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【NHK】2021年3月25日 19時26分 

政府は、25日朝、北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射し、いずれも日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されると発表しました。去年3月以来、およそ1年ぶりとなった北朝鮮による弾道ミサイルの発射。このタイミングでなぜ。その狙いは何なのか。北朝鮮とアメリカや中国などをめぐる最近の国際情勢を踏まえ、分析しました。

政府によりますと、北朝鮮は、25日午前7時4分ごろと23分ごろ、北朝鮮の東岸のソンドク付近から1発ずつ、合わせて2発の弾道ミサイルを東方向に発射し、いずれも、およそ450キロ飛しょうしたと推定されるということです。

日本のEEZの外側に落下か

落下したのは、いずれも、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海と推定され、これまでに、航空機や船舶への被害などは確認されていないとしています。

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菅総理大臣は「去年3月29日以来、およそ1年ぶりのミサイル発射は、わが国と地域の平和、安全を脅かすものだ。国連の安保理決議に違反するものでもあり、厳重に抗議し強く非難する」と述べました。

そして、「これまで以上に警戒・監視を強める必要がありアメリカや韓国をはじめ、関係諸国と緊密に連携し、国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜く決意だ」と述べました。

北朝鮮の狙いは何なのか。専門家に聞きました。


元海将「訓練繰り返し 発射能力を高める目的か」 

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海上自衛隊の司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、「今回、発射した短距離弾道ミサイルでは日本は射程圏内に入らず、直接の脅威にはならない」とする一方、「北朝鮮にとっては訓練を繰り返すことで、発射能力を高める目的があったとみられる。今後、日本が射程圏内に入る中・長距離のミサイルの性能の向上に短距離ミサイルの技術が応用される可能性があり、注視することが必要だ」と指摘しています。

また、発射の狙いについて、香田さんは「バイデン政権が誕生し、アメリカが対北朝鮮政策の見直しを進める中、アメリカを過度に刺激しない範囲で自らの存在を意識させようという意図があるのではないか」としたうえで、「北朝鮮にとってはアメリカ本土が射程に入る大陸間弾道ミサイルの存在を示すことが重要だ。アメリカが対北朝鮮政策を固める前に、その能力を示したいと考える可能性は十分にある」と話し、ICBM=大陸間弾道ミサイルなど、より射程の長いミサイルを発射する可能性も否定できないと指摘しました。

平岩俊司教授「アメリカの反応 見たいという思いか」 

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北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、今回の発射に先立つ今月21日の巡航ミサイルとみられる2発の発射に触れて、「アメリカの反応が『国連決議違反ではないので特に問題はない』という判断だったのをみて、それでは決議違反にあたるような行為を行って、アメリカの反応を見たいという思いだったのだろう」という見方を示しました。

そのうえで、「トランプ前大統領とキム・ジョンウン総書記との間で、ICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験と核実験を控えるとの約束があったが、これを超えなければいいのかどうか、確認したいという思いもあったのだろう」と指摘しました。

そのうえで、「日米・米韓の『2プラス2』が終わり、米中の対話も終わって、今度は日米韓の安全保障担当の高官協議が予定されている。この時期に北朝鮮の姿勢を示すことに意味があったのだろう。今後の日米韓の安全保障担当の高官協議や、日米首脳会談の結果を見て、北朝鮮は次の対応を考えることになると思う」と述べました。

「韓国と日本を防衛する決意 揺るがず」米インド太平洋軍 

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アメリカは北朝鮮による発射を受けてインド太平洋軍の報道官が声明を発表しました。
声明では「北朝鮮のミサイル発射を認識している。状況を注視するとともに同盟国や友好国と緊密に協議している。こうした行動は北朝鮮の違法な兵器開発が近隣国や国際社会にもたらす脅威を示している。韓国と日本を防衛するアメリカの決意は揺るがない」としています。

北朝鮮 おととしは25発 去年は8発 

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北朝鮮による弾道ミサイル発射に関する最近の動きです。

おととしは、5月から11月にかけて短距離弾道ミサイルなど合わせて25発を発射し、このうち10月の発射について北朝鮮はSLBM=潜水艦発射弾道ミサイル「北極星3型」と発表しました。

このときは、日本のEEZ=排他的経済水域内に落下したとみられています。

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去年は、3月に短距離弾道ミサイルなどを合わせて8発発射し、このとき1回の発射で2発ずつを短い間隔で発射したことから、連射能力の向上を図ったものとみられていました。

