【産経ニュース】2020.8.4 17:28 

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英国のブレア元首相(提供写真)

【ロンドン=板東和正】英国のブレア元首相(67)は3日までに産経新聞の電話によるインタビューに応じ、中国が習近平国家主席の下、「ここ数年間で一層権威主義化した」と強い危機感を示した。その上で、自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗する必要があるとし、英米など5カ国で構成する機密情報の共有枠組み「ファイブアイズ」への日本の参加について、「われわれは検討すべきだ」と述べた。

 ファイブアイズは英語圏の枠組みだが、ブレア氏は「ファイブアイズと日本は中国問題において共通の利害で結ばれているため、(日本が参加する)十分な論拠があると思う」と語り、日本とも中国関連情報の共有を進めるべきだとの認識を表明した。

 ブレア氏は1997年の香港返還時に首相を務めた。中国の「権威主義化」の例として香港国家安全維持法(国安法)施行を挙げ、「国安法は中国本土の政府に香港の市民が懸念する権力を与えており、(香港の高度な自治を保障した)『一国二制度』に矛盾している」と批判。一国二制度方式による香港返還を定めた中英共同宣言による「合意の基礎が弱体化している」と語った。

 英国の対中政策に関し、ブレア氏は「中国の経済が発展するにつれて政治もより開かれたものになるとの仮定が前提になっていた」と説明したが、実際には逆方向に向かっていると断言。習体制が共産主義を西側諸国の民主主義に代わるより優れた制度であると考えているとすれば「大きな過ちだ」と非難した。

 ブレア氏は、中国を自由主義社会に敵対的な専制国家と位置づけたポンペオ米国務長官の7月23日の演説を評価し、「新型コロナウイルスの感染拡大で米中対立が加速している。11月の米大統領選で誰が大統領に就任しても(対中強硬姿勢は)維持される」とした。

 英政府による第5世代(5G)移動通信システムからの中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品の排除を「最終的に米国と方針を一致させた」と評価。中国が台頭する中、欧州と米国の連携が重要になるとし、「英国は米欧間の懸け橋になるため努力すべきだ」と語った。ただ、欧州連合(EU)離脱で英国が米欧間を仲介するのが「難しくなった」と述べた。首相として親EUの立場を明確にしていたブレア氏は離脱に反対していた。
急速に高まる日本のファイブアイズ参加論であるが、その背景の一つにはEUを離れた英国による日英同盟復活を考えてくれているようだ。もちろん、米英はUKUSA協定(ファイブアイズ)で結ばれており、これに英連邦のカナダ・オーストラリア・ニュージーランドが参加する。実質は日英米同盟みたいなものだ。

これは、日本を英米がまだ高く評価している証拠なのだと思うが、スパイ防止法もない日本が参加しても大丈夫なのか些か疑問でもある。

ただ、このファイブ・アイズに日本が参加する意味は、単なる情報協定ではなく、中共崩壊後の新世界秩序を見据えての打診ではないかと思う。

英下院のトゥーゲントハット外交委員長は「ファイブ・アイズは数十年にわたり情報・国防分野で核心的な役割をしてきた。連帯を強化するために信頼できるパートナーを探さなければならない。日本は重要な戦略的パートナーだ」と話した。ソース

世界最高水準の軍事・情報同盟であり、特に「エシュロン」という通信傍受プログラムを極秘裏に運営しているファイブ・アイズに日本が加盟させてもらえるならば、かの大英帝国と大日本帝国が結んだ「日英同盟」に匹敵する慶事だ。

しかしながら、そう簡単に入れるだろうか?インテリジェンスの世界はギブアンドテイク、日本は、ロシアや北朝鮮を中心とした電波解析はあるのだが、だが残念ながら日本はヒューミントの能力が弱く、他国に与えるべき極秘情報力が弱い。


また日本国内に、スパイ防止法もなく中共とズブズブの国である日本が参加できるわけがない。もしスパイ防止法が制定されたら野党議員の多く与党も〇明党を中心に疑義者続出となるので、残念ながらそう簡単に制定される可能性がない。

