【産経ニュース】2020.5.30 11:51 

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対中国の制裁措置を発表するトランプ米大統領=29日(ロイター)

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は29日、ホワイトハウスで記者会見し、中国が香港に国家安全法の導入を決めたことに関し「香港の高度な自治は保証されなくなった」と述べ、米国が香港に対し認めている優遇措置を見直す手続きに着手すると表明した。トランプ氏はまた、世界保健機関(WHO)について、新型コロナウイルスをめぐって中国寄りの対応をとったとして「関係を断絶する」と述べ、脱退を表明した。

 新型コロナ危機に乗じて香港などに対する強権姿勢や南シナ海などで覇権的行動を打ち出す中国に、米国が正面から対決していく立場を鮮明にしたもので、米中の対立が一層激化していくのは確実だ。
 トランプ氏は、中国の全国人民代表大会(全人代)が香港に国家安全法を導入する「決定」を採択したことに関し、「中国は香港に約束していた『一国二制度』を『一国一制度』に変えた」と非難した。優遇措置の見直しの対象は、関税や査証(ビザ)発給など「ごく一部を除き全面的なものになる」としている。
 トランプ氏はまた、「香港の自由の圧殺」に関与した中国や香港の当局者に制裁を科すと表明した。
 米国務省の香港に対する渡航勧告も中国と同等とし、滞在中に「監視を受ける危険が増大する」との文言を明記するとした。
 新型コロナへの中国の対応に関しても、中国が忌避する「武漢ウイルス」の用語をあえて使用し、「中国がウイルスを隠蔽(いんぺい)したせいで感染が世界に拡大し、米国でも10万人以上が死亡した」と訴えた。
 WHOに関しては「中国に牛耳られている」「米国の組織改革の要求に応えていない」などと批判。年間4億5千万ドル(約480億円)規模とされるWHOに対する米国の拠出金については「他の保健衛生関連の国際組織に振り向ける」とした。トランプ氏は今月18日、WHO事務局長に「30日以内に組織を改革しなければ米国は資金拠出を恒久停止する」と警告していた。
 またトランプ氏は会見で、米株式市場に上場している中国企業の透明性向上に向け「特異な行為」をしていないか作業部会で検証すると語った。
 さらに、中国人の学生らが米国内の大学や研究機関で技術窃取を繰り返してきたと非難。記者会見後は、中国人民解放軍に連なる研究機関に所属する大学院生の米国への入国を禁じる大統領布告に署名した。

トランプ米大統領は5月29日、米国が香港に認めている優遇措置の廃止に向けた手続きに入ると発表した。

米国が香港に認めている優遇措置とは、1992年制定の「米国・香港政策法」で香港を中国本土とは異なる地域とみなし、関税やビザ発給などで香港を優遇している。中国と世界の窓口として、ビザの発給などの渡航優遇措置、関税措置の優遇、投資等資本取引の優遇など多岐にわたり、毎年の検証に基づき、この優遇措置が妥当かどうか判断するという。

その優遇措置があるからこそ、世界の金融センターとしての香港の地位を支えてきた。その米国による優遇措置を全部剥奪される見通しとなれば、香港の存在意義が根本からなくなり、香港の存立すら危ぶまれる。

トランプ大統領の優遇措置廃止に先立つ5月27日ポンペイオ国務長官は中国が全国人民代表大会(全人代)で香港市民の基本的人権を制限する「国家安全法」を香港に導入する議案を翌5月28日に採択する予定であるのを受け、香港では「高度の自治」が維持されておらず、米国が香港に認めてきた優遇措置を続けるに値しないと議会に報告した。

その問題の国家安全法とは・・・

【SankeiBiz】2020.5.28 14:03 

【香港=藤本欣也】中国の全国人民代表大会(全人代)は28日、「香港が国家安全を守るための法制度と執行メカニズムに関する決定」を採択する。この決定によると、全人代常務委員会が制定する香港の国家安全法では、国家分裂、政権転覆、組織的なテロ活動など国家の安全に重大な危害を与える行為・活動や、外国勢力による香港への干渉が禁止される。

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27日、香港のデモで、取っ組み合いになる警官隊とデモ支援者(ゲッティ=共同)

 具体的には、(1)反中国共産党デモを行う(2)香港独立や英領香港時代の旗を掲げる(3)新聞や出版、ネットを通じて「共産党独裁反対」「中国の民主化要求」「天安門事件の真相究明」などを主張する(4)外国の議員との面会や、海外で香港問題への支援を求める講演を行う-ことなどが罪に問われる可能性がある。

 このほか、(1)中国の国家安全当局は香港に出先機関を設置可能(2)香港行政長官は国家安全教育を推進することになる。香港の外国人裁判官が国家の安全や治安に関する審理を担当できなくなる-との報道もある。

 全人代常務委が制定した後、香港政府が公布する。9月6日に予定される香港の立法会(議会)議員選挙前に施行されるのは確実だ。

 香港の学生ら市民の間では、「表現・集会の自由」が制限され、秘密警察が香港に設置されることへの不安のほかに、「国家安全教育」の名の下で愛国教育が進められることへの懸念も広がっている。

 全人代常務委が香港に国家安全法を導入することについて、中国側は香港基本法(ミニ憲法)に基づいた合法的措置と主張する。

 基本法18条には「中国の全国レベルの法律は、基本法付属文書3に列挙されたものを除き、香港で施行されない」とある。つまり、付属文書3に追加すれば、香港で施行できることになる。そして、追加を決定できるのは全人代常務委と明記されている。

 また、「付属文書3に列挙された法律は香港が公布して施行、あるいは香港が立法化して施行する」と規定されており、今回は「付属文書3に追加→香港が公布」の方式で香港での施行を図るとの立場だ。

 付属文書3に列挙された法律には、国旗、国章、祝日、国籍に関するものなどがある。現在、香港の立法会で国歌条例案が審議されているが、これは「付属文書3に追加→香港が立法化」の方式による。

