【BUSINESS INSIDER】Dave Mosher 2021.01.13 10:30

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2010年2月19日、NASAのスペースシャトル「エンデバー」から宇宙飛行士が見た国際宇宙ステーション。NASA

・NASAは、10年以内に国際宇宙ステーション(ISS)を廃棄しようとしている。
NASAとアメリカ議会は、ISSが太平洋に落ちる前に、その代わりになるステーションを軌道上に乗せることを望んでいる。

・元NASA幹部によって設立されたスタートアップ、アクシオム・スペースは、全民間の前哨基地「アクステーション」の建設、打ち上げ、組み立てに取り組んでいる。

・NASAの元宇宙飛行士であり、アクシオム・スペースの事業開発担当バイス・プレジデントでもあるマイケル・ロペス=アレグリアによると、NASAが新しいステーションを利用するための費用は、ISSに毎年支出している35億ドルよりもはるかに少ないという。

・「それは経済的にも理にかなっている」とロペス=アレグリアはBusiness Insiderに語り、NASAは浮いた予算を月、火星、そしてその先の深宇宙探査に使うことができるとした。

国際宇宙ステーション(ISS)はサッカー場ほどの大きさの実験施設で、時速2万7000km以上の速さで地球の周りを回転している。この施設にはこれまで20年にわたって継続的に人間が居住してきたが、今、岐路に立たされている。

スペース(SpaceX)が多くの宇宙飛行士をISSに送り込むようになり、彼らは数多くの新しい科学実験を行い、ISSはついに最大限のポテンシャルを発揮できるようになった。一方で、ISSは老朽化が進んでおり、アメリカ議会は2030年までに宇宙飛行士を退去させ、施設を廃棄することを望んでいる。

政権交代によって退陣する予定のNASA長官、ジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)は、民間セクターを活用する代替案を提唱してきた。ISSが軌道を外れて太平洋の「宇宙船の墓場」に落ちる前に、民間企業がモジュールの建設、打ち上げ、テストを行って新たな施設を作るのを支援するというアイディアだ。

ワシントン・ポストによると、ブライデンスタイン長官は2020年初頭に上院の公聴会で、もしNASAが地球低軌道の基地から撤退して、その領域を他国に譲り渡せば、「それは悲劇になる」と語った

だが、急成長中の民間航空宇宙会社アクシオム・スペース(Axiom Space)の計画通りにすべてが進めば、そのような未来を回避し、地球低軌道上におけるアメリカの強力かつ継続的な存在感を示すことができる。その上、NASAは、新たな最先端の施設を利用しながら、年間数十億ドルを節約することができるだろう。

ISSの運用と維持のために「NASAはISSの維持管理に年間35億ドル(約3600億円)の予算を投じている。もちろん、共同で管理している4つの機関も支出している」と、アクシオムの事業開発担当バイス・プレジデントでNASAの元宇宙飛行士でもあるマイケル・ロペス=アレグリア(Michael López-Alegría)は、以前Business Insiderに語った。

「彼らはその予算のいくらかを、アルテミス計画あるいは次の政権が決める計画のもと、深宇宙探査に使いたいと考えている」

この35億ドルのうち、NASAが科学技術開発に投じているのは約5億ドル(約520億円)だけだ。

「例えば、ホテルを所有するのではなく、ホテルの一室を借りれば費用は安くなり、その少ないコストでこれまでと同じメリットを受け続けることができる」とロペス=アレグリアは言う。

「それは経済的にも理にかなっていることだ」

 ISSは廃棄しなくてはならない

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民間初となる宇宙ステーション「アクステーション」の完成予想図。Axiom Space

ISSの最初の部品であるロシアのモジュール「ザーリャ」は1998年に打ち上げられ、その2年後から、乗組員が施設での継続的な居住を開始した。

NASAはこの施設を軌道上で15年間使用する計画だったが、必要であれば30年は維持できると述べていた。さらに、NASAと他国のパートナーは、その期間をあと2年、つまり2030年までは延ばすことができると考えている。だが、ロペス=アレグリアは最終的にはISSを「廃棄すべきだということは間違いない」と言う。

「自然に朽ちていくに任せるわけにはいかない。もし制御できない状態になった場合、何かに損害を与える可能性が非常に高いからだ。我々は宇宙ステーション『ミール』でその恐怖を味わった。ISSはこれまで運がよかっただけだ」と彼は言う。

「ISSはミールよりもはるかに大きく、廃棄する際に大きな破片が地上にまで到達するかもしれない。慎重に行わなければ、最悪の事態になる可能性もある」

そうなる前に、アクシオム・スペースはNASAと締結した1億4000万ドル(約145億円)の契約に基づき、少なくとも1つは新しいモジュールをISSに取り付けたいと考えている。その後、同社はさらに多くのモジュールを打ち上げることを計画している。

