【東京防衛航空宇宙時評】2020年5月23日 

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水陸機動団で評価試験が行なわれている「汎用軽機動車」(写真:陸上幕僚監部提供)

陸上自衛隊はV-22オスプレイに搭載する軽車輌として、川崎重工業製のATV(All Terrain Vehicle:全地形対応車輌)をベースとする「汎用軽機動車」の評価試験を行なっている事が、本サイトの取材によりわかった。

評価試験に使用されているのは川崎重工業の民間向けATV「MULE PRO-FXT(EPS)」の、道路運送車両法に適合した国内向けモデルで、航空機搭載用の固縛フックが追加されている。

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側方から見た汎用軽機動車」(写真:陸上幕僚監部提供)

ベース車輌のMULE PRO-FXT(EPS)は重量990kg、全長3,450mm、全幅1,617mm、全高1,970mmの4輪駆動車。エンジンは出力35kw、水冷4ストローク直列3気筒のガソリンエンジンを使用している。燃料タンク容量は30リットル、最大速度は時速72km、最小旋回半径4.8m、乗員4名、最大ペイロードは354kg(乗員4名時)、最大牽引質量907kg。

同シリーズの「MULE PRO-FX(EPS)」は、大手消防車メーカー株式会社モリタから高い機動性や悪路における走破性などが評価され、同社の新型小型消防車「Red Ladybug」(※)のベース車輌としても採用されている。


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[DESI JAPAN」で展示された「MULE PRO-FXT(EPS)」

陸上自衛隊は6輌を7,743万6千円(契約単価1,220万6,000円)で調達。陸上自衛隊は水陸機動団への配備を念頭に置き、現在同団で評価試験を行なっている。

世界各国の特殊部隊やレンジャー部隊では軍用バギーを多用しています。

米国は、米陸軍ではハマーやハンビーが登場するまで通称ジープと呼ばれる小型汎用車輌のM151を1990年代まで使用していた。海兵隊ではハンヴィーが大柄でC-130輸送機での輸送と早期展開が困難な事から、現在も使用されている。

しかしながら、さすがに、M151も寄る年波には勝てず、特殊部隊や空てい部隊の小型汎用車輌としては、各種バギーに,とって替わられている。


これは、米国に限らず、ロシアやイスラエルといった陸軍大国でも同じ流れで、かつ、バギーは装甲化し、高性能化している。





日本においてもようやく軍用バギーが、ある意味特殊部隊でもある水陸機動団で導入するという話がでてきた。

1/4トン汎用車輌の日本版M151である73式小型トラックは今でも現役として、無反動砲や、ATM搭載し、CH-47にも搭載するなどして使用されている。※CH-46には高機動車も積めます。

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画像元


ところが、ここにきて、高額なお買い物のMV-22オスプレイには、高機動車はおろか73式小型トラックがギリギリ載らない問題が発生してしまった。


73式小型トラックは全幅1,765mm 全高1,970mmですが、オスプレイのキャビンは長さこそ7m以上ありますが、最大幅は約1.72mしかなく、左右両方に10cmずつの隙間をとると貨物に使える幅は1.5mしかなくなります。高さも1.68mが限界です。


「オスプレイ」は陸上自衛隊も導入しましたが、戦車はもちろんのこと、既存の陸上自衛隊車両はバイクやリヤカーくらいしか載りません。同機の機内は非常に狭いため、アメリカ海兵隊は専用のコンパクト4WD車を開発してしまいました。

クルマは載るの? 載らないの?

 日本も導入したティルトローター輸送機、MV-22「オスプレイ」。主翼の両端に装備したエンジンを動かすことで、ヘリコプターのように垂直離着陸が可能ながら、飛行機と同じスピードで飛ぶことができ、さらに航続距離もヘリコプターよりも長いという最新鋭機です。


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2019年10月現在、アメリカ本土で訓練中の陸上自衛隊の「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。

 しかし、MV-22「オスプレイ」の機内容積は2019年現在、陸上自衛隊や航空自衛隊が運用するCH-47J/JA「チヌーク」輸送ヘリよりも小さく、以前運用していたV-107輸送ヘリよりもさらに狭いため、「チヌーク」であれば運ぶことが可能な人員輸送用の大型SUV高機動車だけでなく、それよりも小さな1/2tトラック、通称「パジェロ」すら乗りません。
 
 オスプレイのキャビンは長さこそ7m以上ありますが、最大幅は約1.72mしかなく、左右両方に10cmずつの隙間をとると貨物に使える幅は1.5mしかなくなります。高さも1.68mが限界です。
 
 この「幅1.5m、高さ1.68m」というのは、日本の軽自動車規格である「全幅1.48m以下、全高2.0m以下」と比べても、高さに関しては現行の軽ハイトワゴンよりも低くしなければ入らないのです。ちなみに軽トラックならば、運転席の屋根さえなくしてしまえば「オスプレイ」に積載可能です。

