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タグ:国際経済


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おっと、茂木君はうっかりあせってしまったようだ。
【ダナン=田辺裕晶】環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国は9日の閣僚会合で、米国離脱を受けた新協定について大筋合意した。米国の復帰まで協定の効力を棚上げする「凍結」項目の絞り込みが決着、10日の首脳会合で報告して正式に発表する。

共同議長を務めた茂木敏充経済再生担当相は9日夜、記者団に「アジア太平洋地域で、自由で公正なルールをつくる参加国の共通した決意の表れが難しい課題の克服につながった」と強調。「11カ国はできるだけ早期に発効させたいとの思いを持っている」と述べた。合意を受け、TPPの名称を変更し、10日に公表することも明らかにした。

9日昼の閣僚会合では、日本が新協定案と凍結項目のリストを提示したが、凍結項目の選定で合意できなかった。このため、首席交渉官による折衝に加え茂木氏も各国閣僚との個別会談で説得を図り、再度開いた夜の閣僚会合で決着した。

10日に発表予定の合意内容では、当初、50項目程度あった各国からの凍結要望は大幅に絞り込まれたもよう。米国の強い要望で盛り込んだ医薬品データの保護期間を実質8年間にする規定や、特許期間の延長措置などが対象になる。

一方、ベトナムが難色を示す繊維製品の関税撤廃・削減対象を厳しく制限する規定や、企業と進出先国との紛争解決手続きなど協定の自由化水準を著しく押し下げかねない項目でも凍結要望が出ていた。日本はこうした要望の取り下げを求めたが、合意は全会一致が原則で調整が難航した。

各国は大筋合意発表後、条文の法的整合性などを確認し、署名式を行う予定。12カ国が現協定に署名したのは2016年2月4日だが、今回は日程を早めるよう求める声があり、式典を来年1月ごろ東京で実施する案が浮上している。
カナダが合意していないと反対。今回の合意は一旦幻へ。

TPP首脳合意持ち越し
【ロイター】2017年11月10日 / 21:20 

 【ダナン共同(ベトナム中部)】米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国は10日、ベトナム中部ダナンで予定していた首脳会合を開けなかった。慎重派だったカナダが土壇場で異論を唱え、首脳間の大筋合意は持ち越された。交渉筋によると、11日までのアジア太平洋経済協力会議(APEC)期間中に開くめどは立っていない。トランプ米政権の離脱で漂流したTPPは実現に向かうはずだったが、今回は首脳間の大筋合意が見送られる可能性も出てきた。

日本政府は閣僚会合での仕切り直しなどによる打開を探っている。

<11/11 9:35追記>おっ!カナダも、大筋合意に達したらしい。
TPP=環太平洋パートナーシップ協定の参加11か国による閣僚会合に参加しているカナダの閣僚が10日、「大筋合意していない」とツイッターに書き込んだことについて、カナダのメディアは、その後、焦点となっていた労働条件の改善などをめぐって一致し、大筋合意に達したと伝えています。
カナダのシャンパーニュ国際貿易相はきのう、アメリカを除いてTPPを発効させることについて「大筋合意はしていない」とツイッターに書き込みました。

カナダメディアによりますと、最低賃金や安全基準の導入など労働環境の改善について一部の国が受け入れないとしたため、カナダとしては支持できないという姿勢を明確にしたとしています。

しかし、その後、反対していた国が譲歩したため、カナダとしても大筋合意に達したとしています。

シャンパーニュ国際貿易相は現地でカナダの記者団に対して「カナダにとってよりよい内容となった。21世紀の通商は前のままであってはならない」と述べたということです。

カナダは11日、トルドー首相がベトナムのダナンで記者会見を行う予定で、その発言が注目されます。

わたくしは、TPP賛成派です。トランプ大統領のアジア歴訪で、中国はトランプのディールに何も乗ってこなかったように見える。中国は米国をAIIBや一帯一路に組み込もとしたが、大型商談を渡した以外結局何も決まらなかった。トランプ大統領は、安倍首相が提唱する インド太平洋戦略で一帯一路に対抗する方針に決めたと思う。

このタイミングで米国抜きのTPP合意はむしろ望ましいと思っている。

未だに、TPPは国際金融資本の陰謀だとかまことしやかに言う人達が多くて困る。
一番失望したのはあの聡明な三橋貴明氏がTPP反対派側でいることだ。
確かに反グローバリズム的考え方から行けば、「対中安全保障が~」などと言っている私のような人間は、根本から間違えているように思えるのでしょう。

2010年にTPPの日本参加の話が出始めた頃、私はTPPに賛成するか反対するか暫く態度を決めかねていた。保守の立場からすると、反対するのは簡単だが、国益という立場から、熟考した。賛成派反対派ともに一長一短があり、当ブログで意見を最初に表明したのは2011年の1月だった。
迷ったが賛成派になった理由は、かつて織田信長が、楽市楽座、関の撤廃は、既得権益にとっては都合が悪いことだが、TPPは国益に寄与すると思い賛成した。

我々日本人は、この一年近く下らない森加計問題に付き合わされた。
特に加計学園問題は、既得権団体である獣医師会の強い反対が新しい獣医学部の新設を送らせてきたことが白日のものに曝された。
私は保守でもTPP賛成の方が正解だとつくづく思った

TPPに反対する人達は、日本獣医師会のような既得権益団体もしくは、気が付かずその人たちのの意見に影響された人達のような気がします。
違いますかな三橋さん?
 
TPPに反対する人達が口をそろえて言う、日本の健康保険制度・国民皆保険制度が崩壊するという反対論の裏には、大きな既得権益の圧力団体「日本医師会」が見え隠れしているのではないでしょうか?

農作物自由化反対の裏には、強い農家が生まれると存在意義がなくなる農協や
自分の権益(予算)を死守したい農水省の官僚が存在します。

TPP自由化によって既得j権益がなくなる官僚がその反対論の裏には蠢いている。
要するにTPP反対派は日本獣医師会のお仲間というわけで、既得権益を守りたい官僚は、皆あの薄汚い変態ロリコン野郎のラブビーチ前川元事務次官のお友達だ。

TPPのように当初はなにがなんだかわからないものに関して、安易な判断は難しい。ネットは一度反対側に着くと、過去のログが残り、容易に修正が効かなくなる悪い特性がある。三橋氏のTPP反対はその最たるものかもしれない。今更TPP反対を引込めれば、日和見な奴と蔑まれるから、引くに引けないのかもしれない。

私は、リスクも大きいが、TPPが日本を活性化する起爆剤になることにずっと期待していました。

TPPは日本の農業に大打撃だって?そんなことはない、誰だって多少高くとも、日本産のコメを食べるし、こたつでは、オレンジより温州ミカンを食べるだろう。
和食ブームの昨今、野菜だって魚介類だって肉だってなんだって、日本の農産物は高級品として輸出され、重宝される可能性が高い。中国人の富裕層はは日本産の農産物を多少高くとも安全だと有難がって買ってくれている。


もちろん、TPPで問題視される日本産果実などは、さくらんぼ、りんご、メロン、いちごなど、世界は日本のレベルの高い高級フルーツの存在が、有名になりつつあります。TPP発行後、今より高く大量に売れる可能性は高い。

日本産農産物はは高級品として輸出され、高く売れ、その代わり安い外国産が入ってくるだろう。「農林水産業については、『守る農業』から『攻めの農業』に転換すれば、産業として十分にやっていけると思う。まあ、消費者からするとちょっと国産が高嶺の花となってしまうのは寂しいことだが、現在のスーパーを見れば普通に外国産でもOKだろう。国内産と外国産は自然と住み分けられるだろう。

また、コメなどの5項目を重要項目として位置付け、将来にわたって生産が維持できるよう、段階的な撤廃も含めて関税撤廃の対象から除外される。これらの項目が関税撤廃の対象から除外されないと判断した場合、TPPからの脱退すればいいだけだ。

今、世界中に和食が輸出され、日本の食材は世界中の金持ちが高い金を出して買い集めるだろう。TPPだからといって日本の農業は壊滅しないだろう。むしろ明るいと思う。

反対派が引き合いに出す他国政府を訴えれる!(ISD条項)ですが、ISD条項を悪魔の契約のように言ってる人たちがいます。しかし、日本はとっくの昔から26カ国と結んでます。そして訴えられことは今現在0件です。

ISD条項は、急に国の制度、法律を変えて投資していた企業が被害を被った。その場合に一回だけ賠償金を支払ってそれで終了。これがISDの本当の姿です。

そして、外国の企業の進出を妨げない!(ラチェット条項)ですが、これは、ISD条項と同じで、規制強化につながる法改正は原則禁じることを約束する。

自国産業を守るためいきなり外資の出店規制を厳しくするなどの変更ができなくなる。  適用範囲は企業活動に関連する分野にとどまり、食や人命の安全に関わる規制強化は含めないことも決まっています。

国によっては、公共事業など一部の事業を「自国の産業を守るために」外国の会社の参入を禁止している国もあります。ラチェット条約は、そのよう不平等性をなくすためのルールです。

これに関しては、TPP反対派は「日本の健康保険制度」について、「アメリカは日本と違って、国民が入らなけらばならない健康保険制度がないから、民間の保険会社が発達している。そんなアメリカの保険会社が「日本は、国が行う健康保険制度があるから、参入できないじゃないか!」と言ったら、「今の健康保険制度は崩されるんじゃないか!」と未だに言っていますが、はたしてそうでしょうか?

昔のTPP関連のネット記事を見ていくと、そもそも「社会保障」はTPPの交渉対象から外れている、と言う主張に対し、反対派は交渉が終わってみないと最後まで分からない、と言った論調でした。

内閣官房のHPでTPPの全章の目次、全体像をみても、やはり社会保障の章は存在しません。

その国の社会保障制度は、その国が独自に運営しているものであって、TPPによって何ら左右されることがないのが確定しました。

そもそも、TPPの24のワーキンググループには「医療」という分野は含まれていませんでした。

ダイアモンドの記事にも下記のようにあります。

日本のTPP交渉参加による医療への影響を、冷静に分析してきた日本福祉大学学長の二木立氏は、「TPP参加によって、混合診療が全面解禁される可能性は、短期的にはもちろん、中長期的にも起きない」と予測している。・・・(中略)USTRの報告書や国内の状況を冷静に判断すれば、TPPの発効によって、いきなり日本で混合診療の全面解禁が行われる可能性は極めて低い。不安を煽る報道には一定の距離を置いて、我が国の医療の行く末を冷静に考える必要があるのではないだろうか。
国民皆保険制度は崩壊しないように制度を作るか、協定すればいいだけです。 

農協はもはや農家を代弁する組織ではなく自己利益のための組織であり、農協やや会社勤めをしながら趣味程度に農家をしている人の代弁者にすぎません。

世界的には第一次産業を守るのは、関税から補助金にする流れですが、助金目的で兼業農家をしている人はこの際本当の趣味程度にしていただいて、本気で農業、漁業をしている人や、新たに農漁業をしたいと思う人に手厚く補助金を補助するべきです。

TPPは確かにイメージとして怖いが、TPPによって日本の農業は良い化学変化し、成功するような気がしてなりません。ゆえに、私はTPPに希望を抱いています。

TPPのデメリットと言えば国産の美味しい農産物が高騰してしまう恐れもあることだが、海外輸入食品にはだいぶ慣れてしまった。

TPPに反対する人達は、いままで米国の強引な農産物市場の開放に悪いイメージに重ねているが、米国がTPPを脱退した今でも、TPPは国際金融資本による陰謀論であるかのごとく信じる人達は多い。TPPがなくともこのままでいけば日本の農業は高齢化でダメになっていく一方です。

米国抜きでTPPを発効して実績を残した後で、米国を迎え入れればよい。
TPPに対し多少不安も減るだろう。反対派に安心してもらう為にも米国抜きでTPPを始めることはとてもいいことのように思う。

TPPに私が賛成なのは、対中包囲網の側面が強いからだ。

ここ数年、中国と米国が共に世界を支配するG2体制の誕生などと言っている人が居たが、TPPから脱退したトランプ大統領は、米中首脳会談結果に、失望中だ。

中国は一帯一路で世界の支配者を目論んでいるが、米国が単独でこれを対抗できるわけはなく、かといって、中国主導の一帯一路AIIBに相乗りすることはありえない。

となると、どうしても新たな枠組みが必要であるから、TPPは米国にとって、本当は欠かせないつるーであることに気が付いたであろう。

TPPを脱退したトランプ大統領はおそらく後悔していると思う。そこで、安倍首相はインド・太平洋戦略を伝授した。米国も超大国と言え一国で完結することはもはや無理で、どうしても貿易が必要である。

トランプ米大統領は10日、ベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)関連会合で、中国の一方的な海洋進出を念頭に安倍晋三首相と共有した「自由で開かれたインド太平洋」に向けた戦略を演説で明らかにする見通しだ。これは、戦略の要であるインドにとっても、歓迎すべき結果であるのは間違いない。インドは領土問題で、中国から軍事的な圧力を受け続け、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に公然と異を唱えてきたからだ。民主主義の価値観の下で日米印の協力がいっそう深化しそうだ。

 戦略対話に前向き

インド外務省報道官は先月27日の記者会見で、日印米豪4カ国が戦略対話の実現を図ることについて問われ、「わが国の利益を発展させ、立場を促進する問題において、インドは考え方が似た国々と協力するよう開かれている」と応じた。

インド太平洋戦略はそもそも、日印間でも議論されてきた。安倍氏が2007年8月に訪印した際にインド国会で行った「2つの海の交わり」と題した演説で「太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、1つのダイナミックな結合をもたらしている」と両国関係の重要性を訴えたことは、今もインド議員の記憶に残っている。

昨年8月にケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICADVI)で安倍氏はインド太平洋戦略を表明し、同年11月の安倍氏とモディ印首相の首脳会談では、モディ政権が取り組む東アジア重視政策「アクト・イースト」との相乗効果がうたわれた。

モディ氏は今年5月、アフリカ開発銀行年次総会の開会式で「インドはアフリカ開発を支援するため、米国や日本とともに尽力している。(昨年11月の)東京訪問での安倍首相との詳細にわたる会話が、楽しく思い出される」と述べ、日米とともに一帯一路に対抗していく考えを示唆している。

米長官が勇気づけ

ただインドは、5月に北京で開かれた一帯一路に関する国際協力サミットフォーラムを主要国で自国だけがボイコットしたことで、孤立感を味わった。8月末まで2カ月以上続いた中印軍の対峙(たいじ)問題でも、インド政府筋は「米国からは何の温かい言葉もなかった」と打ち明ける。

こうした中、ティラーソン米国務長官が訪印前の先月18日、米国での講演で、米印両国が地域の安定で協力し、この一帯が「略奪経済」にならないようにすると強調したことは、インドを勇気づけた。中国が、従来インドの勢力圏内とみなされてきたスリランカなどで高金利融資で開発支援し、港の権益を奪うなどしていることを念頭に置いたものと理解されるからだ。

印シンクタンク、カーネギー・インドセンターのC・ラジャ・モハン所長は、現地紙電子版への寄稿で「インドとその協力国は、持続可能な経済基盤開発の可能性を示すことで、小さな国の中国に向き合う交渉力を高めることができ、最終的には中国に略奪的な地経学(戦略)を放棄させ、一帯一路を真の協力的な事業にかえさせることになるかもしれない」と指摘している。(岩田智雄)

もはや中国は政治的に米国を脅かす存在となり、傍若無人な振る舞いにもはや世界中は中国を野放しにしないようにしようと思いだした。

AIIBやBRICs銀行など米国と対立する形で世界の中での金融支配を強めようとしており、強い経済力を武器に世界の金融市場での位置づけの拡大と米国の基軸通貨としての地位を貶めようとしていたわけである。

そして、中国バブルが崩壊した・・・。

これが中国の成長が減退期に移行する事を意味し、これまでのような中国の振る舞いが困難になることを意味するわけである。そして、世界の中で力をつけてきた中国を叩くにはもっともよいタイミングであるといえる。

北朝鮮が、核を持持とうとしている今、戦争は核戦争の狭間にに立たされている。北朝鮮のようなカルト国家に核を持たせることは、地球の破壊を意味し、勝者のいない戦争になる可能性が高い。

だからこそ、北朝鮮を制裁する、一番の戦争は経済であり、米国の保つ最大の力がドルによる世界の経済支配なのである。

世界の資源取引の基本はドル建てである。ドルで借りたものはドルで返さなくてはならず、ドルがなければ資源が買えないわけなのだ。そして、そのドルの供給を一手に握っているのが米国であり、ドルは米国の武器なのである。

ところが、大国となり軍事力を持ち始めた中国は米国最大パワーである基軸通貨ドルを侵食しようと目論んでいる。いや私の見立てからするともはや過去形となりつつある。

中国は経済はバブルが崩壊し、ハイマンミンスキーモーメント効果が出始め、間もなく、経済崩壊が始まり、国民にも隠せなくなってきている。予想以上のキャピタルフライトが発生し、大規模な介入と為替に対する規制をかけなければ為替を維持できなくなってしまったのであった。

中国の外貨準備は額面上世界一であり、その額は約3.5兆ドル程度である。しかし、そのうち米国債は最大でも1.2兆ドルしかなく、その中に企業の返済用や決済用資金が含まれているため、実際に介入に使える資金がどの程度残っているのかわからない。

 そして、トランプ大統領のアジア歴訪で、米中の首脳会談ということになったわけであるが、中国がもはや美味しいビジネスを提供しないことは十分すぎるほどトランプ大統領は理解したと思う。

TPPはオバマの負の遺産ぐらいにしか理解していなかったトランプ大統領であったが、TPPがあれば、安倍首相が提唱したインド太平洋戦略に応用でき、アジアにおける米国の経済支配を強化しようとしていたわけであり、中国抜きのアジア経済圏の構築というのがTPPの一つの側面である。

中国がTPP加盟国とビジネスを行おうとした場合、TPPに規定されたルールを厳守しなくてはならない。また、ルールを厳守しても関税が撤廃されているわけではないので、加盟国よりも悪い条件でビジネスをしなくてはいけなくなるわけである。

特許や知的財産権だけでなく、インフラや法制度にもこれは関係し、これは金と力で中国式のルールを押し付けてきた中国のこれまでのビジネスを否定するものにもなりかねないわけである。トランプ大統領も、ようやくTPP離脱が間違いであったことに気が付きだしたであろう。
 
北朝鮮問題を巡り、アメリカと中国のせめぎ合いが続いている。トランプ大統領は2日夜、中国の習近平国家主席と電話会談を実施。詳細な内容は明らかにされていないが、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、トランプ大統領は「アメリカ単独で北朝鮮を制裁する準備ができている」と習主席に伝え、北朝鮮のミサイル・核開発問題の解決に消極的な中国に圧力をかけたと報じている。北朝鮮は、その直後の4日にICBM(大陸間弾道ミサイル)と見られるミサイルを日本海に向けて発射した。

その一方で、トランプ大統領は、煮え切らない中国に既に見切りをつけているとも見られている。7日にドイツ・ハンブルグで開幕されるG20サミットで、夕食会に安倍晋三首相と韓国のムン・ジェイン大統領を招き、北朝鮮問題について両国に協力を要請すると見られている。一方、中国の劉結一(リウジエイー)国連大使は3日、このまま緊張状態が続けば、北朝鮮は制御不能に陥ると警告。「国連の枠組み以外の単独制裁には反対だ」と、暗にトランプ大統領の動きを牽制した。

◆乗ってこない中国に業を煮やすトランプ大統領

トランプ大統領は、以前からアメリカ単独でも北朝鮮に厳しい制裁を課す方針を口にしてはいるが、これまでのところは、まずは北の後見人的存在である中国が強い影響力を行使することに期待していたようだ。しかし、中国側にこれといった動きがないまま、北朝鮮はミサイルの発射実験を繰り返している。4日に発射されたのは、米本土に到達可能な能力を秘めたICBMだと確認され、米政府はこれまでよりも一層強い非難声明を出した。

これに先立つトランプ大統領と習主席の電話会談について、ホワイトハウスは、トランプ大統領の側から「北朝鮮のミサイル・核開発の脅威が増しているという話題を挙げた」とだけ説明。詳細な内容は明らかにしていない(英ガーディアン紙)。しかし、NYTは、匿名の政府高官の話として、トランプ大統領は、「平壌に単独で圧力をかける準備ができた」と習主席に伝えたと報じている。その直後の休暇明けには、「中国は北朝鮮にヘビーに動き、このナンセンスを永遠に終わらせるかも知れない」と意味深なツイートをしている。

NYTは、「中国が全面的に動かなければ、圧力を与える作戦で金正恩にコース変更させることは難しそうだ」と書く。中国は、圧力よりも外交的解決を目指すとくり返しているが、トランプ大統領は北朝鮮に拘束されていた米国人学生のオットー・ワームビアさんが死亡した事件以降、外交的解決というオプションを完全に捨てたとNYTは見ている。また、アメリカが厳しい態度を示すことにより、中国に重い腰を上げさせるという期待もあったが、NYTに情報をリークした高官によれば、「トランプ大統領はもうそのような幻想は抱いていない」と語っている。

◆米中それぞれの計算違い

米中は、南シナ海問題などで直接的な対決姿勢を見せる一方、北朝鮮問題では、表面的には、協力して解決を目指すという姿勢を4月の米中首脳会談などで示してきた。しかし、そこにボタンの掛け違いがあったようだ。

NYTは、政府関係者やアナリストの見方として、「習主席側はトランプ大統領を満足させるために何をするべきかについて計算違いをした。例えば、北朝鮮からの石炭の輸入など、見えやすい政策をいくつか取れば、トランプを黙らせることができると思っていた」と書く。一方のトランプ大統領は、「首脳会談で熱い握手を交わし、個人的に良好な関係を築いたことで、北朝鮮に圧力をかけることに対する中国の根強い抵抗を克服できるという過大評価をしていた」と分析する。

先月末、アメリカは3月に続いて北朝鮮に協力的な中国企業と個人投資家に制裁を課した。制裁の対象になった丹東銀行は、北朝鮮の不正な取引を支える仲介役を果たしたとされる。制裁は、同行の米国内での活動を一切禁止するというものだ。ムニューシン財務長官は、「北朝鮮への不正な資金供給は全て断ち切る」と語っている。こうした強いシグナルを送ってもなお、対北制裁に動かない状況を見て、トランプ大統領は電話会談で最後のひと押しをしつつも、中国を動かすことをあきらめつつあるようだ。

◆米と距離を置く中韓、安倍首相は対中制裁を賞賛

中国企業へのペナルティに最もポジティブな反応を示したのは、他ならぬ安倍首相だという。「トランプ氏は、北に協力する中国企業にペナルティを与えることを賞賛した安倍晋三氏に、より親近感を抱いた。木曜日のハンブルグのG20で、トランプ氏は安倍首相と韓国のムン・ジェイン新大統領を夕食会に招く」(NYT)という。中国をあきらめ、日韓と連携して事を進める決心をしたのかもしれない。

ただ、韓国との協力も一筋縄ではいかない状況だ。THAADの配備などで北への圧力強化に比較的協力的だったパク・クネ大統領に代わって就任したのは、リベラル派のムン・ジェイン大統領だ。アジア情勢に詳しいユーラシア・グループ代表のイアン・ブレナー氏は、今の韓国の対北姿勢について、「朴槿恵大統領の失脚前の韓国は、北朝鮮問題ではアメリカを支持していたため、中国の重たい制裁に苦しんでいた。しかし、つい最近、リベラルな野党の代表であるムン大統領が当選した。彼は、『私は北朝鮮と話し合いたい』と言っており、太陽政策をとりたがっている。彼は間違いなく、中国との経済関係を再び良くするために、アメリカに対抗するだろう」と語っている(CBS)。

一方、中国の思惑は、国連大使のコメントを通じてうかがうことができる。ガーディアンなどが伝えているところによれば、劉国連大使は3日、国連本部での記者会見で「このまま緊張状態が高まり続ければ、北朝鮮は遅かれ早かれ制御不能になる」と警告。中国が主張する外交チャンネルでの話し合いをすべきだと述べた。これに対し、ガーディアンは「中国は(これまでに)米韓軍事演習の中止と引き換えにミサイル・核開発を凍結するといった提案をしたが、失敗に終わった」と懐疑的だ。劉大使は北朝鮮危機は「かなり非常に、深刻だ」と強い危機感を抱いているが、米中がお互いの立場を超えて協力するのは難しそうだ。

Text by 内村浩介
米国抜きで、TPPを開始し、後で米国の我儘を最低限に抑え込むのが日本としては理想だろうと思う。

安倍政権は、TPP11カ国合意を日米自由貿易協定(FTA)交渉入りを防ぐ防波堤にする考えているとみていい。TPPで米国の要望は既に協定に盛り込まれていると主張し、新規のFTA交渉ではなくTPP復帰を促す。ゆえにTPP11ヵ国合意は対米交渉の切り札であり、合意を急いだと考えていい。

もちろん、中国と約束を守れない韓国はTPPから排除します!



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                                                  トランプ米政権が対中通商強硬策を取り下げた。図らずもだが、米中を橋渡ししたのは核とミサイルを振り回す北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長である。トランプ氏は「ならず者」を抑え付けるのは習近平国家主席しかいないと判断したのだが、国際貿易ルール無視の中国が増長しかねない。日本は米国との経済対話の焦点を中国に絞るべきだ。

トランプ氏は大統領就任前、中国からの輸入品に45%の高関税をかけると息巻き、オバマ政権までの「一つの中国」政策放棄までちらつかせたが、2月に北朝鮮が長距離弾道ミサイル実験をするや、電話で習氏に「一つの中国」維持を伝えた。4月7日にフロリダで習氏と会談した後の12日には「中国を為替操作国に認定しない」と言明。トランプ氏はツイッターで「北朝鮮問題でわれわれに協力する中国を為替操作国とどうして呼べる?」と弁明した。

筆者と東京で出くわした中国軍関係者によれば、「米中関係を覆う曇りは解消し、今後50年間は安定する」。中国人にありがちな「白髪三千丈」の類い話とは決めつけられない。金体制が維持され、挑発を繰り返す限り、米国が中国に抑止を頼み続けるので、長期的に見て米中貿易戦争は起こらない。ワシントンが黙れば、人民元を含む中国共産党による市場支配への海外からの逆風もやむ。

トランプ氏から為替操作国と指定された場合、北京が無理やり人民元を切り上げるしかない。当然、金融を厳しく引き締めざるをえず、過剰生産設備を抱える国有企業が一斉に経営破綻する。こうした恐れが北朝鮮のおかげで吹き飛んだ。

国際金融市場の利害が反映する英フィナンシャル・タイムズと米ウォールストリート・ジャーナルは米中貿易戦争ともなれば、市場が大きく混乱すると警告してきた。しかし、アジアで中国と対峙(たいじ)する日本が欧米の声に唱和するわけにはいかない。

習政権は「一帯一路」構想を掲げ、アジア全域の陸と海のインラフを北京に直結させ、中華経済圏化しようともくろむ。インフラは軍事転用可能で、南シナ海への海洋進出と同じく、軍事面での膨張策と重なる。北京で2016年初めに開業したアジアインフラ投資銀行(AIIB)はその先兵だ。

ドルに連動させる為替操作が米国に黙認されたのを奇貨として、AIIBは中国人民銀行が発行する人民元を使ってインフラ資金を融通するだろう。米中首脳会談では、習氏がトランプ氏に対し米国のAIIB参加を懇請した。トランプ氏が応じれば、AIIBは国際金融市場での地位を固められると踏んだからだ。

日米間では18日に、2月の首脳会談で合意した経済対話の初会合が開かれた。そこで決まったのは貿易・投資ルール、経済・財政政策、個別分野の3つの柱だが、中は空白だ。米側代表のペンス副大統領は2国間貿易協定の締結を示唆したが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など多国間協定主義の日本とはかみ合わない。このままでは、「対話」が日米を離反させる結果になりかねない。

とにかく芯が必要だ。それは中国という共通項だ。

懸案はAIIBばかりではない。中国には世界貿易機関(WTO)ルールが通用しない。知的財産権侵害もダンピング輸出も止まらない。外資には出資制限を課し、技術移転を強要する。企業が中国から撤退しようとすれば身ぐるみはがされる。突如、海外送金も止められる。党幹部による裁量が優先し、公正な裁判どころではない。金融市場は規制緩和どころか、強化される一方だ。この結果、不動産開発などバブル融資が繰り返され、企業や地方政府の債務膨張が止まらない。これらだけでも日米対話の柱の内部を埋めつくすだろう。

トランプ政権が中国を偏重するのは米経済にとって不合理である。グラフは米国のモノの貿易赤字と海外からの米国債など証券購入を合算した資金流出入である。世界最大の債務国米国は外部からの資金流入に依存する。貿易赤字は大きくても、相手国がその分を対米証券投資で還流させれば、米金融市場は安定する。一目瞭然、日本は対米貿易黒字分を上回る資金を米証券市場につぎ込んでいる。

対照的に、中国は米国に貿易黒字を証券投資で還流させない。昨年は年間3500億ドルの黒字に加えて1300億ドルの証券を売却している。日本は米金融市場のいかりであり、中国は機雷も同然だ。経済対話の日本側代表、麻生太郎副総理兼財務相はしっかりと米側にクギを刺すべきだ。

(編集委員)
日米経済対話が始まった、ペンス副大統領は日本企業の城下町州のインディアナ州知事であり日米関係をよく知っているので、まともな対話が可能ではないかと思うが、ウィルバー・ロス商務長官も知日派ではあるが、英エコノミスト誌が「ミスター保護主義」と評し、日本に対し日米二国間協定FTAでどのような無理難題をおしつけてくるか?

そして、トランプ大統領がまだもしかしての段階だがトランプまでもが北朝鮮情勢に絡みパンダハガー=親中派に成り下がってしまている。田村秀男氏の分析は見事であり、確かに今までの政権はそのままパンダハガーに成り下がっていった。皮肉なことに中国は北朝鮮のおかげで生き延びてしまうのか?

