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 三菱スペースジェット、開発を事実上凍結へ 需要蒸発と完成度不足 
【 Aviation Wire】By Tadayuki YOSHIKAWA共有する:2020年10月22日 23:36 JST

 三菱重工業(7011)が、国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を事実上凍結する方向で調整していると、共同通信が10月22日に報じた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、需要回復が当面見込めないため。一方、Aviation Wireの取材では、設計変更を反映した最新の飛行試験10号機(登録記号JA26MJ)の完成度が低く、米国へ持ち込むレベルに達していないことがわかった。

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県営名古屋空港を離陸し初飛行する三菱スペースジェットの飛行試験10号機JA26MJ=20年3月18日 PHOTO: Tatsuyuki TAYAMA/Aviation Wire

 スペースジェットは、6度目の延期により2021年度以降の納入開始を予定していた。報道によると、顧客である航空会社の需要回復が当面見込めないことが、開発を事実上凍結を判断する要因。今後は航空需要の動向を見ながら、事業を再開させるかを検討するとしている。

 一方、関係者はAviation Wireの取材に対し、国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」取得時に使う飛行試験機である10号機の完成度が低いことを指摘。米ワシントン州にある米国の飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」へは、10号機を今春持ち込む計画だった。しかし、設計で目指している完成度に対して、「4-5割の完成度。米国には持っていけない」(関係者)と、計画通りに進んでいなかった。

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パリ航空ショー出展を終えル・ブルジェ空港を出発する三菱スペースジェットの飛行試験3号機=19年6月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 10号機は3月14日に初飛行。開発段階で発生した配線や電子機器などの設計変更が900カ所以上にのぼり、2016年以降に実施した機器の配置や配線、配管、空調ダクト、ワイヤーハーネス、システムなどの変更を反映した機体だ。しかしながら、今年5月の時点でも不具合を十分につぶしきった状態と言えず、今秋に入っても大幅な改善はみられなかった。

 背景には、6月に発表したスペースジェットの開発体制の縮小がある。2018年以降開発を主導してきたボンバルディア出身のアレックス・ベラミーCDO(最高開発責任者)が、6月30日付で退職。社内ではベラミー氏ら海外から招かれた開発陣と、従来から携わってきた社員の間で意見の食い違いがあったと証言する関係者もおり、規模を縮小した新体制で、懸案事項の改善が大きく前進することはなかったようだ。

 今年3月末時点の総受注は287機あるが、このうち確定受注は163機。初号機を受領予定である全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、2008年にローンチカスタマーとして確定発注15機とオプション10機の最大25機を発注し、日本航空(JAL/JL、9201)は2014年に32機すべてを確定発注している。

 三菱重工は、30日に開く事業計画説明会で、スペースジェットに言及するとみられる。



国産旅客機YSー11以来、半世紀ぶりの国産の旅客機事業として重要なプロジェクトである三菱重工のSpaceJet事業について、事業を凍結する方向で最終調整していると、10月23日中共同通信  同通信が報道した。

早速 開発を担当する三菱航空機の親会社の三菱重工は報道を否定した。

SpaceJet事業に関する一部報道について
2020-10-23

10月22日(木)以降、共同通信等の報道において、SpaceJet事業に関する報道がありましたが、これは当社及び当社子会社である三菱航空機株式会社(取締役社長:丹羽高興、本社:愛知県西春日井郡豊山町)が発表したものではありません。

SpaceJet事業については、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も踏まえ、引き続き開発スケジュールの精査を行うとともに、現下の当社グループを取り巻く厳しい状況を考慮した適正な規模の予算で開発を推進しております。こうした中で、様々な可能性を検討していることは事実ですが、開発の凍結を決定した事実はありません。

SpaceJet事業も含めた、当社グループの次期事業計画については、10月30日に公表予定の当社2020年度第2四半期決算とあわせて、お知らせする予定です。

以上

だが、すでに今年度の開発費を従来の半分程度に減らすなど開発体制を大幅に縮小していた国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」について、中共ウイルスの感染拡大の影響が長引き航空機需要の回復が見通せないことと、機体の安全性を証明する「型式証明」の取得に向けた作業は続けるものの、来年度以降の開発費をさらに削減する方針は事実かもしれない。

10月30日に発表する中長期の経営計画発表時に詳細は明らかにすることにしています。

これによって、「2021年度以降」としている初号機の納入の見通しも一層不透明な状況になった。

スペースジェットは国産初のジェット旅客機で、日本の航空機産業を育成するプロジェクトとして大きな期待が寄せられてきましたが、現実は甘くはなかった。既にボーイング旅客機の主要部品を製造してきた三菱重工ではあるが、機体の主要部とはいえ機体の一部分を製造するのと新しい旅客機を1から設計製造するのでは、越えられない溝がある。