軽トラサイズでより低いITV「グロウラー」

 一方、陸上自衛隊に先行して「オスプレイ」を運用しているアメリカ海兵隊は、高機動車とほぼ同じサイズの「ハンヴィー」を装備していますが、やはり「オスプレイ」には「ハンヴィー」が乗らないため、その狭さに適合する専用設計のITV「グロウラー」という小型四輪駆動車を開発しました。


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幌を付けた状態の「グロウラー」。こうすると高さは1.8m以上になる(画像:アメリカ海兵隊)。

 開発は「オスプレイ」の運用に目途がついた1999(平成11)年にスタート、2009(平成21)年にM1161としてアメリカ海兵隊に採用されました。同車は全長4.14m、全幅1.5m、全高1.84mという日本の軽自動車サイズですが、派生型として120mm迫撃砲を牽引したまま「オスプレイ」の機内に収まるよう、全長を4m以下としたさらに小さいM1163もあります。
 
 全高は一見するとオーバーしているように思えますが、フレームを外してフロントウインドウを寝かせてしまえば1.19mまで低くできます。
 
 また「グロウラー」は、積載量200ポンド(約910kg)を達成するため、シャシーは強化されており、前述した軽自動車サイズながら車両重量は2.058tもあります。そしてサイズの割には重たい車体へ機動性を与えるために、エンジンは132馬力を発揮する排気量2800ccの水冷直列4気筒ターボディーゼルを搭載しています。
 
 ちなみに日本の軽自動車規格では、積載量は350kg以下と規定されているため、「グロウラー」は日本の軽自動車と比べて、2.6倍もの積載量を持っていることになります。
 
 「グロウラー」のエンジンは、トヨタの「ランドクルーザープラド」が搭載する1GD-FTV型水冷直列4気筒ターボ・ディーゼルが排気量2754cc、出力177馬力であり、たとえるならば軽自動車サイズの車体に大型SUVのエンジンを組み合わせたハイパワー小型4WD車といえるでしょう。

自衛隊はカワサキ製の4WDバギーを採用

 アメリカ海兵隊は前述した車体短縮型のM1163に重量約600kgの120mm迫撃砲を牽引させています。M1163ならば120mm迫撃砲を連接して7m以内となるため、「オスプレイ」の機内積載で運ぶことができます。


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アフガニスタンで活動中の「グロウラー」。兵士5人が乗車可能(画像:アメリカ海兵隊)。

 日本に目を転じると、陸上自衛隊は川崎重工のオフロード4WDバギー「TERYX」をベースとした小型4輪駆動車を、「汎用軽機動車」という名称で調達する予定です。なお予算は6両で約7740万円のため、1両あたりの単価は約1290万円となります。
 
 汎用軽機動車の納入先は、防衛装備庁調達事業部公示によれば陸上自衛隊相浦駐屯地となっているため、同駐屯地に所在する水陸機動団に配備すると見られます。

「水陸機動団」は、日本版海兵隊と目される精鋭部隊です。運用の関係か航空機はいっさい保有しませんが、ほかの部隊の「オスプレイ」と連携することを数多く想定しています。

【了】
個人的には日本には4WDの軽トラがあるので、「オスプレイに軽トラ載せれば良いじゃん」と思っていましたが、さすがに陸自で軽トラは基地内の運搬用や音楽隊の楽器運搬用に若干利用されてはいるが、どうも抵抗があるようだ。(笑)

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画像元

ちなみに軽トラの幅は凡そ1.4m高さは1.7~1.8mで高さがOUTですが、街の車屋さんでも、簡単に7-8cm自動で下げる改造ができるのだから載せようとすれば載せることができます。

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http://www.gt-produce.com/president/2014/04/post-295.html

とはいえ・・・汎用軽機動車という名の軍用バギーが採用される見込みになった。

今後対馬警備隊や、第一空挺団でも採用すべき車輌である。

特に山間部の山道は高機動車では狭すぎて、汎用軽機動車の方が小回りがきいて適しているのではないかと思う。まあ、今後緊急事態法が改正されれば、日本国内では軽トラは現地調達がいくらでも可能だろう(笑)。

導入する川重のユーティリティービークルであるMULE(ミュール:Multi-Use Light Equipment)のプレリリースを参考に載せます。

フラッグシップモデルである「MULE PRO」シリーズの路上不可の「MULE PRO-MX」です。




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MULE PRO-MX<EPS LE>

川崎重工は、タフで機能性に優れた多用途四輪車MULEシリーズの新機種、「MULE PRO-MX」を、2019年モデルとしてアメリカやカナダなどの北米を中心とした地域にて7月中旬より新発売します。

