image095
たいげい

海上自衛隊の最新鋭潜水艦SS-513 「たいげい」の命名・進水式が10月14日、三菱重工業神戸造船所で行われた。



「たいげい」は、これまでの「そうりゅう前期型」から大きな発展を遂げた。その肝となった技術が、「そうりゅう後期型:おうりゅう」以降搭載されたリチウムイオン電池だ。従来の鉛蓄電池に比べて2倍以上の重量容積あたりのエネルギー密度があり、航続距離や連続潜航時間が大幅に伸びた。

世界最強の通常動力型潜水艦「そうりゅう」その後期型「おうりゅう」よりどのくらいパワーアップしたかについて、再度まとめました。

来歴

同艦は中期防衛力整備計画(26中期防)に基づく平成29年度計画3000トン型潜水艦8128号艦(29SS)として、三菱重工業神戸造船所で2018年3月16日に起工され、2022年3月に海上自衛隊に引き渡される予定、配備先は未定。

海上自衛隊の潜水艦は、平成16年度予算での建造分より、2,900トン型(そうりゅう型)に移行した。これは先行する2,700トン型(おやしお型)をもとにした発展型で、特にスターリングエンジンによる非大気依存推進(AIP)システムを導入したことが注目された。同システムは高出力の発揮は望めないものの、シュノーケルを使用せずとも長期間潜航できることから、電池容量を温存できるようになり、従来よりもダイナミックな作戦行動を可能とするものと期待された。

「潜水艦用高効率電力貯蔵・供給システムの研究試作 研究開発の推進」
イメージ 1

潜水艦用蓄電池としてリチウムイオン蓄電池は優れた特性を備えており、潜水艦にとっては非常に望ましいものであった。当初はそうりゅう型5番艦SS-505「ずいりゅう」より搭載する予定であったが、低コストと安全性が確保できず 8番艦SS-508「せきりゅう」(23SS)からこれを導入するとみられたが、いずれも断念された。

結果、そうりゅう型11番艦SS-511「おうりゅう」からリチウムイオン電池は搭載され、本艦は12番艦SS-512「とうりゅう」に続くGSユアサが開発したリチウムイオン電池を世界で三番目の潜水艦となった。なお、当初よりリチウムイオン電池を搭載する潜水艦として計画されたものとしては、最初のクラスとなる。「おうりゅう」と比べ「たいげい」はより多くリチウムイオン電池を搭載したと思われるが、正確な数字は軍事機密である。
image039

海上自衛隊は潜水艦部隊を22隻体制に拡充する予定だが、試験艦1隻、練習艦2隻が別に加わり実質25隻体制になる予定だ。おやしお型のネームシップ1番鑑の「おやしお」と2番艦の「みちしお」はすでに練習潜水艦として運用されている。
 
ご存じの通り、たいげいは当初SS(通常動力型潜水艦)として就役するが、艦種変更時期については未定だが、試験潜水艦に艦種変更となり、ポスト3000トン型潜水艦や搭載兵器の開発に携わる。

そうりゅう型との違い

海自初の貫通型潜望鏡を搭載しない船体となり、89式長魚雷の後継である最新の18式長魚雷を装備する。軽量のTAS(曳航アレイ)が採用され、高性能化した。
また、潜水艦への女性自衛官配置制限の解除を受けて、居住区内に仕切り等を設けて女性用寝室を確保するとともに、シャワー室の通路にカーテンを設けるなど、女性自衛官の勤務に対応した艤装が行われている。
image096

船 体

全長84メートルと全幅9.1メートルは、そうりゅう型と同じだが、深さは10.4メートルとなり、そうりゅう型より0.1メートル大きい。
基準排水量については3000トン、そうりゅう型より50トン多い。水中排水量については公表されていないが、そうりゅう型4200トンに対し4500トン(推定)

潜水艦の水中航行性能および音響ステルス性能に大きく影響する船体形状は、各国海軍で最重要事項である。

近年の海自潜水艦では涙滴型の“はるしお’’型(7隻:1990~97年就役)に続く“おやしお”型(11隻:1998~2008年就役)で葉巻型に変更された。さらに最新の“そうりゅう’’型(12隻:2009~21年就役予定)でも葉巻型が採用されており、レーダーや通信機器などのマストおよび潜望鏡を収容するセイルは機械雑音や流体雑音を極力発生しないような形状になっている。