これ以降は、弾道ミサイルの発射は確認されていませんが、去年4月には日本海に向けて、短距離の巡航ミサイルとみられる数発を発射していました。

最近の米朝関係 

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北朝鮮はアメリカのトランプ前政権と3回にわたって首脳会談を行いましたが、非核化を巡る立場の隔たりは埋まりませんでした。

おととし10月にはスウェーデンで米朝の実務者協議が行われましたが、北朝鮮はアメリカの姿勢に変化がないとして、「協議は決裂した」と主張し、その後、具体的な協議の進展はみられないままです。

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キム・ジョンウン(金正恩)総書記はことし1月の朝鮮労働党大会でアメリカを「最大の敵」と呼んでバイデン政権を念頭に対決姿勢を示しました。ただ、キム総書記は「新たな米朝関係を樹立するかぎは、アメリカが敵視政策を撤回することだ」とも述べ、対話に含みを持たせました。

3月に入ると、キム総書記の妹、ヨジョン(金与正)氏がアメリカ軍と韓国軍による合同軍事演習に反発する談話を発表し、バイデン政権をけん制していました。

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一方、バイデン政権は先月から北朝鮮との接触を試みていると明らかにしていますが、これに対し北朝鮮外務省のチェ・ソニ第1次官は「敵視政策を撤回しないかぎり、無視する」と談話を出し、反発していました。

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北朝鮮政策の見直し進めるバイデン政権

アメリカのバイデン政権は現在、対北朝鮮政策の見直しを進めていて、今月の日本や韓国との外務・防衛の閣僚協議に加え、来週後半には両国の安全保障問題担当の当局者を招いて協議するとしています。

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政府高官は先に北朝鮮が巡航ミサイルとみられる2発を発射したことが明らかになった際には「弾道ミサイルを制限する国連安保理決議の制裁の対象にはなっていないものだ。対話の扉を閉じるものではない」と述べ、外交を通じて関与していく姿勢を示していました。

アメリカ政府は現時点で今回、発射されたミサイルが弾道ミサイルかどうかの認識を明らかにしていませんが、弾道ミサイルと断定した場合はバイデン政権では初めてです。

弾道ミサイルの発射は国連安保理の決議違反で、バイデン政権としても対応を迫られる可能性があります。

北朝鮮のミサイル発射を巡っては、トランプ前政権がアメリカ本土に届くICBM=大陸間弾道ミサイル級の発射実験を強くけん制する一方、短距離のミサイルは事実上、問題視せずに厳しい対応はとらず、日米の間で温度差も指摘されていました。

バイデン政権は近く対北朝鮮政策の見直しを終える考えですが、同盟国との連携を重視する方針を強調していて、北朝鮮による発射を受けて今後どのような姿勢を示すかも焦点になります。

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2019年10月1日、中国建国70周年記念の軍事パレードで披露された極超音速兵器DF-17(新華社/共同イメージズ「新華社」)

 【nippon.com】能勢 伸之 2020.08.31

突然の辞任発表となった会見で安倍首相は「わが国のまさに近くに核開発を進め、日本を射程に収めるミサイルの開発を進めている国がある。そうした国からしっかりと日本を守り抜いていかなければならない」とミサイル防衛について力説した。この背景には日本を取り巻く東アジアの急速な新型ミサイル開発の進展がある。ことに現状では迎撃不可能とも言われる極超音速ミサイルの出現は異次元の脅威となっている。

自民党防衛族が露わにした危機感

日本の弾道ミサイル防衛を24時間365日態勢にするために秋田県と山口県へ配備する予定だった地上配備型弾道ミサイル迎撃システム、イージス・アショアの「配備のプロセスを停止する」と河野防衛相が意向を表明したのは2020年6月15日のこと。そのニュースが日本の防衛関係者に衝撃を与えたのは記憶に新しいところ。

この河野防衛相の「配備停止」の意向を受けて安倍首相は18日、会見で「安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、(中略)速やかに実行に移していきたい」と発言。そして6月25日、河野防衛相から「イージス・アショアの秋田、山口配備断念」が正式に発表された。

政府方針を受けて6月30日、与党・自民党の安全保障調査会の下に「ミサイル防衛に関する検討チーム」が発足し、「ミサイル防衛に関する検討チームの設立について」という文書が配布された。
しかし、驚くべきことに同文書には、イージス・アショアの配備停止の原因となったブースター落下問題に関わる文言はなく、むしろ「我が国を取り巻く安全保障環境は、(イージス・アショア導入が閣議決定された=編集部注)2017年当時より厳しさと不確実性を増している」と周辺情勢の悪化を強調。「各国は従来のミサイル防衛システムを突破するようなゲームチェンジャー(状況を一変させるようなもの=編集部注)となりうる新しいタイプのミサイルの開発を進めている」と危機感を露わにしたのである。