まがいなりにも特定秘密保護法を2014年に施行しましたが、天下の悪法だと大騒ぎした連中はその殆どが、スパイ防止法が制定されると不利益を被る連中だ。憲法改正と同じかそれ以上抵抗するのが目に見える。ゆえに、本当の意味でファイブアイズにフルメンバーになることは難しい。スパイ防止法や対外情報機関を持たない日本がすぐに参加できるのか、些か懐疑的に思っています。

【ZAKZAK】2020.8.22 

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中国による「香港国家安全維持法」施行をきっかけに、共産主義対民主主義の構図が鮮明になってきた。「自由の砦(とりで)」を守るために何が必要なのか。国際投資アナリストの大原浩氏は寄稿で、米英など5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」に日本も6番目の国として参加することだと主張する。

 香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏が、香港国家安全維持法違反の容疑で10日に逮捕された。しかし、日本のメディアやネットなどで強い批判が起こり、そのせいもあってか、翌日の深夜に釈放された。

 日本以外の国でも抗議の声は上がったが、われわれが「民主主義の敵」に対して、彼女と一緒に戦う姿勢を見せるだけでも十分な効果があった。15世紀のフランスでは、当時まだ10代だったとされる、オルレアンの少女ことジャンヌ・ダルクがフランス軍の兵士を鼓舞して勝利に導いた。

 周庭氏は香港における「共産主義と民主主義の戦い」の象徴的存在だが、ほかにも逮捕され大陸に送還された数千人以上とも言われる人々を含めた「自由の闘士」が頑張っている。彼らを支援し、日本にも迫る「民主主義の敵」と対峙(たいじ)するにはどうしたら良いのだろうか。

 一つの答えが「日本のファイブ・アイズへの加盟」である。ファイブ・アイズは1940年からナチス・ドイツの暗号「エニグマ」を解読するために米国陸海軍の暗号部と英国の政府暗号学校が協力したことが発端だ。46年にソ連の共産主義に対抗するための協定も結び、その後、カナダとオーストラリア、ニュージーランドが参加した。ファシズムや共産主義から民主主義を守る「自由の砦」なのだ。

日本が一方的に参加したいというわけではなく、ファイブ・アイズの方からも、日本に「打診」が行われている。

 英国のトム・トゥゲンハート下院議員は、河野太郎防衛相が日本を含む「シックス・アイズ」を提案したことについて歓迎の意を示したと報道された。同国のトニー・ブレア元首相は産経新聞の電話インタビューに、自由主義諸国が連携して中国の脅威に対抗する必要があるとし、「ファイブ・アイズ」への日本の参加を「われわれは検討すべきだ」と述べている。

 実際、日本と英国には明治維新以来浅からぬ縁がある。明治維新の際には、英国が新政府を支持したし、第一次世界大戦を挟んで「日英同盟」も結んだ。不幸なことに第二次世界大戦ではドイツと組んだために英国を敵に回したが、この紳士の国は、過去のことをネチネチと掘り返して嫌がらせをする日本の近隣の国々とは全く違う。

 一方で、ファイブ・アイズの中心ともいえる米国だが、11月の大統領選でのドナルド・トランプ大統領の再選が微妙な情勢だ。歴史的に「反日」の民主党政権になれば日本にとっては大打撃である。万が一の時の保険としても英国との関係は極めて重要だ。

 2018年からは、日本、ドイツ、フランスが中国のサイバー活動を念頭に会合を開き、ファイブ・アイズとこの3国の連携で情報共有の新たな枠組みが作られている。日本加盟への道筋は既につけられているし、ドイツやフランスよりも日本の方が6番目の加盟国としてふさわしいと、少なくとも英国からは思われているのだ。このことは民主主義国家として誇っても良いと思う。

