情報関係者によると「オーストラリア軍関係諸機関にも中国情報網は入り込んでおり、日本の潜水艦技術がオーストラリア経由で中国に流出しても何ら不思議ではない」のである。実際に、台湾軍高官がオーストラリアを経由して中国へ情報を流した事件も摘発されている。したがって、オーストラリアに潜水艦技術を供与することに前向きな安倍政権が、オーストラリア以上に日本防衛に直結している台湾の潜水艦戦力強化に何らかの協力をすることを情報流出の側面から否定することは矛盾している。

台湾の苦境を救うことは日本自身のためでもある

まして、日本が台湾のために建造する潜水艦は最新鋭潜水艦である必要はないし、最先端潜水艦技術を台湾に供与する必要もない。1世代前の海上自衛隊潜水艦でも、「海龍」と「海虎」で中国海軍と対峙している台湾海軍にとっては、救世主となり得るのだ。

日本が台湾に対して潜水艦部門で協力するとなれば、当然のことながら、中国政府からの対日反撃が猛烈なものとなるのは必至である。しかしながら、台湾防衛は日本防衛に直結しているという大原則を日本政府は直視し、目先の利益に惑わされず、将来の日本の防衛のためにそのような難局を乗り越える覚悟を決めて、オーストラリア以上に台湾に対する潜水艦分野での協力を実施すべきである。
台湾への直接供与は中国を大いに刺激することなる。もし台湾へ日本の潜水艦を輸出するとなれば、日本が米国に一旦輸出した後、台湾へ供与することになるだろう。その場合においても中国側のかなり大きな抵抗嫌がらせに合うであろう。しかし、日米にとって台湾は東アジアの地政学的要であり、台湾を失てからでは手遅れとなる。今後日本は台湾へ武器輸出を真剣に考えるべきだと思う。

候補としては12式地対艦ミサイル、ASM-3、10式戦車、機動戦闘車、F-3、護衛艦いずれも量産化効果がでるものを輸出する検討をしてみてはどうか?



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丸山俊 BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト

[東京 25日] - 金融機関のエコノミストやストラテジストはマクロ経済や金融政策について詳しく調べることはあっても、こと政治については初めから所与として深く立ち入らないことが多い。

消費再増税をめぐる議論も、断行すべきか否かの「べき論」に執着してしまい、安倍晋三首相の立場に拠って増税が衆議院解散と密接不可分の関係にあるという視点が忘れ去られていたようである。

しかし、筆者が普段接する米系マクロファンドは政治アナリストを抱えており、独自の情報網や分析力を生かして、かなり前から「増税先送り解散」の可能性を把握していた。実際、マーケットがそのことを織り込み始めたのは11月10日以降であったが、安倍首相はすでに10月中旬にはこの選択肢を真剣に考え始めていた可能性が高い。

<日本経済の未来を左右する大転換点>

最近の世論調査によれば、消費再増税の延期には賛成だが、解散総選挙には反対という意見が多い。実際、海外投資家からも「なぜ今、解散をしなければいけないのか」という質問は多い。法律で定めた景気条項に従って景気が悪いと判断したから増税を延期する、でいいではないかと皆が言うのだ。

確かに、増税延期がなぜ解散総選挙の理由になるのか、国民にはピンとこないだろう。また、メディアで書き立てられている、その他の理由は、ざっと挙げるだけでも、1)2005年の郵政解散を想起させる自民党内の増税容認派へのけん制、2)2016年の衆参同日選挙(ダブル選挙)の選択肢を嫌う公明党への配慮、3)比較的高い内閣支持率、4)野党の貧弱な選挙態勢、5)2015年に控えた原発再稼働や集団的自衛権の行使容認などの難題、6)2人の女性閣僚辞任と、枚挙にいとまがないが、いずれをとっても政治的な思惑ばかりが透けて見えてしまい、心にいまひとつ響かない。

安倍首相は会見で重大な税制改正を行う以上は国民に信を問うと述べたが、2017年4月に景気弾力条項抜きで消費再増税を行うことに賛成か反対かを直接国民に問うということなのだろうか。本稿ではあまり深く立ち入らないが、過去を見ても大義のある解散などあまりなかったわけであり、上記で挙げた理由のほかにも今やらなければいけない理由があるのだろう。

いずれにしても、4月の消費増税の反動減が大きく、予想以上に景気の足踏みが長引くなど地方・中小企業・低所得者を中心に経済政策に対する不満が鬱積(うっせき)しつつある中で行われる総選挙はアベノミクスへの賛否が争点になるだろう。このままだと投票率が前回衆議院選挙時の過去最低59.32%を下回るのではないかと心配である。

ただ、大義名分はどうあれ、アベノミクスへの賛否を問う総選挙の結果は、そのまま今後の株式市場を占う「試金石」になるだろう。10月以降の相次ぐ経済政策、すなわち年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的年金基金の運用見直し、日銀の追加金融緩和、消費再増税の延期、2014年度の補正予算は、金融緩和(第一の矢)と財政支出(第二の矢)によりデフレ脱却を図るというアベノミクスの原点回帰である。

そのため、アベノミクスへの賛否を問う総選挙の結果は安倍政権の政治基盤だけではなく、日本経済の行方をも左右する大きな転換点になりそうだ。アベノミクスに反対する国民がアベノミクスによって消費や(設備)投資を増やすとは考えられないように、4月の消費増税により頓挫してしまった経済の好循環を取り戻す(あるいは確実にする)ためには経済政策(アベノミクス)に対する国民の信認(共感)が必要不可欠だからだ。

株式市場(海外投資家)も総選挙における自民党の勝利をもってはじめて、国民がアベノミクスを支持していることを再認識し、アベノミクスが成功すると信じるのである。特に中長期投資家にとって、国民の高い支持を背景とした安定政権による経済重視路線、そして投資期間内(1―2年以上)に景気大変動を招く消費増税が行われないことの安心感は大きい。

<自民圧勝なら日経平均1万9000円超え>

しかし、そもそも自民党の勝利は確実なのだろうか。世論調査では自民党支持層が約30%、野党支持層が合算で約30%と五分五分の勢力を保つ中で、マスコミ報道などによって風向きが変わる無党派層が40%も占めるため、直前まで選挙の趨(すう)勢を読むことは難しい。

安倍首相は連立与党で過半数獲得を勝敗ラインと会見で述べたが、現有議席数(自民党295、公明党31)と40%台の内閣支持率を考慮すれば低過ぎるハードルだ。

ただし、後述する「敵失」を追い風に地滑り的な勝利を収めた前回衆議院選挙(2012年12月)を上回る議席数を自民党が獲得できるか否かは不透明である。というのも、前回衆院選で自民党は圧勝したものの比例代表の得票率は伸びず、比例の獲得票自体も減少した。実際、獲得議席は前々回から2議席しか増えなかった。

自民党が小選挙区を制したのは、政党乱立により民主党や日本維新の会などの第三勢力がそれぞれの小選挙区に候補者を擁立したため票を食い合って共倒れとなった「敵失」が大きな要因であると言われているからだ。

今回もまた、維新の党の勢いこそ衰えたとはいうものの野党の候補者擁立と選挙協力の進展が自民党獲得議席の大きな鍵を握っている。みんなの党(衆院8人、参院12人)はすでに解党を決めて所属議員らのほとんどは野党各党に合流する見込みであり、今後は二大野党の民主党と維新の党の選挙協力の成否が自民党の獲得議席に直結するだろう。筆者は、自民党の獲得議席数によって来春に向けた6つの株価シナリオを想定している。

●現有議席(295)を上回り圧勝、安倍長期政権樹立へ、日経平均株価は1万9000円以上に上伸

●270―294の議席を維持し辛勝、安倍政権は当面安定、日経平均株価は1万8000円に好伸

●250―270に議席を減らし事実上の引き分け、安倍政権続投も政権運営は難航、日経平均株価は1万7000円で膠(こう)着

●238―250に議席を減らし事実上の敗北、安倍政権続投も政権運営は難航、与党からも責任論、日経平均株価は1万6000円へ下落

●自民党単独過半数(238)割れとなり安倍内閣退陣、日経平均株価は1万5000円に急落

●連立与党過半数割れ(公明党を現有議席31とすると自民党207)となり安倍内閣退陣、日経平均株価は1万4000円以下に暴落

<官邸・財務省・日銀の蜜月は続くか>

最後に、今回の増税先送り判断に伴って浮上している別の懸念を検証しておきたい。安倍首相の決断によって、増税を支持してきた財務省・日銀との蜜月関係が壊れるのではないかとの懸念だ。

しかし、これはおそらく杞憂だろう。まず財務省だが、政策が官邸(政治)主導で決められるようになり、国家公務員人事改革により幹部人事に官邸の意向が強く働くようになった結果、予算権限を握り自民党の派閥政治と結託して政策に大きな影響力を持った昔日の面影はもはやない。

財務省寄りの発言が多い麻生太郎財務相も、支持率が10%台に落ち込んだ麻生政権を末期まで支えてくれた森喜朗元首相や安倍首相には恩があり、最後は政治判断に傾いた。財務省としても増税を盾に経済対策の規模が膨れ上がっては元も子もないため、景気弾力条項を取り除くことを条件に増税延期を受け入れる余地はあったわけだ。

一方、意表を突く追加緩和によって結果的に消費再増税の環境づくりをしたと言われる黒田東彦日銀総裁はどうであろうか。もともとアベノミクスには前政権時代に決定した消費増税というメニューはなかったとも言えるし、増税に賛同する黒田元財務官を日銀総裁に任命した以上は安倍首相も消費増税を前提にしていたとも言える。したがって、追加緩和は増税が前提と考えていた安倍首相にとって、増税の決断前の追加緩和はむしろ増税延期の判断を後押しした可能性すらある。

その場合、安倍政権と黒田日銀の「協調」は反故になるわけだが、そもそも追加緩和は10月前半の株価急落や原油価格の下落、9月の都区部消費者物価の前年比1%割れなどが直接的なトリガーとなったものである。そして、11月19日の日銀政策決定会合後の記者会見では、元財務官僚で衆参両院の同意を経て内閣に任命された黒田日銀総裁は増税延期という「政治判断」に十分な理解を示した(むしろ十二分に政治を理解し過ぎてしまっているからこそ異次元緩和を実施できたのだ)。

それどころか、ゼロ金利下でいまだに銀行貸出が伸び悩む日本経済においては、増税延期というある種の財政拡張によってはじめて、長期国債の大量買い増しを決定した追加緩和の効果が生きるし増幅されるのである。皮肉なことに増税延期によって家計のインフレ期待が高まれば、日銀の物価安定目標2%への到達が早まるかもしれない。

案外と増税延期で救われるのは日銀なのかもしれないし、遠からずインフレ率が高まれば日本版テーパリング(緩和縮小)の前倒しで思わぬしっぺ返しを食うのは安倍政権なのかもしれない。中長期的には消費増税を可能にする経済環境をつくるという必要がなくなった日銀が、政治の要請よりも物価(目標)により忠実に金融政策を運営する可能性が高まったことに留意するべきだろう。

中二病」という言葉があるんだが、今は「小四詐欺」が話題です。小四の児童が「どうして解散するのか」と問いかけるサイトを作ったところ、実は小四じゃなくて大学生だったという顛末。子細は「WirelessWire News」の「あまりに卑劣な『小学四年生なりすまし』事件に思う」というエントリーを読んでもらうとして、このサイトは閉鎖され、解散総選挙と言えばネット上でこの話題だけが妙に盛り上がっている程度です。

11月25日のNHKの世論調査では、この選挙について「非常に関心がある」と回答した人は23%しかいないそうです。これは前回、2年前と比べると17ポイントも低い数字。投票率が気になるところなんだが、前回の59.32%(小選挙区選)よりも下がることが十分に予想されます。この数字、戦後最低だった1996年の59.65%を下回って史上最低。民主党政権から自公政権へという政権奪還だった選挙なのにこの体たらくです。

12月の総選挙は、前回2012年が29年ぶりだったそうで、この低投票率が自民党の圧勝につながったとの見立てもあります。そういえばこの選挙も「争点」の見えないもので、今回と同じ構図になっている。過去に5回行われた「師走選挙」では必ずしも自民党が勝ってはいないんだが、30年以上も前の55年体制下とは事情が違います。安倍首相がこの時期の解散総選挙へ打って出た背景を考えれば、低投票率と争点無し、という「地の利」を利用しようとしたのかもしれません。

表題のブログによると、二大政党制では「3乗法則」というのがあるようで、両勢力が獲得票に3乗した割合になるんだそうです。上記で紹介したNHKの世論調査によれば、各党の支持率は、自民党39.9%、民主党9.7%。およそ4対1の割合なので、3乗法則で計算すると64対1になる。1はいくら掛け算しても1なのでこういう結果になるんだが、争点が見えづらく天候の影響などで低投票率になれば、自公の圧勝、という結果も見えてきます。となれば、来年もズルズルと失敗した「アベノミクス」を続けていくことになるでしょう。


執筆中

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異常気象が変えた人類の歴史 [著]田家 康
[文]江田晃一  [週刊朝日]2014年10月10日

歴史を理解する時、英雄の登場や為政者の行動などに背景を求めがちだ。本書はこうした歴史の理解に、自然科学の視点を持ち込むことで読み手の認識を一変させる。先史時代から未来予測まで、数万年単位での気候変動が歴史にどう関わってきたのかを40の話を通じて読み解く。                      
例えば、6世紀に領土を拡大していた東ローマ帝国の進撃を止めたのは、地球の裏側の巨大火山の噴火だったと指摘する。ナポレオンがワーテルローの戦いで大敗したのは戦略の誤りではなく、エルニーニョ現象によるものだと推論する。                                                 大国の趨勢を左右する事象だけでなく、最高品質の弦楽器であるストラディバリウスの音色や京都のアカマツ林の秘密にも迫っており、話題の幅も広い。     
異常気象は歴史を変えた全てではないが、分岐点となる出来事に影響を与え、文化や生活そのものを変えてきたことがわかる。同時に、本書は温暖化や寒冷化の恐ろしさを改めて教えてくれる。日本のみならず世界で異常気象が相次ぐ今、多くの示唆に富んだ1冊だ。
目次
第1章 現生人類の最初の試練 — 先史時代
- 第1話 氷期(氷河期)は4回ではなかった
- 第2話 現生人類の最初の試練
- 第3話 ひとつ前の間氷期の気候 — 海面水位はどこまで上昇したか?
- 第4話 人類はいつ頃から衣服を身に付けたのか? — シラミとトバ火山
- 第5話 ネアンデルタール人と現生人類の生存競争
- 第6話 狩猟採集生活における男女の役割
- 第7話 突然訪れた急激な寒冷化へのサバイバル術 — 農耕の開始
- 第8話 縄文人の食文化
第2章 海風を待ったテミストクレス — BC3500年~AD600年
- 第9話 サハラの砂漠化とエジプト文明の誕生
- 第10話 紀元前2200年前の干ばつと『旧約聖書』の中のユダヤ人の流浪
- 第11話 巨大火山噴火による大津波に襲われたミノア文明
- 第12話 海風を待ったテミストクレス — サラミスの海戦
- 第13話 ハンニバルが越えたアルプスの峠 — 第2次ポエニ戦争
- 第14話 フランスのブドウの先祖は耐寒品種
- 第15話 倭国内乱と聖徳太子の願い
- 第16話 皇帝ユスティニアヌスの夢をくじいた新大陸の巨大火山噴火
第3章 京都東山のアカマツ林の過去・現在・未来 — 700年~1500年
- 第17話 日本と中国での漢字の違いはいつ頃生まれたのか
- 第18話 京都東山のアカマツ林の過去・現在・未来
- 第19話 中尊寺落慶供養願文にみる奥州藤原氏の繁栄
- 第20話 火山噴火が多発した13世紀後半
- 第21話 侵攻時期を逸したクビライの遠征軍 — 弘安の役
- 第22話 怪鳥モアを絶滅に追い込んだ森林放火
- 第23話 寒冷期の訪れが芸術のテーマに「死の勝利」を選んだ
- 第24話 コンスタンティノープル市民を絶望に陥れた月食
第4章 ストラディバリウスはなぜ美しい音色を奏でるのか — 1500年~1850年
- 第25話 民衆を魔女狩りに駆り立てた悪天候
- 第26話 オレンジ公ウィリアムを運んだ「プロテスタントの風」 — 名誉革命
- 第27話 ストラディバリウスはなぜ美しい音色を奏でるのか
- 第28話 宝永噴火の火山灰は江戸町中に降り注いだ
- 第29話 フランス革命の扉を開いた異常気象
- 第30話 ナポレオンの進撃を阻んだ温帯低気圧 — ワーテルローの戦い
- 第31話 フレデリック・ショパンとジョルジュ・サンドの愛の旅路
- 第32話 アイルランドのジャガイモ飢饉を起こした湿潤な天候
第5章 破局的な自然災害をもたらすもの — 1900年~未来
- 第33話 タイタニック号沈没の背景
- 第34話 大寒波で頓挫したヒトラーの野望
- 第35話 「氷河期が来る!」と叫ばれた1960年代
- 第36話 食料安全保障を生んだ世界食料危機
- 第37話 桜の開花日からみた京都の春の気温
- 第38話 人為的温暖化の危機とは何か
- 第39話 次の氷期はいつ来るか?
- 第40話 破局的な自然災害をもたらすもの
おわりに
主な参考文献

田家先生の新しい本が出た!
毎度、知識欲を刺激する濃い内容に本当に感服する。

数年ごとに発生するエルニーニョ現象や偏西風の蛇行の変化、十年ごとの太平洋の海面水温の上下動、数十年・数百年といった単位での太陽活動の変化といった大規模でゆっくりとしたうねりは、各大陸、北半球・南半球さらに地球の気候全体を変える力を持っている。

私たちの生活も、こうした時間的・空間的にみてさまざまなスケールの気象・気候の変化と無縁ではない。

私は相場を生業としているヤクザな者です。相場の変動要因になるものは森羅万象ありとあらゆるものに興味がある。太陽黒点周期、気候変動と景気の変動には関連性がある。1キチン循環(約40ヶ月:在庫循環2 ジュグラー循環(約10年:設備投資、太陽黒点周期3 クズネッツの波(約20年住宅や商工業施設の建て替え、建設需要4 コンドラチェフの波(約50~60年技術革新)と関連性がある。
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今、気になっているのは北米が今年も厳冬となり経済活動が低下するか否かだ。
昨年、記録的寒さと大雪で、北米の経済活動は大きく滞った。株価や為替、エネルギー価格、食料価格、景気に大きく影響を与える。

北米の五大湖周辺 記録的大雪
 【tenki.jp】  2014年11月19日 23時18分

アメリカでは寒気の影響でこの時期としては異例の寒さとなり、五大湖周辺では記録的な大雪となっています。雪はしばらく降り続き、大雪などに警戒を呼びかけています。
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気象衛星GOESから撮影した可視画像 日本時間で19日(水)午前3時        
上空にはこの時期としては強い寒気が流れ込み、
北米の五大湖周辺(上の画像参照)には
冬季の日本海でもよく見られる筋状の雲(雪雲)が確認できます。

この雪雲が次々と流れ込んでいる
ニューヨーク州西部の都市バッファロー周辺では記録的な大雪となっています。

もともと冬季に北西の季節風が吹くと、北米の五大湖の風下にあたる
ミシガン州やニューヨーク州北西部では大雪に警戒が必要で
このような雪を「Lake-effect snow(湖に起因する降雪)」と呼んでいます。

その発生のメカニズムは実は日本海側の降雪と同じなんです。

<冬に日本海側で降雪となる理由>

冬季、冬型(西高東低)の気圧配置になると
等圧線は縦縞模様になり、
大陸の高気圧から北西の冷たい風が吹き出すようになります。

その冷たい風が日本海を通過する際に
相対的に暖かい海面から多量の水蒸気が補給されることで
空気が湿り気(水蒸気は雲のもと)を帯びて
日本の山脈にあたり上昇気流となることで降雪となるのです。

スケールこそ違いますが
北米の五大湖が、まさに日本海と同じような役目をすることで
その風下側では大雪となることがあります。

ニューヨーク州西部では雪はしばらく続く見込みで
アメリカの気象当局(NWS)では「Lake-effect snow警報」を出して
大雪や降雪雲下での視界不良などに警戒を呼びかけています。
エルニーニョが発生すれば暖冬となるのですが、11月から記録的雪となり、昨年同様厳冬の予感がある。となると相場は・・・米国の相場は厳しいものとなりかねない。

地球は、太陽黒点の減少から小氷期に向かいつつあるが、温暖化も進み、異常気象が多発している。異常気象という概念は、過去の発生頻度からみて30年に一度の頻度のものを異常気象とよび、確率的な現象であり、地球全体の観測点が膨大であることを考えれば、毎日、地球上のどこかで局所的な異常気象が起きても不思議ではない。

温暖な天候の恩恵を受け望外の豊作を得ることもあるだろう。不思議なもので、自然環境の好転によって社会や経済が発展すると、人間はすべてを自分自身の実力だとうぬぼれ、反対に環境悪化で苦難を強いられると、禍の主因を外部に求めて不運を恨む。これも人間の性なのだろうか。 ことほど、自然環境とわれわれの歴史は切っても切れない関係にある。

中でも気象の変化や気候の長期変動は大きな要素であり、私たちの宗教、美術、音楽といった文化的側面から、国や社会、社会のおり方まで、深く関わってきたことに驚かされる。過去の話ばかりではない。未来をみすえた際も、私たちは今までと同様に気象・気候という自然現象のふるまいに無関心ではいられない、人為的な地球温暖化によって異常気象が増加するとの見方もあるように、異常気象と社会の関係とは未来にもつながる大きなテーマである。

閑話休題

第3話 ひとつ前の間氷期の気候 — 海面水位はどこまで上昇したか?
p26-27
(略)                                              およそ12万年前の間氷期は、今世紀の半はから顕著になると予測されている地球温暖化による環境変化を考える上で貴重な事例といえる。現在よりも北半球平均気温で2℃の上昇、極地では5℃の上昇、これはまさに気候変動にかかる政府間パネル(IPCC)の報告書での未来の気温上昇予測の数値である。     
海面水位は、12万9000年前(±1000年)から11万8000年までの間に4~6メートル上昇した。エーミアン間氷期ほどの海面水位の上昇は、その後現在に至るまでない。このため、当時のサンゴ礁の形跡は陸上に残っており、地殻変動の要因を考慮すれば当時の海面水位の仁昇を知ることができる。インド洋沿岸では1・7~6メートル、アルゼンチン南部のパタゴニアでは2~6メートルと各地で確認されている。                                           
エーミアン間氷期の海面水位の上昇は、主にグリーンランド氷床の融解によると考えられる。コンピューターシミュレーションでは、グリーンランド氷床の要因での海面上昇は3・7~4・4メートルとの計算結果かおり、仮に6メートルの上昇であったならば、グリーンランドだけでなく南極氷床の一部も融解していたのであろう。また、リスボン沖の海面水温が上がっていることから、海水の熱膨張という要因も加わっていたに違いない。                                
もっともエーミアン間氷期では、現在よりも気温や海面水温が高かった時代が 5000年以上続いており、海面水温上昇も数千年という時間軸で起きたものだ。                                                 一方、ICPPによる温暖化予測は温室効果ガスの排出が現在のペースで続いたとのシナリオで、21世紀末までに45~82センチメートルの上昇幅となっている。とはいえ、平均気温が現在に比して2℃以上で高止まりすれば、海面水位の上昇はその後も続き、エーミアン間氷期の水準にまで達するのかもしれない。
第6話 狩猟採集生活における男女の役割
p38-39
(略)                                               男性が狩猟を担うことになったのは、何も背が高く力が強いためだけではなかったかもしれない。もうひとつ、赤と緑、が判別しにくい色覚異常という観点がある。哺乳類の先祖は、古生代末に登場したキノドン類などの単弓類(哺乳類型昶虫類)である。中生代三畳紀になると、哺乳類は恐竜によって生息域を狭められ、小型で夜に食物を探す生態へと追い込まれた。魚類、両生類、爬虫類、鳥類は青、赤、緑を識別する3色型色覚、あるいはこれに紫外線を加えた4色型色覚を持っている。しかし、夜行性を強いられたことで、哺乳類の先祖は赤への維体視物資を失い2色型色覚になった。イヌやネコを含む哺乳類のほとんど、が2色型色覚ゆえ、赤を識別できない。

ところが、およそ3000万年前、狭鼻猿類はX染色体の一部に長波長型の遺伝子を持つようになり、3色色覚を再び獲得した。X染色体の中での変異ゆえ、もともとは女性だけが3色色覚を待ったのだが、相同組換えによる遺伝を重複を通してX染色体のペアの中に短波長の緑と長波長の赤を認識しり遺伝子が共存するすることになった。これによりX染色体をひとつしか持だない男性も3色色覚を得ることになる。ただし、相同組換えでは赤と緑の遺伝子にきれいに振り分けられるとは限らない。このため、2色色覚に由来する色覚異常は、男性に多い。日本人の場合、女性ではO・5%以下であるのに対し、男性では約3・5%となっている。

3色色覚で赤を認識できるならば、森林で葉の中に隠れている野イチゴを探すのに非常に有利だったであろう。有毒な昆虫、昶虫類、キノコ類など、が発する警戒色の識別も容易だ。食物を森林で採集をするには3色色覚を持つ女性が分担するのは合理的であったに違いない。一方、狩猟を行う際、明け方や夕方に大地が赤く染まると赤色の認識によってかえって視界が見えにくくなる。この時に2色色覚の男性は有利に働いたのではないか。

森林で生活する狭鼻猿類のマカクザルは、人類に比べて2色型色覚ははるかに低い。食物を得るために3色色覚が有利であるためだ。人類の場合、狩猟を行い始めたことで3色色覚への淘汰圧が下がったからだと考えられている。
第9話 サハラの砂漠化とエジプト文明の誕生
p50-53
およそ1万年前から6000年前にかけて、地球の軌道の関係で北半球中緯度の夏季の日射量は現在よりも8%ほど多かった。北緯20度の6月から8月の平均的な日射量でみると、1平方方メートルあたり現在の450ワットに対し、1万年ほど前は480ワットを超える値であった。北半球は南半球と比較して大陸が多く分布しており、日射をより多く吸収する。
自然環境の要因だけからすれば、完新世でもっとも地球の気温が高かったのは、1万年前から6000年前にかけてであり、「完新世の気候最適期」とよばれている。

この時期のアフリカ大陸サハラ一帯は緑におおわれていた。これは熱帯収束帯という上昇気流が発生し雨を降らせる地域が、夏季に現在よりも北上していたからだ。インド洋や大西洋からのモンスーン(季節風)が強く、風によって大量の水蒸気がサハラに運ばれていた。加えて、サハラの植生、が水蒸気を保有し、地衣に湿潤にする効果もあった。

このように、サハラは常に砂漠であったわけではない。一方、最終氷期の時代にはモンスーンが活発ではなく、サハラでは現在よりも砂漠が広かっており、砂漠と熱帯雨林の境界のサヘル(草原地帯)は、現在よりも500キロメートル南側にあった。完新世に入ってから、アフリカ大陸北部は高温湿潤の気候に変わり、熱帯雨林の地域は広、がり、その北側の草原サヘルが現在の砂漠のある地域まで北上したのだ。

アフリカ大陸サハラの高温湿潤な気候は、6000年前を過ぎるころから変わっていっ
た。主たる要因は、太陽との距離がもっとも近くなる近日点が北半球の夏から冬へと移っていったからだ。日射量が減少する過程で、モンスーンの強弱が気候の与える影響が目立つようになる。さらに植生範囲が少しずつ狭まくなっていき、サハラ全体での土壌に含まれる水蒸気の長期的な減少傾向となった。

モンスーンの弱化により、サハラの砂漠化傾向が顕著になった時期は、5500年前から5000年前にかけてだ。この時代に地球全体の気候が人きな変化をみせた。乾燥化した地城はサハラだけでなく、中国、インド、中東、メキシコでも証拠がみつかっている。ヨーロッパ、アフリカ雨部、北アメリカ、ニュージーランドでは寒冷化した。

サハラの草原に住んでいた人々は、1万年前は野生動物を狩猟する生活を行なっていた。
その後、8200年前に400年程度の一時的な寒冷化時代に、羊を飼育する牧畜を開始している。この時の寒冷化とは、アメリカ大陸北部で最後に残った大きな氷床の塊が大西洋に流れ込んだためだと考えられている。短期間の寒冷化の後、再び高温・湿潤な気候に戻ったが、彼らは羊を連れてサハラの草原を遊牧する生活を続けた。そして、5500年前に寒冷化・乾燥化の波に襲われることになった。

羊を育てる適地が少なくなると、遊牧民は水を求めてナイル川流域へと流れ込んだ。ナイル川流域では8000年前から農耕が行われており、この地域の人口が急増していったのだ。当時の遺跡があった場所をみると、上エジプ卜とよばれるナイル川中流域で5300年前以降にその数が増えている。

人口密度の増加によって、人々の社会は複雑化していった。社会階層が生まれたことは、墓地での埋葬品が人によって異なることから推察できる。ナイル川沿いで農業を行いながら生活するならば、農耕の技術者と牧畜しか知らない避難民との間で指示する者と指示される者の関係も生まれたに違いない。かくして、奴隷という身分が出来、役人が生まれ、やがて統治者たる王が現れた。

農耕開始以前から、戦闘も行われていたと考えられている。1万2000年前から1万年前とされるナイル川沿いのジュベル・サハバ117遺跡では、49の人骨の約4割に石鏃が食い込んでいた。この戦闘集団は社会の複雑化によって、さらに高度な組織になっていったであろう。王権は武力によって支配を強めたに違いない。

エジプトではナイル川の中流に上エジプト、下流に下エジプトという2つの支配グループがあった。5200年前を過ぎた紀元前3150年頃、上エジプトのナルメル王が下エジプトまで支配し、エジプト第1王朝を創始した。サハラからの人口流人はナイル川中流の方が多かったとみられ、上エジプトが国力で下エジプトを圧倒したのであろう。上エジプトは下エジプトを平和の中で併呑したのか、それとも武力で打倒したのか。定かでない。しかし、上エジプトの首都ヒエロコンポリスで発見されたナルメルのパレットには、大きな姿の国王が敵の髪の毛を握ってこん棒で殴りかかる姿が描かれ、裏面には首のない死体が並んでいる。激しい戦闘があったことを暗示させるものだ。

第11話 巨大火山噴火による大津波に襲われたミノア文明
p59-62
紀元前1700年前から同1600年前の間に、エーゲ海キクラデス諸島にあるサントリーニ島で巨大火山の噴火があった。アメリカ西部のブリストルコーンパインの年輪幅では紀元前1628年から1626年が狭く、アイルランドのオークの年輪幅では紀元前1630年が最も狭い。また、グリーンランドの氷床コアによる火山灰のデータによれば、噴火年は紀元前1669年、1642年、1623年あたりと推定される。噴火規模は過去1万年で3本の指に入る大きさで、マグマ換算体積という尺度でいえば、20世紀最大の噴火である1991年のピナトゥボ火山の12倍に相当したと考えられている。

現在、衛星写真からみるサントリーニ島は三日月型の形状をしており、海底に没した噴火口の大きさは、東西6キロメートル、南北8キロメートルという大きさを知ることができる。地質学訓査では、カルデラ状の島弧全体がかつては巨大な火山島であったことが確認されている。

直接的な影響を受けたのが、クレタ島のミノア文明だ。ミノア文明はエーゲ海文明の一つとして位置づけられ、紀元前1900年頃から繁栄をとげていた。青銅器や土器は芸術性が高いとされ、クノッソスの宮殿には世界最初の水洗トイレも設置されていた。島内では穀物、オリーブ、ブドウを栽培し、ヤギ、ヒツジ、ブタを飼育していた。主たる経済活動はアナトリア、キプロス、メソポタミアといった地中海東部との交易であった。このため、ギリシャ本土との中継地点として、サントリーニ島にあった植民都市アクロティリはミノア文明にとって重要拠点になっていた。

