【Yahoonews】3/5(木) 12:35 高橋浩祐  | 国際ジャーナリスト

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3月5日に引き渡し式を終えた海上自衛隊の潜水艦「おうりゅう」(三菱重工業提供)

兵庫県神戸市の三菱重工業神戸工場で3月5日、海上自衛隊の新潜水艦「おうりゅう」の引き渡し式が開かれた。海自の主力潜水艦「そうりゅう型」の11番艦で、リチウムイオン蓄電池搭載の通常動力型潜水艦としては世界初めてとなる。近く呉基地第1潜水隊群第3潜水隊(広島県呉市)に配備され、警戒監視活動などに当たる。

海自によると、おうりゅうは全長84メートル、全幅9.1メートル、基準排水量2950トンで、水中速力は約20ノット。乗員は約65人。建造費は約660億円。

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3月5日に引き渡し式を終えた海上自衛隊の潜水艦「おうりゅう」(三菱重工業提供)

そうりゅう型は世界最大のディーゼル潜水艦で、低振動で静粛性に優れ、世界有数の高性能艦として知られている。そして、長時間潜航可能な非大気依存推進(AIP)機関を海自として初めて搭載する。外気を必要としないAIPにはいくつかの方式があるが、そうりゅう型10番艦の「しょうりゅう」までは水中の航続時間を延ばすためのスターリングエンジンを搭載している。スターリング機関による発電方式は長時間の潜航能力に優れている。

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3月5日に引き渡し式を終えた海上自衛隊の潜水艦「おうりゅう」(海上自衛隊提供)

おうりゅう、鉛電池に替えてリチウム電池搭載

そうりゅう型11番艦のおうりゅうからは、前述のスターリングエンジンを廃止した。鉛電池に替えて、GSユアサが開発したリチウムイオン蓄電池を搭載する。

リチウムイオン電池技術を採用し、ディーゼルエンジンを使う通常動力型潜水艦は、実は日本が世界で初めてだ。この点で、おうりゅうは日本の最新技術の結晶と言える。リチウムイオン電池の蓄電量は鉛酸電池の2倍以上といわれ、水中航行能力が高くなり、潜航時間も大幅に延ばすことができる。

おうりゅうに続く、そうりゅう型の最終艦の12番艦となるのが「とうりゅう」だ。2019年11月6日にその命名・進水式が川崎重工業神戸造船所で行われた。


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3月5日に引き渡し式を終えた海上自衛隊の潜水艦「おうりゅう」(三菱重工業提供)

海上自衛隊は、そうりゅう型の後継艦として、今後は新型のソナーシステムを装備して探知能力などが向上した新型潜水艦(3000トン型)を配備する。海上幕僚監部広報室によると、三菱重工業神戸造船所でその1番艦、川崎重工業神戸造船所でその2番艦がそれぞれすでに建造中だ。2019年度予算ではその3番艦建造費として698億円、2020年度予算ではその4番艦建造費として702億円がそれぞれ計上されている。


日本の潜水艦は三菱重工業神戸造船所と川崎重工業神戸造船所が隔年で交互に建造している。

海自は、おうりゅうの就役で護衛艦48隻、潜水艦20隻の体制を整えたことになる。そして、2018年12月に閣議決定された新たな防衛大綱に基づき、これを護衛艦54隻、潜水艦22隻に増勢することにしている。海自7隻目のイージス艦となる護衛艦「まや」は今月中旬に就役する予定だ。

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2018年10月に進水した新潜水艦「おうりゅう」(海上自衛隊提供)

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おうりゅうは
海自HPで漢字で「凰龍」と書くとあるが、海自担当者は間違えている。凰龍を検索すると、中華料理店やゲームキャラしか出てこないが、應龍/応龍は中国の古書「山海経」に載っているので、「おうりゅう」とは「應龍」/「応龍」の方が正しい。

応竜(おうりゅう)は、中国の古書『山海経』の中にあらわれる怪物である。竜の一種とされ、五方神の一種とされる。四霊の一種とも言われている。

中国神話では、帝王である黄帝に直属していた竜。4本足で蝙蝠ないし鷹のような翼があり、足には5本の指がある。天地を行き来することができる。また、水を蓄えて雨を降らせる能力があり、『山海経』大荒北経に記されている黄帝による蚩尤との交戦の描写には具体的な龍としては応竜が黄帝に加勢しており、蚩尤や夸父を殺したとされ、神々の住む天へ登ることができなくなり、以降は中国南方の地に棲んだという。このため、応竜のいる南方の地には雨が多いのに、それ以外の場所は旱魃に悩むようになったという。