さらに、そうりゅう型では船尾の潜柁はX舵型が採用され、高い舵効が確認され、高い水中運動性を得た。また着底した際の損傷を防ぐ効果がある。

十字舵は針路制御用の垂直舵(縦舵)と姿勢制御用の水平舵(横舵)で構成されているが、Ⅹ舵はこれらを45度傾斜させて4枚の舵に両方(針路制御および姿勢制御)の機能を持たせた構成になっている。この結果、機動性や冗長性が優れるほか、接岸・着底・沈座の場合に艦が損傷する可能性が低くなるという利点がある。

操舵手が左右(針路制御)および上下(姿勢制御)と操作した結果を信号処理装置で4枚の舵角に変換するという手間はかかるが、利点の方が大きい


X舵は「たいげい」でも採用された。たいげい型はそうりゅう型より若干幅が広がったように見える。


image094
たいげい

たいげい型でもはまき型は継承されたが、船体構造は一新され浮架台が採用された。

これは諸外国の潜水艦で採用が進みつつある浮き甲板(フローティング・デッキ)と同様の構造により、低雑音化・耐衝撃特性向上を図るものである。

image077
進水直後
image078
艦艇番号を消す作業が行われた。

防衛装備庁艦艇装備研究所
では、音波吸収材や反射材の最適装備法等とともに「被探知防止・耐衝撃潜水艦構造の研究」として開発されており、平成19から23年度で試作、平成22から26度で試験が行われた。

建造開始後も本型に関する研究開発は行われており、各種駆動装置から発生する雑音を低減する新型の駆動装置を開発する「潜水艦用静粛型駆動システムの研究」(平成30年度から令和3年度で研究試作、令和3・4年度で試験)が行われている。

たいげいの後半建造艦には順次採用されていくと思われます。

推進系
 
第2次大戦後に原子力潜水艦が登場して潜航時間が大幅に延伸、水中速力も向上して、ディーゼル電気推進潜水艦の能力を大幅に超えることになった。しかし原子力潜水艦は、騒音が大きく容易に発見されやすい目標であった。ディーゼル電気推進機関を中心とした在来型潜水艦と呼ばれる潜水艦は、その時徴を生かしたチョークポイントで待ち伏せ運用がなされている。

近年は在来型潜水艦の推進系もディーゼル発電機、主蓄電池および電動機で推進器(スクリュー・プロペラ)を駆動するという単純な構成から大気(酸素)に依存しない非大気依存推進または大気独立推進(AIP:AirIndependentPropulsion)と呼ばれる方式、スターリング機関(StirlingEngine)による発電方式により潜航時間が従来の数日から数週間に延伸されている。

スターリング機関はわが国でもライセンス契約により輸入・製造、液体酸素貯蔵・供給装置など国産開発装置と組み合わせて‘‘そうりゆう”型1~10番艦に適用された。しかしスターリングAIP方式では水中速力は5ノット程度であり、高速力で移動する場合には従来どおり搭載している主蓄電池(鉛蓄電池)を使用する必要があった。このため主蓄電池を強化すればよいが、海上自衛隊では鉛蓄電池に替えて高能力のリチウム・イオン蓄電池が主蓄電池候補になり、さらに一歩進んで‘‘そうりゅう”型11番艦“おうりゆう”からはスターリング機関を廃止して、主蓄電池をリチウム・イオン蓄電池としディーゼル発電機と組み合わせるという構成が選択された。その結果、水中持続力や速力が大幅に向上することになった。リチウム・イオン蓄電池は、発電・充電方式としては、水上ではなく潜望鏡深度でのシュノーケルによる充電で、従来より高効率の方式が適用された。

たいげいでは、そうりゅうよりも高効率の
シュノーケルが採用された。

イメージ 32
将来の情勢に潜水艦が適正に対処するため、隠密性、残存性及び運用性の向上を企図し、小型・高出力化、静粛化を図ったスノーケル発電システムです。

“そうりゅう”型以降は、電動機として従来の直流電動機に替わって多くの利点がある交流電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。主蓄電池(直流電圧)で交流電動機を作動させるには直流交流変換装置が必要であるが、近年は電力用半導体による変換効率の高い装置が開発されている。

