【航空宇宙ビジネス短信 T2】2019年10月08日火曜日

Bell Unveils Army Scout Helicopter ? With Wings
ベルが新型陸軍用偵察ヘリコプターを発表、主翼を搭載
With its trademark tiltrotors too big for the Army’s FARA requirement, Bell is squeezing every ounce of performance out of a helicopter. Will it be fast enough?
お得意のティルトローターでは陸軍のFARA要求水準には大きすぎるため、ベルは小型化で性能を引き出す構想とした。だが十分に高速なのか。
By   SYDNEY J. FREEDBERG JR.
on October 02, 2019 at 5:00 AM
https://breakingdefense.com/2019/10/bell-unveils-army-scout-helicopter-with-wings/

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Bell 360インヴィクタス Invictus の概念図

米陸軍の将来型攻撃偵察機材構想Future Attack Reconnaissance Aircraft へのベル提案には驚くべきパラドックスが見られる。ベル360インヴィクダス(ラテン語で征服されざるもの)の名称がつき、各社提案の中でもっとも強力に見える一方、高速飛行性能と引き換えに低運行費用は劣る存在になっている。

前方に機関銃を配備し、薄い主翼をつけ、非対称型テイルローターのベル360の機体には数々の革新的技術が詰まっている。目には見えないが、性能の発揮に欠かせないのが完全デジタル制御システムで民生用ベル525リレントレスからの流用だ。525は現在FAA型式証明の取得中で初のフライ・バイ・ワイヤ操縦のヘリコプターとなる。電子制御の最高速度200ノットが実現する。ベルは360でも同程度の速度になるのか言明していないが、コンピュータモデリングと風洞テストで抗力の低減に相当努力しているのは事実だ。

だがベル360は通常型ヘリコプターの一種である。大型ローターで揚力と推進力を稼ぐものの、飛行距離と速力で制約から逃れられない。この壁の突破にベルはV-22やV-280の両ティルトローター機を準備した。

対照的なのがシコースキーS-97レイダーで、ヘリコプターと航空機のハイブリッドとして超硬度主ローターを主翼のように使い推進プロペラで推力を稼ぐ。ベルのティルトロータ同様にシコースキーの複合ヘリコプターは従来型ヘリの性能上の限界を突破する狙いがある。

その他競合相手には実機が未完成だが、ボーイング、ケイレム、AVX/L3チームがある。だがシコースキーとベルの先行はあきらかだ。

革新性ではS-97がベル360の相当先を往く。だがS-97も実証済みの設計となっており、すでに飛行テスト開始から数年がたち207ノットを達成した。これに対しベル360は縮小モデルが風洞内でテストしただけだ。では2022年末に実機が飛ぶとどこまでの速力となるのか。

「180ノット超となります」とベルの高性能回転翼機担当副社長キース・フレイルが一部記者を招いた特別説明会で述べた。180ノットはべ陸軍の巡航速度要求で機体は長時間に渡りこの性能を維持する内容だ。

では陸軍要求のダッシュ速度205ノットはどうか。「この機体は180ノット超」とフレイルは繰り返す。「陸軍要求は180ノットで当社は絶対に180を超えてみせます」
だが205ノットはどうか。「205要求はありません」とフレイルは述べた。

フレイルは記者会見後、筆者に認めた。陸軍がFARAに求める180ノット超は必要なとき短時間に限られるという。だが陸軍は「ダッシュ速度」での厳しい性能要求を設定していない。

「巡航速度180は譲歩の余地なしでの最低水準」と陸軍でFARA事業を統括するダン・ブラドレーは電子メールで筆者に伝えてきた。「ダッシュで205は望ましい性能」とし、陸軍はダッシュ速度は採択の条件ではなく、「最適条件」で実現可能かを評価するだけだという。