日本、韓国、フランスが参加した枠組みが発足したとの報道もあったが、駐留米軍1万2000人削減を行ったトランプ氏と犬猿の仲であるアンゲラ・メルケル氏率いるドイツが入っていない。韓国については、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を安全保障とは関係のない政治交渉に使う国であるから、ファイブ・アイズ加盟国から信頼があるのではなく「中国と手を切るべし」という踏み絵だと考えるべきだろう。

 もっとも、正式にファイブ・アイズに加盟するためには、国内での機密保持がまず大事であるから、まともなスパイ防止法がなく「スパイ天国」と揶揄(やゆ)される現状を早急に改善しなければならない。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。


日本が仮にファイブアイズに参加できたなら、メリットは大きい。自由と民主主義、人権などの同じ価値観を共有する米英豪加NZ5カ国とインテリジェンスを共有できることができれば、日本が単独で中国の脅威に協同で対処すことができ、これほど心強いことはない。

ある意味で、日米+英国・豪州・カナダ・NZ6カ国同盟となりうう。

だが、憲法改正、スパイ防止法や対外情報機関育成など、ハードルは高い。しかしながら踏み出さなければ、国家として生き残ることは難しい。インテリジェンス機能の整備を進め、将来的にはフルメンバーになることも視野に、ファイブアイズとの初歩的な協力を今こそ始めるべきである。

世界で何が起こっているか。中国や北朝鮮、ロシアなどがひそかにどのように動いているか。機密情報を共有し、外交安全保障、経済政策に生かせば日本の平和と安全に大きく寄与するだろう。


 5カ国の行動は、香港問題での共同声明など外交や医療・レアアースの戦略物資共有まで広がっている。日本も連携して中国の拡張主義を抑えていきたい。


日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA ジーソミア)が8月25日午前0時に終了通告期限を迎えた。韓国側から破棄通告はなく、協定は当面維持される見通しとなった。ただ、韓国側は通告期限にかかわらず「いつでも終了できる」と破棄を警告、日本側に輸出規制強化の撤回を迫る構えだが、日本はホワト国待遇を復活するはずもなく、勝手に破棄すればいいのに、韓国は破棄することができなかった。韓国がGSOMIAを破棄してくれず非常に残念だ。

GSOMIAは軍事上の機密情報を提供し合う際に漏洩(ろうえい)を防ぐための協定で、北朝鮮のミサイル分析などで有用とされる。北朝鮮の弾道ミサイルの情報共有を日本と米国で共有している。日本は防衛省情報本部の新潟県小舟渡通信所と鳥取県美保通信所が、北朝鮮の電波情報を追っている。さらに、海上自衛隊は独自にEP-3電子戦データ収集機を飛ばしており、やはり電波情報を収集している。

弾道ミサイル発射を含む北朝鮮軍の動きは、日本側の電波傍受によりかなり詳細に監視しているし、その蓄積も大きい。また、韓国は北朝鮮の弾道ミサイル監視能力が劣る為、北朝鮮が発射したミサイルの動きを日本側から貰っている。一方日本は韓国からは脱北者がもたらすヒューミント情報を貰う程度しかメリットはない。

GSOMIA破棄は韓国にとって明らかなデメリットしかない。韓国には反日感情を満たす心理的効果があるのかもしれないが、東アジアの安全保障を考慮すれば、北朝鮮、ひいては中国にしかメリットがない。韓国は、もはや中国の属国に戻ろうとしているのだから、ファイブアイズからすればレッドチーム、日本は韓国がGSOMIA破棄してくれるのを内心期待している。ただ、米国の手前日本も韓国の破棄に反対しているだけだ。

その中国は日本のファイブアイズ参加をどうみているのか?