「2024年に最初のモジュールをISSの前部に取り付け、その後、半年間隔でさらに2つのモジュールを取り付ける」とロペス=アレグリアは述べた。彼は民間企業だけで運用する宇宙船の最初の司令官になる準備もしている。「Ax-1」と呼ばれるこのミッションでは、2021年後半にスペースXの宇宙船「クルー・ドラゴン」で3人の有料の乗客をISSまで運ぶことを目指している。そしてその乗客の1人は俳優のトム・クルーズ(Tom Cruise)かもしれない。

ロペス=アレグリアは「5年後にはもうISSではなく、アクシオム・モジュールに飛ぶことになるだろう」と語った。


最終的に、アクシオム・スペースによる民間初の宇宙ステーション「アクステーション(AxStation)」にはISSから独立して機能する、独自の電力、水、ロボットアームなどのシステムを備える予定だ。同社は2028年から2030年の間にアクステーションをISSから切り離し、単独で軌道を周回させたいとしている。

「商業的に成功した実績のある後継機があれば、実現できるはずだ」とロペス=アレグリアは言う。「つまり、NASAと他の4つの宇宙機関はこれまでISSでやってきたことを新しいプラットフォームに移行して、ISSを廃棄できるということを意味する」

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アクシオム・スペースは、「アクステーション」を2028年までに組み立てることを計画している。Axiom Space

ただし「アクステーション」はISSと同様に多額の投資が必要で、実現が保証されているわけではない。これまで、トランプ政権はこのプロジェクトのために年間1億5000万ドル(約160億円)の予算を要求してきたが、議会に拒否されてきた。そして2020年には要求額から大幅に削減された約1700万ドル(約18億円)が割り当てられた。

しかし、アクシオム・スペースの最高技術責任者であるマット・オンドラー(Matt Ondler)によると、同社は政府からの資金援助に大きく依存しているわけではないという。NASAから受け取る1億4000万ドルの契約金についても、最初のモジュールの設計、建設、打ち上げから「データと教訓」を得るために利用されるとオンドラーはエアロスペース・アメリカに語っている

「アクステーションは、投資家からの出資金や我々のビジネスの収益から資金を得ているため、アクシオム・スペースがすべてを所有し、運営することになる」






(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
国際宇宙ステーション(ISS)については最初のモジュールが1998年に打ち上げられ、少なくとも2024年まで運用を継続することが、ISS参加極間で合意されているが、2030年まで運用は延長されそうだが、2030年代には廃棄が予定されている。

地球低軌道における2025年以降の有人宇宙活動の在り方に係るオプション整理に向けた検討状況

国際宇宙ステーション (ISS) に参加しているNASA(米)、ESA(欧)、ロスコスモス(露)、JAXA(日)、CSA(加)は
低軌道の宇宙空間利用は民間企業に託し、今後は地球と月との間(月周回軌道)を往来する月軌道プラットフォームゲートウェイ( Lunar Orbital Platform-Gateway, LOP-G)を建設し、月開発に活動に主軸を置くことになる。


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月周回有人拠点(Gateway)は、月面及び火星に向けた中継基地として、米国の提案のもと、ISSに参加する宇宙機関から構成された作業チームで概念検討が進められています。
質量は、国際宇宙ステーションの6~7分の1で、Gatewayの組立てフェーズでは、4名の宇宙飛行士により年間30日程度の滞在が想定されています。
本構想について、国際パートナーや産業界との協力による2028年の完成を目指し、米国及びカナダ政府が参加を表明しており、ヨーロッパ、日本、ロシアが参加に向けた検討を実施しています。
Gatewayでは、Near Rectilinear Halo Orbit (NRHO軌道)という軌道をとることにより、軌道面が常に地球を向き、地球との通信が常時確保されます。
Near Rectilinear Halo Orbitという軌道を利用することにより、地球からの到達エネルギーが月低軌道までの70%程度であり、輸送コストが比較的小さくなるという利点があります。
また、月の南極の可視時間が長く、南極探査の通信中継としても都合がよい軌道となっています。
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Gateway構想について、JAXAは、これまでにISSや有人宇宙活動、宇宙ステーション補給機「こうのとり」で培った技術を活用した参画を検討しています。
具体的には、居住機能及び補給での貢献を念頭に、Gatewayミニ居住棟(HALO)への機器の提供、欧州宇宙機関(ESA)、NASAとの連携による国際居住棟(I-HAB)のサブシステム(環境制御・生命維持装置)での参画、及び地球からGatewayへの物資補給には、宇宙ステーション補給機「こうのとり」を改良して現在開発中の「HTV-X」に、月飛行機能を追加して使用することを検討しています。
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国際宇宙探査の概要