これは最近の陸軍の特徴たる柔軟かつ実際的なアプローチの一例であっり、これまでの硬直した要求内容と業界にリスクを無視してまで実現を共用してきた流れと好対照だ。とくにFARAでは速度、信頼性、価格などでのトレードオフを認めており、異例ともいえる許容度を業界に認めている。

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ベルV-280ヴェイラー・ティルトローターが水平飛行中。V-280は将来型長距離強襲機(FLRAA)の最右翼候補とみなされるが、この基本設計はFARA向けの小型化は不可能だった。

陸軍も現行機種より高速性能を求めており、FARA偵察ヘリには対空砲火をくぐり抜ける性能を想定している。だが機体の生存を決めるのは速力だけではない。陸軍は小型かつ機動性の高い機体を望んでおり、丘陵地や建物の影に隠れる性能を重視している。事実、回転翼の最大直径を40フィートにしたのは陸軍として譲ることができない要求となっている。このためベルお得意のティルトローターが使えなくなった。

FARAは過酷な条件で昼夜問わず飛行する必要があり、十分な整備基地がない条件も想定する。イラクではこのような基地が長距離ミサイルの標的になったこともある。「一日の終りに機体をほこりだらけの環境で整備する必要があるでしょう」(フレイル)

ベル360は速力ではシコースキーS-97にはかなわないが、ベルはセールスポイントは他にあるとする。「価格には細心の注意を払っています。ベル360は妥当な価格でリスクを最小にしながら、複雑な機構にしなくてもFARA要求性能を実現できます」”
「コーヴェットがほしくて買う予算もあるのにわざわざフェラーリを買いますか?」と在ワシントンDCのベル執行副社長ジェフ・シュレーザーが問う。「本機は高機動性の機体でお手頃な価格で米陸軍の要求内容をすべて満足させます。これ以上の機体では維持が大変でしょう」
だがフレイル、シュレーザーともに筆者が他にも低価格低技術内容の提案があると指摘するとみるみる興奮を示した。

「エキゾチックさを犠牲にしないエレガンスが手に入るのです。ここまで簡単には普通行きませんよ」(フレイル)

ベル360は高性能機軸が多数盛り込み、通常の回転翼機から一線を画すもので一部は民生用ベル525の流用だが、多くは独特の性能だ。
まず目につくのが主翼で揚力を稼いでいることだ。特に高速になればそれだけ多くの揚力を生む。つまり主ローターは高速度域では揚力の50パーセントしか産まず、残りの出力を加速に使えることになる。

ベル360はエンジンが複数装備される。GEが改良したタービンエンジンは低速域で推力を有無が、高速度になると補助出力ユニット(SPU)が起動する。これも可能な限りの出力を手に入れるためだ。

主ローターのブレイドは4枚で、ベル525のものを縮小しているが、整流化ハブにつけ、抗力を最小化し、「完全関節接合」で最高の空力効率の確保のため屈曲したり原型に戻したりする。

降着装置とミサイルラックはともに引き込み式で高速飛行で格納して抵抗力飛行が実現し、低速になり機体から伸長される。

機体後部は意図的に非対称形になっており、右側に排気口とテイルローターがつく。フレイルからはこの設計にした理由の説明はなかったが、通常のヘリコプターではテイルローターから不均衡な力が生まれており、ベル360は非対称形にすることで戦闘機同様に「力学的に不安定」にすることで機動性を確保しているのかもしれない。

機体は全電子フライ・バイ・ワイヤ制御で米戦闘ヘリコプターでは初となる。空力上で不安定な機体の制御には不可欠である。またコリンズエアロスペースがプラグアンドプレイ方式のアーキテクチャを提供しており、電子関連の交換、アプpグレードが容易に実施できる。ただし、ベル含め全社は陸軍が手動するFACE標準に準拠する必要がある。