サントリーニ島の巨大噴火に際し、クレタ島は東南東に100キロメートルあまりの近距離にあることから巨大津波が到来した。島東部の港町パレカストロは、海洋国家の玄関口であり、町の規模は宮殿のあるクノッソスよりも大きかった。商船のみならず洋上交通を確保するための軍船もこの港に置かれていただろう。津波に流されたためか、パレカストロを含めて海岸沿いの町の城壁は残っていない。ミノア文明の力の根源であった海軍力のほとんどを喪失した。サントリーニ島の植民部市アクロティリは姿を消した。

パレカストロが壊滅的な被害を受けアクロティリを失ったことで、ミノア文明の打力は変容していった。噴火による津波から数世代経つと、ミヶーネ系のギリシャ人が島を支配する。もともと多神教の文明であったが、噴火後にそれまでと違う寺院が建てられ、新しい宗教的なデザインが描かれており、宗教の変化があったようだ。ミノア文明の土器の文様ではイルカ、タコ、海など海をモチーフにするものが増加している点も、住民の心の有り様の変化を示すものかもしれない。

さらに、クレタ島で用いられてきた文字は、線文字Aからギリシャ語へとつながる線文字Bへと変わった。線文字Bは1950年にイギリス人のマイケル・ヴェントリスによって解読された。しかし、サントリーニ島噴火時に用いられていた線文字Aについては今日でも未解読であり、巨大火山噴火についての文献記録を知ることはできない。地震と津波による大災害というイメージは、プラトンによる『クリティアス』でのアトランティス大陸の伝説へと引き継がれたのであろう。

サントリーニ火山の噴火は、近隣諸国に異常気象をもたらした。エジプトは紀元前1782年頃以降、ヒクソスがナイル川下流を支配する第2中間期とよばれる分裂時代であった。
第18王朝を開いたイアフメス1世(在位一紀元前1570‐同1546)の神殿のヒエログリフからは洪水を伴う激しい暴風雨の記録が残っている。自然災害は、サントリーニ島に近いナイル川下流の方が大きかったに違いない。イアフメス1世は兄カーメス(即位一紀元前1573-同1570)の後継者としてヒクソスを完全に駆逐し、エジプトを再び統一して第18王朝たる新王国を築いた。

最後に、旧約聖書に描かれたモーセによる「出エジプト記」のエピソードについて触れたい。出エジプトについての考古学的証拠は見つからず、ラムセス2世(在位一紀元前1279‐同1213)の時代に起きたとするのも、『旧約聖書』の解釈に過ぎない。

しかし、もし海が割れるようなイメージを喚起させる自然現象があったとしたら、サントリーニ島の火山噴火を原因とする異常気象や地震、洪水によるものではないか。『旧約聖書』の「出エジプト記」にある電、雷鳴、強風といった描写には、巨大噴火に伴う自然現象を連想させるように思われる、が、いかがだろう。
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サントリーニ島画像




執筆中
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昔懐かしのTV番組キャプテンスカーレットに登場する飛行空母クラウドベース

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米国防総省が「飛行空母」案を公募
【AFP】2014年11月19日 17:15 発信地:ワシントンD.C./米国

【11月19日 AFP】航空機が発着する母艦自体が飛行能力を持つ「飛行空母」の開発案の公募を、米国防総省の研究機関・米国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency、DARPA)が開始した。

飛行空母構想は、巨大な母艦が航空機を送り出す、映画『アベンジャーズ(The Avengers)』やコンピューターゲーム『スタークラフト(StarCraft)』のSF的な映像を想起させる。

DARPAは現時点では試作艦の建造は計画しておらず、純粋に飛行空母の可能性を机上で検討することが目的だとしている。DARPAの構想図には、輸送機「C130」に似た機体から無人機「プレデター(Predator)」や「リーパー(Reaper)」のような一隊が発進する場面が描かれている。

計画の責任者であるダン・パット(Dan Patt)氏は「小型機の機動性を高めたい」と述べ、有力な案として「既存の大型航空機を最小限の改造で空中空母にする」方法を挙げた。

米軍が飛行空母の開発を試みたのは今回が初めてではない。1920年代後半には、海軍が複葉戦闘機「スパローホーク(Sparrowhawk)」の収容と発着が可能な飛行船を開発。2機が建造されたがいずれも墜落事故を起こし、多数の死者も出たため計画は中止となった。

また60年代には米中央情報局(CIA)が偵察用無人機の草分けとなる「D-21」を米航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)(当時はロッキード社)に秘密裏に開発させたが、このD-21は別の機体から発進するように設計されていた。中国上空を偵察したD-21にカメラを投下させて回収し、D-21は自爆させる構想だったが、4度の実験は自爆やカメラ回収の失敗に終わり、計画は1971年に廃止となった。(c)AFP/Dan De Luce
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Reaper
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Predator
DARPAが突如無人機用の「空中空母」のアイデア公募を始めた。
空中空母といえば、私の世代にとっては昔懐かしのTV番組キャプテンスカーレットに登場する飛行空母クラウドベースを思い出す。
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実はこのクラウドベースには元ネタがあり、「第二次大戦の英国本土防空戦で敵迎撃のため高空に上昇するのに20分要した。最初から高空に待機すれば数分で迎撃できる」というアイデアに基づいている。そしてその迎撃案の更に元ネタは左の写真にある1942年、対空防御として、テムズ川(ロンドン)やマージー川(リバプール)の河口に、築いた対空要塞(マンセル要塞)"Maunsell Forts"に行き着きます。
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今の若者達は右の写真、ハリウッド映画avengersに登場する空中空母を思い出すかもしれませんが、いずれにしてもSFファンタジーの領域に登場するシナモノだと思います。

しかし、ことアメリカにおいては,空中空母の実現をいつの時代も目指しているのです。これも一種のアメリカンドリーム精神かもしれません。

古くは1929年7月3日には米海軍が建造する新型硬式飛行船「アクロン」に防御用戦闘機を搭載する計画をたて、1929年10月27日には「ZRS4:アクロン」のフックに試作複葉戦闘機カーチスXF9C1を着船させる実験に成功しました。
正式採用となったF9C2スパローホークは6機製造され、「アクロン」に搭載されました。
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アクロン号
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大型飛行機に小型飛行機を搭載するアイディアはソビエトでもバクミストロフ空中空母計画が建てられ、ツポレフTB-3重爆撃機で実験している。主翼上にI-5戦闘機を2機、主翼下にI-16戦闘機を2機搭載し、胴体中央下部のアームでI-Z戦闘機を一機空中で回収した。
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第二次大戦中に開発がスタートしたB-36超大型戦略爆撃機は、ドイツに向けて渡洋爆撃を行う目的で開発されたたが第二次世界大戦が終わり、核兵器を搭載してソビエトまで爆撃飛行を行う爆撃機となりました。ここで問題となったのが、護衛戦闘機であった。当時のアメリカでは、この爆撃機に随伴できるほどの航続距離をもつ戦闘機は存在しない、そこで開発されたのが寄生戦闘機XF85ゴブリンである。
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 このXF85ゴブリンは、B-36の爆弾槽のなかに格納されて敵地上空まで運ばれ、いざ、敵機が現れたら発進し、これと空中戦を行うという、いかにもなアイディアです。


XF85ゴブリンはB-29で実験され、B-36はRepublic F-84 で実験が行われた。
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次に計画されたのが、飛行中に翼端をつなぎ合わせる「TomTom計画」である。 
B29とF84戦闘機が空中で合体し、合体した分だけ翼端が広がり、高高度での空力も稼げる利点があった。 
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航続距離が問題や母機を護衛するために開発されたものだが・・・、というより当然計画は成功しなかった。なによりも、回収ドッキングが昼間でも難しく、アイデアはまだ、リスクが高すぎると判断され計画は中止された。その後増槽(落下タンク)の登場や空中給油機の登場でこれら空中空母計画は姿を消した。

だが、米国は1970年代にはいっても、依然諦めずB-747にマイクロ戦闘機(小型戦闘機)を搭載するアイディアを実現しようと空中空母計画が立てられた。
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ヨーロッパ、アフリカ、アジアに航空基地を構築するより、グローバルな範囲と超音速性能を備えた汎用性の高いシステムの方がコストが安く有効ではないかと研究された。空中空母(AAC)や航空燃料タンカーの違いは、AACが航空機をリアームだけでなく、それらに燃料を補給、乗組員が互いに外切り替えることができ、それは戦闘機の修理やメンテナンスを行うことも可能。
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ボーイング社は747-400の2つのデッキを残し、内部をくりぬき約10機を搭載し2ヶ所の出入り口がある。マイクロ戦闘機は、幅のわずか17フィート(5.1816m)内に収まるよう設計された。5種類が計画された。
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これらマイクロ戦闘機の開発はやがて先進技術の実証機として軽量戦闘機(LWF:Light Weight Fighter)F-XXの開発計画に引き継がれF-16,YF-17(F18)の軽量戦闘機として開花します。
一方巡航ミサイルが開発されると Boeing 747はMissile Carrier Airplane一種の空中空母の案がカーター政権下で提示され、あやうくB-1計画がとん挫するところでした。
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ちなみに、この巡航ミサイル母機案は現在も X51極超音速巡航ミサイルを搭載する母機として検討されている。


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そして、突如DARPAが無人機空中空母のアイデア募集をしたのだが、けして突拍子の無い計画ではなく、米国の長年の計画を実現させようとしている。

無人機用の「空中空母」のアイデア公募 米国防機関
【CNN】2014.11.13 Thu posted at 16:36 JST


(CNN) 米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は13日までに、無人機用の「空中空母」となる航空機開発のアイデアを公募すると発表した。締め切り日は今年の11月26日。
この航空機の開発で、航続距離の不足で無人機が現在遂行出来ない任務の開拓を狙っている。母機から発進した無人機が爆弾投下、ミサイル攻撃や偵察などの任務をこなした後に帰還し、母機と共に所属基地へ戻る作戦をにらんでいる。
母機の大きさについては、爆撃機のB1、B52や輸送機のC130型機などのサイズを想定しているとみられる。
DARPAはアイデア募集に際し、安い製造費などが好ましいと指摘。今後4年間内に開発の具体化が可能な案を求めている。
寄せられた全ての提案は米国防総省内で管理されるため、アイデア漏えいの懸念は不要ともしている。
さて、母機としては安い製造費・・・今後4年間となれば、既存の大型中古旅客機改造が好ましい。だがReaperもPredatorもプロペラ機であるため、低速性能も考慮すると母機はドローン母機DC-130の実績があるC-130が適当であろう。

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DC-130

発進はDC-130のようにつりさげたパイロンからの発進が合理的だ。
問題は如何に改修するかだが・・・・
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空中でネットに絡ませ改修する方式が有力だろう。
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Ddog案
ネットを貼ったフレームを伸ばし、網の中心に突っ込ませフレームを伸縮して回収するのが妥当ではなかろうか?網は一機一網で、発進後は回収のみで再発進はできない。


第六世代戦闘機になると何度も等ブログでは掲載していますが、有人戦闘機と無人戦闘機がチームとなって戦うクラウドシューティングが主流となることが予測されています。
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日本は今のところ有人戦闘機が無人戦闘機を携行していく考え方だが、日本も中国に対する数的劣勢を克服する為飛行無人機空母の開発を検討すべきかもしれない。
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<参考>
昔懐かしのTV番組キャプテンスカーレットに登場する飛行空母クラウドベース
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Captain Scarlet クラウドベース(スペクトラム基地) 
高度4万フィート(12,192メートル)に浮遊する空中基地。広い甲板面は2分割され、一段高い方がエンゼルインターセプター用、低い方がその他の航空機用に使い分けられている。4隅に浮上・推進用のエンジンユニットがあり、その位置を自在に変更できる。劇中に描写された区画としては、司令室、医療室(単なる医務室レベルではなく、脳外科の手術も可能な施設)、会議室、レーダー室、休憩室、パーティールーム、アンバールーム(エンゼルの待機場所)、動力室などがある。なおアンダーソン作品の影響を受けた日本のTV作品「ゼロテスター」「ウルトラマンガイア」の基地は、デザインがクラウドベースに大変よく似ている。
全長210m、全幅186.2m、大型ホバーエンジン4機、本体前後に推進用エンジン多数装備。太陽電池発電、エレクトロン・レイ追尾アンチ・エアクラフト・ミサイル砲、空対空ミサイル・超音速パラライザー・キャノン砲装備。乗員600名。高空に浮遊するのは、ジェリーによると
「第二次大戦の英国本土防空戦で敵迎撃のため高空に上昇するのに20分要した。最初から高空に待機すれば数分で迎撃できる」というアイデアに基づく。
Captain Scarlet and the Mysterons Episode 09 Seek and Destroy 5th January 1968

Captain Scarlet - Attack on Cloudbase: Main Attack Sequence (HD)




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E2-D 
防衛省は21日、外国機の警戒監視にあたる航空自衛隊の早期警戒機の新型機について、米政府提案の「E2D」を選定したと発表した。南西方面の基地に配備し、2019年度末の運用開始をめざす。航空機による警戒監視の体制を強め、東シナ海上空で日本領空への接近を繰り返す中国軍機をけん制する。

E2Dは米防衛大手のノースロップ・グラマン製。競合していた米ボーイング製「737AEW&C」に航続距離や搭載能力で劣るが、1機あたり144億円の低価格が決め手になった。飛行時間はE2Cの倍近い約6時間。15年度予算に取得費を計上し、18年度末までに4機を導入する。
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平成27年度概算要求に計上している航空自衛隊の早期警戒(管制)機として、本日、以下のとおり機種を決定したので、お知らせします。
1 提案者及び機種
米国政府提案のE-2D
2 選定理由
・ 第1段階評価においては、必須要求事項を満たすか否かを評価し、いずれの提案機種もこれを満たした。
・ 第2段階評価においては、「機能・性能」、「経費」及び「後方支援」の3要素について総合的な評価を行い、これら3つの要素の評価点の合計が高かったE-2Dを早期警戒(管制)機として決定した。

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E2-D 
海上自衛隊はE-2Dを推し、肝心の運用する航空自衛隊はE737AEW&Cを推す声が大きかったとの情報だったので、どちらに決まるか気になっていた。
私はもしE737AEW&Cを採用するのであればE767でも予算的に変わらないのではないかということで、E767の再生産を主張していたのですが、E737AEW&Cになるくらいならば、E-2Dに決まり良かったと思っている。

E-2Dの特徴は、情報伝達能力が高いことだ、味方のイージス艦や陸上の基地に、リアルタイムで情報を送り届けることができる。また、米軍採用機なので米国防省予算による将来に渡っての継続的なアップツーデイト能力向上が期待できるうえ、今のE-2Cの設備をそのまま使用できるメリットがある。

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E-2Dはステルス機が見える最新レーダーAPY-9レーダーはUHF周波数帯(300MHz – 1 or 3GHz)を使用する世界初のアクティブ・フェイズド・アレイレーダー(AESA)搭載する。円盤状の装置がレーダーで、回転しながら海上や空中の物体をとらえる。探知能力は従来型の半径380kmほどに対し、E-2Dは550km以上。

場所によっては、中国沿岸部の動きも探知可能。また、無人機や巡航ミサイルなど、小型、あるいは高速の物体の探知能力も向上したという。
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ステルス機に有効なE-2Dの新型レーダー【航空宇宙ビジネス短信】

ノースロップ・グラマンE-2D高性能ホークアイは米海軍にとって敵の第五世代戦闘機や巡航ミサイルの脅威に対する秘密兵器になるかもしれない。

1.そのカギを握るのが同機が搭載する強力なUHFバンドの機械式・電子スキャン式のハイブリッドAN/APY-9レーダー(ロッキード・マーティン製)だ。UHFレーダーはステルス技術への効果的な対抗手段となる。

2.その一例が国防大学National Defense Universityの合同軍四季報Joint Forces Quarterly 学術誌の2009年第四四半期号に掲載されたアレンド・ウェストラ Arend Westra の論文だ。

3.「波長を延ばして共振させることでVHFおよびUHFレーダーでステルス機を探知できる」とウェストラは「レーダー対ステルス」の題で投稿している。

4.UHFバンドのレーダーの周波数は300MHzから1GHzで波長は10センチメートルから1メートルになる。ステルス機戦闘機では物理特性によりKa、Ku、X、Cバンドのいずれかあるいは一部のSバンドの高周波数で探知困難にしている。だが航空機の尾翼端など構造の寸法が波長の八分の一以下と等しくなると共振現象が発生し、レーダー断面積が変化する。

5.つまり小型ステルス機ではレーダー吸収塗料を厚さ2フィート以上も施す余裕がないのでステルス性を発揮できる周波数帯を選択し、それ以外はあきらめるしかないということだ。

6.幾何学的視覚パターン分散が可能なのは大型ステルス機のみ、ただし機体表面に突出したものがないことが条件で、これを満たすのは現在はノースロップ・グラマンB-2だけだが、将来は長距離攻撃爆撃機が加わる。「戦闘機サイズの機体では発見は免れえない」とある筋がUSNI Newsに解説している。


7.ただしウェストラ他多くが指摘するのがUHFやVHF帯のレーダーにも欠陥があるという点だ。「角度と距離によって解像度が低くなり、従来はUHFやVHFは正確な目標探知や火器管制には使えなかった」(ウェストラ)

8.ノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンはこの欠点を克服したようで、APY-9には高性能電子スキャン能力とともに強力なデジタルコンピュータを組み合わせた処理を可能としている。海軍関係者によるとAPY-9の性能はE-2Cの搭載するレーダーより大幅に向上しているというが海軍はこの点を公にしていない。

9.「E-2DのAPY-9レーダーにより早期警戒と状況把握能力はすべての航空目標に有効になり、航空機以外に巡航ミサイルにも有効」と海軍航空システムズ本部はUSNI Newsに電子メールで回答している。「APY-9は新技術を採用しており、1970年代の技術を使うE-2CのAPS-145レーダーよりはるかに高性能」

10.海軍はE-2Dの役割は海軍統合火器管制防空体制 Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA)(ニフッカアと発音してください) の中央で敵の航空機及びミサイルの脅威に対抗することとしており、マイク・マナジル少将(航空戦部長)はこの概念を昨年12月にUSNI Newsに明らかにしている。

11.NIFC-CA構想の「From the Air」(FTA)仕様によりAPY-9 はセンサーとしてレイセオンAIM-120 AMRAAM 空対空ミサイルに目標指示を与える。これはLink-16データリンクを介しボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットに伝えられる。

12.それ以外にAPY-9はスタンダードSM-6ミサイルを誘導するセンサーにもなる。同ミサイルはイージス巡洋艦・駆逐艦からSPY-1レーダーの有効限界より先にある目標に対してNIFC-CAの「From the Sea」(FTS)仕様の協調戦闘能力 Cooperative Engagement Capability のデータリンクで伝えられる。これまでのところNIFC-CAのミサイル実弾試射は全数成功している。

13.E-2D初の飛行隊VAW-125が作戦能力を獲得する今年10月にNIFC-CAの実用化も始まる。

14.APY-9は独特の設計となっている。NAVAIRとノースロップは同レーダーはAPS-145の「2世代先」だと自慢しているが、外観上は機械式スキャンのAN/APS-145と同じでも、内部は全く別となっている。

15.APY-9はE-2Dのレドーム内部で回転し、360度を監視できるが、乗員によりアンテナの回転速度は調整可能で、対象方面に焦点を合わせることができる。さらに18チャンネルのパッシブ式フェイズドアレイADS-18アンテナにはレーダービームを電子的に制御可能。また電子スキャン式の敵味方識別能力もある。

16.送受信部のハードウェアは胴体内部に装着し、アンテナとは高出力の高周波送信線と高速回転カプラーで接続する。その意味でこれはアクティブ電子スキャンアレイ方式のレーダーではない。

17.APY-9は高性能空中早期警戒監視Advanced Airborne Early Warning Surveillance、高性能広域スキャンEnhanced Sector Scan、および高性能追跡Enhanced Tracking Sectorの3モードへ切り替え可能である。

18.このうち高性能空中早期警戒監視モードが通常の用途で、360度にわたり同時に空中と地上を対象に、レーダー断面積が小さい目標を長距離にわたり捕捉することが可能。このモードでレーダーは10秒で1回転する。

19.高性能広域スキャンモードはこれまでの機械式スキャンと操作可能な電子スキャン技術を一緒にして、双方のいいところを取り、それぞれの方法の欠点を埋めるものだ。アンテナは機械式に回転するが、操作員は任意の方角を選択し、その部分でアンテナ回転を減速し、詳細情報を得ることができる。

20.高性能追跡モードは完全な電子スキャン方式でアンテナは安定化されるか特定の目標追跡にされる。高精度の目標追跡ができ、アンテナを止めて完全に電子式にスキャンすれば特定の地区での追尾が可能だ。ステルス機にはこのモードが効果を発揮する。

21.APY-9の有効距離は300海里以上だが通常運用高度が25,000フィートというE-2Dの機体性能で制約を受ける。

22.海軍はE-2Dを75機導入する予定で2020年代に艦隊に配備が完了する。■


東シナ海上空で仮に中共空海軍と戦闘が発生した場合、米第七艦隊との連携した作戦が考えられる。その点を考慮するとE-2Dの選択は正しい。日本は固定翼機を搭載した航空母艦は保有する計画は今のところないが、もし、いずも型、新型強襲揚陸艦でF-35Bを運用することがあれば、電磁カタパルト+アレスティング・ワイヤー+E-2Dの可能性もありうる?(妄想です)
航空自衛隊で運用しているE-2Cの弱点の一つが居住性の悪さだが、航空ファン2014年4月石川潤一氏の記事によれば、E2-D採用のオプションとして、居住性の改善策が提案されているとのこと。陸上機として使用する場合不要となる一部機器を外し、小型化することで、隔壁とオペレーションルームの空間に小型のトイレユニットを設置、一部オペレーション電子機器の小型化で、小型冷蔵庫と電子レンジを搭載する案が提示されているらしい。もちろん、その分コストは跳ね上がるらしい。
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今年4月、青森県の航空自衛隊三沢基地(三沢市)から、沖縄県の那覇基地(那覇市)への“お引っ越し”が行われた。三沢基地の飛行警戒監視隊に13機配備していた早期警戒機E2Cのうち、4機を那覇基地に移転し、警戒航空隊第603飛行隊を新編した。

第603飛行隊の誕生は、中国の存在抜きには語れない。

平成24年12月13日、中国国家海洋局所属の多用途小型プロペラ機Y12が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島付近の日本領空を侵犯した。この際、自衛隊のレーダーではY12を捕捉できなかった。F15戦闘機とE2Cを緊急発進(スクランブル)させたのも、海上保安庁の巡視船から連絡を受けた後だった。空自にとっては「絶対にあってはならないこと」(関係者)という屈辱だった。

空自は同年9月の尖閣国有化を受け、三沢基地のE2Cを那覇基地に展開していたが、この事件をきっかけにさらに態勢を強化した。浜松基地(浜松市)に拠点を置く早期警戒管制機(AWACS)とともに尖閣周辺空域での警戒・監視活動に当たった。

E2CとAWACSによるスクランブルは年間20件程度だったのに対し、24年度は250回前後に激増したとみられている。スクランブルは25年度も増え続け、中国政府の防空識別圏設定や、中国軍機による自衛隊機への異常接近など南西方面の緊迫は増すばかりだ。このため、1年8カ月の“出張”を経て、隊員約60人、E2C4機の陣容で603飛行隊が新編された。

「力による現状変更の試みが継続されており、不測の事態を招きかねない危険な状況になっている。地上固定式レーダーを補完する警戒航空隊の果たす役割は重要だ」

第603飛行隊の発足式が行われた今年4月20日、当時の小野寺五典(いつのり)防衛相はE2Cが果たす役割をこう強調した。

円盤状の回転式アンテナが特徴のE2Cは「空飛ぶレーダーサイト」とも呼ばれる。数多くの敵機を同時に追尾し、対空無線で敵機の位置情報などを地上の防空司令所や遼機に伝送し、要撃機を指揮することもできる。全長約49メートルのAWACSと比べて17.6メートルと小型のため、すぐに飛び立つことができる即応性も強みだ。

E2Cが自衛隊に部隊配備されたのは昭和58年2月のことだが、これも自衛隊にショックを与えた事件が背景にある。

51年9月のベレンコ中尉亡命事件だ。ソ連(当時)の戦闘機ミグ25が北海道南部に低空飛行で侵入し、函館空港に強行着陸したが、自衛隊は追跡途中で戦闘機を見失った。地上レーダーでは水平線の向こう側を低空飛行する航空機を捉えることはできない。このレーダー網の穴を埋めるために導入されたのがE2Cだった。

冷戦時代の主要脅威であるソ連をにらみ青森県に配備され、冷戦後は台頭著しい中国軍に対抗するため沖縄県に移転されたE2Cは、日本の脅威認識の変化を象徴する存在といえる。(政治部 杉本康士)



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イギリスで空母クイーンエリザベス搭載用にオスプレイAEW機を計画していたが、QE級の基本設計がSTOVL空母か通常空母にするか二転三転するうちに計画がいまのところ立ち消えになっている。

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集団的自衛権、秘密保護法…実際の運用について国民に問う絶好の機会だ 【iRONNA】青山繁晴(独立総合研究所社長、作家)

まず解散に大義がないというネガティブキャンペーンが張られていることに憤りを覚えている。

消費再増税については民主党が突然凍結を表明したため、実はそれほどの争点にはならなくなっているが、前回の総選挙から2年間、安倍内閣が何をしてきたかというと、集団的自衛権の行使容認の閣議決定であり、その前には特定秘密保護法の成立もさせてきた。私はいずれも賛成の立場で国会で参考人として証言してきたが非常に強い反対もあって、そのとき例えば朝日新聞などはしきりに「国民の声を聞け」と言っていた。

現在その2つの大きなイシューはどうなっているかというと、集団的自衛権は閣議決定しただけであり、閣議決定しただけで何でも出来るとなると中国や北朝鮮、韓国と同じになってしまう。日本では民主国家だから必ず法改正をしなくてはならない。その法改正は来年1月から開く通常国会で時間をかけて審議され、あるいは特定秘密保護法は12月10日施行になるので、本格運用は来年からになる。まさしくこの2年間に決めた重大な事を実際にどのように運用するかを国民に問う絶好の機会であるから、これほど絶妙なタイミングの総選挙もないと思っている。


それなのに朝日新聞や多くの政治評論家が、新聞・テレビのネガティブキャンペーンに迎合して、例えば選挙に600~700億円かかるからもったいないと言っているが、われわれ国民は本当に弾劾すべき発言だと思っている。われわれのような本物の民主国家、法治国家においては、国民の声を聞くことほど大事なことはないから、全国津々浦々の国民がきちんとつつがなく票を投じて意見を表明できるように予算をかけるのは当たり前のことであり、年間100兆円になろうかという予算を使っている国が2年に1度の総選挙で700億円使うことはいったいこれは無駄なことだろうか。600~700億円という数字を言われて少ないと思う感覚の人は庶民にはいない。その素朴な感情を悪辣にも利用して、この「もったいない」という世論を作っている新聞・テレビ・政治評論家は本当に許すべきではないと思っている。

その上で安倍総理や与党の側も、消費再増税を延期することについては民主党が豹変したのでもう大きな争点ではない。したがって「アベノミクス」が上手くいっているかだけではなくて、集団的自衛権の法改正や、あるいは特定秘密保護法の施行に向けて堂々とそれを争点にして、ゆめ逃げることがないように「今こそ国民に意見を聞きます」ということを鮮明にして戦ってほしい。

まずいま、総選挙をやる理由がないという全くおかしなネガティブキャンペーンでほぼ主要メディアがそろっている。新聞でいうと産経・読売以外はそうだし、テレビはNHKも含めて全部がそう流れている。日本国民、有権者はとても賢明で、特に衆院選ではずっと「振り子の原理」を働かせてきた。そうすると2012年12月選挙では自民党が大勝しているわけだから、それが今回争点や大義がないなら振り子だけを振ろうということで、理由のないまま今の惨憺たる野党が勝つようなことになりうる。そうなれば安倍政権がどうのこうのではなく、アベノミクスが今後運用できなくなり、デフレ脱却の処方箋が書けないということになる。日本が先んじてデフレ脱却の処方箋が書けないとなると世界経済は今後デフレに対応できないということになる。消費増税だけではなく金融緩和や成長戦略含めて全部無効というような間違った意思表示になることを心配している。

それから沖縄県知事選の結果も含めて、安全保障や外交についてはやたらにブレるんではなくて、いわば国家の意思として共通した土台があってブレは最低限にとどめるというのは世界の常識だが、先ほど言ったように絶妙なタイミングだからこそバラバラの野党に好都合の結果になる、つまり集団的自衛権も閣議決定で終わり、特定秘密保護法も実際には運用出来ずにいままでと変わりがない、スパイ防止法の成立の入口にもならないというような一気に悪い流れになることを大変懸念している。

また「大義なき解散」と言われることで、投票率が落ちることも懸念しなければならない。その意味でマスメディアの責任は本当に重大で、投票に行くなと言わんばかりのネガティブキャンペーンというのは報道ではなくただのキャンペーンだ。そういうことにわれわれ主権者自身は新聞やテレビのニュースに触れながら、気がつかなければいけない。
週刊誌の見出しや街角でのインタビュー、インターネットでの発信などを見て気になるのは、アベノミクスを全否定したうえで大義なき解散だと言うする人達が意外に多いことだ。アベノミクスによって貧富の差が拡大し、すべて間違っているという論調には違和感を覚えます。

 7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は予想以上に厳しいもだった。物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比0.4%減(年率換算1.6%減)。より国民の実感に近い名目ベースでは0.8%減(年率3.0%減)。 事前の予測が0.5%増(年率2.0%増)を見込んでいたのに比べると、大幅に下回った。消費増税に伴う駆け込み需要の反動に夏の天候不順が重なって消費が回復しなかったほか、設備投資の回復の遅れが響いた。

アベノミクスが国民の期待ほど成果を出していないの事実だ。本来ならばデフレから脱却して賃金も上がり、増税の影響を穴埋めするほど消費が回復しているはず。そうなっていないのはアベノミクスの効果が不十分だからです。元凶はデフレ脱出する前に消費税を5%から8%にしたことに尽きる。

確かに今回の解散に大義がないといわれればそれまでだが、衆議院を解散する権限は首相が持っているのであって、正当な行為であることは間違いなく不当なことではない。民主党と公明自民の三党合意で消費税増税を決めた前回の解散総選挙を行った。その合意を否定して増税延期したのだから解散するのは正当なことだ。

 維新の党などは「今、増税すべきではない」と主張して増税を凍結する法案も提出していましたが、ここにきて増税法の制定を主導した民主党も増税の先送りを容認する考えに転じました。そして野党は一斉に「大義なき解散」と「アベノミクスの失敗」への批判を強めているが、これじゃ民主にとってかわって野党筆頭になるのも厳しい。

アベノミクスはすべて間違っていたのか?それは絶対にない。例えば維新の党やみんなの党は大胆な金融緩和や規制緩和には基本的に賛成の立場。財政再建や法人税減税についても推進派であり、これらには民主党内にも賛同する意見が多かったはずで、どうアベノミクスと違うのか?。

 GNPショックが走り、景気低迷が数字に表れてきた途端、打って変わって「アベノミクスは大企業優遇で、庶民切り捨てだ」「財政再建は必要ない」などと全否定し始めた野党議員が多いように感じる。選挙のために争点をわかりやすくするという意図は理解できるが、有権者に誠実な態度とは思えない。

 共産党や民主党の労組系議員はともかく、まともな保守系議員であれば金融緩和ばかりに頼っている点や、官財の反対や党内の族議員に押されて規制改革が進んでいないこと、予算が膨張していることこそを批判すべき。改革の方向性を全否定するのは安直なポピュリズム以外のなにものではない。