ゲートウェイは2020年代中盤の建設を目指している。NASAを含む世界各国の14の宇宙機関でつくる国際宇宙探査協働グループ (ISECG)*「参加14機関: ASI(伊)、CNES(仏)、CNSA(中)、CSA(加)、CSIRO(豪)、 DLR(独)、ESA(欧)、ISRO(印)JAXA(日)、KARI(韓)、NASA(米)、Roscosmos(露)、 SSAU(ウクライナ)、 UKSA(英)」 は、月、火星及びそれ以遠の太陽系において人類の存在感を拡大していく上で、LOP-Gは決定的に重要である。

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6月7日に開かれたイベントで、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)を地球の低軌道での商業活動のハブとする案を発表した。長い間、NASAは、宇宙での民間事業を支援する拠点としてISSを位置づける計画を練っていた。

「国際宇宙ステーションの商用利用の解禁をお伝えするために、私たちはここに来ました」と、NASAの首席報道官Stephanie Schierholzはカンファレンスの口火を切った。20の企業とNASAの職員がステージに上がり、この新たな商用化の発表と、その機会や計画に関する討論を行った。

計画には、民間宇宙飛行士がアメリカの宇宙船を利用してISSを訪問し、滞在することを許可する内容も含まれている。また、「宇宙での製造」、マーケティング活動、医療研究「などなど」、ISSでの民間事業の活動を許可するとNASAは話していた。

NASAは、5つの項目からなる今回の計画は、ISSの政府や公共部門の利用を「妨げるものではなく」、民間の創造的な、また利益追求のためのさまざまな機会を支持するものだと明言している。NASAの全体的な目標は、NASAが、ISSと低軌道施設の数ある利用者のなかの「ひとつ」になることであり、それが納税者の利益につながると話している。

NASAの高官から今日(米時間6月7日)発表された、5つの内容からなる計画は次のとおりだ。

その1:NASAは、国際宇宙ステーション商用利用ポリシーを作成した。搭乗員の時間、物資の打ち上げと回収の手段を民間企業に販売することなどを含め、初回の必需品や資源の一部を提供する。

その2:民間宇宙飛行士は、早ければ2020年より、年に2回まで短期滞在ができる。ミッションは民間資金で賄われる商用宇宙飛行とし、アメリカの宇宙船(SpaceXのCrew Dragonなど、NASA有人飛行計画で認証されたもの)を使用すること。NASAは、生命の維持、搭乗必需品、保管スペース、データの価格を明確に示す。

その3:ISSのノード2 Harmonyモジュールの先端部分が、最初の商用目的に利用できる。NASAはこれを、今後の商用宇宙居住モジュールの第一歩と位置づけている。6月14日より募集を受け付け、今年度末までに最初の顧客を選定し、搭乗を許可する。

その4:NASAは、長期の商用需要を刺激するための計画を立て、まずは、とくに宇宙での製造と再生医療の研究から開始する。NASAは、6月15日までに白書の提出、7月28日までに企画書の提出を求める。

その5:NASAは、長期にわたる軌道滞在での長期的な商業活動に最低限必要な需要に関する新たな白書を発表する。

商用輸送の費用を下げることは、この計画全体にとって、きわめて重要であり、その問題は繰り返し訴えられてきた。それは、費用を始めとするさまざまな問題を解決し、単に商用化を許可するだけでなく、実行可能なものにするための手助けを、民間団体に呼びかけているように見える。もうひとつの計画は、次の10年、さらにその先に及ぶ長期にわたり、民間団体からのISSへの投資を呼び込み、ISSを民間宇宙ステーションに置き換える可能性を開くというものだ。それは最終的に、寿命による代替わりの問題の解決につながる。

補給ミッション中のSpaceXのDragonカプセルがISSを離れるところ。

TechCrunchのJon Shieberが、4月、ISS米国立共同研究施設の次席科学官Michael Roberts博士をインタビューした際に、宇宙ステーションの商用化について話を聞いている。

Roberts博士は、ISSで民間団体が事業を行えるようになる可能性は一定程度あると明言していた。これには、たとえば、関心の高い製薬業界の前臨床試験や薬物送達メカニズムといった分野の「基礎研究」も含まれる。製造業界では、無重力や真空という環境を利用して、現在の製造方法の改善を目指す民間企業をRoberts博士は挙げていた。

重要な細目としては、ISSで許されるマーケティング活動の範囲の拡大がある。ISSに搭乗してるNASAのクルーは、マーケティング活動に参加できる(とは言え、カメラの前でいかにもクルーらしく振る舞う程度だが)。民間宇宙飛行士の場合は、広告や宣伝が許される範囲が大幅に柔軟化されるため、さらに大きな仕事ができるようになる。理論的には、もしこれがディストピアの方向に流れたならば、レッドブルの超絶エクストリームな宣伝活動がもっと増えるということだ。

NASAによれば、現在も50の民間企業がISSで実験を行っているとのことだが、今回の発表は、その機会を、より望ましい形と規模の枠組みに、時間をかけて整備させてゆくことを意味している。