微妙な操作が必要となるのはローター角度のみならず設計全体に及ぶ。ベルは信頼性を高めた低リスク提案をめざし、実証済み設計を基本に採用しており、シコースキーS-97のような革新性は追求していない。一方でベルは通常型設計から機能性能を引き出そうとし、機内に多くの新機軸も搭載している。ベル525の設計をさらに洗練させて新技術を採用している。ただしベル525は2016年に墜落事故を起こしFAA型式証明がまだ下りていない。

ベルは360を純粋に訴求力のある選択肢と位置づけし、シコースキーがフェラーリなら同社はコーヴェットをめざす。その真価は実機が完成して飛行性能を証明しないとわからない。

米陸軍の将来の攻撃偵察機(FARA)の入札が公開されました。これは、陸軍のAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターの一部 OH-58Dカイオワ・ウォリアー観測・軽攻撃ヘリの後継となる将来の攻撃偵察機(FARA)の有力候補である

ベルはこの新しいデザインを「360 Invictus(負けざる者たち)」とネーミングされました。従来ヘリコプターにはネイティブアメリカンの部族名が付くことが多かったのですが、
メジャーな部族名ではナバホ、チェロキー、チョクトー、チペワ、ラムビー、ブラックフット、プエブロなど、商用飛行機名として使われているものもあるが、まだ軍用ヘリコプター名としては使われていないので、ネタ切れというわけではない。
もしかしたら米国内で猛威を振るうポリコレの影響であろうか?

速度180ノット(333km)
戦闘半径は135海里(250 km)見た目はコストが高騰して中止となったRAH-66 コマンチ ステルス攻撃ヘリにそっくりですが、低コストに抑える為ステルスヘリではないとのことです。

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360 Invictusは、タンデム、ステップコックピット、シングルローター、およびフェネストロンを備えた、伝統的な攻撃ヘリコプター構成の最新バージョンです。

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Sikorsky S-97 Raider

ベルV-280ヴェイラー・ティルトローター機や、Sikorsky S-97 Raider に比べ、伝統的な部類に入る攻撃ヘリコプターではあるが、多くの新しい技術を注ぎ込んだようです。

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最大のものはその推進システムです。片側にオフセットで取り付けられた3,000hpクラスのGeneral Electricタービンを1つ使用します。吸気口も一方にのみあり、排気口はもう一方にあります。 

360 Invictusのエンジンにはダッシュ機能を備えているという。また必要なときに追加の電力を提供する補助動力装置を備えてあり、ダッシュ時に補助動力装置が稼動するらしい。

360 Invictusには、前進飛行中のメインローターの負荷を軽減し、ヘリコプターの高い機動性を支援する揚力用の翼兼用の懸架用の翼のがあります。メインローターは空力シュラウドを備えており、高速飛行にも役立つ「高羽ばたき」機能を備えています。開発中の商業用中型ヘリベル525 Relentlessのローターと多くの共通点がありますが、5つではなく4つのブレードがあります。トルクに対抗するために、Invictusには抵抗を減らして推力を高めるためにわずかに傾けられたフェネストロンがあります。機体の効率を重視しつつ、格納式の着陸装置も設計に含まれています。  


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飛行制御システムは、525 Relentlessの非常に高度なフライバイワイヤシステムからも構築されます。これは、パイロットの作業負荷を大幅に削減する可能性があり、将来の自律的な無人機にもに活用できます。

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センサーに関しては、ベルはヘリコプターが「状況認識とセンサー技術の強化のためにプロビジョニングされている」とだけ言っています。あくまでも想像ですが、センサーはFARA参入者の最も重要な要素の1つであると言えば十分です。CGでは、ヘリコプターの機首に複数の役割を持つFLIRセンサーと、機体の周囲に散在するミサイル進入警告センサー(MAWS)および/または分散開口システム(DAS)の開口部が示されています。生存率は主に、速度、状況認識、高度な電子戦能力と対策、および陸軍の将来の武装偵察ヘリに関しては新しい武器システムによって得ようとしています。 