リチウム電池搭載潜水艦の推進器はスクリュー・プロペラ方式だが、水中でより高速航走雑音を低減するために羽根の形状にさまざまな工夫が凝らされてきた。おうりゅう以降は航走雑音低減のために新型スクリュー・プロペラに変更になった。

装 備

潜水艦には水上戦闘艦とは異なる各種装備が施されており、それぞれ将来に向けて能力向上が続けられている。

ソナー
イメージ 16
ソーナーからの信号を処理し、目標運動解析や戦闘指揮のリコメンドを行う。
イメージ 27

本艦のソナーは艦首に円筒アレイ(CA=cylindrical array)、艦側面に側面アレイ(FA=flank array)、艦尾に曳航アレイ(TAS=towed array sonar)、および艦首の上に取付ける音響逆探知装置(AIR:AcousticInterceptReceiver)からなる統合ソナー・システムを有している。


本艦の艦首ソナーは長距離探知に特化して、浅海域沿海部に最適化しているといわれる。特に浅海域沿海部は中国沿海や朝鮮半島沖合の岩だらけの海底地形を考慮しているとのこと。

艦首アレイはそうりゅう2番艦うんりゅう以降に搭載されたZQQ-7Bを改良したZQQ-8 統合ソナーが搭載される。ZQQ-8では大型化(開口拡大)するために艦首の形状に沿ったコンフォーマル化艦首の円筒アレイを艦首形状と一体化して吸音材一体面の音波受信器として感度向上し、曳航アレイは光ファイバー受波技術を適用して指向性を向上している。

艦側面の聴音アレイに光ファイバーソナーを採用し「音波による音の発生ではなく光の干渉作用を探知できる」といわれる。この形のソナーは電磁発信の探知にも効果がある。船体側面に沿ってアレイを長く配置して艦首の円筒アレイより低周波数の音に対応する。側面アレイでは吸音材と一体面とした受渡器の採用による開口拡大効果がある。

曳航アレイ(TAS)も同じく低周波数の感知用だが、曳航式ソナーアレイで長距離かつ全方向追尾を行う。曳航式アレイは、船体からの距離と指向性によって曳航船の水中放射雑音からの影響を軽減し、ソナーの受波器入口雑音レベルの抑制が期待できる。またアレイ長が艦船の規模によって制約されないことから、必要に応じて長くすることで低周波に対応できる。
探知方向が明確でなく航路を変針して測定する必要がある。開口拡大と光ファイバー受渡アレイ技術による指向性補償処理、艦内の信号処理部における複数異種アレイ(艦首/側面/曳航アレイ)からの探知情報の自動統合が行われる。反転捜索ソナーアレイ、ブロードバンド送信アレイも装備する。


そして異種ソナー間の探知情報を自動統合アルゴリズムの構築で統合化し、ソナーに関わる業務を大幅に自動化する。これには「次世代潜水艦用ソナーの研究」(2005~2009)、および「次世代潜水艦用ソナー・システム」(2010~2015)の研究成果が反映される。
各種ソナーの搭載で合成ソナー図が同艦の新型戦闘システムで実現し、標的の移動分析以外に発射解も示せるようになる。


また協同作戦する護衛艦からの送信音および目標からの反響音を受信することによる目標探知および目標位置特定が可能となるマルチスタティック運用が可能である。

潜望鏡
潜望鏡は非貫通式潜望鏡1型(英国タレス製CMO10型を三菱電機でライセンス生産)1本、を搭載する。
潜水艦の光学センサーである近年の潜望鏡は目視ばかりでなく組み込んだ可視光/赤外線撮像装置による目標視認のほか、レーザー測距装置による目標距離測定や電波機器(電波探知機、GPS受信機など)による電波情報収集可能な複合センサーと位置付けられて電子光学潜望鏡/電子光学マスト(photonics mast)と呼ばれている。光学系を中心とする従来型潜望鏡では、レンズやプリズムなどを含む光学経路を構成する全長10メートル超の円筒状構造物をセイルから耐圧船殻を貫通して船体内に導入する必要があった。