【 チャイナネット】2020-08-25 14:42:22 

 日本がファイブ・アイズに加わり、同情報機関のアジアにおける「目」になる?7月下旬以降、日本の河野太郎防衛大臣は多くの場で日本が「第6の目」になる意向を示しており、多くの西側メディアを賑わせている。「環球時報」が伝えた。

 同盟国を抱き込み中国をけん制しようと急ぐ米国はこの動きに非常に満足しているかもしれない。日本の加入はアジアにおける情報ネットワークの拡大を意味し、さらに「インド太平洋戦略」を推進できるからだ。しかしファイブ・アイズのメンバーに懸念がないわけではなく、日本が共有する情報を守れるかを不安視している。日本側を見ても、河野氏が政府の考えをどれほど代表できるかについても多くの疑問が残されている。河野氏は来年に自民党総裁選を控えており、保守勢力に迎合しアピールする必要があるからだ。日本は常に経済発展を重視しているが、ファイブ・アイズに加入すれば、中国との政治・経済協力に「遠心力」を注入することになる。これが新型コロナにより経済の厳冬に陥っている日本に大きな損失をもたらすことは間違いない。実際の加入について、日本は決して軽率に決定できない。

 中国社会科学院日本研究所総合戦略研究室副主任、副研究員の盧昊氏は環球時報のインタビューに応じた際に、「日本が加入するか、あるいはどのような形で協力するかについては、現実的な政治及び戦略を立脚点とし検討することになる」と述べ、次のように続けた。

 政府を含め、日本国内ではファイブ・アイズへの加入について意見が分かれている。日米の同盟関係における軍事情報の共有は非常に高い程度に達しており、日英も積極的に安保協力を推進している。対外軍事情報協力において、日本はすでに十分な「団子」を手にしている。さらに「花」を求め正式にファイブ・アイズに加入するならば、日本の既存の対外防衛協力の原則を超越することを意味する。日本に安全面、さらには戦略的な自主性を持たせようとする人にとってこの措置は有意義だが、より大きな物議と国内外の世論の圧力に直面し、防衛政策で一定の独立性を犠牲にすることになる。そのため日本側は先にシグナルを発し、外の反応に探りを入れ、損得を計算しようとしている可能性がある。

 別の観測筋は、「エコノミックアニマル」である日本は国際情報機関への加入にそれほど興味を持っておらず、TikTok(ティックトック)が米国で受けている仕打ちへの注目度を大きく下回っていると判断した。米政府がバイトダンスにティックトックの米国事業の売却を迫ると、日本の態度にも揺れが生じた。自民党議員は7月末に、「日本でのティックトックの使用制限」について集中的に議論した。

 ウェブサイト「香港01」は記事の中で、日本の同問題を巡る米国との「連携効率」の高さは、米国主導の「同盟」の重心が経済と関連していることを示していると指摘した。日本はこの同盟関係を利用し、自国の利益と発展空間を最大限に拡大しようとしている。その一方で、米国家安全保障局が2011年にアジア太平洋の光ケーブルの監視の協力を求めたが日本から拒否された件は、日本がこのような情報協力に「反発」することを示している。戦後から現在まで、利益を期待できない国際機関に加入しないことが、日本の国際的な生存の哲学になっている。同記事は日本のファイブ・アイズに対する真の態度について、「情報交換以外にそれほど多くの実益がなく、しかも自国を監視下に置くことになる」と分析した。

 しかし盧氏は、河野氏がファイブ・アイズに加入するシグナルを発したことは、少なくとも再び次の傾向を示したと見ている。現在の国際的な変局において、権力の移動の加速と秩序・メカニズムのモデルチェンジに直面した日本は、欧米との「体制協力」の利用・強化により自国の固有の戦略的展開に効果を発揮させ、これをリスク対応と優位性確保の主導プランにしようとしている。日本は自国と欧米の実力及び価値観を巡る「一体感」と「長期融合」は、依然として重大な戦略的優位性だと見ている。