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固定武装としては伝統的20mmガトリング砲。これは、AH-1コブラヘリコプターファミリーの武器と同様です。実際、陸軍はゼネラルダイナミクスと契約を結び、FARA参加ヘリ全種にコマンチ向けに設計された20mm砲XM915を載せるよう設計しています。武装に関しては、ミサイルを発射し、滑空弾および自由落下通常爆弾を投下すことができる懸架ランチャーに加え武器庫も有しています。

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Bell 360 Invictusの設計は、実績のある既存技術を使用して、低コストでスケジュール通りに軍隊のFARA要件を満たす優れた性能を強調しています。例えばInvictusのローターシステムです。この設計は、200ノットを超える速度でテストおよび実証された商用機ベルの525 Relentlessローターシステムに基づいています。実績のあるデザインと商用および軍事プログラムから利用可能な最高の技術を組み込むことにより、堅実で低コスト化を実現しています。

コストが高騰し導入されなかったコマンチの教訓をいかし、シコルスキーなどの他の競合他社がFARAの基本要件をはるかに超える機能を、導入価格と運用コストの両方の面で追求しています。従来、武装偵察ヘリコプターは、強力な攻撃ヘリコプターよりも信頼性が高く、シンプルな機体です。

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The Invictus design is also reminicent of Bell and Boeing's Light Helicopter Experimental (LHX) concepts from the 1980s.

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Invictusのデザインは、ベル/ボーイングの1980年代のライトヘリコプターエクスペリメンタル(LHX)のコンセプトがベースだと思われます。

大きな問題は、OH-58DKiowa Warriorを引退し、AH-64 Apacheの任務に組み込んだときに、軍は放棄したヘリの機能をどう代用するべきかということです。他の多くの主要な優先事項(将来の垂直上昇機がそれらの巨大なものである)で、軍は本当に何百もの「高額な」偵察ヘリコプターに投資しようとしているのでしょうか?現代の戦場でのこれらのステルス以下のヘリコプターの存続可能性でさえ、当然のことながら一部の人によって疑問視されています。50ノット(92km)程度の速度が速くても本当に生存性が得られる徒は思えない?ベル社の FARAを落札するためののアプローチはより適切です。ベルが対応するものよりも大幅に低い価格で低リスクの設計を提供できる場合、陸軍は、より高い脅威の環境で現実的に採用可能な概念でさえないものに、はるかに多くのお金を費やすことをいとわないでしょうか?

迫り来る防衛予算の問題もあります。過去数年間で大幅に成長した後、防衛予算が撤回された場合、または私が信じている場合、どうなりますか?何が犠牲になりますか?ベルは、プログラムのキャンセルと取得の違いを意味するのに十分な低コストでベースライン機能を提供するために、ユニークで非常に有利な立場にいることがあります。

さて、米国が堅実な伝統的戦闘ヘリを開発したというニュースとは真逆なのが中国である。
ネットでは中国がUFO型の軍用機が開発されてと話題になっている。

ただ、軍用機開発の歴史を有る程度知る者は、「ああ、あれね」と思ったであろう。



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今月開催された第5回中国天津国際ヘリコプター博覧会で円盤状の機体デザインに中央に2名が乗り込むという高速ヘリコプター『超级大白鲨』直訳で『スーパーホホジロザメ』と名付けられた武装ヘリコプターのモックアップが展示されていたことが明らかになりました。


 これは新浪网が報じているもので、詳細は不明なのですが展示されていたパネルによると機体は複合翼高速ヘリコプターとしており、アメリカのAH-64アパッチやCH-53といった輸送ヘリ、またロシアのヘリも参考にそれぞれの利点を詰め込んだ設計になっていると説明されています。また「翼体融合技術を成功裏に達成した機体だ」とのこと。

スペックとしては乗員2名、直径7.6mm、中央のローター直径は4.9m。重量は3.5トン、最大離陸重量は6トン。最高速度650km/h、航続距離2950kmなどとなっています。