 一方、香港の民主派は、全人代常務委が国家安全法を香港に導入することについて、基本法違反であると主張する。

 基本法の起草委員も務めた民主派の重鎮、李柱銘氏は今回の国家安全法に関し、「全人代常務委が香港のために制定する香港の法律であり、中国の全国レベルの法律ではない」と指摘。全人代常務委が「香港の法律」を制定できるとの規定は基本法のどこにもないと強調する。

 このほか、18条では「香港の自治の範囲に属する事項の法律」については付属文書3に追加できないと定めている。そもそも23条に「国家分裂行為などを禁止する法律を香港が自ら制定しなければならない」と明記されており、「国家安全法は香港の自治の範囲内の法律であり、付属文書3に追加できない」と今回の違法性を指摘する法律家もいる。(香港 藤本欣也)

ポンペオ国務長官は声明の中で、中国政府による国家安全法制導入は「香港の自治と自由を根本的に損なう」と批判した。香港の現状については「理性ある者であれば、香港が高度の自治と維持しているとは誰も主張できないだろう」と指摘した。国家安全法が導入されれば米国が香港への優遇措置を撤廃する用意があると中国に警告を発する意図があり、中国に土壇場での翻意を迫るものだった。

ポンペイオ国務長官による議会への報告は、2019年11月に制定された香港人権民主法に基づく措置である。その通称香港人権法案は、香港の自治を保証する「一国二制度」が守られているか米国務省に毎年の検証を義務付け、香港での人権侵害に関与した政府関係者らに制裁を科す内容となっている。その香港の高度な自治を認めた「一国二制度」を中国が順守しているか毎年検証するよう義務付けている国務省が、検証した結果を議会に報告したものだ。

ポンペイオ国務長官は、一国二制度を遵守せず「中国政府は香港に中国の規範を当てはめようとしている」と非難した。だが、中国は一国二制度の内だと反論をする。

かつての大英帝国が地球上に近代化の種とともに振り撒いた、英国の国益そった妥協的国境という災いが未だに世界中に陰を落としてしまった例の一つかもしれない。英国や国際社会と中共との妥協の産物一国二制度という玉虫色の妥協がやはり災いの種となった。

米国や香港民主派にとって一国二制度は、「一国二制度」であり中国にとっては「一国二制度」なのだ。約束を守らないシナ人は、50年も後生大事に約束を守るはずがないのは当然だ。

【日経ビジネス】白壁 達久 日経ビジネス記者 2020年5月29日

(写真:AFP/アフロ)

 中国の北京で開いた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は28日、香港への統制を強める「香港国家安全法」の制定方針を採択して閉会した。1997年に英国から返還された香港は、50年間は一国二制度として「高度な自治」が保障される約束だが、形骸化が進んでいる。コロナ禍で大規模なデモや集会ができないドサクサにまぎれて、中国本土は香港への統制をじわじわと強めつつある。
 香港の今とこれからをどう見るのか。民主派議員として19年末まで香港の立法会(国会に相当)議員だった区諾軒(オーノクヒン)氏に聞いた。

区諾軒
32歳、2015年香港中文大学政治公共行政学科研究修士修了。12~19年に香港の区議会議員。民主派議員として18年の立法会補欠選挙に立候補し当選(区議と兼任)。19年12月、議員資格をはく奪される。19年から今年4月にかけて3回逮捕される。

ー全人代が香港国家安全法の制定方針を採択しました。

区諾軒氏(以下、区):具体的な中身はまだ分かりません。中央政府の機関が香港政府に組織を設置して国家安全に関する職責を果たすという点で、香港の言論はますます制限され、自由が奪われていくでしょう。今回の制定方針が香港の議会を経ずに採択されたことにも脅威を感じます。

ー香港では抗議活動が起こっています。

区:既に600人以上が逮捕されています。一昨日は、デモに参加していない人まで逮捕されました。制服を着た中学生も数人逮捕されています。正確な情報は得ていませんが、学校から帰宅途中、たまたまデモの現場を通りかかったところを逮捕され、まだ釈放されていないとか。無理やり誰でも逮捕する今の香港警察は常軌を逸しています。

ー区さんも昨年から今年にかけて3回逮捕されました。

区:いずれも、かつての香港なら逮捕されるような事案ではないと考えます。最初の逮捕容疑は警官襲撃罪です。昨年6月の反政府デモに際し、デモ隊と警察の衝突を解消しようとしたのですが、うまくいかず。拡声器での声が「警官の聴覚に影響を与えた」と。声を出すだけで襲撃したと認定されたわけです。

 逃亡犯条例改正を巡り、昨年5月に行われた立法会の審議を妨害した容疑で11月にも逮捕、起訴されました。立法会の委員会で親中派議員の発言を妨げようとしたことが、立法会議員の権利を定めた条例に違反したというのです。3時間の取り調べの後に帰宅を許されましたが、その後起訴されました。逮捕された時期は区議会選挙の直前のタイミングでした。(逮捕される)半年前のことを突然持ち出しての逮捕は、政治的な意図があると考えざるを得ません。

 そして今年4月18日。平和な朝が一変しました。私の家に突然、警察官が5~6人訪れて「出頭せよ」というのです。昨年8月に実施した集会で、許可していないデモを率いたという容疑です。逮捕されたのは私だけでありません。「香港民主派の父」と呼ばれる弁護士の李柱銘(マーティン・リー)ら合計15人の民主派リーダーが一斉に逮捕されました。6月に裁判が始まりますが、長期戦になりそうです。

ー今年9月には立法会選挙が実施される予定ですが、選挙で民主派を立候補させないための逮捕にも感じます。

区:個人的に選挙への立候補とかとは直接関係ないと思います。リーダーだろうが一般人だろうが、誰でも逮捕するぞというメッセージでしょう。

 立法会の定数70のうち、半数の35を民主派が取れるかが焦点です。そもそもの選挙制度が親中派に有利に作られていますが、たとえ当選しても、その後議員資格を奪われかねません。香港では民主派議員が相次いで「資格停止」などで議員資格を奪われているからです。私もその一人です。