MRJは当初予定だと2011年初飛行。2013年初号機をローンチカスタマー(最初のお客さん)であるANAに引き渡すことになっていた。しかし根本設計に問題があり、開発は遅れに遅れ、初飛行は2015年11月と当初予定より4年も遅れた。

その上に次々発覚する欠陥が相次ぎ日経テック社によれば計900件以上の設計変更・改良を行ったという。

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三菱重工業が「三菱スペースジェット」の開発費をさらに削減する方針を固めたことについて、梶山経済産業大臣は、23日の閣議の後の記者会見で「三菱重工業がグループ全体の厳しい状況を考慮した適正な規模で開発を推進し、新型コロナウイルスによる深刻な状況を踏まえ、スケジュールの精査を行っていると承知している」と述べたことから

そのうえで「YSー11以来、半世紀ぶりの国産の旅客機事業として重要なプロジェクトであり、引き続き、関係者の尽力に期待をしたい」と述べました。

中共同通信  同通信が報道した開発凍結については、事実ではないようです。


自動車評論家 国沢光宏のブログより

元三菱MRJ、今はスペースジェット、超残念なことになっちゃうかもしれません~


御存知の通り三菱MRJのプロジェクトはホンダジェットとほぼ同じ時期に実機の開発をスタートしている。機体サイズを除き、ホンダジェットとの違いは2つ。まず開発予算。ホンダジェットの場合、自動車メーカーらしく独自予算です。一方、さすが国策企業の三菱重工とあり、初期の開発予算1500億のウチ、企画段階から積算していくと3分の1くらいを経産省が負担してきた。

もう一つはMRJが機体だけの開発に対し、ホンダジェットはエンジンまで開発したこと。スケジュールだけれど、MRJは当初予定だと2011年初飛行。2013年初号機をローンチカスタマー(最初のお客さん)であるANAに引き渡すことになっていた。しかし設計に問題あったのだろう。開発は遅れに遅れ、初飛行は2015年11月と当初予定より4年も遅れてしまう。

初飛行には成功したものの、続く飛行テストで負荷を掛けていくと、カーボンコンポジットからアルミに変えた主翼の強度不足が判明! 言うまでも無く飛行機の主翼は重要な構成部品--というより飛行機そのものといってもよい。詳細は公表されていないものの、最初から大きな課題を背負い込む。2016年は順調かと思われていたが、年末に電子機器の問題出てしまう。

昨今の飛行機は当然ながらフライバイワイヤ。トラブルを起こした時のリカバリーも組み込まなければならない。日本側が耐空証明を取るための条件を十分理解していなかったらしく、システム変更を余儀なくされ2018年末の納期予定が2年伸びた。これが5回目の納期遅れ。何と当初予定の5年遅れです! このあたりからMRJの将来に暗雲が。

”同級生”であるホンダジェットについちゃ大きなトラブル無く計画通りに開発が進み、2010年12月に初飛行成功。試験飛行もほとんどトラブル出ないばかりか、最高巡航速度や上昇スピード、燃費に代表される予定していた性能を余裕でクリアしていく! 初めて飛行機を作ったメーカーが、トラブル無いばかりや性能も抜群ときた。当時、アメリカで驚きのニュースになったほど。

2015年12月、アメリカの型式証明取得! エンジンも2015年に製造証明(アメリカ航空局にとって23年ぶりの新規メーカー)を取得し、機体もエンジンも世界一厳しいアメリカ航空局のお墨付きを貰い顧客への引き渡しが始まる。2016年から世界各国の型式証明を次々と取得。その後の順調な販売状況は書くまでも無し! 何より大きなトラブル皆無! 名機になる予想しか出来ないです。

MRJでした。2018年に突如MRJから「スペースジェット」に名前が変わる! 開発の拠点も日本からアメリカへ。日本で開発するよりアメリカの方が良いという判断だ。奇しくもホンダは最初からアメリカを開発拠点に選んでいる。2020年3月にスペースジェットになって始めての機体(10号機)が初飛行。今まで出た問題点を全て潰し、型式認定に向け本格的に動き出したが‥‥。

新型コロナに巻き込まれ開発はストップ! しかも2013年当時なら世界性能の燃費に代表される魅力的なスペックを持っていたMRJながら、2022年(2021年以降の予定だったが新型コロナによりさらに遅延)で比較したら平均的なスペックでしかない。しかもライバルのエンブラエルの性能が素晴らしいし、信頼性だって高く、ブラジル製のため価格競争力だってある。

三菱造船製のアイーダプリマ。乗ってみたい

追い打ちを掛けるように新型コロナ後、航空需要は落ち込むと考えられてます。機体余っている状況。三菱重工も「もはやこれまで」と思ったのか、開発予算の半分をカットし、事実上開発を進められなくなる。このまま進めても、販売機数伸びなければ最低で5年は赤字続き。売ってしまえば撤退しても部品の供給を続けなければならない。「撤退」が一番ダメージ少ない?