本艦では新しい形式の電子光学潜望鏡/電子光学マストセを採用、光学経路を船体内に導入せず、制御信号や得られた電子光学信号を伝送するケーブルのみを船体内に導入する。非貫通型潜望鏡を採用した。

「たいげい」型は船体強度に影響する貫通孔が小さく、そうりゅう型を上回る最大深度に達する。個人的予想では1000mを超えると思われます。

電波機器

隠密性が重要な潜水艦にとって水上で使用する電波機器の運用は限定的である。特に電波を編射する通信機やレーダーの運用には最新の注意が払われている。逆に水上艦や対潜哨戒機からのレーダーや通信電波などを探知する電波探知機は最重要電波機器であり、電波探知専用マストや電子光学潜望鏡/電子光学マストからの信号を処理して方位測定のはか電波周波数など各種情報を取得している。将来的にはマストの水上での被探知を避けた短時間の複数電波受信から重要情報を取得・解析可能だ。

レーダーは潜水艦が水上航行する場合に水上艦船や航路標識などを探知するのに使用されているが(‘‘そうりゅう”型以降ではZPS-6Fを搭載)戦闘場面で活用されることは少ない。

イメージ 23

武 器

本艦は魚雷発射管「HU-606」533mm魚雷発射管 6門を装備する

本艦では89式魚雷の後継機種として2018年に制式化された18式魚雷がはじめて搭載される。18式魚雷は防衛装備庁(旧防衛省技術研究本部)が開発した「高速長距離長時間航行可能」な魚雷である。開発名称G-RX6はG-RX5(12式短魚雷)に続くものである。

潜水艦用長魚雷(G-RX6)

イメージ 17

高性能な水上艦船及び潜水艦に対し、高度なTCCM機能※ を有し、深海域から浅海域までのいずれの海域においても探知、追尾及び命中性能に優れる潜水艦用長魚雷を開発中です。
※TCCM:Torpedo Counter Counter Measures(魚雷攻撃から母艦を防御するために魚雷を欺瞞或いは 妨害された際の対抗手段)

発射母艦から有線誘導され、アクティブ/パッシブ・ホーミングによって目標に接近する。
有線誘導も可能な新型システムは水素酸素組み合わせ式の推進機構でステルス化している。

イメージ 12

おとりと本当の標的をソナーで区別し、弾頭の爆発時間調整により深海、浅海それぞれの交戦に応じた効果を実現する。
攻撃対象には水上艦艇、および潜水艦。

囮装置をはじめとする魚雷防御手段などへの対応能力向上や、深海域のみならず音響環境が複雑となりやすい沿海・浅海域においても目標を探知・攻撃できることを目的としている。

目標の形状を識別し、囮との区別も行える音響画像センサーおよび、同様に囮識別に有効かつ最適タイミングでの起爆が可能なアクティブ磁気近接起爆装置が搭載される。

本魚雷の開発に当たり89式魚雷の部品を活用するとあり、動力機関も踏襲している。使用燃料は試験時にオットー燃料IIを採用している。

魚雷は、目標を直撃したときでけでなく、目標の近くを通った時にも爆発する必要がある、このため磁気起爆装置が付いている。これまでの起爆装置は目標の艦艇から生じる磁気を感知して爆発する仕組みだった。これに対し「アクテイブ磁気起爆装置」は、自らが磁気を出し目標の艦艇により磁場が変わることを感知して最適タイミングで起爆する装置。これで「18式魚雷」は正に一撃必殺の長魚雷となった。

image104
(防衛装備庁)アクテイブ磁気起爆装置を搭載する18式長魚雷の概念図。
平成31年度に開発費94億円が計上され、三菱重工が開発・製造を担当、初号機は2022年(令和4年)2月に納入される。
image106

18式長魚雷に搭載する「アクテイブ磁気起爆装置」。写真の黒い四角部分が磁気センサー。このセンサーは小さな囮/デコイなどは検知しないし、海底や海面からの残響などの影響を受けないので目標を確実に捕捉できる。