 16年の立法会選挙で当選した民主派議員4人が、就任宣誓で民主化への決意を付け加えるなどして、法定通りに宣誓文を読まなかったとして議員資格をはく奪されました。当選議員の資格はく奪に伴って18年に実施された補欠選挙で私は当選しました。ですが、香港の香港終審法院(最高裁)は昨年12月、「選挙管理委員会の手続きが不当」として私ともう1人の民主派議員の資格をはく奪するとした高裁判決を相当と判断し、私たちの上訴を棄却。私は議員資格を失いました。

 民意によって選ばれた議員をも、あらゆる手段を使って資格を奪う。それが今の香港です。

ー立候補は自由にできる環境でしょうか。

区:それもだんだん難しくなってきています。議員に立候補する際は、声明書にサインしないといけません。その文面がどうなるか。今回の香港国家安全法など、中国政府の意向を尊重するという文面が入る可能性もあります。そうなると、民主派としては立候補すらできなくなってしまいかねません。

ー昨年には犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改定案が出たものの、大規模な反政府デモが続いて撤回に至りました。

区:逃亡犯条例の撤回で、「自分たちのチカラで運命を変えることができる」と民主派や支持者は希望を抱きました。ところが、今回は香港政府ではなく中国本土の決定です。私たちが香港政府に訴えたところで、覆りません。

 昨年はデモをする空間がありました。今年は新型コロナウイルスの感染防止の観点もあり、それがなかなかできない。

ー6月4日は天安門事件で亡くなった学生を追悼する大規模集会やデモが毎年開かれています。そうした集会も今年は難しいのでしょうか。

区:今年は難しいでしょう。民主派が6月1日にデモをやりたいと警察に届け出ましたが、許可されなかったと聞きます。昨年の100万人デモから1年となる6月9日など、節目でまたデモをしたいと思っていますが、コロナを理由に許可を出さないのではないかと思います。

ー台湾などに移住する香港人も多いと聞きます。

区:「今日の香港、明日の台湾」と私たちは言っています。香港の次は台湾。そのためにも、私たちは香港の民主主義を守らないといけません。

 世論調査を見ると、民主派の支持率が昨年に比べて上昇傾向にあります。民主派には「未来を開く可能性を探る責任」があると思っています。香港を取り戻せるか。これからもその道を探していきます。

香港民主派市民にとって中国の国家安全法の成立は、香港の命脈を絶つ決定だが、ほんの一握りの親中派市民からすれば、戦争をするくらいなら「優遇措置撤廃を中止せよ」といいたいだろう。あれ、隣のどこかの国も似たようなことを言っていた。

ある意味米国の香港人権法のその本質は香港市民への蜂起を促すものである。蜂起しないと優遇できなくなってしまうぞと・・・

だが、香港民主派市民にとって米国は、最後の砦なのだ。「かつて約束された自治を否定する中国共産党体制と戦う香港の人々を支持する」と発言するポンペイオ国務長官の言葉が頼りとなる援軍なのだ。

米国は、2019年香港政府が進める「逃亡犯条例」改正案に対する反対運動が激化し2019年6月に共和・民主両党の議員が超党派で提出、香港人権法案」を2019年11月19、20日に上下院で賛成が圧倒的多数で可決された。

米国が香港に認めている優遇措置とは、1992年制定の米国の国内法「米国・香港政策法」によって、香港を中国本土とは異なる地域とみなし、関税やビザ発給などで香港を優遇している措置である。中国と世界の窓口として、ビザの発給などの渡航優遇措置、関税措置の優遇、投資等資本取引の優遇など多岐にわたり、毎年の検証に基づき、この優遇措置が妥当かどうか判断するという。

その優遇措置があるからこそ、世界の金融センターとしての香港の地位を支えてきた。その米国による優遇措置を全部剥奪される見通しとなれば、香港の存立すら危ぶまれる。

その優遇措置によって、いままで香港および中国にとって、どのようなメリットがあったか説明した記事が以下の記事である。↓
【日経新聞】2020/5/29 19:10 (2020/5/30 0:44更新)

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トランプ米大統領がどこまで踏み込むのかが焦点だ(28日、ワシントン)=ロイター

【ワシントン=永沢毅、香港=木原雄士】トランプ米大統領は29日、中国への米国の対応措置について発表する。中国が香港への統制強化を決めたのを受け、制裁を含めた対応を明らかにする可能性がある。米国が一国二制度に基づく「高度な自治」を前提に香港に認めてきた優遇措置の見直しに踏み込むかどうかが焦点だ。ただ優遇措置の見直しは、香港や米国企業にも打撃を与えかねない難しさをはらむ。

中国が香港国家安全法の制定を決めたのを受け、トランプ政権は香港が「高度な自治」を維持できていないと判断。香港の優遇措置は継続困難との見解を米議会に伝達した。


想定のひとつが2019年11月に成立した「香港人権・民主主義法」にもとづく制裁措置だ。中国共産党関係者らの資産凍結・査証(ビザ)の発給停止措置のほか、香港向けの関税とビザ発給の優遇措置見直しが主な内容だ。ただ共産党関係者向け制裁は実効性に乏しく、優遇措置の見直しは米国や香港に打撃になりかねない問題を抱える。

香港から米国への渡航者は2019年に15万人に上った。中国本土と比べて香港在住者は簡単に米国ビザを取得できる。こうした往来が止まって困るのは中国よりも香港や米国だ。香港には米国企業約1300社が拠点を構え、アジア全域を統括する機能を持つケースも少なくない。

関税優遇撤廃も一筋縄ではいかない。米国は「香港政策法」で香港を「経済・貿易面で(中国本土とは)別の地域として扱う」と明記し、対中制裁関税を適用していない。

ただ、香港政府によると香港から米国への輸出額3040億香港ドル(約4兆2千億円、19年)のうち77%は中国本土から香港を経由して米国に向かう再輸出だ。大半は原産地が中国だとして、すでに制裁関税の対象になっているとみられる。また香港の輸出に占める米国向けのシェアは約8%で、米国が関税を上げたとしても「マクロ経済への影響は大きくない」(英調査会社オックスフォード・エコノミクス)。