だが、トランプは北朝鮮を使って中国を解体に向かわせる戦略を考えているのではないか?とも考えられる。“Make America Great Again”を標榜するのであれば、なおさらである。


日米ETAは粛々と交渉する一方で、日本はTPPをまとめ上げ、米国をTPPに引きづり込むことを考えるべきではないか?TPP11と日米ETAの同時交渉はむしろ日本の国益を守り、国家戦略として決して拙くはないように思えてくる。

日本が米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)へと舵(かじ)を切った。米国の離脱表明で他の参加11カ国の結束は揺らぎ、日本国内にも慎重論が再燃した。危機にひんしたTPPの維持へと方針転換した安倍晋三政権の舞台裏を追った

日米経済対話を5日後に控えた4月13日。安倍晋三首相は、首相官邸に麻生太郎財務相や石原伸晃TPP担当相ら関係6閣僚を集めた。

「率直に意見交換しよう」。表向きの議題は通商交渉全般だったが、最大の命題は「TPP11」構想の扱いにあった。

「米国が入らないことで損する国も得する国もある。11カ国は一様ではない」。石原氏は難しさを説いた。山本有二農林水産相も慎重論を唱えた。ひとしきり意見を聞いた首相は麻生氏を一瞬みてから発言した。「国際情勢を見ながらTPP11を考えよう」。政権としてTPP11を目指す方針を明言した瞬間だった。

トランプ米大統領は1月21日、TPPからの離脱を表明した。だがTPPは安倍政権の成長戦略の柱。中国の台頭をにらんだ経済的な日米同盟でもある。政府内にはTPP政府対策本部を改組する案も浮上したが、首相は残すよう指示した。

安倍政権がTPP11を進める真の狙いは、いずれ米国を引き戻すことにある。日本主導で地域の通商・貿易ルールをつくり、時が満ちてから米国を迎え入れる――。首相の意思は固まっていたが、問題は構想を表明するタイミングにあった。

トランプ政権との関係構築の段階にある中で、あまりに早く「米抜き」を表明すれば、米側の反発を招く恐れもあり、参加国の不安にもつながる。一方、日本がいつまでも態度をあいまいにすれば、参加国の足並みが乱れかねない。「米国が入らないなら中国を入れてでも発効させればいい」。ペルーやチリの政府高官は1月下旬に両国を訪問した薗浦健太郎外務副大臣にこう語った。

水面下で間合い探る

米国とは水面下で間合いの探り合いをはじめた。浅川雅嗣財務官ら4人の次官級が3月に訪米し、トランプ氏の片腕と言えるジャスター大統領副補佐官と会談した。

「日本とも厳しい通商交渉をやりたい」。ジャスター氏は農産物や医薬品、観光などの市場開放と2国間交渉を強く迫った。日本側が貢献策として示したインフラ投資は聞き流された。

一方、日本側はTPP11構想を切り出した。「高いレベルの貿易ルールを多国間に広げるべきだ」と主張。米側に示した提案書にも「TPP11」の文字を明記した。

米側は2国間交渉を要求するが、TPP11ははばまない――。感触を得た日本は構想表明のタイミングとして4月18日の日米経済対話後に照準を絞った。米側ともきっちり話をつけて進めているとの他の参加国へのメッセージを込めたものだ。

他の参加国へ根回し

米国との自由貿易協定(FTA)に前向きな国への根回しも進めた。同8日の日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済閣僚会合。「FTA一本足にならないほうがいい」。世耕弘成経済産業相はベトナムのアイン商工相に呼びかけた。

日米経済対話のさなかに来日したオーストラリアのチオボー貿易・投資相。同国はTPP維持に積極的であり、今後どうするのかと日本政府高官に尋ねた。「すべての選択肢がテーブルの上にあるということだ」。高官はトランプ氏が北朝鮮問題で好んで使う表現を使った。「そうか、日本もカジを切ったか」。チオボー氏も笑顔で応じた。

「11カ国でTPPをやろうという話は5月(の閣僚会合)に出る」。麻生氏が訪問先の米国でこう表明したのは、日米経済対話の翌19日だった。

(島田学、竹内康雄、重田俊介)
プライムニュース 2017年4月18日 170418


見通しの甘すぎるトランプの貿易政策
【Wedge】2017年4月10日 岡崎研究所

ワシントン・ポスト紙の3月5日付け社説が、トランプ政権の貿易政策対議会報告を、正しい分析からは程遠く、TPPのような米主導の多国間協力こそが最善の道であり、一方的に「主権」や「保護」を主張することは盲目的だ、と批判しています。要旨、次の通り。

トランプ政権は選挙中の保護主義的主張を堅持していくようだ。先般公表された「2017年貿易政策課題」は、ライトハイザー通商交渉代表とナヴァロ国家通商会議委員長の影響を反映したものとなっている。6ページの政策表明は冷戦後の米国の貿易政策への批判を繰り返している。NAFTA(北米自由貿易協定)やWTO(世界貿易機関)等の多国間貿易協定と制度は米の主権を犠牲にし、製造業の分野で米の雇用を犠牲にしたと批判する。

この議論は正しい分析からは程遠い。確かに製造業の雇用は2000~16年の間に1720万から1230万に減少した(2000年は中国のWTO加盟の前年)。しかし、この雇用減少の原因が、米国だけではなく世界的にみられる生産の自動化その他長期的な要素よりも、100%WTOなど貿易取決めにあるとするかどうかは別問題だ。

カリフォルニア大学バークレー校のデロングは、ここ20年の製造業での雇用減少は朝鮮戦争後から見られる歴史的趨勢の結果だとしている。非農業雇用の中での工場雇用は53年に32%だったが、NAFTAや中国登場のずっと前の90年に既に16%に下がっている。ドイツでも、1970~2015年の間に工場雇用は半分に減少した。

このことは、既存の貿易取決めを再交渉しても、またトランプ政権が示唆するように米国の利益に沿わない裁定がWTOで下される場合にはそれから離脱しても、利益はほとんどないことを示している。反対にデロングは中国のWTO加盟とNAFTAによるネットの雇用喪失は、1億5000万の総雇用人口の中の約50万人程度だったと計算している。

我々も輸入により履物や家具製造等の軽工業が被害を被ったことに異を唱えるものではないし、中国との貿易が一党独裁国家での法の順守や透明性を増進することにはならなかったとのトランプ政権の主張に反駁するものではない。しかし、中国の重商主義に対抗する最善の道は正にトランプが拒否したTPPのような米国に主導された多国間協力である。

トランプ等は、過去の政策立案者は「地政学上の利益のために不公正貿易慣行を盲目的に甘受してきた」と非難する。しかし、地政学的考慮も実は紛争を最小化しながら米の利益を増進する世界を作るというものだったのである。盲目とは、他国の正当な利益や他国による報復も考慮しないで一方的に「主権」や「保護」を主張することだ。

出典:‘Trump’s blindness on trade is all too easy to see’(Washington Post, March 5, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-blindness-on-trade-is-all-too-easy-to-see/2017/03/05/4f576298-0052-11e7-99b4-9e613afeb09f_story.html

社説の指摘は全くの正論です。このような社説が出ること自体は心強いことです。

3月1日、米通商代表部は米通商法に基づき「2017年貿易政策の課題と2016年年次報告」を議会に提出しました。全体で336頁、冒頭の8頁がトランプの貿易政策の課題と題された第一部となっています(残りは現行の貿易協定の現状やWTOの活動等についての詳細な報告)。第一部は、選挙演説のような議論になっています。ピーター・ナヴァロ等が書いたのでしょう。それでも、貿易擁護の観点から均衡を取るために誰かが精一杯手を入れたのではないかと推測される文言は見られます。

報告で特に注目される点は次の通りです。
・最大の目的は「より自由でより公平な貿易」を拡大していくこと。雇用を拡大し、相互主義を増進し、米の製造業を強くする。

・多国間取決よりも二国間取決が米の利益になる。

・地政学上の考慮のために不公正貿易に目をつむるという考え方は「拒否」する。

・不公正貿易慣行を打破する。米の知的財産を守る。

・米国内法を厳密に実施していく(ダンピングや補助金への対処で)。

・米の権利や利益を弱くし義務を増大させるような他国やWTOの努力には「抵抗」していく。

・現存の貿易協定は必要に応じ改定する。

・優先事項は、①貿易上の国家主権を守る(WTO紛争処理の裁決が「自動的に」米の法律や慣行を変えることにはならない)、②米の通商法を厳密に実施する、③他国の市場を開放するためにあらゆるレバレッジを使う、④主要国と新たなベターな貿易取決めを締結することの四つである。

 トランプ政権が考えを変えない限り、これからの国際貿易やWTOは試練を受けるし、混乱することになりかねません。戦後の国際経済の発展、世界経済のダイナミックスと米国の利益に関し、もう少しバランスのとれた理解を持ってもらいたいものです。

ナヴァロは「大統領府が懸念する貿易赤字:不均衡は経済成長を危うくし米の安全保障を危険に晒す」と題する寄稿文を3月5日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄せ、日本の「恐るべき非関税障壁」の除去が必要などと主張しています。

しかし、ナヴァロは貿易赤字を妄想しているように見えます。モノの貿易偏重とも言えます。貿易赤字の議論は短期的思考であり、貿易の縮小均衡をもたらしかねません。貿易を一層自由にしてパイを大きくしていくというダイナミックな思考が欠如しています。それは80年代の日米貿易摩擦の時代の教訓でもあります。経済を効率化し、資源を最適利用して、産業構造を不断に変革していくことこそ、経済成長をもたらすものであり、狭小な赤字議論をやっていては長期的に米国の力が衰退して行きかねません。
一方で、トランプがやっていることは、アメリカを偉大な国にした最大の功績者アレキサンダー・ハミルトンの経済政策を実施しているという、目から鱗の意見があり、なるほどと頷いてしまった。

アメリカトランプ経済政策
何がアメリカの繁栄をもたらしたか? 建国当初の二大路線対立

経済思想史の中のトランプ・ショック
【現代ビジネス】コンサルタントDesign Thinke池田 純一

■アメリカ経済はどうなるか?

ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任してから3ヵ月近くが過ぎた。

この間、選挙キャンペーン時の公約を果たそうと、移民、エネルギー、ヘルスケアなどの分野で矢継ぎ早に大統領令の発布や議会への法案要請を行っている。

もっとも連邦裁判所や連邦議会の動きによって必ずしもトランプの思惑通りには進んではいない。むしろ、混乱が広がりつつあるというのが実情だろう。

そのような状況の中で、アメリカ人のみならずアメリカの外部の人びとにとっても身近な関心となるのが、アメリカ経済は今後、どうなるのだろうかという問いだ。

なにしろアメリカ経済を立て直すことを訴える“Make America Great Again”というフレーズが、トランプキャンペーンそのものであったからだ。

そんな疑問を感じ始めた時に目にしたのが、今回紹介するコーエン&デロングの
アメリカ経済政策入門』という小著だ。

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実は、この本を手にしたのは全くの偶然からだった。新刊案内に平積みにされていた中で、アンディ・ウォーホルのポップアートで有名な赤いキャンベルスープ缶の装丁がやたらと目についた。

中をパラパラと見たら、アレグザンダー・ハミルトンやドワイト・アイゼンハワーといった名前が目に入り、それならばちょっと読んでみようかという気になった。つまりは装丁に惹かれたジャケ買い。もちろん200頁を切る薄さも後押しした。

よく見ると原書はHarvard Business Review Pressでの出版、すなわちビジネススクール向けの専門出版社の本であり、おそらくはビジネスパーソン向けの簡潔なものなのであろう。それでタイトルにあるように、アメリカの経済政策の歴史が概観できるならお得ではないか。

しかしそのような予想は、良くも悪くも裏切られた。

ハミルトンとジェファソンの対立

確かにアイゼンハワーまでを扱った第3章まではコンパクトにアメリカ経済の進展がまとめられており、これは頭の整理になる。

なかでも建国時におけるハミルトンのアメリカ経済への影響については、意外とまとまった読み物がなかったので、彼の活躍の要点が整理された記述は重宝しそうだ。

初代財務長官を務めたハミルトンは、いわゆる「建国の父祖たち(The Founding Fathers)」の一人であり、しばしば第3代大統領を務めたトマス・ジェファソンと対比して語られる。

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ハミルトン(1755-1804)。アメリカ合衆国建国の父祖の一人にして、初代財務長官を務めた  〔gettyimages〕


北部ニューヨークが地盤のハミルトンに対して、ジェファソンは南部ヴァージニアが拠点。ハミルトンが通商国家としてイギリスと貿易で競い合う未来を見込んで、連邦政府の強化を強く希望したのに対して、ジェファソンは農業国家として北米大陸における領土拡大に夢を託し、それゆえ独立自営農民からなる州権制、連邦制を重視した。

このあたりの建国の父祖たちの鍔迫り合いについては阿川尚之『憲法で読むアメリカ史(全)』が詳しい。

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そのような二人の対立で最もわかりやすいものは、中央銀行の設立を巡るものだ。

初めて聞くと驚いてしまうのだが、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、19世紀どころかようやく20世紀に入り、1913年に設立された。実に建国から100年余り経ってのことだ。

ではその間、中央銀行がなかったのかというとそういうわけでもなく、何度も中央銀行に相当する銀行が設立されては、時の政局によって廃止されてきた。

つまり、アメリカ社会にとって中央銀行を頂点とする金融システムの存在は、建国以来常に政治的論争の的であったわけだ。そしてその発端は、ハミルトンとジェファソンの対立にまで遡る。

中央集権的な通商国家を目指したハミルトンは、当然、中央銀行推進派であり、一方、州権重視の連邦制を重視するジェファソンは反対派であった。

こうした二人の対立構図の中で、本書『アメリカ経済政策入門』の著者たちは、実に明確にハミルトン派であることを宣言している。

実際、原書タイトルは“Concrete Economics: The Hamilton Approach to Economic Growth and Policy”であり、ハミルトン流の開発経済アプローチが重要だというのが本書の主張の核心だ。

その点で邦訳タイトルが与える、アメリカの経済政策について中立的評価をした「入門=教科書」という印象はミスリーディングだった。キャンベル缶をあしらった装丁もこのハミルトン派の主張とは何の関連もなかった。

トランプ以後に読むと…

実のところ、このあたりの旗幟鮮明な主張が本書の扱いに困った点でもある。

つまり想像していた以上に、この本は党派的なものだったのだ(むしろアメリカ経済に関する教科書的な事実や推移の確認のためなら、2008年刊と少し古いが中尾武彦『アメリカの経済政策』を紐解くほうが早いのかもしれない)。

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実際、第3章までの記述の簡潔さ、わかりやすさと比べて、80年代から現代までを扱う第4章以降、控えめにいっても、何を意図して書かれているのかがいささかわかりにくい。

いや表向きは、書かれていることはシンプルで、要するにリーマンショックを引き起こした金融業界の規制緩和はありえないくらい酷かった、という非難にある。

そうなったのも80年代以降の経済政策の舵取りが、それまでのように実利ではなくイデオロギーに先導されたからだったという。80年代に入ってからのレーガン以降の経済政策をすべて、考えなしのイデオロギー偏重の展開であると、ばっさり切って捨てている。

この主張をサポートするために、金融産業における破綻や悪事を中心に具体例がこれでもかこれでもかとばかりに――どちらかといえば本というよりもブログのエントリーを読んでいるような冗長さをもって――語られていくのだが、しかし一通り読んでも、著者たちが批判する「80年代以降のイデオロギー」というのが具体的に何を指しているのか、明らかにされていない。

著者の二人は、レーガン以前の経済政策については、いずれも〈プラグマティック〉に運営されていたので問題なかったが、80年代以降は〈イデオロギー〉に偏重した政策が実施されたため、アメリカ経済はおかしくなった、と主張している。

だが最後まで読んでも、プラグラマティックという言葉でどのような判断基準がなされているのか明示されているわけではないし、イデオロギーという言葉で何を指しているのかもはっきりしない。

いやいや、そんなことはわざわざ言わないでもわかるでしょ? 冒頭に記したように、古くはジェファソンにまで遡る経済自由主義のこと、あるいはリバタリアニズム、要するにレーガン以後、共和党が掲げる(合理性に欠ける)一連の思い込みのこと、それがここでいう「イデオロギー」なんだよ……

多分、こう著者の二人は言いたいのだろう。それは想像できるし、ヒントも随所に記されている。

それでも、そうした発想をイデオロギーと一蹴するのは、トランプ以後の現代では、いささか単純にすぎる、ないしは乱暴にすぎるようにも思えてくる。

というのも、トランプ以後は、むしろ事実よりも空想=観念的なものこそが重視され、その意味でイデオロギーが林立する時代に再び踏み込んでいるようにも思えるからだ。

プラグマティックであるとは?

この本の中で繰り返し記される表現に「イデオロギーではなく実利で」というのがある。

ここでいう「実利」とはpragmatismの訳語として使われているので、「イデオロギーではなくプラグラマティズムで」ということなのだが、この本の党派性を踏まえると、自分たち民主党支持のリベラルは「プラグマティズム」側で、対立する保守的な共和党は「イデオロギー」側、ということになるのだろう。

だがだとすると、その彼らの分かり易いまでの二分法思考がどうにもプラグマティックなものに見えてこないのは、どういうことなのだろう。

ちなみに本書では、「プラグマティック」に「実利にのっとって」という訳が使われているが、これはかつてプラグマティズムに当てられてきた「実用主義」という訳語に囚われたものであって、昨今のプラグマティズム理解からすれば若干ミスリーディングだと思う。

国際政治の場面で「プラグマティック」という言葉が使われる際に顕著な、たとえば「国益」のような万人が認める「実利」があらかじめ存在しているようにみえてしまうからだ(プラグマティズムについては伊藤邦武『プラグマティズム入門』が入りやすい)。

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だが本書における「イデオロギー(=観念ないし空想の体系)」との対比で言えば、「プラグマティック」とは個々のプレイヤーがそれぞれの目的を達成しようと、目の前にある具体的な問題に自ら手を付けて「試行錯誤を繰り返す」ところが肝心だ。「実現できると期待できる」ことをまずは是とする態度である。

細かいようだが、このあたりのニュアンスは本書を読み進める上で重要なところだろう。「実用」や「実利」という日本語では、「結果」が強調されすぎていて、これでは帰結主義の功利主義と変わらないように見えてしまう。

だが大事なのは「実験による試行錯誤を良しとしてより良い結果を求めようとする思考習慣」の実践にある。

トランプの主張と大して変わらない?

ともあれ、なぜ著者たちの態度がプラグマティックには見えないという疑問を抱いてしまうのかというと、実はそのような「プラグマティズム/イデオロギー」という二分法を民主党と共和党の間で暗黙の裡に共有してしまっていたからこそ、そうした二分法を意図的に壊乱したトランプに対して、一種の金縛りにでもあったように、為す術を持てなかったように思えるからだ。

ハミルトン流に則って、開発経済的な保護貿易も辞さない本書の主張は、「アメリカ・ファースト」を訴え、中国との貿易不均衡を非難し、国内製造業に従事する(主には白人の)労働者の生活救済を最優先に考えようとするトランプの主張と、大して変わらないように思える。

むしろ、トランプの方が、扇情的であっても具体的に踏み込んだ言い方を行っている分、広く人びとにアピールするところを持っていたようにすら思えてくる。

この時、実は原書が、ハーバード・ビジネス・レビュー・プレスの一冊、要するに未来のコーポレートアメリカの経営者予備軍であるMBAホルダーに向けた本の一冊であることを思い出さないではいられない。

もしかしたら、こうしたプロの経済学者も主張するような処方箋が事前に存在していたため、ミドルクラス以上の「隠れトランプ」といわれる、大学以上の高等教育を受けた人たちにも、トランプの訴えが響いてしまったのではないか。

そして、そのような主張が、リベラル支持の彼らからすれば本来は政敵であるはずの共和党の大統領候補者であったトランプが台頭することに、手を貸してしまったのではないか。

そう考えてくると、著者たちが、本書の中で「プラグマティズムは民主党」、「イデオロギーは共和党」と明確にしなかったことのほうが気になってくる。想像するに、同じ民主党といっても、2016年の予備選でいえば、著者たちはヒラリー・クリントンよりもよりリベラルなバーニー・サンダースに親和的だったのではないか。

大統領候補に名乗りを挙げた時には、夫のビル・クリントン同様、自由貿易体制を支持する中道寄りの立場をヒラリーが取っていたことを考えると、「イデオロギーは共和党」とは一概には言えなかったということなのかもしれない。

その分の歯切れの悪さが、結果として、従来の共和党の主張に全く拘泥しないトランプに対して一種の知的お墨付きを与えてしまったのではないか。

何分にも原書はアメリカで2016年3月に出版されていた。むしろバーニーの援護射撃の一つだったのかもしれない。

著者二人が、60年代のフリー・スピーチ・ムーブメント以来、アメリカのリベラルの牙城で知られるUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)の教員であることもそのような想像をめぐらすことを促してくる。

何がアメリカの繁栄をもたらしたのか

ともあれ、80年代以降の経済状況を扱った本書の第4章、第5章でわかることは、この本の著者たちがリーマンショックをもたらした金融業界と、そのような金融業界の蛮行を許した80年代以降の規制緩和策――その頂点がクリントン政権時代の1999年に実施された、投資銀行と商業銀行の間の垣根を取り払う「グラス・スティーガル法の撤廃」だった――を蛇蝎のように嫌っていることだ。

そして、そのような事態にアメリカを追い込んだ理由として、東アジア諸国(日本、韓国、中国)の開発経済政策による製造業の台頭を重視している。

著者たちによれば、東アジアの製造業の台頭とアメリカの金融業の肥大化は太平洋を挟んで呼応した動きであり、その結果、アメリカでは「(実体経済が)空洞化し、(金融業という)脂肪で埋める」ような整形手術ばかりが行われるようになったと揶揄する。

そうした東アジアの台頭はいずれも、政府主導の開発経済政策が功を奏したからなのだが、そもそもその成功方程式からして、ハミルトンが編み出した方法(Hamilton Approach)にすぎないというのだ。

ハミルトンは産業政策の始祖であり、ハミルトン流のビジョンがあったがゆえにアメリカは、19世紀中に経済的な基礎体力を蓄え、元本国であるイギリスを経済力で追い抜き、20世紀にアメリカの世紀を実現させた。ハミルトンは、だから今日のアメリカを築いた偉大な人物なのだ。

この本では冒頭でまず、(共和党が金科玉条のように主張していると思われてきた)トマス・ジェファソンが掲げた独立自営農民による共和主義的理想を、夢想として一蹴している。

自由主義ではなく、ハミルトンが考案し提唱した、保護関税、幼稚産業育成、インフラ建設、中央銀行創設などの、製造業に根ざした通商国家を目指すための産業政策こそが、今日のアメリカの繁栄をもたらしたという理解だ。

さらに著者たちの理解に従えば、ハミルトンによって始められた産業政策は、まず19世紀末のドイツで採用され工業国ドイツの台頭を促し、そのドイツの成功を見て、日本が殖産興業策として導入し、日本の戦後復興にも貢献した。その日本の成功を目の当たりにして、韓国も採用し、遂には中国も開放政策以後、導入するに至った。

つまり、ハミルトンこそが開発経済の方法論の祖であり、21世紀に入ってからの中国の経済的躍進も、もとを辿ればハミルトンのおかげ、というわけだ。

トランプ登場がいかに事件だったか

ハミルトンモデルとは、高関税の導入による保護貿易を重視し、その間に国内の幼稚産業を保護し育成する。

その一方で国内市場の整備のために社会インフラと研究開発へと投資を向ける。そうすることで、農業から工業へ、さらには付加価値産業へと経済体制を急速にシフトさせることを目論む。

そうして競争力のある製造業を育てることで、輸出主導の経済体制を築き、それにより外資を稼ぐ。一方で国内消費を抑制する(≒高い税率の実施)ことで、国内投資を高水準で維持し、さらに輸出量を増やしていく。

このスキームの場合、外貨を稼がせてくれる輸出先の国々が、どこまでこうした輸出攻勢に耐えられるかで、成長性への上限が決められる。むしろ、中国は規模と速度の両面からこのハミルトンモデルの限界に挑戦しており、その意味でハミルトン流の最後の継承者であり完成者であるとすら考えられている。

このように著者二人にとって、ハミルトンはそれほどまでに特権的な存在である。彼らの世界は、ハミルトンが神として祀られている世界なのだ。

もしも、ジェファソンのいうような農業国へと建国時に舵を切っていれば、七つの海を制した大英帝国の国際通商網に組み込まれ、穀物や資源をイギリスに向けて輸出するだけの万年開発国に留まっていたとみている。

下手をすれば今日のアフリカのような状態が続いているか、よくてラテンアメリカ的な――スペインに資するために有利な大農場主支配によるプランテーション経済が遺制として蔓延る――社会状態に陥っていただろうと捉える。自由で競争的な経済体制をハミルトンがいち早く構想したからこそ、今日のアメリカがあると考える。

実際、そのような産業政策がアメリカ的だと思えるところは、政府と起業家による阿吽の呼吸の連携がアメリカの繁栄をもたらしたと考えているところだ。

政府が創るのは、あくまでも新たな競争空間(つまりは遊技場)であり、そこで実際に経済的果実を育て刈り取るのは、競争心に溢れる起業家たちである。UCバークレーがスタンフォードとともにシリコンバレーの知的拠点であるからなのか、著者の二人は起業家の力に絶対的な信頼を寄せている。

正直なところ、この点は、むしろ独立自営農民に伴う「独立自尊」や「自己統治」といった行動倫理(=精神)の現代版として、どちらかといえばハミルトンというよりもジェファソンの匂いがするのだが、著者たちはそのあたりも一刀両断し、その功績をハミルトンに与えている。

このように本書の内容は、全く当初想定していたものとは違ったものだったのだが、その内容のみならず、この内容が書かれた動機や意図まで想像を巡らせると、トランプ登場という事件が、経済政策を論じる人たちの間でもイレギュラーなことであったことがよくわかる。

トランプ登場以前に書かれた本を、トランプ後に翻訳として手に取る日本人読者にとっては、常に付いて回ることではあるが、しばらくの間は、この「時差」には十分気をつける必要があるのだろう。

逆に、そうした「時差」を意識することで、トランプ登場という事件のアメリカ社会にとっての重さについても(追認ではあるが)実感することができるのではないだろうか。

期せずして本書は、そのような意義を持つ一冊でもあったのだ。

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ゲームのルールは確かに書き換えられた! “世界”を変えた稀有な事件の記録

  
「アレグザンダー・ハミルトン伝」副題:アメリカを近代国家につくりあげた天才政治家 ロン・チャーナウ著[日経BP社](上)(中)(下)を読了して2009/10/14(水) 午後 11:33

日米は自国第一主義を唱えて交渉すべきでで、トランプ大統領が無理難題を吹っ掛けてきたら、TPP交渉と同じく徹底的に議論に持ち込めば、日本側の勝ちである。


執筆中

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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案は9日、参院特別委員会で与党などの賛成多数で可決された。本会議に緊急上程され可決、成立した。太平洋を取り巻く日米など12カ国が巨大経済圏を目指す協定だが、次期米大統領のトランプ氏が脱退を表明しており、発効は困難で漂流する可能性が高い。

 TPP参加国の中では米国抜きの発効を模索するべきだとの声もあるが、アジア地域での中国の存在感が一段と増すとの見方もある。TPPを軸としてきた安倍政権の通商政策の見直しは必至だ。

 TPPは、参加国の中でも経済規模の大きな日米が国内手続きを終えることが発効の条件となっている。TPPは参加国の間で昨年10月に大筋合意にこぎ着けたが、トランプ氏はTPPで国内の産業が不利益を被るとして、来年1月の就任日にTPP脱退を通告し、代わりに2国間交渉を求める考えを示している。

 安倍首相は米国抜きのTPPは「意味がない」と発言している。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)関連法案が国会で承認された。保護主義に流れず、自由貿易の拡大を成長の礎にしようとする日本の意思を内外に示した。

しかしながら現状条約では米国が参加しなければTPP発行は事実上不可能である。

私は、TPPに賛成の立場をとってこのブログでは持論を展開しているが、ここにきて米国のTPP不参加は、折角甘利明元再生大臣が舌が癌になるまで交渉を続けたのに発行できなければ、気の毒でしかたがない。

野党が主張するように無駄だとは思わない。TPP関連法案の成立は自由貿易を堅持する立場上必要であり、米国の不参加はむしろTPPを日本主導の21世紀の大東亜共栄圏にする大チャンスの到来ではないかと思っている。

だが、依然国内には左右両派を問わず反対意見が多く、保守派も分裂気味である。

「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」は、同年、「GDPは約4兆8000億円減少」「全産業で約190万人の雇用減」という影響試算を出している。
さらに、アメリカのタフツ大学も今年1月、「日本のGDPは10年間で0.12%(約56億4000万円)減少、約7万4000人の雇用減」という影響試算を公表。これらは政府とはまったく真逆の評価だ。
(略)
・リンゴやミカンなどの果樹農家が打撃を受け、水産業・関連産業で500億円の生産額減少
・残留農薬や食品添加物などの安全基準が大幅に下がる
・薬の臨床試験や検査が大幅にカット。また、ジェネリック薬品が作れなくなる可能性
・医薬品はさらに高額となり、タミフル1錠7万円のアメリカ並みかそれ以上に
・健康保険料が現在の2〜3倍になり、国民皆保険も解体される可能性
・パロディなどの二次創作物が特許権に反するとして巨額の損害賠償を求められるように
・政府はプロバイダを規制できるようになるため「知る権利」「表現の自由」が大きく損なわれる
・外国企業から訴えられるために最低賃金引き上げができなくなる
 そして、最大の問題が、「ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)」だ。前述した遺伝子組み換えの食品表示などもISD条項が問題の根本にあるが、それはISD条項が企業などの投資家を守るためのものであるためだ。しかも、国内法ではなく国際仲裁機関が判断を下すISD条項は、〈最高裁判所の判決よりも、ワシントンD.C.の世界銀行にある仲裁判断の決定が効力を生じることになっている〉(前掲書より)。これは日本国憲法76条第1項「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」に反することになる。さらに〈私たちに憲法上保障されている基本的人権もTPP協定によって損なわれていくことになる。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるが、TPPでは貧富の格差がさらに拡大して、金持ちでないと医療も受けられず、安全な食料も手に入らなくなってくる〉のだ。
TPPは日本を破滅に導くと言う主張に対して、どうしても私は鵜呑みにできない。

反対派の最大の反対理由がISDS条約項だ、日本の最高裁判所の判決よりワシントンDCにある世界銀行の仲裁裁判所が優先し、米国を利する条約というより国際的企業や投資家を利する条項であるということがTPP反対派の根拠となっている。

もともとISDS条項は投資家が外国人であるという理由で不当な扱いを受けるのを防ぐというのが本来の目的である。日本の規制にはほとんど内外格差がない。反対派はわざと隠しているのだが、内外格差のない規制は訴訟の対象になりません。

政府は日本の規制は人ではなく、行為に対してかけるものだから、どの国の人や企業であろうとも必要な規制はかけていくことができる。しかし、反対派はS.D.Meyers事件Metalclad事件Etyl事件等をこの条項の悪用の事例としてあげ、米国のコングロマリットが悪用し、日本の国益が著しく損なわれると主張している。
輸入品が増えることによって国内の農畜産物が大打撃を受けることは明々白々で、廃業に追い込まれる生産者は続出するだろう。となれば、食料自給率も低下するのは必然だ。日本の食料自給率は2015年のデータでもカロリーベースで39%と主要先進国のなかでも最低水準なのだが、農林水産省は2010年の試算でTPPが発効されれば食料自給率は14%に低下すると発表している。それでなくても命に直結する食を海外に依存している状態であるのに、もしも気候変動で農作物が凶作となり輸入がストップしても、そのとき国内に広がっているのは生産者のいない荒廃した農地だけだ。
(略)
さらに〈私たちに憲法上保障されている基本的人権もTPP協定によって損なわれていくことになる。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあるが、TPPでは貧富の格差がさらに拡大して、金持ちでないと医療も受けられず、安全な食料も手に入らなくなってくる〉のだ。
危機は煽ったもの勝ちな側面はある。例えば、「TPPはアメリカの陰謀であり、日本が植民地化される」「TPP賛成という者は亡国の徒だ」と左右両派より危機を煽る
TPP亡国論とでもいうべきものは、私は胡散臭く感じてならないのだ。

反対派の主張を読むと仮定の状況による脅迫である。だが、TPPは高水準の貿易自由化と公正なルールを掲げ、通商協定の世界標準たり得る先進性を備えている。

TPPは法の支配や市場経済が不十分な中国が主導するのではなく、日米など自由主義国が構築する自由貿易のルールであって、米国の陰謀というのは日本人が持つ米国に対する超巨大国家のイメージを悪用した、政治的なプロパガンダであり、危機煽動マスコミ言論人達の商売ネタに思えてならない。第一、米国側からもTPPは日本の陰謀だと言う主張をする輩がいて、それをトランプ支持者達は真に受けている。

TPP反対派は農協の利益を代弁しているに過ぎないような気がする。農協など貿易の自由化によって不利益を得る人たちや、衰退産業(家電製造・印刷など)で働いている人、規制で分厚く守られている人たち(医療・農業・電気・ガス・運輸など)にとっては、TPPは陰謀なのである。

不況の出版界や衰退する新聞やメディアにとって、危機だ陰謀だと喧伝することは、ご飯を食べていくうえでの貴重なである。TPPは陰謀であり危機ということで商売にしている言論人やマスコミは多数見受けることができる。

明日にも日本国債は紙切れになり預金が封鎖されると危機を煽り、商売を続けている言論人は掃いて捨てるほどいるが、そういう人達ほど諭吉が大好きなのである。

安倍内閣発足以降、来年は大恐慌になると言う本は影が薄くなったが、10年、20年続けて来年こそは大恐慌の再来だとか、地震でも恐慌でも言い続ければいつかは当たるかもしれない。
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いかがわしいノストラダムスの大予言の系譜である危機煽動言論は割りのいい商売であり、TPP亡国論もそのネタにされていると思う。