従来の主センサーに加えて目標探知距離の延伸を図る低周波パッシブ・センサー、目標の音響画像化方式を用いて目標の大きさ・形状の識別により魚雷防御手段を排除する画像センサー、さらに海面および海底面の距離検出による目標直下・直上検知を行なう境界面センサーから構成される複合センサー・モジュールが採用されている。


なお、散水上艦や敵対潜機から発射されて接近する魚雷を防御するために潜水艦魚雷防御システム(TCM:TorpedoCounterMeasures)が開発され、“そうりゅう’’型8番艦(2017年就役の‘‘せきりゅう”)から装備が開始されている。自走式デコイ(MOD:MObileDecoy)および発射機で構成されているTCMは魚雷防御に極めて重要であり、将来的にも装備が継続されるだろう。

海自の
TCMを検索できなかったが・・・

TCM-torpedo counter measure
image082
もしくは・・・
image084
ZARGANA - Torpedo Counter Measure System for Submarines
以上のような発射装置を装備している。

海上自衛隊潜水艦に装備されているミサイルは対艦型のみであり、それも魚雷発射管から発射される米海軍のハープーンUGM-84である。潜水艦発射型ハープーンは登場してから改良が適用されてはいるものの、亜音速で射距離が比較的短いため世界的な基準からはやや劣るとされている。したがって将来的には国産対艦ミサイルの潜水艦発射型が開発され、魚雷とは競合しない垂直発射型となるだろう。また陸上攻撃も可能な巡航ミサイル搭載については議論もあると思うが選択肢の一つだろう。

無人機
イメージ 29
近年は無人機器の開発が盛んであり、軍用に限らず無人航空機(UAV)、無人水上艇(USV)または無人水中艇(UUV)のような形態で運用されている。しかし潜水艦からUSV発進・運用の必要性は低いと考えられて世界的にも実例は見当たらないようであるが、
無人機との連携が考えられている。
イメージ 28

将来的にはUUVを従え、機雷の敷設/掃海母艦となる可能性がある。本艦が機雷を水中曳航する複数のUUV艦隊を誘導し、仮想敵沿岸地域に機雷を秘密裏にばら撒くことも可能である。また危険な機雷が敷設された海域における機雷探知や掃海をUUVに任せることも可能だろう。敵潜水艦の音響情報の収取等にUUVと連携もありうる。

イメージ 31

image101



戦闘システム C4ISTAR

装備されている上記のような各種装備品を効果的に運用して潜水艦としての能力を最大限に発揮するには、戦域情報システム(ネットワーク・システム)、戦術管制システムおよび武器管制システムで構成される戦闘システムが不可欠である。

防衛省のC4Iシステムとは、「Command/指揮」、「Control/統制」、「Communication/通信」、「Computer/コンピューター」、「Intelligence/情報」および「Interoperability/相互運用性」の略。これに関連した搭載サブシステムは次の通り。既述した統合ソナー・システムはこの中に含まれる。

これらにより「たいげい」型の交戦能力は一層高まることが期待される。すなわち、友軍の監視衛星情報、哨戒機情報、水上艦情報などが、リアルタイムまたはノン・リアルタイムで把握でき、自艦のセンサーで感知していない目標に対しても正確な攻撃が可能になる。

情報処理装置(TDBS:TargetDataBaseSeⅣer)

・[OYX-1]情報処理サブシステム

・[ZQX-12]潜水艦戦術状況表示装置(TDS=Tactical Display System)

・潜水艦情報管理システム

・基幹ネットワーク・システム

・[ZPS-6H ]対水上捜索用レーダー 1基

・多機能共通コンソールである潜水艦状況表示装置(MFICC:MultiFunctionIntelligence ControIConsole)

などで構成されている。

静粛性

イメージ 13

中国メディアの今日頭条は10月29日、「たいげい」について紹介する記事を掲載した。

記事は、これまでのそうりゅう型潜水艦は、すでに世界一静かな通常動力型潜水艦と言われていたと紹介。しかし、日本はこれに満足することなく、より静粛性を高めた潜水艦を開発したと伝えた。それが「たいげい型潜水艦」だ。
 「たいげい」は、リチウムイオン電池を使ったモーターで動くため、機械駆動音の発生がより小さくなったと紹介、極めて高い静粛性であることを伝えた。