2019年に激変した日本周辺のミサイル情勢

自民党の文書に表れたこの危機感の背景には一体、何があるのか。実は2019年に日本を取り巻くミサイルの脅威が飛躍的に増大していたのである。

陸上自衛隊のイージス・アショアは弾道ミサイル迎撃専用の装備だ。弾道ミサイルはロケットで打ち上げ、噴射終了後、放物線を描いて標的の上に落ちる。したがって、レーダー等の高性能センサーで飛翔途中まで捕捉・追尾し、そのデータを高速コンピューターで処理すれば、弾道ミサイルの未来位置を予測でき、その軌道で迎撃する。これが弾道ミサイル防衛の前提だ。

ところが2019年5月、7月、8月に北朝鮮が試験発射したKN-23型短距離弾道ミサイルは、防衛省によれば、①上昇時の機動、②低空軌道によるレーダー回避、③ステルス性が高く、小さいレーダー反射、④終末段階で機動(軌道を変更)するロシアの短距離弾道ミサイル、イスカンデルと外形上の類似点があるという。防衛省が指摘しているのは、露イスカンデル・システムで発射可能な9M723短距離弾道ミサイルのことだろう。

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2019年7月25日に発射された北朝鮮の新型戦術誘導兵器(KN-23型短距離弾道ミサイル)朝鮮通信=共同

さらに防衛省は、北朝鮮自ら「容易ではないであろう(中略)低高度滑空跳躍型飛行軌道」と発表したことに注目し、ミサイル防衛網を突破することを企図していると分析した(防衛省「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」2020年4月)。

北朝鮮のKN-23型短距離弾道ミサイルの推定射程距離は、日本に届き難い射程とはいえ、北朝鮮は日本のミサイル防衛網の突破が可能な不規則軌道のミサイルを開発しているというのだ。

加速するロシアと中国の極超音速兵器開発

そればかりではない。19年8月2日には米露の間で締結されていたINF条約が失効した。INF条約は米露両国が核と非核を問わず、射程距離500~5500kmの地上発射型弾道ミサイルと巡航ミサイルの開発・生産・配備を禁止した条約で、日本にとっては、旧ソ連及びロシアが日本を射程とする地上発射弾道ミサイルや、巡航ミサイルを削減する役割を果たしてきた。このINF条約が失効したことによる影響は大きい。

米国トランプ政権がINF条約からの半年後の離脱を表明したのは、19年2月1日のこと。その主な理由は二つ。➀ロシアのSSC-08巡航ミサイルの射程がINF条約違反の疑いがあると米国側が見なしたこと、②INF条約に加盟していない中国が大量の地上発射INF射程兵器を保有していることだった。

一方、ロシア側は米国の離脱表明を受け、プーチン大統領が射程距離1600km以上の海洋発射型巡航ミサイル、カリブルNKの地上発射型と地上発射型極(ごく)超音速ミサイルを開発することを承認した。これにより弾道ミサイルだけでなく、将来、日本を射程としうる巡航ミサイルも登場する可能性が否定できなくなった。

さらに10月1日、中国の建国70周年を祝う国慶節において、過去最大規模となる軍事パレードで推定射程距離1600~2400km、ミサイル防衛突破を意図したとみられるDF-17極超音速滑空兵器の自走発射機x16輌が披露された。DF-17は既に配備しているとの見方もある。この射程ではグアムやハワイには到達不可能だが、日本を射程とするには十分だ。

中国の極超音速ミサイルは戦略核システムの一つ

米戦略コマンドはDF-17を「戦略“核”システム」の一つと分類している。中国のメディアによると、DF-17ミサイルの弾頭部のHGV(極超音速滑空兵器)は、最高到達高度が60kmとも100km程度とも言われ、到達最高高度からの降下後の滑空高度は60km以下で、イージス・アショアで使用されるSM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルの推定最低迎撃高度70kmを下回る。しかも、DF-17のHGVは極超音速で機動するため、SM-3ブロックⅡA迎撃ミサイルによる捕捉・迎撃は容易ではない。

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「弾道ミサイルと極超音速ミサイルの軌道の比較」米国会計検査院(GAO)の資料より

ロシアは既にTu-22M3爆撃機やMiG-31戦闘機の改造機に搭載可能なキンジャール極超音速ミサイル、軍艦や潜水艦に搭載するツィルコン極超音速ミサイル、SS-19大陸間弾道ミサイルに搭載された極超音速滑空兵器アヴァンガルドを開発、または配備している。 