 福井県立大学の凌星光名誉教授は、日米は安保協力をめぐり過去10年で大きく進展したが、米国が日本に高額な武器を買わせようと圧力をかけ、国防産業の大々的な発展を阻害していることへの不満もあると判断した。日本は従順な態度を示しているが、自主性の強化を目指している。国内には、米国との同盟関係に盲目的に依存するのではなく、中国との対話と意思疎通の強化も必要とする理性的な声がある。また中米が激しく競争する時期において、日本は仲裁の役割を演じることが可能とする声もある。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年8月25日
これを読む限り、中国はただ指を咥えてただ見ているしか手がない。
せいぜい日本の工作員を使って日米分断世論を工作するしかないように見える。


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2020年8月20日、中国メディアの海外網は、日本が米国を中心とした5カ国による機密情報ネットワーク「ファイブアイズ」(米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランド)に加入する意向であるとして、その狙いについて分析する記事を掲載した。

記事は、「日本の河野太郎防衛相が15日、日本経済新聞のインタビューに応じた際に再びファイブアイズへの加入の意向を示した」と紹介。先月にはトゥゲンハート英下院外交委員長との電話会談でもファイブアイズ加入に前向きな発言をしていたと伝えた。

このことについて、中国社会科学院日本研究所外交研究室の呂燿東(リュー・ヤオドン)主任は、「日本はG7の一員として常に自分は西側の国だと認識している。しかも、日本は米国、英国、豪州との経済・軍事面での協力を強化している。日本がファイブアイズに加入して情報を共有したいと考えるのは必然であり、どちらの側に立つのかを明確にしたと言える」と分析した。

同氏はまた、「日本はアジア太平洋地域での影響力を強めている」と指摘。米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から米国が離脱した後、日本が主導して他の10カ国と環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を結んだことを挙げ、「これは約5億人の人口をカバーしており、加盟国の国内総生産(GDP)は世界全体の13%を占める。日本は経済面で主導権と発言力を獲得した」と指摘した。その上で、「日本がファイブアイズに加入すれば、事実上の6番目の目となり、この地域(アジア太平洋地域)における情報量が大幅に増加、(日本の)発言力も自然と高くなる」としている。

さらに、日本にとって今はファイブアイズに加入する最も良い時期だとも指摘。同氏は「新型コロナウイルスの影響で重要な戦略物資の中国依存が明らかになり、ファイブアイズとしては日本を加えることで戦略的な経済関係を拡大し、戦略物資を確保したい狙いがある」としたほか、ファイブアイズが日本の衛星情報や近海で集めている軍事情報にも注目していること、英国は欧州連合(EU)を離脱して欧州以外の国との連携を模索していること、米国も民主国家と「中国包囲網」を築こうとしていることもその理由に挙げた。

同氏は「茂木外相が最近英国を訪問したのは、貿易協定締結を進めるためだけでなく、南シナ海や香港問題についても話し合っており、その狙いは明確である。そして今、日本がファイブアイズへの加入を強く望んでいることは、政治的な意味合いが強い。これが実現するなら、日本とファイブアイズ各国は、経済や外交、安全の各方面での協力を強化することになる。東アジアの安全安定に不確実性をもたらすことになるため、注視して警戒すべきだ」と主張した。(翻訳・編集/山中)



【FRIDAY DIGITAL】黒井文太郎 8/21(金) 9:32配信

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UKUSAとの連携を意識する河野防衛相。その視線の先にあるものは?(提供:FRIDAYデジタル)

日本は、主要国ではおそらく突出してインテリジェンス(情報収集・分析)能力が弱い。なにせ専門の「対外情報機関」もない。

そんな日本が中国や北朝鮮の脅威に備えなければならない厳しい状況のなか、8月14日付「日本経済新聞」電子版が、河野太郎・防衛相の興味深いインタビュー記事を掲載した。

河野防衛相は、米英が主導する機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」との連携に意欲を示し、「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」と語ったのである。

◆ファイブ・アイズとは何か?