日本の農業は、TPPで絶滅だと反対派は主張するが、地産地消の考え方が強い日本で、日本の農業が絶滅することはありえないし、世界各国で進む日本食ブームにのって、日本の農水産物は高級職食材として、世界に売れる可能性が高いような気がする。日本の農業はもしかすると高成長産業の卵であるような気がする。TPPは野菜果物などの農水産物を海外に輸出する切っ掛けとなると思う。また、我々庶民にとっては、格安な食材が輸入されることは歓迎である。

農水産物は輸入と国産はおのずと棲み分けることになり、日本産の食材は高級ブランド化するのではないかと思う。

またTPPのもう一つの本質が中韓排除の国際戦略であるが、そのことに焦る中国韓国のプロパガンダがTPP反対派に隠し託されていると私は思うのである。 

TPPは中国を蚊帳の外に置くことにより中国経済に対する過度な依存を避け、米国が経済的な優位をアジア太平洋地域において維持し、中国を抑制するための戦略的枠組みであった。TPPが頓挫すれば各国が対中傾斜を強め、中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に主導権を握られ、日米が推し進める中国排除の国家戦略に影響を及ぼしてしまう。


今回トランプ次期大統領のTPP離脱宣言で、域内での中国の影響力は高まる可能性は高い。それが中国が経済、軍事両面での覇権主義的傾向を強めることにならないか、警戒を怠るわけにはいかない。

だが、トランプ次期大統領はTPPに頼らず独自に中国との対決する姿勢を取り始めた。台湾を国際社会に再登場させることにより、中国封じ込めに動くようだ。

[ワシントン 5日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。

米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直接コンタクトを取っていなかった。

トランプ氏と蔡氏の電話会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて米国政府に抗議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和、民主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を損ないかねないと警告した。


もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘する。

同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏との10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変更を示すものではないとして、火消しに追われている。

しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であるスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お好きなように」と述べた。

元米高官を含む専門家らは、台湾首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないとみている。

トランプ政権の国務長官候補の1人とみられているジョン・ハンツマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、対中政策において台湾は「有益なレバレッジポイント」であることが証明されるかもしれないと語った。

同じく国務長官候補に挙がっているトランプ氏のアドバイザーで対中タカ派のピーター・ナバロ氏とジョン・ボルトン元国連大使は共に、アジアの領有権問題で主張を強める中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を提案している。

だがこうした戦略は非常にリスクを伴うと、オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)で東アジア政策を統括するアジア上級部長を務めたエバン・メデイロス氏は指摘。「中国は1990年代半ばに、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと非常に明確に伝えてきた。これは米国が試すべき問題だろうか」

「台湾問題は政治的にとても慎重さを要する問題であり、中国にとっては、他の何かと取引をすることはないであろう非常に優先度の高い利益だ。もし米国が台湾と正式に外交関係を結ぶことを決めたなら、北東アジアで軍事危機が起きてもおかしくはない」と同氏は語る。

米共和党政権時代のホワイトハウス高官で、2002─2006年に米国の在台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)台北事務所元所長のダグラス・パール氏は、トランプ氏の側近らのアプローチは、中国が現在よりも弱く、米国が強硬姿勢を取れる立場にあった1990年代に基づいているようだと話した。

「問題は、中国政府が1996年に(軍備の)10カ年増強計画を決めた。そのようなことを再び受け入れなくてはならない必要性は全くないだろう」と同氏は述べた。

<中国試し>

パール氏によれば、中国の習近平国家主席には、来年の党大会で地位固めをしたいという思惑があり、「台北事務所を正式な外交機関にするというような柔軟な態度を習氏が見せれば、ライバルたちの餌食(えじき)となる。そのような事態は起こさないだろう」との見方を示した。

また、米上院外交委員会のクリス・マーフィー民主党議員は、北朝鮮の核問題や通商問題で中国に圧力をかける方法として台湾を利用することは逆効果だと指摘している。

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、トランプ氏と同氏の政権移行チームに助言する人たちも、40年来の「1つの中国」政策をあからさまに破ることには警鐘を鳴らしているという。

その結果、トランプ氏はまず、日本や他のアジア同盟国を動揺させないよう、米政策転換の兆しというような形ではなく、個人的な問題として電話会談を要請した。

だがその後トランプ氏が、為替操作や関税や南シナ海問題をめぐり、中国を非難するツイートを行うと、一部のアジアの国からは中国を故意に挑発して、危険なまでに緊張を高めることになるのではないかとの憶測を呼んでいる。

ニクソン大統領の歴史的訪中(1972年)の際に通訳を務めた元米外交官のチャス・フリーマン氏によれば、中国当局者は現在、トランプ氏の大統領としての意図がどのようなものとなるのか静観しているのだという。

「彼ら(中国)はトランプ氏を侮辱したくもなければ、同氏と感情的に対立したくもないと考えている」と同氏は指摘。「トランプ氏に対し、『疑わしきは罰せず』というのが当初の反応だろう。同氏が自分のしていることの重大さを理解しておらず、周囲の人たちに操られている可能性もあると」と語った。


台湾の蔡英文総統との電話会談や、一連の中国批判のツイートなど、トランプ次期米大統領の対中戦術は、厳しい両国関係の訪れを予感させている。だがロイター・ブレーキングビューズのコラムニスト、ピート・スウィーニーは、これこそがまさにトランプ氏の戦略だと指摘する。
(David Brunnstrom記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
有難いことである、TPPを締結しなくとも、米国は中国を封じ込めることに傾いている。

次期米大統領のトランプ氏が就任時に離脱を正式表明しても、域内で米国に次ぐ経済力を持つ日本には、合意を現実の自由貿易に生かす方策を探り、その他11カ国の結束を主導する責務がある。もちろん米国の翻意を表面上促すべきだが、米国が加入しなくてもいいと内心思っている。

ならば日本は、米国抜きでTPPもしくはTPPに代わる新貿易ルールは新しい21世紀の大東亜共栄圏をアジア太平洋地域に構築できる絶好のチャンスと思う。

TPP参加国の首脳は米大統領選後に開いた先月の会合で、発効に向けた国内手続きを進めることを再確認した。日本が11カ国を取りまとめ、TPPを事実上日本主導に変えることができるかもしれない。
 
今後はTPPを米国抜きで発効させ、米国の参加を待つことについて、加盟国間で具体的な協議に入るべきだろう。もとより、TPPは米国が加わらないと発効できない規定になっているので、再交渉が求められる。

米国以外の11カ国は、米市場での利益に期待して合意した。その構図を崩し、「ガラス細工」と評される内容を修正するのが困難なのだが、日本は推進役として、TPPを換骨奪胎するチャンスでもある。TPP不人気の最大要因であるISDS条約項をどさくさまぎれに骨抜きにしたっていいだろう。

ISDS条約項を骨抜きにすればこれまでTPPに関心を寄せてきたインドネシア、タイ、台湾などにも参加を促すチャンスでもある。TPPの合意が遅れたのは米国の譲歩をしない強引な姿勢があまりにも酷かった為であり、米国を抜きにTPPを再交渉すれば、TPPをより納得できる相互主義的な自由貿易協定にブラッシュアップすることが可能であると思う。TPPは日本主導の海洋国家による自由貿易同盟に育てるべきだと思う。さすれば4年後米国は頭を下げて毒が抜かれたTPPに再加盟を考えるだろう。

2016/11/12(土) 午前 11:44 


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Clyde Russell

[ローンセストン(オーストラリア) 1日 ロイター] - 今回の石油輸出国機構(OPEC)合意のキモとなるのは、これは実は減産ではなく、むしろグローバル市場でダブついている原油を部分的に解消するだけ、という点だ。

日量120万バレルの減産というOPEC合意によって、グローバル石油市場がタイトになることはほぼ確実だが、それでも来年上半期は大量の原油が市場に出回る可能性が高い。

ロシアなど非OPEC産油国が、さらに日量60万バレル減産するという約束を守るとしても、やはり状況は変わらないだろう。

もちろん、合意が発表された当初の市場反応からは、需給バランスが大幅にタイト化すると投資家が予想していることがうかがえる。米原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物CLc1は4.21ドル上がり、1バレル49.44ドルと、9.6%の上昇となった。

OPECが2008年以来となる減産合意を発表した際、WTI先物も1日の変動幅としては2月以来最大となる10%の上昇を記録している。過去最高水準にあった原油価格は、グローバル金融危機とその後のリセッション(景気後退)の影響を受けて急落していた。

表面的には、今回の原油価格の動きは、世界的な石油供給がかなり大幅に減少するという展望に反応している。まさにOPEC加盟国の閣僚たちが目論んだ通りである。

だが、もう少し詳細を掘り下げてみれば、OPEC減産合意の規模、そしてその最終的な影響について疑念がわいてくる。

大きな問題は、ウィーンで発表され、1月実施を予定する減産合意が、10月時点でのOPEC生産量を基準としているという点である。当時、OPEC生産総量は過去最高水準にあったからだ。

<過去最高からの減産>

OPEC最大の生産国であるサウジアラビアは、日量120万バレルという減産合意の相当部分を引き受け、生産量を日量48万6000バレル削減し、1005万8000バレルとする予定だ。

だが、この数字は、今年1月時点でのサウジアラビアによる生産日量1025万バレルに比べてわずかに低いだけである。つまり、サウジアラビアが予定どおりに減産したとしても、1年前の生産量とほとんど変わらないのだ。

30日合意で意外だった点の1つは、イラクが日量21万バレル減らし、生産量を435万1000バレルとすることに合意したことだ。だが、それでも今年1月の生産日量425万バレルに比べれば多い。つまり減産に合意した後でさえ、前年比ベースでは増産となる。

イランは1月以降、10月水準よりも増産となる合意を獲得。割当量は日量9万バレルだけ増加し379万7000バレルとなる。これは、今年1月のイランの生産日量305万バレルに比べて、100万バレル近くも多い水準である。30日に発表された120万バレルの減産とは好対照の数字だ。

他の主要湾岸産油国でも、今年1月の生産量と比較した場合、2017年1月以降の割当量はほんのわずか減少しているにすぎない。

クウェートは今年1月の日量280万バレルに対し270万7000バレルの生産を認められた。アラブ首長国連邦の割当量は287万4000バレルで、1月の289万バレルから微減にとどまっている。

<生産量は実質的に横ばい>

OPEC全体では、今回の減産合意の基準とされている今年10月の生産量は日量3382万バレルだった。

この総生産量から日量120万バレルを引くと約3260万バレルとなる。これは今年1月のOPEC生産量とまったく同じである。

ロシアは、OPEC諸国の減産の動きに同調すると約束している。両者が共同歩調を取るのは2001年以来となるが、世界最大の産油国であるロシアがどのレベルを基準として減産するのかは直ちには明らかにされなかった。

仮にロシアが10月の生産量を基準にすると仮定すれば、日量30万バレル減産の場合、生産量は、旧ソ連崩壊後の最高水準だった日量1120万バレルから1090万バレルに減少する。これは今年1月の同国生産量1088万バレルを上回っている。

実質的に、OPECとロシアの計画は、両者を合わせた生産量を今年1月の水準まで戻そうということであり、これが持続的な価格上昇に向けた刺激として十分なのかどうかという疑問が残る。

減産合意が遵守されるのかという懸念はさておき、今回発表された削減によって、需給バランスをしっかりと供給サイド有利に傾けるというのは難しい課題に思われる。

今回の合意に参加していない、特に米国とカナダの生産者は、少しでも価格が上昇すれば、その機を逃さず生産量を増やすだろう。

加えて、もし市場構造がより逆ザヤ方向に動く、つまり先物価格が先に行くほど期近より安くなる状況が生まれれば、現状では在庫となっている数百万バレルの一部が市場に放出される可能性が高い。

さらに、原油価格が現在のような上昇を続ければ、中国と、そして程度は小さいもののインドが、戦略的備蓄用の石油購入ペースを緩めるだろう。そうなれば、アジアの石油輸入国上位2カ国で需要の伸びが弱まることになる。

結局のところ、OPECが今回の減産合意で達成するのは、原油価格の底打ちと、OPECの影響力がまだ残っていると市場が理解するだけにとどまるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
8年ぶりOPEC減産合意後、マーケットはWTI原油価格ぼ60ドル~70ドルを目指すのではないかと期待して上昇しているが、アラム石油が上場するまで仮そめの合意だろうと思う。まあ、短期勝負なら一度は1バレル60〜70ドルもあり得るかもしれません。

  OPEC減産合意で原油は世界供給不足へ、1バレル60ドル向かうとブルンバーグあたりは言っているが、所詮来年サウジの国営石油会社アラムコ石油が上場するまでで、上場したら、ゲーム理論の囚人のジレンマからすれば、ごとく裏切りしあうのではないかと私は思っている。お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマである。

上場するにあたり、石油価格が乱高下していては上場すれば世界最大の時価総額になるであろうアラムコ石油の株が高く売れないので、サウジアラビアが譲歩する形で少しでも原油価格を高く維持できれば、高い公開価格が設定でき、財政難に陥っているサウジ政府はイランには、減産ではなく増産凍結で譲歩たのも理解できる。


減産見送りの場合はWTI原油が30ドル割れへ下落するとの警戒感も台頭していた。しかし、OPECの減産合意を受け、WTI原油は11月29日の45.23ドル/バレルから30日には49.44ドルヘ急騰。市場はOPECの減産合意を好意的に受け止めている。

ロシアはオペックの減産合意を受けて、ノバク・エネルギー相は同日、原油生産を最大で日量30万バレル削減する用意があると表明した。だがロシアなど非オペック諸国が、どれくらい裏切らず、減産合意を遵守し続けることができるであろうか?

今回の減産合意でOPEC生産量が3、250万B/Dへ減産されれば、2017年は原油
供給が不足へ転じる試算と言われているが、不足し原油価格が上昇すれば、米シェールオイルが増産するだろう。短期間での大幅増産は想定しにくいが、将来増産されることがわかった段階で下落するだろう。勿論アメリカファーストのトランプ政権は増産にNOと言う訳がない。シェールオイルを手にした米国は中東から手を引くのだ。

米国が中東から原油を買うことをしなくなれば、中国が中東に顔を突っ込む形となるだろうが、金もないのに金があるように振る舞えるのもいつまで続くのだろうか?いつ中国経済が崩壊するかもわからない現状で、中国需要も予測通りに増えるのだろうか?

世界的にEVが今後爆発的に普及する兆しがあるなか、ガソリン車が今後需要が減れば原油の需要予測は将来的に右肩上がりではなくなる。


国営石油アラムコのIPOは原油需給を悪くせずに埋蔵資源を現金化できる新たな仕組みだと若きサウジの実力者ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は目論んでいる。サウジは原油を増産しなくとも現金を手に入れることが出来ると考えているようだが、これはかつてバブル期に日本のNTTが上場したことに等しいのではないかと私は思う。サウジ・アラムコ社の株価の需給が今後原油価格の騰落と密接にリンクするようになり、原油価格がオペック主導で調整することが難しくなるのではないかと私は思う。
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【東洋経済】2016.5.28
アラムコの確認埋蔵量は約2600億バレルと石油メジャー最大手・米エクソンモービルの10倍強だ。企業価値の正式な算定はこれからだが、2兆ドル(約220兆円)以上とサウジは見積もる。時価総額で、世界最大の米アップルのおよそ3倍と、市場関係者は沸き立つ。

IPOは2段階で行われる予定だ。まずアラムコ株の最大5%を売り出す。5%といえど1000億ドル(約11兆円)。14年の中国アリババIPOでの調達額250億ドルの4倍の規模になる。その後、石油メジャーなどと合弁で展開する、石油精製や石油化学関連会社の上場を検討する。
サウジ・アラムコの時価総額は現在産予想の範囲ではあるが、埋蔵石油量などから算定すれば、2~3兆ドル(220~330兆円以上)といわれています。

【Yahoo】 時価総額ランキング(米国)(下の画像参照)で見る限り12/2現在世界最大の時価総額のアップルが5859億ドル(約60兆円)。
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 サウジ・アラムコの予想時価総額がとてつもなく巨大であるかがわかります。

しかし上場はおよそ5%の株式を上場させる計画だ。5%といっても1000~1500億ドルです。ちなみに2014年に上場したアリババが過去最高の250億ドルです。

アリババと言えばソフトバンクの孫正義が出資したことで一躍中国市場でシェアを握ったことで有名fだが、そのソフトバンクの孫正義はサウジと先端技術ファンドを組む。 ソフトバンクがサウジと10兆円巨大ファンド、先端技術投資を加速
【ロイター】2016年 10月 14日 15:47 JST 

話が逸れたが、巨大な時価総額なIPOが市場に与えるインパクトは大きい。
アリババは上場後低迷し、ようやく戻ってきたところだ。
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問題は、5%だけしか初回に市場に放出しない点だ、おそらくサウジが財政に困る度、アラムコ石油株は放出するだろう。となると株価の需給が長期的に悪くなる。

まるで、バブル期に株式を放出してその後2回.3回と都度放出して、日本の株式市場を長期低迷させた原因を作ったNTT株の放出を世界規模でやるようなものに見えてしまうのは私だけだろうか?


サウジ・アラムコ石油上場すれば、原油価格のオペックの影響力が今後ますます減るだろう。となれば、今後ますます、原油価格は需要者優位で進む可能性が高い。
となれば、原油価格が長期的に上がり続けることはないと思う。



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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案が衆院を通過した。

 その一方で、TPP離脱を唱えるトランプ氏が米大統領選に勝利し、発効は極めて難しくなったという現実がある。

 TPPは米国が加わらなければ発効しない仕組みだ。それゆえ、日本が率先して審議する必要などない、という議論が野党などにある。だが、これには同意できない。むしろその逆ではないか。

 トランプ氏に世界が抱く大きな懸念の一つは、保護主義の広がりである。自由貿易の推進で各国が結束を図り、そうした動きを阻むことが必要である。

 参院審議を確実に進め、日本が批准を果たすことは、その意思を具体的な行動で示す意味がある。保護主義の流れを断つよう米国に求める前提にもなる。

 安倍晋三首相は17日にニューヨークでトランプ氏と初めて会談することになった。日米同盟を維持、強化していくため、早期の顔合わせは重要である。

 安全保障のみならず経済でも日米が協力し、同盟の実を上げていく大切さを訴えるべきだ。トランプ氏の真意をただし、孤立化を避けるよう促してもらいたい。

 その後にあるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、TPP参加国を糾合し、任期中の議会承認に望みをつなぐオバマ大統領を後押しすることが肝要だ。安倍首相が指導力を発揮すべき場面である。

 TPPに期待される本来の意義を思い起こしてほしい。

 日本は人口減少の本格化で国内市場の縮小が想定される。安定的な成長を実現するには、海外経済の活力を取り込むほかない。

 同時に、法の支配や民主主義などの価値観を共有する日米が軸となり、アジア太平洋地域の新たな経済的枠組みを築く。それに資するのがTPPである。

 民進党の蓮舫代表が衆院採決に先立って、「新大統領に失礼に当たるのではないかと懸念している」と語っていた。

 いかに国益を高めるかを忘れた発想であり、耳を疑った。

 参院では、経済連携を成長につなげる改革の具体策や、負の影響を抑える対策をさらに議論してもらいたい。食の安全や知的財産、投資紛争処理などの論点も、自由貿易を進める上で欠かせない課題である。
トランプ次期大統領はTPPを棚上げにするのは必至だろう。
これはある意味日本のチャンスである。日本のTPP反対論の多くはISD条項は日本を米国に売り渡すと言っていたが、米国のTPP反対論もISD条項は反対なのだ。

米国がTPPから離脱したならば日本主導でTPPが組織され、これはかの大東亜共栄圏の再来である。TPP法案は可決しておくのが日本として得策である。
米国抜きはもしかしたら日本にとって神が与えし好機かもしれない。
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厳密に言えば、大東亜共栄圏の満州国やタイやビルマはTPPに名を連ねてはいないが、日本主導の東アジア~太平洋一帯の新秩序の構築はTPPに繋がるものがある。
かつて、日本と米国は太平洋の覇権を争って戦争をした。「大東亜共栄圏」という名の経済圏を築こうとした日本。それは自国でまかなうエネルギーや食糧確保のためでもあった。米国が抜けたTPPはエネルギーや食糧確保といった意味合いが減るかもしれないが、一種の新しい日本文化圏の形成に役に立つ可能性が高い。

 アジア、中東、アフリカ…、21世紀の現在の世界情勢をみてみると、その陰には米中の覇権争いがある。当初、中国と米国が太平洋の覇権を掛け鎬(シノギ)を削る為にTPPを米国が利用しようとしたのだった。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の本質は中国外しの経済協定である。それに対して中国は「東アジア共同体」という名の中国版「大東亜共栄圏」で対抗している。TPPを日本国内の産業を保護するか否かだけで論じては、その方向性を見誤ってしまう。

米国がTPP離脱が確実視されるなか日本はTPPを推進する理由は、日本はTPPを通して中国のルールを無視した取引を排除して、自由と公平に基づく経済圏をアジアに構築したいと考えている。中国の影響力を排した21世紀の公平なルールを確立して日本をその中に置きたいと思っている。自由貿易、民主主義とは相まみえない中国を排除することがTPPの目的でもある。

日本主導のTPPによって環太平洋諸国アジアに自由、民主主義、基本的人権、法治などの基本的価値観を共有することができる、米国抜きであればよりアジアの安定を計れるかもしれない。 米国は4年後改めて加入するか国内で議論してからTPPに参加すればいいだろう。



日本は米国のエネルギー戦略の変化も国益を考えた国家戦略を組み建てなくてはならない。
しかし、なにもガソリン石油エネルギー権益を獲得することが能ではない。
和製メジャーを作るだけではなく、核融合、メタンハイドレードを開発する国営企業を育てるべきではないだろうか?

日本は国益を追求した独自の外交をする好機であり、戦後占領体制からの脱却を計る絶好のタイミングになるかもしれません。

2016.11.14追記
【シンガポール=吉村英輝】米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、見通しが厳しくなった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、米国抜きの発効を目指す動きが出てきた。中国を加えるべきとの声も出ており、日米による通商・安全保障面などでの“中国包囲網”が崩れる可能性もある。参加国首脳は、19日からペルーの首都リマで始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、対応を協議する。

 メキシコのグアハルド経済相は10日、トランプ氏が掲げる北米自由貿易協定(NAFTA)見直しに懸念を表明。さらに、TPPが頓挫するならば、発効に米国の批准が事実上必要となる現在の条項について、「各国と変更を協議する必要がある」と語った。

 また、TPP参加12カ国中、日本も含めメキシコやニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、ベトナム、マレーシアの7カ国が年内に協定を批准するとの見通しも示した。

 一方、ペルーのクチンスキ大統領も11日、「米国抜きの(TPPに)似通った協定に置き換えることもできる」とし、中露2カ国も含まれるべきだと語った。

 オーストラリアのビショップ外相は、各国は米新政権にTPP批准を働きかけるべきだと説く一方、TPPが発効しなければ、「生じた空白は(日中韓印など16カ国が交渉中の)東アジア地域包括的経済連携(RCEP)で埋められることになる」と述べ、地域の通商体制再編で、米国外しの流れが強まると牽制した。

 TPPは関税削減だけでなく、知的財産保護や政府調達などの公正なルールも定めた次元の高い協定。専門家は「経済関係強化と自国の効率性や生産性向上に向け、11カ国はまず米国抜きで再交渉し、TPPを暫定発効してもいいかもしれない」と指摘している。


東アジア地域包括的経済連携(RCEP)とか、APECのような中国・韓国と関わるような貿易協定については日本は関わるべきではなく、推し進める外務省は国益を考えていない。日本の国益は中国・韓国との関係希薄化だと私は思う。遠交近攻である両国の外交戦略通り、日本も遠交近攻で応えるべきである。TPPの利点は中韓を加盟させないことこの1点であり、米国抜きでもTPPは推し進めるべきである。







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10月ドイツ銀行の破綻は予想された危機なので今のところ回避されたようだ。だが予想外の事態はリスクだ!現在マーケットではヒラリー楽勝の予想が流れているが、11月8日米大統領選の結果が蓋を開けたら突然のトランプ大統領となった場合はどうだろう?大きな衝撃波が襲う可能性があるような気がしてならない。
為替などは一気に1ドル=100円割れである。

トランプ大統領誕生の可能性を示す数字
【アゴラ】渡瀬 裕哉2016年10月18日 22:00

トランプの女性蔑視スキャンダル炸裂、しかし接戦州の世論調査はまだまだ拮抗状態

トランプ氏のいわゆる「ロッカールームの中」の会話が暴露されたことで、共和党のエスタブリッシュメントらが次々と離反し、トランプ陣営は崩壊するかと思われました。しかし、その支持率は意外と粘り腰を発揮している状態です。

10月17日公表のCNNの世論調査でオハイオ州ではトランプ氏がヒラリーを僅かに上回る支持率を獲得しており、その他の地域を対象とした各種世論調査でも接戦州でヒラリーとの差は概ね5%以内におさまっています。

http://www.realclearpolitics.com/epolls/latest_polls/(世論調査総合サイト)

トランプ氏の最も支持率が高かった状態から著しい落ち込みを見せていますが、巷で語られているように「ヒラリー圧勝で完全に勝負がついた」と言い切れるほど現実の数字は離れていません。

共和党支持者・民主党支持者の間に広がる溝は簡単に乗り越えられるものではない

トランプ氏の女性蔑視発言(というよりも家族の価値観を毀損する発言)は、伝統的な家庭像を大切にする米国共和党保守派にとっては極めて問題があるものでした。ただし、トランプ陣営は第二回テレビ討論会などの大舞台で共和党保守派に対する強烈なメッセージを送って止血を図ることに成功しています。

TV討論会についてもトランプ・ヒラリー両者の勝敗に関して共和党支持者・民主党支持者の理解には相違が存在しており、同じテレビ討論を見ても同一の評価に辿り着くことが難しい状況です。また、そもそもトランプ氏に圧倒的に不利な問題設定がなされているテレビ討論会自体を共和党支持者は快く感じていない向きもあります。

共和党のエスタブリッシュメントがトランプ氏への不支持を表明したとしても有権者の間に生じている亀裂は解消されるわけではなく、トランプ支持・ヒラリー支持の割合が大きく崩れず、選挙戦までギリギリの拮抗した状況が続くものと思います。

仮にヒラリー陣営にスキャンダルが新たに発生することになった場合、現在のヒラリーやや優勢の状況に変更圧力が加わることになり、場合によってはトランプ氏の支持率が相対的に回復する可能性もあります。

トランプ・ヒラリーの争いに嫌気が差した有権者が第三極に流れていく可能性も・・・

最近、オバマ大統領を始めとする民主党陣営はリバタリアン党のジョンソン候補に対するネガティブキャンペーンに力を入れていました。これはサンダース支持者などの積極的にヒラリーを支持しているわけではない民主党支持層がリバタリアン党のジョンソン候補や緑の党のステイン候補に流れ始めていたからです。

ヒラリーを表面的に支持する層は決して積極的なヒラリー支持者ばかりというわけではありません。むしろ、サンダース支持者などの反ヒラリー的な要素を抱えた有権者も多く存在しており、それらの層が大統領選挙への投票を棄権する可能性や第三極候補に流れる可能性が存在しています。

サンダース氏との予備選挙中から常に指摘されてきたことですが、ヒラリー自身は何故彼女が大統領になるべきなのか、という説明を怠り、いまだにその正統性について十分に有権者にアピールできていません。

トランプ支持者・共和党保守派はエスタブリッシュメントの牙城を崩せるのか

一方、トランプ氏の支持者は、熱烈なトランプ支持者、共和党保守派、名ばかり共和党員(RINO:Republican in Name Only)に分かれています。熱烈なトランプ支持者は予備選挙中に新たに共和党に加わった層であり、トランプ自身を積極的に支えるインセンティブを持っています。

トランプ氏が共和党保守派へのメッセージが功を奏して同支持者からの支持低下を食い止めることが出来た場合、最初からヒラリーを事実上推している共和党のエスタブリッシュメントなどのリベラルな傾向があるRINOが裏切ったところで十分に戦うことができるでしょう。

実際、トランプ支持者と保守派支持者からの突き上げを食らって、トランプ不支持を表明した議員らが態度を一転して軟化させるケースも出てきています。共和党指導部が諦めても地場の共和党員はまだまだ戦う意欲が残っている状況です。

不確定要素が多く残された米国大統領選挙、トランプ勝利の可能性はあるのか?

関ヶ原の合戦中に小早川の裏切りにあったようなトランプ陣営ですが、困難な状況を逆転する可能性が残されているのでしょうか。かなり苦しい状況ではあるものの、トランプ勝利の可能性は残されています。

その根拠はヒラリー・クリントンの不人気です。現在、米国では毎日のようにメディアとセレブがトランプ・バッシングを繰り返して滅茶苦茶な状況になっていますが、トランプのネガティブ情報のシャワーを浴びさせられているはずの有権者がヒラリー支持に雪崩を打って流れ込む状況になっていません。

世論調査によってはトランプ氏よりもヒラリーのほうが当選後のスキャンダルについて心配する比率が相対的に高いという結果になったものすら存在しています。ヒラリーも有権者から信任を得ているとは全く言えない状況です。

むしろ、ヒラリーに対する不信感はメディアが盛り上げるトランプへの拒絶感よりも米国民の底に根差したものであるように感じられます。ヒラリーに対する不信感はマグマのように滞留しており、一度噴き出すことになれば押し止めることは困難でしょう。そのとき、トランプ氏が大統領選挙で勝利を得るという構図が生まれることになります。

いずれにせよ、既に米国大統領が決まる日まで一か月を切っています。「既に決着がついた」というヒラリー陣営の選挙キャンペーン(笑)が横行していますが、勝敗はまだ予断を許さない状況です。
ヒラリー圧勝に見えるけど・・・・フロリダ・オハイオなどグレーの州がトランプになったら・・・・逆転する可能性が残されている。でも・・・勝負はあったように見える。
はい、ヒラリー・クリントンの「レズ疑惑」というのは、ずいぶん前からあるらしいんですが、その「真偽」は、いまだに定かではありません。
そんな中、ぎょつとするような記事を見つけました。
そのわりには、あんまり話題になっていないような…昨年の5月ごろの記事のようなんですが。
まあ、「古い話(70年代)だから」という、「時効」という意味もあるのかな…。
女性どうしが、「恋愛関係で付き合う」のは、別に犯罪ではないし、いいんじ
やないんですか。
まあ、どっちにもパートナーがいたから、正確には「浮気」になるんじゃない
か…とは思うんですが。
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http://worldnewsdailyreport.com/yoko-ono-i-had-an-affair-with-hillary-clinton-in-the-70s/

The celebrity admitted laughingly to having “a fling” with her at the time and acknowledged her election “would be a great advancement for LGBT and Women rights in America” she added.

オノヨーコは、笑いながら、当時、ヒラリーと一線を越えていたことを認め、大統領選について、「(彼女が大統領になったら)LGBTや、女性の権利に対する大きな進歩になると思うわ」と述べた。

“We met many times during the New York Vietnam War protests in the 1970s, and became very intimate. We shared many of the same values about sexual equality, fighting against the authoritarian, patriarchal, male-dominated society we were raised in” she explained.