一方、米国から香港への輸入額は2129億香港ドルで、電子機器などが多い。軍事技術に転用可能な半導体などを香港経由で仕入れる中国企業が多い。米国が香港への輸出管理を厳しくすれば、中国企業にとって打撃となる。

香港人権・民主主義法に基づく制裁措置が抱える難しさから、米国では様々な制裁手段を想定しているもようだ。スティルウェル米国務次官補は「対応措置には長大なリストがある」と述べ、経済制裁や中国当局者へのビザ停止などを具体例に挙げる。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ政権は米国に滞在する中国人の留学生や研究者のビザの効力の停止を検討している。大学院生ら約3千人が対象になるという。

「香港と中国を決済ネットワークから締め出すべきだ」(中国に関する現在の危機委員会)。米国の保守派の民間団体には、国際的な資金決済のネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)の利用停止などを求める声もある。金融制裁に踏み込めば、アジアの金融センターである香港への影響は甚大だ。

香港は金融市場に強みを持つ。新規株式公開(IPO)を通じた企業の資金調達額は18、19年に世界1位だった。仏ナティクシスによると、10~18年の中国企業のオフショア市場での資金調達のうち株式は73%、債券は60%が香港市場だ。香港の金融機能を止めれば世界の金融市場は混乱が必至だ。市場で存在感を高める中国企業への打撃にとどまらず、米金融機関のビジネスにも大きな影響が及ぶ。

香港は北朝鮮やイランと違って、世界経済と密接につながる。香港への制裁は、香港企業や香港で活動する米企業にも影響が及ぶため、トランプ政権は慎重に検討するとみられる。


貿易においても、今まで米国が課してきた対中関税も香港に課されていなかったが、一国一制度であれば、当然優遇措置はなくなり、中国と同じ課税が適応される。

日経記事では、「共産党関係者向け制裁は実効性に乏しく、優遇措置の見直しは米国や香港に打撃になりかねない問題を抱える。」と、あるが本当だろうか?

中国が香港への統制を強化する「香港国家安全法」の導入を決め、香港の自治や人権を侵害した政治家共産党幹部個人へも米国への入国禁止、個人資産凍結、没収等の措置が行われる見通しである。

これは、中国国内で掠め取ってきた巨額の賄賂を、米国にセッセと送金し蓄財してきた中国共産党幹部にとって、許されざる驚天動地の制裁措置である。

中国共産党は、第二次世界大戦日本軍とは戦わず逃げ回り、ソ連と米国双方から援助を受けつつ戦力を温存、国共内戦~朝鮮戦争においてはソ連の援助を受けていた。米ソ冷戦においてスターリンの死後ソ連と対立し、ソ連を裏切り、米国陣営にはしり、米国の真の恐ろしさをあまり自覚することなかった。中国共産党は、米ソ冷戦の崩壊後、WTOに加入を許すなど、対中国弱腰外交を続けてきた歴代大統領、クリントン~ブッシュJr~オバマまで、ある意味米国を舐めきっていたと思える。

米国は、「豊かになればいずれ中国は民主化が進むだろう」という、科学的根拠に乏しい幻想をシナや中国共産党に対して抱いていた。米ソ冷戦に勝利する戦略として、敵の敵は見方という戦略理論で、自国の価値観と相容れない、非民主的な中国共産党を抱き込む際、人権を弾圧する中国と妥協する
自己欺瞞が、いつのまにか、そう信じ込んでしまった結果なのだ。

また、戦前あれほど敵対していた大日本帝国が、戦後米国に隷属し、経済的繁栄を謳歌し、米国に敵対する心配がなくなった成功体験が悪かったのかもしれない。米国人からすれば、日本人とシナが見た目が似ているからそう思えたのだろう。

だが、日本と中国の文明は似て非なるものであり、日本は「實るほど頭を垂れる稲穂かな」だが、中国は真逆であり富めば富むほど傲慢さを増すのが中国人である。また、非キリスト教徒である中国人は聖書を読まない。聖書のソロモンによる箴言「傲慢は破滅に先立ち、謙遜は栄誉に先立つ」という金言を知らないようだ。

トランプ大統領は、歴代大統領や多くの米国人が持っていた、対中国幻想を捨て去り、覚醒した。歴代大統領のなかで、やっと中国の本質を見抜いた傑出した米国の指導者である。

日本も1970年代、周恩来や鄧小平といった傑出した指導者によって、私を含め中国を見誤っていた。ところが、江沢民による反日政策と、中国政府による尖閣に対する侵略行為で、米国より若干速く覚醒したが、天安門事件でも中国に対しいち早く手を差し伸べ、中共の国際世界復帰を手助けしてしまい、米国ばかりを非難できない。

それどころか日本においては、未だに、官僚、マスコミ、財界、アカデミズム関係者を中心にサイレントインベイジョンが浸透しているのかもしれないが、親中国の幻想を抱く非国民が多数存在する。そういった連中には、中共がナチスがユダヤ人に対して行った犯罪行為がまるで気にならないようだ。
そうだよな・・・工作員のハンドルネーム「市民の目」

中共、特に頭の悪い習近平は、米国を舐めきり米国の警告を無視して、「国家安全法」を制定してしまった。米国はそうは言っても大統領選挙を控え最終的には「軍事的オプションを嫌う」というこのに賭けている。これは人類の未来をなくすかもしれない危険なチキンゲームになってしまった。

【ZAKZAK】2020.5.30 

中国が、香港への締め付けを一段と強化している。中国共産党は全国人民代表大会(全人代)で、反体制派を取り締まる「国家安全法」を、香港で新たに導入する決定を採択した。

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 全人代に出席した習主席(中央)。トランプ氏率いる米国との激突を決意したのか(AP)