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右前
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コックピット部分
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前から左側面
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正面
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1950年代米ソの冷戦期に米軍が開発した珍兵器アブロカーを21世紀の冷戦相手国中国が製作したようだ。

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1950年代後半から1960年代初めに、米国空軍と陸軍は、大型の中央リフトファンとより複雑な空飛ぶ円盤のようなデザインの円形飛行プラットフォームや回転翼機など、新しいタイプの垂直離着陸機の実験を開始しました。これらの中で最も注目すべきものは、Avro Canada VZ-9 Avrocarでした

米軍が開発したAvro Canada VZ-9 Avrocarは、UFOでもなんでもなく、出来損ないのホバークラフトだった。ただ見た目がUFOに似ていた為、米軍がUFOを極秘開発をしているという噂の根源であった。
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写真はスミソニアン博物館のAvro Canada VZ-9 Avrocar

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原理は中国製の『超级大白/スーパーホホジロザメ』の透視図とAvro Canada VZ-9 Avrocarを比べると、『超级大白/スーパーホホジロザメ/The Super Great White Shark』が原理を引き継いでいるようだが、Avro Canada VZ-9 Avrocarは浮くのがやっとで、最高速度もたった時速57キロしか出なかった。

『超级大白/スーパーホホジロザメ』は「武装ヘリコプター」とクレジットされていますが、これはB-2のような一種の「ブレンデッドウィングボディ (Blended Wing Body, BWB) 」であると説明されている。

多少翼っぽくも見えなくは無いが、航空力学のセオリーから程遠く航空力学素人の私から見てもとてもブレンデッドウィングボディには見えない。


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Super Great White Shark

J-20ステルス戦闘機のエンジンも自国で開発したものが使い物にならない国が、こんな珍奇な物体で21世紀の技術でコンピューター制御をしたとしても、中国の言う最高速度650km/h、航続距離2950kmなんて絶対にありえない。

いかに研究開発費を制限無く使えるとしても、無駄使いにも程がある。
もはやこれは、虚仮脅しで米中冷戦に勝利しようと言う中国側の心理戦であって、絶対に使い物になりません。こんなことをするところまで中国は追い詰められているのかもしれません。

 https://www.thedrive.com/the-war-zone/30281/china-reveals-flying-saucer-shaped-super-great-white-shark-armed-helicopter-concept

中国が、100%食料や資源を自給自足しているなら、財政を気にせず無限に軍事支出を増やしても問題は無いが、貿易を続ける限り、外貨準備の縛りがある。3兆ドルあると言われる外貨準備高も、およそ1兆7000億ドルの米国国債分は外貨準備があるようだが、後の残りは一帯一路やAIIBで新興国ばら撒いた対外不良債権ではないかとも言われています。こういった馬鹿げた兵器開発をいつまで続けられるのであろうか・・・・

【Raider X】

【航空宇宙ビジネス短信 T2】2019.10.16水曜日

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シコースキーの "Raider X" は米陸軍向けの
将来型高速武装偵察ヘリコプター構想への同社の提案だ

米陸軍がめざす残存性を備えた高速「ナイフファイター」ヘリコプターは激甚戦場への投入を目論む中、 レイダーXはこの任務に最適のよう
BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 14, 2019

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TYLER ROGOWAYView Tyler Rogoway's Articles

先週はベルから360インヴィクタス高速武装偵察ヘリコプターが発表された。米陸軍のめざす次世代偵察機材(FARA)への同社の提案で、今回はシコースキーが「レイダーX」を公表した。同機はS-97レイダー実証機が原型で、同じく同社のX2複合ヘリコプター技術も活用し高速飛行と操縦性を実現している。同社には大型のSB>1デファイアントもあり、こちらは共用多用途(JMR)競作への提案で、さらに将来型垂直離着陸中型機への採用をめざし、これも他に例のない構造となっている。シコースキーX2技術は自社開発で今まで10年以上にわたり開発されてきた。 S-97についてWar Zoneが同社X2チームと独占インタビューしているので参照されたい。