「MULE PRO-MX」は、仕事にも遊びにも“ちょうどいいサイズ”をコンセプトに開発されました。フラッグシップモデル「MULE PRO-FX/FXT」「MULE PRO-DX/DXT」とコンパクトモデル「MULE SX」の中間となるサイズで、必要十分な積載性と優れた取り回し性が大きな特長です。

「MULE PRO-MX」には、用途に応じた4つのバリエーションモデル(装備・車体色)を用意しています。

  STD シンプルかつ基本的な装備
  EPS 電子制御パワーステアリングとLED補助ヘッドランプを装備
  EPS LE 屋外での使用に便利なプラスチックルーフや質感高いアルミホイールを装着
  EPS CAMO ハンティングに最適なカモフラージュ柄
 
1.主な特長
〇エンジン・車体

専用設計の水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブエンジン(695cm3)
専用に設計されたエンジンは、優れた牽引力と運搬能力に加え、フューエルインジェクションシステムの採用により、信頼性や始動性に優れています。また、CVTトランスミッションに遠心式クラッチを組み合わせたことで、単気筒エンジン特有のパワフルな低速トルクをスムーズに引き出します。また、坂道を下る際に最適なエンジンブレーキが効くようCVTトランスミッションを設定しています。
機動性と取り回しに優れたミドルサイズのシャーシ
フラッグシップモデル同様の思想のもと設計された専用フレームは、頑丈なフレーム構造に一定のしなり特性を与えたことで、高い耐久性と快適な乗り心地を両立しています。また、大きすぎず、小さすぎない車体サイズ(全長2,795mm、全幅1,525mm、軸間距離2,005mm)が、優れた機動性と取り回し性能を発揮します。最小回転半径はわずか4.2mで、カーブや木々が入り組んだ山道での走行も可能です。
積載性、利便性に優れたカーゴベッド
カーゴベッドの最大積載量は317kg、最大牽引力は680kg。ダンプ機能も備えています。
また、タイダウン用アンカーやパーテーション板設置用のくぼみを設けるなど、積荷を安定して運べる工夫が施されています。カーゴベッドの壁上部には、フックポイントとして使えるほかカーゴボックスなどのアクセサリーの装着も可能なスチールパイプを装備しています。

〇デザイン・装備

屈強な造り込みとタフな性能を具現化したデザイン
外観には、MULEシリーズ共通のタフな性能を具現化したデザインを取り入れています。また、床やカーゴベッド底板に縞鋼板を用いるほか、水や泥が入り込みにくい吸排気レイアウトなど、見た目だけでなく、機能面でも屈強な作りとしています。
電子制御パワーステアリング
STDを除く3モデルには、車速に応じてアシスト量が可変する電子制御パワーステアリングを装備しています。ステアリング操作を低速域では軽く、速度が上がるに連れて重くするなど、車速に合わせて最適なアシストを行います。
チルトステアリング機能
運転者の体格や好みによってステアリングの角度(高さ)が変更できます。
充実した収納スペース
ボンネット下に容量9.1リットル、シート下に容量5.3リットルの収納スペースを確保し、仕事や遊びに使う大きめの道具が収納できます。ダッシュボードには、鍵付きのグローブボックスのほか、小物類を入れるポケットやトレーを合計4ヶ所用意。ドリンクホルダーを運転席と助手席それぞれに装備するなど、便利で快適な装備も多く備えています。
 
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商品名 MULE PRO-MX
発売予定 2018年7月中旬
メーカー希望小売価格※ USD11,999(EPS)
導入国 欧州、アメリカ、カナダ
カラー <STD>スーパーブラック
<EPS>ティンバーライングリーン、ブライトホワイト
<EPS LE>ファイヤークラッカーレッド
<EPS CAMO>カモフラージュトゥルーティンバーHTCグリーン
 

メーカー希望小売価格には、諸経費等を含みません。価格は参考価格です。
「MULE PRO-MX」は公道および一般交通の用に供する場所では一切走行できません。また、ナンバープレートを取得することもできません。
 

2.主要諸元
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以下なかなかカッコいいアウトドアビーグル2017 KAWASAKI MULE PRO-FXT EPS CAMOの画像がありましたので、貼っておきます。
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【追記】
ご投稿を受けた屋根なし軽トラ通称「ハゲ」について調べました。


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画像元 BT50

なるほど、果樹園、りんご、なし、ぶどう園などの果樹の木の下を走り回るには、屋根なし軽トラは最高ですね。

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画像元 弘前経済新聞
 でも、自衛隊の隊員のモチベーションを考えると・・・サムライの鎧兜といっしょで、戦場(死場)に向かうのにカッコよく行きたいじゃない。せめて川重のバギー車に乗せてあげたい(笑)