帝王である大禹に属していた竜、輔佐大禹治水、捕まえた無支祁(孫悟空の原型です)。

『述異記』には、「泥水で育った蝮(まむし)は五百年にして(雨竜)となり、蛟は千年にして竜(成竜)となり、竜は五百年にして角竜(かくりゅう)となり、角竜は千年にして応竜になり、年老いた応竜は黄竜と呼ばれる」とある、黄竜=応竜、中国古書『荊州占』では、「黄竜は太一の妻」とある。『淮南子』では、「黄竜は神の精、応竜は天之四霊の長」と記されている。天之四霊とは蒼竜、朱雀、玄武、白虎のこと。

応竜生鳳凰、『大蔵経』には、「応竜は羽嘉が生まんだ、鳳凰は応竜が生まんだ」とある。『淮南子』には、「応竜生建馬、建馬生麒麟」とある。応竜は建馬を生み、建馬は麒麟を生み、応竜は鳳凰を生むといわれている。


おうりゅうは、
2005年から建造している「そうりゅう型」の11番艦で、そうりゅう後期型の一番艦であり、次級となる29SS3000トン型プロトタイプとも呼べるプレ3000トン型である。

全長84メートル、基準排水量2950トン。水中の速力は約20ノットという。
特筆すべきはこの感が世界で初めてリチウムイオン電池が搭載された潜水艦である。

海上自衛隊の潜水艦はディーゼルエンジンを回して発電した電気を蓄電池にためておき、作戦や戦闘の際には電池からの電力だけで艦を動かす通常型潜水艦だ。基本的には潜水状態で移動する。水中移動して、ディーゼルで充電してを繰り返す。スノーケル航行による移動はあまりやらない様子である。当然、移動力は制限される。

そうりゅう前期型は、海自で初めて非大気依存推進(AIP)を搭載した艦となった。おうりゅうは、前期型と大きく異なるのは、AIPシステムの搭載を廃し、これまでの鉛蓄電池に代えてGSユアサ社が開発した大容量リチウム電池だけを搭載した点である。リチウムイオン電池は従来の鉛電池より蓄電容量が大幅に増大し、AIPシステムを下ろした分、リチウム電池をより多く積み、船体こそ同じ「そうりゅう」型であっても、実質は別型と言って差し支えない。

鉛電池型では最大でも4kt(7km/h)、100時間、400nm(740km)程度だ。それで電池切れだ。そして充電を完了するまで10時間位はかかる。実際は放電量1/3~1/4で小充電を繰り返す。

前期型そうりゅう型に比べ電力容量は従来の約8倍。速力、航続力などで限界まで電池を使い切る運用が容易になります。水中最大戦速は20ノット(時速37km/h)ですが、8ノット(時速14km/h)で最大200時間2800km潜航できる。5ノット(時速9km/h)だと29日(696時間)約6300km航行することができる。

image088従来鉛電池では呉―バシー海峡間1800kmを潜航して進むと2週間程度を要したが、それがリチウムでは8ノットで約5日となる。さらには呉-南沙諸島3200kmは10日弱で展開可能となる。

それでいて充電速度は従来より速く、充電耐用年数も長いのです。
リチウムイオン電池を搭載することで、行動半径や水中での活動時間が大幅に向上し、そのうえ、エンジン音がなく、敵に見つかりにくいようにすることで優勢に戦うことが可能である。

海峡などチョークポイントで敵を待ち伏せるだけにとどまらず、積極的に南シナ海で敵船を探し求める巡洋艦戦略通商破壊 ゲール・デ・クルース:guerre de course レースウォーが可能となる。リチウムイオン電池化による長距離展開能力、戦域内移動力、接敵能力の強化はそれそれらが可能となり、従来の待ち伏せ主体から策敵攻撃へと戦略が大きく変化することを意味します。

加えて、原子力潜水艦でも、高価なチタンで建造したロシアのアルファ級や米国のシーウルフ級潜水艦と同等以上の潜水能力を持っている。

そうりゅう型の潜航深度は極秘扱いになっており、500m~1000m以上まで諸説あります。通常型潜水艦は200m程度とされ、原子力潜水艦も中国の船は200m~300m程度が限界とされています。