 野党や、財務省の息のかかったエコノミストは、アベノミクスのいい点、悪い点をわかりやすく説明し、対案を示すべきだ。対案なき反対は騒音でしかない。本来の野党のあるべき姿。消費増税の先送りは一致したのであるから、それを前提として財政再建をどう進めるか、日本経済をどう立て直すか?アベノミクスを失敗だと言うなら対案を呈示すべきであろう。
対案が示せない限り、アベノミクスは失敗と断言するべきではない。

そして、大義なき解散というのは単なるネガティブキャンペーンに過ぎないことを、私のブログを読む皆さんは当然気がついているでしょう。

再増税は延期?
【経済コラムマガジン】14/11/17(821号)

一般庶民も知っている事実

最近、ある人(Aさんとする)と話をして大変驚いた。このAさんが「日銀が保有している日本国債は、実質的に国の借金にならない」ということを知っていたのである。年齢(30才代)や外見から失礼であるが、とてもそのような知識を持っているようには見えない一般庶民の一人である。

ただAさんはネットで株式を売買していると話をしていた。ちょうどその日、日銀の追加緩和報道があり、一日で一割くらい儲けたと話をしていた。昼に追加緩和のニュースを知り、直に関連する株を買ったところ間に合ったと言う。このような話から、Aさんはかなり株式に関する知識を持っていると見られる。

つまり株式や経済にある程度精通している人なら、「日銀が買入れ保有している日本国債は、実質的に国の借金にならない」ということを知っていても不思議はないということである。そしてぺらぺら御用学者やぺらぺらマスコミが言っている「日本の財政は破綻の危機にある」という話を、Aさんは「嘘だ」と笑っていた。面白くなって筆者が「極端な話、日銀が発行されている国債を全部買えば、日本は実質的に無借金になる」と話をしたところ、Aさんもこれに納得していた。


本誌は00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」以来、14年間も日銀の国債買入れ政策や政府貨幣(紙幣)の発行を訴えてきた。ところがこのような主張が、14年間の間にどこまで浸透しているのか筆者にも分らなかった。たぶん本誌とは関係のないルートで、このような発想と知識が世間に広がっているものと思われる。

おそらく株式の関連サイトなんかでも、このような話(日銀保有の国債は実質的に国の借金にならないなど)が出ているのであろう。とにかく日本の財政に関して、ようやく正しい情報がジワリジワリと世間に広がっていると筆者には思われる。これは本当に喜んで良いことである。


いまだに「財政破綻の危機」とか「2020年までのプライマリーバランス回復は国際公約」と言っている人々は、根っからの嘘つきかピエロである。ちなみに「2020年の前は、プライマリーバランス回復の目標は2013年」であった。ところが財務省関係者しか関心がないこの目標年度は、いつの間にか延期されていた。しかも彼等はこれが日本国の国際公約だと言い張っているのだからおかしいのである。

もちろんこれに関して政治的な議論は全くなく、国民もほとんど知らないことである。このようにプライマリーバランス回復は極めて軽い目標だったのに、政府の財政政策をがんじがらめに縛ってきた。安倍政権も「新規国債の発行は避ける」といった窮屈な財政運営を強いられている。また消費税増税もこの目標達成のための一環である。しかし安倍政権は、これだけ長期金利が低下し、かつ日銀が国債を買い続けると言っているのだから、もっと国債を発行し必要な財政支出を行えば良い。


安倍政権発足に伴い経済や財政運営に関するパラダイムがシフトしチェンジしたはずであった。一つ目のチェンジはデフレが克服されるべき対象と認識されたことである。この過程での物価上昇は容認されるという雰囲気が生まれた。つまり物価上昇は「悪」という従来の考え方が否定されたのである。ただし何が何でも物価さえ上がれば良いという考え方は、倒錯していると筆者は強く否定してきたところである。

もう一つは、日銀が国債の買入れの制限を外したことである。以前、日銀は国債保有額の限度を日銀券の発行額としていた(せいぜい70兆円が限度)。この意味のない限度を黒田日銀は突破らった。今日、この額は200兆円を越え300兆円程度が一応の目標になっている。

先週号「今のペースなら7~10年で日本は実質的に無借金になる」と述べた。毎年、日銀が国債の保有額を40兆円ずつ増やせば7年、30兆円なら10年かかるという試算である。ただし筆者は「財政破綻ということはない」という正しい認識が世の中に広まることが重要であり(要するに嘘付き財政学者などを世の中から一掃したいということ)、もちろん実質無借金になるまで実際に日銀が国債を買い続けることは必要ないと考える。


パラダイムのシフトとチェンジ

パラダイムが完全にシフトしチェンジしている。しかし古臭い概念を持出す人々は、はいまだに「日本国債が暴落し、長期金利が止めどもなく上昇する」「そのうち物価が止めどもなく上昇する」といい加減なことを言って人々を脅している。そしてこのどうしようもない彼等が消費税増税を推進してきたのである。今年度は消費税を増税しただけでなく、補正予算を前年度から真水で5兆円も減額した。したがってアベノミクスがうまく行かなくなるのも当然である。13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」で本誌が一年前に警告していたことが、今日、まさに起っているのである。

どうやら安倍総理は、消費税の再増税の延期を決断したようである。また任期が2年も余っている衆議院を解散する意向という報道が流れている。筆者は「これは面白くなって来た」と思っている。


マスコミや世間は、衆議院解散に大変驚いている。しかしこの徴候は前からいくつかあった。その一つは11月2日放送の「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)に出演した飯島勲内閣官房参与の発言である。飯島参与はメモを見ながら「12月2日衆議院が解散(衆議院選の公示の間違いで、解散はもっと前と考える)、14日に投開票が行われる」と発言したのである。この爆弾発言にスタジオ中騒然となった。この番組は11月2日に放送されたが、収録は10月31日あたりであろう。読売新聞が「解散」説を報道したのは、これから一週間以上も後のことである。

筆者も飯島氏の爆弾発言には正直驚いた。しかし事はこの飯島氏の発言通りに進んでいる。もちろん再増税の延期と衆議院解散に筆者は大賛成である。これまで安倍総理を断固支持してきたことが大正解であったと筆者は本当に喜んでいる。


14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」で再増税を推進している人々の素性を述べた。端的に言えば「安倍政権が倒れても一向にかまわない」、あるいはさらに一歩進んで「安倍政権を何が何でも倒したい」という勢力である。今まで筆者は、前者が多いと思ってきたが、どうも後者の方が精力的に動いている。

10月24日に藤井裕久元財務相の出版記念(政治改革の熱狂と崩壊)パーティーが開かれた。藤井氏は、消費税増税を推進した元大蔵官僚であり、筆者が史上最低と思う政治家の一人である。新生党時代に大蔵大臣になって「財政支出をしなくとも構造改革や規制緩和で経済成長は可能」と主張し、「地ビールで経済成長」と間抜けなことを言っていた。あまりにも小物なので筆者も無視してきたが、民主党政権時代、消費税増税に奔走し勲章(旭日大受賞)をもらった。

半ば引退状態の藤井氏を政界に引き戻したのがあの鳩山元首相である。鳩山氏の父親が大蔵官僚(事務次官)だったので、大蔵省出身者を異常に信頼していたからという話である。ただこの鳩山氏に関しては、筆者も最早コメントをしたくない。


この出版記念パーティーには消費税推進派と安倍政権打倒派が集結した。民主党だけでなく、自民党関係の政治家も発起人となってこの最低政治家の出版を祝ったのである。ちなみに自民党関係者とは、古賀誠氏、野中広務氏、野田聖子氏、野田毅氏らである。

出席メンバーを見て、このパーティーの性格が分る。まさに安倍政権打倒の決起集会である。したがって安倍総理の再増税回避(今の時点では不確定)は大正解である。筆者には、安倍総理にもっと長く政権を維持しやってもらいたいことが沢山ある。具体的には安全保障・外交と年金改革などである。年金については定額年金制度の導入である(定額年金は民主党が打出した唯一価値のある政策)。

筆者は消費税増税自体は大きな問題とは思っていない(郵政民営化も似ていた)。日銀が10兆円、100兆円単位で国債の保有を増やしている今日、たかが数兆円の消費税の増収は何の意味もない。むしろ増税が有権者の支持を失わせ、結果的に安倍政権を潰すことを筆者は危惧している。筆者の感覚では、今日、激しい政治闘争が繰り広げられている。政治家を支配したい官僚(財務官僚)や、さらに政治家や官僚の上に立ちたいマスコミは、消費税を巡って激しく戦っている。ただマスコミはかなり前から官僚(財務官僚)には白旗を上げてきた。



執筆中


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相場の格言に二日新甫は荒れるとあるが、11月は四日新甫でしたので大荒れです。500円下げ昨日は300円戻る、それにしても7-9月期のGDPは酷かった。
消費税増税先送りは当然である!
岩下真理 SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト

[東京 17日] - 17日朝発表の7―9月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は、前期比年率マイナス1.6%(4―6月期は同マイナス7.3%に下方修正)と、市場予想平均の同プラス2.0%程度から大きくかい離し、衝撃の2四半期連続のマイナスとなった。

市場予想が外れた大きな要因は在庫と設備投資だ。民間在庫品の前期比寄与度はマイナス0.6%と、前期のプラス1.2%という大幅な在庫増の調整が大きく出た。また、関連統計から事前予想でプラスとみられていた設備投資の前期比はマイナス0.2%と、2四半期連続のマイナスになった。

在庫調整は覚悟されていたが、マイナス幅が想定より大きい。好転が期待されていた設備投資の弱さは、内閣府の説明によれば、主因は自動車と電子通信機器の減少とされ、前向きな循環メカニズムが働いているとは言い難い。

一方、個人消費は前期比プラス0.4%と戻りが鈍かった。財・サービス別でみると、耐久消費財(特に自動車やパソコン、白物家電)が前期比マイナスで足を引っ張った格好だ。

ただ、今後の持ち直しを期待できる部分もあった。例えば、生産統計をみると、在庫調整は進展していた。10―12月期の在庫はネガティブにはならないだろう。夏場以降の円安を背景に、企業収益は増加を続けており、今後の設備投資の持ち直しは期待できる。

また、雇用者報酬の前年同期比は、実質マイナス0.6%(4―6月期のマイナス1.9%)、名目プラス2.6%(同プラス1.6%)と共に改善方向にある。所得環境の改善に冬の賞与増加が加わり、さらに天候要因の剥落、耐久消費財の持ち直しも考えれば、10―12月期の消費は二極化(堅調な高額消費、日用品の節約志向)のもとで底堅い動きを続けると、筆者はみている。

基調的なGDPを把握するため、2013年10―12月期から2014年7―9月期の1年間と、その前の2012年10―12月期から2013年7―9月期を比較すると1%程度の伸びはある。消費増税の影響が一巡する10―12月期には、潜在成長率を上回る成長は見込める状況だ。

筆者は増税議論において、足元の4―6月期、7―9月期の景気動向だけに過度に左右されるべきではないと考えている。だが現実には、7―9期の弱さが決め手となって、政治判断として消費再増税の1年半の先送りが発表されることになるのだろう。

<消費統計にはトリックあり>

それにしても、GDP推計に使う消費の需要統計は、4月の消費増税後は供給統計とのかい離が大きい。

需要統計が弱い理由は3つ考えられる。第1に、供給側の統計である商業販売統計には、サービス業となる外食やレジャーは含まれておらず、天候要因の悪影響が及びにくいこと。第2に、総務省「家計調査」のサンプルバイアスの可能性だ。同調査における勤労者世帯の収入データは厚生労働省「毎月勤労統計調査」の現金給与総額と比べて弱く、回答世帯の所得水準が平均よりも低位であると推察される。その結果、収入の弱さを反映した支出の弱さはありそうだ。

第3に、実質化によるマイナス幅の拡大だ。実質化に用いる消費者物価指数(CPI)は「総合」ではなく、「持ち家の帰属家賃を除く総合」である。持ち家の帰属家賃の低下幅が大きいために、それを除いた物価で除すると、総合やコアよりも実質の数字が小さくなってしまうトリックがある。家計調査のサンプルバイアスにより、低所得者層や年金生活者が、日常的に使う食料品(非耐久財)や衣料品(半耐久財)支出において節約志向を強めたことが色濃く反映され、実態よりやや弱い感触になっていると言えそうだ。

筆者は総務省の消費統計研究会(前身は家計調査等改善検討会、2011年11月に開始)の委員を務めており、家計調査の調査方法などの改善を話し合ってきた。実際に見直し(電子家計簿の導入)後の調査が実施されるのは、CPIの2015年基準改定への影響などを考慮して2016年1月以降だ。その後は、実態をより正確に反映できる調査が期待される。しかし今回、日本の消費再増税を決める重要なタイミングで、この統計のサンプルバイアスを指摘せざるを得ないのは、3年前から見直しを考えてきた立場上、非常に残念でならない。

<日銀の三重苦を招く消費増税先送り>

さて、各種報道によれば、安倍首相は18日の有識者点検会合最終回と経済財政諮問会議での議論を踏まえ、同日にも新たな経済対策および2014年度の補正予算編成を指示、消費再増税の1年半先送りの判断と衆議院解散を判断する見込みだ。

今回の解散風の背景には、長期的な経済財政状況よりも、長期政権に向けた「勝てる選挙」の意味合いの方が強く感じられる点が残念だ。消費再増税先送りを決断すれば、目先、いくつかの政策対応を迫られよう。1)消費税を財源とする社会保障関連の予算削減、2)法人実効税率の引き下げ幅、3)補正予算の規模だ。

1点目については2015年度予算で約1.5兆円の消費税収減への対応を迫られる。2点目は、引き下げ幅を小幅にとどめることになろう、3点目は、2013年度決算の剰余金と2014年度の税収上振れ分で3兆円程度にとどめ、「消費刺激」「地方活性化」「災害復旧」を対策の柱とする方向だろう。

筆者は以前より、9―11月の指標で天候要因剥落後の消費持ち直しや設備投資、輸出と生産の増加が確認できれば、消費再増税を決断すべきと主張してきた。確かに消費増税後の国内経済は想定より下振れたが、生産、輸出と消費の供給統計は8月を底に9月以降持ち直す過程にある。駆け込み需要の反動減が一巡する10―12月期には潜在成長率を上回る成長は実現可能だ。4―6月期、7―9月期の弱さだけで、日本経済の実力を測るべきではない。

よってこの際、消費税法の景気条項は外すべきだろう。消費増税議論で最も重要なのは、財政の中長期的な持続可能性という視点だ。先送りは、少子高齢化で人数が少なくなる将来世代に、社会保障の負担を大幅に増加させることを意味する。これでは、日本の明るい未来は描けない。政府は長期的な負荷や基礎的財政収支(プライマリーバランス)計画の修正まで考えた上で、当面のデフレ脱却に向けた前進を選択する以上、それなりの覚悟を持って経済運営を進める必要がある。

振り返れば、2013年1月22日発表の「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」(共同声明)では、日銀が早期の物価目標達成、政府が財政健全化の推進を約束していた。しかし、政府が消費再増税の先送りを決断すれば、日銀は梯子(はしご)を外されたことになる。

ましてや、10月31日の追加緩和(ハロウィーン緩和)を好感した株高、国債大量買い入れによる長期金利の低位安定が再増税先送り論を勢いづけたとするならば、日銀にとって不本意な結果と言わざるを得ない。政府サイドに予算膨張を抑制する姿勢、歳出削減の努力がなければ、日銀による財政のマネタイゼーションという批判は避けられないだろう。

その一方で、14日には短期国債のマイナス金利が拡大し、長期国債の買い入れを増額しても短期国債の需給を緩めることはできていない。異次元緩和の枠組みの限界を露呈しており、遠くない将来、長期国債のオペでも執行リスクにさらされるだろう。

他方、日銀の本気度を受けた円安・ドル高進行の裏側で原油価格はまだ下げ止まる気配がみえない。国際エネルギー機関(IEA)は14日発表した11月の石油市場月報で、「供給が減らなければ、2015年前半に下落圧力はさらに強まる」との見解を表明した。日銀はハロウィーン緩和決定時に物価の下押し圧力を強調し過ぎた分、物価の下振れが視野に入れば、市場に追加緩和を催促されよう。

いまさらながら、追加緩和実施の理由について「デフレマインドの転換が遅延するリスク」顕現化の未然防止と説明したのは失敗だったのではないか。仮に消費増税後の景気下振れに対応した追加緩和としていれば、今秋以降の景気持ち直しにより、市場が物価だけに焦点を当てずに済んだように思える。

以上のように考えると、日銀は当面、1)財政のマネタイゼーションという批判、2)国債買い入れオペの執行リスク、3)原油安による物価鈍化という「三重苦」に見舞われよう。

財政再建派の黒田総裁によるハロウィーン緩和を水の泡にしないためにも、政府はまず来年度の賃上げに向けて働きかけることが肝要だ。また、実質所得の減少に対応した軽減税率導入の検討、人手不足解消につながる雇用面での規制緩和、成長産業育成に向けた特区の新たなプランも進めて欲しい。そして、長期政権のメリットは、企業にとっても新たな事業戦略に安心して取り組める環境が整うことだ。経営者も競争力強化に向けて、この機会を逃してはならない。

<エルニーニョ暖冬で米景気腰折れリスクは>

最後に、日本の消費に影響を与えた気象の最新情報をお届けしたい。気象庁は10日発表のエルニーニョ監視速報(2014年10月の実況と2014年11月から2015年5月の見通し)で、「冬にはエルニーニョ現象が発生している可能性がより高い」「今後の状況により、エルニーニョ現象がこの夏から発生していたと判断する可能性もある」との見解を示した。

2014年は3月発表時にエルニーニョ現象発生の可能性が指摘され、7月には「遅れる」、8月には「低い」、11月にはまた「可能性あり」に修正と、経済予測は本当に気象予測に振り回され続けている。それでも鰯(いわし)の行動は教えてくれていたと、筆者には思える。仮に日本が暖冬となった場合、冬物衣料や鍋料理関連の消費、冬スポーツの支出が伸び悩む可能性が考えられるだろう。

ちなみに、エルニーニョ現象発生時の天候の特徴で、筆者が気になるのは世界経済のけん引役である米国だ。冬の間(12月から2月)、北米中部には高温傾向、米国北西部には多雨傾向がある。今年1―3月期の大寒波後、米国景気は天候要因に引っ張られることなく緩やかな回復を続けてきたが、果たしてエルニーニョ暖冬が訪れても、腰折れすることはないのか。来年にかけても引き続き、天候からは目が離せない。
GDPの7-9月期は酷かったが企業決算の2014年4-9月期決算は、金融危機前の2008年3月期に記録した過去最高益に迫る見通しとなった。11月14日までに3月期決算企業1524社の発表が済んだが、2015年3月期全体の増益率は期初の1%台から上振れした。内需減速を背景に非製造業が5%減益を見込む一方、製造業の利益は8%増えて全体をけん引している。特に目立っているのが従来は減益見通しであった企業が一転して増益予想に上方修正するという「サプライズ増益」となったことによるものである。
北アメリカに対する輸出が好調であったことから主要な自動車企業が減益予想から最高益に上方修正されたこと、さらには電機企業も多くのところで増益見通しに転じたことによるものであった。日本の製造業を中心とする企業は足元の円安が定着すれば収益は今後さらに上振れする可能性が「大いにある」という状況となってきた。
日本の輸出企業の業績改善は一段と進み、賃金や投資増などを通じて景気を一段と下支えする効果が強まりそうであることから、黒田総裁の金融緩和第二弾以降GDPは改善方向に向くであろう。
日本経済はアベノミクスがスタートしてから今までだけをみてみれば悪い面がひろがりをみせていたが、2年前の11月14日に日本民主党の野田前首相が衆院の解散を行って、翌日から円安と株高が進んだ。その時の日経平均株価は8664円であったが、2年間でほぼ2倍になった。株価が上がれば、来年春以降には円安の効果が多くの面で良い方向にあらわれてくるはずである。アベノミクスは失敗ではない。

アベノミクスは失敗してない、増税延期は当然=浜田内閣官房参与
【ロイター】2014年 11月 18日 13:47 JST

[東京 18日 ロイター] - 内閣官房参与を務める浜田宏一・エール大名誉教授は18日、自民党議員との会合後に記者団に対し、来年10月の消費税再増税の先送りは当然とし、1年半の延期が妥当との認識を示した。17日公表の7─9月期の実質国内総生産(GDP)は予想外のマイナス成長となったが、アベノミクスは失敗していないと強調した。

浜田氏は消費税再増税について、先送りが「当然」とし、実施時期についは「安心感を与えるためにも1年半後に実施するとの意見に私は近い」と語った。

7─9月期の実質GDPは、前期比マイナス0.4%(年率換算マイナス1.6%)と2四半期連続のマイナス成長となったが、これまでの景気もたつきは4月の消費税率引き上げなどによるものとし、「アベノミクスは失敗していない」と指摘。もっとも、日本の潜在成長率が低迷していることは「情けない」と述べ、潜在成長率引き上げに向け、法人税率の大胆な引き下げや規制緩和、女性の活用、環太平洋連携協定(TPP)などアベノミクスの第3矢に注力する必要性を強調した。

消費税再増税の延期で日本の財政に対する信認が揺らぐ懸念があることに対しては、

増税をめぐる最近の議論を受けて株価が上昇していることをあげ、「日本経済に対する信頼は増税を止めた時の方が増えている」と指摘。世界の投資家は日本の財政が立ちいかなくなるとの心配よりも「日本経済全体が動けなくなることを心配していると思う」と語った。

そのうえで、日本が民間と政府を合わせて世界最大の対外資産を保有していることに触れ、「日本ほど親が働いて資産を溜めている国はない」と主張。政府債務は累増を続けているが、「実現可能なネズミ講システムだ。普通のネズミ講はどこかで終わって破綻するが、どこの政府でも次の納税者は必ずあらわれる」とし、「政府が自転車操業でお金を借りまくることはいいことではないが、政府と民間を合わせれば、消費税を先送りしても信頼が崩れることはない」と述べた。

日銀は10月31日に電撃的な追加緩和に踏み切ったが、浜田氏はこれまでの日銀の対応で「金融政策をやれば効くことがわかった」と指摘。金融政策は「今後もしっかりやってほしい」としたが、足元で労働需給がひっ迫していることなどからインフレが急速に進行する可能性もあり、日銀による追加緩和はしばらく必要ないとの見解も示した。

(伊藤純夫)
反安倍の増税派や左翼リベラル陣営はアベノミクス失敗論を宣伝しているが、アベノミクスに代わる対案を出して批判しているわけではなく、アベノミクス失敗論者は単なる騒音にすぎない。
現状は円安による悲観論だけが強く表面化しているが、来春以降には賃金増などや投資増などが加わって、日本経済の景況感は今年よりは一段と明るさを増してきそうである。考えてみれば、リーマン・ショック当時、日本が超円高・ドル安の時代には株価は次第に下落し、物価はどんどん安くなり、日本の企業は円高でどんどん貧乏となり、社員のクビを切り、賃金カットをしなければ会社がつぶれるような時代が2-3年前まで長く続いた。
 しかし、2012年から日本経済は流れが変わった。円安・ドル高時代に突入したことによって物価は上昇したものの、賃金は上昇し、クビ切りはなくなり、会社はある程度の利益が生まれ、賞与も上昇する時代となった。会社はもうけがでて生産できる時代となってきた。そして、人不足の時代となり、社員をクビにすることなく、社員を増やせるような時代となってきた。企業は大企業から、次第に中小企業も輸出価格が上昇して利益のでる時代に来年から突入しそうである。リーマン・ショック時のデフレスパイラルから、若干インフレ的経済へと変化している。デフレ時代は物に需要がなくなることから物は売れない時代である。現状の日本人の頭にはデフレ経済の物価の下がる時代が良かったという概念が20年近くインプットされてしまっている。物価がどんどん下がる時代とは、「経済が破綻」へと向かい、「経済が奈落の底へ」と落ちこんでいる時代である。今こそ、「デフレ経済がインプットされてしまった」日本経済を「インフレ気味の経済」に変えなければ日本は世界経済の中からとり残されてしまう。米国は超ドル安によって5年間で信用危機をはねのけ、世界中にバラまかれたドルを現状回収できる経済体質に変えてしまった。
 今度は20年近いデフレスパイラルから超円安によって日本経済がインフレ気味な経済をとり戻す番である。超円安によって株高となり、日本の企業が収益を急拡大し、産業規模を拡大化して、そのもうけでデフレ時代に下がりっぱなしたった社員の給与を引き上げて社員の生活力をとり戻し、日本企業の産業活動を海外に発展させていくことのできる時代となってきた。日本経済は長いデフレ時代(物価が下がることで安易な生活ができる満足感に長い間なれてしまった時代)で世界経済の中で競争力を失ってしまい近隣諸国からバカにされる国へとなってしまった。今度こそそうした輪の中から日本は抜け出さねばならない。
現状、超円安は困るとか円安によって物価が上昇するから苦しいなどといっているが、何せまだ円安はここ半年から1年間前後に始まったばかりである。超円安を利用して物価高の中でいかに生きていくかを考える時である。
 国家的にみれば円安は国としていかに収益をあげていくかを考える時代であり、そのもうけをいかに国民に分け与えていくかを安倍さんが考えていく時代である。私は現状の円安時代が長く続けば2年後には国民に賃金などの上昇となって還元される時代になると思っている。日本は超円高・超ドル安によって、この5年間で世界経済の中で超貧乏の企業国に陥ってしまった。超デフレ大国となってしまった。円安・株高の進展で2015年3月期の企業収益は回復、ようやく貧乏国家からアベノミクスによって外需を稼ぐ国家へと修正が始まったところである。 
2015年3月期に続いて2016 ・ 2017年さらには2020年のオリンピックの年もデフレ経済から「おさらば」できれば物価高に見合うだけの給与水準が可能となるであろう。リーマン・ショック時の円高・株安で日本の企業は収益が「はだか」にされてしまった。日本の企業は今度の円安・株高で、2015年3月期の全体の経常利益額は過去最高だった2008年3月期のほぼ100%に近い水準にまで回復し、6社に1社が最高益となる見通しである。日本の輸出大企業にとっては一段の足元の円安が定着すれば収益は来年3月の決算で上振れする可能性を秘めることになる。となれば来年夏のボーナスはー段と拡大し、賃金も拡大化していくものと考えられる。現状の円安の拡大化が続いていけばこうした流れは一段と大きな波となると思われる。 

執筆中

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SFの世界では以前から、レーザー光線が、刀になったり敵の宇宙船を撃破したりと大活躍をしている。しかしこれまでは、大気中の減衰のためレーザー光線によるエネルギーの遠距離伝達は極めて困難であり、まだまだ兵器としての実用化には程遠いものと考えられてきた。

しかし最新の技術情報によれば、ポーランドで遠距離到達も可能な極めて高出力のレーザー衝撃波を生成することを可能にする技術突破がなされた。それは将来、兵器として実戦配備されれば、空中を飛翔するミサイル、砲弾などを照射し破壊することが可能になることを意味している。

その結果戦争様相は一変し、また第2次大戦中から実用化され核兵器の運搬手段として阻止困難とみられてきた、弾道ミサイルの撃墜すら可能になるであろう。そうなれば、これまでの核大国の抑止力は意味を失い、国際秩序もまた大きく変化することになる。

1 これまでの高出力レーザー技術の水準

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                                                 高出力レーザーのうち1キロワット水準のものはすでに、通信、溶接など様々の産業用の用途に幅広く使用されている。現在高出力レーザーとして、軍用で開発されているものは、1キロワット以上から100キロワット程度を目標としている。

高出力を得るための技術としては、通信用に使用されているファイバーを利用した「ファイバーレーザー」の技術がある。

さらにファイバーを束ねて、プリズムと逆の原理で様々の波長を組み合わせることにより大出力を得ようとする「スペクトラル収束」という技術も開発されている。ファイバーを多数束ねて高出力を得る場合、目標や用途に応じて出力を調整することも可能になる。

また、酸化亜鉛などの材料を使い半導体のp型とn型の間に、LEDとレーザー光により「p-n結合(junction)」を生じさせ、高エネルギーを得る「半導体レーザー」がある。この半導体レーザーにより、100キロワットの出力も達成されている。

一方、レーザー照射した目標からの反射光を分析し、目標物の化学組成を解明する技術も開発されている。

軍事用の高出力レーザーの開発は、米軍と米軍需産業を中心に行なわれており、半導体レーザーは高熱を発し大型のため、主に艦艇用に使用されている。  
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レーザー兵器の概要
米海軍では、艦艇用のレーザーにより、小型舟艇の能力を喪失させあるいは無人偵察機を撃墜することに成功している。この型のレーザー兵器を搭載した艦艇の試験的な配備を2014年夏頃から開始することになっている。            
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米海軍、艦船用の30kw級レーザー砲のプロトタイプモデルを展開! 
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米海軍では、高速艇や小型航空機を撃墜する能力を持つ15~50キロワット程度の出力の艦載型レーザー兵器の実戦配備が2017年から2022年の間に予定されている。近い将来、100キロワット級を駆逐艦に搭載し、さらに対艦巡航ミサイル、有人戦闘機も撃墜できる300キロワット級に増強することも計画されている。   
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小型低出力のものは車両などに搭載することもできる。米海兵隊では、無人機を発見追尾することを狙いとして、2014年に10キロワット級、2016年までに30キロワット級の車載型レーザーの試験を行なう予定になっている。米陸軍はさらに強力なレーザーをトラックに搭載する計画を進めている。                  経済的な意味合いも大きい。欧米各国は国防費の削減圧力に直面しているが、高出力レーザーを目標破壊に使用した場合のコストを見積もると、発射のたびに1ドル程度のコストとなるが、再装填する必要がなく、これまでの砲弾その他のあらゆる手段よりもはるかに安価になる。

その結果、今後軍需目的の高出力レーザー市場は急成長し、米国では2020年頃には90億ドルの規模に達すると予想されている。また技術的にも数年以内にブレークスルーがなされ、研究レベルから実戦配備段階に進むものと予想されていた。

しかしながら、これまで数十年にわたり研究開発が続けられながら、高出力レーザーの実用化が進まなかった最大の原因は、大気中でレーザー光が散乱し伝達されるエネルギーが減衰することにあった。                      
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S.B.L(Space Based Laser)と空中発射レーザー・ミサイル迎撃機 YAL-1A  

米軍では2007年から、ボーイング747型の大型輸送機にレーザーを載せて空中発射型のレーザー(Airborne Laser: ABL)の開発を進め、2010年にはミサイルの撃墜試験にも成功した。

しかし技術的には、大気中でのレーザー光の拡散によるエネルギーの減衰と、そのときの大気や気象の状態によりレーザーが曲げられるという問題があった。

この対策として、ABLでは、まず照準補正用のレーザーを発射してから、高エネルギーのレーザーを照射するという2段階方式がとられた。しかしそれでも航空機に搭載できる規模のレーザーの威力は最大数十キロしか届かなかった。

運用面でも、発射直後の弾道ミサイルを撃墜しようとした場合、目標の近くにABLの大型機を、敵ミサイルが発射されるまで長時間滞空させておく必要があり、危険すぎるという問題が指摘された。

結局、予算不足が直接の原因となり2011年12月にABL開発計画は中止された。その後の空中発射レーザーの開発は、航空機後方から接近するミサイルに対する防御システムやビジネスクラスの小型機に搭載できる小型タレット(回転発射台)の開発を重点として進められている。

また米国では、高出力レーザーにより核融合を起こす実験も行なわれているが、レーザーの出力と温度を3倍から10倍に高める必要があり、いまだに成功の目処は立っていない。 ロッキード・マーチン小型核融合炉10年以内実用化へ

2 今回なされたブレークスルーの概要                           
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しかし、このようなレーザーの出力不足と大気中の拡散によるエネルギーの減衰、それに伴う到達距離の限界という問題点克服の可能性を拓く画期的な技術が、最近ポーランドの研究機関で開発された。その概要は、以下の通りである。

今年10月、ポーランド科学アカデミー・ワルシャワ大学物理学部の物理化学研究所(ICPPAS&FUW)のレーザー・センターが、約12×10-15秒という極めて短いレーザー・パルスの撮影に成功したことが報じられた。