前述の自民党の「ミサイル防衛に関する検討チームの設立について」には、「中国やロシアなどは極超音速兵器の開発を進めており、北朝鮮も通常の弾道ミサイルよりも低空で飛翔し、変則的な軌道で飛翔可能とみられるミサイルの発射実験を行っている。(中略)従来のミサイル防衛で念頭に置かれていた弾道ミサイルのみならず、極超音速の巡航ミサイルといった新たな経空脅威への対応も喫緊の問題となっている」という文言があり、事態を深刻に捉えていることが透けて見える。


弾頭に極超音速滑空体アヴァンガルドを搭載したUR-100N(SS-19)ICBM発射試験とCG画像 「YouTubeロシア国防省公式チャンネルの映像より」「極超音速兵器」とは何か

では、この中国とロシアが開発を進めている「極(ごく)超音速兵器」とはどんな兵器なのだろうか。極超音速とはマッハ5を超える速度のこと。極超音速兵器はマッハ5を超える速度で飛翔し、弾道ミサイルのような単純な放物線ではなく、不規則に機動するミサイルのことで、現時点では大まかに、「極超音速滑空体」と「極超音速巡航ミサイル」の2種類に大別される。

「極超音速滑空体」は弾道ミサイルと同様、ロケットで打ち上げられ、噴射終了後、切り離された先端部は噴射しないが、爆弾を内蔵し、極超音速で滑空するグライダー(滑空機)となる。グライダーなので機動が可能。単純な放物線を描くのではなく、軌道も不規則に変えられる。したがってセンサーで追尾しても、未来位置を予測することは極めて困難になると予想される。

一方、「極超音速巡航ミサイル」は一般的に、スクラムジェット・エンジン等で極超音速を維持しながら、軌道を変えることができるため、こちらも未来位置の予測が難しく、従来の弾道ミサイル防衛のシステムでは迎撃が困難だ。

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極超音速兵器の開発の動向を解説した「先端技術の開発動向(極超音速兵器)」(防衛省HP「ミサイル防衛について」)より

つまり、北朝鮮の弾道ミサイル対処をにらんで日本の弾道ミサイル防衛の中核となるはずだったイージス・アショアのシステム構成は、2018年までに決定したのだが、北朝鮮が開発中のミサイル防衛網突破を目論む不規則弾道ミサイルや、ロシアと中国が配備する極超音速兵器の登場により、日本を取り巻くミサイル情勢はそのわずか1年後にイージス・アショアでは対応が困難なほどに進化してしまったということだ。

米国の新システムとの連携を視野に入れた動き

この状況を踏まえ、自民党のプロジェクト・チームが1カ月余りの論議を経て8月4日、政府に提出した「国民を守るための抑止力向上に関する提言」には、「(1)イージス・アショア代替機能の確保、(2)極超音速兵器や無人機のスウォーム飛行等、経空脅威の増大・多様化に対応するため、地上レーダーや対空ミサイルの能力向上等の更なる推進、米国の統合防空ミサイル防衛(IAMD)との連携確保、極超音速兵器などの探知・追尾のため、低軌道衛星コンステレーション(多数個の人工衛星を協調動作させるシステム=編集部注)や滞空型無人機の活用」などが盛り込まれた。

イージス・アショアの代替機能について具体的なイメージが浮かぶ記述はなかったが、弾道ミサイルを捕捉する現在の静止衛星軌道の米早期警戒衛星システムではなく、弾道ミサイルよりも低い高度で軌道を変えながら飛翔する極超音速ミサイルを捕捉・追尾するセンサーとして、大量の小型衛星から成る「低軌道衛星コンステレーション」の検討が明記されたのは注目される。米国が極超音速ミサイルを捕捉・追尾するための新しい早期警戒衛星システムとして、HBTSS(極超音速及び弾道追尾宇宙センサー)計画等を進めているのをにらんだものかもしれない。

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米国が開発中の極超音速ミサイルを補足・追尾するための早期警戒衛星システム、HBTSS(極超音速・弾道追尾宇宙センサー)計画のイメージ図 Source : Northrop Grumman

再浮上した敵基地攻撃能力の保持

低軌道衛星コンステレーションで極超音速ミサイルを捕捉・追尾できれば、極超音速ミサイルの迎撃に資するだけでなく、ミサイル攻撃からの避難の予測、どこから発射されたか、誰が発射したかを知る一助となるかもしれない。それが分かるようになったら、どうするのか。自民党の提言には気になる文言がある。
「憲法の範囲内で、(中略)専守防衛の考え方の下、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上」という一文だ。