 「私たち(ヨーコとヒラリー)は、70年代にベトナム戦争への反戦運動の間、NYでしょっちゅう会っていて、非常に親密になっだの。
私たちは、自分たちの社会に対し、男女間の平等とか、権威主義や家父長制や、男性優位社会への反発とか、多くの価値観を共有していたの」

“We had a brief romantic fling when I lived with John in Manhattan and Hillary was studying at Yale, but eventually we lost touch. I am amazed how things are going well for her and wish her the best for her campaign” she told reporters during the press conference.                            
「私かジョンとマンハッタンに住んでいたころで、ヒラリーがイエールで勉強していたころに、私たちは、短期間、恋愛関係になったんだけど、そのうちに疎遠になっだの。私は、彼女がこんなに出世して、本当に驚いているし、(大統領)選挙で勝ってほしいと願っているわ」


ヒラリーが大統領になることが、「LGBTの権利の進歩にもなる」とか、言い切っている笑。
まー、オノヨーコくらいになると、もう、なんでも言えるというか、何を言ってもOKというか。そういう感じなんでしょうかねえ。

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 ただし、ヒラリーのほうは、そうじゃないんですよね…。
彼女は、「キリスト教のカルト国」の大統領になりたいわけだから、別に犯罪ではないけれど、「レズビアンです」というわけには、いかないんですよ。
まあ…オノヨーコとの件は、「若気の至り」とか、「時効」とか、そういうことで済ませるんでしょうが、私は、ヒラリーは「ガチのゲイ」ではないかという感じが、かなり、するんですよね。
だから、相手がオノヨーコだけだったはずはないんですが、だからというか、噂はいっぱいあるんですが。
ヒラリーは、「カミングアウト」は、できないでしょうねえ…「票」がごっそり減るに決まっていますから。
ジョディ・フォスターみたいな感じで、カムアウトしたいと思ったことは、あるんじゃないのかなあ。
まあ、あの人なんかも、よくも、あんなに長い間、「異性愛者のふり」なんかできたなあというか、やっばり、それくらいに、同性愛には、厳しいということなんでしょうね。アメリカでは。
まあ、ヒラリーレズ疑惑については、夫のあのダラシナイ性癖ならさもありなんと、思っているのかもしれません。オノヨーコとヒラリーのレズシーン・・・例え若時の二人でもあまり見たくはない。                                        
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ドイツ銀行の破綻が引き金になるとされている10月金融危機説は、完全に外れる公算が大きい。では、何か別の危機が起こる可能性はまったくないのだろうか?いや、調べてみるとそうではないことがよく分かる。関連して、「バハマ文書」の公開がもたらす世界的な資金循環の変化についても解説する。やはりアメリカの利上げは近いようだ。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)

※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2016年10月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ドイツ銀行は破綻しない。世界経済を揺るがす本当のリスクとは


内外でささやかれる「10月金融危機説」

内外の在野のエコノミストやアナリストを中心にして、「10月金融危機説」がまことしやかにささやかれている。大手の金融機関の破綻が引き金になり、2008年のリーマンショックを上回る巨大な金融危機が起こり、これによって現在の資本主義経済は実質的にメルトダウンしてしまうのではないかという予測だ。

ドイツ銀行の破綻は本当に近いのか?

この巨大な金融危機の引き金になると考えられているのは、ドイツ最大の銀行、ドイツ銀行の破綻だ。ドイツ銀行は米司法省から140億ドル(1兆4000億円)という途方もない制裁金を課せられ、それが元で破綻するのではないかという。

【関連】「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト

2013年ころから、すでにドイツ銀行の経営状態は悪化の一途をたどっていた。以前の記事でも書いたように、2015年に「欧州中央銀行(ECB)」が実施した銀行のストレステストではドイツ銀行は不合格だったし、同時期に発表されたIMFの報告書では、世界の巨大銀行の中で、金融システムへの潜在的なリスクがもっとも高いのはドイツ銀行だとされていた。その後には「HBSC」と「クレディスイス」が続いていた。

こうした事実を反映して、昨年の同時期と比べドイツ銀行は98%の大幅減益となり、2015年12月には68億ユーロ(7790億円)の赤字を計上した。その後、ドイツ銀行の株価は暴落し、リーマンショック前の好景気であった2007年と比べると半値の水準になった。

さらに2014年からは、「欧州中央銀行」が導入したマイナス金利の影響で銀行の利鞘は軒並み低下した。これによりドイツ銀行の経営状態は一層悪化した。

しかし、これに追い打ちをかけたのは米司法省による巨額な制裁金であった。ドイツ銀行は、LIBORという銀行間金融のための金利の不正操作、ならびにアメリカの経済制裁の対象国であったイランとシリアなどのための取引代行などのために、2億5000万ドルの制裁金が課せられていた。

のみならず、米司法省は、2007年の金融危機の発端となった金融商品「CDO」を、破綻することを知りながら販売したとし、140億ドル(1兆4000億円)の制裁金を課すとした。これは巨額の制裁金である。ただでさえ経営状態が悪化しているときに、これだけの制裁金の支払いはドイツ銀行を経営破綻へと追い込む可能性がある。

さらにドイツのメルケル首相は、ドイツ政府が同行を救済することはないと明言した。これまでドイツ政府は、ギリシャやイタリアなどのPIIGS諸国の銀行を政府が救済することを強く禁止してきた手前、救済できないのは当然であった。

このような状況のため、9月30日にはドイツ銀行の株価は10ユーロを下回る水準に暴落し、最安値となった。これはドイツ銀行の破綻が近いのではないかとの観測を強めることになった。

10月金融危機説は的中するか?

これはまさに、ネットで拡散している「10月金融危機説」が現実となる可能性を示唆する事態である。

それというのも、ドイツ銀行は世界最大の75兆ドル(約8000兆円)のデリバティブを保有しているからだ。これは世界のGDP、66兆ドルよりも大きく、ドイツのGDPの20倍に達する額だ。これは、2008年に金融危機拡大の発端となったリーマンブラザースの保有するデリバティブの比ではない。

また現在、イタリア第3位の銀行、モンテ・パスキが大量の不良債権を抱え経営破綻が懸念されている。モンテ・パスキは、企業の債務不履行を対象にした破綻保険のCDSというデリバティブを大量に発行している。こうしたCDSのかなりの割合をドイツ銀行が引き受けていることはよく知られている。

すると、ドイツ銀行が破綻すると、モンテ・パスキのCDSの引き受けも不可能になるので、これがモンテ・パスキの破綻の引き金となる。さらに、ドイツ銀行はギリシャの主要行が発行するCDSのメインの引き受け先でもある。

このような状況なので、ドイツ銀行の破綻は、リーマンショックをはるかに上回る世界的な金融危機を発生させる可能性があり、それが10月にも起こると予測されているのだ。

これまでほぼ毎年のように金融危機の発生が予見されてきた。今年だけでも3月、5月、6月とそのような予測がネットを駆け巡った。これらはすべて外れた。

だが、今回はドイツ銀行の破綻が近いので、世界的な金融危機は起こってしまうのではないかと真剣に懸念されている。このような見方は、大胆な予測が許される在野のエコノミストだけではなく、主要メディアでもそうした観測記事が多くなっている。やはり「10月金融危機説」は避けられないとの見方が次第に強くなっているのが現状だ。

論理的に予測できる危機は起こらない

これはかなり説得力のある予測だ。だが、このメルマガで何度も書いているように、「論理的に予測できる危機は起こらない」という原則が今回も適用できそうだ。おそらくいま世間を席巻している「10月金融危機説」は、起こらないと見て間違いないと思われる。

それというのも、危機が論理的に予測できるとき、関係機関は危機を回避するために全力を尽くすのが普通だからだ。本当の危機とは、危機の規模が想定をはるかに越えているか、または、「ブラックスワン」と呼ばれる想定外の出来事であるかのどちらかである。どちらの場合も、「想定外」の出来事が起こった場合に限られると見たほうが妥当だ。

では今回のドイツ銀行の場合はどうだろうか?対応不可能なほど想定外の出来事なのだろうか?

いや、そのように言うことはできないように思われる。ドイツ銀行の経営難は、すでに何年も前から指摘されていた。いまに始まったことではない。

今回、これが世界的な金融危機の発端となると思われたのは、米司法省による制裁金の巨額さである。140億ドル(1兆4000億円)とは多くの予想を越える金額であった。ということでは、もし制裁金が想定内の規模に減額されると、経営難破綻の懸念も遠のくことは間違いない。

事実、10月2日になると、当初の140億ドルよりも60%も低い54億ドルで米司法省が妥協する可能性があるとのニュースが流れた。市場はこれを好感し、ドイツ銀の株価が急騰した。また、ドイツ銀行の騒ぎのために世界的に下落していた株価も再上昇した。

さらにこれを受けて、ドイツ銀行のCEOは「ドイツ銀行の経営基盤は心配ない」と声明し、市場に安心感をあたえた。また10月3日には、ドイツ銀行は1000人規模のリストラを発表した。

もちろん銀行の経営悪化の原因のひとつはマイナス金利であるが、ドイツ銀行のあまりに高い人件費が一つの要因であることが分かっている。そのため、リストラの断行は危機回避のための重要な方策として市場では受け取られ、ドイツ銀行の株価をさらに押し上げた。

ドイツ銀行の破綻を望まない米司法省

さて、このように、ドイツ銀行の経営破綻懸念は急速に消失しつつある。しかし、本当に54億ドルという制裁金の額で妥結するのだろうか?ネットでは、これは米政府が、EUを支配下におき、帝国化しつつあるドイツをたたき潰すために意図的に行った制裁なので、当初の140億ドルの制裁金は妥協しないはずだとの見解も見られる。

しかし、そうではないようだ。周知のように、2007年から2008年の金融危機の原因となったのは、破綻が確実な低所得者用の住宅ローン、「サブプライムローン」を組み込んだ金融商品、CDOが大量に出回り、それが「サブプライムローン」とともに破綻したからだ。

米司法省は、このような金融商品を販売した大手金融機関の責任を徹底的に追求し、随時巨額の制裁金を課している。制裁の対象になっている金融機関に国籍の区別はない。アメリカの大手の金融機関も制裁対象だ。以下がそのリストだ。

バンク・オブ・アメリカ:166億5000万ドル(1.65兆円)
JPモルガン・チェース:130億ドル(1.3兆円)
シティグループ:70億ドル(7000億円)
ゴールドマン・サックス:50億6000万ドル(約5500億円)
モルガン・スタンレー:26億ドル(2600億円)
AIG:16億4000万ドル(1950億円)
コメルツ銀行:14.5億ドル(1776億円)
UBS:7.99億ドル(約978億円)
ロイヤルバンク・オブ・スコットランド:6.34億ドル(約781億円)
HSBC:6.18億ドル(757億円)                                 
アメリカの金融機関にも、巨額の制裁金が課せられていることが分かる。たしかに、いまドイツ銀行に課せられる可能性のある54億ドルという金額は高い。しかし、ゴールドマン・サックスの50億ドルとほぼ同水準の金額だ。またバンク・オブ・アメリカにいたっては、166億5000万ドルという、当初ドイツ銀行に課せられた140億ドルよりも多い。

これを見ると、米政府が帝国化するドイツを牽制するためにドイツ銀行のみをターゲットにしたとは到底言うことはできないだろう。とすれば、米司法省が140億ドルの制裁金にこだわるとは思えない。

米司法省は、当初巨額の制裁金を課すものの、最終的には交渉によって二分の一、ないしは三分の一の額まで減額するのが通例である。要するに、金融機関そのものを破綻させる意図は米司法省にはなく、高額だが支払い可能な範囲の制裁金に抑えるというのが原則のようだ。企業そのものを破綻させてしまえば、制裁金の回収も不可能になるという合理的な判断がその背景にある。

さらにEUが乗り出す

しかしそれでも、ドイツ銀行の経営が、かなり厳しい状況であることには変わりがない。近い将来、破綻の危機がないとは言い切れない状況だ。しかし、複数のシンクタンク系のレポートを読むと、EU当局による危機を回避するための対応が急ピッチで行われているのが分かる。

まず一般的な認識として、EU首脳部はドイツ銀行の破綻をドイツ一国の問題とは考えてはない。ドイツ銀行の保有するデリバティブの大きさから見て、EUを経済的に壊滅させかねない問題として捕らえており、EU総体で対応する構えだ。

これから米司法省と制裁金の減額交渉が成立し、ドイツ銀行の危機の話しもしばらくは遠のく可能性がある。しかし、それでもドイツ銀行の経営危機が進行する場合、EU当局が全面的に乗り出す準備を進めている。ギリシャを救済したような、EUを中心にECB(欧州中央銀行)とIMFを巻き込んだトロイカの体制になる可能性も指摘されている。

いずれにせよ、危機が発現していないいまの時点では、どのような対応策になるのかは分からない。しかし、強力な対応策になることは間違いないだろう。

「バハマ文書」による世界的な資金循環の変化

このように、ドイツ銀行の問題が引き金で世界的な金融危機は起こるとする「10月金融危機説」は実現しないと見た方が妥当だ。

しかし、こうした危機説だけに注目していると、いま世界経済で実際に起こっていることを見失う恐れがある。それは、バハマにある富裕層の租税回避のデータ、「バハマ文書」の公開である。

9月22日、「ICIJ(国際調査ジャーナリスト連合)」は「バハマ文書」を公開した。これは、4月に公開されて大変な衝撃を与えた「パナマ文書」に続くものだ。公開されたデータは17万件と「パナマ文書」よりも少ないものの、それなりに大きな反響を引き起こしている。日本を含め、先進国を中心に、富裕層の資産隠しの実態が明らかになった。

アメリカをタックスヘイブンにする仕組み

「バハマ文書」の公開で、世界の富裕層はバハマをはじめ既存のタックスヘイブンから急いで逃避し、安全な地域に資産を移している。この結果、世界的な規模の資金移動が起こっている。

では、そうした資金はどこに集中しているのか?それはアメリカである。第376回の記事でも指摘したように、「バハマ文書」は「パナマ文書」同様、アメリカ国内のタックスヘイブンに世界の富裕層の資金を集中する目的で、「米開発援助庁(USAID)」につながる国策機関、「ICIJ」を通して米政府が公開したと見てよい。これがどういうことか、もう一度解説しよう。

アメリカは、2013年に「外国口座税務コンプライアンス法(FACTA)」を施行した。この法律は、アメリカの市民権を持つすべての人々に保有する金融資産を「米国税庁(IRS)」への報告を厳格に義務づけるとともに、米国内のみならず海外の銀行も、米国民の口座をすべて「米国税庁」に報告しなければならないとする法律だ。もし米国民が国外のタックスヘイブンに秘密口座を持っていることがばれると、巨額の罰金が課せられる。

それに続き、OECD(経済協力開発機構)はアメリカの「外国口座税務コンプライアンス法」にならい、「共有報告基準」を成立させた。これはタックスヘイブンの出現を防止するため、各国が銀行口座、投資信託、投資などの情報をオープンにして共有するための協定である。これまで理想的なタックスヘイブンとして見られていたシンガポールや香港を含め、97カ国が調印した。もちろん日本も調印している。

ところが、アメリカ、バーレーン、ナウル、バヌアツの4カ国だけが調印しなかった。アメリカはこの協定に入っていないのである。

アメリカ国内のタックスヘイブン

これはどういうことかというと、アメリカは「外国口座税務コンプライアンス法」を楯にして、他の国々の金融機関に口座内容などの情報をすべて開示するように求めるが、アメリカ国内の金融機関の情報は他の国に対して一切公表しないということなのだ。

つまりこれは、アメリカ国内に租税回避のための秘密口座を持っていたとしても、これを他の政府に開示する義務はないことを意味している。つまり、アメリカ国内のタックスヘイブンはまったく問題ないということだ。

いま
米国内では、ネバダ州、サウスダコタ州、デラウエア州、ワイオミング州の4つの州がタックスヘイブン化している。アメリカでは租税は基本的に州政府が決定しているが、これらの州では「法人地方税」と「個人住民税」がない。さらに、破産したときに州内にある財産の差し押さえをできないようにする「倒産隔離法」なるものが存在しているところも多い。また、どの州でも簡単な用紙に記入するだけで、誰でも会社が設立できてしまう。

OECDが成立させた「共有報告基準」にアメリカが調印を拒否したことは、米政府が国内のタックスヘイブンを維持し、そこに集中した世界の富裕層の資産を米政府自らが他の国の政府の追求から守ることを宣言しているようなものである。

では、アメリカに集中した富裕層の資金はどうなるだろうか?その答えは簡単だ。ドル建てのまま株式を含め米国内の市場に投資される。

ダウ高、ドル高、そして利上げ

この結果、ダウ高、ドル高のトレンドがしばらく続くことになると見て間違いないだろう。ドイツ銀行の破綻による世界的な金融危機どころか、アメリカを中心にした相場の上昇トレンドである。

そして、「バハマ文書」の公開などという手の込んだ手段を使って、資金をアメリカに集中させた米政府の目的はほかでもない。FRBが利上げをする条件の整備である。世界の富裕層の資金をアメリカに集中させて、景気が上昇している体裁を維持する。それを根拠に利上げに踏み切るシナリオと見て間違いないだろう。

では危機はないのか?

このように、「10月金融危機説」は他の時期の崩壊予測と同じように、実現しないと見た方がよい。では、危機が起こる可能性はまったくないのだろうか?いや、調べて見るとまったくそうではないことがよく分かる。

それは、アメリカとロシアとの関係が予想以上に悪化していることだ。10月4日から7日にかけて、ロシアの「民間防衛省」は、自然災害、ならびに人為的な破壊に備え、ロシア全土で4000万人の市民と20万人の専門家による大規模な演習を実施する。これには核戦争への対応も含まれ、冷戦期以降では最大の演習になる模様だ。

何が進行しているのだろうか?こちらのほうが、「ブラックスワン」のサプライズをもたらす危機になるかもしれない。これは次回に書くことにする。

日経平均がやや強含んではいるが、東証1部の売買代金は相変わらず低いままで、連日2兆円を下回り、相変わらず市場参加者は少ない状態が続いている
。今年夏以降、新規マネーの日本市場への流入はごくわずかで、短期筋の外国人らしき投機筋から売り、買いが少々ある程度で、投機筋ではない外国人投資家は今年初めからほとんどまとまった売買が出ない状況が続いている。

現在の日経平均株価の動きをみると、市場では銘柄や市場に悪材料が出て、日経平均が大幅に下がることがわかる日にだけ投機的な大口投資をくり返えす短期投資家の姿が今年初めから目立つようになってきた。日本の株式市場は短期の先物売買の市場になってしまい、健全な長期取引の株式市場という姿がどこかにいってしまったような状況になっている。売買も日銀を相手とした海外の投資家、一部日本の投資家が増えてきているるようで、第二のリーマンショックもしくはドイツ銀ショックが起きるまでお休みを決め込んでいるようだ。

円は買いポジションをしていた投機筋の一部が目先100円割れは暫く先となりそうなので円を売り出しているようだが、依然シカゴ筋は円買いポジションである。


9月の中国消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が相当悪化するであろうと思い切って円を買っていた投機筋は、今回の中国CPIとPPIの改善は意外であった。

米FRBのイエレン議長は14日の講演で現状、米国は利上げするのかしないかのどちらとも決断がつかない時に、将来の景気後退期の話を持ち出して「将来の景気後退には利下げだけでは対応できないのではないか」と言う先行きの緩和手法の見直しともとれる話をしたが、ニューヨークの経済アナリスト達は異様ともとれる発言と感じ、米FRBは12月の利上げもないのではないかとの情報も流れている。

米国経済は完全雇用の状態にあり、人手不足で賃金は上昇気味にある中で、金利は上げられる時に上げておかないと利下げも出来ない状態が訪れることをイエレン議長は心配しての14日の発言である。

 イエレン議長は「昔は利上げ期に入れば1-2年利上げ期が続き年間に1-2%の利上げが続けられた。今回は昨年12月に0.25%利上げしたが続いて利上げはもし今年0.25%上がったとしてもたったの0.5%の上昇と極めて低く、もし来年景気が低調であれば利上げはそれてストップしてしまい次の景気後退が来年後半に訪れると次の景気後退は利下げだけで対応が出来ない」と見ており、緩和手法の見直しが必ずおこるということを言ったものだろう

私は円相場についてまだ円高が続くと思うが、一旦円安に振れそうな気配だ。
日本はまだ米国から勝手に円安にすべきでないとの通告を受けているので、円売り介入は引き続き勝手に進めることは出来ないが、自然体の円安であれば米国に文句は言われないと思う。米国も年末に向けて自然体という形で円安になれば文句をつけようがない。

米国の公定歩合は11月は米大統領選を控えていることから利上げしないで、10月の雇用統計では雇用者数は25万人程度の良い雇用者数となろう。 11月の雇用数も25万人程度と良い指標を出し12月の利上げは決定となろう。 12月の雇用統計が20万人以上であれば来年1月も利上げするであろう。

世界経済は大変化の時代が来る。すでに今年オイルマネー国と言われたサウジがオイルマネーを捨てて日本のloT企業のソフトバンクと資本提携するのも大変化である。


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韓国の財閥が窮地に陥っている。ロッテグループの裏金疑惑で会長が韓国検察に出頭韓進(ハンジン)海運破綻の混乱は続きサムスン電子では新型スマートフォンのリコール(無料の回収・修理)問題の影響が懸念されている

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 20日、事情聴取を受けるため、ソウル中央地検に出頭したのは、ロッテグループ創業者の重光武雄(韓国名・辛格浩=シン・ギョクホ)氏(93)の次男でグループ会長の昭夫(同・辛東彬=シン・ドンビン)氏(61)。地検前で記者団に「ご心配をお掛けし申し訳ない。捜査には誠実に協力する」と述べた。疑惑の認否に関しては「検察で詳しくお話しする」と繰り返した。

                               韓国メディアによると、昭夫氏は日本のグループ系列会社に名ばかりの役員として籍を置き不当に報酬を得たり、一部の系列会社に多額の損失を肩代わりさせたりしたとして、横領や背任の疑いが持たれている。

 ロッテをめぐっては昨年、昭夫氏と兄の宏之(同・辛東主=シン・ドンジュ)氏(62)による経営権争いを機に裏金疑惑が浮上。地検は今月、武雄氏を親族らへの株式譲渡に絡む贈与税の脱税などの疑いで、宏之氏も横領などの疑いでそれぞれ取り調べた。

 8月末に経営破綻した韓進海運の問題も長引いている。財閥総帥の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏が400億ウォン(約37億円)、韓進海運前会長の崔恩瑛(チェ・ウンヨン)氏は100億ウォン(約9億円)の私財を拠出したが、兄弟会社の大韓航空の600億ウォン(約55億円)支援は難航、物流の混乱も収まっていない。

 サムスンの新型スマホ「ギャラクシーノート7」のバッテリー爆発問題も追い打ちとなった。米国では約100万台のリコールが決定、韓国で19日から製品の交換が始まった。12日に約7%下落したサムスン株はその後反発したが、聯合ニュースは「事件の波紋が大きいうえ、アップルのiPhone(アイフォーン)7も市場の予想を上回る人気で、サムスンが反発を持続できるかどうかは未知数」と報じた。

 韓国を代表する産業で問題が相次いでいることについて、近著に『サムスン崩壊』(宝島社)がある週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は
「基礎技術が脆弱(ぜいじゃく)なこともあって、重厚長大に代わる新たな産業が見当たらないのは非常に深刻な問題だ」と指摘している。
現在世界経済全体が疲弊する中、ついに韓国経済の屋台骨である大財閥、ロッテ・韓進(大韓航空)・サムソン・現代といったところまで傾き破綻し始めた。

韓国は国内マーケットが小さく内需は伸びないため、輸出に経済を依存せざるをえない小国なのだ。韓国のパクリ企業のノウハウをパクった中国企業が育ち始め世界中で韓国が得意とする格安中級以下製品のマーケットが奪われ始めたうえに、主要輸出先である中国経済が減速し、中国への輸出も立ち行かなくなりはじめた。
追い打ちをかけるように、米中への蝙蝠外交の末に、THAADミサイル配備をきっかけに中国市場から締め出しまでされはじめた。

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韓国経済は、そのほとんどを三星財閥、LGグループ、SKグループおよび、分割された現代財閥、解体された大宇財閥の系列企業で占められており、十代財閥をあわせるとGDPの70パーセント以上、サムソン電子1社だけでGDPの20パーセントを稼いでいるという歪な構造に問題があります。

2015年の財閥資産規模で30グループを3つに分けた調査では、サムスンと現代自、LG電子、SKが入る上位グループ(1~4位)の当期最終利益は39兆ウォン(4兆2500億円)で黒字を確保できたが、下位グループは赤字だった。家族経営(財閥)の利点は即断即決であるが、財閥グループ内に多くの事業、子会社を抱え、互いに負債を押し付け合わせる手法が通用しなくなった。一度問題が起きれば財閥グループ総崩れになる恐れがある。アジア危機の際IMF管理下に置かれ、一度は立ち直ったように見えた韓国経済は再びIMF管理下に置かれるのも時間の問題だ。

米国も昨年の中国の軍事パレードにプーチンと朴槿恵が参加するなど韓国の裏切りに見切りをつけてしまった。謂われなき反日歴史問題を捏造し、日本国民の堪忍袋の緒を切らせてしまった。もはや日本国民の大半は一部の反日日本人を除き二度と韓国に手を差し伸べようという声は上がらない。

愚かで悲しい民族は自滅し没落していくであろう。

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前回メルマガで「韓進海運の破綻」について触れ、台風の目になりそうだと述べたわけだが、その影響は韓国経済自体が破綻するほどの破壊力を秘めたものだった。まさに「輸出国家の危機」である。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2016年9月11日号の抜粋です。(略)

世界中で入港拒否&差し押さえ、宙に浮く140億ドルの積荷

最悪の形で破綻した韓進海運

韓国の輸出ルートは、北朝鮮に「陸」を押さえられているので、「海」と「空」の2つの手段しかない。

「空」というと空輸になるが、飛行機に積める荷物の重さや量は限られており、しかも輸送コストが高くつく。そこで「海上(船)」の輸出ルートを選ぶことになるわけだが、今回の韓進海運破綻で、その輸出ルートが他国に押さえられつつある。今回の韓進海運破綻を発端とする一連の物流混乱は、このメルマガを書いている9月10日現在でも継続中である。いまなお被害が拡大しているのだ。まずは経緯から説明しよう。

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実は数ヶ月前から、韓進海運が破綻するというニュースが韓国メディアを通じて出ていた。私もそのニュースに注目していたので、いくつかの記事をサイトで取り上げて、成り行きを見守っていた。そして、8月31日に韓進海運は破綻して「法定管理」となった。裁判所がここから数ヶ月をかけて、倒産させるか、再建するかを判断する。そして、現時点では倒産させるという意見が多い。

さて、ここまでなら「韓国最大手の海運会社が巨大な負債を残して破産した」という話で終わるところだった。しかし、破綻の仕方が最悪だった。なんと、8,300社から荷物の仕事を引き受けた状態で破綻したのだ。

法定管理になったその日、港湾使用料・備船料を600億円ほど滞納していた理由で、韓進海運は外国の港への入港を拒否された。現金で払わない限りは入港できず、コンテナも差し押さえとなったのだ。その荷物の規模は、総額140億ドルともいわれている。日本円で約1兆2,500億円である。こうして物流混乱は始まった。

米国・中国・日本からの「超高額訴訟」という悪夢

韓進海運を再建するには、6,000億円ほど必要だといわれている。そして、港湾使用料・備船料などの滞納を含めて7,000億円があれば再生できるわけだが、当然、そんな金はどこにもない。荷物を差し押さえや入港拒否を解除するには300億円ほどが必要とされているが、事件から11日たった現在でも、そのお金すら支払われていない。

港に入れずにいる韓進海運の船の荷物は、米国・中国・日本で9割を占める。米国には、「ハロウィーン」や「ブラック・フライデー(クリスマス商戦の開始日)」のために用意された荷物が大量に運ばれる予定だった。

その中には、あの世界一のスーパーマーケット・ウォルマートや、Amazonなど世界的な企業の荷物が多数存在している。仮にこれらのコンテナがブラック・フライデーの準備に間に合わない場合には、140億ドルはくだらない超高額訴訟が待っているのだ。

韓国経済はこの時点で自らを死に追いやるような、とんでもないことをしでかしたわけだ。しかも、韓国政府は韓進海運を助けようとせず、あくまでも韓進グループに金を出させるという斜め上の対応を行った。この事態を重く見たアメリカ政府は、要人を韓国に送り、韓国政府に混乱を鎮めるように要請。しかし、いまだに全くもって収まっていない。韓国政府がやっているのは、責任のなすりつけ合いである。

現実的に、韓国政府は大宇造船海洋の構造調整で公的資金を投入して批判を浴びているので、韓進海運を助けるというのは難しいのだろう。しかし、どう考えても大宇造船海洋よりも世界的な影響が大きい。助ける義務はないが、漂流中の荷物を適正に処理しなければ、韓国経済が破綻するほどの超高額訴訟が巻き起こる。そうなってしまえば、もうどうしようもない。

1日ごとに賠償額は膨れあがっていくわけで、コンテナの中身が生鮮食品ならば、すでに商品価値がないかもしれない。そういった意味でも、一刻も早く荷物を降ろすことが重要だ。それなのに、どうも韓国政府は事態の緊急性に気付いていないようである。韓国庶民の認識レベルも低い。

唯一、サムスン電子だけが事態の緊急性に気が付き、韓進海運が払わない港使用料を立て替えて、自分のところの荷物だけを降ろさせて別の船で運ぶということをしている。このあたりは、さすがサムスン電子の対応力といったところだ。「Galaxy Note7」が爆発してリコールしたことで、空輸で運べなくなったのも大きいのかもしれない。

韓国経済「自滅」の理由。なぜ韓進海運は破綻したのか?