撮影には、レーザーの照射周期と撮影周期を10分の1秒程度に同期させ、最小限の時間だけ遅れたレーザーの画像を逐次撮影するという手法が用いられた。

この手法により、逐次異なるレーザー・パルスが撮影されることになるが、物理的な運動原理は同じため、レーザー・パルスの運動に伴うすべての現象が撮影できるようになる。研究チームは、その手法を適用し、上記の超短波のレーザー・パルスがゆっくりと大気中を移動する様子を撮影することに成功した。

この超短波レーザー・パルスは1010(100億)キロワットという極めて高エネルギーである。そのため、衝突する大気中の原子が瞬時にイオン化され、このレーザー・パルスに沿って、プラズマのファイバーが形成される。

パルスの電磁場とプラズマ・ファイバーの間の複雑な相互関係をバランスさせることにより、レーザー光は大気中に分散しなくなり、逆に自ら収斂するようになる。その結果、レーザー光はこれまでの低出力のレーザーよりもはるかに遠くまで届くことになる。

さらに好都合なことに、異なる波長のレーザーが含まれるため、全体としてはこの種のレーザー光は白色になる。白色になることで、様々の波長のレーザー光を送れるため、伝達できる情報量も飛躍的に増大する。

この極めて高エネルギーのレーザーのエネルギーは、ポンプ・レーザーから増幅ビームに直接伝えられたが、数億回増幅されて、数センチ離れたところで伝達効率が30%に達した。この値は、同種の装置の中では抜きん出て高い。

このような技術の出現は、これまで最大の問題点とされてきたレーザー光の大気中での拡散という問題点が大幅に改善される技術への道が開かれたことを意味している。その与える衝撃は極めて大きい。

3 高出力レーザー兵器による各種ミサイルの無効化

まずこの種の高出力レーザーが実用化されれば、「ミサイル防衛システム(MD)」により飛来する弾道ミサイルの完全な空中撃破が可能になると予想される。

現在のMDは、迎撃ミサイルにより、超高速で飛来する弾道ミサイルを直撃して撃破するため、目標の未来位置を算定し、その方向にミサイルを誘導しなければならない。しかも核弾頭を確実に破壊するためには、弾頭部に直接命中させる必要がある。

しかし、目標となる弾道ミサイルの速度が速くなり、高度が高くなるほど、迎撃ミサイルには、短時間の加速性能と迎撃に必要な到達高度を保証する強力なエンジン、目標誘導のための急旋回を可能にする運動性能、最終的な命中部位確認のためのセンサー、未来位置を計算するためのミサイル搭載用高速コンピューターなどを備えなければならない。

そのためには、ミサイルをより大型化せざるを得なくなる。例えば、日米で共同開発が進められている「SM-3ブロックⅡ」シリーズでは、ミサイル全体の直径がこれまでの13インチから21インチに増大する。

しかしその結果、単価も上がり予算の制約から保有数は少なくなり、大型化するため艦艇などへの搭載数も限定されることになる。そのため、囮(おとり)を含めた多数のICBM(大陸間弾道弾)の撃墜能力には、限界が生じてくる。

このことは、2010年に米国防総省から出された『弾道ミサイル防衛見直し報告』でも、MDには米国のミサイル防衛はロシアや中国の大規模なミサイル攻撃に対処する能力はなく、イランや北朝鮮などの「局地的な脅威」に対処するためのものであり、戦略的安定性には影響を与えないことを強調していることからも伺われる。

高出力レーザー兵器により、大気圏内に突入した弾道ミサイルの核弾頭を数百キロの距離から照射し、そのエネルギーで破壊できるようになれば、最も速い秒速7キロ程度の大陸間弾道ミサイルの弾頭でもほぼ確実に着弾、起爆以前に破壊することが可能になる。

また、地表面から30メートル以下を亜音速で飛翔する巡航ミサイルについても、上空からの監視により発見されレーザー照射を受ければ、確実に破壊されることになる。

このことは、弾道ミサイルも巡航ミサイルも、核をはじめ各種の弾頭の運搬手段として無力化されることを意味している。航空機の撃墜も同様に極めて容易になり、防空戦闘は防御側が圧倒的に有利になる。

4 核抑止力の無効化と国際政治構造の根本的な変革

高出力レーザーにより、100%に近いミサイル撃墜能力が可能になれば、その及ぼす影響は、革命的なものとなり、国際的な力関係も戦争様相も一変し、戦略レベルから戦術レベルまで極めて深刻な影響を及ぼすと見られる。

第1に核抑止機能に重大な影響を与える。各種の核ミサイルがほぼ100%撃墜可能になれば、現在の核大国が享受している、「防ぎようのない核攻撃の破壊力への恐怖により相手国の我が方にとり好ましくない行動を思いとどまらせる」という、核兵器による抑止機能はほとんど機能しなくなる。

ただし、ミサイルによらず直接相手国国土に何らかの形で核兵器を搬入するという方法は、レーザー兵器では阻止も抑止もできない。そのため、核テロ、あるいは特殊部隊などによる核兵器持ち込みなどの脅威はなくならない。

これを阻止するには、核関連物質に対するより厳格な国際管理と各国の国境管理が必要不可欠になる。

また核兵器以上に安価で破壊力があり持ち込みも容易な生物・化学兵器の価値は相対的に増大し、テロなどでより多用されることになるであろう。その結果、核、生物、化学などの大量破壊兵器を用いたテロの可能性が増大し、最大の脅威になると見られる。

一方で核ミサイルの抑止機能がなくなり、他方で核テロの脅威が残れば、大量の核兵器や関連物質を各国が保有している利点はなくなる。

そのため、核保有国も含めどの国にとっても、国際的に必要最小限の核兵器と核関連物質を共同で管理し、テロリストやある国の独裁者等が密かに核保有を進め、ある日突然保有を宣言し核恫喝を行なうという脅威を防止するという核政策、核戦略が、国益に適うことになる。

その結果、核兵器は最小限抑止の水準を維持しながら、国際的な共同管理に委任するのが最も賢明な核戦略、核政策となり、国際的にも合意に至る可能性が高まるであろう。

作戦戦略にも革命的影響を与える。

中国が追求しているとみられている沿岸から3000キロ以内に各種ミサイル戦力を重畳に配置し、米空母などの接近を遅延、あるいは阻止させる「A2/AD」戦略その威力を失うことになる。日本など東アジアの米同盟国は、自立的に中国の核脅威に対し対処できる能力を持てる可能性が出てくる。

国際政治構造も大きく変化する。

核大国が核兵器を背景とする卓絶した軍事的威嚇力を失うことにより、核を保有する5大国が常任理事国を務める国連の安全保障理事会の体制も、核保有国をこれら5カ国に固定した現在の核不拡散条約の体制も、抜本的な変革を迫られることになるであろう。

核大国の世界の安定と秩序に対する影響力は大きく削がれる半面、世界は多極化あるいは無極化し、責任を持った秩序形成者が不在になる恐れもある。

大国の圧倒的な抑止力が機能しなくなり、かつ防御側がより強力になることから、全般的に戦争が発生しやくなり、かつ長期化するようになると予想される。

また、核時代には抑止されてきた大国間の直接の紛争や戦争も起こるようになるであろう。逆に、核を持たない国でも、レーザー兵器や無人兵器を開発し運用できる高度の技術的水準とそれを駆使できる兵員を持つ国は、軍事的にも優位に立てるようになる。

5 一変する戦争様相

戦争様相も一変する。ミサイルのみならば砲弾なども空中でレーザーにより破壊されるようになる。少なくとも大口径の長射程砲弾は、空中で破壊される可能性が高い。

小銃も威力調整が可能で確実に目標に命中できる携帯式小型レーザーに切り替わるかもしれない。そうなれば特別な訓練なしでも、目標が確認さえされれば、百発百中の射撃が可能になる。

さらに、各種の無人兵器にレーザー兵器が搭載され、空中や地表面から突然殺傷力のあるレーザーにより、生身の人間が攻撃されるという危険性も高まる。無人兵器同士のレーザーによる戦闘が戦闘の帰趨を決めることになるかもしれない。

警戒監視、捜索にも、情報伝達にも、殺傷破壊にも、レーザー兵器は自由に転換して使用できるため、戦場と兵器のシステム化が極端に進展することになるであろう。

そのため、陸海空軍という軍種区分は意味がなくなり、多くの指揮・司令センターの要員は地上または地下、一部は海中や宇宙空間からの遠隔操作により、陸海空、宇宙、サイバーなどあらゆる空間の主として無人兵器による戦闘を指揮統制することになるであろう。

レーザー兵器の発達は、全体的にはこれまでの攻撃的な破壊力の主体であった砲爆撃あるいは核兵器の威力を無力化する効果があるため、防御側に有利に作用する。またレーザー兵器の特色として、極めて精度の高い選択的な攻撃が可能になることがあるため、攻撃に伴う副次的な破壊は極端に減り、目標のみを効率的に破壊できるようになる。

そのため、戦争は制限的になり、すべてを破壊し尽くすような全面戦争は起こりにくくなるであろう。しかし半面、敵を特定しにくい、ゲリラ戦やテロは抵抗側の戦いの主要形態になる。

ゲリラ戦やテロでも、核・生物・化学兵器、サイバー攻撃、電磁パルス攻撃など、少数でも極めて大きな破壊力を行使できる手段が、防御力の欠けた一般人や都市部、主要インフラなどの弱点に対し、ますます奇襲的に多用されるようになるであろう。

そのため、平時と有事、前線と後方、交戦国と非交戦国の区分がなくなり、判然としない敵との烈しい戦闘が局所的に奇襲的かつ不連続に、世界のあちらこちらで生起するようになると見られる。

このような脅威に対処するには、レーザー兵器や無人兵器など、敵が特定できることを前提とする兵器体系だけでは十分に対応できない。最終的には人間が自ら行動し、敵を直接識別確認したうえで、交戦するかまたはレーザー兵器等を目標に誘導して制圧するという戦闘形態を踏まざるを得ない。

そのため、単独で瞬時に判断し行動でき、使命感に富み士気と規律心が高く、高度の判断力、体力、精神力、装備駆使能力を備えた精鋭の兵員がますます要求されるようになる。無人兵器が発達すればするほど、兵員の能力、資質への要求は高まることになる。

また、これまで軍事作戦の補給の重点であったミサイル・砲弾などの補給上の負担はなくなり、燃料の所要も大幅に減ることになる。

エンジンのハイブリッド化、小型無人車、電気自動車の普及、太陽光発電の利用などの要因が重なれば、さらに燃料所要は削減される。輸送手段もほとんどが無人化、自動化されるであろう。その結果、軍のロジスティックの概念と運用も革命的な変化を遂げるであろう。

6 有利な立場にある日本
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高出力レーザー・システムにより、核ミサイル保有国の核脅威、核恫喝に対し、独力で効果的に対処し排除できる可能性が高まる。その結果日本は、核恫喝や他国への核抑止依存から脱却し、自主独立の国家として再生することも可能になるであろう。

レーザー兵器の発達は、日本のような周囲環海の島嶼国に二重の意味で有利に作用する。まず、防御ゾーンとして広大な海域を利用でき、直接国土に達するかなり前方からミサイル等を迎撃できる。そのため、奇襲を受ける恐れが減少し、国土戦の不利が緩和される。

また、海の障壁により、特殊部隊やテロリストによる核などの持込に対し、水際で防ぐことが、地続きの国境を持つ国よりも容易である。ただし、そのためには国境管理、離島も含めた周辺海域、領域に対する警備能力を高めなければならない。

これらの利点を生かすには、広大なEEZを資源開発拠点、防災拠点、観光、環境保護など多目的に活用しつつ、防衛警備にも使用するため、洋上メガフロート・ネットワーク・システムを国家プロジェクトとして推進する必要がある。

レーザーによる防衛システムとともに、国土を覆う警戒監視システムとして、成層圏から宇宙空間に至る、無人機と静止衛星システムを、レーザー通信網でネットワーク化し、危機時には目標物を発見阻止できる、日本列島全体を立体的に覆う、早期警戒監視システムを展開することも必要である。

このような情報・警戒監視・偵察(ISR)システムとレーザー防衛システムが連動することによって、初めて効果的な国土防衛が可能になる。また、ISRシステムとして、海上の脅威、海中からの浸透に備えるため無人と有人の潜水艦システムの展開、及び宇宙空間での警戒監視システムの展開も必要である。

これらのシステムへのエネルギー供給システムも必要になる。そのため、宇宙空間で太陽光発電を効率的に行い、その電力エネルギーを高出力レーザー、マイクロウェーブなどで送り、無人機、洋上警戒監視システムなどを駆動させるなどのシステムの開発も必要である。

これらのシステムの中枢となる有人の指揮・司令センターを、地下、海中など秘匿性と残存性に優れた場所に設けなければならない。その際には、ISRあるいはレーザー兵器システムとの指揮統制・通信・コンピューターネットワークとの連接をどう確保するかも、重大な課題になる。特に、指揮・司令センターの移動間の安全と通信を確保することが不可欠である。

以上のようなシステムを支える科学技術水準全般について、日本の水準を高度に保つことができれば、安全保障における科学技術面での優位性が確保でき、周辺国の脅威をより効果的に抑止することができる。

そのための人的資源と関連する教育、情報のインフラに、日本は比較的恵まれている。その利点を生かして、科学技術力の優位により抑止力を維持できる道を探らねばならない。

そのためには、以上のようなブレークスルーを可能にする、高出力レーザーの研究開発に国家プロジェクトとして取り組まねばならない。また、海外の技術情報を組織的に収集分析し、技術的な奇襲を受けないよう、国家レベルの技術情報の収集分析機関を設置すべきであろう。

今後技術革新はますます加速すると見られる。高出力レーザー以外にも、ナノテクノロジー、遺伝子工学、コンピューターサイエンス、ロボット技術など、将来の軍事技術と安全保障戦略に革命的変革を与える可能性のある革新的技術分野は多い。

これらの分野について、国家安全保障の観点から科学技術戦略を立て、組織的な情報分析、研究開発、運用研究に国として組織的計画的に取り組まなければ、時代の変革に対応した実効性のある安全保障の戦略も政策も編み出すことはできない。

ただし、このような革新的技術が開発されたとしても、通常それが実戦配備され戦力になるには、最低でも10年程度を要する。そのため、日本の核抑止戦力を、高出力レーザーなどのまだ実用化されていない最先端技術のみに依存するのは危険である。

特に、日本をめぐる地域的な核戦力バランスが中国優位に傾きつつある今日、当面の核抑止力維持のための実効性ある方法については、現在の弾道ミサイル防衛システムには限界があることを踏まえ、自らも最小限核抑止力を保有するなど、具体的な方策を検討すべきであろう。

TRDI 27年度予算概算要求の概要と防衛技術シンポジウム 2014要旨集の注目点 
弾数に縛られない高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)によるライト  スピードウェポンを開発しています。
イメージ 13これは、低出力時増幅器として進行波管(TWT:Traveling Wave Tube)を、フェーズドアレイレーダとして使い、高出力モード時には指向性兵器として高出力のレーザーや電磁波は瞬時に相手のセンサーや電子機器を無効化する兵器です。
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近年の装備品等に含まれる電子機器は高速処理化、低動作電圧化及び小型軽量化のため、高密度化が進み、高出力マイクロ波に対する脆弱化が加速している。一方、マイクロ波を使用するレーダ等の装備品では高出力化が進んでおり、将来戦闘機の開発ビジョンにも示されているように、高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)によるライトスピードウェポンが有望視され、その研究開発が進められている。 

マイクロ波帯で高出力を発生する増幅器として、ガリウムヒ素や窒化ガリウム等の化合物半導体の開発が近年活発に行われているものの、HPMによる攻撃用途には、空中線電力が不足している。一方、高出力を発生する増幅器として進行波管(TWT:Traveling Wave Tube)による方式では、TWTの小型化と相まって、アレイ化可能なMPMとして研究が進められている。

TWTを増幅器とするMPMは半導体増幅器を用いたモジュールと比べ高出力化が可能であり、効率も高く、高出力化により増加する発熱量の抑圧にも有効であるため、航空機、艦船、車両等のように搭載容量、電源容量及び冷却容量の制限があるシステムへの適用が期待できる。
 



先月の本コラム(「米軍も取らざるを得ない『弱者の戦略』、早急に必要な中国のA2/AD戦略への対抗策」)で紹介したように、中国海軍の対米「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)戦略に対抗するためには、アメリカ自身も対中A2/AD戦略を練って、できれば同盟国・友好国を巻き込んでその戦略を実施していかねばならない状況に立ち至っている。そこでアメリカ軍事専門家の間からは、対中A2/AD戦略やそれを実施するための様々な作戦構想などが浮上してきている。

陸軍も含めた第1列島線への接近阻止構想

このような流れの中で、先月、アメリカ連邦議会下院軍事委員会のフォーブス議員は、「中国海軍をいわゆる第1列島線に接近させないための具体的な軍備態勢を、アメリカが主導して構築していくべきである」という書簡を米陸軍参謀総長オディエルノ大将に送った。

ここで注目すべきなのは、海軍戦力小委員会に所属しているフォーブス議員が、対中戦略構想に関する陸軍の態勢をオディエルノ陸軍参謀総長に打診した点である。

中国の対米A2/AD戦略は海軍力と航空戦力、それに各種ミサイル戦力が主役である。そのため、これまで中国に対抗すべくアメリカ軍が編み出した「ASB」(エアシーバトル)作戦概念にしても、現在構築が急がれている対中A2/AD戦略にしても、海軍力と空軍力が中心となるのは当然と考えられてきた。しかし、「海軍力と空軍力に加えて陸軍力も大きな役割を果たすことになる」という対中接近阻止の発想が持ち上がっており、それに立脚してフォーブス議員はオディエルノ陸軍大将に陸軍の準備態勢を問うたのだ。

フォーブス議員たちが推し進めようと考えている対中A2/AD戦略は、中国海軍や航空戦力が第1列島線へ接近することを阻止する構想である。これは米軍関係国防シンクタンクが提言しており、それに対中軍事政策に関わる連邦議員たちが着目したわけだ。

この構想は、従来のASB作戦の発想とは異なっている。ASB作戦は、アメリカ側の海中・海上・航空戦力を(質的に)強化して、中国海軍や空軍が第1列島線から第2列島線へと侵攻するのを撃退する、という発想だった。

それに対して対中A2/AD戦略は、「中国海軍が第1列島線を突破するために必ず通過しなければならないチョークポイント(海峡や島嶼と島嶼の間の海域)を射程圏に収める地上発射型長距離対艦ミサイルを多数配備して、軍事的緊張が高まった際には、中国軍艦艇が第1列島線に接近すること自体を阻止してしまう」というものである。

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そして、それらの地上発射型長距離対艦ミサイルを運用する部隊は地上の部隊であるため必然的に陸軍であるという点が、これまでとは大きく異なっている。これまでのASBをはじめとするアジア重視政策に対応した軍備態勢では海軍と空軍が主役であり、陸軍は出番がなかったのである。

アメリカの防衛産業が潤うという経済的側面も

このような地上発射型長距離対艦ミサイルを活用するという構想は、本コラム(「効果は絶大、与那国島に配備される海洋防衛部隊」)で提示したものと類似しており、陸上自衛隊にも同様の構想が存在していると考えられる。

ただし、日本にとっての第1列島線接近阻止は、第一義的には日本の領域への直接的侵攻を阻止することにある。具体的には、対馬から九州・南西諸島を経て与那国島に至る列島線上に適宜対艦ミサイル・対空ミサイル部隊を配置するという、第1列島線の北半分の“阻止線”構築を意味する。

しかし、
アメリカ軍にとっては、対馬からインドネシアに至る長大な第1列島線に多数存在するチョークポイントを地対艦ミサイル網によって封止するだけでなく、マラッカ海峡やマカッサル海峡など第1列島線の外側に位置する重要なチョークポイントも封止してしまい、戦時には中国海軍が西太平洋やインド洋に繰り出してこないような長大な阻止線を構築しようというものである。

アメリカとしては、アメリカ主導によってこのような地上発射型長距離対艦ミサイル防衛網を築き上げようとしている。しかしながら、アメリカは国防費大幅削減の真っ直中にあり、日本、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールに多数の陸軍対艦ミサイル部隊を展開するのは現実的には困難である。

アメリカ軍が限定的な数のミサイル部隊を展開させるにしても、主たる戦力は列島線上に位置するそれぞれの国が提供することにならざるを得ない。もっとも、日本を含むそれらの諸国にとっても、対中国海軍接近阻止線の構築はそれぞれの国防上、有効かつ不可欠な施策である。

とはいっても、日本や台湾とは違ってフィリピン、インドネシア、マレーシアそれにシンガポールには、地上発射型長距離対艦ミサイルや対艦ミサイル部隊自身を防御する長距離対空ミサイルを開発する能力は備わっていない。したがって、アメリカがこれらのミサイルシステムをそれらの国に売り込んで対艦ミサイル部隊を建設させ、それを指導する名目で少数のアメリカ陸軍ミサイル部隊を送り込み、主導的立場を維持しようと目論んでいるものと考えられる。

連邦議員たちがこのような戦略に着目しているのは、軍事的に期待が持てる構想であるというだけでなく、アメリカの防衛産業が潤うという経済的側面も備わっているからである。

国際社会に知られていない日本の対艦ミサイルの性能                
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ただし、現在アメリカ自身は地上発射型長距離対艦ミサイルを運用しておらず、開発もしていない。もともと、この種のミサイルの開発に熱心なのは中国とロシア、それにイランといったアメリカに対抗する側の諸国である。西側諸国でこの種のミサイルを開発し運用しているのはスウェーデン、ノルウェー、台湾、それに日本だけである。

したがって、アメリカ陸軍が地対艦ミサイル部隊を構築し、さらにフィリピン、インドネシア、マレーシアに対艦ミサイル部隊を構築させて、対中A2/AD戦略の尖兵としての第1列島線接近阻止線を構築するには、アメリカ自身が地上発射型長距離対艦ミサイルシステムを開発するか、現存するスウェーデン、ノルウェー、あるいは日本のシステムをアメリカ軍自身も採用するかの二者択一ということになる。

当然、アメリカの国益のみを考えると、アメリカ自身による地対艦ミサイルシステムの開発ということになるが、中国海洋侵攻戦略を封じ込めるという大局的視点からは、現存するシステムを採用する選択に軍配が上がる。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9e/MOL_-_mobilni_obalni_lanser.jpg/160px-MOL_-_mobilni_obalni_lanser.jpg現在、西側軍事サークルで評判が高い地上発射型長距離対艦ミサイルは、スウェーデンのRBS-15地対艦ミサイルである。しかし、それと互角あるいはそれ以上の性能を有すると考えられる地対艦ミサイルは陸上自衛隊が運用している12式地対艦誘導弾システムである。また、陸上自衛隊が運用している88式地対艦誘導弾システムも、チョークポイントによってはやはり十二分に有効なミサイルシステムである。

これらの日本製の地上発射型長距離対艦ミサイルは、これまで日本政府が武器輸出3原則に拘泥してきたため国際社会に知られることがなかった。その結果、アメリカ軍関係者といえどもそれらの“凄さ”を認識していないし、これらの存在すら知らない専門家も少なくない。

しかし、米軍関係者だけでなく、対中A2/AD戦略におけるチョークポイントを有する諸国の防衛担当者が日本の地対艦誘導弾システムの実力を知りさえすれば、アメリカによる対艦ミサイルの開発を待って時間を浪費してしまうよりは、必ずや日本のシステムを導入する途を選択するはずである。

日本にとって今こそ好機                                   
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陸上自衛隊が12式地対艦誘導弾システムあるいは88式地対艦誘導弾システムに加えて対空ミサイルや自部隊防衛用戦力から構成される「列島線接近阻止ミサイル部隊」を編成して、対馬、五島列島福江島、種子島、奄美大島、沖縄本島、宮古島、そして与那国島に配備すれば、たとえ中国海軍艦艇が海上自衛隊の阻止線を突破しても、陸自ミサイル部隊の餌食となる可能性が極めて高まり、第1列島線に接近することは不可能に近くなる。

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これから長距離対艦ミサイルを開発しなければならないアメリカとは違って、日本はすでに極めて優秀な国産長距離地対艦ミサイルシステムを保有している。したがって、この国産ミサイルシステムを増産してフィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールそれにアメリカに輸出すれば、アメリカ主導よりも極めて短期間で対中国A2/AD戦略がスタートすることが可能となる。

第1列島線上に位置する日本は、アメリカ以上に早急に対中A2/AD戦略を具体的に始動させる必要がある。幸い、武器輸出三原則の縛りを安倍政権は取り払う方針を打ち出した。国産地対艦ミサイルシステムを活用して、アメリカが構想している第1列島線への中国艦艇接近阻止戦略を、日本が主導権をもって実施していく好機は今をおいてない。
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XASM-3 射程距離:80nm(約150km)以上 最大速力:マッハ3以上 動力:インテグラル・ロケット・ラムジェット
香港に拠点を置く衛星テレビ局の鳳凰衛視(フェニックステレビ)は12日放送の「軍情観察室」で、日本の戦闘機F-2は能力向上改修により、新型のミサイルを搭載することになると報道。同ミサイルは中国軍艦などへの攻撃を想定したものであり、解放軍側には対抗手段がないと報じた。

F-2は初飛行が1995年で、2000年10月に運用が始まった。当初より「対艦」、「対空」、「対地」の複数任務をこなす多目的戦闘機として開発されたが、中国やロシアなどでの新型軍用機や巡航ミサイル配備・拡充、離島防衛の重要性の増大などにより能力向上のための改修が着手された。

「軍情観察室」は、改修にともないF-2には新型の対艦ミサイルが搭載が搭載されることになるとの見方を示した。自衛隊では早期警戒機の性能向上と戦闘機との連携強化により、「解放軍の大型艦船の種類を認識し、解放軍に所属する艦船の防空圏外から先に、対艦ミサイルで攻撃できるようになる」と紹介した。

番組はさらに、日本は中国大陸から発射される対空ミサイルの射程も延長されているとの情報を得て、自らの戦闘機に対する脅威が増大していると判断。そのため、解放軍の早期警戒機に対する攻撃に重点を置くようになったと説明。

その上で、F-2の能力向上改修は、中国の殲-20(J-20)、殲-31(J-31)などのステルス戦闘機への対抗を主眼とするものであり、改修によって対抗能力を維持することにななったとの見方も伝えた。

「軍情観察室」は、上記情報を台湾の軍事誌「軍事連線」を引用しつつ紹介。番組内容は同テレビ局のウェブサイト「鳳凰網」の大陸向けページにも、「日本の新型ミサイルは中国軍艦を攻撃するため。解放軍に反撃の手段なし」との見出しで掲載された。(編集担当:如月隼人)

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◆解説◆
鳳凰衛視は香港に拠点を置くが、中華圏全般を対象エリアとしている。媒体としては「全世界の華人向けのCNN」を目指すとされている。論調については、中国大陸寄りとの評価がある。(編集担当:如月隼人)
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中国メディアのBWCHINESEは6日、中国は先端技術や基礎的な技術のいずれにおいても日本に敵わないとし、「将来的な見通しとして、中国は日本のライバルになることはできない」と主張する記事を掲載した。

記事は、中国商務部研究院の日本問題専門家である唐淳風氏が2011年に「日本は本土以外の118カ国(当時)に資産を保有している」と主張していたことを紹介したうえで、「日本の経済的地位は決して軽視できない」と主張。さらに日本こそ経済のグローバル化によって利益を得ている国だと主張した。

続けて、四方を海に囲まれた日本は日本国民に危機意識を植えつけたとしたうえで、「日本人は学習に長けており、日本は高い技術力を持つ」と指摘。さらに、高い技術力は自衛隊の「隠された実力」につながっていると主張し、海上自衛隊を例に出したうえで「艦艇の数は多くはないが、装備の質を見れば世界でもトップレベルの水準」と論じた。

さらに、自衛隊の実力を支えているのは、「日本の強大な工業体系に隠されている」とし、中国でも広く知られた日本企業のなかには軍事産業にかかわる企業も多いとしたうえで、「民間という隠れ蓑があるだけで、日本は軍事工業帝国でもある」と主張した。

また、日本は衛星を打ち上げることができる世界少数の国の1つだとし、さらに日本国内には多くの原子力発電所が存在するとし、そのため「日本はすでに核兵器を製造するための能力があるのではないか」との懐疑的な見方もあると指摘した。(編集担当:村山健二)


カナダで出版される中国語軍事情報誌の漢和防務評論は10月3日号で、「日本の10式(ひとまるしき)戦車は中国の96A式戦車に完勝」とする記事を掲載した。環球網、人民網など中国の多くのネットメディアが同記事に注目して紹介。すると多くの中国人が「比較の対象がおかしい」などとして不満のコメントを投稿した。

中国はロシアで8月に開催された戦車競技会の「戦車バイアスロン」に参加。出場したのは96A式戦車隊で、射撃では全弾命中と卓越した“腕前”を示したが、エンジンの過熱が原因とみられる車両故障などが発生したなどで入賞はできず、「理想とは言えない結果」に終わった。

漢和防務評論は、「戦車バイアスロン」、さらに日本の陸上自衛隊の富士総合火力演習の状況を踏まえ、中国の96A式戦車と日本の10式戦車を比較した。

エンジンについては、中国は1000馬力のディーゼルエンジンを開発したが、重すぎて96A式には使えなかったと説明。日本では1世代前の90式に1500馬力エンジンを用い、軽量化した10式では1200馬力エンジンを使用と紹介。中国の96A式は「21世紀の作戦要求に適合しない」、日本の10式は「機動性について世界トップの称されている」と紹介。10式戦車については砲塔の回転も「異常な速さだ」と論評。操縦についても10式は96A式に比べて「ずっと容易」と評価した。

火力についても日本は90式から砲塔の「自動追尾が可能になった」と紹介。日本の戦車は90式ですでに、走行時に車体が揺れたり方向転換しても、各種センサーとの連動により砲が常に目標に向けつづけることができることの、実戦時における価値を評価した。中国側については「戦車バイアスロン」に出場した際に96A式が優秀な射撃をみせたことも、「パフォーマンス時における単独戦車の射撃であり、(実戦に役立つ)どのような能力を持っているかを示したものではない」と否定的な見方を示した。

漢和防務評論は日本の10式戦車は防御能力にも注目。対戦車兵器にも十分に対応する工夫があると指摘し、中国の96A式ではそのような考慮は見られないと説明した。

96式戦車は中国における最後の「第2世代戦車」と呼ばれ、これまでに約1500台が生産されたとされる。中国は2000年以降、「第3世代」の98式、「第3.5世代」と呼ばれる99式と、新たな戦車を投入した

漢和防務評論は96A式について「同じ年代に設計されたT-72と比べても、すべての面で対抗はできず、成功した戦車とは言えない」と論評した。

同記事に対し、多くの中国人読者が反発するコメントを寄せた。主に「10式は日本が2012年に就役させたばかりの戦車だろう。96Aは1990年代の開発だ」など、比べる対象が違うとの批判であり、中国の99式なら10式よりもよほど強いとの意見よせられた。

ただし「日本の戦車が強いのは確かだ。われわれは認識が不足しているよ」、「日本は自動車大国で電子大国だからね。10式戦車が最強と、認めねばならないな。これは国籍には関係なしだ。このような評価(記事を指す)は客観的だと思うよ」などの書き込みもある。

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◆解説◆
漢和防務評論は触れていないが、10式戦車の極めて大きな特徴として、データリンクを当初から踏まえて開発された点があるとされる。航空機などとも連携し、敵情報を複数の戦車が常に共有することで、1両単位で戦うのでなく「密接なチームプレー」による戦闘が可能になった。

中国でも兵器運用におけるデータリンクの研究を熱心に続けているが、今のところは米国や日本とはかなり差があると考えられている。





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国産ステルス戦闘機「殲31」、5年内に量産化へ
人民網日本語版 2014年10月30日13:11

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中国の2機種目となるステルス戦闘機「殲31」が、珠海エアショーで初公開される。これは中国の航空工業に対する自信を示すもので、世界の戦闘機市場の既存の秩序に揺さぶりをかけることだろう。同機が空母に艦載され海上で使用されれば、中国は同分野で世界先進水準に達することになる。新京報が伝えた。