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SIKORSKY
The S-97 Raider demonstrator serves as a basis for the Raider X design, although with some significant differences. 
シコースキー S-97 レイダー実証機がレイダーXの原型だが、一部が大きく変化している。

FARAはOH-58カイオワウォリアーとAH-64アパッチの後継機も同時にねらう。FARAでは、ベル、シコースキー以外にも受注を狙う企業がある。シコースキーも現在はロッキード・マーティンの子会社であり、ボーイング、AVX=L3連合の他ケイレム、ノースロップ・グラマン、レイセオンといった競争相手も存在する。

ただボーイング含む残りの企業からFARA事業への提案内容は発表されていない。
シコースキーによればレイダーXは「迅速開発、迅速配備で様相を一変させる技術と性能を実現し、最も過酷な状況においても真価を発揮する機体。 レイダーXは将来の戦場で勝利をおさめるため必要な航続距離、防御能力、威力を備えた機体」とする。同社はさらに続ける。


-抜群の性能:X2.のリジッドローターにより性能が引き上げられる。操縦入力に敏感に対応し、低速ホバリング性能が向上し、軸を外したホバリングが可能であり、同じ加速率と減速を実現する。 Xは競合相手がないほどの性能を発揮する.

-アジャイルなデジタル設計。高性能デジタル技術による設計、製造はすでにロッキード・マーティン、シコースキーの他機種で実用に供されている。例としてCH-53K,CH-148、F-35の各機があり、これにより陸軍は調達経費を引き下げるにとどまらず迅速かつ安価な改修で今後も変化していく脅威に対応可能となる。

-適応性: 新しいオープンシステム・アーキテクチャア(MOSA)によるエイビオニクス、やミッションシステムが「プラグアンドプレイ」により高い演算能力、センサー、残存性を実現し、高い威力と生存性につながる

-維持保守について:機材の運用コストを引き下げるため新技術を利用し、通常の整備点検方式を自機診断および実際の状況に応じた保守管理に変える。これにより機材の稼働率が上がり、前線での運用を容易にし、整備実施も柔軟に行える。

-今後の発展性、柔軟性: 将来の変わり続ける脅威環境に着目し、X2複合同軸ヘリコプター技術から他に比類のない今後の性能向上の余地が生まれ、飛行速度、航続距離、ペイロードの発展が期待される。 この将来への発展性から作戦運用上の柔軟性が生まれ、多様な用途に投入する柔軟性につながる。各種仕様と運用形態が実現するはずだ。

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Sikorsky Raider demonstrator during flight testing.
シコースキー シコースキー・レイダーの実証飛行.

レイダーに盛り込まれているX2技術のその他について同社は以下のように述べている。

X2ファミリー機材の最新版レイダーXをシコースキーが公表した。 これまでX2が達成した性能は以下の通り。

·         250ノット超の最高速度
·         最高高度9千フィート超
·         低速高速での機体制御能力を生かして60度超の機体傾斜が可能
·         ADS-33B (Aeronautical Design Standard) レベル1の機体制御能力を複数
   パイロットで実現
·         飛行制御を最適化し、振動も抑える

シコースキーのテストパイロット、ビル・フェルがレイダーのテスト飛行大部分を操縦しており、以下X2技術について述べている。 

「X2のパワーでヘリコプターの常識が変わる。 高速ヘリコプターの性能と航空機の巡航飛行性能を両立している。 S-97レイダーからFARA試作機となるレイダーXのリスクが低減できた。