そもそも韓進海運の破綻原因はなんだったのだろうか。問題はいろいろあるのだが、よくあるダンピングによる赤字輸送を続けていたことが原因である。ライバル企業のシェアを奪うために、相手のコストの半額以下で請け負っていたという。そして勝手に自滅したのだ。

なお、この件で良い影響も出てきている。韓進海運が破綻したことで海上運賃が150%ほど急上昇し、なんと他の海運会社の株価が軒並み上昇しているのだ。ただ、海上運賃が適正価格に戻っただけとも言える状況だ。

現在はブラック・フライデーに向けた準備で海運業は大忙しであり、韓進海運の破綻を事前に察知して準備していた台湾・中国・日本などの海運会社がシェア獲得に乗り出している。さらに、世界の海運大手「マースク」まで進出してきた。韓進海運が潰れたことでアジア、北米ルートのシェアは激変していくことになる。韓国は海への輸出手段を他国に委ねることになるが、それは自業自得なのでどうしようもない。

以上がこれまでの経緯である。さすがに今週中には混乱は収束に向かうとは思うのだが、韓国のやることなので実際にどうなるかは未知数。対応を誤れば韓国経済はたちまち破綻に追い込まれるので引き続き注目していく。

以下略
【続報】とりあえず140億ドル(1兆4000億円)の荷物は陸揚げされる方向に動き出した。
韓進海運の大株主、大韓航空は21日午後、緊急取締役会を開き、韓進海運に対する600億ウォン(約54億円)の資金支援案を確定した。大韓航空の関係者は「韓進海運の売上債権(今後入ってくる運送料などの売掛金)を担保に600億ウォンを融資という形で支援することにした」と明らかにした。これによって、韓進海運の法定管理(会社更生法適用に相当)申請を機に世界各地に広がった「物流混乱」は解消に向かう見通しだ。

 韓進海運が先月31日に法定管理を申請して以降、国内外の港では荷役作業が滞り、物流がまひした。海外の船主などに船舶の仮差し押さえを申し立てられた上、荷役会社からは相次いで延滞金を要求され荷役を拒否されたからだ。国内外の荷主らの被害が拡大すると、韓進グループは今月6日、趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長が私財400億ウォン(約36億円)をつぎ込み、韓進海運の大株主である大韓航空も600億ウォンの支援を決めた。大韓航空は韓進海運が保有する米国ロングビーチ港のターミナルの株式(54%)を担保に取る予定だったが、すでに同ターミナルの株式を担保に取っている海外の金融機関などの同意が必要となるため、不可能と判断した。その後「確実な担保がなければ背任になる恐れがある」と大韓航空の社外取締役らが反対したため資金支援はさらに遅れた。韓進グループは、ロングビーチ港のターミナルではなく「売上債権」を担保として資金を支援する案を検討してきた。

 韓進海運は600億ウォンの資金が入り次第、米国・日本など8か所の「安全な港(船舶差し押さえの恐れがない港)」で荷役作業を急ぐ予定だ。だが趙会長の私財を含めた1000億ウォンを投じても「物流混乱」の解消には不十分との指摘もある。海運業界の関係者は「いまだに荷役作業ができない韓進海運のコンテナボックスは18万個に達する」として「今回の融資に加え、さらに1000億ウォンの荷役費用が必要になる」と話した。

李性勲(イ・ソンフン)記者

だが、問題はこれからであり、天文学的な訴訟は避けて通れないだろう。そして韓進財閥は大韓航空を含め解体されその存続が危ぶまれるのだ。クラッシュナッツだ!
現代建設がクウェートで建設している世界最長の海上橋梁である「ジャベール連陸橋」で工事中の上板が崩れる事故が発生した。 先立って、この工事発注先のクウェート政府側の監理団は、「手抜き工事と工期の遅延などを警告する」管理官を現代建設に送ったりもした。

5日、現代建設などによると、昨年1日(現地時間)、ジャベール連陸橋の上板工事中の長さ60m、重さ1800tに達する上板が崩れる事故が発生した。 事故は上板を運搬していた大型トロリー(車両)の通過で上板が落下し、既存に連結された上板を襲って発生した。 事故で該当部分は海に落ち、従来の上板4つが破損されたが、人命被害はなかったという。 現代建設は緊急チームを立ち上げ、復旧作業に入った状態だ。

クウェートシティと新都市スビヤを横切って連結する橋梁は、海上メイン橋梁の長さだけで36.14キロにのぼる。 総工事費30億ドルで2018年11月の完工を目標にしている。 この橋梁は、朴槿恵大統領が昨年3月、初の中東歴訪中の工事現場を訪問し、現場関係者たちを励まし、韓・クウェート経済協力の象徴と呼ばれる所だ。

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しかし、クウェート政府監理団は今年1月、現代建設と協力会社が上板の製作と関連して未承認の図面を使用するなど、手抜き工事の懸念があり、工期が遅延されるとし、「繰り返される失敗とこれによる工期の遅延に対するすべての結果は、現代建設の責任と警告する」と、管理官を送った。 

これに現代建設は、床工事を担当した協力会社と下請契約を解約して現在直営で工事を進めている。 当時現代建設は、協力企業の技術力が不足して問題が生じたと主張し、協力メーカーは現代建設が提供したコンクリートの品質が仕様書基準を満たせず、支障を来たしたと対抗して論争を引き起こした。

契約を解約した後、この協力会社は、廃業した。 現代建設の関係者は「今回の事故は、手抜き工事とは関係なく、トロリーが速度を出す過程で、上板を落として発生した」と話した。

サムスンのGalaxy Note 7の爆発事故は、メーカーにとって悪夢そのものだ。売り上げ、ブランド力、消費者の信頼を粉砕する一撃となった。サムスンは迅速に対応したが、発火の恐れがある端末250万台がリコールされた後も、この問題は尾を引くだろう。

爆発の報告は日ごとに増え、中には不安を煽るだけの誤報もあった。ニューヨーク・ポストは6歳の少年がNote 7の爆発で火傷を負ったと報道したが、実際にはサムスンの別の端末だった。サムスン=爆発というイメージが、人の意識に刻み込まれていることを示す好例だろう。Note 7の実際の発火率は非常に小さいが、「火を噴くスマホ」というイメージは拭い去りがたい。

素人目にはGalaxy S7も危険

この問題は、ニューヨークの地下鉄から大学まで不安を広げている。特に航空業界の警戒は強く、世界の航空会社や航空当局がNote 7の持ち込みに注意を促す前から、ソーシャルメディアでは、Note 7の所有者が航空機のキャプテンに叱られたとか、フライトアテンダントにマークされた、隣の乗客に警戒されたなどの話が飛び交っていた。

リコールが完了し、“安全な”Note 7に交換されたとしても、問題はくすぶり続ける。悪評を払拭するのは簡単ではなく、リコール前のNote 7とリコール後のNote 7を見分けるのは不可能なため、人々は今後もNote7から爆発を連想するだろう。

厄介なのはNote 7の外観がサムスンのGalaxy S7に非常によく似ていることだ。筆者のようなテックライターはともかく、空港のセキュリティ担当者やフライトアテンダントが見分けられるかは疑わしい。S7の所有者も空港の安全検査でひっかかる可能性がある。

私は1月にロサンゼルスの自宅に飛行機で帰るが、リコール後の新しいNote 7であっても、持ち込むことはしない。面倒はごめんだ。

私は幸い複数のスマホを持っているからそれができるが、サムスンのGalaxyしか持っていない人は、周囲の目にどれくらい耐えられるのだろうか。
編集=上田裕資
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今年まだ32億ドル                                                
 韓国の造船大手3社の受注が過去最悪レベルで低迷し、今年の受注目標の達成が事実上不可能になった。年末まであと3か月余りの段階で、3社の受注実績は年間目標の10%程度にとどまっている。

 韓国の造船大手3社、現代重工業・大宇造船海洋・サムスン重工業は年初から8月までの受注実績が合計32億ドル(約3800億円)にとどまった。3社の年間受注目標は302億ドル(約3兆1000億円)だが、今月に入っても目立った受注がなく、目標達成率はわずか10.6%という状況だ。

 造船大手3社の受注実績が低調なのは、海洋プラントの発注が急に途絶えたからだ。海底油田の石油掘削・生産に必要な海洋プラントは通常、受注金額が1プラント当たり5億ドル(約511億円)以上になるが、今年に入り大手3社が受注した海洋プラントはゼロだ。

 現代重工業(現代三湖重工業・現代尾浦造船を含む)は今年、造船・海洋部門の受注目標を187億ドル(1兆9100億円)と定めたが、受注実績は商船18隻、金額ベースでは22億ドル(約2250億円)にとどまっている。大宇造船海洋は目標達成率が16%で大手3社の中では最も高いが、受注金額は10億ドル(約1020億円)にすぎない。大宇造船海洋の関係者は「年間受注額が35億ドル(約3600億円)を下回れば、さらなる人員削減など緊急の対策を講じなければならない」として「緊急対策の発動だけは避けたいため、ぎりぎりまで受注に総力を挙げる方針」と話した。

 サムスン重工業は今年の受注目標が53億ドル(約5400億円)だが、現在までの受注実績はゼロだ。昨年10月末にタンカー2隻を受注して以降、11月近くも全く受注がない状態だ。同社のパク・テヨン社長は先月、有償増資のための臨時株主総会で「発注元と単独で交渉しているプロジェクトがあるため、受注目標の達成は十分に可能」と公言していたが、造船業界では「海洋プラントの一部を受注したとしても目標達成は不可能だろう」との見方が支配的だ。

金起弘(キム・ギホン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
【中央日報】2016年06月28日11時14分 
【中央日報】2016年06月28日11時15分 
海洋プラントを受注しても代金が払われなかったり、引き取りを拒否されれば韓国の造船業はもはや終っている!史上最悪の石油流失事故2010年メキシコ湾原油流出事故でメキシコ湾で事故を起こした石油リグディープウォーター・ホライズンを建造したのは韓国蔚山現代重工業・・だ。リグが不良品であったかどうか、言及されていないが、私は原因は沈没したリグが誤作動した可能性を疑うが、私が判断できる立場では無い。しかし、例の法則が発動したことだけは間違いない。
イメージ 8韓国のロッテグループ裏金疑惑を巡り、重光昭夫(韓国名・辛東彬=シン・ドンビン)会長(61)がソウル中央地検に出頭したことで、捜査は創業者で父の武雄(同・辛格浩=シン・ギョクホ)氏(93)をはじめとするオーナー一家全体に及んだ。韓国メディアは日韓にまたがるグループ経営の主導権を日本人幹部らが握る可能性が出てきたと懸念する声を伝えた。

 地検は既に武雄氏を脱税などの疑いで、武雄氏の長男、宏之(同・辛東主=シン・ドンジュ)氏(62)を横領などの疑いで取り調べた。捜査の過程で武雄氏の長女、辛英子(シン・ヨンジャ)氏(73)にも、ロッテ免税店への出店希望者から裏金を受け取った疑いが浮上、背任収財罪で起訴された。

 また地検関係者は20日、武雄氏の事実婚相手で日本滞在中とされる徐美敬(ソ・ミギョン)氏の資産を差し押さえると表明。地検は徐氏が武雄氏の脱税容疑に絡んでいるとみて出頭を求めているが、徐氏は応じていない。

 捜査が創業者一家の全体に及ぶ中、韓国メディアの報道には、資産規模が韓国で5位の財閥であるロッテグループが、日本人経営陣の意思に左右されるとの警戒感が出始めている。

 報道によると、グループで韓国側の事実上の持ち株会社であるホテルロッテは既にロッテホールディングス(HD)など日本側系列会社の支配下にあり、昭夫氏はHD経営陣の支持を得てグループ経営を任されている。

 朝鮮日報は、昭夫氏が逮捕、起訴された場合、同氏が経営の一線を追われる可能性があると指摘。韓国のロッテ関係者の話として「韓国5位の財閥が日本の経営陣数人に左右されるという、あきれた状況が現実になるかもしれない」と伝えた。 (共同)
ロッテも球団を身売りだとかの噂・・・千葉マリーンズファンはいい迷惑である。
何処が買うんだ?千葉本社で思い浮かぶのは、オリエンタルランドか?京成電鉄?マツモトキヨシ(松戸市)・・・イオンが千葉に本社がある。内部留保を溜め込んでいるマブチモーター(松戸市)などは・・・
韓国で“財閥ロッテ叩き”が広がっている。創業者の長男と次男の後継者争いをきっかけにしたマスコミ主導のロッテ糾弾に続き、今度は検察当局による資金疑惑捜査という政府介入に発展している。韓国財閥の不透明資金はどこでもみられるもの。今なぜロッテ叩きなのか。

 検察による大々的な家宅捜索の後、すでに創業者の長女が不正資金捻出という横領、背任容疑で逮捕され、後継者で会長の次男(長男は日本在住)は出国禁止になっている。経営首脳への捜査は時間の問題で、財閥第5位のロッテ・グループは創業以来、最大の危機に直面している。

 周知のように在日韓国人の辛格浩(日本名=重光武雄)氏が創業者のロッテ・グループは、元は日本資本だ。1960年代にチューインガムの会社を母国に作った後、70年代から本格的に韓国に進出。ホテルや百貨店を皮切りに流通や食品、建設、化学など大規模な企業グループに発展した。今や資産規模でサムスン、現代、SK、LGに次ぐ第5位の大財閥である。

 しかしロッテの韓国進出は1970年代当時、経済建設に必死だった朴正煕大統領のたっての要請によるものだった。ロッテ・ホテルは韓国で最初の高級大型ホテルだったし、ロッテ百貨店は店員が客に頭を下げ、食堂街やイベント会場を備えた韓国で最初の明るく楽しい(日本風!)百貨店として、韓国の流通界に革命をもたらした。

 韓国経済が「日本のお陰」で発達した生き証人のような企業だが、それが朴正煕の娘の朴槿恵政権下でひどい“イジメ”に遭っているのだ。創業者の辛格浩・総括会長は認知症状態とも伝えられるが、この母国での仕打ちには「恩知らず!」の思いだろう。

 ところが朴槿恵政権の財閥叩きでは、先にやはり日本と深い歴史を持つ「POSCO(浦項製鉄)」が厳しい税務調査を受け、経営首脳が資金疑惑で逮捕、追及されている。

 POSCOは日韓国交正常化(1965年)の際、日本から提供された資金と日本の技術で建設された“日韓合作”のシンボル企業だった。世界的鉄鋼会社に成長し、当初は国営だったがその後、民営化し建設分野などを含む大企業グループになった。

 規制が多い韓国では許認可などをめぐって政官界への“ロビー工作”は不可欠。そのため各財閥は帳簿操作などで「ピジャクム(秘資金)」と称する工作資金を捻出するのがいわば慣例のようになってきた。だからサムスン以下、みんな「叩けばホコリは出る」ようになっている。

 歴代政権とも「庶民の味方」という正義パフォーマンスのため、思い出したように“財閥叩き”をやってきた。朴槿恵政権は「経済民主化」を公約に掲げている。最大課題の経済再跳躍がままならないなか、庶民(世論)の不満解消を狙って“財閥叩き”に乗り出したかたちだ。

 流通や食品が主力でみんな知っているロッテはヤリ玉に上げやすい。それにロッテは日本系ということでいつもマスコミの反日報道のエサになってきた。日本生まれの後継者を「なぜ韓国語が下手なんだ!」と非難し、日本からの投資分に対する利益送金を「国富流出」と犯罪視するのが韓国世論である。ロッテは実に叩きやすいのだ。

 それにしてもロッテといいPOSCOといい、父・朴正煕が高度経済成長のため心血を注いで育てた「民族中興」の企業が、娘の政権下で遠慮会釈なくイジメられている。いずれも日本と関係の深かった企業だ。苦しい時の恩を忘れた背信である。日本人の目にはこれまた「韓国の賞味期限切れ」を思わせる。

 文/黒田勝弘

 【PROFILE】1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。

 ※SAPIO2016年9月号


 韓国の財閥があっちもこっちも、おかしくなってきた。政策的な不動産バブルの破綻が3回目の金融危機の発端になる-との見方が有力だったが、財閥救済のための融資で、国策銀行が国際決済銀行(BIS=自己資本比率)基準を守れなくなり…といったシナリオも見えてきた。韓国の財閥はオーナー会長の号令で動く。成功すれば「素早い決断」と評価されるが、そうした体制は沈没するときも早い。

 「これはヤバイ!」と、サムスンは日本でのスマートフォンのCMで叫んでいたが、新型スマホ「ギャラクシー・ノート7」(=日本では未発売)の爆発事故に伴う全量リコールは、本当にヤバそうだ。

 サムスンのこれまでの体質からすれば「被害者への個別補償」で押し通すところだ。全量リコールに早々と踏み切ったのは、「これはどうにも逃げられない」と観念せざるを得ないほどの欠陥があるからではあるまいか。新製品に切り替えたところで、
「爆発するサムスンのスマホ」のイメージは長く尾を引くだろう。

 傘下のサムスン重工業は大赤字だ。

 2位の財閥である現代(ヒュンダイ)自動車財閥は、中核部門である自動車製造が不振だ。労組の攻勢でまた大幅賃上げがあり、国内販売が落ち込んでいる。

 そして、2011年に傘下に収めた現代建設が、また問題を起こした。クウェートに建設中の世界最長の海上橋「ジャベル橋梁」で、1800トンの床板が崩落してしまったのだ。

 韓国証券新聞(16年9月6日)によると、クウェート政府監理団がすでに1月に「未承認図面を使うなど不良工事の憂慮がある」「繰り返される失敗とこれによる工期遅延はすべて現代建設の責任」とする警告書を出しているいわくつきの床板だ。おそらく、膨大な遅延違約金を課せられるだろう。

 高炉の現代製鉄も、国内市場には安価な中国産の流入があり、米国などからはダンピング課税がありで四苦八苦しているようだ。

 「前政権で太った財閥はいじめられる」のジンクスどおり、検察のロッテ追及はジワジワと続いている。「あれは日本の財閥だ」というのが韓国人の一般的な受け止めだから、同情の声は起きていない。

 そして、韓進(ハンジン)だ。大韓航空(KAL)が「ナッツ姫事件」以来、思わしくないところへ韓進海運の倒産だ。

 一応、「韓進海運はグループからは切り離し済み」という形になっているが、それでは“国民情緒法”が許さない。「ナッツ姫のパパ」は私財の一部を供出したが、焼け石に水だ。

 韓進海運の用船に積まれている貨物の陸揚げ遅延に伴う損害は、誰が補償するかが大きな問題になるだろう。

 国策銀行である産業銀行も輸出入銀行も、造船各社に対する融資を「正常債権だ」と強弁することで引当金を逃れており、実質はBIS基準を割っている。「正常だ」と強弁できない不良債権がもう一段、積み増されると…「これは本当にヤバイぞ」。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。
韓国の借金が2014年末で4781兆ウォン(478兆円)となったそうだ。負債という名の時限爆弾がさらに膨らんでいる。日本の場合は金融資産が1600兆円ほどあるので、国の借金が1000兆円あっても、国には700兆円の資産があり国民自体は借金に困っているわけではない。
しかし、韓国の場合は家計負債が1087兆ウォン(109兆円)(2015年末123兆円)企業の負債が2332兆4000億ウォン(232兆2500億円)中央政府と地方政府負債が1124ウォン6000億ウォン(112兆円)小規模自営業者の負債236兆ウォン(236兆円)など合計負債総額が4781兆5000億ウォン(478兆7円)韓国国民1人あたり9400万ウォン(940万円)
以上は2015年9月の中央日報の数字なのだが、これには含まれてない隠れ借金がまだまだある。
預金を超過する銀行の外貨建て債務は2011年10月時点で2740億ドル(27兆円)
F-1韓国GPの違約金8600万ドル(約102億円)、
米投資ファンド・ローンスターからの韓国政府への賠償請求額4兆6000億ウォン(約5000億円)、
韓国鉄鋼大手「ポスコ」が設置したインドネシア国営のクラカタウ・スチールとの合弁会社クラカタウ・ポスコの爆発事故の被害額  最大5000億ウォン(約481億円)
練習機などの保証・・・、
これに韓進倒産の天文学的訴訟違約金、
クウェートの橋にサムソンの訴訟・・・
どれだけふくらむのか平昌五輪の準備費用もしかしたら違約金・・・、


「どんだけ~!」古いイッコウのギャグを想い出してしまった。
忘れてならない天文学的負債・・・・
韓国原発・新古里3号機の運営許可審議を来月に延ばすことになったが、それにより韓国電力がUAE(アラブ首長国連邦)に違約金を払う可能性が濃厚になってきた。

 原子力安全委員会は26日、ソウル市内で開いた第37回全体会議で「新古里3号機運営許可案」の審議結果、次の会議に再上程することに決定したと明らかにした。

 この日の会議は、9名の原子力安全委員のうち、キム・イクチュン委員とチョ・ソンギョン委員が個人的な理由で欠席したなかで進められた。原子力安全委員会は昨年から計12回にわたって専門委員会の新古里3号機審査・検査現況の報告を受けた。ことし2月には現場点検を実施し、今月19日の会議では審査・検査結果を報告して議論していた。

 新古里3号機は、韓国型三世代原発であるAPR1400が適用された原発である。140万kW級で韓国が2009年、UAEに輸出したものと同一のものである。運営機関である韓国水力原子力が2011年6月、原子力安全委員会に運営許可案を申請した。

 契約主体である韓国電力はUAEに契約を締結する際、遅くてもことし9月までに運転をしてAPR1400の安全性を立証すると約束した。万が一、運転がこの時期を越えた場合は毎月の工事費用の0.25%に当たる違約金を負担するとしていた。韓国が開発したARP1400モデルが契約当時に運転経験がなかったため、このような違約金条項が明示されたのだった。

 初め、韓国電力と政府は違約金を支払う事態は発生しないと予測していた。しかし原発ケーブル納品不正と密陽(ミリャン)送電塔問題が発生し、局面は転換した。違約金を払う心配が無かった内部からも最悪の場合、巨額の補償金を払う可能性もあるという憂慮が提起されたのだ。

 新古里3号機の最初の竣工予定日は、昨年8月だった。しかし2013年4月にJS電線が新古里3号機に使用した電力ケーブルの試験成績書が偽装されたという情報提供があり、同年10月に性能再試験で不合格の判定を受け、全てを交換する作業を行い、竣工が遅れた。そこに2013年の密陽送電塔問題によって新古里3号機の送配電施設の建設が遅れ、さらに昨年末、建設現場で3名の作業員が窒息死する事故が起き、新古里3号機の運営許可案の審議はどんどんと引き延ばされていったのだった。

 原子力安全委員会の運営許可が承認されてこそ、運営者である韓国水力原子力が試験運転を始めることができる。

 試験運転から正常運転まで6か月かかることを考えると、26日の原子力安全委員会の審議延期決定によって韓国電力はUAEに違約金を支払わなければならない状況になったと言える。

 原子力安全委員会側は、新古里3号機がAPR1400初の原発であることを考え、十分に議論するために次の会議に再上程することにしたと説明した。

 原子力安全委員会関係者は「新古里3号機が既存の原発との違い、事業者の運営技術能力と計測制御系統のサイバー保安適合性などを集中的に議論した。機器検証書の偽造によって新しく交換したケーブル設置結果について韓国水力原子力から報告を受けることにした」と述べた。

 (C)
因みに、比較的良心的な元在日帰化日本人の方のブログで
違約金は工事費総額ではなく、毎月の工事費用の0.25%なんですよ。昨年の時点では毎月2000億ウォンから3000億ウォンの工事費をUAEは南朝鮮に支払っているので、その金額の0.25%が違約金、ということです。月で2500億ウォンとした場合、6億2500万ウォン。今日の相場で1ドル1104ウォンですから月の違約金は56万6000ドル程度の違約金(およそ6800万円)です。
と、我々の期待したほどではない、たいしたことがないとケッチャナヨの訂正されて・・・あれ?たいしたことがないのかと一瞬思ったが・・・韓国が受注したUAE原発の破格条件は

1.原子炉186億ドルのうち100億ドルの融資
2.原子炉稼働事故保険60年保証
3.故障時の修理回復保証
4.運転、燃料供給等の完全管理
5.原発の韓国軍による駐留警備

であり、地獄はこれからなのだ!


韓国経済には致命的嘘粉飾された外貨準備高が存在する。

日本の米国債保有残高は1兆1971億ドルで日本の外貨準備高1兆2481億ドルで、日本の外貨準備高は120兆円間違いなくある。

ところが韓国の外貨準備高は韓国政府発表では3657億ドル(2016年2月)なのに、米国債保有残高は約767億ドル(2015年8月)しかない。

中国も同様で、外貨準備高が3兆2000億ドルに対し、米国債残高が1兆ドル強、ユーロで保有しているわけでもない、粉飾しているか何処にあるかも誰もわからない。
韓国の外貨保有額は約767億ドル(7兆6700億円)しかないのだ。

韓国が面子を捨てても日韓スワップ再開を求めた理由は、粉飾された外貨準備高にある。

たしか日韓スワップは麻生閣下が検討すると言っただけで、再開は決まっていなかったはずだ。再開が決まっていないのにだ・・・・
イメージ 5慰安婦問題で、日韓合意に基づき元慰安婦支援のために韓国でつくられた「和解・癒やし財団」が日本政府に対し、安倍晋三首相名義で被害女性らへの「おわびの手紙」を出すよう要請していることが19日、財団関係者の話で分かった。

 財団は日本が合意に基づいて拠出した10億円から存命の元慰安婦1人当たり約1千万円を支払う方針で、首相の手紙を添えることで合意への理解を求め、受け取る女性が増えることを期待している。日本政府は返答していないといい、合意にない手紙の要請は日本側の韓国側への不信感に拍車を掛ける恐れもある。

 日本は昨年12月の韓国との合意直後に、岸田文雄外相が記者会見で「安倍首相は日本の首相として、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べている。日本政府筋は「あの表明が全てだ」としており、他の手段で謝罪の意を示すことに否定的な考えを示している。(共同)
スワップ供与を検討と言っているだけで、もはや供与してもらえると思って、慰安婦のおかわり要求!こんな国と関わるだけ無駄!検討はするが、結論はまだ先送りにしておけばよい。慰安婦問題を反故にした韓国に日本の国民世論は許さない!国民世論からすれば、スワップを供与をすべきではない。せっかくIMFがあるのだからそちらをご利用してもらえばよい!という議論で10年ほど検討すればよいだろう。(笑)

当ブログも、日韓慰安婦問題合意に思う。未来に禍根を残す結果となったと思う。 2015/12/29(火) 午前 7:48 と、誰でも思っていたが、その予想通りになってきた。

スワップ再開する前に、外貨不足と賠償の津波にのまれ、韓国はIMF行きとなればよい。そしてIMF管理下になっても今度は頼りの財閥まで総崩れで、二度と立ち上がれないだろう。

日本は絶対に恩知らずの韓国を助けるべきではない。スワップ再開はするべきではないというのが日本の圧倒的多数の意見であると思う。韓国は放っておけば勝手に自滅するだろう。

財閥が次々と破綻して総合的な対策を立てる暇すらない。どうやって、どこを見ても借金だらけ。増税するとか国民が納得するのか。既に韓国経済は10年前から予想されていた韓国経済最期の時を迎えそうである。

そして、最期は日本に救済を求めようと甘えている。韓国人らは、百済の頃より困った時には救いの手を日本に求め、困った状況から脱したとたんに「バカにするな」といってその手をはたくことを2000年も繰り返してきている。

近代になっても、清国から独立させてあげても、破綻した国を建て直すのに大韓帝国からお願いされて併合してあげても、逆恨み。

戦後、鉄鋼では一から十までポスコを育て、半導体技術を韓国企業に供与してサムスンをはじめとする電子メーカーを育て、さらに通貨危機の際には身を削ってまで韓国を助けてきた日本。

それらをことごとく仇で返してきたのが韓国という国である。

こんな国が経済破綻したとしても、まさに自業自得、自滅であって一切日本は関しない。これこそ、日本が「歴史を直視」した結果、導き出す答えである。

 非韓三原則

『助けない、教えない、関わらない』


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身の回りにある日用品を使う際に、「どこの誰が発明した物」などと考えながら使う人はあまりいないかもしれない。しかし、その多くが自国で発明されたり開発されたものであると知れば、何となく誇らしい気分になるものである。

中国メディア・中関村在線は6月30日、中国人も普段から愛用しているであろう日用品の多くが、実は日本人によって発明されたものであることを紹介する記事を掲載した。

記事は、「これらはいずれも日常生活において触れている物であり、なおかつ日本人が発明したものなのだ」と説明したうえで、25アイテムを紹介。紹介されたのは、スリッパ草履ボックスティッシュビニール傘エアバッグGPSカーナビゲーションアイスコーヒーノートパソコンカップ麺青色LED温水洗浄便座自動改札機カラオケ乾電池炊飯ジャー胃カメラシャープペンシル全自動マージャン卓インバーター式エアコン電子キャンバス、ゲーム機、ブルーレイディスク、八木アンテナせんべい、そして株価チャートなどで用いられるローソク足だ。

最後のローソク足は、「股民」と呼ばれる個人投資家が大量に出現した現在の中国社会においては、「日用品」と呼んでもいいかもしれない。記事は、ローソク足が江戸時代の米取引における米価の変動を示すのに用いられたという起源を持つ歴史あるものであることを紹介している。

また、シャープペンシルは中国語にすると「自動鉛筆」。日本ではシャープペンシルと呼ばれていること、それが台湾企業・鴻海に買収されたシャープの原点であり、社名の由来になっていることは、「自動鉛筆」という中国語からは知る由もない。この話を知った中国の人は、驚きとともに感慨を覚えるのではないだろうか。

このような記事が出てくる一方で、「われわれが普段使っている日用品の多くが、わが中国で開発されたものだ」という記事や文章はほとんど見かけない。イノベーションによる新たな産業発展を進めるなかで、「わが中国が誇る、世界でよく使われる日用品」が続々と誕生することになるのだろうか。
(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)
ボックスティッシュはアメリカの発明ですが、ポケットティッシュは日本の発明です。
また、中国人が日本の伝統である草履やせんべいまで日本の発明としていることが面白い。せんべいや草履の原型はアジア各国にあるのだが・・・・現在の形となるのは日本が発祥のようだ。

最近世界を変えた商品であるiPodや3Dプリンター等は日本で発明されたりその原型が日本発のものも非常に多い。21世紀の文化は間違いなく日本の文化が世界に伝搬したと後世の歴史家が書くのではないかと思う。
日本人が発明したスゴイものまとめ
naverまとめ
どのリンクを見ても日本の発明品が溢れている。だが、最近日本発の発明品は多いのだが主導権を取れていない発明品が目立つ。これじゃまるで起源は日本だと言っているみたいで、どこかの某K国みたいに(あちらは全くの妄想なんだが・・)起源を主張するのでは恥ずかしい以上に見っとも無い。
P25-29
日本企業には、新しい製品を世界に先駆けて創り出す発明力がない―――。
ITや家電分野で海外企業の存在感が増したこの10年、そんな見方がすっかり定着した。
だが、それは大きな間違いだ。
1990年代以降、世界を席巻した「世紀の発明」には、“日本発”が数多く含まれている。
この国に不足しているのは「発明力」ではな<、「宝の種を育て上げる力」だ。
日本の研究開発力が今まで真価を発揮できなかった理由を解明するとともに、
にの先、世界から絶対に必要とされる商品」を列挙した。
そこに、ニッポンの発明力で作れぬものはない。
(西雄大、須永太一朗、杉原淳一)

PART1
「日本には発明力がない」 の嘘
世紀の発明、調べりや大体日本発


過去20年、巨大市場を形成した革新的商品には、日本発の技術を土台にしているものが少なくない。
今後、世界に大きな影響を及ぼす次世代技術の多<も、もともとの原理は日本人が考案したものだ。
ニッポンの発明力は、本当は凄い。この国に足りないのは、「宝の種を育て上げる力」だ。

タカタ製エアバッグのリコール問題に収束の兆しが見えない。対象となる自動車は約1億台とみられ、費用は1兆円を上回る見通し。5~6月にかけては、投資ファンドの米コールバーグ・クラビス・ロバーツや中国自動車部品メーカーの寧波均勝電子などが同社支援に名乗りを上げていることも報道された。

1933年に高田武三氏が織物製造会社として創業し、60年代から自動車部品分野へ進出。エアバッグ市場で世界2位のシェアを確保し、2011年3月期には売上高営業利益率6.9‰自己資本比率47.6%と、完成車メーカーをしのぐ堅牢な財務体質を誇ったタカタ。

そんな優良企業が空前の大規模リコールでたちまち追い込まれたのは、エアバッグという商品がそれだけ、世界中に市場を広げた「世紀の大発明」だったからにほかならない。

日本勢の独壇場だった可能性

矢野経済研究所の調査によると、2017年の全世界のエアバッグ出荷個数は約4億5000万個を見込む。1つ1万円としても、単純計算で市場規模は4兆5000億円にもなる。 このドル箱分野は、海外企業先行で形成された。

1980年に初めて実用化したのは独ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)だった。同年にはスウェーデンの自動車部品メーカー、オートリブ(現在世界シェア1位)が量産を開始し、80年代から独ペトワなど海外勢の参入が相次いだ。

国内最大手のタカタも、研究自体は76年から始めていたが、量産開始は87年。その後、2000年にペトリを買収するなどして猛追したものの、オートリブとの“7年の空白"は埋まらぬまま、今日の事態を迎えている。

だが、世が世なら、この巨大市場は、日本勢が全面的に制圧していてもおかしくなかった。 というのも、エアバッグの原理はもともと日本人が考案したもので、その時期は、ダイムラーが実用化するより15年も早い1965年だったからだ。

発明者は故・小堀保三郎氏。関西で重機メーカーを経営していた小堀氏が会社を大企業に譲渡し、発明に専心し始めたのは62年のことだ。自動車の安全性向上に目を付けた小堀氏は、私財を投じ、研究機関や官庁に足しげく通ってエアバッグの発明に尽力した。

こうして誕生したエアバッグは、火薬の力で瞬時にクッションを膨らませ、事故の衝撃から乗員を守るというコンセプト。「現在流通しているエアバッグと全く同じ仕組み」と、小堀氏の友人、芝浦工業大学の小目泰平・名誉学長は説明する。小堀氏が残した概念図には、運転席だけでなく、窓側や天井にもエアバッグが搭載されていた。

ただ、この“宝の種"は、当時の自動車業界関係者から失笑を買っただけで、埋もれてしまう。火薬の使用が当時の消防法に抵触することもあって実用化のめどは立たず、海外企業の先行を許すことにつながっていく。

「もしもあの時、小堀氏の発明を官民一体となってうまく育てることができていたら、日本の自動車部品産業の状況は、今とは大きく変わっていただろう」。小口名誉学長はこう話す。