報道によると、殲31は珠海市に到着し、11月11-16日に広東省珠海市で開かれる第10回中国国際航空宇宙博覧会に参加する。同機は中国が初公開する第4世代戦闘機になり、国際社会の注目を集める。

殲31は瀋陽飛機工業集団が開発した最新の双発中型ステルス戦闘機で、コードネームは「鶻鷹」。同機は各新技術を集約しており、双発構造、世界最先端のダイバータレス超音速インレット(DSI)を採用している。

殲31の設計は完全にステルス機能の需要に基づいている。成熟したステルス機の設計の方針を採用し、これに精密な設計と加工を加えることで、ステルス効果が米国のF-35と肩を並べ、大半の作戦の需要を満たせるようになった。全方向推力偏向ノズルにより、高い機動性、空母甲板に適した短距離離着陸能力が備わった。フレキシブルな設計、利便性の高いインターフェイス、強力な情報ネットワーク能力により、高い汎用性を持つ。同機は大型ステルス戦闘機「殲20」と組み合わせることも、「殲15」に代わる次世代ステルス艦載戦闘機になることも可能だ。高い機動性、超長航続距離、優れたステルス性能により、同機は大型爆撃機の作戦に協力し、敵地の奥深くに潜入し高価値のターゲットを撃破できる。同機はさらにステルス機以外の戦闘機と合理的な攻撃部隊を組み、特殊作戦の任務を遂行できる。

殲31の登場は、中国本土の戦闘機技術の、画期的な進展を象徴する。中国航空科学技術の発展を長期的に制約してきたボトルネックは、エンジン技術だ。殲31は国産エンジンを搭載し、海外依存という苦しい局面から脱却し、リスクを解消した。これはまた中国の小・中・大推力エンジンの産業チェーン全体の飛躍・突破に対して重要な意義を持ち、中国本土の軍事技術の革新を推進する力強いけん引力を持つ。

殲31は5年内に量産化を実現することが見込まれており、中国本土の戦闘機はロシア製装備と共に、合理的な組み合わせを実現する。このことは、中国が航空機製造の完全な自主化を実現し、自国の戦略的安全保障を実現する上でも重要だ。殲31が空母に艦載され海上で使用されれば、中国の技術は世界先進水準に達することになる。これは中国の空母作戦体制の改善、空母体制の作戦能力の形成の加速、中国の艦載機関連技術の高度発展の促進に対して重大な意義を持つ。(編集YF)

「人民網日本語版」2014年10月30日

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殲31」殲撃31型(Jiān-31)コードネームは「鶻鷹」(シロハヤブサ)。
単発と双発の差はあるもののF-35に類似した新型ステルス戦闘機が正式にデビューした。

中国空軍はすでに殲20(J-20)ステルス機の試験飛行を行っている。殲20は大型で低出力のエンジンしか搭載されておらず、しかもあまりステルス性が高くないが、殲31は、そこそこステルス性を持っていると見るべきだろう。

米国防総省の兵器購入責任者のフランク・ケンドール氏は米議会で2013年「サイバー諜報は、敵対国が自前の設計をするための費用や所要時間を短縮している」と証言し、サイバー攻撃による膨大な被害を認めている。「殲31」は、米国防総省やロスアラモス研究所、原油パイプラインや発電所、グーグルやコカコーラといった米国の軍事、政府、経済、企業を対象にした中国のサイバースパイ活動による最も明らかな成果だ。

 米国は、「F‐35」の最も繊細な飛行制御データはコンピューターに記憶させていないため、盗まれようがないとしている。中国が諜報活動から得られることにも限界もある。レーダーを確実にかいくぐるために必要な素材やエレクトロニクス技術が「殲31」には欠けている。また、操縦士に対するステルス操縦訓練も劣っている上、「殲31」搭載のエンジンはJF-17用にロシアより輸入したクリモフ RD-93 (推力85.4kN) と考えられ、これを横に並べて双発としている。双発なのは、推力の問題と考えられる。RD-93は試験飛行のためのつなぎに使い、将来は推力100kNのWS-13の発展型を搭載すると思われる。試作機のノズル形状はごく一般的なものであり、後方からのRCSの低減や、排気の赤外線対策が行われていない。

殲31はおそらくサイバースパイ活動の成果をもとにロッキード社のF-35を模倣したと思うが、中国軍のコピー戦闘機も侮れない。第五世代戦闘機である殲31がまがいなりにもステルス性能を有しているのであれば、F-15やF-2など自衛隊が保有する第四世代戦闘機では太刀打ちできない可能性は大いにある。

F-35が開発に手間取っているのは膨大なソフト1900万~2200万行であって、中国が形を似せた戦闘機を作っても、ソフトまでそのままコピーすることはできない。もともと駄作機であるF-35をコピーしたのだが、エンジンもF-35より劣り殲31」の性能はどこまでなのかかなり疑問ではあるが、「殲31」をあまり侮ることをしてはいけないだろう。

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この写真を見る限り、着艦フックはいいとしてもウェポンベイはそれほど広くはなく、
マルチロール機として爆装した場合ステルス性能は著しく低下するようだ。

着艦フックは飾りではなさそうだが、マルチロール機として空母に搭載する場合、爆装した場合短距離空対空ミサイルをウェポンベイに積めないようだ。
これはF-35の弱点でもある。F-35が駄作機である以上に、殲31も駄作機になると思う。
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殲20

殲20に至っては、も2種類のプロトタイプ機と新プロトタイプ機が、複数の改良を経て公開されており、最大重量は36トンに達すると見られる。ただし、20は一定のステルス性能を持つが、電子設備に対するステルス性能は表面に塗装された特殊材料によるものであり、レーダーによる捕捉が可能だ。ゆえに20は過渡的な戦闘機にしかならず、新機種として大量生産されることはないかもしれない。

中国で開発の進むJ-31戦闘機について、 
アメリカの軍事専門家のデイブ・マジュダール氏は「米国は新たな戦闘機を開発せねばならない」と指摘しています。 
米国関係者の間ではJ-31戦闘機は米国の技術が盗用されており、 
性能についてはF-22やF-35に匹敵するのではないかと考えられています。 

米空軍はF-22等とJ-20、J-31が戦闘となった場合にはキルレートが1対3になるとしており、 
「複雑で高価な戦闘機で対抗するにはコスト面で不利である」といいます。 


翻案:キャプシス@2ch.net 
http://www.wantchinatimes.com/news-subclass-cnt.aspx?id=20141119000006&cid=1101 
初飛行した戦闘機のキルレートをどうやって算出したのでしょうか?まったくあてにならない。
次の戦闘機を作りたいボーイングの息のかかったプロパガンダと考えた方がいいと思います。





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[東京 14日 ロイター] - 日銀のサプライズ緩和を材料に日本株を買ったのは、やはり海外勢だった。買い越し額は2週間で3.5兆円と過去最高水準。ただ、中身をみると先物中心で現物株は半分程度と昨年4月の「黒田バズーカ1」当時と大きく異なる。

短期売買を得意とするヘッジファンドが買い主体とみられており、早い「心変わり」も警戒されている。

<「黒田バズーカ1」と「2」の違い>

ヘッジファンドの日本株に対する投資動向の「シグナル」として、市場の関心が高い米国の米ETF(上場投信)、ウィズダムツリー・日本・ヘッジド・エクイティ・ファンド(DXJ.P: 株価, 企業情報, レポート)に資金が流入し始めた。

同ETFは為替ヘッジ付きのため、円ベースでの株価上昇の享受が可能。日本株買いと同時に円売りを仕掛ける傾向にあるグローバルマクロ系ヘッジファンドなどにとって、使い勝手が良いとされる。

大和証券の試算によれば、同ETFへの10月31日─11月12日の資金流入額は、概算値で6.83億ドルに膨らんだ。日経平均が13年末に向け株高基調を強める起点となった「昨年11月時に匹敵するかなり大きな規模の流入ペース」(大和証券・投資戦略部マーケットアナリストの熊澤伸悟氏)という。10月31日の日銀追加緩和を受け、急激な円安・株高を演出した投資主体は、ヘッジファンドなどの海外短期筋とみる市場関係者は多い。

短期筋主導の相場展開をさらに裏付けるのが、現物株と先物取引のギャップだ。東証・大取によれば、10月第5週(10月27─31日)と11月第1週(11月4─7日)の外国人投資家の買い越し額合計は、3兆5944億円。内訳では、現物1兆3055億円に対し、先物(日経平均先物・TOPIX先物のラージ・ミニ累計)が2兆2889億円と現物の1.7倍に膨らんでいる。

「黒田バズーカ1」が発表された13年4月第1週と第2週の合計では、現物を2兆3013億円買い越し、先物は1127億円の買い越しと、わずか5%弱にとどまっていたのとは対照的だ。

<セクターより指数先行の動き>

実際、足元の現物株のパフォーマンスは鈍い。日銀の緩和発表直前から8営業日後の上昇率(終値ベース)を比較すると、緩和メリットが大きいとみられている不動産株はバズーカ1後に24.8%上昇した。

半面、バズーカ2後は14.2%の上昇にとどまっている。売買活発化の恩恵を受けると期待される証券株も前回は29.7%上がったが、今回は16.5%の上げ幅にとどまっている。

一方、日経平均先物の上昇をきっかけとする裁定取引が入りやすいファーストリテイリング(9983.T: 株価)、ソフトバンク(9984)、ファナック(6954)の「日経平均寄与度御三家」の平均パフォーマンスは、バズーカ1時にはプラス1.4%だったが、バズーカ2ではプラス10.7%となった。指数先物の売買時に、影響力の大きいこの3銘柄を利用するのは、海外短期筋が得意とする手法だとみられている。

松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「日銀がETF(上場投資信託)の買い入れ枠を従来比3倍の年間3兆円に増やしたことで、指数自体の上昇が見込みやすくなった」と指摘。これが短期筋によるインデックス買いを誘った1つの要因になったと分析している。

<鈍い長期投資家の動き>

海外短期筋主導の上昇相場で警戒されるのは、早期の反対売買だ。昨年末もイエレン米連邦準備理事会(FRB)副議長(当時)のハト派的な証言原稿などをきっかけに米金融緩和の長期化論が台頭。グローバルマクロの動きが強まり、日経平均が1万4000円水準から13年12月30日に高値1万6320円まで急上昇した。

だが、年が明けると日経平均は急落、元の水準に戻ってしまった。

グローバルマクロ系ヘッジファンドのトレード期間は、数週間から数カ月程度と比較的短い。長いスパンでの株高基調のカギを握るのは、海外年金などの長期投資家の動向だが「バズーカ2以降も、海外ロングマネーはほとんど入ってきていない」(ソシエテジェネラル証券・ディレクターの小原章弘氏)という。

UBS証券のエクイティ・ストラテジスト、大川智宏氏は「黒田バズーカ2以降、長期投資家を含む海外勢からの日本株に対する問い合わせは多いが、何が起こっているのかの把握にとどまっており、買いに動いている印象は乏しい。ロングマネーが本格的に日本に流入するには、いったん調整が必要」と述べる。

「バズーカ1相場」で、日経平均は1万2362円(13年4月3日終値)から1万5942円(同5月23日高値)まで3580円上昇した。

一方、「2」は10月30日終値の1万5658円から12日高値1万7443円まで1785円高にとどまっている。長期投資家の買いを呼び込み、一段の上値を目指すには、明確なストーリーが必要だが、解散・総選挙が取りざたされるなか、逆に不透明感が増す状況となっている。

(杉山容俊 編集:伊賀大記)
あと2年間で、日本のデフレが解消されれば安倍総理と黒田総裁は戦後日本の中興の祖となる可能性がある。歴史に残る名宰相と名総裁になるかもしれない。

黒田バズーカと安倍総理の消費税延期の決断は約15年近くに及ぶデフレを「殲滅」する強い意思は称賛に値する。決断することが苦手の日本人としては稀有な存在だ!

10月31日に決めた追加緩和の重要性を強調し「できることは何でもやる」と昨年4月に黒田緩和を導入した時点での発言と何も変わらず強い決意で対応している点が世界中の金融関係者の間で評価が高まっている。

デフレという体調の慢性疾患を完全に克服するためには、薬は最後までしっかりと飲み切る必要があり、途中で止めるような治療をしていると、いつまでも2%の物価上昇を達成することはできない。GPIF改革も含め恐らく今回の3つの決断によって日本は1-2年後に完全にデフレと決別する可能性が高い。

日本はこの15年間に完全にデフレスパイラル化経済へと進んでしまい、一時は「昔は日本という国があったとさ」と言われるような国に陥ってしまった。デフレ状況が15年も続いたことは日本にとって大惨事であった。 1990年代半ばから、日本経済の流動性(資金供給量)は縮小し始め、そのために財政は使い果たしてしまった。公的債務の対GDP比率は130%を超えてしまった。日本は輸出を拡大して外貨を稼いで成長するという経済成長を昔のNIES(新興工業経済地域)やBRICS新興国へ手本として示したが、失われた15年間で、デフレの恐ろしさを世界各国に知らしめることとなった。

世界は、日本のデフレを日本人が決断できない為に起きているとか、日本の特有の問題でデフレを垂れ流していると勘違いして日本を見下していたが、大きな間違えである。日本のデフレは、経済、社会学的な問題に、政治的円高圧力があって陥ってしまったのだが、日本固有の問題ではなく、世界各国に起きえる問題なのである。米国、欧州、BRICS諸国も最早輝きを失い世界的にデフレ化の流れが進行している。ただし、米国についてはリーマンショックを超金融緩和を行いつつ、超円高ドル安で立て直し終わっている。日本はこの苦しい15年間をIMFや海外からの援助等を受けることなく耐えたのだが、日本だからデフレに耐えられたのかもしれない。いや、耐えられたからこそ、デフレは長引いてしまったのかもしれない。だが、民主党政権と3.11東日本大震災で、日本経済は耐えられる限界点に達していた。

おそらく日本は2年後までにはデフレから完全に抜け切ることができるとの見方が欧米では強まっている。昨年4月の日銀の異次元緩和は世界を驚かしたが、今回の日銀の10月31日の金融政策決定会合での追加緩和は大半の人達が予想していなかったために驚きが大きかった。

 日銀は今回の国債買い入れ額を30兆円拡大し、さらに日本株に連動する上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)も買い入れペースをこれまでの3倍にすることを決定した。これが実現されれば来年末には米国の6年前に決定したQE政策の額にほぼ近い数字になるだけに追加緩和は多くの市場関係者にとって予想外であった。 GPIFの運用拡大の発表を受けて内外の金融・資本市場でさらに驚きの声が広がったのも当然のことである。 GPIFとの同時発表について政府関係者は「たまたま」重なったというけれど、世界の市場ではその様にはとっていない。これが実現すれば全世界の金融市場が驚くべき日銀の追加緩和が実現するからである。

 自民党の安倍首相が2012年12月首相に就任したことで首相はデフレを終わらせなければ日本経済は復活しないと決断し、その力を黒田氏に頼んで異次元緩和を実施した。しかしそのために実施されたアベノミクスは消費増税が足を引っぱってなかなか思う通りには実現しないというのが実情で、昨年4月に続いて、10月31日一段の金融緩和に踏み切ったのである。

先般の31日の日銀の追加緩和政策に対し日本では一部の方達が「すぐに大インフレが発生して日本経済は奈落の底に突き落とされる」的な発言をテレビや週刊誌で相次いでいる。黒田バズーカは「バブル」をつくっているだけのことだ」とか「官製相場の暴落が始まる」などの発言が相次いでいる。「だったらどうすれば現状の流れをくぐり抜けることができるのか」とのコメントはない。デフレ退治はインフレ退治より難しい。 20年近くにおよんだデフレスパイラスが続いた日本経済は「ちょっとやそっと」で立て直すことは不可能な経済状況になってしまっている。対案が無い批判は騒音にすぎない!

金融緩和第二弾は、消費税増税の為の援護射撃ではないかと当初考えたが、私も甘かった、金融緩和しても消費税増税してしまえば”元の木阿弥デフレは根治しない。安倍首相の偉いところは、安倍首相周辺まで固めた財務省の圧力に屈していないところだ。

財務省の息のかかった経済学者やアナリストは増税延期は日本の財政再建が遅れ国債が暴落する、外国人の信頼を失い株価も暴落するというプロパガンダを宣伝したのだが、消費税延期は多くのまともな海外のアナリストや投資家にとって日本株買いの材料となった!財務省破れたり!!!

ここで、総選挙を実施することで消費税延期の正当性を得るとともに、安倍総理に増税の決断を迫ろうとする増税派議員たちの圧力を一気に逸らすことができる。一石二鳥三鳥である。

現状のような思い切った政策をとらなければ、現在日本が陥っている悪性のデフレを完治することはできない。

 6年前、米国が信用危機から米国経済を救うために450兆円のドルをバラまいたが日本の異次元緩和も米国の緩和に勝るような額を支援しなければ完治しないであろう。昔は中央銀行が大量の資金をばらまけばインフレが発生して物価は上がっていった。しかし、現状では新興国でマネーがばらまかれてもインフレ化はあまり進まない。最近では仮にマネーがばらまかれてもインフレはあまり進まず、エネルギー価格が下落し、物価も低下し、長期金利も一段と下落している。

リーマン・ショック後、米国経済は6年を経て実体経済は改善が進み、ばらまかれていたドルは米国に戻り始めている。リーマン・ショック当時、ばらまかれたドルを経済発展の糧として経済大国へと発展していった社会主義政策の中国とロシアは、米国の信用危機の終焉と共に現状景気は落ち込み始めている。長かった米国のマネーのリスクオフの時代が終って、2012年頃からドルのリスクオンの時代が復活してきた。

 現状、中国とロシアは米国の景気拡大が進めば進むほど「景気は衰退する」という因果関係に置かれているだけに世界景気の復活を託するわけにはいかず、かといって欧州もユーロ経済を中心にユーロの信用危機がまだ癒える状況になくデフレ化が進む状況下に置かれている。ということになれば中国・ロシア・ユーロ・日本の中で米国経済に続いて世界経済のデフレ的要素につきあたっていくことができる経済国はどこかと言うと日本しかない。

デフレ退治はインフレ退治より難しいことは日本を反面教師とすれば十分解る。米国は日本を反面教師としてなんでもありの金融政策をとり、リーマン・ショック後6年目にしてデフレから抜け出してしまった。これを抜け出したのがバーナンキ前FRB議長のとったなんでもありの450兆円におよぶドルのタレ流し政策である。

 現状では、リーマン・ショック当時とは違いヘッジファンド勢の投機的動きは強く封じられてきたためドル・円相場の投機的な動きはなくなってきた。しかし、短期的資金も使って短期間に大きな額のドル売りをするヘッジファンド勢が虎視耽々と相場の行きつくところを狙ってドル売りを仕掛けてくる。となるとドル・円相場は一日のうちに大きく変動する可能性がある。要注意である。しかし、リーマン・ショック時代のように長期的な下げはなく1-2日間の下げで変動幅が大きいことも考えられる。従って投機筋の動きに惑わされず、ドルが売られた場面では買うことに徹することが重要である。今年も1ヵ月強、後1回は波乱の日が年末までにあろう。1ドル=120円台入口あたりが要注意か。年末には1ドル=120円あたりか。 ドルが売られたら買うしかない。株も売られたら買いの姿勢に。株は年末1万8500-9000円。

もし安倍総理、黒田日銀総裁コンビが今回の消費税増税の延期、GPIF改革、金融緩和政策で、デフレ退治ができれば100年後、安倍・黒田の名前は日本の経済史いや歴史に名を残す名コンビになるであろう。

任務を負った安倍首相――行く先は不明
2014.11.14(金)  Financial Times 【JBpress】

(2014年11月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

安倍晋三氏が最初に首相を務めた精彩を欠く第1次安倍内閣と、超エネルギッシュで異様に活発な今回の仕事ぶりの対比があまりに著しいため、日本人は同氏を「安倍2.0」と呼ぶようになった。

2年近く前に政治的なカムバックを果たして以来、安倍氏は2007年に終わった最初の惨めな12カ月間の登板の記憶をすべて消し去る任務を遂行してきた。償いをする決意は安倍氏の職務遂行に生まれ変わったかのような情熱を与え、支持者はこれに爽快さを感じ、反対勢力は恐ろしさを覚えている。

生まれ変わったかのような「安倍2.0」

経済的には、安倍氏は20年前に日本経済が停滞に陥って以来最も野心的な経済再生計画に乗り出した。外交上は、1980年代の中曽根康弘氏以降のどの首相よりも積極的に活動し、地域と世界を飛び回っている。

防衛に関しては、日本を憲法の制約から解き放ち、正規軍を持つ「普通の国」としての地位を取り戻すために、過去数十年間で最も組織的な努力をしてきた。

この2週間は、安倍氏の基準からしても慌ただしかった。まず、安倍氏が中央銀行総裁に任命した急進的な黒田東彦氏が、米連邦準備理事会(FRB)が反対の方向に動き出したまさにその週に新たな大規模量的緩和を打ち出し、市場に不意打ちを食らわせた。

日銀が国債購入を増やすことを発表する一方で、日本の巨大な年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は国内株式への資産配分を2倍以上に増やすことを明らかにした。

協調的な政策は即座に影響を及ぼした。日本株は7%上昇し、円相場は対ドルで5%以上下げ、1ドル=115円台をつけた。債券市場は、惨事を予想する声に逆らい、安定した状態を保った。

日中首脳会談もようやく実現

次に、安倍氏は今週ようやく、中国の習近平国家主席との会談を実現させた。習氏が権力の座に就いてからの2年間は、安倍氏のそれ以上に力強いものだった。

両氏の仲は悪い。盛んに写真を撮られた握手の際、2人は死んだ魚を扱うような温かさで相手の手を握った。それでも、日中首脳が顔を合わせたことは、危険なほどに悪化する関係の休止を告げた。

中国メディアは、安倍氏が謁見を請い、習氏が鷹揚に取るに足りない人間の願いをかなえてやったように描いた。だが、安倍氏としては、説得力をもって実質的な譲歩をせずに会談が行われたと主張できる。

突如浮上した解散・総選挙観測

3つ目の、ある意味で最も意外なことは、安倍氏が解散総選挙に踏み切るという話が突如浮上してきたことだ。1つの可能性としては、安倍氏が前政権から引き継いだ消費税の追加引き上げ計画から手を引くチャンスとして選挙を利用することが考えられる。

安倍氏は先週、「アベノミクスのゴッドファーザー」である浜田宏一氏と、ぶっ倒れるまで紙幣を刷れという徹底した量的緩和論者の米国人経済学者、ポール・クルーグマン氏と会談した。両氏とも、デフレを完全に打破するために追加増税を見送るよう安倍氏に要請した。

安倍氏は増税すべきか否か本当に決めかねているのかもしれないが、選挙はこの180度の政策転換を達成する1つの方法かもしれない。

もう1つの潜在的な恩恵は、有権者に自分を支持するかクビにするかという選択を迫ることで、まだ相当高いとはいえ低下傾向にある支持率をテコ入れすることだ。活発になった安倍氏は、新たな信任をとことん利用するだろう。

では、こうした動きはどこへ向かうのだろうか。経済的には、日本は今の世代で一番期待の持てる、デフレを終わらせる絶好のチャンスを手にしている。デフレは、決してすべてではないとしても、日本の多くの問題の根本原因だ。

アベノミクスの3本の矢の評価は「A」「B」「E」

2%の物価上昇率を実現することは、王になろうとするマクベスの野望と多少似ている。安倍氏は量的・質的緩和にあまりに夢中になっている――シェークスピアの言うところの「血」にどっぷり染まっている――ため、行くも帰るもままならないのだ。

思い切って試すよう安倍氏を説得したエール大学教授の浜田氏は、金融緩和、財政の機動性、構造改革の3本の矢に、それぞれ「A」「B」、そして「E」の評価を下している。都合よく安倍氏の名前をつづる評価だ。日本が持続可能な緩やかなインフレを実現できれば、半分勝ったも同然だ。潜在成長率の引き上げを目指す構造改革がその後に続くかもしれない。

日本を「普通」の国にする安倍氏の狙いに関しては、結果は恐らくそれほど明確ではない。フィリピン、ベトナム、インドのような国は、より強い日本を歓迎する。日本を中国と釣り合いを取る勢力と見なしてのことだ。

中国政府は、もちろん、そうは見ない。中国政府が安倍氏に、少しでも機会を与えられれば再びアジアを侵略しかねない危険な軍国主義者というレッテルを張ったのは、このためだ。

最大の障害は国内のハードル

だが、安倍氏の最大の障害は、国内の障害だ。大半の有権者はまだ、安倍氏の憲法改正の野望に慎重だ。平和主義を規定した憲法9条を捨てることにかけては特にそうだ。

そのような動きは国民投票によって批准される必要がある。これはほぼ確実に越えることのできないハードルだ。安倍2.0の決意がどれだけ固くとも、この戦線では折れなければならないかもしれない。

By David Pilling
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ポール・クルーグマン氏、安倍首相の消費増税に警告          【WSJ】2014/09/19 2:01 pm ET


http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-EP206_Krugma_G_20140918073420.jpg
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、安倍晋三首相が間違った人々の声に耳を傾けてしまったと述べた
Associated Press
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、日本の消費税が10%に達すれば、デフレ不況に逆戻りし、悲惨な状態になるとみている。

米プリンストン大学教授で米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストも務めるクルーグマン氏は今週発売の「週刊現代」に掲載されたインタビューで、安倍晋三政権発足から12月で丸2年たつにあたり、安倍首相の経済政策について持論を披露した。

週刊現代の記事によると、クルーグマン氏は首相が間違った人々の声に耳を傾けてしまい、日本の景気回復は4月の5%から8%への消費増税で危うくなったと主張した。

首相は2015年10月に消費税をさらに10%にまで引き上げるかどうかを検討中だが、クルーグマン氏は首相が消費税を5%に戻し、インフレ期待を引き上げるべきだと述べた。

こうした意見は、クルーグマン氏の日本の経済政策に対する見方を長年追ってきた人たちにとっては驚きではない。1998年には次のような見解を示している。「構造改革や財政拡大が必要なだけの需要をもたらすという説得力ある議論が展開できないかぎり、経済を拡大するための唯一の方法は実質金利を下げることだ。そしてそれを実行する唯一の方法は、インフレ期待をつくりだすことだ」

10%への税率引き上げについてはエコノミストの間で意見が割れている。本田悦朗内閣官房参与は最近のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、1年半先送りすべきだと述べた。一方、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長はWSJに対し、現在の景気減速に人々は過剰反応しているにすぎないとし、将来の社会保障費を賄うために増税は必要だとの見方を示した。

クルーグマン氏は、中国の経済についても「投資バブル」と表現し、懸念を表明。民衆に対する自らの正当性を強化する必要に迫られた中国当局が日本との戦争に踏み切れば、深刻な経済的打撃を両国に及ぼすことになると述べた。

原文(英語):Krugman Warns Abe on Tax Increase
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/09/19/krugman-warns-abe-on-tax-increase/


このクルーグマンの助言の影響は大きい!いままでの自分の日本批判は間違いだと認めたうえ、日本を良い方向に導いたクルーグマンのことを日和見学者とバカにすることを止めることにする。

週刊新潮2014.11.20 解散消費税先送り関連記事
 解散と公定歩合は嘘をついても良い。永田町に伝わる妙なルールのせいか、解散話は眉に唾して聞いておくものだが、それにしても読売新聞の"独走”はどうしたことだろう。同紙が11月9日朝刊の1面で報じた記事のことだ。

〈増税先送りなら解散 首相検討 年内にも総選挙〉

それによると、安倍総理は、今月17日に発表される7~9月期のGDP速報値などを踏まえて再増税の可否を決め、解散についても最終判断するとある。

そして、こう書くのだ。 〈首相は、こうした考えを公明党幹部に伝えたとみられる〉
〈年内に解散する場合、衆院選は「12月2日公示・14日投開票」か「9日公示・21投開票」とする案が有力だ〉

〈GDP値が伸び悩んだ場合、増税先送りの判断と、アベノミクスの成果などを掲げて国民に信を問う考えとみられる。10%への引き上げは、1年半先送りし、17年4月とする方向で調整している〉

まるで、再増税の先延ばしと解散・総選挙が決まっているかのような書きっぷりではないか。ライバル紙が控えめに報じるなか、さらに11日朝刊の1面トップで、11月18日にも安倍総理が解散表明する可能性を報じたのだ。

在京テレビ局の政治部記者が言う。 「読売の記事には参りました。解散の可能性があるという情報は前から流れていて、我々も気をつけてはいたのです。この記事のポイントは、安倍総理が解散を伝えた公明党幹部とタイミング。与党の動きについていえば、11月7日に公明党の山口那津男代表が安倍総理と会っている。しかし、本人は。解散や国会運営についての話は出なかったと否定しているし、翌8日に総理を訪ねた太田昭宏国交相も、エボラ出血熱や中国漁船のサンゴ密漁対策のことしか話さなかったとされる。いつ、誰に解散の意思を伝えたのか、それがさっぱり掴めないのです」

ところが、この。スクープ゛、出所をたどってゆくと意外な人物に行き当たるのだ。
「実は、この記事は。上から降りてきた情報で書かれたものなのです。つまり、渡辺恒雄主筆の指示があったということです」 そう事情を明かすのは、当の読売新聞政治部の関係者だ。

「社説でも主張している通り、主筆は新聞に消費税の軽減税率を適用せよというのが持論です。それが無理なら増税を延期して、国民に信を問うべしというのですが、最近も、甘利明経済財政相を招いた会合で主筆がこの話を切り出したことがあった。。解散の風は読売さんの方から吹いてますねえ、と甘利さんに冷やかされるほどの熱弁でしたよ。

記事では、安倍総理が公明党の幹部に解散の意思を伝えたとありますが、実際の相手は創価学会の選挙対策責任者だと聞いています」

読売新聞では、時々こうして。天から・ネタが降ってくるというが、これが政局に意外な展開をもたらすことになるのだ。

永田町は選挙モード

知られているように、消費税増税法案は民主党政権下、自民、民主、公明の間で結ばれた「三党合意」(2012年6月)によって成立したものだ。

これを受けた安倍総理は、今年4月に消費税を8%に引き上げ、さらに来年10月には10%に増税することになっている。その際、判断基準となるのが四半期ごとのGDP成長率だが、増税後の反動もあって、今年の4~6月期はマイナス7・1%と酷い数字だったのはご承知のとおり。                         
第一生命経済研究所・主席エコノミストの永潰利廣氏が言う。 「その時点でも、政府は”1~6月でならせば成長しているのだから、景気回復は持続している”と説明していたのです。しかし今度の7~9月期の成長率で相当高い数字が出ないと説得力を失ってしまう。具体的な数字で言えば、プラス3・8%の実質成長率が必要になる。台風などの天候不順による悪影響を差し引いても、プラス3%が最低ラインです」

ところが、10月末、政府の発表に先んじて報じられた民間シンクタンクの予測は見るも無惨な数字だった。

多くが2%台で、なかには1%という社もあったのだ。 このまま増税を強行すれば、来年秋以降の景気失速が現実になりかねない。再増税の見送りという噂が流れ出したのはこの頃からである。読売新聞の。スクープ゛が飛び出したのも、まさにこのタイミングだったわけだが、「瓢箪から駒」というべきか、記事が号砲を鳴らした格好になって、永田町も一気に”選挙モード”に突入してしまったのである。

まず、11月10日、自民党選対委員長の茂木敏充氏が記者団に、 「いつ解散があってもいいように準備を進める、(空白区を)埋めろと言うなら、いつでも埋められる」 と話すと、対する民主党の海江田万里代表も同日の記者会見で、 「解散をやるなら正面から受けて立つ」と応酬。また、野田佳彦前総理も連合幹部との会合で。 「安倍総理が帰国する11月
17日以降はいつ解散してもおかしくない。選挙を念頭に置いて準備を進めてほしい」 と話し周囲を驚かせた。