米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が共同で、安全保障にかかわる情報を共同で収集しようという協定がある。UKUSA協定という。

このUKUSA協定加盟5か国は、日本や他のNATO加盟国などとは一線を引いた深い情報共有を行っている。なにせ米英主体だから、その情報力は圧倒的だ。その5か国の情報共有の連携ぶりが、各国当局内やメディアなどでは通称で「ファイブ・アイズ」と呼ばれているのだ。

しかし、ファイブ・アイズという名称の協定はない。正式にはUKUSA協定だが、UKUSAよりはファイブ・アイズのほうが通りがいい。ちなみにこのファイブ・アイズは「5つの目で監視する」という意味ではなく、彼らがやり取りする機密情報が「5か国でのみ閲覧可」つまり5つの目にしか見せない「5アイズ・オンリー」だったことから来ているという。

◆5か国の意味するもの

では、なぜこの5か国なのか。これらの国々は、国際政治のなかできわめて強固な同盟関係にあるからだ。5か国はいずれも英語圏、すなわちアングロサクソン系という「近さ」がまずあるが、とくに米英の同盟は、単にNATOで結びついているだけでなく、両国同士が「特別の関係」とみなすほど深い。

UKUSA協定は、もともと第2次世界大戦中の米英の対ドイツ通信傍受作戦の枠組みを、終戦後に対ソ連・東欧に振り替えたものだった。UKUSAはUK+USA、すなわち「英米」協定という意味だが、その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。東西冷戦が地球規模に広がり、通信傍受も地球規模で行う必要性が高まったからである。

衛星通信が発達すると、ますます地球規模の通信傍受が重要になった。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはそれぞれ地理的に傍受に役立つ場所にあったため、冷戦期を通じて徐々に役割が増した。

ちなみにこの「UKUSA」、日本では専門家含めて「ウクサ」と読む人が多いが、米国情報機関の2010年の公式文書に「読み方はユークーサ」と明記されている。ただ、海外の報道機関や専門家は「ユーケーユーエスエー」協定と呼ぶことが多い。

もっとも、ファイブ・アイズ5か国は「平等」ではない。情報の世界は、同盟国といえどもギブ&テイクの世界である。貢献度に応じて上下関係が生じる。ファイブ・アイズでは米国が圧倒的に上位にあり、次に英国となる。他の3か国はその下になり、必ずしも米英レベルの機密情報を共有させてもらえるわけではない。

とくに、グローバルな通信が衛星通信から光ファイバー通信に移行してくると、海底ケーブルの陸揚げ拠点の重要性が増してきた。今でも電波傍受は重要ではあるが、それ以上に有線ケーブルの盗聴が重要になった。そこで基幹ケーブルが集まる米国の東西の海岸と、英国南西部が、地球規模の通信傍受工作でますます存在感を増している。

さらに通信傍受機関は、現在、かつてのアナログ電波の傍受だけではなく、デジタル情報の収集・分析に軸足を移している。電子メールや暗号化されたメッセージの盗聴、あるいは標的を絞ったハッキング工作、さらにはメタ・データの解析などだが、これはもう圧倒的に米国の技術が高い。

したがって、ファイブ・アイズといっても、加盟国内での情報格差はかなり大きくなっているのが現状なのだ。

UKUSA協定はもともと通信傍受工作の協定だから、参加するのは各国の通信傍受機関だった。前述したように、現在はますます米国の立場が突出しているが、その米国の担当部局は国防総省の通信傍受機関「国家安全保障局」(NSA)になる。

ファイブ・アイズは元来、NSAを司令塔に計5か国が情報共有して連携する枠組みだが、NSAはそれ以外にも同盟国の情報インフラを取り込むべく、ファイブ・アイズよりも連携レベルの低い多国間の協力の仕組みをいくつも作っている。

◆情報共有する多国間協定はいくつもある

たとえばファイブ・アイズにフランスやオランダなど欧州4か国を加えた「9アイズ」。その9アイズにさらにドイツやイタリアら5か国を加えた「14アイズ」などがある。また、ファイブ・アイズに韓国、タイ、シンガポール、インド、フランスが加わった「10アイズ」もある。