中国海軍はそうりゅう前型「おやしお」が20年以上前から南シナ海で活動していたことに、まったくきがつかなかった。
中国海軍の対潜能力水準では「おやしお」すら探知することが不可能なうえに「そうりゅう」型の探知は絶望的である。その「そうりゅう」型を上回る静粛性を持つ「たいげい」型となれば、探知することを最初から諦めている嫌いがある。

運用思想

 ●リチウム電池搭載潜水艦の利点

 リチウム電池は、鉛蓄電池に比較すると3つの利点がある。その一つ目は、充電に伴う水素ガス発生の懸念がなく、実質上充電電流に制限がないことである。二つ目は、どんな大電流で放電しても、充電した電力量がほぼそのまま使用できることである。三つ目は、リチウム電池では電池の重量容積に対する充電容量が非常に大きいことである。これらは、リチウム電池を主蓄電池とした場合に大きな違いを生む。

 その違いの第1は、充電電流に制限がないため、常に最大の電流で充電することができ、充電時間が大幅に短縮できることである。これは充電中の被探知率を低下させる効果がある。また、充電電流に制限がないことは、鉛蓄電池では断念せぎるを得なかった高い充電量が達成可能であることも意味しており、充電容量が同一の鉛蓄電池に比較すると、数十パーセントも大きい充電容量を持つことと同じ効果があり、作戦能力が高くなる。

違いの第2は、高い速力を使用しても充電した電力をほぼそのまま使用できるため、高速力を使用した作戦を採用しやすいことである。

第3は、充電容量が大きいため、鉛蓄電池とAIPを合計した電力量をリチウム電池単独で持つようにリチウム電池搭載潜水艦を設計できるこ.とである。

 なお、リチウム潜水艦には2種類あることを認識しておく必要がある。 
そのひとつは‘‘おうりゅう”や”たいげい型”のようにAIPを搭載せずに、AIPと鉛電池の合計電力量をリチウム電池だけで保有するように設計された「日本型リチウム電池搭載潜水艦」、他のひとつはAIP潜水艦の鉛蓄電池を単にリチウム電池に置き換えただけの「ドイツ型リチウム電池搭載潜水艦」である。オーストラリアの次期潜水艦としてドイツが提案したのはこのタイプでありる。

 ●リチウム電池搭載潜水艦で可能となる作戦

艦艇等攻撃でリチウム電池搭載潜水艦が採用する作戦を考えてみる。

まず、在来の潜水艦やAIP潜水艦と同一のシュノーケル率を採用しても、作戦海域へ高速で進出することが可能となる。これは前述した高速力での電池消費量の改善、シュノーケル率の低下等の効果である。そして、作戦海域に入った時に充電量を満杯にしておけば、AIP潜水艦と同様にシュノーケルを実施しないまま待敵を行なえる。

また、AIP潜水艦では使用時間に限界のあるAIPをいつ使用するのか困難な判断を迫られるが、‘‘おうりゅう”ではそうした判断の必要はない。AIP潜水艦が酸素を使い切って充電が必要となる状況では同様に充電を行なうが、少し時間をかけて完全に充電すると、AIPの燃料と酸素を回復したのと同じこととなる。これはドイツ型では実現不可能である。情報を得て侍敵海域に進出する際にはAIP潜水艦よりも高い速力の使用が可能となり、敵を待ち受ける正面幅が広くなる。また、攻撃位置に着く場合にも高速使用が容易になり、攻撃成功率が高まる。そして、これらについても電池容量が大きい分ドイツ型よりも有利である。さらに、AIP潜水艦では回避で電池を使い切るとAIPの出力で可能な低速力で回避を継続せざるを得ないが、‘‘おうりゅう’’では高速使用時の電池消耗が抑えられる他、AIP相当分の電池残量も回避に使用できるため、高速回避を長く継続することができ、回避成功率がAIP潜水艦よりも高くなる。

 以上を要約すれば、“たいげい”では低いシュノーケル率と大きな蓄電容量によって高速を生かした作戦を行なうことができ、その成功率と残存率も高くなるのである。