89式魚雷の最大深度は900mであり、そうりゅうの鋼材は「NS110鋼材」(耐力110kgf/mm)が使用されているが、計算上水深1000m以上潜水が可能 とされているがゆえ、そうりゅう潜航最大深度1000m説の根拠とされている。

そうりゅう型潜水艦の次級である29SS・3000トン型最新鋭潜水艦では更にそうりゅう型を越える深度も可能となると予想されています。

通常動力型潜水艦で原子力潜水艦をもしのぐ潜航性能、静粛性は実質トップであり、ステルス潜水艦といえる。

現代海戦においては潜水艦が最強という話 2016/12/4(日) 午後 9:47 

「潜水艦は乗員数で400~600倍の敵海軍を拘束する」ともいわれる。フォークランド紛争でも実証されたように、現代海戦において潜水艦1隻がその海域に存在するだけで、その海域に3万人の人員が投入される。潜水艦1隻1海面で中国海軍を3万人づつを拘束する計算となる。リチウムイオン電池搭載潜水艦を日本近海~バシー海峡~マラッカ海峡西方までの広範囲に行動させることにより中国海軍に広範囲での潜水艦対応を強要することになるが、現在中国海軍はその能力を持っていないが、おそらく将来も持つことは無いであろう。3隻リチウムイオン電池潜水艦を南シナ海~バシー海峡間を遊撃するだけで、中国海軍は9万人を投入しなくてはならない計算になる。

おうりゅうが積むリチウムイオン電池の発明に関しては2019年ノーベル化学賞の吉野聡氏の寄与が大きい。リチウムイオン電池は通常電池の約3倍あるうえに、充電時間は急速充電が可能である

しかしながらリチウムイオン電池は発火しやすいという致命的な欠点があります。2013年1月には日本航空のボーイング787型機のバッテリーが発火するという事故が起きた。リチウムイオン電池を使用しているスマートフォンやノートパソコンの発火事故が少なくない。サムソンのスマホの発火事故が相次ぎ、サムソンのスマホが機内持ち込み禁止となったニュースも記憶に新しい。

にもかかわらす、韓国は日本への対抗心から、ケッチャナヨで、安全性研究を十分に行わず、韓国もサムスンのリチウムイオン電池を採用した潜水艦を建造するという。
過去のお笑い韓国製兵器同様、無理やり安全性試験に合格したであろうことは、マニアや軍関係者では容易に想像がつく。海底で活動する潜水艦上での火災は命に関わる大変な事故になりますから、おうりゅうに対する対抗心からむりやり建造するリチウムイオン電池搭載潜水艦が発火事故を起こし沈没するのは、建造前から決まったているようなものだ。

潜水艦用リチウムイオン電池については、は致命的な欠点が存在する。それがリチウムイオン電池は過充電状態だと発火する恐れがある。日本でもかなり慎重で長い期間を要したが、韓国ではわずか30ヶ月の研究でで採用が決まった。発火や爆発などのリスクについての安全性はずっと以前から確認されていた。韓国製中国製のリチウムイオン電池は民生用でも日本製とが違って信頼性に欠ける。万が一安全問題が起きてしまえばどんなに高性能な潜水艦だったとしても無意味である。

艦艇は造船業の基盤が厚い日本が独自技術を持つ分野だ。次期戦闘機では国産化に暗雲が垂れこめる。国内の技術力が生き、性能への評価も高い潜水艦は残された「牙城」といえる。商船で中国や韓国勢に押されている総合重工の造船部門にとって、防衛需要は重要な収益源になっている。

潜水艦は川崎重工と三菱重工が毎年交互に建造しているが、おうりゅうは三菱重工が建造するそうりゅう型の最後の艦。今回の建造で培ったリチウムイオン電池などの最新技術は次の3000トン型潜水艦にも使われる見通しだ。国産防衛装備の技術力を維持し、国内防衛産業の基盤を保てるかの正念場を迎えている。



海自次々世代潜水艦/将来潜水艦(ポスト3000トン型)2019年07月28日




Submarines of the World 世界の潜水艦 その4 日本 2017/7/8(土) 午後 4:27 

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