 これが実現すれば、デモや集会はもちろん、ネットでの中国批判も摘発され「一国二制度」は崩壊したも同然になるだろう。香港では抗議のデモも起きたが、米国や台湾などへ移住を目指す市民が急増している、という。

 なぜ、習近平政権は、ここで強硬策に出たのか。

 香港は9月に議会に相当する立法会選挙を控えている。2019年11月の区議会選挙でボロ負けした習政権が「悪夢の再来」を恐れた点が1つ。再び負けるようなことがあれば、政権が決定的打撃を被るのは避けられない。

 それ以上に重要なのは、習政権が「米国との激突は不可避」とみて、力でねじ伏せる方針に転換した可能性だ。

 これまでは曲がりなりにも、民主派勢力の取り締まりは香港の特別行政府に任せてきた。北京政府が直接、弾圧に乗り出せば「米国が黙っていない」とみたからだ。

 昨年は米国との貿易交渉も進行中で、米国を必要以上に刺激するのは避けたかった。だが、新型コロナウイルス問題で事態は変わった。

 交渉が終わったわけではないが、「世界が大恐慌以来の不況に突入する」とみられるなか、貿易交渉の重要度は下がっている。「街中が大火事になっているなら、小屋が燃えても大した意味はない」のと同じだ。

 中国共産党の重要文書が相次いで欧米メディアに流出し、政権基盤も揺らいでいる。そうであれば、「この際、強硬策で求心力を回復しよう」と考えたとしても、おかしくない。

ドナルド・トランプ米政権はどうするのか。

 手綱を緩めるどころか、さらに習政権を追撃するだろう。そのサインもある。米国防総省が5月20日、新たな対中政策文書を発表し、習政権を厳しく批判したのだ。

 「中国に対する米国の戦略的アプローチ」という表題が付けられた16ページの報告書は「1979年の国交樹立以来、米国は中国が経済的、政治的、社会的に開かれ、国際社会で責任ある国になるという前提で政策を展開してきた」と書き出している。

 そんなアプローチは、「経済的かつ政治的改革を圧殺する中国共産党の意思を過小評価していた」と反省したうえで、「トランプ政権は中共の意図を目を見開いて分析し、摩擦の激化も覚悟しつつ『競争的アプローチ』を採用する」と宣言した。

 見逃せないのは、「静かな外交が成果を出せないなら、米国は自国の利益を守るために、適切なコストも費やして、対中圧力を強め、必要な行動をとる」と断言した部分だ。言い換えれば、「軍事的オプションも辞さない」とも読み取れる異例の表現だった。

 トランプ政権がここまで腹を固めたとなると、習政権も後には引けないだろう。香港問題は新型コロナと同じく、米中関係最大のホットゾーンになってきた。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。


私は、米国に対して一つ懸念がある。前回の危険なチキンゲームであるキューバ危機とは、役者が違う。

習近平は聡明なフルフチョフとは違う、引く事を知らない臆病な独裁者だ。仮に引いたら、自分の命はおろか、中国共産党政権の命脈は終わる。そして、奴らは自国民の命など歯牙にかけず、政権維持に固執する中国共産党だ・・・・これはやばい!

【JBpress】渡部 悦和 2020/05/12 07:00 (gooニュース) 

中国初の国産空母「山東」(中国軍のサイトより)

新型コロナウイルスの感染拡大が米中関係に大きな影響を与え、米中は全面的な競争から全面的な対決に向かっている。

 歴史上最悪の米中関係の中で、中国共産党が行っている情報戦は、独善的で火に油を注ぐ結果となっている。

 一方で、1999年に出版され世界的なベストセラーになった『超限戦』の著者である喬良少将は、台湾武力侵攻を叫ぶ中国人タカ派とは一線を画し、「今は台湾を攻撃する時ではない」と非常に冷静な態度をとっている。

冷静な喬良少将は手強い。

 喬良少将は『超限戦』で、「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」と主張する一方で、「今日または明日の戦争に勝ち、勝利を手にしたいならば、把握しているすべての戦争資源、すなわち戦争を行う手段を組み合わせなければならない。(中略)すべての限界を超え、かつ勝利の法則の要求に合わせて戦争を組み合わせることである」と説いている。

 つまり、共産党の単純で露骨な宣伝戦ではなく、喬良少将はあらゆる要素を考慮に入れた冷静で実行可能な選択をすべきだと説いている。

 我が国にとっては、単純で粗野な共産党は扱い易いが、冷静に策を練る喬良は手強い相手だ。

歴史上最悪の米中関係

 北京大学国際関係学院の王緝思教授の「新型コロナウイルス流行下の米中関係*1」は、現在の米中関係における注目の論考である。

 そこには歴史上最悪の状況にある米中関係において、「中米両国は全面的な競争から全面的な対立に向かう可能性」について率直に記述されている。以下はこの論考の注目点だ。

*1
https://www.spf.org/china/news/20200430.html

●総体的に言って、41年の中米両国国交の歴史の中で私たちの米国に対する不信と反感は既に過去に例がないほど高まっている。

●今後、中米関係における矛盾は続き、日増しに緊張が高まるだろう。妥協する余地と引き返す可能性はますます少なくなる。中米両国は全面的な競争から全面的な対立に向かい、いわゆる「トゥキディデスの罠」に陥る可能性を排除することができない。

●この趨勢がこのまま続く場合、主要になる戦略は「新冷戦」を避けることではない。

●新型コロナウイルスの流行は中米関係に大きな打撃を与えた。両国関係の悪化のスピードは加速し、政府間交渉はほとんど凍結されている状態である。戦略の相互不信は日増しに深刻になり、国内における互いの国に対する反感は前例がないほど強い。

●長期間にわたって、中国では中米関係は最も重要な関係であると見なされ、米国に対しては爪を隠して対応をすべきだとする考え方が浸透していた。現在、この考え方はもう世論の主流から外れ、その代わりに中国は米国と真っ向から対峙し、恐れずに力を見せつけるべきだという意見が主流になっている。極端な例ではもう二度と米国には期待しないとするものまである。