選挙モードに突入したのはマスコミも同じだ。先の読売新聞関係者によると、 「すでに、うちは完全に前のめりの状態です。あの記事に合わせて総選挙報道に備えたチームを立ち上げており、速報に必要なパソコンなどの備品をリース業者に大量発注したと聞いている。これは選挙が必ずあるという前提での準備です」

そして、選挙報道では定評のあるNHKも。 「年内の解散・総選挙に向けて情報収集に当たるよう、拠点局のデスク会議で指示が飛びました。地方局の記者にはすでに動員がかかっていますが、ただでさえ忙しい年末が重なるので悲鳴が上がっていますよ」 と、すでに臨戦態勢なのだ。だが、何と言っても気になるのは、肝心の安倍総理の胸中である。解散権を握り、政治日程を操る安倍総理は、本気で解散という伝家の宝刀を抜くつもりなのだろうか。

「財務省の奴ら」

11月9日の午前、安倍総理は羽田空港で、 「解散については全く考えていません」 と読売新聞の記事を否定してみせると、そのまま中国に発っている。だが、そんな言葉とは裏腹に、 「このまま、なし崩しに増税してしまおうという動きを一番嫌がっているのが安倍総理なんですよ」 と明かすのは、官邸関係者だ。

「いま、安倍総理を取り券く官邸の主要メンバーは、菅官房長官を除いて、大半が”増税推進派”になっています。旧大蔵省出身の加藤勝信官房副長官はもちろん、経産省出身の側近秘書官まで増税を容認するようになっているのです。それと言うのも、10%の消費税増税を実現したい財務省が官邸スタッフや増税反対の議員に対して総力で”切り崩し”に奔走しているからです。

これに業を煮やしたのか、11月上旬、総理が突然、”やりたいようにやってるな! 財務省の奴らは”と漏らしたことがありました。乱暴な□ぶりなので皆ギョッとしましたが、それほど総理の身近なところまで財務省の息がかかっているわけです」

一方、これに対抗するため、菅官房長官の肝いりで立ち上げたと言われるのが増税延期を主張する議員らの「アベノミクスを成功させる会」だ。10月22日には本田悦朗内閣官房参与を招いて。増税を1年”遅らせるべし”と気勢を上げたが、会はすぐに切り崩しのターゲットになった。当初、45人いたメンバーは1人また1人と財務省に説得され、3分の1まで数を減らしたと言われている。

メンバーである代議士が言うのだ。 「僕のところには”レクの申し出”という名目で、財務省の課長補佐クラスが数人でやって来ました。”先生、お忙しいところ恐縮です”とあくまで低姿勢です。そして、10センチもあろうかという資料を揃えて、こんこんと増税の意義を説明してくる。”このままでは国債が暴落する危険性があるんです。どうかご理解ください!”と頭を下げてね。一回だけでなく、何度も説得を受けた人もいます。それで根負けしてしまうのです」

ソフトながらも外堀を埋めて来る財務省のやり方に、安倍総理は苛立ちをあらわにすることもある。
「総理は、香川俊介事務次竹ら財務省の役人たちがぞろぞろと官邸に説明しにやって来るのを見て、”大名行列みたいだな”と露骨に嫌な顔をすることがあります。

また、”怒鳴っても怒っても、奴らはやって来るんだ”と漏らしていたこともある。増税の決定権を搦め捕ろうとする財務官僚に対して、明らかに警戒しているようでした」(先の官邸関係者)

敵は野党だけでなく、身内の霞が関にもいる。解散・総選挙というニュースが飛び出した背景には、こうした官邸内の事情もあったのだ。

それにしても、近々、解散・総選挙に打って出たとして、安倍総理にはどれほどの成算があるのだろうか。
増税を先送りすれば、三党合意を破棄したと見なされ、新たに消費税増税の法案を作り直して来年度国会で通さなくてはならない。

民主はボロ負けか

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。「官邸が解散・総選挙を考えているのは”いま解散したほうが得策だ”という計算もあるからです。つまり、このまま選挙をやると、自民党は現有の295議席から20議席は減らしてしまうかも知れませんが、それでも絶対安定多数を保てる。

しかし、ここで選挙を延ばすことになると、マイナス要素のほうが多くなってくるのです。集団的自衛権の関連法案、北朝鮮による拉致問題、そして原発再稼働など、懸案が山積しており、それでなくとも来年度の国会は紛糾が目に見えている。それを考えれば、今が一番のタイミングなのです」

同じく政治ジヤーナリストの角谷浩一氏によると、「解散のタイミングがあるとすれば、来年の統一地方選までの間が考えられますが、そこを越えて会期延長になれば選挙日程が組めなくなる。そうなると、2016年の冒頭ぐらいしかチャンスはない。その先になると、参院選が近づいて公明党が了解しないでしょう。安倍さんは政治日程を握っているように見えて、解散できるチャンスはそう多くないのです」

一方、野党第一党の民主党はと言うと、幹部らの威勢の良い発言とは裏腹に、その実態は苦しい。                                         
「いま、党内では11月26日の党首討論で何らかの結論が出ると見られています。しかし、正直、すぐの選挙はやめてほしい。惨敗が確実だからです。何しろ、執行部が。候補者で立てられるのは150人ぐらいしかいない々と言っているほどですから。互角に戦うためには維新との選挙協力が欠かせませんが、これも何も決まっていないのが現状です」(民主党幹部) 安倍総理が外遊から戻ってくるのは11月17日。今のところ、最もリアルな日程はいつなのか。                 
「早ければ11月19日にも解散し、12月2日公示、14日投開票もあり得ます。総理がGDPの数値を最後まで待って判断するとすれば、第2次速報値が出る12月8日。その数字を見て解散するのなら、12月9日公示、21日投開票がギリギリの日程になるでしょう」(政治部記者)                                
さて、後世の人たちは、これを「何解散」と呼ぶのだろうか。
これで解散総選挙が無かったら日本は財務省に屈し、永遠にデフレから抜け出すことのできない衰退国となってしまう。まちがいなく現状での消費税増税は無謀である。

ロイター企業調査:7割が増税環境「整わず」、延期は1年が最多   【ロイター】2014年 11月 13日 08:38 JST

[東京 13日 ロイター] - 11月ロイター企業調査によると、10%への消費税再引き上げが実施できる環境が整っていないとの見方が、回答企業の7割を占めた。延期すべきとの回答は6割近くを占め、その期間については短か過ぎず、長過ぎない程度との視点から、1年程度の延期が最多となった。

増税の場合には、影響の緩和に効果的との理由から、食品等への軽減税率を求める声が最も多かった。

来春の賃上げに関し、現時点で33%が今年と同程度の引き上げが可能と回答し、今年以下との回答合計25%を上回り、所得回復には追い風となりそうだ。

この調査はロイター短観と同時に同じ対象企業(資本金10億円以上の企業)に実施。調査期間は10月27日─11月10日。回答社数は400社ベースで250社程度。

<企業の景気認識厳しく>

10%への消費税引き上げに対し、72%が実施できる経済環境にないと回答した。実施可能と回答した企業は28%で、「経済状況は悪化しているが、この程度で延期してはいつまでも実施できなくなる」(電機)といった声が目立つ。

実施できないと回答した企業からは、消費に対する厳しい認識が目立つ。

製造業からは「8%に増税後の国内消費の落ち込みがあまりに大きい」(電機)「想定以上に買い控えの影響が大きく出ている。しばらく様子を見た上で判断すべき」(機械)「駆け込み需要の反動減が深刻化しつつある。そもそも大きな需要の変動は体力低下を招いている」(輸送用機器)といった声が目立つ。

非製造業からも「所得の増加が実現していない上に、円安による輸入価格上昇が物価上昇を引き起こしており、一段と消費冷え込みが予想される」(小売)「地方はかなり悲惨な状況」(情報・通信)などの声がある。

<延期は1年が最多の22%、凍結は10%>

増税実施時期については「延期せずに予定通り実施すべき」が31%だったのに対し、10%が凍結、58%が延期すべきだとした。

延期については、1年先の2016年10月に実施すべきとの回答が22%と最多となった。その理由として「現時点では増税反動減が大きく出ており、給与水準も落ち着いていないと思われるため、半年から1年ほど影響を見た上で判断すべき」(機械)「財政健全化が必要以上に先送りされると日本経済そのものが痛んでくる」(放送業)など、所得回復を待つ必要があるものの、あまり長期間の延長は財政再建の視点から好ましくないとの意見が目立った。

1年半延期(2017年4月)が良いとの回答は12%で、事業の大きな妨げにならない時期といった意味合いが込められている。「10月だと年末に向けての繁忙期と重なるため、4月実施の方がよい」(運輸)「秋の増税では年末年始の消費減退を招きかねない」(小売)「税年度と合わせて4月からの変更にしてほしい」(輸送用機器)といった声が目立った。

それ以上先に延期との回答は13%を占め「日銀の目指す2%程度の物価上昇率の安定的推移の確認、名目賃金上昇の実現後に」(金属)や「デフレ脱却と2%以上の成長が確認できるまで据え置くべき」(運輸)など、ある程度時間をおいても経済成長と名目賃金上昇の環境が整うのを待つべきとの意見が多かった。

<歳出削減努力の不足に厳しい声>  

増税凍結を求める声は10%を占め、その理由として歳出削減への踏み込みの甘さを指摘する声が挙がる。「健康保険の架空・過大請求を根絶するだけで健保財政は飛躍的に改善する。税収も軽減措置を整理するだけで大幅に増加する余地がある。消費増税の前にやるべきことがある」(機械)「増税理由が不明確。歳出減なしにプライマリーバランスは実現しない」(小売)などの指摘が相次いだ。

歳出削減への踏み込み努力について聞いたところ、44%が踏み込み不足、29%が全く不足と回答し、合わせて73%が評価していないことが明らかとなった。

<増税でも最低限の対策で、軽減税率導入を>

増税を実施する場合でも、大型対策を求める声は少数派だった。必要最小限の対策を求める回答が全体の54%、対策は必要無しとの回答も10%を占めた。

必要と思う対策は「食品等の軽減税率」が38%を占め最も多く、金融緩和や投資減税、株高維持や円安政策などへの希望は少なかった。

「株高や金融緩和は低所得層への波及が少ない。給付金は使用しない。よって食品等の軽減税率が望ましい」(機械)「所得の低い人ほど増税感が強く、食品等の減税は低所得層に恩恵がある」(鉄道)といった意見が目立った。

<来春闘、33%が今年と同程度以上可能>

増税延期の理由に所得の回復の遅れを指摘する声が多い中、来年の春闘での賃上げについて「今年を上回る」ないし「同程度の実施が可能」との回答は全体の33%を占めた。「下回る」ないしは「引き上げは全く実施できず」との回答が合わせて25%だった。「わからない」との回答は42%。

今年と同程度の引き上げが可能とした企業からは、業績改善を挙げる声が多いほか、「政府の指導」(輸送用機器)との指摘もあった。

また、内需型企業からは「消費を喚起するため」「増税に伴う社員不安を緩和する必要」(運輸)など、消費の腰折れを回避する必要性を意識した指摘もあった。

今年を下回るとの回答企業では、業績懸念の声が多かった。

製品・サービスの来年の値上げ見通しについて、値上げ予定があるとの回答は16%、ないとの回答は28%、わからないが57%だった。

円安による輸入コスト増加の影響が大きく出る食品と繊維・紙パルプや、人件費上昇が直撃しているサービス業では、3─4割が値上げ予定ありと回答した。


(中川泉 編集:田巻一彦)


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北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で安倍晋三首相との初の首脳会談に臨んだ習近平国家主席の態度は異様なものだった。こわばった表情はホスト役としていかにも不自然で、笑顔の安倍首相に挨拶の言葉をかけられても反応すらしなかった。

余裕のある安倍首相の自然体と比べれば、習主席の態度は稚拙そのものだ。国際会議の晴れ舞台で「自信満々の大国指導者」を演じていたはずの彼が何ゆえにこんな失態を犯したのか。

政権発足以来2年間、習主席はずっと安倍政権と対決路線をとってきた。日本との首脳会談を拒否する一方、国内外においては「安倍叩(たた)き」を進め、「極右分子・危険な軍国主義者」などの汚い罵倒を安倍首相に浴びせた。そして尖閣周辺の海域と空域では日本に対する挑発行為をエスカレートさせている。

一方の安倍首相はその間、一心不乱に中国包囲網の構築を目指すアジア外交を精力的に展開した。日米同盟を強化した上、東南アジア諸国との連携を進め、あらゆる国際会議の場を借りて「力の支配」を企(たくら)む中国に対する批判と牽制(けんせい)を行った。

その結果、アジアで孤立を深めたのは中国の方であった。一時にはベトナムとフィリピンが反中国の急先鋒(せんぽう)となってしまい、ASEAN諸国の大半も安倍首相の中国批判に同調する方へ傾いた。気がついたら、習主席のアジア外交は袋小路に入っていた。

習主席は何とか劣勢をはね返して外交を立て直そうとし、中国が議長国を務めるAPECが最大のチャンスとみて着々と動き出した。まずはベトナムとの対立を緩和させ、フィリピンとの領土紛争も一時的に休戦させた。経済援助を手段に一部のアジア諸国を手なずけた。準備万端整えた上で習主席はAPECの大舞台に立ったのである。

しかし彼には心配事があった。安倍首相の出方だ。中国が招かなくても、安倍首相が国際会議参加のために北京にやってくる。そしてもし、安倍首相がこの重要会議において相変わらずの中国批判を展開していたら、中国にとっての晴れ舞台が台無しになってしまう。会議を利用してアジア外交を立て直そうとする習主席の企みは、ご破算になりかねない。

中国は結局、安倍首相を「野放し」にするようなことはできなかった。そのためには首脳会談に応じる以外にない。もちろん中国はそう簡単に折れたくはない。「領土問題の存在を認める」「靖国は参拝しない」という2つの条件を日本側に突きつけた。

しかし、安倍首相は最後までそれを拒否した。窮地に立たされたのは習主席の方である。そしてAPEC開催の3日前、日中間でようやく4項目の「合意文書」が交わされた。もちろんそこには「靖国」のやの字も入っていないし、日本が認めたとされる「異なる見解」は決して「領土問題」を指していないことは一目瞭然だ。つまり中国は、日本側に突きつけた2つの「条件」を自ら取り下げて首脳会談に応じた。

こういうことを強く意識しているからこそ、安倍首相との会談の冒頭、習主席は自らの悔しさを覆い隠すために、条件を引き下げたことを国民の目からごまかすために、わざと無礼な態度をとって虚勢を張るしかなかった。その瞬間、習主席は文字通りの敗者となった。

習主席にとっての問題はむしろこれからだ。「靖国不参拝」を約束しなかった安倍首相はいつでも参拝できるが、首脳会談に踏み切った習主席にしては、安倍首相に「参拝されたら」大変なことになる。今後、安倍首相に気を使わなければならないのは習主席の方だ。安倍首相を怒らせるようなことはそう簡単にできなくなる。首脳会談後の日中関係で優位に立つのは、結局安倍首相の方ではないか。
私も石平氏の習近平敗北という意見に同意だ。日中首脳会談をめぐり中国側は、尖閣諸島や靖国神社参拝をめぐる問題での歩み寄りを開催の“条件”として示してきたが、日本側は 一切の譲歩を拒んでいた。
>中国側は人民日報を通じて「領有権問題が存在することを日本が認めた」と一方的に勝利宣言をした。 が、日本は中国が要求した尖閣問題が存在していると認めないまま、無条件で日中首脳会談もどきは行われた。日本側は尖閣問題を認めてなんかない。その証拠に、安倍総理と握手するこの習近平の余裕の無さは「何怯えてるんだ?」って感じだ。大根役者にもなれていない、まるで小物だ!

習近平が突然、「すべての隣国と仲良くしたい」とAPEC直前歩み寄った背景は、中国がアジアでの孤立化を恐れ、折れるしかなかった。 中国側が土壇場で折れたのは、安倍首相の「対中牽制外交」が奏功した結果といえる。 

 安倍首相は第2次政権発足後、ASEAN加盟10カ国をすべて訪問した。日本と同様、中国との領有権問題を 抱えるフィリピンやベトナムと価値観を共有し、対中包囲網を構築した。今年5月にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)の講演で、 法をないがしろにして「力」で南シナ海進出をもくろむ中国を念頭に痛烈な牽制球を放った。  「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きだ。強い非難の対象とならざるを得ない!」 と演説し、安倍首相への質疑の時間、中国人出席者から靖国参拝について「日本軍に中国人は殺された。その魂にどう 説明するのか」との質問が出た際に、安倍首相が「国のために戦った方に手を合わせる、冥福を祈るのは世界共通のリーダーの姿勢だ」 と答え、会場から
満場の拍手を受けた。

自国に対する国際社会の冷ややかな視線を目の当たりにした中国は、「日本と敵対しても得るものはないという判断した。中国は、自分たちが アジアの中で孤立化していることにようやく気がついた。

日中首脳会談開催をめぐり、中国は日本に譲歩を迫ったが効果はなかった。それでも、APEC首脳会議を成功させ国内外に存在感を アピールしたい習主席は、折れるほかなかったのだ。

11月10日に行われた日中首脳会談の冒頭、習近平国家主席の態度は世界中から失笑をかったと思う。

習近平は、ホスト国のホストであるから普通で迎えるべきところわざと安倍総理を十
数秒待たせた。口を真一文字に結び、安倍総理の挨拶を通訳が訳し終える前にそっぽを向いて、目を合わせようともしなかった。一度滝川クリステル先生からホスト国のホストとしてオ・モ・テ・ナ・シの精神を学んだらよいかもしれません
(笑)

国内向けに「対日強硬」の姿勢をアピールする必要があったとはいえ、あまりにも幼稚だ。

ホスト国が客人を無下に扱えば、国際評価を落として当然。そのうえ、中国側はこの会談を『接見』や『会見』の意味合いに近い言葉で表現し、あくまでも『日本の要請に応えただけ』と、国内に印象づけた」

 ここまで来ると、開いた口が塞がらない。 安倍総理は会談の内容などどうでもよかったのだろう。終了後の会見を淡々と済ませると、足早に会場を後にした。特亜三国を相手にするなら、大人の対応を見せるしかありません。

岸田外相発言に中国大使館反発
【NHK】11月12日 21時13分

岸田外務大臣が11日、先に日中両政府が発表した両国関係の改善に向けた「合意文書」に関連して、「沖縄県の尖閣諸島を巡る領有権問題は存在しないというわが国の立場は全く変わっていない」などと述べたことについて、東京の中国大使館は「厳重な関心と不満を表す」とするコメントを発表し、強く反発しています。

政府は先週、中国政府との合意文書を発表し、この中に「双方は、尖閣諸島など、東シナ海の海域で、近年、緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している」という表現が盛り込まれました。
これについて岸田大臣は、11日の記者会見で、「尖閣諸島を巡る領有権問題は存在しないというわが国の立場は全く変わっていない。東シナ海では、中国による防空識別圏の設定や海底資源の掘削など、さまざまな緊張状態があり、それらについて、『異なる見解がある』と書いてあるだけだ」と述べ、日本側が譲歩したものではないという認識を示しました。
これに対して東京の中国大使館は12日、「厳重な関心と不満を表す。双方が発表した4つの原則的な共通認識の中身と精神ははっきりとしている。日本側が歴史と事実を直視し、約束を守り、共通認識の精神に基づいて中国側と向かい合って行動し、島の問題で言動を慎み、中国の領土主権を損害するすべての行為を中止するよう要請する」とするコメントをホームページで発表し、強く反発しています。
「中国との間に尖閣諸島の領有権をめぐって解決すべき問題はそもそも存在しない」が「中国が独自の主張をしていることは承知している」というだけだ。

(1)日中の戦略的互恵関係を発展させていく。
(2)歴史を直視し、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
(3)尖閣諸島など東シナ海の海域で近年緊張状態が生じていることに異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態を回避する。
(4)政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努める。

○肝心なのは、(3)の「尖閣諸島など・・・・異なる見解を有していると認識し」の部分であります。ここが「やっぱりね」、でありまして、この部分は溜池通信8月8日号のP6で以下のように解説しております。


・・・意外なところに「補助線」がある。1985年4月22日の国会答弁において、当時の安倍晋太郎外務大臣が「中国との間に尖閣諸島の領有権をめぐって解決すべき問題はそもそも存在しない」と答えているのだが、その後に、「中国が独自の主張をしていることは承知している」と言っている。

この答弁を上書きする形であれば、日本側としても呑めない話ではない。それをどういう形で表現するか、は専門家の仕事であろう。

中国は今回のAPECは自国主導のアジア秩序構築を宣言する場にしたかったのだろう、馬鹿らしいお祭り騒ぎをしたが、中国が異質な国であるという印象に残っただけだ。

北京五輪をほうふつさせる派手な演出だった。交通規制や工場の一時操業停止によって出現した“暫定的”な青空の下で、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれた。

10日には、3年ぶりの日中首脳会談も行われた。だが、25分間の密室は“日中首脳怪談”だったと想像する。会談前の7日に公表された日中合意文書の内容で、沖縄県・尖閣諸島の部分などに、日中間の解釈の隔たりが大きく、早々に火種へと発展していたためだ。

尖閣問題が日中間で初めて“文字化”されたことで、中国側は人民日報を通じて「領有権問題が存在することを日本が認めた」と一方的に勝利宣言をした。「領有権紛争があれば、どちらの立場にも立たない」と明言してきた米国の耳にも、すぐに届いたはずだ。

中国にとって、尖閣諸島の次の狙いが沖縄であることは間違いない。

「日本への琉球返還は、国際法的に根拠がない。日米2カ国だけの授受であり、中国は承認しない」「中国は沖縄に対する権利を放棄していない」などの主張が、近年、中国側から盛んに発せられている。

安倍晋三首相は、首脳会談後の記者会見で「日中両国が、戦略的互恵関係の原点に立ち戻って、関係を改善する第1歩となった」と淡々と語ったが、覇気がなかった。習近平主席の失礼千万な振る舞いから始まった首脳会談は、双方がかみ合うことなく終わったからではないのか。
日本のメディアは全般的に「日中の関係改善を国民が望んできた」と報じたが、世論はそれほど日中首脳会談を渇望していたのだろうか?

そもそも、一方的に関係を悪化させてきたのは中国なのだ。日本の領海・領空侵犯を繰り返し、赤サンゴやマグロを密漁・乱獲し、日本を残虐非道な侵略者に仕立てるべく“捏造の歴史”を世界に喧伝している。

しかも、習政権となって、反日プロパガンダは大暴走中だ。

第2次世界大戦で、日本が降伏文書に署名した翌日の9月3日を、「抗日戦争勝利記念日」と定め、第1回の式典を盛大に行った。「民族独立のために戦った英雄をたたえる」として、9月30日が「烈士記念日」となり、12月13日は南京虐殺の犠牲者追悼日に決まった。

今年は日清戦争開戦から120年にあたることで盛り上がり、来年は第2次世界大戦終戦から70年という節目の年になる。「偉大な勝利をおさめた中華民族」と「侵略国で反省をしない日本」を吹聴するキャンペーンに燃えるはずだ。中国との関係改善など、ホラーでしかない。 (ノンフィクション作家・河添恵子)




[北京 12日 ロイター] - 西側諸国から中国への投資をけん引してきた米国企業が、中国経済の成長鈍化や規制強化を嫌気し、中国事業への期待や投資計画を縮小している。「明らかに、楽観論は後退している」。中国ビジネスを手掛ける約240社の米企業を代表する、米中ビジネス評議会(USCBC)のジョン・フリスビー会長はこう話す。

「企業にとっては、政策面での不透明感も強すぎる」という。

USCBCによると、米企業の中国子会社による事業規模(輸出やオフショア売上高含む)は約3500億ドルで、年間10%程度拡大していくとみられている。だが、中国の国内総生産(GDP)成長率は今年7.4%に低下する見通しだ。今月北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開かれたCEOサミットに出席した企業トップからは、新規投資を手控えているといった声も聞かれた。

中国商務省によると、同国に対する米国の海外直接投資(FDI)は1―9月期に24.7%減少した。在中国米国商工会議所も年次報告で、米企業は「慎重姿勢を強めている」と指摘している。

 
中国に26の工場を持ち、2万5000人を雇用している米重機大手のキャタピラー(CAT.N: 株価, 企業情報, レポート)。同社のダグラス・オーバーヘルマン最高経営責任者(CEO)は「中国のような大規模経済は、いつまでも12%や15%といった成長を続けられるわけではない。誰もが知っているはずであり、知っておくべきことだ」と話した。

中国では、経済成長率の3倍のペースで拡大した不動産投資ブームにより、重機や採掘設備などが過剰となり、現地製造業は厳しい価格競争にさらされることとなった。

キャタピラーの中国事業は、売り上げは横ばいだが利益はでており、投資撤収といった動きはない。しかし、オーバーヘルマンCEOは「投資を拡大するにはしばらく時間がかかりそうだ」と述べた。

一方、食の安全をめぐる問題などで中国当局から罰金を科せられたりメディアから批判を浴びたウォルマートのアジア部門最高経営責任者(CEO)、スコット・プライス氏は、都市部の顧客を増やすことを目指して、引き続き配送センターを建設し店舗をオープンするとしている。同CEOは「忍耐強く、投資を続ける」と語った。

<規制面の圧力>

中国の「2008年反独占法」は、外資にとって最も頭の痛い問題の1つだ。

独禁当局により、米半導体メーカーのクアルコムやマイクロソフトなどが捜査を受けた。米国からは、中国政府は規制当局を使って外資系企業を狙い撃ちし、国内企業を擁護しようとしているとの批判が出ている。

米商工会議所の国際問題担当責任者、マイロン・ブリリアント氏によると「中国政府には明らかに国内企業を優先させようとしている分野があり、欧米企業にとっては交渉がさらに難しくなっている」もようだ。同氏は「われわれが意図したように事業を展開することが簡単な国ではない」との懸念を示す。

この中、米中投資協定(BIT)の進展に期待する米企業トップも多い。この協定は、海外投資家に課されている制限や禁止事項などの「ネガティブリスト」を作成することで両国間の投資障壁をなくしていくのが目的だ。

10月、キャタピラーとウォルマート、コカコーラなど47の米企業が、オバマ政権に対しBITに関する協議を優先させるよう求める書簡に署名。今月12日の米中首脳会談で、オバマ大統領と中国の習近平国家主席は投資協定を最優先課題と位置づけるとともに、ネガティブリストを来年前半にも交換することを明らかにした。

「われわれは低利益と低マージンに適応しつつある。公正な競争が行われ、透明性が高まり、法による管理が行われていれば、それで満足だ」、米商工会議所のブリリアント氏はこう話した。

(Matthew Miller記者)



執筆中

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たいへん面白い本でした!私Ddog牛丼はネギだくで頂きB級グルメ好き、フード関係も立派な右翼でありました・・・・でも、ジロリアンラーメン二郎中毒者)ではないので、辛うじてフード極右ではないようです。

【週刊文春】「食」から見る日本人の政治思想史
『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』 (速水健朗 著)

メガマックやメガ牛丼などの「メガフード」ブームが起こったかと思えば、自然志向・健康志向の「スローフード」「マクロビオティック」が流行する――。

このような、日本人の食の多様さに目をつけたのが、人気ライター速水健朗さんの新刊『フード左翼とフード右翼』だ。本書では《食べるものの選択でその人の政治思想がわかる》という驚きの仮説を提示している。

「簡潔に言えば、フード左翼とは、現在の食の流通システムを否定し、地産地消で安心安全な食を希求する人たちのことです。一方で、大量生産大量消費の論理を肯定的にとらえる人をフード右翼としています。ただ、左翼右翼という言葉は強すぎるので、最近ではフードレフト、フードライトと呼ぶようにしています(笑)」

この基準に照らし合わせれば、「メガフード」はフード右翼、「マクロビ」はフード左翼ということになる。

「5年くらい前でしょうか、都心のOLの間で有機野菜のレストランが流行(はや)っていた頃から、日本人の食が二極化し始めていることに気が付きました。そこから食と政治の結びつきについて考えるようになった。

そもそも日本人は昔から、食に関する問題については非常にセンシティブに反応するんです。古くは米騒動がそうですし、1993年のコメの輸入措置は大問題になりました。最近ではTPPの問題もありますね。今思えば、麻生元首相がカップ麺の値段を知らなかったという報道も、政治的に本質をついた問題だったのかもしれません(笑)」

フード左翼・フード右翼の二極化がもっとも顕著に表れる場所は、実は一般の家庭内なのだという。

「僕の知り合いにもいるのですが、妻がフード左翼で夫がフード右翼というケースがとても多い。でもこの対立は悪いことではないと思うんです。これまでの日本では、自分がどこの政党を支持しているかは、たとえ家族にであっても秘密にされてきた。これからの時代は、もっと政治的立場を明確にし、意見を戦わせることが求められてくるように思いますね」

生産者への取材を繰り返す中で、速水さん自身フード左翼への「転向」があったというから面白い。       
「著作の中で、自分の立場を明確に書いたのは初めてのことでした。でもその方が議論は面白いものになる。僕はもともと経済保守の立場をとっているのですが、やはり安全で美味しいものを食べたいという気持ちは生じるものなんですね」                                                   はやみずけんろう/1973年石川県生まれ。ライター、編集者。コンピュータ誌の編集を 経て、現在はフリーランスとして活躍。                                           専門分野はメディア論、ショッピングモール 研究など。『ラーメンと愛国』『都市と消費とディズニーの夢』『1995年』など著書多数。 
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何を食べてよいのか、何を食べてはだめなのか?これは宗教である。
聖書にしても、コーランにしても、鱗がついてないものは食べてはダメ、「豚を喰うな」「牛喰うな」と食文化とは本来宗教なのかもしれない。
食文化は宗教と考え本書を読むと面白い。
左図はp55の図であるが、縦軸上下に「健康志向」と「ジャンク志向(安さ・量重視)」が取られ、横軸左右に「地域主義」と「グローバリズム」が置かれている。
マトリックスの左上に位置するのがフード左翼で、右下にくるのがフード右翼だ。 
「地産地消」「ジャンクフード」「ご当地ラーメン」「ベジタリアン」「B級グルメ」「フェアトレード」などの言葉が配されており、眺めながら自分はどこに位置するのかを考えると、「ジャンクフード」「メガ牛丼」「マクドナルド・ファストフード」私はどう考えてもフード右翼である。納得できないのがジロリアンの位置である。ジロリアンとは、ラーメン二郎という東京・三田に本店を構えるデカ盛りの元祖的ラーメン屋とそのチェーン店の魔力に取りつかれたラーメンジャンキーのこと。既知外じみた、豚の背脂が付着したあり得ない量のチャーシューと野菜が積み重ねられ、味は最近洗練されてしまったラーメンに背を向けたジャンクな味、ジャンクフードフードそのものだ。私から見れば、フード極右、フードファシズム!である。
これに対してフード左翼とは?工業化してしまった食を農業の側に取り戻して、安心安全を取り戻そうとする人たちで、特徴として「オーガニック・自然派」「健康志向」「ファーマーズマーケット」「ベジレストラン」などを好む人種で、「フード右翼」と基本的に対抗軸として存在しています
フード左翼は、非常に政治的な背景を持っている。たとえば「スローフード運動」を見てみるとわかりやすい。スローフード運動とは、1980年代にイタリアの共産主義運動から始まったことを知っている人は意外と少ない。
本書は主にフード左翼勃興の歴史を紹介しているが、「意識の高い都市リベラルの独善」である証明をしている。「有機農業だけでは世界の人口は養えないということをフード左翼は自覚していない。
フード左翼達は遺伝子組み換え作物を病的に拒む。しかし、科学的に遺伝子は食物として遺伝子は消化されてしまい、まったく遺伝子組み換え作物が体に悪い根拠はない!
フード左翼達は遺伝子組み換え作物には発がん性があると主張しているが、遺伝子組み換え作物によって健康被害がもたらされた事例は、現在のところない。
安全性を危ぶむ意見の根拠となっているのが、2012年、フランスのカーン大学の研究チームが発表した、遺伝子組み換えトウモロコシをラットに与えて、発がん性があると結論付けた研究だ。
だが、フランス政府はこの発表を受けて即座に調査に乗り出し、該当の品種の輸入停止に備えた。しかし、EU各国の公的機関が調査を進めた結果、実験方法がずさんであったことが発覚。さらに研究者と反バイオテクノロジーの団体との関係も示唆されるなど、研究そのものの信頼性がないとされている。

有機野菜好きは「サヨク」なんですか? “政治”よりも“消費”で社会を変え始めた日本人
【日経ビジネスオンライン】秋山 知子2013年12月27日(金)

日本の民主主義は「コメ騒動」から始まった――。「食」にこだわる一方、 政治意識の薄かった日本人は今、「食の志向」が政治意識に結びつく時代に直面しているとライターの速水健郎氏は指摘する。エコで安全な食を追い求める人々と、メガ牛丼やコンビニ弁当を愛する人々。両者の間にある政治的分断とは。

――速水さんの近著フード左翼とフード右翼(朝日新書)では、日本人の食のスタイルが実は政治意識と結びついているという、非常に新鮮な視点を提供されています。そもそも日本人の政治観をグルーピングするのはかなり難しいと思うのですが、反響はどうですか。

速水:ネットでの反応は早かったです。しかも最初は、反発に近い反応が多かったですね。食の志向で右翼とか左翼とか分類するなんて乱暴じゃないかと。このことがよく表してると思うんですけど、日本人って右とか左とか、リベラルとか保守とか分けられることにすごく嫌悪感を持つんですね。言霊信仰の民族というのもあるのか、レッテル張りを嫌がるんですよ。政治的に自分がどっちの立場にいるかということを表明したがらない。

実際には、これまでは自分の意見を表明するよりも隠す方にメリットが大きかったからだと思います。それと、基本的にはあまり政治的判断をしなくても自然選択的に物事が決まってきたせいなんでしょうね。55年体制が終わって既に長いんですが。誰もが関心を持つ政治問題って、だいたいが汚職とかカネの問題、政治家が信用できるとかできないといった問題だった。

ところがそうじゃない問題が最近になって生まれてきました。それがエネルギー問題や原発、それからTPP(環太平洋経済連携協定)などですね。どっちかに決めないといけない時代になっている。そんな時代には、自分の立場はどっちか、または利益がどちらにあるのかを表明する必要があるんだと思います。その上で、まずはマッピングしてみる。本書は、食においてそれをやってみようという試みなんです。

――まず、フード左翼とフード右翼を簡単に定義すると?