日本企業には、新しい製品を世界に先駆けて創り出す発明力がない―――。
家電やIT(情報技術)分野で海外の存在感が増したこの10年、そん方がすっかり定着した。 90年代様々な分野で世界を圧倒し続けたの製品が2000年代以降、海外勢塵を拝す中、日本人自身も自分たイノベーションカを疑問視し始めている。
が、だからといって「日本に発明ない」と考えるのは大きな間違いだ。過去20年、世界を席巻した発明の中には、エアバッグのように、日本発の技術が数多く含まれている。

「この国に不足しているのは発明力ではなく、発明した宝の種をビジネスに育て上げる力」。多摩大学大学院の徳岡晃一郎教授・研究科長はこう指摘する(28ページの表「他にもある“日本発"の商品・サービス」も参照)。
イメージ 1

 3Dプリンターも、そんな日本企業の「低い発明育成力」の“犠牲"になった分野だ。世界のモノ作りを一変させつつあるこのキーテクノロジーも、元をたどれば日本人に行き着く。

樹脂や金属を何層にも重ね立体を作る3Dプリンターの前身となる「光造形法」を世界で初めて発明したのは、名古屋市工業研究所の研究員だった小玉秀男氏。試行錯誤を重ね、特許を出願したのは1980年のことだ。

泡と消えた3兆円市場制覇

しかし、発明を公表しても「学会も含め、ほとんど産業界の誰にも注目されない状況」(小玉氏)が続いた。結局、小玉氏は研究職を辞し、85年に弁理士に転職。申請後に必要な審査請求の手続きもしなかったことで、光造形法は「幻の発明」となってしまう。

その結果は説明するまでもないだろう。未調査会社IDCによると、3Dプリンターの市場規模は、2019年に全世界で約3兆円規模になると見込まれている。そして現在、その超有望市場のシェアの過半を握るのは、ストラクシスと3Dシステムズの米国2社だ。

基本原理を真っ先に発明しておきながらうまく育てられず、いつの間にか海外企業に主導権を握られる―――。日本企業がそうやって取り逃した”大漁”まだまだある。

70年代にあった日本製ルンバ

ロボット掃除機も、その典型例だ。
米アロボットが2002年に「ルンルンバ(Roomba)」を発売して急拡大した同市場。調査会社GfKジャパン(東京都中野区)によると、2015年の国内販売台数は約39万台、1台7万~8万円として市場規模は約300億円に到達した。

従来型の掃除機と比べ販売価格も高く利幅も大きいうまみのある市場でもあるが、外資系メーカーが50%以上のシェアを持っている。
このロボット掃除機もまた、ルンバが登場するはるか以前、ロ本企業が“プロトタイプ"を開発し、発売している。

発売元は任天堂。プロトタイプとは、ルンバに先行すること23年前、1979年に発売した「無線クリーナーチリトリー」だ。
ラジコンのように操作するなど、本体に充電池やセンサーを内蔵し自律走行するルンバと異なる部分もあるものの、「ロボットが掃除をする」という発想自体は変わらない。

2015年の世界出荷台数14億3290万台(米IDC調べ、1台3万円として世界市場規模は約43兆円)と、これまた巨大市場となったスマートフォンも、最初に発想したのは日本企業という声がある。

「アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを思いつくきっかけになった」。パイオニアの技術者はこう話す。パイオニアがiPhoneより8年
早い1999年に、J-フォンを通じて発売した携帯電話「J-PE02」。スマホ同様、全面液晶で、タッチ人力でメッセージを送ることもできた。

同じアップル製品で言えば、2015年4月に発売され、既に5000億円以上の市場を形成したとみられる腕時計型端末「アップルウオッチ」にも、似た概念の日本製品がかつて存在した。

カシオ計算機が、アップルウオッチより41年前の1974年に発売を開始した多機能デジタル時計だ。オートカレンダー機能を世界で初めて搭載した
「カシオトロン」を皮切りに、計算や英和・和英辞書、温度や気圧・高度測定、脈拍測定、ゲームなど様々な機能付き時計を開発していた。

さらに、米アマゾン・ドット・コムによる配送効率向上の切り札「ドローン」も、同様の製品をやはり四半世紀以上前に日本企業が開発済みだ。
89年、キーエンスのホビー事業部(現アキュヴァンス)が発売した「ジャイロソーサー」がそれ。姿勢制御用のセンサーを搭載し、4枚のプロペラで10mの高さまで飛ぶ。

無線のラジコンヘリは当時からあったが、「操縦が難しく、初心者ではまともに浮かすことさえできなかった」(アキュヴァンスの藪繁広社長)。ジャイロソーサーは「初心者でも簡単に飛ばすことができる」をコンセプトにしており、その設計思想はそのまま現在のドローンに通じる。

「ジャイロソーサーシリーズと今のドローンとの違いは、モーターやバッテリーの性能差だけ。小型カメラを搭載しての空撮や、簡単な自動操縦なども試験レベルではできていた」。藪社長はこう振り返る。

NPO団体のリポートによると「2025年までに米国だけで8兆円以上の市場規模に成長する」とも言われ、日本でも特区設立など国家レベルの取り
組みが進むドローン。何のことはない、普及機が海外で登場し始めた2010年より遡ること20年以上前から、日本の空を飛んでいたわけだ。

消えた60兆円の元凶は何か

エアバッグ、3Dプリンター、ロボット掃除機、スマホ、ウェアラブル機器、ドローン…。日本の産業界は、結果として、国内で発明されていた”宝の種"をことごとく見逃し、放置したことになる。“その気になれば日本勢が制圧できたかもしれない市場"は、少なく見積もっても60兆円近い計算だ(エアバッグ`4兆5000億円+3Dプリンター3兆円十ロボット掃除機300億円十スマホ43兆円+ウェアラブル5000億円十ドローン8兆円。 ドローンは米国のみ、ロボット掃除機は国内のみ、ウェアラブルはアップルウオッチのみ)。

小堀氏のエアバッグに自動車産業が注目していれば…。小玉氏の特許にキヤノンやリコーが着目していれば…。任天堂のチリトリーに隠された先見性にパナソニックが気付いていれば…。パイオニアのJ-PE02の革新性をソニーが理解していれば…。いずれも、2000年代以降の日本経済の風景は大きく変わったはずだ。

短いものでも8年、長ければ40年も時間的余裕があったのに、なぜ、こんなに多くの宝の種を腐らせてしまったのか。次ページから、総勢50人を超える現役、OB研究者の証言を基に、日本企業の研究開発現場の問題点を検証する。      
発明力を腐らす日本企業4つの開発環境
1.挑戦しない人が出世する仕組み
2.部下に失敗させない文化
3.PDCA(Plan・Do・Check・Act)のPばかりやる
4.単純に研究時間が足りない

育てる力をそぐ日本企業の4つの開発方針
1.短期的成果の過剰な追及
2.リスクの過大評価
3.完璧主義
4.「組み合わせ≠イノベーション」

先日日本の至宝であったロボットテクノロジーがGoogleに売られてしまった。
これは日本人として残念である。非常に危機的なことだ・・・

東芝やシャープに対しては国は手厚く守るのだが、日本は例え東大発の非常に有望なベンチャー企業に対しては、官民ともに非常に冷たいのだ!日本は起業のためのベンチャーシステムが整っておらず、そういう意味では、技術者にとって非常に不毛な環境なのである。

リスクを取らない官僚体質なのだ・・・・その点Googleは副社長がたった3時間で投資を決めてしまったのだ!勝負ありである・・・・

電子立国と言われていたのは30年も前の話になってしまう。NHKの電子立国日本の夜明けやプロジェクトXなどを見ると、半導体の製造にかかわる色々な発明も日本であった。


半導体、太陽電池、テレビ、携帯電話も日本が主導権を取っていた。
だが、日本国内にしか目が向かず、世界には広がらなかった。そうこうしているうちに、韓国や台湾などの企業が世界市場を視野に入れて大量生産を始め、コスト競争で負けて撤退する羽目になっています。


ルール作りからすでに戦いであり駆け引きであると日本人は理解しなくてはいけないのだと筆者ルール作りへの参加の重要性を訴えています。 「世界標準」は公式の会合ではなく、その裏で開かれる雑談から生まれてきます。世界会議の後の非公式なパーティーとかで「今度、企画会議で標準化を議論しよう」とか盛り上がって、その場にいる企業や研究者などに声をかけて話が大きくなっていくわけです。公式の場に出て議論する段階では、もう決まっています。

 日本は「いい発明」そして「いい製品」まではできるが、それを世界で売り込めない。現在、期待されている技術は、様々な技術が複合してできています。世界中の企業とのコネクションが必要になる。

日本は地道に材料を作るのは得意でした。でも、それをシステムに仕上げる力がない。 インターネットが広がって、発明・製品化からコピーが生まれるまでのサイクルがどんどん短くなっています。このままでは、日本発明や技術だけ吸い取られ、利益は他の国に取られるようになる。儲からなければ研究開発費もでなくなり最後は発明自体もできなくなる可能性がある。以上青色発光ダイオードの中村博士が言っておりました。
私は中村博士はどうも好きではない。
言っていることは正論なのかもしれないが、失敗するかもしれない研究に投資してくれたのは、勤めていた会社であって、確かに研究者にはもっと報いるべきだが、それでも、恩を仇で返してはいけない。

今、絶対に必要とされる商品18
P35-40
①アクセルとふみ間違いないブレーキ ナセル機材(熊本県玉名市)
最大市場規模8兆円
市場が成熟しても、世の中に必要とされる商品は依然として存在する。
そして、その多くの種を、日本企業は既に持っている。
全産業が一体となってその宝を育て上げれば、日本経済はまだまだ立ち直れる。

5月6日午後5時、東京・大森。加害者は79歳の男性で、1歳の男児が右太ももを骨折する重傷。 5月15日午後6時、東京・錦糸町。加害者は83歳の男性で、45歳の警備員が右足を骨折する重傷。 5月22日午後5時、青森県十和田市。加害者は71歳の女性。 41歳の男性が首を切りドクターヘリで搬送…。 何のことだかお分かりだろうか。5月以降、全国で発生した「ブレーキとアクセルの踏み間違え事故」のほんの一部である。6月13日の前橋地裁高崎支部では、登校中の小学1年の男児を死亡させたとして、73歳の男性に禁錮3年6月が求刑された。

高齢化で増加する「踏み間違え」

2004年の約95万3000件をピークに減少し、2015年には約53万7000件まで減った国内の交通事故。そんな流れに逆行するように多発しているのがブレーキとアクセノレの踏み間違え事故だ。 2015年の発生件数は5830件。前年の約1.5倍と過去10年で最多となり、60人が死亡した(交通事故総合分析センター調べ)。当然、高齢化が進めば、一段と犠牲者が増えてもおかしくない。

だが、日本には、自動運転の実用化を待つまでもなく、踏み間違い事故を原理的に撲滅できる技術が既に発明されている。熊本県玉名市に本社を置く農機・漁業機メーカー、ナルセ機材が開発した「ワンペダル」だ。

「そもそも進む、止まるという逆の作業なのに、アクセルもブレーキも『踏み込む』と同じ動かし方なのが根本的におかしい」。そう話す鳴瀬益幸社長が開発したワンペダルは、ペダルを踏めばクルマが止まり、右にずらすと進むため、踏み間違えようがない。
法律面で搭載に問題はなく、技術的には完成している。アクセルペグルとブレーキペダルを専用器具でつなぐことで、後付けで既存のクルマに撚載することも可能。米国など7力国で特許を取得済みで、インドでも申請中だ。

(略) 大手自動車メーカーは、あくまでハイテク装備で、踏み間違え事故に対応しようとしている。踏み間違えても自動ブレーキが作動すれば、追突することはない、という考え方だ。

それに対し鳴瀬社長は、アクセルとブレーキという「自動車発明から100年続いた常識中の常識」(鳴瀬社長)を覆し、踏み間違い自体をなくそうと試みている。この発想こそ、ワンペダルという発明の最大の革新部分だ。

鳴瀬社長は今、ワンペダルを普及させるため、複数の協力企業を募っている。一つはワンペダルをビルトインした自動車を製造、販売してくれる完成車メーカー。もう一つは、後付けの取りつけサービスを代行してくれるディーラーおよび自動車修理工場だ。

1994年の開発以来、累計400個ほどしか売れていないが、これはひとえに踏み間違え事故が身近でなかったため。高齢化が加速し、毎日のように踏み間違えによる悲惨な事故が起き始めた今こそ、“宝の種”が育つ時がついに来た、と鳴瀬社長は考えている。
②飲酒すると運転出来ない自動車 東京医科歯科大学
最大市場規模8兆円

三林浩二教授が開発した「手の皮膚から出るアルコールを検知する技術」

③ ドライバーの急病検知システム  オムロン
最大市場規模8兆円

オムロンが、運転手が安全に運転できる状態か判定するシステムを開発済み。車内に搭載したカメラで運転手の顔を検知、危険度を判定するという世界初のシステム。

④転落しない階段 杉原クラフト(兵庫県尼崎市)
最大市場規模350億円

あらかじめ足を乗せる場所を決めた段違いの階段

⑤溺れない風呂 産業技術総合研究所
最大市場規模3兆円

「浴室溺れ防止センシング」だ。乳幼児が誤って浴槽に落下してしまうことを防ぐために開発されたが、大人の溺死防止にも使える。
加速度センサーが入っだ球体を風呂に浮かべる。浴槽内の波動がしばらく動かなかったり、急に大きな波動が現れたりすると異常を検知。浴室外にいる家族へ連絡する仕組み。

⑥喉に詰まらない餅 青森県立保健大学
最大市場規模350億円

小麦を使った餅

⑦倒れない二輪車 村田製作所
最大市場規模3兆円

CMでおなじみ、村田製作所が開発したロボット「ムラタセイサク君」に近いそうだ。

⑧喉に刺さらない歯ブラシ DHL(大阪府八尾市)
最大市場規模2200億円

転んだとき折れ曲がる歯ブラシを開発済

⑨墜落しない飛行機 東京大学
最大市場規模25兆円

AI(人工知能)を使い、飛行中にトラブルが発生しても瞬時に対処法を探し出し、安全に飛行・着陸する技術を模索している。

⑩燃えない家 アサノ不燃(東京都江東区)
最大市場規模1.6兆円

が2001年に開発した技術「セルフネン」。化合物の「ホウ酸」と「ホウ砂」を含んだ水溶液に建材を浸すなどで、不燃性を高める。



高性能通訳機器 国立研究開発法人、情報通信研究機構(NICT)
多言語音声翻訳アプリだ。 29言語が翻訳でき、スマートフォンに向かって話しかけると、訳した文章を表示したり、音読したりする。中でも英語、中国語、フランス語など10言語は使用頻度の高い旅行会話の精度を特に高めており、例えば「英語力」は既にTOEIC600点レベルに達しているという。
これまでの翻訳ソフトとの違いはこれまでの翻訳ソフトとの違いは、人間の通訳のように“融通が利く”ことだ。従来のように、機械的に直訳するのでなく、大量の訳文を学習したアプリが、最適な表現を選び出す。発話者の声のトーンなどにもほとんど影響を受けず、方言のアクセントでも「大体こういうことだろう」と発言内容をシステム側か推測し、翻訳する。革新的な発明とあって、パナソニックやNTTも注目している。

音声自動認識システム アドバンスト・メデ`イア(東京都豊島区)
「AmiVoice(アミボイス)議事録作成支援システム」は話している人が息継ぎしたタイミングで区切り、発話内容を文字に変換してパソコン画面に表示する。
最大の革新性は、使ううちにソフトが、これまた人間の書記のように、どんどん“賢く”なっていくことだ。使い続ければ、業界用語など特殊な言葉でも登録され、正しく変換できるようになる。

日本語←→半角入力自動変換システム ショーケース・ティービー(東京都港区)
「こんにちは」と入力したいのに、パソコンの両面を見ると「konnitiha」となってしまう。そんな経験は誰にもあるはずだ。日本語人力しているつもりが、半角のまま。そんな入力ミスによる作業効率の悪化は、一人ひとりにとつてはささいなものだが、オフィス全体で見るとばかにならない。
利用者が人力したいのが日本語か半角かを瞬時に理解し自動変換する文書ソフトはまだ見当たらないが、ウェブサイト上での入力では既に解決策がある。ショーケース・ティービー(東京都港区)が提供する技術「フォームアシスト」がそれで、半角入力すべき欄に書き込む時は半角モードに、かな入力すべき欄に書き込む時はかなモードに自動的に切り替わる。
無線充電システム KDDIなどが開発した「Cota(コータ)」
 コータではスマホなど充電したい端末が送電装置に向けて信号を送り、送電装置が端末の位置を把握。その上で送電電波を発し、充電する。送電装置から10mほど離れた複数の端末に、最大1ワットずつ供給できる。スマホのバッテリーを7時間半程度でフル充電にできるという。
探し物検知・盗難防止システム ソニーなどが出資するキュリオが開発した「スマートタグ」
 あらかじめスマートタグと自分のスマートフォンを関連付けしておく。このタグを鍵やバッグ`といった紛失すると困る物に取り付ける。一定の距離を離れてしまうと、ブザーが嗚ったり、地図上からタグの現在地を把握できたりする。万一置き忘れても、すぐに場所を確認できるのだ。
⑯明るい場所でも反射せず読めるスマホ
⑰上下関係なくさせるUSB
⑱介護施設用の全自動風呂



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北京に向け走行する中国の高速鉄道=2011年7月(ロイター)
中国が国家戦略の柱に据える「高速鉄道外交」が崩壊寸前だ。中国企業が初めて建設を手がける米国でのプロジェクトが挫折し、中南米やアジアでも事業が頓挫するなど死屍累々。ずさんな計画や採算など“官製ビジネス”の陥穽が浮き彫りになった格好だ。米国では「超高速」交通の開発も進む中、各国のインフラに食い込み技術力をアピールしたい習近平指導部の願いもむなしく、「中国高速鉄道は完敗」との声も聞かれる。

赤っ恥の習政権

「米中の協力関係を象徴する高速鉄道プロジェクトが、合意から1年もたたないうちに頓挫した」

無残な顛末をあきれたように報じたのは米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)だ。米西部ロサンゼルス-ラスベガス間を結ぶ高速鉄道事業を計画している米エクスプレスウエスト社は6月8日、中国の国有鉄道企業、中国鉄道公司との合弁を解消すると発表した。

エクスプレス社は、中国企業側の要因による計画の遅れで認可取得が難しいほか、車両の米国内での製造を求める米当局の規制が障害になったとしている。

一方、中国側はこれに“逆ギレ”。ロイター通信などによると、中国企業の幹部は「早計かつ無責任だ」と米側の対応を強い調子で非難している。

ただ、中国が怒り心頭なのも、ある意味無理もない。昨年9月の習近平国家主席の訪米直前に、米中が合弁で合意。中国企業が米国内で高速鉄道を建設する初のケースとして、関係者から「中国の鉄道輸出にとって大きな一歩になる」と注目を集める案件だった。それだけに、習指導部としては世界に赤っ恥をかかされた格好だからだ。

エクスプレス社は、提携などを含めて別のパートナーを今後探すという。このプロジェクトをめぐっては、新幹線を抱えるJR東海も当初受注を目指しており、今後が注目される。

お粗末な事業

中国は、中南米でも相次いで高速鉄道プロジェクトが頓挫している。

2014年にはメキシコでの高速鉄道事業で、やはり中国企業が中心となるコンソーシアム(企業連合)がいったんは落札した。だが、不透明な入札手続きなどが暴露されて落札はキャンセル。さらに、閣僚も巻き込んだ贈賄疑惑など大スキャンダルに発展し、批判が殺到。追い込まれたメキシコ政府は、「原油安と財政難」を理由に、計画そのものを棚上げしてしまう。

ベネズエラでは、中国の鉄道建設大手、中国中鉄が手がける南米初の高速鉄道事業が進行中だったが、こちらも原油安による財政難などのために事業を推進する余裕がベネズエラ側になくなり、今年に入って事実上行き詰まった。

インドネシアでも、米国と同様に日本企業などのライバルをけ落として中国企業が昨年プロジェクトを受注した。だが、あろうことか中国側からの提出書類が、英語でもインドネシアの現地語でもない中国語で書かれ、「判読できない」(インドネシア当局関係者)といったお粗末な理由で、事業契約が調印できない事態に陥った。

中国は11年夏、浙江省温州で高速鉄道の大勢の乗客が死亡する事故を起こし、その拙速な事故処理もあって国際社会から厳しい目が注がれた。習政権はここ数年、海外への高速鉄道の輸出に力を入れるなど巻き返しに懸命だが、一度失った信用を取り戻すのは容易ではない。

時速4000キロって?

ただでさえ苦境にある中国の高速鉄道だが、さらに「強敵」となる次世代の高速交通システムの開発が世界で進みつつある。

その先頭を走るとされているのが米国。電気自動車(EV)ベンチャーのテスラなどを率いるIT経営者、イーロン・マスク氏が提唱している高速列車構想「ハイパーループ」だ。減圧された真空に近いチューブ内を列車が猛スピードで駆け抜けるもので、理論上は飛行機も真っ青の時速1200キロ近いスピードが出せるという。コスト面などの課題はあるが、「実現すれば交通システムを一変させる可能性がある」(国土交通省関係者)とされる。

ネバダ州ラスベガス郊外で5月11日、プロトタイプによる初の実験走行が行われた。米ニュースサイトのギズモードによると、走行はわずか数秒間だったが、1秒で時速約160キロに到達し、「実験は成功に終わった」としている。

これに強い関心を示すのが中国だ。中国情報に強いニュースサイト、サーチナは、「ハイパーループはすごすぎる」「中国高速鉄道は完敗か」といった中国メディアの反応を報じ、ハイパーループが実用化に向けて成果を上げたことに警戒感を示したと伝えている。

ただ、中国でも、政府の支援を受けて大学などで真空チューブ列車の研究が進められている。中国メディアによると、10年以内にも実用化を目指しているとされ、なんと時速はハイパーループをもはるかに上回る時速4千キロ。国際列車が北京とワシントンを2時間で結ぶ計画なのだというから、にわかに信じがたいというほかない。

だが、安全保障でも微妙な関係を抱える中国と米国を結ぶチューブをいったいどう敷設するのかなど、容易に解決できそうもない課題は多そう。着々とステップを踏むハイパーループと比べ、どこまで実現性があるかは不明だ。(柿内公輔)
6/30の産経新聞は6/28の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事を受けて書かれたのだと思う。その記事。
2016年6月28日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、これまで低コストを最大の武器にしてきた中国製品だが、こと中国高速鉄道の輸出に関してはその品質や意思疎通の不十分さから挫折すると指摘した。 

中国の高速鉄道は日本やドイツと比べると価格が格安で、工期も格段に短いが、低価格・低コストだけでは購入を決定してもらえなくなっている。巨大な工場や先端科学を応用した列車など、それらは見学に訪れた外国人の目に印象的に映るが、それだけでは契約を実現するには不十分だ。 

バングラデシュ中央銀行の首席エコノミストは、「発展途上国は低コストの製品を好むが、それと同時に品質の高い製品を求める」とし、「中国の今後の目標は、輸出する列車やバスの品質を高めて国際市場におけるシェアを奪うことだ」と話す。 

中国の高速鉄道輸出で最大のライバルは日本だ。新幹線は1964年の開通以来、重大な事故を一度も起こしておらず、世界で最も信頼性、安全性の高い高速鉄道となっている。中国では2011年に浙江省温州市で高速列車が脱線事故を起こし、多数の死傷者を出したことで、中国高速鉄道の安全性に影を落とした。 

バングラデシュ中央銀行の首席エコノミストは、「発展途上国では日本の製品のような壊れにくい製品が好まれる」とし、日本は品質を高める努力を惜しまないことがその理由だと話す。 

東アジア・ASEAN経済研究センターの専門家は、中国は輸出しようとする相手国について下から上まで研究と意思疎通に尽力した上で、海外投資に必要な長期的で細やかな計画を練り上げていく必要があり、外交上も時間をかけて協議していくべきだと指摘している。(翻訳・編集/岡田)
これは喜劇だ、格安で受注した中国高速鉄道だが、ベネゼイラ、米西部ロサンゼルス-ラスベガス、メキシコ、タイ、インドネシア・・・インドネシアの場合はまだ正式に契約解除をしていないが時間の問題だろう。現在計画中で、一路一帯の構想に入っているマレーシアの高速鉄道の結果も見えている。これでもしマレーシアが採用したならば、マレーシア航空機の2度の悲劇から何も学んでいないことになる。中国の高速鉄道輸出は全て失敗である。

中国の技術者は時速350Kmで中国高速鉄道が走行することがいかに危険であることを知っているようだ。
2016年6月28日、民生周刊によると、中国の高速鉄道の運行速度引き上げについて、著名鉄道技術者で中国工程院院士の王夢恕(ワン・モンシュー)氏が「技術的な条件を満たしていない」と懸念を示した。 

中国高速鉄道の設計最高速度は時速350キロだが、5年前の衝突脱線事故を受け、鉄道当局は「安全をより確保するため」として300キロ前後での運行を行っている。時速350キロに戻す時期に世間の関心が集まる中、中国鉄路総公司の幹部は先日、「時速を戻すことはコストアップにつながる」「技術上、安全上の問題はない」などと発言した。 

この件について取材を受けた王氏は「あれだけ安定した走行なのに、高速鉄道にまだ不満があるとは」と述べ、速度引き上げについて「技術的な条件を満たしていない」「少しの油断が事故を引き起こす」と指摘した。同氏によると、北京と上海を結ぶ線路でも一部区間で時速350キロに対応できていない線路があるという。さらに、「速度を上げて走行した場合、減速に必要な距離も長くなる」と説明し、「安全は第一に考えるべきこと。いっそうのスピードアップを望むのであれば飛行機に乗ればいい」とむやみに速度引き上げを求める声に苦言を呈した。(翻訳・編集/野谷)
現在の中国高速鉄道は川重の技術ををコピーしたものだ。

北京―上海高速鉄道を開業した際、世界最速の時速380キロで走行する新幹線車両「CRH380A」の車両技術について、中国側は次々と国際特許出願の手続きをアメリカなどで始めていたことが明らかになった。「CRH380A」の車両技術は川崎重工業が東北新幹線「はやて」(E2系車両)をベースに技術供与したもの。中国側はこれを「独自開発した」と主張して国際特許出願に踏み切った。

川崎重工業の技術陣は「モーターの出力を上げただけでE2系と基本的な構造に変化はない」と言い切っている。中国側は抜け抜けと日本の新幹線技術を盗用し、あろうことか国際特許を出願した。

 川崎重工から供与を受けて東北新幹線「はやて」の技術を応用してそれより速い高速鉄道列車を作り、「自主開発」と称して海外に輸出する行為は契約違反であるうえに、信義に反する。

川崎重工は、中国が「自主開発」と主張して中国で運行している高速鉄道車両は、技術を供与した我々のものと瓜二つだと指摘する。川重はそれより速いものを作れるにもかかわらず、経年劣化するとリスクが伴うもので250Kmに抑えて輸出したものだった。

川崎重工によると中国政府との契約では供与した技術は中国国内だけでしか使用できず、その技術を応用して作った製品を輸出することはできないことになっていた。「中国の高速鉄道技術は海外の技術を盗んだもの」との考えが国際社会で広まっているが、中国鉄道部は「350kmの技術があるのに、なぜ250kmの技術を盗まなければならないのか」とこれを一蹴した。中国側は「技術供与を受ける際、巨額の特許料を支払っている。合法的な使用は“盗作”にはあたらない」と反論している。

 中国の北京-上海間で運行している中国版新幹線「和諧(わかい)号」について、「技術は日本やドイツから導入されたものがほとんど。安全性を無視して最高速度を設定した」と中国鉄道省の元幹部が中国紙に暴露し、中国の「独自技術」とする主張の信憑性はあるわけない。

不思議なことに中国人は、中国の高速鉄道が本気で新幹線より上だと思っているようだ・・・・(笑)
 新幹線は世界で初めて開業した高速鉄道だ。中国は高速鉄道産業においては後発中の後発だが、今では各国の高速鉄道市場をめぐって新幹線と熾烈な受注競争を展開している。中国は高速鉄道技術を自主開発したと主張すると同時に、中国高速鉄道は世界をリードする存在であると主張している。

中国メディアの捜狐はこのほど、「中国高速鉄道は世界一だというのに、なぜ日本人は承服しないのか」と疑問を投げかける記事を掲載した。

記事はまず、新幹線の強みとして「確立された基幹技術と整った一連のインフラシステム」を挙げ、その技術はシームレスに統合され、長期的に安全に運用されてきた豊富な経験を持つと指摘。新幹線の安全性と安定性は中国高速鉄道を上回るとする一方、新幹線の輸出市場における歩みは「非常に遅かった」と論じた。

さらに、中国高速鉄道の技術的な強みとして、「レールおよびトンネルの建造技術が優れ、温度変化が極めて大きいなどといった複雑な状況でもレースが変形しない技術を持つ」ことを挙げたほか、建設コストも建設速度も日本を大きく上回ることを挙げた。

確かに近年の中国高速鉄道の発展は凄まじく、政治的な駆け引きもあって各国の高速鉄道事業の受注に成功している。中国人が中国高速鉄道に自信と誇りを抱く気持ちはよく理解できるが、記事が主張しているように「日本人が中国高速鉄道の実力に承服しようとしない」のだとすれば、中国高速鉄道が新幹線と競合関係にあることのほか、もともと日本側が提供した技術をベースにしているにもかかわらず、自主開発したなどと主張している点も要因の1つではないだろうか。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:(C)Guo Zhonghua/123RF.COM)
中国は自国の経済失速と混乱と汚職蔓延に何もできない状況になっているのだが、習近平政権は、AIIBと一路一帯、高速鉄道輸出を経済復興の切り札としているが・・・暗雲垂れ込め・・・唯一の希望が消え掛けている

中国が壮絶な拝金主義の国であることは誰でも知っている。拝金主義というのは、「他人がどうなろうと自分が儲かればいい」という思想を指すのだが、習近平や党幹部からしてそれなのだから、この拝金主義の中国がまともなインフラ輸出などできるわけがない!

中国の拝金主義は、2016年もネズミ肉、キツネ肉、偽クラゲ、偽装ミルクと食品汚染、偽造食品が絶えない。これらの「毒食品」が蔓延する原因はホンモノの材料を使ったらコストがかかるからニセモノの材料を使ってホンモノと同じ値段を取る。

人の命がかかる高速鉄道を中国に造らせれば「他人がどうなろうと自分が儲かればいい」ような物を作ることは、中国から賄賂を貰っている人間ですら解る。拝金主義の中国にインフラを整備させれば、後に多数の自国民が大事故に遭遇することは火を見るごとく明らかだ。中国のインフラ輸出は信用できるわけないのだ!