●ある時期から、米国による反中言動に対する中国政府と国民の容認度は著しく低下した。米国による攻撃を中国が容認することはもうない。中米間の情報戦争、世論における論争、外交戦争はますます激しさを増し、今や後戻りすることが難しくなっている。

●米国が対中政策を大きく転換し、中国がそれを認識して戦略、考え方、具体策を変更し、競争、闘争の方向へ断固として舵を切ったことをこれらすべてが明らかにしている。米国に対する幻想を捨て去り、非常に危険な挑戦に対する備えを行い、恐れず、巧みに戦い、競争意識を高めなければならないと中国は総じて強調している。

 ここには鄧小平の韜光養晦を完全に捨てて、米国と本格的に対決するという中国の決意が満ち満ちている。

中国共産党の愚かな宣伝戦

 王緝思教授の論考を読んで思うことは、片手落ちだということ。

 中国からみた米国に対する怒りの原因は書いているが、米国の中国に対する怒りの原因を全く書いていない。

 米国の怒りは中国の所業の悪さに起因する。サイバー攻撃や人によるスパイ活動などあらゆる手段を使い米国の知的財産を窃取する。

 米国の開放的な市場を利用して経済活動を行うが、中国の市場は米国の資本に対して閉鎖的で、中国市場に進出する外国企業に知的財産の提供を強要するなどだ。

 米国の怒りに対して、その原因を真剣に解消しないで、米国との対立を強調する姿勢が根本的な問題なのだ。

 習近平氏が中国のトップについてから、「中華民族の偉大なる復興」で2049年までに世界一の国家になると宣言し、「海洋強国、宇宙強国、航空強国、科学技術強国、2030年までにAI強国になる」、「中国製造2025」など矢継ぎ早に発表したスローガンが覇権国である米国を刺激したのは事実であろう。

 習近平氏のやり方はスマートではない、あまりにもガサツな宣伝と言わざるを得ない。

 中国のプロパガンダ戦の特質を端的に表現すると「言っていることと、やっていることが違う」ということだ。

 習近平国家主席が常用するプロパガンダは、「我々は平和発展の道を堅持し、ウィン・ウィンの開放戦略を実施する。引き続き、世界各国の、人民と共に人類運命共同体を打ち建てることを推進していく」「世界の平和を断固として守らなければならない」というもの。

 中国の非常にアグレッシブな姿勢とこの演説の中身との乖離はあまりにも大きい。この点に世界の人々は不信感を持つ。

さらに酷かったのは新型コロナウイルス発生後の宣伝戦は愚かと言われても仕方のないものであった。

 中国は、新型ウイルスの世界的なパンデミックに際して、世界の人たちに対する謝罪をしていない。謝罪するどころか、ウイルスの由来は中国ではなく、米国であると主張した。

 そして、「ウイルスの拡散を防ぐため、中国政府は多くの国民を閉じ込める都市封鎖をやった。世界を救うために巨大な犠牲に耐えた。だから世界は中国に感謝すべきだ」と主張している。

 さらに中国当局は、習近平主席がいかに新型コロナウイルスを鎮圧するために活躍したかを宣伝する書籍を出版したが、あまりにも不評で数日で書店から回収された。

 これら一連の事実は、中国共産党の宣伝戦があまりにも独善的であることを示している。この宣伝が逆効果であることさえ分からないのか。

 王緝思論文では以下のように記述されているが、共産党の宣伝は失敗と言わざるを得ない。

「広報活動においては、中華文化を発揚し、中国式管理や統治による成功経験を発信し、世界の潮流を中国のやり方でリードできるという自信を向上させ、それらが中国にとってプラスのエネルギーとなり、その流れが主流になった」

「例えば今回の新型コロナウイルスへの対応が全体として非常に成功しているという評価を発信し、中国が世界の対応基準を打ち立てたと発表した」


『超限戦』の著者が台湾攻撃批判 

 上記のような中国の状況において、中国国内のタカ派の「米軍が新型コロナウイルスで弱体化している間に台湾を攻撃して、統一を実現するべきだ」という主張が勢いを得ている。

 一方で、異彩を放っているのが『超限戦』の著者の一人である喬良少将である。

 彼は、「台湾統一を焦るべきではない。中国の復興(いわゆる中華民族の偉大なる復興)が最優先であり、14億国民の幸福な生活が大切である。台湾統一は最優先事項ではない」と主張している。

 喬良少将はなぜ現時点における台湾統一に反対するのか、彼の主張を箇条書きにする*2

●米中間で貿易戦争が起こった場合、「戦わなければ、傷つくだけだ」と主張するが、どのように戦うのか、何を使って戦うのか、戦いの結果は何か?

 それに答えた人はほとんどいない。

 台湾問題でも同様で、タカ派は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と主張するが、 虎の穴に深く入り込む具体的な方法は何かが不明確だ。虎穴に入ることの問題を考慮せずに、愛国心だけで行動するのは国にとって有害だ。

●中国は、20年以上の軍事力増強の結果、いつでも台湾統一を力で達成する用意がある。米国や世界は、このことを疑ってはいけない。

 しかし、台湾統一は、費用対効果を計算し、タイミングを選ぶ必要がある。確かに、ウイルス感染で米軍の軍事力は弱体化しているが、今は行動を起こす時ではない。

●タイミングを選ぶためには、全般状況を見なければいけない。中国は、世界最大の製造大国だが、自らの市場が製造した製品を完全には消化できない国である。現時点では、外部の制約が中国の台頭を大きく制限している。

 また、中国経済および世界経済は依然としてドル基軸通貨体制のもとにある。中国が行うすべての決定(政治、経済、軍事など)ではこれを考慮する必要がある。

●台湾問題は両国間の内政問題だけではなく、米国は明らかに介入する力を持っている。台湾海峡で戦争が発生したならば、米軍は直接中国と戦うのではなく、西側諸国と共同して中国のシーレーンを遮断するであろう。