三菱重工が今までに使った開発費は8000億円を超えると言われている。三菱造船、クルーズ船の建造からも撤退し2000億円規模の赤字を出した。どちらも乗り物好きからすれば「ぜひ国産で!」と思うけれど、見ていてあまりに杜撰。最初から経産省の援助を考えるトコロからクルマ業界的に「ダメでしょうね」。こうなると気になるのが三菱自動車の今後です。

MRJ、乗りたかったです。計画中止ならガックリ!

私(Ddog)の個人的見解ですが、現在の中共ウイルス患禍の経済縮小はあと1年程度で収まるはずです。20世紀初頭に世界を席巻したスペイン風邪は約二年で終息した。

スペイン風邪は1918年から1920年までの約2年間、新型ウイルスによるパンデミックが起こり、当時の世界人口の3割に当たる5億人が感染。そのうち2000万人~4500万人が死亡した。日本でも内地の総人口約5600万人のうち、0.8%強に当たる45万人が死亡した。単純にこの死亡率を現在の日本に当てはめると、120万人が死んだことになり、今回の中共ウイルス患禍から比べるともっと悲惨な状況であった。


そのことを考えれば、ここで断念したら元も子もなくなる。中共ウィルス患禍はSpaceJet事業の設計ミスと経験不足による開発事業の遅れのいい言い訳となって、かえってよかったかもしれない。

2021年の東京オリンピックが開催されやがて再び未曽有の日本旅行ブームが再びやってくると私は確信しています。


ゆえに、SpaceJet事業は一時的に縮小したとしても、絶対にあきらめてはだめだと思う。

追記

三菱重工業が30日に事業凍結を発表した国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)。日本にとってプロペラ機「YS-11」以来、半世紀ぶりとなる国産旅客機の開発で、官民挙げての一大プロジェクトだったが、安全性の不備による設計変更など誤算が続き、6度の納期延期という見通しの甘さを露呈した。デジタル化をてこにした「ものづくり大国」の復権を目指す、日本の産業界全体の信用を失墜させる事態につながりかねない。

 三菱重工の泉沢清次社長は30日のオンライン記者会見で、スペースジェット事業について「4千時間近い飛行試験で(事故につながりかねない)インシデントもなく、ある程度の飛行機ができた」と述べ、一定の成果に言及した。

 そのうえで、事業凍結の理由を「(国の安全認証の)型式証明を取るためには単純に技術ではなく、それを実行するノウハウや知見、経験が必要だが、その辺が欠けていたと反省している」とし、神妙な表情を見せた。

 日本の航空機産業は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)により開発が禁じられ、占領統治が終了した昭和27年に再び解禁されたが、この間に技術力が大きく後退。航空機の開発は参入障壁が高く、37年に試作機が初飛行した「YS-11」も型式証明の取得やサービス態勢の確立が遅れ、巨額の赤字を抱えて48年にわずか182機で生産中止に追い込まれた。

 一方で、航空機は部品数が多く、国産旅客機の開発に成功すれば、国内に部品メーカーなど下請け企業も含めた巨大なサプライチェーン(供給網)の構築が期待できる。雇用創出や技術革新といった波及効果は大きく、スペースジェットについても、政府が今年7月に閣議決定した成長戦略で「就航時期までに開発完了後の販売支援や量産機の安全運航維持の体制を整備する」と支援姿勢を明記した。経済活性化に資するとの狙いがあったからだ。

だが、今回の事業凍結でその夢も遠のいた。凍結による空白期間に人材や培った技術が散逸すれば、事業再開が困難となり、撤退が現実となりかねない。

 航空機製造は世界的に重要産業であり、三菱重工だけでなく、日本の製造業全体への評価に暗い影を落とす可能性もある。梶山弘志経済産業相は30日の記者会見で「どのようにお手伝いできるかを一緒に模索しないといけない」と述べた。汚名返上へ官民による戦略の再構築が欠かせない。(桑原雄尚)