自民党はこれまでも敵基地攻撃能力の保有を議論しているが、政府は、日本は専守防衛の「盾」に徹し、打撃の「矛」は米軍に委ねるとの役割分担のもと、保有してこなかった。国家安全保障会議は現在、この与党の方針を受けて論議を重ね、外交・防衛の基本方針となる「国家安全保障戦略」の改定や、防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」などの見直しも進めているが、政府の方針は20年9月末にも示される見通しだ。

はたして東アジアを取り巻く急速なミサイルの脅威の高まりに対して、どのような方針を示すのか。また、極超音速ミサイル対策はもちろん、「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力」についてもどう対応するのか、注目される。

能勢 伸之NOSE Nobuyuki経歴・執筆一覧を見る
軍事ジャーナリスト。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書に『ミサイル防衛』(新潮新書)、『東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか』(PHP新書)、『検証 日本着弾』(共著)など。


2019年12月28日

防衛省は2020年度から、北朝鮮が弾道ミサイルの性能を上げていることに対応するため、新たな迎撃システムの研究に着手する。陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を複数年かけ迎撃能力が備わるように改良する。着弾前に急上昇する変則軌道の新型弾道ミサイルに対応できるとみている。

北朝鮮は19年に短距離弾道ミサイルを含む飛翔(ひしょう)体を計13回発射した。防衛省の分析では少なくとも4種類の新型ミサイルが含まれていた。同年末に朝鮮労働党中央委員会総会を開き、凍結していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を含む核・ミサイル実験の再開も示唆した。

防衛省が改良を計画する中SAMシステムは敵の戦闘機や巡航ミサイルを撃ち落とす役割を担うが、現時点で弾道ミサイルの迎撃能力はない。20年度にも低空を高速度で飛ぶミサイルの迎撃能力を備えた中SAMの改良版を沖縄県の陸上自衛隊の部隊に配備する予定だ。

防衛省はこれを再改良する研究を20年度に始める。中SAMの誘導弾や射撃管制装置を改修し弾道ミサイルの軌道の予測能力を高める。北朝鮮の新型ミサイルの特徴の一つである着弾直前に急上昇する変則軌道に対応し、上昇直前に迎撃することを想定する。研究期間は3年程度を見込む。

日本の現在のミサイル迎撃体制は海上自衛隊のイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」と航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の2段構えだ。低高度や変則軌道のミサイルには対応が難しいとされる。

世界ではミサイルの開発競争が激しくなり、中国やロシアは超高速で飛来して軌道も複雑な「極超音速滑空ミサイル」を開発している。日本の今の迎撃体制は突破されかねない。河野太郎防衛相は「脅威は上がってきている。ミサイル防衛能力をしっかり整備したい」と強調する。


北朝鮮や中露は極超音速ミサイルや軌道も複雑な「極超音速滑空ミサイル」を開発している。日本の今の迎撃体制は突破されかねない。

日本の現在のミサイル迎撃体制は海上自衛隊のイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」と航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の2段構えだ。低高度や変則軌道のミサイルには対応が難しいとされる。

防衛省は北朝鮮やロシアの変則軌道のミサイルや中国の極超音速ミサイルを迎撃する研究は急ピッチにに開発研究している。

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 ATLA 高高度迎撃用飛しょう体(イメージ図) 
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防衛省は2014年度より「高高度迎撃用飛しょう体技術の研究」が開始され2020年に一旦終了し新たに2020年度から、北朝鮮が弾道ミサイルの性能を上げていることに対応するため、新たな迎撃システムの研究に着手した。

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陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を複数年かけ迎撃能力が備わるように改良中である。

現時点では対応は難しいが、円を描く弾道弾とは違い変則軌道の新型弾道ミサイルに対応できる。

北朝鮮は19年に短距離弾道ミサイルを含む飛翔体を計13回発射したが、トランプ政権下大人しくなったが、バイデン政権となりまたぞろ動きだした。

防衛省が改良を計画する中SAMシステムは敵の戦闘機や巡航ミサイルを撃ち落とす役割を担っていたが、現時点で弾道ミサイルの迎撃能力はない。

防衛省はこれを再改良する研究を20年度に始める。中SAMの誘導弾や射撃管制装置を改修し弾道ミサイルの軌道の予測能力を高める。北朝鮮の新型ミサイルの特徴の一つである着弾直前に急上昇する変則軌道に対応し、上昇直前に迎撃することを想定する。研究期間は3年2022年を見込む。

【追記】 2021.04.04



研究開発成果 No7 高高度迎撃用飛しょう体技術の研究 
航空装備研究所 誘導技術研究部

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