 その場合、中国は生産した製品を輸出することはできない。同時に、ニューヨークとロンドンの2つの主要な金融センターで、中国の資本を遮断する可能性がある。

●結論として、中国の復興が最優先であり、14億国民の幸福な生活が大切である。台湾統一は最優先事項ではない。単に自信だけに頼った主張は、愛国に見えて実は「害国」となる。

 以上のように喬良少将は、タカ派の論客とは一線を画する考えを持っている。

 この考え方は、彼が『超限戦』で強調している、軍事のみならず、あらゆる要素を組み合わせて戦い方を構築すべきであるという主張に符合する。

 喬良少将は特に、政治、経済、外交、内政を重視する理性派であり、単純な主張をごり押ししてくる共産党よりもずっと手強い存在である。

 喬良の主張は少数派であり、当局の100%の同意を得ているとはとても思えないが、どの程度の広がりを見せていくか注目したい。

*2=Too costly’: Chinese military strategist warns now is not the time to take back Taiwan by force, South China Morning Post

(渡部 悦和)

いまは、あの憎憎しい「超限戦」の著者 喬良 空軍少将 中国人民解放軍国防大学教授、空軍少将。魯迅文学院、北京大学卒業。文学作品や軍事・経済理論の著作は600万字を超え、代表作は長編小説『末日の門』、中編小説『霊旗』、理論書『帝国のカーブ』など。)の主張が正しいと言わざるを得ない。

彼は、単なるタカ派の誇大妄想アジテーターではなく、孫子の兵法を熟知する、知性派の軍師リアリストであることが、改めて理解できた。たぶん、ここで米国と軍事的オプションを使えば、本来の目的である米国からの覇権奪取は永遠にできなくなる、もっと長期的視野で考えろと言っている。

喬良 空軍少将は南シナ海についても棚上げを主張している。

これは、推測だが、香港についても、これ以上の強攻策は止めろと、習近平政権に強く諫言していると思われるが、習近平は残念ながら賢くない。賢ければ、
喬良空軍少将 の意見を聞きいれるだろうが、国家安全法をやってしまった!

あとは、軍師喬良空軍少将の意見を習近平の脳みそにキチンと届けられるだけの人物が居るかいないかということになる。

本来なら盟友で副首相の王岐山の役割なのだが、習近平から現在遠ざけられているという説が有力だ。

ところが、、最近王岐山が復活したとの情報もある。王岐山は、SARSが発生した際は北京市長として、対策の陣頭指揮をとった豊富な経験があり、中共ウィルスの患禍で、復活したかもしれない・・・だが、今のところ少なくとも完全復活までは至ってなさそうだ。


【日本経済新聞】編集委員 中沢克二 2020/2/12 0:00  

新型コロナウイルスの死者が2003年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を大幅に上回る千人以上に達した中国。流行抑え込みの山を迎えた今、時ならぬ政局が裏で動き出そうとしている。それは2年後の共産党大会の最高指導部人事まで見据える前哨戦にも見える。

大災害による国家的危機のさなか、為政者の不手際で政権交代の芽が育まれた例は多い。東日本大震災に見舞われた日本では翌年、盤石に見えた民主党が政権の座から滑り落ち、自民・公明両党の連立政権が誕生した。

当の中国では建国の父、毛沢東が「人災」の責任をとって異例の自己批判を行い、共和国主席(国家主席)の地位を劉少奇に譲った例がある。毛沢東の指示で1958年に始まった農工業の無謀な大増産運動「大躍進」が失敗し、おびただしい数の餓死者が出たのだ。

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李克強首相の視察にマスク姿で付き従う習主席の側近、劉鶴副首相(9日)=ロイター

現在の中国政局の見どころは、国家主席の習近平(シー・ジンピン)と、序列2位の首相、李克強(リー・クォーチャン)の微妙な役割分担。キーワードは万一に備えたリスクヘッジである。1月末以降、習近平が防疫対策の前線に立つ場面が減り、代わりに李克強がトップの共産党小組、国務院=政府の役割が目立ち始めた。

最近はウイルス対策の視察をする李克強に、対米交渉やマクロ経済を担当する副首相、劉鶴(リュウ・ハァ)がマスク姿で同行する珍しい風景さえ見られた。習近平の視察にだけ付き従ってきた印象が強い側近、劉鶴だけに違和感がある。習の意味深な特別指示だろう。

カンボジア首相のフン・センとの会談、米大統領のトランプとの電話協議、軍に絡む仕事などをこなしていた習近平は10日午後、久々に動き出した。北京市朝陽区で住宅地の防疫対策、疾病対策センターを視察。地壇医院では湖北省武漢の病院と中継でつないだテレビ会議で指示を伝えた。

「疫病を抑え込む人民戦争、総動員戦、阻撃戦で絶対に勝利しよう」。マスク姿の習は北京でそう訴え、国営メディアも長々と報じた。しかし、あまり迫力はない。中国で最も死者の多い武漢の現地視察を避け、自身が執務する北京の中心、中南海からそう遠くない北京を選んだからである。

盟友、王岐山副主席らの心配事

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習近平主席(左)の背中に手をかけて呼び止める王岐山氏(2016年3月、北京の人民大会堂)=小高顕撮影

とはいえ習近平の行動の裏には別の深謀遠慮がある。「そこには内部での長い闘いを見据えた盟友からの助言が生かされている」。北京の政界事情に通じる関係者の解説だ。盟友とは誰か。国家副主席の王岐山を指す。王岐山は2003年、北京のSARS対策で名をあげた英雄。当時、海南省トップだった王岐山は、不手際を叱責されて解任された北京市長の代理として首都に入り、辣腕を振るった。

王岐山のトップへの助言の中身は何か。「自ら指揮し、自ら手配している」。ウイルスとの戦いに関して、こう口にした習近平をやんわりいさめたのだ。これは1月28日、訪中した世界保健機関(WHO)事務局長、テドロスと北京で会談した際の発言だった。