いずれ、経年劣化で、元々手抜き工事をしている中国の高速鉄道で大事故が起きてもおかしくはない。自分さえ儲かればいいと考える中国人が作るインフラなど信用ができるわけがない。中国人が拝金主義を捨てるとは思えないので、結局だれも中国以外は中国高速鉄道を採用しないだろう。

もはや中国の社会体制そのものが限界に達しているのを、必死になって取り繕っている状態であり、こんな国が長く維持できるはずがないのは子供でも分かる。
 チャイナリスクは膨らむ一方で、収拾の見通しが立たない。本欄でも何度か警告してきた中国の債務爆弾である。

 グラフは中国の銀行融資残高と銀行不良債権の推移である。銀行融資は2008年9月のリーマン・ショック以降、年率15%前後、一直線で増加してきた。不良債権のほうは12年から徐々に増加し始め、15年から前年同期比50%前後のペースで急増中である。

 融資残高に占める割合は今年3月末時点1・4%で、日本の13年当時の水準並み(16年3月は0・97%)である。

 ここで気をつけなければならないのは、中国の不良債権認定基準のいい加減さである。日米欧の場合、企業など借り手が90日以上返済を延滞すると不良債権として分類するのだが、中国の銀行は銀行が担保などを高く評価して「回収できる」と認定すれば、不良債権に計上しなくても済む。

 大手国有商業銀行は主な貸出先が国有企業であり、共に党官僚が支配している。党の裁量がものを言う。貸し倒れはありえないと国有大手銀行は判断すれば、当局が追認するというわけである。

 親中派のラガルド専務理事の国際通貨基金(IMF)も、いんちきなチャイナスタンダードを鵜呑(うの)みにすれば恥をかくと思ったのだろう。独自の分析で不良債権を算出した。IMFが4月中旬に発表したグローバル金融安定報告によると、融資残高に対する中国の不良債権比率は14%、国内総生産(GDP)に対する比率は20・7%に上る。円換算の不良債権額は中国当局データから算出すれば、3月末23兆円だが、IMF報告ではその10倍、230兆円へと膨れ上がる。

 1990年代のバブル崩壊後の日本と比べてみると、中国の不良債権問題の深刻さがよくわかる。日本の銀行の不良債権の償却ずみ累計と残る問題債権合計の対GDP比率はピーク時の2000年3月末で12%だった。中国はその水準をはるかに超えるし、しかも不良債権は増え続けている。

 不良債権の元凶は鉄鋼、石炭、セメントなどのゾンビ企業群と、14年に起きた不動産バブル崩壊だ。国有銀行大手は不良債権処理を先送りして企業向け融資を増やし、ゾンビ企業はそれをよいことに過剰生産体制を温存している。


 習近平政権はさらに、不動産向け融資を促進させ、上海、深圳市、北京など沿海部の大都市の不動産相場を急騰させている。バブル崩壊対策は、次なるバブルの創出というわけである。まさにめちゃくちゃ、中国は世界経済を破壊する不良債権を巨大化させることしか考えない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
2012年、当時、国家副主席だった習近平はこのように言ったことがある。
「3年内に国民の支持を取り戻すことができなければ10年以内に共産党も滅び、国家も滅びるだろう」

習近平政権はまったく国民の支持を取り戻せていない。それならば、自分が言った通りに10年以内に中国は滅びるということだ。拝金主義で勝手に自滅していく。

拝金主義を捨てることができない中国は、自滅しても自業自得でしかない。



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Carol Ryan

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国観光客による高級品の「爆買い」が勢いを失っている。4月の購入額は前年同月比で約2割減った。中国当局が海外購入品の持ち込み抑制に乗り出したのが原因かもしれない。

景気循環など、従来の物差しで高級品の需要を予想する手法はもう通用しなくなっている。

ベイン・アンド・カンパニーによると、中国人による購入は世界の高級品販売の3分の1程度を占めている。同じハンドバッグでもパリで買えば北京の半額で済むため、大半は海外での購入だ。しかしそれも過去の話になるかもしれない。中国政府は4月8日、海外購入品に対する関税を大幅に引き上げ、上海の空港の到着ロビーでは今、「戦利品」が捨て去られるという残念な光景が広がっている。海外購入の高級腕時計への関税は2倍の60%に、バッグと衣料品は従来の20%から30%に、それぞれ引き上げられた。

中国政府が、パリのシャンゼリゼやロンドンのボンドストリートではなく国内で買い物をしてほしいと望むのを責めることはできない。闇で高級品を輸入して販売するプロの商人にも当局は目を光らせており、ベインの推計ではその額は年間70億ドル程度に上る。

高級品ブランドとしても、怪しい二重市場が取り締まられることを残念だとは思わないだろう。中国本土で正規のブランド品購入が増えることにも期待が持てる。ただ、そうはいかない可能性もある。中国の買い物客は単に出費を減らして終わりかもしれないし、正規の価格で買えるほど裕福になるには何年も要するかもしれない。

重要なのは、これまでの高級品需要のパターンが当てはまらなくなってきたことだ。従来なら、人口動態や国内総生産(GDP)の基調を見れば将来の販売動向がかなりうまく予想できたし、大きな脅威といえばテロや世界的な景気後退だった。しかし中国政府が2013年に汚職摘発を強化し、ここにきて高級品の関税を引き上げたことから、今度は中国政府の政策こそが最大のリスクとして浮上した。これは先を読むのが至難の業だ。

●背景となるニュース

・世界中の観光客による高級品購入動向を示すグローバル・ブルーのデータによると、4月の購入額は12.8%減少した。減少は2カ月連続。

・中国観光客による購入額は3月が23.6%減、4月は18.5%減だった。

ついに爆買いが終息してきた。どうやら輸入関税を導入したとはいえ、誕生したばかりの中間層に経済停滞の影響が出始めてきた。

関税の強化は進行するデフレを食い止める為に貴重な国内需要を海外に持っていかれることを阻止しようというわけだ。それだけ国内需要が不足している裏返しだ。

小室直樹先生はかつてソ連の崩壊を予言して的中させた。今でこそ誰でもソ連は崩壊すべくして崩壊したと思っているが、1980年、光文社から小室先生が『ソビエト帝国の崩壊 瀕死のクマが世界であがく』が出版された当時、ベストセラーとなったが
アカデミズム側は突拍子すぎて奇人扱いをした。
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中国共産党政権も崩壊することも予言している。「中国共産帝国の崩壊」ちょうど中国で民主化を求める学生達が天安門に集結し、それを当局が武力鎮圧した天安門事件の直後に1989年9月に出版したものだ。

「中国共産帝国の崩壊」の中で中国は5000年まったく変わらない社会で、孔子が活躍した頃の古代中国のように自由競争主義のように分割民営化しなければ崩壊すると予言した。

小室先生は共産主義中国崩壊を予言した。しかし、未だ中国共産党政権は崩壊していない。小室直樹は予言を外したと言い張る方もいるが、それは誤りである。
鄧小平は、南巡講話によって、小室先生の処方箋通りに共産主義を改め自由主義的経済を導入した。予言が外れたのではない、むしろ適確な現状分析だったのではないかと思う。

もしかして、小室先生の本を鄧小平は読んだのか?1992年有名な南巡講話を発表し、鄧小平は毛沢東が始めた人民公社を解体した。そのことにより、軛を外された農民が都市に流入して、未曽有の繁栄をもたらした。
マイナス金利に踏み込んでもインフレを作り出すことができない。それは日本だ
けの現象ではない。

ヨーロッパ中央銀行もマイナス金利を採用しているが、思ったように物価を上昇
させることができない。米国のインフレ率も低くなっている。ほぼ全ての先進国で
インフレ率はゼロ付近をうろついている。

そして、一時は石油価格が1バレル=140ドルになるなど、あれほど騒がれた資源
インフレもウソのように終焉してしまった。


なぜ、このようなことが起きているのであろうか。私はアジアの農業と農民を見
て来たが、昨今の世界経済の変化には、中国の農民の動きが大きく関わっている。

かつて世界経済のエンジンだった農民工


アジアの農民はコメを作ってきた。化学肥料のない時代、コメはコムギなど他の
穀物より単位面積当たりの収穫量が多かった。また水管理が必要なことなどから、コメを作るにはコムギよりも多くの人手を要した。

こうしたことが重なって、アジア農村の人口密度は高くなっていった。コメは主にインド以東のアジアで作られているが、現在、そこには世界人口の約半数が居住している。

しかし近年、人口は農村から都市へと移動している。日本でも昭和20年代後半から昭和が終わる頃まで、多くの人が農村から都市へと移住した。同じ現象がアジア各地で起きている。そして、それは13億人の人口を擁する中国で特に顕著である。
経済成長とは、農業が主な産業であった国が工業化することである。もちろん農
業部門も少しは成長するが、その速度は工業部門に比べて著しく遅い。途上国の経済成長とは、地方で農業に従事していた人が都市に出て工業部門で働くことを意味する。

下の図に、世界で1年間に増えた都市部の人口を示す(アフリカを除く)。
中国を除いた地域では、都市人口の増加はほぼ一定である。毎年3000万人から4000万人が都市部へと流入している。

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一方、中国の都市人口は開放改革路線に舵が取られた1970年代後半より急上昇して、21世紀に入った頃からは毎年約2000万人も増加している。

先進国では都市と農村の生活水準の差はそれほど大きくない。しかし中国では都市と農村の差が極めて大きい。その中国で毎年2000万人もの人々が農村から都市に流入している。

農村から都市に出て来て働いてもそれほどの給与は得られないから、流入した農民がそれほど多くの消費財を購入したわけではない。だが、それでも農村にいるときよりは遥かに多くの物を消費している。

農村から都市に出た人々は消費者であると共に生産者である。中国ではその多くは工業部門で働いた。いわゆる農民工である。彼らの職場は大量の石油、石炭、鉄鉱石を必要とし、中国は世界から大量の資源を輸入した。

日本も高度成長時代に中国と同じことを行ったが、中国の人口は13億人。それは世界の歴史をも変えるインパクトをもつ。

中国では1980年から2015年までの25年間で都市人口が6億人も増えた。都市内
部の増加があるから、その全てが農村部からの移入ではないにしても、都市では一人っ子政策の結果として人口増加率が激減していたから、その多くは農村からの流入と考えてよい。

世界人口の1割にも及ぶ人々が農村から都市へ移動して、その多くが工業部門で働いた。それが資源需要を急増させ、資源国であるブラジル、オーストラリア、アンゴラなどの景気を浮揚させた。都市に出てきた中国の農民が世界経済のエンジンだった。統計を見ると、1990年頃から2010年頃まで中国だけでなく世界の多くの国々で成長率が明らかに高くなっている。

中国の道連れになったまま

だが、ここに来てそのエンジンが逆回転し始めた。中国における農村から都市へ
の人口移動のピークは2011年である。その数は2270万人。2016年は若干減って
2040万人と推定される。

中国で農民が都市へ流入する時代は過ぎ去ろうとしている。これからも、しばら
くは都市人口の増加が続くが、ピークを過ぎてから都市に出る人々の資質はそれ以前に出た人々に比べて見劣りするだろう。能力が高く独立心旺盛な農民はとっくの昔に都市に出てしまった。

その結果、都市で経済が爆発的に増大する時代は終わった。それが資源バブルの崩壊を招いている。

今後、インドで同様の現象が起きることを期待する向きもあるが、それは中国ほ
ど爆発的な現象にはならないであろう。中国以外では農村から都市への人口移動は緩慢である。

農民が都市へ移ったことにより中国は世界の工場になった。安い労働力を使って安い工業製品を輸出している。その結果、世界中に安い中国製品が溢れ、世界にデフレをもたらしている。そして、それは先進国の工業部門に打撃を与えて、雇用を奪っている。

マクロな視点から見れば、米国でのトランプ現象や欧州での移民排斥運動は、中国から輸出される安い工業製品が大いに一役買っていると言えるだろう。

今後もこのような状態はしばらく続くだろう。中国は過剰投資によって急成長し
た国である。そのため、過剰投資が問題となっても投資を止めることができないジレンマがある。どの国でも成功体験の自己否定は難しい。だから、過剰設備を抱えながら、投資を増やすことによって景気を下支えしようとしているのだ。

21世紀に入ってからの資源価格の高騰と下落。そして世界的なデフレの背景には図に示した中国の人口移動があった。

しかし、現在そのピークは過ぎ去り、今後、中国が世界経済をリードすることは
ない。いくら中国政府が力んでも、農村からの元気な若者が都市に出て来ることがなくなれば、経済を成長させることは難しい。そして、これまでに作った生産設備があまりに巨大であるために、中国だけでなく世界がデフレに苦しむ時代に突入してしまった。

なお最後に一言追加すれば、
農村部からの人口移入はピークを過ぎたからと言って、図に示すように、止まったわけではない。それが、中国経済が崩壊しそうだと言われてもなかなか崩壊しない理由である。このような状況がしばらく続く。重苦しい限りである。

しかし、中国は5000年まったく変わっていないのだ、南巡講話から四半世紀が経ったが、中国は官僚支配と孔子の思想に縛られる「二重の思想体系」という社会構造は、基本的に今もなににも変わっていないのだ。

中国では、「儒教」的な道徳観が支配しているようにみえるが、中国人は孔子のような道徳など持っていないのだ。道徳を持っていないからこそ孔子は中国人に向かって道徳を説いたのが論語であり儒教なのだ。

儒教的な道徳観は、支配者が人民を統制する際に極めて都合のよい教えであるのだ。社会主義と相反し、かつて毛沢東と紅衛兵が文化大革命で徹底的に否定した孔子の思想を中国共産党は人民支配の為に再び復活させている。

中国における政治は、法に基づく統制(法家)によって、官僚が人民の生活を富ませるという発想のもとに行なわれる。この「法家」の思想は、じつは社会主義と親和的な発想であり、「統制経済」とも親和的であることはいうまでもない。

 だが、この法家の思想では、官僚は、人民よりも能力が優れていることが前提となっている。能力が優れているからこそ、人民を「国が富む」方向に導くことができ、官僚はそのような能力をもっているがゆえ、人民は官僚を敬わねばならない。そのため、中国における法律の運用は、官僚の裁量権が強くなってしまうのである。

また、法や制度運営に関する官僚の個人的裁量権が強いということは、とくに地方では、官僚は独立的な経営者のようにふるまえる権限を有すると考えてよいことになる。そのため、公私混同が起き、国家会計と個人の財産も混同され、日本では想像もつかないほどの巨額の賄賂の受け渡しが頻繁に行なわれる。

 このような官僚の個人的裁量権の強さは、法律的には「事情変更の法則」といわれている。「事情変更の法則」とは、当事者間の人間関係や社会関係によって契約履行の条件が変わることを意味している。すなわち、契約が非常に人間的なつながりが強い人のあいだで交わされる場合には、まったく同じ取引であっても、つながりがあまりない場民の権利を守る」ために法律が存在するというのが根本思想である。

中国では、法律とは、「為政者が国民を統治していくための方法」というのが根本思想である。

欧米の法体系は「民法」中心主義といわれるが、これは資本主義を機能させるために必要な「所有概念」を明確に規定したものだ。 ところが中国では、「所有と占有の混同」といわれることが多いが、すなわち「法的に誰が保有しているのか」ということと、「現在、誰が管理しているのか」ということの区別がつかないことを意味している。

 最近は中国でも株式会社がる。、株式会社の「所有者」はいうまでもなく、「株主」である。つまり、株式会社は、所有者である株主の利益を最大化するために経済活動を行ない、その利益を配当というかたちで株主に還元する、というのが基本的な株式会社の仕組みだ。もちろん業績が好調で将来、配当加増えそうだという評判が立つと、その企業の株式を購入したいという人が増えるので、株価が上がり、キャピタルゲイン(資本利益)を得ることができる側面もあるが、理論的に株価の上昇は、将来の企業利益の増加によって配当が増えることが前提となっている。

 一方、「占有」というのは、「所有者」である株主が、企業の日々の事業活動を管理しているわけではなく、日常の事業活動はその会社の経営陣が行なっており、経営陣が企業を「占有」していることを意味している。中国では「所有と占有の混同」を株式会社の経営で考えると、経営者が株主の利益最大化を無視して、自分の報酬のみを上げるために事業を行なう。とくに取引先の企業から不正にリベートをもらったり、業績を上乗せするために、顧客に過剰な接待を行なったりして、利益の増加分を自分の懐に入れてしまうケースが後を絶たない。つまり、経営者が自分が会社の「所有者」であるとみなし、自分の利益を最大化するように会社を経営してしまうということだ。

さらの中国ではこれを政府がやっている可能性が高いということなのだ。とくに地方政府の官僚による「所有と占有の混同」が問題になっている。

 これは、地方政府の高官に任命された中国共産党の官僚が、資本主義国の官僚では想像もできないほど、多額の賄賂を自分の懐に入れていることにも明確に現れている。

 たしかに、資本主義の国でも規制当局である官僚が賄賂を受け取るケースは多々あるが、中国の場合、そのスケールがまったく違う。前述のように、リーマンショック後に実施された四兆元の大型公共投資のうち、六~七割が地方の共産党幹部の懐に入ったという噂もある。これが事実であれば、それこそが、彼らに「所有と占有の混同」が起こっている証左だと考えられる。

 たんなるスケールの違いのようにみえるが、これは資本主義国の賄賂とは意味が異なる。よく考えてみると、資本主義国における官僚の賄賂は、一種の「契約」だ。すなわち、ある経済活動について、通常は一回限りの便宜を図ってもらえるように、現金を渡したり、高級な料理をおごったりする。

だが中国の場合、賄賂は「契約」ではない。そのため中国独自の人間関係である幇をうまく形成できていない場合には、一回の賄賂の授受で官僚が便宜を図ることは少ないといわれている。そして現在、中国で問題となっている地方官僚の不正は、国家(地方政府)の会計と個人の会計の区別がまったくないことによるお金の着服であり、本人たちも、賄賂を受け取ったり、政府のお金を不正に着服しているという認識はないのであろう。

中国の官僚らの不正蓄財などの問題は、つねに「私腹を肥やす」ということ以上に、中国古来の非資本主義的な経済観が影響しており、これがすぐに改まるとは思えない。ゆえに、習近平がどんなに賄賂撲滅のパフォーマンスを行っても所詮茶番にすぎないのである。

パナマ文書に習近平の親族の名前があり、はたしていつまで中国共産党の支配が続くのか?
2014年から日中関係は改善を始めた

―――現在の日中関係は日中国交正常化以後の歴史の中で見ると、最悪期にあたるのでしょうか?

高原:日中国交正常化以後の日中関係は70年代、80年代は良好でしたが、90年代から下り坂となり、2010年以降からガラガラッと関係が悪化しました。ただ、2014年から関係改善の兆しが見えてきました。理由としては4つあります。

まず、安全保障の面です。2014年5月、6月と続けざまに日中の軍用機のニアミス事件が起きました。本当に衝突していれば、対立はエスカレートせざるを得ませんから、危機管理のメカニズムを実用化する必要があると中国も理解しました。

次に中国経済の減速が明らかになる中で、日本との経済的なつながりの大切さを中国の指導層も再認識したということが挙げられます。

そして3つ目は、国際関係という面では南シナ海での米中の対立などで、米との新型大国関係が滞っています。対米関係悪化の局面で欧州やアジア諸国との関係改善を図るというのが、中国の歴史的なパターンです。いま進めているのは「一帯一路」(「シルクロード経済ベルト」を意味する「一帯」、「21世紀海上シルクロード」を意味する「一路」)という経済圏構想ですね。そうした外交路線の転換の一環として日本との関係改善を図っていると考えられます。

最後に中国国内政治です。中国にとって対日関係の改善は強いリーダーしか取り組むことができない課題です。反日宣伝キャンペーンのおかげで、日本に理解を示すことは政治的に正しくない行為となっており、容易に政敵の批判を受けるからです。その意味では習近平総書記の力が強まったことで関係改善が進んだと言えます。

ただし、今後も楽観はできません。経済の減速が進めば、ナショナリズムで中国共産党や国民をまとめようとする可能性があり、東シナ海の尖閣諸島近海に送り込んでくる船を増やすなどの形で、日中の対立をあおる可能性も否定できません。社会が動揺している時期は、どこの国の世論も揮発性が高く、中国もそれにあたります。不必要な摩擦が生じることを避けるよう、日中両国の要人は言動に注意すべきでしょう。

日本と中国のお互いに対する認識ギャップは大きく、日本人は最近の日中の緊張関係を全部、中国が悪いと考えていますが、中国人はみんな日本が悪いと思っています。こうしたギャップを縮める努力が必要です。

―――中国の世論は、中国共産党や官製メディアにコントロールされているのではないのですか


高原:中国共産党が国を導くという基本原則があり、官製メディアの世論へのリーダーシップも強いです。ただ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にも世論を動かす力はあり、だからこそ、共産党はインターネットの管理に力を入れているのです。お互いの相互作用で中国全体の世論と言いますか、「社会の雰囲気」が形成されています。


実際のところ、中国の政治家はSNS上の世論をかなり気にしています。地方の幹部がニュースに出ていたときに高級時計をしていたといった書き込みで、本当に失脚することもあるほどです。もちろん、中央のトップについての批判やパナマ文書関連は厳しく検閲されているので、その限りではありません。

習近平は独裁者ではない

―――そもそも最高権力者である中国共産党の習近平総書記は、中国をどうしたいのでしょうか?

高原:はっきりしませんね。経済的、政治的な改革をする「右」方向に行きたいのか、毛沢東時代をほうふつとさせる「左」方向に進みたいのか、もちろん中国にとって望ましいのは、国有企業の寡占体制を打破し、富の分配制度を改革することです。その2つを実現するための政治改革も必要です。これは前首相の温家宝時代から言われていたことで、現在の財政部長(日本の財務大臣に相当)も所得税の累進税率の強化や不動産税の徴収強化を主張していますが、既得権益を奪うようなことは政治的に難しいです。

ちなみに、遺産税(日本の相続税に相当)は税目としては存在するのですが、実際には徴収されていません。さらに、大金持ちだけが相続税の徴収に反対するかと言えば、そうでもないのです。家やクルマをやっと手に入れたのに手放すのは嫌だという市民も多いというのが現実です。

習近平自身については二つの見方があります。一つは政治改革を本当はしたいが、その前に抵抗勢力を打ち払って二期目で政治改革に取り組むという説です。もう一つは政治改革に興味はないというもので、私は現時点では後者だと思っています。

彼にとって大切なのは中国共産党の支配が続くことです。政治改革に興味はないと感じます。海外の第三者から見ると、中国共産党が絶対的な権力を手放す方が、長い目で見て国家や社会が安定すると思うのですが、当事者はそう考えられない。中国のことわざには「虎にまたがったら降りられない(騎虎の勢)」という言葉があります。背に乗り続けていないと食われてしまうという意味ですが、権力を手に入れた以上、それを維持するしかないということです。

反腐敗の取り締まりが続くことで、地方の幹部が萎縮してやる気を失い、経済への悪影響が懸念されていることは、習近平も認めるところです。習近平は幹部たちの不作為を批判しているのですが、彼は独裁者ではない。地方の幹部たちは面従腹背で言うことを聞きません。

自分で何でもコントロールしようとし過ぎたことで習近平への反発は強まっています。2月19日に新華社や人民日報といった三大メディアを回って、「メディアの姓は党」であり、「党の喉と舌」として党中央の意向をきちんと伝えることを要求しました。

それに対しては、強い反発を世論の側から受けました。特に反腐敗の取り締まりを進める王岐山の友人で経営者の任志強氏が痛烈に批判し注目を集めました。官製メディアからはその任志強氏への批判が始まりましたが、騒動の最中、中央規律検査委員会は「千人の諾諾は一士の諤諤に如かず」(千人の服従は、一人の直言に及ばない)と題した記事をホームページに掲げました。そして任志強氏への批判がやんだことで、習近平が妥協を強いられたと格好の話題になりました。

また、「習近平同志を中核(中国語で核心)とする党中央」というフレーズを使うことがいくつかの地方指導者から始まり、誰がその表現を使うか多くの人々が固唾をのんで見守っていたのですが、中央政界の人のほとんどは呼応せず、キャンペーンは頓挫してしまいました。これは習近平の威信に打撃を与え、潮目が変わってきたと感じます。

3月4日には官製メディアの1つに習近平同志への公開書状が公開され、数時間後には取り下げられたのですが、不景気や外交上の孤立化、メディア統制や権力の独占など諸方面の習近平の失政を並べ立て、その辞職を勧告する内容で、政治的に高いレベルでの抗争があることを示唆するものでした。

少なくとも2015年までの様に政敵を次々に倒していた頃と、習近平を取り巻く環境は違います。来年開催される5年に1度の中国共産党の党大会に向けて、いよいよ熾烈な戦いが始まったということです。党大会では7人の政治局常務委員のうち、5人が交代する可能性があり、そこに誰が入るのか。構図としては、「習近平の支持者たち」と、反発する元総書記の江沢民や前総書記の胡錦濤につらなる人々を含めた「その他の勢力」との対決です。

中国の政治が今後も安定していると思う人は少数派

―――習近平総書記の力が落ちることは日本にとってプラスですか、マイナスですか?

高原:習近平の力が落ちるのは現時点では日本にとってマイナスだと考えます。習近平は対日関係改善に踏み切り、2014年、2015年にそれぞれ1回ずつ日中首脳会談を実施しています。そのほかにも複数回、日中関係の改善を訴える良い演説をしてきました。

例えば、2015年5月23日、自民党の二階俊博総務会長が3000人以上の旅行業関係者を連れて中国を訪問した際に演説し、「みなさんを通じて多くの日本の方々に心からのご挨拶と祝福の意を申し上げます」「歴史のわい曲は中国人も日本人も許しません。日本国民も戦争の被害者であり一緒に平和を築いていかなければなりません」といった趣旨の演説をして、人民日報の1面に大きく掲載されました。ただ、日本のあるテレビ局はそのニュースのキャプションで「歴史のわい曲許さず」とだけ強調していて残念でしたが…。

―――これからの日本と中国はどうなると思いますか?

高原:2014年に中国を訪問し、様々な人の話を聞いたのですが、中国の政治や経済がこれから先も安定していると思っている人は少数派です。何がどうなるかは分からないが、大きな変動がこれからあると多くの人は思っています。

中国では党が認めた宗教については信教の自由が認められていますが、非公認のものも含め、キリスト教や仏教の信者が増えています。これも将来への不安の表れではないでしょうか。ちなみに布教の自由はありません。

たとえ経済成長率が3~4%に落ちたとしても、相当大きなマーケットが毎年、新たに生まれると考えられますが、経済成長率が4%にまで落ち込んだ時に中国が政治的、社会的に安定を維持できるのかは、注意深く観察していく必要があると思います。北京や上海を見ているだけでは、中国の実態は分かりません。もっとお互いをよく知る努力が必要で、中国からたくさんの観光客が訪れていることはその意味で、素晴らしいことです。

できれば、さらに影響力のあるブロガーを含めた両国の知識人がお互いの国を訪ねて交流したり、多くの青少年がお互いの国でホームステイをしたりすることも大事です。特にお互いの国の政治家の家にホームステイできれば、より良いでしょう。そして、自衛隊と人民解放軍の交流も大事です。認識ギャップが危険なまでに拡大している現在、相手の部隊を訪問したり、艦艇交流をしたりすることで、相互理解を深めることが非常に重要です。

成長を続け爆買いをする中国というイメージが崩壊しはじめている。

誰もが中国の統計など信じなくなった。

中国共産党のマルクス史観と中国の伝統的な歴史観には矛盾がみられる。現在、習近平政権は、地方を中心に共産党幹部の不正蓄財の摘発を本格的に行なっているが、これは中国特有の歴史観への、ある意味で「挑戦」かもしれない。

中国の「歴史は繰り返す」という歴史観からみると、現在の中国共産党一党独裁という「王朝」は終盤に近いという認識をすることも可能である。なぜなら過去に「王朝」が崩壊する局面では、地方官僚の不正が横行し、それに対する不満から人民が蜂起するという状況が生じたからである。

報道規制などによって極めて限定的ながらも垣間みられる地方でのデモや暴動の増加は、中国の歴史観からみると、中国共産党一党独裁体制の動揺を意味するものである可能性も否定できない。だが、「歴史は絶えず、進歩している」というマルクス史観に立てば、現体制は時間の経過とともにより良いシステムに更新されつづける必要がある。それを正当化する意味でも、習近平政権は、地方官僚の不正を徹底的に摘発し、人民の僻積した不満から生じる社会不安を抑見込まなければならない。繰り返しになるが、これは中国の伝統的歴史観への挑戦かもしれない。

しかし、問題の本質である地方官僚の不正が、中国が長年築き上げてきた行動様式(エトス)に根ざすものだとすれば、その克服は容易ではない。

その行動様式の基礎となっているのは、長年かけて築き上げた人間関係を基礎とする幇という共同体システムであり、「法は人民をうまく統制するために存在する」という「法家」の思想である。これらの二つの基礎が地方官僚に「所有と占有の混同」を促進させてきた可能性がある。

習近平政権が、過去における地方官僚の不正を徹底的に摘発したとしても、中国の行動様式(エトス)自体を抜本的に改めなければ、新たな不正蓄財は止まらないだろう。数千年の歴史のなかで育まれてきた行動様式(エトス)を数年で抜本的に変えることは不可能である

歴史が繰り返すのであれば、共産王朝はもはや末期であろう。

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5月の連休は、久方ぶりに上海など中国の江南地方を回ってきた。まっすぐに伸びる片側4車線の高速道路、その両側には幅1キロメートル以上はあるかとおぼしき分厚い緩衝緑地帯。その向こうは高層マンション群の建設工事ラッシュだ。

 上海浦東地区では完工したばかりの上海タワー・ビルがそびえ立つ。このビルの高さは632メートルで、東京・浅草地区の東京スカイツリー(高さ634メートル)とほぼ同じ。超高層ビルとしてはドバイのブルジュ・ハリファ(高さ828・9メートル、ビル本体は636メートル)に次ぐ世界第2位である。

 天上の世界に達する建築物を建てようとして、神の怒りを買ったという旧約聖書「バベルの塔」の寓話(ぐうわ)、あるいは画期的な超高層ビルが建つたびにバブル崩壊が起きるという現代のジンクスを思い起こさせる。いったい、中国の不動産市場はどうなっているのか。不動産バブルは崩壊ずみではなかったのか。

 グラフは上海の不動産平均相場と中国の銀行融資年間増加額の推移である。共産党中央は2008年9月のリーマン・ショック後、党の指令下にある中国人民銀行と国有商業銀行に大号令をかけ、銀行融資をそれまでの3倍以上に増やさせた。地方政府は土地を農民や住民から取り上げ、デベロッパーを招いては不動産開発にいそしむ。中国全土で不動産バブルが起きたが、12年には破裂した。

 グラフが示すように、崩壊前には銀行の新規融資額は大きく減っている。住宅市場の過熱に慌てた当時の胡錦涛政権が冷やしにかかった結果だった。各地で巨大なゴーストタウンが生まれ、現在でも醜悪な姿が野ざらしになっている。

 上海、北京、深●(=土へんに川)など沿海部の巨大都市は様相が異なる。不動産市況悪化とともに生じた景気悪化局面を打開しようと、党中央は再び銀行融資のかさ上げを命じた。余剰マネーは主として上海など巨大都市部に集中し、不動産相場を押し上げるようになった。

 何しろ、融資の増加額の規模はすさまじい。最近では日本円換算で200兆円を超えている。年間融資増加額は15兆円に過ぎない日本とはまるで比較にならない。上海の知り合いは今年初めに億ションを買ったが、数カ月で1000万円相当、値上がりしたとほくそ笑んでいた。

 異様な規模の融資の増加は、同時に同規模の債務の膨張をもたらす。不動産開発は鉄鋼、セメントなどモノの需要を押し上げるが、上海など一部地域に集中しており、11年当時の全国規模の開発とはわけが違う。鉄鋼などの過剰生産能力は温存されたままだ。

 銀行融資を抑えると、たちまち不動産バブルは崩壊し、資本逃避ラッシュが起き、人民元暴落の危機が再発しよう。高水準の銀行融資を続けるしかないが、その分だけ不動産バブルが巨大化するだけだ。バブルと債務主導の中国経済は日本を含め世界を巻き込むだけに不気味だ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
近年、田中角栄の再評価が起き、田中角栄本が巷に溢れかえっています。
私は、どれを読んでも、「まあ今頃書いても・・・」という感想しか持てない。

日本中、マスコミと言うマスコミが田中角栄バッシングに走り、新潟県民以外は全て反田中角栄だった頃、一人田中角栄を擁護し、政治家田中角栄がいかに稀有な政治家であるか理詰めの説明をしたのは、小室直樹氏であった。今頃角栄を擁護しても遅いのだ・・・・。竹下登以降の日本政治は官僚を制御できず、世間は角栄の偉大さに今頃気付いたようだ。

ソ連が崩壊して四半世紀、今度は中国共産党政権の崩壊が小室先生の予言通りになる可能性が高くなってきている。

小室直樹先生がご存命であれば、今度はどんな処方箋を書くか?それとも、唯滅びるのみと、診断するだろうか?そして、先行き不透明な21世紀の世界に日本にはどのような処方箋を書いたか・・・小室先生の著作を改めて読み直し、その糸口を辿りたいと思います。