さらにそれ以外にも、NSAは個別にイスラエルや日本とも深く連携している。

機密情報のやりとりをめぐる組織は、各国が複雑に入り乱れているのだ。

日本で通信傍受を行っているのは防衛省情報本部だが、日本の情報活動としては例外的にその傍受能力は高く、ロシア、中国、北朝鮮などの電波信号を傍受し、分析し、データを蓄積している。通信傍受による情報は日本が持つ数少ない独自情報だが、これは情報のギブ&テイクで、米国とやり取りされている。日本はファイブ・アイズなどの多国間協定には参加していないが、日米間の情報協力は緊密に行われているのだ。

そんな日本が、ファイブ・アイズを中心とする多国間協力の枠組みに参加するアイデアは、主に3つの観点から出てきた。ひとつは、近年、ロシアや中国のサイバー・スパイ活動が強化されていることに対し、いわゆる西側の主要国が連携して対抗しようという話。2つめは、ファイブ・アイズの5か国を中心に、中国産の資源に頼らない経済的な多国間協力を進めていこうという話。そして3つめは、中国の勢力拡大を受けて、多国間で中国包囲網を作ろうという話だ。

◆対中国情報戦の連携を模索

中国包囲網にはすでに日米台だけでなく、オーストラリア、カナダ、東南アジア諸国、インド、英国、フランスなどが参画している。とくに英国は空母をアジアに常駐させる計画があるとも報じられており、今後、中国海軍と直接対峙する可能性がある。

こうした国々は、日本が持つ中国軍の情報が欲しい。日本は米国とは深い部分まで情報の連携を行っているが、それ以外の国々とは限定的だ。

ただし、ファイブ・アイズは強固な5か国だけの排他的枠組みなので、日本がその正式メンバーになることはまず難しい。協力は可能であるし、おそらく今後はその方向に向かうと思われるが、日本が持つ有効な情報で、他国に提供しても構わないものは、すでに米国と共有されているので、日本はそれほど強い立場に立てるわけでもない。

逆に、日本が対中国軍の局面で、情報分野での大きな利益が見込めるかというと、それもあまり期待できない。日本周辺の軍事情報であれば、やはり米国からの情報が圧倒的であり、ファイブ・アイズの他の国々はそれほど独自情報を持っていないからだ。

◆日本にとって、得なのか、損なのか

結局、日本が提供する情報と受け取る情報の損得バランスは、持ち出し過多になる可能性が高い。ただ、目的は中国軍の封じ込めなので、いずれにせよ中国包囲網の強化になれば、日本の安全保障にとってプラスとはいえるだろう。

それともう一点、大切なことがある。情報の世界での多国間協力の経験が乏しい日本にとって、ファイブ・アイズの「お友達」になること自体は、悪いことではない。

ファイブ・アイズ5か国は、扱う情報の機密度は限定的ではあるものの、今では通信傍受情報だけでなく、もっと全体的な情報共有を行っている。そこにオブザーバー的に参加できれば、こうした情報の世界と接する機会をより多く持つことになる。

ファイブ・アイズの末席に非公式に「参加させてもらった」としても、第一級の機密情報が簡単に手に入るとか、日本の情報能力が一気に高まるなどというほど、インテリジェンスの世界は甘くない。しかしそれでもいくらかは、通信傍受以外の情報活動のノウハウを吸収できるかもしれない。日本は、この分野ではまだ初級者だ。一歩ずつ進んでいくしかないだろう。

黒井文太郎:1963年、福島県いわき市生まれ。週刊誌編集者、月刊「軍事研究」特約記者、「ワールド・インテリジェンス」編集長などを経て軍事ジャーナリスト。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に紛争地を取材多数、雑誌、テレビなど各メディアで活躍中。著書・編著に「北朝鮮に備える軍事学」「日本の情報機関」「イスラムのテロリスト」(以上、講談社)「紛争勃発」「日本の防衛7つの論点」「自衛隊戦略白書」(以上、宝島社)、漫画原作に「満洲特務機関」「陸軍中野学校」(以上、扶桑社)など


執筆中



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