トップが「自らの指揮」を明言してしまった以上、もし感染抑え込みがうまくいかなかった場合、自ら何らかの責任をとる必要が出てくる。そういう理屈になりかねない。最悪の場合、2年後の最高指導部人事にまで響く。政治面から見れば、まさに「勇み足」だった。

せっかく憲法改正までして国家主席の任期制限を撤廃し、トップの地位維持に向けた権力固めを終えたのに、ここでつまずくわけにはいかない。王岐山はそれを心配したのだ。直言できるのは、十代の頃の習近平も知る兄貴分である彼しかいなかった。

王岐山はかつて請け負った広東国際信託投資公司(GITIC)債務処理と並ぶSARS対策の功績で、燃え盛る火を消す「消防隊長」の名声を不動のものにする。それは副首相や共産党最高指導部メンバーへの道を切り開いた。

習近平政権1期目の最大の成果となった「反腐敗」運動の司令塔として活躍。2期目には共産党の年齢に関する内規を破る形で国家副主席に就いた。正式メンバーは7人しかいない共産党最高指導部の会議にいつでも出席できる「第八の男」でもある。

王岐山にはSARS対策での豊富な経験がある。その王岐山から見ても現在の未知のウイルス対策では確固たる自信が持てないのが実情のようだ。しかも習近平と李克強の関係は冷めている。SARSとの戦いの際のトップ、胡錦濤と、首相だった温家宝のむつまじい間柄とは異なる。習近平の権力がいかに強くても今後2年間、油断はできない。仮に李克強に野心がなくても、習近平に不満を持つ勢力は多い。

王岐山と似た考えなのは、もう一人の習近平の側近で全国人民代表大会(全人代)常務委員長の栗戦書。こちらも習近平が20代から知る良き話し相手で「習近平派」に欠かせない年長の番頭役だ。

処分された告発医師の死

案の定、王岐山らの心配は半分、的中してしまった。直後に大問題が起きたのだ。武漢の深刻な事態を初期段階で伝えようとした若き医師が自らも新型コロナウイルスに感染。7日未明、肺炎でこの世を去った33歳の眼科医、李文亮である。

「華南海鮮市場で7例がSARSと確認された」「我々の病院に隔離されている」「最新情報でコロナウイルスと確定し、現在、分類中だ」。彼は医療関係者ら多数が参加するグループチャットで危険性を訴えた。華南海鮮市場は新型ウイルス発生源の一つとされる。19年12月30日の出来事だった。

だが、この真実の発信が問題視され、処分対象になってしまった。1月3日には武漢市公安局(警察)から連絡があり、派出所に出向く。そこで行動を悔い改め、二度とやらないと誓う訓戒書に署名・なつ印させられている。正式逮捕を避けるには致し方なかった。

早い段階での真実の告発者は、李文亮以外に8人ほどいたことが明らかになっている。今回の感染拡大が当局の真実隠蔽による「人災」といわれる由縁である。もし昨年12月時点で真実が公になり、効果的な対策につながっていれば、国内外でのここまでの感染拡大はなかっただろう。

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感染拡大の危険性を指摘していた武漢の若き眼科医、李文亮氏は自身が新型コロナウイルスに感染し、肺炎のため亡くなった=AP

感染拡大の危険性を指摘していた武漢の若き眼科医、李文亮氏は自身が新型コロナウイルスに感染し、肺炎のため亡くなった=AP

李文亮が逝った日の夜、武漢は異様な雰囲気に包まれた。アパート内にとどまっている市民らはひそかに交流サイトで連絡を取り合い、現地時間午後9時、様々な形式で一斉に追悼の意を表明した。スマートフォンのライトや懐中電灯の点灯、窓を開けて口々に哀悼の言葉を叫ぶといった行動だった。

李文亮は武漢大学を卒業した眼科医だが、出身地は中国東北部の遼寧省錦州。出身地の錦州からも彼をたたえる文章が数多く交流サイト上に発せられた。行間には「人災」への批判も込められていた。

習近平体制下で格段に厳しくなった言論統制が、国民の健康にかかわる重大な真実に蓋をし、あろうことか告発者自身に跳ね返って李文亮を殺してしまった。医師ですら正確な情報がなければ死に至る。政府批判を警戒する当局は監視を強め、問題ある発信を交流サイト上から次々削った。しかし、李文亮を取り締まった現地警察官らさえ病に倒れているのは想像に難くない。

ひとまず武漢を避けた習主席

不満の高まりに危機感を抱く中央は、国家監察委員会のチームを急きょ、武漢入りさせ、李文亮の告発を闇に葬った責任を追及するという。一転、李文亮の英雄扱いを制御できる範囲で認める構えだ。

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会議場に並べられた新型コロナウイルス患者のための多数のベッド(4日)=AP

これはもろ刃の剣でもある。遡って議論を蒸し返せば北京も責任から逃れられない。複雑な情勢にある武漢を今、習近平が視察するのは危険が伴う。武漢視察の回避、そして李克強主導の国務院=政府も使い始めた変化はリスクヘッジを意味する。

中国各地では年に1度の人民代表大会の開催が遅れている。3月初めから北京で予定通り全人代を開くには湖北省を含めた全国でウイルス制圧のメドが立つ必要がある。既にぎりぎりだ。

もし全人代の日程が狂えば、すべての政治日程に狂いが生じる。10日の習近平による北京視察は首都だけは自らの手で安全を確保したいという強い意志の表れでもある。習近平はウイルスとの戦いとともに、先が見えない政治的な戦いにも直面している。(敬称略)


王岐山は、喬良空軍少将と同じ意見と思われるが、推測でもあり、希望的観測でもあり、また、逆にここで習近平が失脚すると、中国の国力は復活してしまう恐れもある。
軍事的オプションが行使され、核戦争に発展することだけは避けてほしいものだ。



そうそう、陰謀論者さん、地震兵器って、もし存在するのなら中国を脅す手段として昨年当たりとっくに使用していてもおかしくないんじゃないですかね?