レイダーXのコンセプトはS-97に似通っているが一部に改良が見られる。 低視認性への配慮が機体設計の基本にあったようだ。構想図を見るとレーダー反射面がない機体になっており、センサー、パイロン、アンテナ、兵装がきれいに格納されている。 その例として20mm機関砲も使用していないときは機体内に格納されているようだ。ローダーヘッドシュラウドも角度がついており、V字型空気取り入れ口の形状からガスタービンエンジンは機体内部奥深くに装備されているようだ。

排気もテイルブーム内部を経由し、冷却のしかけは同社から以前発表され不採用になったRAH-66コマンチと同様なようだ。テイル下部の形状がこの機能のために設計されているのだろう。コマンチでは高温排気は低温外気と混ぜてからここから排出されていた。



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 SIKORSKY シコースキー
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 SIKORSKY シコースキー
さらに胴体部のエッジにもコマンチ同様の加工がされているようだ。

こうした特徴から同機はヘリコプターとしての効率を追求しつつ可能な限りの高速度を実現する設計のようで、同時に低視認性設計の特徴も備え持つようだ。編集部はシコースキーにこうした特徴について確認を求めた。

また忘れてはならないのは、同機のレーダー視認性を低くする工夫として機体のレーダー断面積や赤外線特徴を低くするべく、コマンチほどではないが高い残存性を実現していることだ 同機が高速性能とともに状況認識能力を引き上げるべくセンサーを活用し、機体防御対策も高度化しておりこれからの戦場でも高い残存性につながるだろう。

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SIKORSKY/LOCKHEED MARTIN
A similar design was teased for the FVL Light requirement that came before the FARA tender was formally announced. 
同様な設計上の特徴がFVL軽量版でも見られる。これはFARAより先に提案が募集されていた

レイダーXは同軸複合ヘリ仕様でFARA競合機の中では運動性能が一番上のはずだが、シコースキーからはX2技術を低リスクで実現できることを強調しているが、これは非常に主観的な意見だ。

同社がこの技術に賭け、10年余を費やしたのは事実である。だが量産機には応用されておらず、ベルよりリスクが高いのは事実だ。ベルはきわめて通常型のヘリコプターを提案している。複雑な機構を考えると、レイダーXの機体単価は相当高額になるのではないか。ただし、今の時点でこの点は明確にできない。すると、低コスト、低性能版のほうがFARAミッションに適していると言えないか。

高性能統合防空装備システム(IADS)と短距離防空装備の進歩に対し通常型ヘリコプターが高度防空体制を突破し残存できるのかとの疑問が生まれている。もうひとつが飛行距離の問題だ。接近阻止領域拒否の時代にヘリコプター運用基地が目標から150マイル以内にあるのでは現実的と言えるのか。

こうした問題については今後もご紹介していくが、飛行距離、速度、とくに残存性がFARAに数十億ドルを投じるにあたり重要な検討項目になるのではないか。または回転翼機による戦闘が過去のものとなっているのに無駄な検討項目になっているのかもしれない。

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 SIKORSKY シコースキー
The S-97's unique lines seen from above in this striking image.
S-97の独特な機体構成を上から見るとびっくりする。

レイダーXは速度、飛行距離、操縦性でも優れているだろうが、残存性でもステルス特徴を生かし最新の防御策、センサー、兵装を実現する。これが実現しないと、開発リスクを抱えた複雑な機構のヘリコプターとして他社より機体価格が上昇しかねない。 だが再度、安価な競合作があるとしても、残存性が劣り将来のハイエンド戦に投入できない機体になればそれだけの高額を投じる価値があるのか。

その答えはFARAの考過程にあわせでてくるはずだが、現時点ではシコースキーの提案内容が判明したにすぎず、その内容は強い印象を与えてくれる。



360インビクタスとレイダーX、ともに21世紀初頭から中盤に向けて米軍の主力ヘリコプターを目指す二つの提案であるが、コスト重視の360インビクタス、性能重視のレイダーXというイメージであるが、甲乙つけがたいが、コマンチが採用されなかった理由はコスト高騰だった・・・