速水:「フード左翼」はこの本の中で作った言葉で、紙幅も割いて書いてありますので一言では説明しづらいんですが、食に関しての“理想主義者”といえます。例えば、イタリアで生まれた「スローフード」という地元の食材を伝統的な手法で調理して食べる運動が、マクドナルドへの反対運動を通して「反グローバリズム」という左派運動として広がっていきました。「スローフード」は地域主義という保守運動でありながらも、現代の左派運動の代表的なものなんですね。なので、地域主義、地産地消、自然派食品などにこだわる人々を左に置いて「フード左翼」と定義しました。対して「フード右翼」は現実主義者に相当します。第一義には、グローバルな食の流通や、産業化された食のユーザーということになります。

 日本人はこと「食」に関することになって初めて、政治的に問題を認識してきた歴史があると思うんです。例えば大正デモクラシー運動の発端はコメ騒動だった。そこから日本の民主主義が始まってると考えると、面白い国ですよね。
 現在のTPPの問題でも、金額的には一番大したことのない農業分野の、中でもコメの部分が一番クローズアップされています。1993年の冷害の年には外国産のコメの輸入解禁で、世論が沸騰しました。やっぱりコメなど食べ物のことになると日本人は怒ったり、政治問題だと認識したりするんです。

食による思想の違いが家族を分断した「震災離婚」

――例えばかつて言われてきたのは、日本は消費の選択肢がたくさんあって、欧米のような格差や社会的階級による消費特性もさほどなく、1DKのアパートに住んでポルシェに乗る人だってあり得る、みたいな話でした。ところが、「食の志向」を切り口にすると、そんなモザイク的な人はいなくて、きれいにマッピングがされてしまう。これは目からウロコでした。一人の消費者の中で「有機野菜好きで人工添加物は拒否」と「ジャンクフードやコンビニ弁当を愛用」って共存できないですよね。

速水:はい、それは共存し得ないと思いますね。

――マクロビオティックを実践しながらハンバーガーも食べる、という人は恐らくいないので、必ずどこかにマッピングされて自分の立ち位置が定まってくると。

速水:基本的に、僕らは消費によってどちらの立場も選べるんですよね。ジャンクフードか、自然食か。だからこそ、どこで買うか、どこで何を食べるかというのが政治性を持ってしまうのが現代なんだと思います。そして、何を食べるかということは、理詰めで考える政治志向よりももっと生理的ですよね。これは自分の口に入れられないとか、これには高いカネは払えないとか、ストレートに自分の主張が反映するからこそ政治的だと思うんです。

 これまで日本人の家族の中で政治的な分断が起きることってあり得なかったでしょう。例えば夫が自民党支持で妻が社民党支持でも、特に支障なくうまくやってこれたと思うんです。ところが、原発事故以降、食品の放射能汚染への懸念を巡る震災離婚が雑誌などで取り上げられましたが、政治的な主張が生活を一緒に営めないレベルまで家族を分断してしまうような状況が、実は生まれているわけです。

――「食」と結びついているからこそ、そこまで行ってしまうわけですね。

速水:エネルギー問題というよりは、それに派生する食の問題になっているというのが興味深いですね。

 ベジタリアンやビーガン(絶対菜食主義者。一切の動物性の栄養や素材を拒否する)のように自然食にこだわる人、あるいはらでぃっしゅぼーや、オイシックス、大地を守る会のような自然派の宅配サービスを利用する人たちは震災後に増えているんです。さらに、日本でも東京にいると恵比寿や六本木、青山などで、有機農法をしている農家が農産品を直接販売するファーマーズマーケットがよく開かれています。これはロンドンやサンフランシスコなどでは当たり前になっている直販形態ですが、そういうものを知らない人は全く知らない。

 一方ではこの数年、メガマックとか大盛り牛丼、あるいはラーメン二郎というボリュームの多いラーメンを好む「ジロリアン」など、食に関するブームは相変わらずあります。この両者に二分されているような状況です。産業化した食への反発から、地産地消を守って新しい流通を消費によって作ろうとしている人たちがいる半面、メガフードやコンビニ弁当やジャンクフードを好む「フード右翼」的な人たちもいる。ただ、フード右翼が悪いかというとそうではないんです。食が安くなるというのは貧困をなくし、食の民主化を進めるということでもありますから。

 対してフード左翼は富裕層に偏ったところがあります。ベジタリアンとか、あるいはオイシックスのユーザーなどは都市住民のアッパーミドル層が中心です。

 本の中で取り上げたエピソードですが、2011年に盛り上がった「ウォール街を占拠せよ」運動では、「自分たちは(貧しい側の)99パーセントだ」という主張が行われました。しかし、彼らは占拠しながら割とリッチな食事を取っていたんですね。なぜなら全米の有機農家が彼らを支援したり、世界中から彼らにニューヨークのレストランの出前を届けるという差し入れがあったからです。彼らは全世界規模で見ると、裕福な側の1パーセントなんですよ。よっぽど、その食糧はソマリアに送るべきだったと思います。

 左翼は貧困をなくす側にいるべきなのに、その逆になっている。この矛盾は、フード左翼というよりも、現代の左翼の矛盾そのものになっていると思います。先進国が、このまま有機農法を進めると世界の飢餓は、さらに進行しますし。世界を例にとっても、食の問題が今後も重要な政治問題になっていくのは間違いない。

エコなライフスタイルの主役はアッパーミドル都市住民

――「フード左翼」の人たちの中でも、ローフード(非加熱の食べ物だけを食べる)主義とかマクロビオティックなど細分化されていて、それらがお互いに相いれない、という話は面白いですね。

速水:同じベジタリアン同士でもマクロビとローフードは、加熱するしないで対立しますね。僕はもともと自分の親世代が中心になった60年代の学生運動やヒッピームーブメントに興味があるんです。この本は、60年代末の革命がその後どうなったんだろうという関心で書いたものでもあるんですけど、当時の学生運動は後に消費者運動となって、有機農業の実践などに流れていきます。ヒッピーも、ヨガやオーガニックなど資本主義の商品となって残っていく。頭でっかち同士で理論をぶつけて内ゲバに走りがちな左翼運動が、食という身体性を伴う分野だけで生き残るというように読み解くことができるかもしれません。

――「フード左翼」の人たちも結局は連帯できないんでしょうか。

速水:例えばファーマーズマーケットは、いろんな人たちが一応自然食ということで結びついた市場なので、そこではうまくいっているんです。主義主張は相いれないけど、経済の場所なんでうまくいくんですよ。

 日本人は特に政治意識のようなものを人前で出すのが苦手ですが、消費を通して政治選択するというのはむしろ得意なんじゃないでしょうか。

――エシカル消費とか、エシカルなライフスタイルというのも普通に浸透してきましたよね。例えば外資系ブランド勤務だったりクリエーターのような仕事をしている人たちが、週末は有機農業に熱中しているという話をよく聞きます。

速水:日本でもそういう例が増えてきていますね。例えばモデルやタレントの例などでよくありますが、マクロビにはまる最大のきっかけは出産なんです。現代の出産医療に対する反発みたいなところから始まる。そういう目に見える形で、日本でもエコなライフスタイルを選ぶ人が増えてきている。

 これまで、アメリカでは社会的階層と政党選択と消費・ライフスタイルが結びついているけど日本ではそうじゃない、というのが定説でしたが、少しずつ違う状況になってきている。

――都市生活者のアッパーミドル層で、出産などをきっかけにそうした世界に入っていくという話はすごくうなずけます。

速水:出産は、食の安全というものに向き合う最大のタイミングなんですよね。自分が食べるものは、案外どうでもいいんですよ。自分の子供や家族に食べさせる段になってやっぱり真剣に向き合うわけです。

 特に食の安全って目に見えないものが多くて分からないですよね。今はなるべくそれを可視化する方向にはなっています。産地や生産者を表示したり、情報公開が進んできています。こういう透明化の方向は正しいんですが、逆に言うともう制度では食の安全は守れなくなっているということです。

――もはや、行政が統制しようとしても到底追いつかない。

速水:いまどきは、産地表示や生産者の顔を出すといった流通の情報開示が進んでいます。これは、裏を返せば誰も「安全です」と言えなくなっているから、代わりに透明化を進めることしかできないと言うことでもあるんです。消費者が各自のリスクと判断、自己責任で選んでくださいねということです。

 こうした事例一つ取ってみても、かつてと比べて消費が持つ意味が変わってきていることが分かります。選択することの意味が大きくなり、消費ということの意味合いも変化しているんです。

 これは驚いたことなんですけど、かつて中国産の野菜というのは安全ではないものの代表だったんです。ところが原発事故以降、「中国産だから安全だ」という人も現れてきて、「えっ!?」って(笑)。安全の基準すら人によって全く異なってきている。

――日本で原発事故が起きたらなぜ中国産野菜が安全になるのか、不思議な気がします。

速水:選択するということの意味が重くなってきているわけですね。各自が持っている情報の中で取捨選択するしかなくて、取捨選択の基準はその人が持っている価値観を反映するしかなくて、誰も保障してくれない時代になっている。

世界を変えるのは政治ではなく「我々の」消費

速水:僕は基本的に消費の変化ということをこれまでテーマにしてきていて、今回も政治と消費の関係が近づいてきているぞということを書きたかったんです。

 アメリカの事例を見ていくと、国や自治体が政治の主体だという考え方が薄くなってきていて、企業行動、企業の商行為と政治選択がかつてより接近してきています。エシカル消費に代表されますが、アウトドアメーカーのパタゴニアのように、商品を消費したら動物愛護にお金が行くというような企業があって、それを消費者が選択する。アメリカだけの話ではなくて、もちろん日本でも起きていることです。

 今の日本人に、自分の消費行動が何か社会を変えるんだという意識はそんなにないでしょう。ただ、僕は20代や30代の若手起業家の人にインタビューする機会が多いんですけど、「なぜ起業したんですか」と聞くとだいたいは「社会を変えたかったから」と答えます。そのために会社を作ったり、テクノロジーで何か新しいサービスを開発する。そこで「政治家になりたいと思わなかったんですか」と聞くと、「社会を変えるのは政治じゃないでしょう」と言うんです。それは現代の状況をすごく象徴していると思うんですね。

 グーグルが一番分かりやすいんでしょうが、世の中を変えるのはテクノロジーや新しいサービスや商品であって、政治で法律を変えたり政権交代をしたから何かが変わるかというと、さすがにそうじゃないことにみんなもう気づいている。だから日常の生活の延長線上で何か社会を変えるということを考えている。そうした中で、食に関する意識を明確に持つ人が明らかに増えたんです。

 新規就農者も若い世代では目に見えて増えています。就職というよりは社会的起業に近い意識で就農する人が多かったりします。社会を変えることに対して情熱を持っている。それはある意味、60年代の学生たちとか、「政治の季節」と言われた時代のマインドに、別の方向から近づいているような気がしますね。

執筆中



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 防衛技術シンポジウム2014要旨集 の注目点を編集してみました。

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平成27年度概算要求の基本的な考え方 ・・・・ 1
1 主要な研究開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(1) 将来戦闘機

(2) 情報通信・サイバー攻撃対処技術及びM&Sの積極活用

(3) 警戒監視能力向上

(4) 防空能力向上

(5) 無人装備技術

(6) 車両・艦船・航空機等の能力向上

(7) 先進性/即時性を重視した研究

(8) 試作要求元別内訳(契約ベース)

(9) 研究開発の流れ

2 安全保障技術研究推進制度 ・・・・・・・・・・・ 14

3 研究用機械器具・施設整備 ・・・・・・・・・・・・ 15

4 技術交流・調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

5 技術研究開発体制の強化充実 ・・・・・・・・・ 18

6 概算要求の概要(経費) ・・・・・・・・・・・・・・・ 19

(1) 将来戦闘機については、11/5記事 25DMU 将来戦闘機をご参照ください

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防衛省と陸海空自衛隊が情報を共有し、自衛隊の統合的かつ有機的な運用を強化し得る高度なネットワーク環境を整備している。情報通信・情報保全 

1.緒論
防衛省・自衛隊の保有するシステム及びネットワークは、平素から様々なサイバー攻撃の脅威を受けており、効果的な指揮統制及び情報共有が妨げられる危険に曝されている。これらのサイバー攻撃等が発生した場合においても、重要なシステム及びネットワークを維持し、被害拡大防止と運用継続を両立させることが求められている。
サイバー攻撃の対処技術は民間等でも研究が行われているが、研究の中心はサイバー攻撃の未然防止技術や情報漏えい対策技術であり、防衛省において必要となる「被サイバー攻撃時の任務遂行能力を確保する」ための研究はあまり行われていない。
サイバー攻撃の被害拡大防止と運用継続を両立させるためには、サイバー攻撃に対する「隊員の練度向上」と「任務遂行能力の確保」が必要となる。今回は上記を実現すべく現在行っている2つの研究について報告する。

2.サイバー演習環境構築技術の研究
本研究はサイバー攻撃対処に対する「隊員の練度向上」を実現する演習環境構築のための研究である。指揮システムを模擬した実践的なシミュレーション環境でサイバー攻撃対処の訓練を行い、対処効果などについて評価を行い、サイバー攻撃対処の最適化と練度向上を図ることが可能なサイバー演習環境の構築に必要な技術を取得し、将来のサイバー演習環境の構築に反映することが目的である。

現在、被害拡大防止と運用継続を両立させるための効果的な対処手法や指揮システムの模擬手法等について検討を進めている。また、より実際に近い被攻撃状況再現のために、過去に実施したネットワークセキュリティ分析装置の研究試作の成果を活用していく予定である。

3.ネットワークサイバー攻撃対処技術の研究
本研究はサイバー攻撃による被害があった場合でも「任務遂行能力の確保」を実現するための研究である。サイバー攻撃発生時等において、防衛省・自衛隊のネットワークの安定的・効果的利用を維持し、任務を遂行するために、重要通信の経路確保と被害拡大防止を両立するためのネットワーク統制技術を取得し、将来の防衛省・自衛隊のネットワークに反映することを目的としている。
防衛省・自衛隊が用いるネットワークは各種事態に応じて動的に重要通信が変化するため、このような環境でも適合可能なネットワーク制御手法等について現在検討を進めている。

4.今後の取り組み
今回報告した研究は現在実施中で、計画から設計の段階である。今後システム設計、試作及び試験を行っていく予定であり、防衛省・自衛隊のサイバー攻撃対処能力向上のため「隊員の練度向上」及び「任務遂行能力の確保」を実現できるよう研究を進めて行きたい。

電子装備研究所におけるデータリンク関連技術の研究について
○田中幸一                                    14/15

1.背景
近年の戦闘では、コンピュータ及びデータ通信技術の急速な発達により、各種プラットホーム及び各種センサシステム等の情報を戦術データリンク等のネットワークを介した情報共有を積極的に行われ、情報作戦(IO:Information Operation)による有機的な作戦運用が展開されている。我が国においても、今後の陸海空の統合運用や部隊連携を円滑かつ効率的に実施するためには、データリンクを介した情報共有を推進すると共にネットワークの高速化、高信頼化を図る技術研究や、より広範囲に広がる戦場において、他のプラットホーム等のセンサ情報の利用は有効な解決策であり、特に、水平線の見通し線外の捜索追尾のデータ連携やステルス戦闘等における協同交戦の実施には、より高い周波数領域を使った超高速通信の実現が必要であり、これら情報優勢を確保するための技術研究が求められている。
2.目的
情報通信ネットワーク関連の分野では、民間において携帯電話の普及、無線LAN等による電波資源の所要が増える中、防衛省・自衛隊では現有の周波数資源をより有効かつ効率的な利用技術の研究や現在はあまり使用されていないミリ波等のより高い周波領域の使用などの新たらしいアプローチが必要である。このため、将来の戦術データリンクシステムを構成する技術の確立を目指した将来データリンクの研究と適応制御型高速ネットワーク技術の研究を計画している。
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将来データリンクの研究では、次世代の戦術データリンクとして、既存の周波数帯域を有効に利用するための帯域多重分散技術やデータの確実な伝送に必要な高信頼適応通信技術、また、陸海空の3自衛隊間でのデータ共有をリアルタイムで実現するデータ共有化技術などの研究を実施する事としている。

また、ソフトウェア無線技術を活用することで、帯域分散多重化や適応通信技術など各種機能の実現による更なる高速・高信頼通信技術の確立や現用のデータリンクとの情報連接による統合的な情報共有能力の向上を図るものである。

次に、適応制御ミリ波ネットワーク技術の研究では、これまで、民間ではあまり使用されてこなかったミリ波帯域を使った新たな無線ネットワークの構築を目指している。
これまで課題であった送信出力は、マイクロ波等で実績のあるガリウムナイトライド(GaN)を適用とアレー化による大出力化を行い、更に、天候や気象条件による伝搬環境の影響は空中線ビームの制御や通信方式の制御をアダプティブに実施することでの解決することで安定した大容量ネットワークを構成するものである。


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1.背景
米国では既にステルス戦闘機(ST 機)が運用開始されており、今後、諸外国においても航空機のステルス化が進展することが予想され、ST 機が近距離接近し、発射される精密誘導弾等の脅威は早晩現実のものになると考えられる。また、巡航ミサイル(CM)の拡散及び高速化、低高度化、高精度化も進展しており、基地等の地上重要施設及び艦艇等は大きな脅威に曝されることとなる。さらに、近年顕在化している弾道ミサイル(BM)は、今後、更に進展し、多・疑似弾頭を有したものに発展するものと考える。

しかしながら、これらの脅威に対し、現有のレーダ及び赤外線センサ装置単体ではST機及びCMを遠方で探知、BM を早期に探知・識別することが難しく、早急に本研究を開始する必要がある。
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2.目的
本研究の目的は、大型機に搭載し、遠方からST 機、CM 及び BM の新たな対空脅威早期に探
知し、ウェポン等と連携して対処するセンサシステムを確立することである。そのために必要な課題は次のとおり。
・レーダと赤外線センサで得られた情報からのデータ融合
・レーダの低周波化による ST 機の探知距離の延伸
・海面クラッタの変化に対応してこれを抑圧することによる低空飛しょうする CM の探知能力の向上

3.研究内容
これまで電子装備研究所で実施してきたパッシブレーダ技術及び赤外線補足追尾技術等の研
究成果を活用し、平成 22 年度から平成 27 年度までの研究試作でシステム設計を実施するとともに、レーダ装置、赤外線センサ装置及び統制装置等を試作する。また、平成 24 年度から平成 30年度まで試験を行って、研究試作品の機能・性能に関する確認を行う予定である。なお、得られる成果見込みとしては次のとおり。

①ST 機、CM 及び BM を早期に探知できる。
②パッシブレーダにより ST 機に対する探知能力向上及び自己の秘匿化が期待できる。
③赤外線センサにより、BM の弾頭、ST 機のヘッドオン部等の低温の目標についても探知、追尾能力の向上が見込まれる。
④レーダと赤外線センサで得られた情報からデータ融合を行うため、目標の標定精度の向上が見込まれる。
⑤標定精度が向上した目標情報の共有及び他システムへの情報伝送により、地上・海上から見通し外遠方におけるウェポンの利用が期待できる。
⑥レーダは赤外線センサとの協調により、能力の範囲内で、高い電界をミサイル等に照射することができ、新たな自己防御の方法を検討することができる
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イメージから推察するとイスラエルの無人偵察攻撃機を輸入改造するようである。

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対空誘導弾における低RCS目標の検知技術に関する研究
○山口裕之、水谷大輔
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1.背景
イメージ 24近年、ステルス機のようにレーダ反射面積(Radar Cross Section; RCS)の低減を図った航空機が開発されている。このような航空機に対処できる対空電波誘導弾の実現のために、低 RCS 目標を検知できるセンサ(電波シーカ)に搭載するレーダ信号処理技術について研究を行う。

2.目的
ステルス機のような低 RCS 化された目標は、検知に必要な信号対雑音比(S/N)が得られないため検知距離が短くなる。検知距離が短くなると、誘導させるための時間が短くなるため、目標が旋回した場合、誘導弾を目標へ会合させることが難しくなる。したがって、低 RCS 目標に対処するためには、S/N を向上させるための技術を開発し、極力遠方でこれを検知することが必要である。
本研究では、S/Nを向上させるために検知前追尾方式(Track-Before-Detect; TBD)に着目し、シミュレーションにより検知距離の延伸の可能性について検討を行った。

3.検知方法の概要
図1に電波シーカにおける TBD の適用を示す。
従来方式では、信号処理単位である1フレームにお い て ア ナ ロ グ / デ ジ タ ル 変 換 ( Analog toDigital; A/D)、高速フーリエ変換(Fast FourierTransform; FFT)を行った後、検知が行われる。ここでは、雑音よりも十分に大きなしきい値を設定する。それにより、誘導に用いる目標信号を得る。一方、TBD では、A/D 及び FFT の処理の後、仮目標検知を行う。これは、低 RCS 目標を検知するために、しきい値を低下させ、1フレームにおいて雑音及び目標信号を含む複数の信号を仮目標として検知するためのものである。ただし、1フレームのみでは、どれが真の目標信号なのか不明である。そのため、複数のフレームにわたって取得した仮目標を用いて、目標の機動等を考慮した信号処理により目標信号を推定する。その結果から最終的に検知及びしきい値判定により、誘導に用いる目標信号を得る。

4.結果
図2に、従来方式と TBD に対する検知距離のシミュレーション結果を示す。ここでは、目標のRCSは 0.01m2、誘導弾と目標との相対速度はマッハ2、電波シーカは X 帯、パルス数(即ち、FFT ポイント数)は 256 である。なお、用いたフレーム数は10回である。
シミュレーションは、目標の機動(直進及び旋回)、FFT 後の S/N 等をパラメタとして実施した。その結果、TBD を適用することにより7.9dBのS/Nの改善効果を期待できることが分かった。この結果、検知距離を 4.9km から 8.1km へ延伸できることが分かった。
参考文献
1) M. McDonald and B. Balaji,“Track-before-Detect Using Swerling 0, 1,and 3 Target Models for Small ManoeuvringMaritime Targets,” EURASIP Journal onAdvances in Signal Processing, Article ID

艦艇装備研究所における無人水中航走体の推進機構に関する研究の取組について  ○吉武宣之                               1/15

1.背景
艦艇装備研究所では重点的に研究を推進すべ き 項 目 の 一 つ と し て 無 人 水 中 航 走 体(Unmanned Underwater Vehicle, 以下 UUV と呼ぶ。)の研究を掲げ、その要素技術の研究を行っている。本発表では、UUV に係る研究における技術課題、研究の現状及び研究計画を概説し、本シンポジウムで艦艇装備研究所が行う UUV 推進機構に係る個別の研究発表について、それらの研究の意義と研究計画における位置づけを明確にする。

2.UUV に係る研究の取組の概要
UUV は長期間にわたる観測、調査、情報収集などの単調な任務や機雷の捜索や処理などの危険な任務などが行えることに加え、搭乗員スペースや装備、安全性の確保が不要なこと、小型化が可能であり有人機に比べて費用対効果に優れるなどの特徴を有している。

それぞれの任務に応じて搭載するセンサや航走体の大きさは異なるが、UUV を実現する上で共通する主要な技術課題は、自律化技術、高精度航法技術及び推進機構技術である。

このうち自律化技術については、基本的には潜水状態の航走体は音波以外の通信手段がなく、水上母艦による UUV 搭載センサ画像の実時間モニタリングと遠隔操縦が困難であり、発進、進出、任務、帰投、回収の各段階で高い自律性を有することが必要である。

高精度航法技術については、GPS の電波信号を受信できない水中を長時間航行する場合には、航走体内の慣性航法装置により航行するが、時間の経過とともに位置誤差は累積する。特に、低速で航行する場合には航行距離あたりの誤差は航空や陸上無人機に比べて大きい。この位置誤差を自動的に補正することが必要である。
推進機構技術については、多くの UUV はバッテリを動力源として使用しているが、長期間の航行が要求される場合には他の動力源も考える必要がある。さらに、情報収集などの任務においては低速での航行安定性が要求される。

艦艇装備研究所においてはこれらの主要な技術課題を解明するための研究計画を立案し、検
討を進めているが、本シンポジウムでは推進機構技術について成果が得られたものを紹介する。
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 図に無人水中航走体推進機構の研究計画を示す。平成22年度から25年度まで、水中グライダーの研究を実施した。これは航走体内の浮力調整装置等により水中を滑走させるものであり、バッテリの使用を極力押さえた省エネルギー推進機構である。今後は搭載センサ等とのインテグレーションの検討を進めて行く計画である。

平成23年度から25年度まで、プロペラ部分自体を動かす推力偏向機構の研究を実施した。これは舵等の付加物を廃することで取り回しが容易になることや、舵が効きにくい極低速での航行を安定させることが可能な推進機構であり、試験用水中航走体を仮作して水槽実験を行うとともに数値計算による性能の検討を実施した。上記した 2つの推進機構の研究成果については本シンポジウムで発表する。

現在、長期連続運用型推進機構の動力源に係る研究を開始したところであり、将来的には多用途 UUV や大型 UUV へ適用する計画としている。

UUV と USV の連携技術
○鈴木尚也、蒲英樹、北島仁                                    8/15

1.背景イメージ 22近年、民需及び軍需において、陸海空の各ドメインで活動する無人機の研究が盛んに行われており、海においては水中及び水上で行動するUUV(Unmanned Underwater Vehicle:無人水中航走体)、USV(Unmanned Surface Vehicle:無人水上航走体)について研究が行われている。軍需における無人機の優位性は、オペレーターが危険な領域に侵入することなく情報収集等の作戦行動を行えることであることから、無人機に対しては人的被害のおそれなく敵に接近して、収集した情報を遠隔地に待機する母艦等にリアルタイム伝送することが求められる。

陸上や空中で行動する無人機は電波を介して情報通信や GPS 情報通の取得を行うが、水中で行動する UUV の通信手段は主に音響通信が用いられる。音響通信は電波に比べて通信距離及び通信速度の点で制限が多いため、UUV には通信及びポジショニングについて、陸上や空中で行動する無人機とは異なる技術課題がある。

2.目的
本研究の目的の一つは、水中で UUV が取得した情報をリアルタイムでオペレーターに送信することである。これを実現するために、UUVとUSVの協調制御を行い並列航走することにより、音響通信回線を維持できるシステムを構築する。

3.UUV・USV システム概要
UUV と USV の諸元と性能を表1に、外観をそれぞれ、図1~図2に示す。UUV 及び USV はあらかじめ設定したコースを障害物の回避及び異常対処を行いながら航走できる。また、UUV は慣性航法装置によるポジショニングに加えて、USV が取得した GPS 情報と水中位置計測装置の情報を取得することにより高精度なポジショニングを行うことができる。

4.試験概要
UUV・USV システムがリアルタイムデータ伝送できることを確認するために、以下の試験を段階的に行った。
① UUV-USV 間の音響通信能力を確認する海上静止試験
② 自律的に障害物回避及び異常対処する能力を確認する単独航走試験
③ 音響通信の可能な距離を保持して航走できることを確認する並列航走試験
④ 並列航走時にリアルタイムに水中音響画像を伝送できることを確認する総合試験

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1.AH-64D攻撃ヘリ後継⇒AH-1Z Viper 
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2.UH-X代替⇒UH-1Y ヴェノム 
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・・・とした。

UH-1Yヴェノムとベル412は二卵性双生児みたいなものだ。

海上自衛隊の新多用途ヘリ(艦載型)は何か? 
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NH-90NFH(艦載対潜型)

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NH-90TTH(戦術輸送機型) 

ただし、NH-90も部品デポを海外に依存するとMCH-101と同じく稼働率が低くなってしまう。だが、次期哨戒ヘリと多用途ヘリをNH-90にして部品デポをを国内にすれば問題の多くが解決され、この新多用途ヘリがNH-90になる可能性もある。
国産SH-60Kの能力向上型SH-60L?)とどちらになるか興味が持たれる。


推力偏向機構を有する水中航走体の操縦性能について
○牧敦生、筒本達大、横山徳幸、大和直史、宮内新喜                  2/15

1.本研究の特徴
推力偏向機構を有する水中航走体の操縦運動について検討するため、長水槽における拘束
模型試験、自由航走模型試験及び数値シミュレーション等を行った。

2.本研究の概要
推力偏向機構(図1に本研究で用いた推力偏向機構を示す)は、舵とプロペラを独立に備える通常の水中航走体とは異なり、推進器自体を偏向させることで推進と操舵のいずれの機能も併せ持つものである。このような推力偏向機構の採用により、船体後部の舵を廃することができるため、機体の揚収・投入時における舵の破損の心配が無くなることで取り回しが容易になることや、低速域での操縦性能が向上すること等が期待できる。
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米国では既に Bluefin robotics 社が推力偏向機構を用いた水中航走体を実用化して運用に供しているが、国内では未だ実用化されていない。そのため、本研究では、今後の水中航走体の推進方式の一つとして考えられる、推力偏向機構の特徴を調査するため、水槽試験用模型を製作して試験を実施した。

今回のような推進器と舵が分離した通常の方式と異なる推力偏向機構の流体的特性を明らかにするため、艦艇装備研究所保有の大水槽において、拘束模型試験を実施した。拘束模型試験では、模型を曳引台車の治具に固定し、推力偏向角を網羅的に変更する試験や、強制的に模型を動揺させる試験等を行い、推力偏向機構等に関する流体性能を調査した。その際、過去に艦艇装備研究所で実施した、アジマス推進器に関する検討で用いた手法 1) を適用し、推力偏向機構の流体特性のモデル化を実施した。そして、これらの結果を基に操縦運動の数値シミュレーションを実施した。

さらに、大水槽において自由航走模型試験を実施した。本試験の結果、推力偏向により実際に水中航走体が操縦可能であることを確認するとともに、操縦運動に関する数値シミュレーションの検証に供しうるデータも得ることができた。その結果、今回の推力偏向機構に関するモデリングを用いた数値シミュレーションに一定程度の妥当性があることが分かった。

加えて、近年注目をされている、実時間で最適な制御入力を求めるための手法である「モデル予測制御」2) を用いた数値シミュレーションによる検討を行い、海中捜索等の運用場面で、使用できる見通しを得た。
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1. 目的イメージ 25技術研究本部(技本)における主要なロボット技術の研究は、旧第 4 研究所で平成 3 年度から開始され、平成 18 年度に技本が改編されて以降は新たに設立された先進技術推進センター(当センター)が中心となり研究を鋭意継続している。今回の発表では、過去から現在に至る技本の研究成果の概要について説明するとともに、将来のこの分野における研究の方向性について一つの案を示し、議論したいと考える。

2. 過去から現在までの成果
初期の研究は、移動が困難な地表面を克服し、目標地点まで障害物を回避しながら自律的に移動することを目的としていた。カメラ、LRF 等の各種外界センサからの情報を処理する環境認識、IMU、GPS からの情報を処理する自己位置推定及び目標地点までの経路を決定する経路計画等の研究が主に行われたが、当時の計算機の性能上、各種処理は多くの時間が必要であった。当センターが設立された後も、遠隔操縦技術を含めてこれらの研究は引き継がれ、各種地上型のロボットの研究が実施され、多くの成果(図1)が得られている。他方、技本他研究所においてもこれまでに、UGV、UUV や UAV などの研究も実施されてきている。現在、当センターでは実用化を念頭にした建物内偵察監視用 UAV(図 2)の実現に必要な技術資料を取得するための研究も実施している。
IT技術の発展は、高度で複雑な外部環境認識、及びそれに基づく自律判断を担うアルゴリズムの演算の高速化を可能とし、ロボットの装備化が実現する時代の到来を十分予感させている。

3.将来の研究の方向性
自衛隊が活動する環境が多様化、複雑化し、その遂行が困難になる状況下で、当センターは
隊員の身体生命を守るゼロカジュアルティ戦闘システムの実現を目指している。ここで要求されるロボットの性能、構造や形状も多種多様であり、また民生品とも異なるものとなる。従って完成体としてのロボットの形態はそれぞれが特殊任務を遂行するに適した特別注文型も多くなると予想されることから、調達コストの低減だけでなく、運用者の要望と使用環境の変化に即応すべく、改善の容易性等も取り入れ、調達期間の短縮を実現するためのロボットの研究も必要と考えられる。今後、当センターは民間で既に実装が進んでいるソフトウェアの再利用を可能にする設計思想を取り込み、また、ハードウェアも基本動作用機器を標準仕様的に活用するなど、民生品の積極的導入を図るとともに、技本他研究所及び国内外の研究機関・大学等との連携も踏まえ、効果的な研究を実施する。
上掲のイラストからDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)が開発しているBigDog系の輸送用四足歩行ロボットを自衛隊も開発を検討しているようである。楽しみである。参考までに最新の AlphaDogの動画を貼っておきます。

DARPA - AlphaDog Legged Squad Support System (LS3) Field Testing [720p]

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弾数に縛られない高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)によるライト  スピードウェポンを開発しています。
イメージ 13これは、低出力時増幅器として進行波管(TWT:Traveling Wave Tube)を、フェーズドアレイレーダとして使い、高出力モード時には指向性兵器として高出力のレーザーや電磁波は瞬時に相手のセンサーや電子機器を無効化する兵器です。
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近年の装備品等に含まれる電子機器は高速処理化、低動作電圧化及び小型軽量化のため、高密度化が進み、高出力マイクロ波に対する脆弱化が加速している。一方、マイクロ波を使用するレーダ等の装備品では高出力化が進んでおり、将来戦闘機の開発ビジョンにも示されているように、高出力マイクロ波(HPM:High Power Microwave)によるライトスピードウェポンが有望視され、その研究開発が進められている。 

マイクロ波帯で高出力を発生する増幅器として、ガリウムヒ素や窒化ガリウム等の化合物半導体の開発が近年活発に行われているものの、HPMによる攻撃用途には、空中線電力が不足している。一方、高出力を発生する増幅器として進行波管(TWT:Traveling Wave Tube)による方式では、TWTの小型化と相まって、アレイ化可能なMPMとして研究が進められている。

TWTを増幅器とするMPMは半導体増幅器を用いたモジュールと比べ高出力化が可能であり、効率も高く、高出力化により増加する発熱量の抑圧にも有効であるため、航空機、艦船、車両等のように搭載容量、電源容量及び冷却容量の制限があるシステムへの適用が期待できる。
 



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TRDIでは旭化成と共同で電磁パルス(ElectroMagnetic Pulse)兵器を開発しています。

対テロ対策用に小型IED(無線操作型即席爆弾)対策の装置とEMP兵器を開発しています。

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上掲画像は映画トランスフォーマー2に電磁砲のシーンがありその画像である。
自衛隊の電磁砲は超長距離対地攻撃用ではなく対空、対水上、対艦ミサイル迎撃用である。


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電磁砲、高出力マイクロ波(HPM)、高出力レーザシステムにしてもエネルギー源は電気であって、統合電気推進システムは次世代兵器にエネルギーを供給できる一石二鳥のシステムである。

従来の艦船では、原動機により直接プロペラを回して機械エネルギーで推進する。一方、艦内負荷は発電機により供給される電気エネルギーで作動させている。
次世代の艦船では、推進電動機による電気推進を採用して推進負荷と艦内負荷に同じ発電機から給電し、全てのエネルギーを電気に統一する統合電気推進艦が検討されている。その理由の1つは、大電力砲こう武器、レーザ兵器といった高出力武器や将来の高性能センサーの電力負荷に対応するためである。これは、図1に示すように高速航行時に必要な大電力を高出力武器や高性能センサーに融通させることで、必要な電力を確保するものである。           これを実現するためには、発電機から各負荷に至る給電網(電源システム)の開発が必要である。しかし、将来武器は開発途上であり、また海上自衛隊の将来武器要求が必ずしも諸外国と一致するものではなく、電源における要求事項が明確でない。そこで、本検討では、電源システムで重要な要件の一つである「電源品質の維持」に着目し、現状艦船が電源品質を維持できる限界を明確にするとともに、将来武器の電源への要求と比較検討することで技術課題を抽出す
ることを目的とする。

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高出力レーザシステム 
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高出力レーザシステムは、高出力で集光性に優れたレーザ発生装置、移動目標にビーム照射可能な追尾照準装置及びビーム指向装置等で構成されます。迎撃フローに示す様に、赤外線カメラで高速目標を追尾し、高出力レーザ光を集光させ、撃破するまで追尾・照準・照射します。

















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25DMU 将来戦闘機


TRDIのホームページで防衛技術シンポジウム2014要旨集が更新された。
そのなかに25DMUのイラストが公開された。ネットでは初公開だと騒いでいるが、正確にはちょっとだけ違う。 防衛庁の平成27年度概算要求に将来戦闘機のイラストとして既に公開されている。9/5の当ブログ記事平成27年度概算要求の概要を読む において、公開された将来戦闘機のイラストは25DMUであろうと指摘していたが、正解であった。

将来戦闘機関連事業
そして、将来戦闘機である。25DMUらしきイラストが載っている!
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将来戦闘機関連事業イメージと24DMUと見比べると最大の相違点は水平尾翼がついている!デジタルモックアップで25DMUを研究しているとの情報でしたのでイラストは 25DMUの可能性が高い。 
以上

将来の戦闘機に求められるのは、敵を凌駕する高度な技術を駆使した新たな戦い方が必要である。すなわち「高度に情報(Informed)化/知能(Intelligent)化され、瞬時(Instantaneous)に敵を叩く「i3 Fighter」が必要である。具体的には、
①   射撃機会を増やすのと無駄弾を無くすために、誰かが撃てる、打てば当たるクラウド・シューテイング。
②   電波妨害に負けないフライ・バイ・ライト・システム。
③   世界一の素材技術を使い、敵を凌駕するステルス性。
④   世界一の半導体技術で次世代ハイパワー・レーダー。
⑤   世界一の耐熱材料技術で次世代高出力スリム・エンジン、などの開発。


平成23年度から継続実施中の将来戦闘機 機体構想の研究において、これまで、年度ごとに計3体の3次元デジタル・モックアップ(それぞれ、23DMU、24DMU及び25DMU)を作成している。その際、平成24年度以降、前年度に作成したDMUをパイロット・イン・ザ・ループ・シミュレーション等に供し、効果の確認及び運用者の意見を収集するとともに、その成果を同年度作成のDMUに反映してきた。

近年、実用化されつつある第5世代戦闘機は、ステルス性及びネットワーク戦闘能力等に優れ、現在の我が国の主力戦闘機である第4世代戦闘機に比べ、極めて高い能力を持っている。防衛省においては、2030 年頃に必要となる F-2 後継機の取得にかかる検討を実施する所要の時期に、選択肢として国産の将来戦闘機の開発を実現できるよう検討を進めており、関連技術の研究を実施している。

防衛省において策定した将来の戦闘機に関する研究開発ビジョンでは、「クラウドシューティング」、「敵を凌駕するステルス」等の将来戦闘機のコンセプトが示されている(図1)。
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航空装備研究所においては、これらのコンセプトを実現するために各種研究を実施している。「クラウドシューティング」に関しては、戦闘機用統合火器管制技術の研究により取り組んでいる。

本件は、編隊内の戦闘機間で、ステルス性を損なわないために指向性を持たせた高速通信を行い、複数のセンサ情報を一元化し、編隊が一体として誘導弾の射撃を行う火器管制システムに関する研究を実施するものである。

「敵を凌駕するステルス」に関しては、ウェポン内装化空力技術の研究、ウェポンリリース・ステルス化の研究、ステルスインテークダクトの研究、軽量化機体構造の研究により取り組んでいる。ウェポン内装化空力技術及びウェポンリリース・ステルス化の研究では、従来の戦闘機においては主翼下等の機外に搭載していた誘導弾等のウェポンを胴体に内装化することでレーダ電波反射面積を減らすとともに、高速・高荷重環境においても適切にウェポンを発射可能とする技術について研究を実施しているものである。

ステルスインテークダクトの研究は、レーダ電波反射面積を低減するためにダクトを曲げることによって生じる空気の均一性低下等を防ぐための技術について研究を実施するものである。軽量化機体構造の研究は、ウェポン内装化等により重量増加の傾向が著しいステルス機に対応するため、一体化・ファスナレス構造技術及びヒートシールド技術による機体構造軽量化技術について研究を実施するものである。

これらの研究により、将来戦闘機のコンセプトを具体化させ将来戦闘機が実現できるよう鋭意に取り組んでいるところである。

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26DMUも製作されるようだ。2015年25DMUと26DMUについても再度防空/空戦シュミレーションを行い最終的なF-3の最終仕様が決まるととのことです。


F-3次世代戦闘機構想について、技術研究本部がエビエーション・ウイーク誌の質問に答えた内容が明らかになった。以下は同誌が報ずる大要である。
(略)                                               日本が目指す次世代戦闘機は、速度よりも遠距離性能に重点を置き、それに独自に研究を進めている複数の技術を盛り込んだものとなる。すなわち、想定される数的劣勢を跳ね返すため、友軍機と目標視認データの共有化、大型の高性能ミサイルを胴体内へ搭載、退避中でもミサイル誘導が可能、などの技術だ。    
これ等の開発は今後4年間(上の予定表にあるように2018年までに)完了するものと見られる。日本防衛省は、財務省などが望んでいる国際共同開発の可能性を否定はしていないが、ステルス機開発では後発の立場にあるため、主導権を失うことを恐れている。特に、独自の要求である“速度より航続距離の重視”の項目は譲れないとしている。                                   
防衛省は、2030年頃には双発のF-3戦闘機を配備したいと考えている。技術研究本部(TRDI)とIHIが進めるエンジン開発は、すでに相当なレベルに達しており驚くべき高出力ターボファンの出現が近づいている。TRDIは、機体構造の分野では三菱重工と共同で、また電子装備では機器開発で著名な三菱電気と共同で、開発に取組んでいる。                                    
防衛省によればF-3戦闘機は、現在配備中の三菱重工製F-2戦闘機の更新用と位置づけられている。正式決定は2018年会計年度になる予定で、ここで独自開発か国際共同開発かが決まると云う。                           
国際共同開発の場合最も可能性のある相手は米国だが、米空軍と海軍はロッキードマーチン製F-35の後継機種を未だ決めていない。これについて防衛省は“F-2の退役時期に合わせてF-3の開発を進める必要がある”と述べ、暗に米国のF-35開発プログラムの大幅な遅れに時期を合わせることに難色を示している。
防衛省は、2010年以来これまでにF-3の機体研究に1兆2,000億円(約10億㌦)を投入済み、2015年度予算では4,120億円を要求している。これ等を通して、技術研究本部(TRDI)の云う「i3」技術、すなわち次世代戦闘機の中核となる技術研究が進められている。これ等新技術はステルス実証機ATD-X「心神」に組込まれていて、来年早々に初飛行する予定だ。                           
さらに2015年度予算ではF-3用エンジンの開発用として1,420億円を別途要求して、F-3の機体に先んじて完成させることを計画している。このエンジンの推力は2012年に33,000lbsと発表されたが、変更されていない。                
原型エンジンの燃焼室、高圧コンプレッサー(HPC)、高圧タービン(HPT)は現在試験中。このうち高圧タービン(HPT)の試験は2015年度中に完了する見込みだ。低圧コンプレッサー(LPC)と低圧タービン(LPT)の試験は2017年度中に終了予定。そしてこれ等を組込んだ試作エンジンの試運転は2018年度に実施される。    
エンジンで最も注目されるのは、これまでの常識を破る高温1,800℃ (3,272F)で運転される点だ。この結果、エンジンは細く作ることができ、機体の前面面積を小さくできる。F-3が超音速巡航可能か否かは別として、機体前面面積を小さくするのは超音速で飛ぶ戦闘機の必要条件である。                   
今のところ日本は新戦闘機の本格開発に乗り出すかどうか決めていないが、好戦的な中国の脅威を痛切に感じ始めているため、自国防衛のため数千億円に達する開発費の拠出を決定する可能性が高まっている。               
防衛省は「新戦闘機に必要な開発費を詳しく検討したことはない、また90機のF-2戦闘機の代替として必要なF-3の機数も決まっていない、さらに新戦闘機の詳細なスペックも未定だ」と話している。                            
技術研究本部(TRDI)が11月に行った公式セミナーでは、「F-3は依然TRDIの担当段階であり、日本が目指す方向を示す1プロジェクトである」としている。     
TRDIでは、2011、2012、2013各年毎にF-3の概念設計を纏め、デジタル・モックアップ(DMU=digital mocj-up)として平成年号を冠した23DMU、24DMU、25DMU、と名付けた概念設計を行っている。                             
それぞれのDMUを検証すると、主翼前縁の後退角がいずれも40度となっており、アフタバーナーを使用せずに超音速巡航をするいわゆるスーパークルーズ(supercruise)機でないことが判る。                               
設計は、年ごとにステルス性と他の飛行特性との関係で少しずつ変っているが、垂直尾翼を廃して低周波レーダー探知に対抗するような変更はしていない。全体の形状は変更され、僅かだが大きくなっている。エンジン推力は前述のように33,000lbsなので、機体はロッキードマーチン製のステルス戦闘機F-22ラプターに近くなっている。ことによるとエンジンは推力を絞って使われるかも知れない。
 
(注)F-22ラプターは、全長19m、翼幅13.56m、最大離陸重量38㌧、エンジンはP&W製F119-PW-100推力35,000lbsを2基、航続距離2,800km、巡航速度マッハ1.7の超音速巡航能力を持つ。2005年末から配備が始まり179機が全米各地に展開している。我国が導入を希望したが米議会の拒絶にあい、F-35を購入/ライセンス生産に変ったことは記憶に新しい。
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図:(Lockheed Martin)F-22ラプターはF-15C/Dの後継機として開発され、ステルス性を持つ第5世代戦闘機の先駆け。アフタバーナーを使わずに超音速巡航ができる。2011年末に生産を終了。   
2014年版の26DMUは公表されていないが、25DMUでは、大型ミサイルの収納可能な兵倉庫と、高アスペクト比の大型主翼となり、一層の長距離飛行が可能となった。25DMUで航続距離が延伸されたので、今年度に発表される26DMUでは余り大きな変化はないと思われる。そして26DMUが最終設計案になると予想される。
23DMUは2011年に発表され、試作中の技術実証機ATD-X心神を大型化した機体である。他のステルス機と同様、レーダーに感知され易いエンジン・ファンは、インレット・ダクトを湾曲させてレーダー電波を反射しにくくする構造とし、また、尾翼は他と同様4枚で外側に傾けた垂直尾翼を備える。                 
4基の中距離空対空ミサイルを納める兵倉庫は胴体下面に並列に設けられているが、かなり大きい。ロンドンの国際戦略研究所(International Institute for Strategic Studies)のダグラス・バリー(Douglas Barrie)氏は「図面から判断すると、胴体内に搭載するミサイルは、ロケット推進ではなく、大型で長射程、高精度のラムジェット推進型になるようだ」と述べている。                      
公表されたどの設計図面にも、この”中距離ミサイル”とは別に胴体側面に装備する短距離ミサイル2基、同じく胴体の両側面に大型のパッシブ・レーダー・アレイ、さらにコクピットの下面と前部に赤外線センサー、が描かれている。機首には強力なAESAレーダーが装備されている。この結果23DMU設計では、胴体が太くなり(厚みが増大)側面のレーダー反射面積が大きくなった。              
24DMUではこれを修正して機体全体を薄く改め、エンジン位置を外側に移し、インレット・ダクトの湾曲を廃し、ダクト内にレーダー・ブロック用のストレーナー・バッフルを取付けることにした。4基の中距離ミサイルは、左右の兵倉庫内に2基ずつ縦に納めるように改めた。2枚の垂直尾翼は、F-22との競争に敗れたノースロップYF-23に似たV字型配置とした。TRDIが行った模擬空戦の結果、23DMUに比べ24DMUのパイロットは、13%多くミサイルを発射でき、敵機からのミサイル発射数はその2/3に止まった。(優れたセンサー・システムのお陰で)ミサイルを発射できる時間幅は、23DMUおよび24DMU共に敵機のそれを上回る結果を得た。また、垂直尾翼前縁の後退角は変更してもレーダー反射面積には余り影響がないことが判った。

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図:(技術研究本部)F-3の設計概念図変遷、左から23DMU、24DMU、25DMUを示す。25DMUはほぼ最終案となる模様で、大きくなった主翼、湾曲したエンジン・インレット、中距離ミサイル6基を納める大きな兵倉庫が特徴。
 
25DMUは2013年に行われた改訂版だが、これでは再びインレット・ダクトの湾曲が復活した、しかし胴体側面の高さは23DMUより低くしてある。エンジン位置は内側に戻され、両側のインレット・ダクトは上側かつ内向きに湾曲させ、ダクト下側には計6基の中距離ミサイルを並列に装備することに改めた。これに関して前述のダグラス・バリー氏は述べている。「大型で高価なミサイルだがその搭載数を増やしたのは、日本が対峙する膨大な数の敵機を考えれば、当然のことだ」。
尾翼は4枚となり、垂直尾翼は外側に大きく傾きかつ短くなっている。        
既述のように、翼幅とアスペクト比は著しく増え、特にアスペクト比は概略図から算定すると24DMUの3.2-3.3から3.8-3.9に大きくしてある。ロッキードマーチン製F-35Aでは2,4、ボーイングF-15では3.0、に比べると興味深い。TRDIが公表した図面の寸法が正確なら、25DMUの翼幅は20%増えている。この主翼の変更は、揚抗比の向上、燃料タンク容量の増加、そして航続距離の延長をもたらすことに間違いはない。概略図で見る限り胴体も大きくなり燃料搭載の余地がありそうだ。  
TRDIは一貫して航続距離重視を明言しているが、具体的な数字は明らかにしていない。25DMUは、23DMUに比べ少なくとも10%大型化していることもあり、航続性能アップと引き換えに速度と加速性能が犠牲になっていると思われる。これ等の変更は、日本が抱く戦略構想、すなわち「数的劣勢の下で勝利を得るには、長距離・長時間の飛行で持てる技術を駆使する」方策によるものだ。          (略)

産経新聞には25DMUの原型機であるATD先進技術実証機の記事が載っている。
http://www.sankei.com/images/news/141105/plt1411050003-g1.jpg国産初のステルス戦闘機開発に向けた試作機「先進技術実証機」(ATD、通称・心神)が来年1月、初の飛行試験を行う。日本の先端技術を結集した軽量化の徹底が図られ、「平成の零戦」とも呼ばれる。日本の国産戦闘機構想は、1980年代のFSX(次期支援戦闘機)選定をめぐり米国の横やりが入り、日米共同開発に落ち着いた過去もある。自衛隊や防衛産業にとって、悲願ともいえる“日の丸戦闘機”は果たしてテイクオフできるか。

「心神」は、防衛省の委託を受けた三菱重工業など国内企業が平成22年から開発に着手した。開発の場となった三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所は、零戦を生んだ同社名古屋航空機製作所の流れをくむ。これも航空ファンが「心神」と零戦を重ね合わせる理由だ。

ちなみに「心神」は正式な名称ではない。開発構想初期に防衛省内で使われ始めたとされる。由来も定かではなく、防衛省担当者は「われわれは『心神』という名前を採用しているわけではない」と言いながらも、ついつい「心神が…」と呼んでしまうほど定着しているようだ。

「心神」は全長約14メートル、全幅約9メートル、全高約4.5メートル。炭素繊維の電波吸収材により、敵のレーダーに映りにくくするステルス性能を備える。燃料装置の小型化や炭素繊維強化プラスチックを使用することで軽量化も図り、高い運動性を目指す。

国産が難しかったエンジンは、IHIが開発した。エンジンと飛行を一体的に制御することで、機首を上方の敵機に向けたまま失速せずに前に進むことも可能だ。「高い温度で動けば動くほど能力が上がる」(防衛省担当者)ため、エンジン部品にはセラミックス複合材を使用した。従来のニッケル合金では耐熱性が1000度程度だったのに対し、約1400度にまで向上したという。

防衛省が国産戦闘機にこだわるのは、国内防衛産業の保護という側面もある。F2戦闘機94機の生産は平成23年9月に完了し、生産ラインは動いていない。このまま放置すれば関連企業が戦闘機事業から撤退し、日本の技術基盤が失われる恐れがあるからだ。防衛省の試算では、仮に国産戦闘機が導入されれば4兆円の新規事業が生まれると想定し、8.3兆円の経済波及効果と24万人の雇用創出効果をはじき出した。

国産であれば「機体に不具合が生じた際に素早く対応できるメリットもある」(航空自衛隊関係者)。一方、政府・与党には「日本の戦闘機は日本で作る」という技術ナショナリズムものぞく。

「戦闘機は国の空を守る重要なアセット(装備品)だ。それをわが国の独力の技術力で保持するのは防衛政策にとってもシンボリックな事業だ」

空自出身の宇都隆史参院議員(現外務政務官)は4月10日の参院外交防衛委員会で、小野寺五典防衛相(当時)にこう迫った。

このとき、小野寺氏は「わが国の防衛に必要な能力を有しているか、コスト面での合理性があるかを総合的に勘案する」と述べるにとどめた。防衛省は国産戦闘機の開発費を5000億~8000億円と見積もっているが、追加的な経費がかさみ、1兆円を超える可能性もある。国産でまかなえば1機当たりの単価もはねあがり、防衛費が膨大な額に上りかねない。

同盟国・米国の反応も気になる。1980年代のFSX選定では、米国製戦闘機の購入を求める米側との間で政治問題となり、日本が米国の要求を飲む形で米国製のF16を母体に日米共同でF2戦闘機が開発された。バブル景気絶頂の当時は米国内の一部で日本脅威論も論じられており、戦闘機の独自開発もその延長線上で待ったがかかった-。こう受け止める日本政府関係者は少なくなかった。

現在のところ、「心神」について「米国から共同開発を持ちかけてきてはいない」(防衛省関係者)という。米政府は大幅な国防費削減にあえいでおり、無人戦闘機の開発に着手していることもあり、新たな共同開発事業に手を出せない事情も指摘されている。

だが、同盟国といえども、こと軍事技術に関しては警戒感が根強い。

米政府はステルス性能試験施設の使用を「心神」に認めず、日本側はフランス国防装備庁の施設を使わざるを得なかった。平成23年12月に決定した次期主力戦闘機(FX)の選定で、日本政府は当初、ステルス戦闘機F22ラプターの導入に期待を寄せたが、米政府は技術流出を懸念して売却を拒否。最終的にF35ライトニング2が選ばれた経緯もある。

「航空機産業は日本にとって致命的な意味を持つ産業になる。これを発達させることを絶対好まない国がある。それはアメリカです」

2月12日、日本維新の会の石原慎太郎共同代表(当時)は衆院予算委員会で、こう力説した。防衛省内にも「今は技術を蓄積している段階だから米国は何も言ってこないが、機種選定の段階になったら何か言ってくるかもしれない」(経理装備局関係者)という声はある。

とはいえ、仮に国産戦闘機の導入を断念した場合でも、「心神」開発に伴う恩恵は無視できない。

現在主流となっている戦闘機の国際共同開発では、「心神」開発の経験が生かせるからだ。

防衛省担当者は「部品やエンジンを1機の戦闘機に組み立てる経験や技術がなければ国際共同開発では相手にされない。他国から『お前は戦闘機を作ったことがあるのか』と言われたら、イニシアチブを取ることは難しい」と語る。

国産戦闘機という選択肢があれば、他国メーカーと交渉する際に有力なカードにもなり得る。

「平成の零戦」は日本の空を守るのか。政府は国産戦闘機を導入するかどうかの判断を、4年後の30年度に予定している。

(政治部 杉本康士)
この予定表を読むとATD(先進技術実証機)の初飛行と同時に将来戦闘機の組み立てが始まる可能性がある。ATD心神はあくまでも先進技術実証機であって将来戦闘機そのものではない。今年度に発表される26DMUでは余り大きな変化はないと思われる。そして26DMUが最終設計案になると予想されるが、25DMUは将来戦闘機の原型になる可能性が高い。
不具合が多すぎるF-35に代わる第5.5世代戦闘機で唯一西側の有人戦闘機である25DMU将来戦闘機はもしかすると輸出される可能性もある。また、場合によっては日米英欧の共同開発となることもありえる。F-2の時のような米国の過剰な介入はいまのところ杞憂だろう。
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将来戦闘機に向けたエンジンの研究実施状況と今後の展望
○舟越義浩*1、井上寛之*1、及部朋紀*1、永井正夫*2                3/7

1.背景

ジェット戦闘機等の小型固定翼機用エンジンに関連する技術の動向としては、初期にはエンジンの高温化、高負荷化によるエンジン推力の増大が主流であったが、近年は搭載機の高運動化やステルス化に合わせ、エンジン推力増大のみならず、推力偏向機構を用いた機体飛行制御とエンジン制御の統合制御やレーダ・ブロッカまたは蛇行ダクト等によりステルス性への配慮がなされる傾向にある。

航空装備研究所においても、これらのエンジン技術動向を踏まえた研究開発を、その設立以来絶え間なく継続しており、中等練習機T-4搭載エンジン(F3-30)の開発や、先進技術実証機搭載エンジン(XF5-1)等の研究開発を通じ、エンジン関連技術の蓄積及び高度化を図ってきた(図1)。


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2.概要

防衛省の「将来の戦闘機に対する研究開発ビジョン」に示されたとおり、将来戦闘機に求められる技術は多岐にわたる。そのうちエンジンについては、次世代ハイパワー・スリム・エンジン(図 2)として、戦闘機としての飛行性能に直結するエンジン推力が大きいことが求められる。一方で従来は機外に装備していたミサイル等を胴体内に配置すること等による胴体拡大を抑制するため、胴体容積に占める割合が大きいエンジンをスリム化し、その結果、ステルス化に寄与すること等も重視される。

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この次世代ハイパワー・スリム・エンジンの実現に向け、従来の研究開発により蓄積したエンジン関連技術を基礎に、その中核となるコア部要素の設計・製造を進めており、現在は、それらの性能・特性の実証段階にある。また、これと並行して、アフターバーナ等、戦闘機用エンジンに必要なその他の構成要素の設計検討にも着手している。

今後は、これら要素技術に関する研究を継続するとともに、要素技術を統合したプロトタイプエンジンにより、エンジンシステムとしての成立性を実証することで、将来戦闘機開発への道標とする計画である。

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生命科学研究の衝撃-軍事的インパクトと課題-
○山田憲彦                                                                                                               4/7

1.前言

図 1 は 、 DARPA ( US Defense AdvancedResearch Projects Agency)のホームページである。
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DNA 解析、赤血球、神経細胞と3点の生命科学関連画像が示されており、同研究が軍事科学技術の広範な分野で活用されていることを端的に象徴している。この様な状況に至った経緯、活用目的等を包括的に把握することは、防衛技術推進の観点からも有用であろう。                                                                 
2.活用の経緯と活用目的の広がり

(1) 遺伝子クローニング技術の意義と影響生命科学研究は、伝統的には観察と分類を基
調とする科学である。近代的な意味における技術化とその影響の代表例は、70 年代の遺伝子クローニング技術の確立と、その直後の同技術の悪用・誤用を恐れる世論の高まりに見ることが出来る。

当時、科学者らは自主的に研究を停止し、研究の安全対策(Biosafety)の基盤を策定した。クローニング技術は、生物兵器への悪用が想定されるが、特に近年の大量破壊兵器拡散への懸念を受け、Biosafety の強化や科学者の啓蒙等を含む施策が各国で推進されている。

(2) 活用目的の多様化
上記の懸念に対応し、生物剤の高度な検知技術等が開発される中で、DARPA 等の軍事科学技術組織と、生命科学研究者との組織的な交流が開始された。これを契機とし、生命科学の軍事的な可能性の理解が急速に広がった。早くも2000年頃には、軍等の投資を受けた生命科学研究の多様な成果が Nature 誌等に多数見られるようになった。特に DARPA については、当初より神経科学への投資が際立ったが、昨年ホワイトハウスより公表された脳神経科学研究の国家プロジェクト(BRAIN Initiative)においても、NIH やNSF とともに主管官庁に指定されている。生命科学研究を軍事科学技術として活用する主たる目的は、①生物に範を得た素材・機器(含;コンピュータ)の開発と、②人間の機能の強化に大別することができる。両者において神経科学研究は重大なインパクトを与える事が予期される。


3.将来戦闘機への活用想定例

将来戦闘機の特性の中に、戦闘単位の縮小がある。これは、高度技術の活用により、例えば従来 100 人を要した作戦を数人で実施する省力化を実現するものである。しかし各プロセスにおける重要な判断は操縦者に委ねられるので、将来的なコックピット環境内は情報過多になることが想定される。操縦者の認知機能の強化や、判断内容をマシン等に伝達する手段の開発が重要になる中で、神経科学研究は多大なインパクトを与える。

加速度対策を講じた戦闘機が、そうではない戦闘機に対し空中戦で優位であるように、神経科学的手段を講じた将来戦闘機は、ネットワーク下の闘いにおいて、そうではない相手に対し決定的な優位に立つものと考えられる。この様な状況の生起は、無論、戦闘機に限らないであろう。

4.課題

生命科学研究の防衛技術的意義につき、関連動向を広く関係者間で共有し、長期的展望の下に同研究と向き合う体制が求められる。先端的な生命科学研究の多くが、部外研究機関で推進されており、部外機関との連携の強化は必須である。

部外の協力を仰ぐためにも、研究の目的と正当性に関し、従来以上の透明性も求められる。

参考文献

1) 山田憲彦,“デュアルユース・ジレンマの拡大と課題





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