知の巨人・泰斗とは小室直樹を指す言葉だと改めて思います。








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とても読みやすく、あっというまに読めたが、”中国崩壊後の世界”と言うタイトルではなかった。”中国崩壊中の世界”の方が本のタイトルとして妥当な本です。

第1章 不気味なゴーストタウン・オルドスの衝撃――――――――――   9            
     車も走っておらず人も見かけない
入居企業ゼロの高層ツインタワー
     ビル/人がいないから犯罪発生率も少ない
造りかけのマンションが
     放置されていた/不動産バブル崩壊で「鬼城」に一変/ゴーストタウ
     ンをつくっても「経済成長」というカラクリ
環境を破壊してもGDP
     は増える/消費増税の目的は社会保障のためではない/中国の税制
     は格差拡大型/日本人と中国人の「民度」の差
アメリカの刑務所ビ
     ジネス「ゲーティッド・コミュニティ」/公安に守られる超富裕層
     の別荘/植民地国家/利益のためならば、法を犯すことも厭わない/
     想像以上に脆弱な国家

第2章 もはや中国政府に打つ手なし――――――――――――――― 101                  
     人為的に程造されているGDP統計鉄道貨物輸送量10%減でも7%
    成長の摩詞不思議/対前年比で下がり続ける輸入量
対前期比ではな
     く対前年比にこだわる謎/習近平の倹約今により公務接待費は4割も
     激減/倒産する高級レストランに、格下げを望む五つ星ホテル
「官
     僚たちのサボタージュ」という副作用/自動車会社も鉄鋼企業も供給
     過剰状態/「ダンピング輸出」に気を付けろ/主要国からの投資は軒
     並み激減/ガタガタの社会保障制度/不動産バブルを膨張させたシャ
     ドーバンキング/ホットマネ―を逃がさないための株式バブルだった
     /「習近平暴落」/国際金融のトリレンマ
中国版通貨危機の勃発

第3章 激震の資源国と日本の行方―――――――――――――――  187

    爆買いは、中国政府の「政策」で終わる/日本政府の経済政策は失敗続
    き/日本企業の中国進出は間違いだった/厄介な中国人の労務問題/
    国際法違反の中国民事訴訟法231条/新興経済諸国とアフリカ諸国
    が窮地/苦悩するオーストラリア/ブラジルは「格下げ」が止まらない
    中東諸国やロシアも大打撃/先進国・カナダの政治にも影響を与えた
          /韓国はアジア通貨危機の時よりもひどい状況/「中国は永続的に成
          長する」という幻想/中国の「構造改革」はデフレを招く/日本経済
          は中国に依存などしていない/中国の対日輸出禁止は大チャンス
まあ、目次を読めばこの本に書いてあることの内容は理解できます。そのまんまです。

中国崩壊後の世界(前編)(後編)
【新世紀のビッグブラザーへ】2015-12-01 

 最近、「亡国の農協改革」「ドイツ第四帝国の支配と崩壊」「2016年」と硬い本が続いてきましたが、「中国崩壊後の世界 」及び12月8日にビジネス社から刊行となる「これからヤバイ世界経済-2016年を読み解く5つのポイント-  」は、三橋としては比較的、柔らかい書籍になります。

 9月上旬に、中国取材を敢行し、大連、オルドス、北京を回り、実体験、つまりは「目で見た中国」と、データとしての中国を総合的に分析し、書き上げた一冊が「中国崩壊後の世界 」です。

 以下、Amazonでの紹介文です。

『決死の中国現地取材を敢行!
 北京から飛行機で1時間。内モンゴル自治区のオルドスはかつては石炭で栄え、2010年には一人あたりGDPが中国全土で首位に立ったこともある。インフラを整備し、高級マンションやホテルが相次いで作られた。ところが今はどうか・・・・・・。2012年に石炭価格が暴落し、習近平の「大気汚染対策」が追い打ちをかけ、石炭産業は壊滅状態となってしまった。その結果、オルドスからは人が消え、豪華な建物が颯爽と建ち並ぶのに、車や人が全然いないという不気味なゴーストタウン(鬼城)となり果ててしまった。(後略)』
 
 特に、読者の皆様に注目して読んで欲しいのは、オルドスにはゴーストタウン、いわゆる「鬼城」以上に驚くべき地区が存在するという事実です。ある意味で、オルドスの「あれ」は、現在の中国の歪みの象徴ともいえます。

 そして、中国が共産独裁国家でありながら、「グローバリズム」にガッチリと組み込まれてしまっている証でもあります。

 グローバリズムといえば、中国の人民元が、IMFのSDR(特別引き出し権)に組み込まれることになりました。

『中国人民元、IMFのSDR構成通貨に採用 理事会が承認
http://jp.reuters.com/article/2015/11/30/yuan-sdr-imf-idJPKBN0TJ2J720151130 
 国際通貨基金(IMF)は30日開いた理事会で、特別引き出し権(SDR)構成通貨に中国人民元を加えることを承認した。世界の経済大国としての地位獲得を目指す中国にとって勝利となった。
 今回の通貨追加は、35年ぶりの大掛かりな構成変更となる。人民元のSDR通貨バスケット比率は10.92%と、事前予想並みの水準となった。
 IMFが2010年に設定した、直近の比率はドルが41.9%、ユーロは37.4%、英ポンドが11.3%、円が9.4%。
 人民元が採用されたことで、SDR構成通貨の比率はユーロが30.93%に低下、ポンドも8.09%、円も8.33%にそれぞれ低下した。ドルの比率は41.73%とほぼ同水準に保たれた。人民元が構成通貨に加わるのは来年10月以降。(後略)』

 変動相場制ですらなく、共産党の「意向」によりレートが変動してしまう人民元をSDRに組み込んだというわけで、正直、吃驚してしまいました。

 もっとも、中国はSDRに人民元を組み込んだことを受け、今後は徐々に「変動相場制」へと移行していかざるを得なくなるでしょう。

 中国はSDRに人民元を組み込む条件として、すでに人民元相場の管理を緩和し、自国の金融システムを「開放」すると公約しています。実際に守られるかどうかは不明ですが、いずれにせよ世界から「通貨の改革」を迫られる立場となりました。

 実は、通貨のみならず、習近平政権は最近の経済失速を受け、「構造改革」を推進することを宣言しています。人民元は次第に変動相場へと移行していき、国営企業は民営化。外国投資をさらに受け入れていく方向に進むでしょう。

 現在の中国は、不動産・株式に加え、「設備投資のバブル」が膨張し、「新たなバブル」を醸成しない限り、デフレ化は免れない状況にあります。中国の10月の消費者物価指数は、対前年比1.3%上昇に鈍化し、市場予測を下回りました。さらに、生産者物価指数は前年比▲5.9%で、44か月連続の下落です。

 設備投資バブルにより、極端な「供給能力過剰」に陥ってしまった中国が、「構造改革」を断行すれば、どうなるか。日本国民であれば、想像がつくことでしょう。

 いずれにせよ、過去の中国経済がなぜ成長し、そして今、なぜ失速したのかを知ることは重要です。最近の中国は、我が国が「経済成長」を「継続的」に実現するため、何をするべきなのか。あるいは何をするべきではないのかについて、重要な示唆を与えてくれるのです。

 というわけで、三橋としては久しぶりの新書となった「中国崩壊後の世界 」、是非、ご一読を。
台湾にいます。

 台湾が中国経済の成長に「いかに、貢献したのか」。まるで、ブラックホールに吸い込まれるように技術、資本、人材を中国に吸い取られ、国内の実質賃金低下と「超」少子化に至ったのか。ほぼ、調査が終わりました。

 台湾において政策として誰、が、何、をやってしまったのかも、時系列的に理解できましたので、2月に執筆する書籍で取り上げたいと思います。
 現在の台湾経済は、韓国以上に中国依存になってしまっており、現在の中国経済失速の直撃を受けています。15年7-9月期の台湾の経済成長率は、前年同期比▲1.01%。リーマンショック直後以来のマイナス成長となりました。

 さて、藤井先生が「「新」日本経済新聞」に、アメリカの利上げ問題について寄稿して下さいました。

【【藤井聡】日本は「米利上げショック」に備えよ】
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/12/01/fujii-17-2/

 アメリカのFRBが、12月のFOMCで利上げをする可能性が高まっています。すなわち、ゼロ金利政策の終了です。

『FRB、将来の段階的利上げを強く伝達すべき=米シカゴ連銀総裁
http://jp.reuters.com/article/2015/12/01/usa-fed-evans-idJPKBN0TK5LM20151201 ;
 エバンズ米シカゴ地区連銀総裁は1日、米連邦準備理事会(FRB)は利上げ開始後に段階的なペースで利上げする意向を強く打ち出すべきとの見方を示した。
 総裁は講演用原稿で「われわれが最初に利上げをした後、連邦公開市場委員会(FOMC)は将来的な利上げをめぐる段階的な道筋のプランを力強くかつ効率的に伝達することが不可欠だ」と述べた。
 15━16日の次回FOMCでの利上げに、幾分神経質になっているとの認識を表明。実際に利上げに踏み切った場合、FRBが利上げで緩和姿勢を後退させる意向と、金融市場が受け止めないようにする必要があるとした。(後略)』

 FRBの利上げ問題については、徳間書店「2016年 」で詳述いたしましたので、省略いたしますが、12月に本当にFRBがゼロ金利政策を終了、中国、マレーシア、ロシア、トルコ、メキシコ、ブラジルといった新興市場諸国の通貨が「暴落の危機」に見舞われる可能性があります。

 特に、中国は今年春ごろから深刻な資金流出と人民元「安」に悩んでおり、9月までは外貨準備を取り崩し、通貨防衛をしていました。

 JPモルガンは、15年4-9月期、新興経済諸国から流出した資本は5700億ドル(約69兆9000億円)という前例のない水準に達しており、約3分の2が中国からの流出と試算しています。

 昨日、中国人民元のIMF SDRへの採用と、中国共産党の「為替の自由化」の公約について触れましたが、実際には中国は為替の自由化(変動相場制への移行を含め)などできるわけがないと思っています。何しろ、中国は「国民国家」ではなく、中国人民ほど中国という「国家」を信頼していない人々はいません。

 中国共産党が為替自由化に踏み切ると、膨大な人民が人民元建ての資産を外貨に両替しようとするでしょう。外国人投資家のみならず、中国人民までもが「中国からのキャピタルフライト」の雪崩に乗ってくるわけです。

 まあ、為替の自由化云々は将来の話ですが、短期的にはFRBの利上げにより、中国はさらなる「人民元安」の圧力にさらされることになります。当然、中国人民銀行は外貨準備を取り崩し、人民元を下支えすることになるでしょうが、そのとき「中国の外貨準備が何で運用されているのか?」が重大な問題としてクローズアップされることになります。

 詳しくは「中国崩壊後の世界 」をお読み頂きたいのですが、いずれにせよ中国の経済失速は台湾や韓国、新興経済諸国に加え、日欧などの先進国にも大きな影響を与えます。無論、日本の輸出依存度(あるいは対中輸出依存度)は台湾や韓国と比べるとはるかに小さいですが、何しろ政府が「デフレ下の緊縮財政」という最悪の路線を邁進しているのです。

 藤井先生が引用されているロイターの記事にもありますが、アメリカの利上げは07年から08年にかけたサブプライム住宅ローンの崩壊に始まる一連の銀行倒産(第一波)、2011─12年の欧州債務危機(第二波)に続く、「信用崩壊の第三の波」を引き起こしかねません。第三の波の主役は、中国や新興経済諸国、それに資源国(カナダ、オーストラリアなど)になるでしょう。

 我が国は、4-6月期、7-9月期とマイナス成長に陥り、リセッションの最中にあります。とはいえ、これは政府の緊縮財政が原因であり、「中国経済の失速が~」という話ではありません。

 「中国経済の失速が~」は、むしろこれからやってくるのです。政府は現在の危機、そして近い将来訪れる「外需縮小」という危機に備える意味でも、大規模な補正予算を検討しなければならない局面なのです。

「パナマ文書」はいよいよ中国国内に内戦の種を撒き火が上がる為のガソリンである。不正撲滅を掲げている裏で習近平の親族がパナマ文書に載っている!載っているから米国がハッキングして手に入れたのかもしれない。習主席の義兄に続き、現役最高幹部2人、中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員と、序列7位の張高麗 筆頭副首相の親族がタックスヘイブン(租税回避地)の法人を所有していたことが発覚。権力中枢の現役常務委員7人中3人の親族に「資産隠し」疑惑が浮上し、「反腐敗運動」で政敵を粛清してきた習指導部の正当性が根本から疑われる事態となった。 
更に、江沢民元国家主席に近い有力者の曽慶紅元国家副主席や賈慶林全国政治協商会議前主席、李鵬元首相、胡耀邦元総書記、さらに毛沢東元主席の親族も回避地法人の株主となっていた。
経済が減速する中、中国当局は社会の不満が習指導部に向けられる事態を懸念しており 厳しい報道規制を敷き、国内メディアは中国関係の部分を報じていない。インターネット上には批判が書き込まれ、次々と削除されている。
習近平が行う反腐敗運動は搾取されている中間層以下に圧倒的な人気があり、実は政権のスキャンダルを望んでいない。
国内で厳しい情報統制を敷くが、「文化大革命以来の内紛になる」可能性が高い。
パナマ文書とはパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から内部文書が何物かによってハッキングされたか内部者によって流出したのだが、ドイツの国家諜報機関「BND」が絡んでいると、佐藤優は分析している。
パナマ文章はイギリスのキャメロン首相をターゲットとした可能性が高いとのこと。 EUからの離脱をさせないぞとの脅しらしい。
チャイナマネーがキャメロンに流れていたこともばれそう。
習政権は自身の派閥を増やす目的から海軍と空軍の強化に乗り出し、その意欲の表れとして、南シナ海への進出が行われている。一方で、予算と人員の削減が行われた陸軍には不満が渦巻いている。反腐敗運動で利権を失った派閥の反発も高まっており、パナマ文書は人民解放軍のどこかの軍区がクーデターを起こす大義名分を作ったかもしれない。

 



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p41-48
 ポールーコリアーが著書『最底辺の10億人』(日経BP社、二〇〇八年)で示した見方を取り上げてみよう。コリアーによれば、最底辺にいる10億人は。八方ふさがりの国夕で暮らしている。彼は、一つの国を。八方ふさがり”状態にさせる要因として次の四つを挙げている。

1.内戦
最底辺にいる10億人のうち非常に多くは、内戦を経験している。仕事もなく、教育も受けていない若い男性が大勢いる国、民族間の不均衡が存在する国は内戦を起こす可能性が高まる。

2.「天然資源の呪い」
。八方ふさがりの国々”のほぼ三分の一は、何らかの原材料の輸出に依存している。概して、その原材料に価値を付加するスキルは持っていない。政府は腐敗していることが多く、民主的な選挙は行われていない。

3.内陸の国
こうした国々のほぼ三分の一は海に而していない内陸の国であり、経済的に不利だ。しかも
”悪い隣人(隣国)”たちに周囲を囲まれている。


4.悪しき統治
こうした国々のほぼ四分の三は、独裁的もしくは腐敗した指導者に統治されている。



●貧困の解決策

これら四つの要因には、それぞれ個別の解決策が必要となる。コリアーは、内戦で引き裂かれている地域に対しては合法的な軍隊の介入を支持している。また、大量の天然資源を持つ国は、自国の輸出品の価値を高めるスキルを開発すべきであり、単純に世界の市場価格で原材料を輸出すべきでぱない。内陸の国々について言えば、港を持つ近隣国と協力してその国の港まで道路を敷き、自国も港を利用できるようにすべきである。悪しき統治の問題は最も解決が困難だ。

ジンバブエを統治するロバート・ムガベは、世界がなすすべもなく見守るなか、在任期間中に同国を破綻へと追い込んだ。

貧困と戦うためにコリアーが薦めた最も重要な提言は、「目標は狭く絞り、手段は幅広く」である。「目標を狭く」とは、破綻状態にある国に住む10億人(その七〇%はアフリカにいる)に焦点を絞ることを意味する。また「手段は幅広く」とは、たんに援助金を提供するのではなく、援助の分配方法の改良や必要に応じた軍事介入、国際憲章の作成、より賢い貿易方針といった幅広い政策手段を提案するよう重点を移すことだ。

対外援助は、貧困問題の部分的な解決策にならないのだろうか? 対外援助の効果については、専門家の間ではっきりと見解が分かれる。『貧困の終焉』(早川書房、二〇〇六年)の著者ジェフリー・サックスは、西側がもっと気前よくなり、けるかに多くの対外援助を貧しい国々に与えることを望んでいる。一方、ウィリアム・イースタリーは著書『傲慢な援助』(東洋経済新報社、二〇〇九年)において、対外援助に対する強烈な反論を唱えた。彼は、サックスのことをありかちな「上意下達」式の大物プランナーであり、この種の人物は対外援助の数々の失敗を決して恥じることはないと批判した。

一部の試算によれば、高すぎる管理運営コストと腐敗によって、貧困層の手に渡るのは対外援助額のわずか一五%でしかないという。対外援助機関が「上意下達」式で援助プランを策定するため、どのような薬や食糧が必要なのか、現場ごとに異なるニーズの情報が抜け落ちてしまう。

さらに対外援助にぱ、被援助国がみずから解決策を考え出すのを妨げてしまう傾向かおる。
対外援助があると、援助される物資と同じモノをその国で生産したり販売したりする民間企業は圧迫される。イースタリーは、大型の対外援助機関の官僚主義と、その巨大な出費および関与について、大部分は失敗であるとしている。だが同時に、こうした大型の対外援助機関の有用性をきちんと認めてもいる。特に、ある種の二しス、たとえば地域の井戸の掘削と維持管理、地域の道路や下水システムの建設と維持管理、薬や食糧を必要とする特定地域での分配などでは役に立っているとする。

上意下達式の援助プランの大きな問題点は、国際規模や全国規模の巨大な援助機関が、さまざまに異なる貧困軽減手段への資金配分を決めなくてぱならないことだ。彼らは、援助を受ける国について、国家全体の状況を念頭に資金配分の優先順位を決める。だが、どの問題に優先的に資金配分すべきかは、村ごと、都市ごとに違っているものだろう。すなわち結果として、一部の地域ではさして重要でない問題なのにムダに多くの資金を受け取り、他の地域では必要額より少ない資金しか受け取れないということが発生する。

このため。ボトムアップ型のプラン策定方法”を加えるのが望ましい。援助を受ける地域社会がすべて参加し、それぞれがみずからのニーズを満たす提案とプログラムを開発し、その後でそのプランを上にあげるのだ。この際、プログラムは一定の基準を満たしていなければならない。

たとえば、何か地域社会を発展させるのかを長期的視点で考えたうえで、その理由を説明できるといったことが基準になる。

ニーズは”山をも谷に変える” 故C・K・プラハラードは『ネクストーマーケット』(英治出版、二〇〇五年)において、現地発のイノベーションと貧困層への財政援助があれば、貧困を抜け出すべく、援助の受け手が互いに助け合う意思を持つようになる状況を見事に描写している。


● 米国の貧困に関する補足

米国における貧困の現状はどうなっているのか? ビルークリントンの大統領時代(一九九三~二〇〇一年)、米国の貧困率は平均で一一%だった。二〇〇八年の貧困率は一三・二%。その後、グレートーリセッションが起き、国勢調査局によれば二〇一一年一一月の米国の貧困率は一六%にまで上昇した。これぱ四三六〇万人の米国人が貧困生活をしていることになる。また、全米の子どもの二〇%がここに含まれている。

タビス・スマイリーとコーネル・ウェストぱよりはっきりと、いまや米国人の二人に一人ぱ貧困もしくは貧困直前状態にあると主張する。彼らの言う「貧困直前状態」とは、今週のペイチェック(訳注‥週次などで受け取る給与小切手)から来週のペイチェックヘとぎりぎりで食いつないでおり、一回でもペイチェックの支払いに滞りがあれば、すぐ貧困に転落する可能性のある状態を指す。我々は貧困層を自分たちの目から見えないよう透明化した、と彼らは考えている。
ロナルドーレーガン大統領はかつてこう発言した。「我々は貧困との戦争を戦った。そして貧困が勝った」―――。三〇年後の現在、米国の貧困はまだ勝ち続けている。

米国以外の先進国のほうが、貧困問題に上手に対応している。米国の貧困率はすべての国の中で上から二八番目、ロシアやポーランド、韓国よりも高いのである。

四人家族の場合、世帯収入が二万三八五〇ドルより低いと貧困層と見なされる。全米国民のおよそ三分の一が一時的な貧困状態を経験しており、約二〇%は常に貧困状態にある。貧困率は人種、年齢層、教育水準ヽ、さらに経済的要因、社会的要因、人目統計上の要因などによって異なる。アフリカ系米国人の未成年が最も貧困率が高い。問題をさらに悪化させるのが、重い債務負担にガソリン価格の上昇、住宅価格の崩壊、そして産業空洞化により米国内の仕事が中国やその他の国々に移転したことだ。

現代の貧困層は本当に苦しんでいるのかどうか、その点に関する議論がないわけでぱない。というのも、貧困家庭といえども自家用車や薄型テレビ、携帯電話、インターネット接続されたコンピュータを持っていることがあるからだ。懐疑派は、ウォルマートその他の企業によって衣服やテレビ、自転車、コンピュータ、その他の多くの消費財価格が下がったことを指摘する。だがその指摘は教育費や医療費、養育費、電気代、ガソリン価格、その他諸々の上昇に留意していない。多くの貧困家庭は、ペイチェックから次のペイチェックまでの間をぎりぎりで暮らしており、支出を賄うためペイデイローン(非常に金利の高い消費者金融)に深く依存している。彼らが抱える債務負担は重く、月中は食費を切り詰めたうえに他の出費も節約し、価値ある所有物を質屋に預けて乗り切らざるをえないケースも多い。

米国の貧困層の生活水準が、政府の支援プログラムに下支えされていることは明らかだ。フードスタンプ(リンドンージョンソン大統領の時代に開始)やメディケイド、住宅補助券(ハウジング・バウチヤー、生活保護給付金、社会保障制度、貧困層向け法律補助サービス、低所得家庭のゼロ歳から五歳までの子どもが学校に通う準備を助けるヘッドスタート・プログラム、低所得の学生か大学に行けるよう支援するペルーグラントなどのプログラムである。

最低賃金を上昇させ、製造業やその他の仕事をさらに生み出し、労働者の熟練度やスキルを増し、多様な貧困対策プログラムの費用捻出のために富裕層への課税強化をI。こうした施策を求める圧力は日増しに高まっている。タビスースマイリーとコーネルーウェストは、さまざまなアイデアを提案している。職場の保育所の増設、ホームレスのための公共住宅プログラムの創設、より強力な組合の設立などであ鮒だが、対立して事実上二極分化している議会が、貧困撲滅のためのこうした提案をどの程度有効に利用できるのかは、誰にもわからない。

貧困層を助けるこれら多様な方法をすべて考慮したうえで、私か薦めるのは以下の解決策だ。

・ベストの解決策を得るには、政府による解決策とNGOによる解決策を合わせただけでは足りないだろう。そこには民間部門―――政府機関とも市民組織とも密接に連携する民間企業による解決策も含まれるはずだ。

・貧困層を助ける仕事とは主に、彼らが自分たちで独自の解決策を開発できるよう、彼らを理解し、影響を与え、補佐する手段を用いることにある。

・全国レベルの貧困問題の大きな構図と、地域ごとに異なるそれぞれの状況とを結びつけて考える必要がある。

・プラン策定、実施、モニタリング、管理にソーシャルーマーケティングの手法を使うべきだ。ソーシャルーマーケティングの狙いは、個人や社会の利益につながるよう人々の行動を変える、またはそのような行動を支援することにある。貧困層を支援するいままでの取り組みのすべてに、手段としてのソーシャルーマーケティングが欠けていると私は強く思う。

・政府による多くの貧困撲滅プログラムのなかで、たんに出血を弱める包帯の役目しか果たさないものを廃止し、その代わりに政府が全国民に一定の最低所得を保障するほうが合理的ではないだろうか。この点を我々はじっくりと検討しなければならない。
日本は世界でも格差が少ない社会である。それでも格差が生まれ始めている。
貧困は日本や米国でも酷くなりつつある。

コトラー博士はベーシックインカムを提案している。ベーシックインカムは、年金・雇用保険・生活保護などの社会保障制度、公共事業を縮小することにより、「小さな政府」を実現するのに役立つといわれている。
また、最低限の生活を保障という点から、企業は雇用調整を簡単に行うことができるようになり、雇用の流動性が向上し、新産業創出などの効果があるという意見がある。確かにいいことづくめだが、ベーシックインカムはその莫大な財源をどこに求めるのか?働かずパチンコに費やす人をどうするか・・・?
単純なはなしではない。セーフティネットは必要だと思うが、大きな政府は好ましくない。
ベーシックインカムは働かない怠け者を必ず作るので、私は如何なものかと思う。
大きな政府は不要だが、ベーシックインカム制度をするのなら国土保全隊を創設してはどうかと思う。
全国の自治体に国費で人員を配置。過疎化対策、山林保全、災害対策、介護福祉を行うのだが、失業した場合、希望すれば必ず働けるようにした方が、ベーシックインカムより優れいると思うのだが・・・素人考えかもしれない。

執筆中
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日本では、ここしばらく中国経済崩壊論を唱える論者が少なくない。だが、中国経済はいまだに崩壊していない。

 中国政府は自国の経済システムを「社会主義市場経済」と定義している。社会主義と市場経済はいわば水と油の関係にある。そのなかで中国経済は成長を続けてきた。2010年までの30年間で中国経済は年平均10%も成長し、2010年にその経済規模は日本を追い抜いて世界第2位となった。

「中国経済は言われているほど順調に発展していない」と言う論者もいる。中国のマクロ経済統計が信用できないというのだ。しかし時系列でみた場合、中国経済が発展していることは確かだ。もし中国経済が発展していなければ、主要国に対して中国経済の減速はここまで影響を及ぼさないはずである。

 国際社会が注意しなければならないのは、中国はその全体の規模が大きいため、周辺諸国に及ぼす影響はその実力以上に大きいということである。今、国際社会は中国の台頭を脅威と受け止めているが、中国の経済発展が挫折した場合の影響も大きい。中国経済と世界経済の相互依存関係は、国際貿易と国際投資を通じて予想以上に強化されている。中国経済の減速は世界経済の発展を押し下げていく可能性が大きい。

中国経済はなぜ崩壊しないのか

 ただし、中国は経済大国になったものの経済の強国ではない。中国は「世界の工場」の役割を果たしているが、「メイドインチャイナ」は決してブランドにはなっていない。中国発のオリジナルの科学技術はほとんどないし、中国本土でノーベル賞を受賞した科学者は1人のみである(薬学)。

 では、なぜ中国は脅威とみなされるのか。一党独裁の政治においては、政府はあらゆる資源を動員する強い権限を持っている。したがって、国中の資源を動員して、例えば宇宙開発やミサイル開発に注ぎ込むことができる。その一分野のみ考えれば脅威とみなされても不思議ではない。

 だが、一国の国力をみる際は、ある一分野の実力ではなく、その国の総合的国力を測るべきである。今、中国国内では「総合的国力」に関する議論が盛んになっている。中国の総合的国力をみると、ぎりぎり“中進国”といえる程度であろう。

 中国経済の不合理性と非効率性は明白である。だが、なぜ中国経済は崩壊しないのだろうか。

 実は今の中国経済はいわば「メタボリックシンドローム」の状態にある。安い人件費と割安の為替レートを頼りにキャッチアップしてきた中国経済は、政府の財政出動によりその規模が年々拡大している。

 また、中国でもっとも盛んな製造業は「外包」と呼ばれるアウトソーシングだ。最近の製造業はモジュール化し、企画・開発・設計を手掛ける企業は自ら製造工場を構える必要がない。例えばアップルはiPhoneを設計するが、製造のほとんどはアウトソーシングしている。キーコンポーネントと呼ばれるハイテク部品は日本企業に製造を委託し、組み立ては中国の企業に行わせる。アップルはパテントなどの知財権を握り、売上の68%を得ると言われている。それに対して、中国企業は1台のiPhoneを製造して売上の6%しかもらえない。

 結局のところ、中国はいまだに低付加価値製造業の規模をどんどん拡大させているということだ。こうした構造が一旦できてしまうとストップさせるのは難しい。なぜならば、低付加価値の製造業ほど多くの労働者を雇用しているからだ。これらの工場を閉鎖すると、失業が深刻化し、社会不安が高まる。だから政府は工場や企業の閉鎖について慎重な姿勢を崩さない。逆の見方をすれば、こうしたゾンビ企業は政府を虜にしているのである。

口先だけで行われない「改革」

ここ十数年来、中国政府はほとんどの改革を先送りしてきた。毎年の政府活動報告では、「穏やかな成長を続けている」という陳腐な表現が繰り返されている。今までの経済成長はかなりの部分において朱鎔基元首相が進めた改革の結果と言えるが、その恩恵はすでになくなりつつある。李克強首相は就任当初、「人口ボーナスこそなくなるだろうが、これからは“改革ボーナス”が経済成長を牽引する」と豪語した。しかし、改革らしい改革はいまだになされていない。

政府、企業、家計のバランスシートをみると支出のほうが多く、新たに蓄積される富が急減している。地方政府はこれまで中央政府が進めた経済政策に呼応するために、巨額の債務を借り入れた。これらの有利子負債の返済は延滞しており、国有銀行の不良債権となっている。しかし、国有銀行は地方政府の債務を取り立てることができない。これはいわば政策的不良債権である。

 地方政府が破綻処理されることは考えにくいが、最終的に国有銀行は不良債権を処理することになる。結局、そのコストを払うのは納税者か預金者のいずれかである。

中国が民主主義の国であれば、おそらくとっくに経済危機に突入しているだろう。民主主義の国において政策運営の失敗は、まずその責任が追及されてから問題の処理に着手する。一方、社会主義の国においては、責任を追及する前に問題を処理してしまう。問題処理の際は往々にして一部の者の利益を犠牲にする。大部分の人にとっては、自分とは関係ないので無関心である。結果的に経済危機が起きにくい体質ができてしまっている。

まず社会の根本的な価値観を明らかに

 中国政治においてもっとも重要とされる言葉は「国益」である。それを分かりやすく示す言葉として、よく使われるのが「大河没水、小河干」(大河に水がなければ、支流の小河は乾いてしまう)だ。

 本当はこの表現は自然に反している。自然界においては、支流の小河から大河に水が流れ込む。したがって、大河よりも小河のほうが重要である。なのに、中国では国益の重要性を強調するために、自然の摂理に反する表現が作られてしまっている。

 中国では、国益に反する者は売国奴と罵られる。これはもっとも恐ろしい罪と言えるかもしれない。国益のために犠牲になった子どもは「光栄なことだ」とも教えられる。だが子どもの幸福を犠牲にする国に国益など存在するまい。

 中国は、社会主義を建設するか市場経済を構築するかという議論の前に、まず社会の根本的な価値観を明らかにし、国民の間で共有できるようにすべきであろう。
中国がやがて崩壊するだろうとと言われて久しい、2010年以降いつ倒れてもおかしくないと思ってはいたが、未だ倒れずにいる。
それでも、問題は先送りされいつかどこかで破滅的な事態になるであろうことだけは間違いないと思っている。
【北京=河崎真澄】習近平政権が初めて独自策定した中国の新たな中期経済政策「第13次5カ年計画(2016~20年)」は、年平均6・5%以上の安定成長を続けながら、国有企業の統廃合や人員整理など、痛みの伴う構造改革も断行するという「新常態(ニューノーマル)」入りを内外に改めて宣言した。

 李克強首相は5日の開幕式に約2時間かけて読み上げた「政府活動報告」の中で、「改革」というキーワードを70回近く使った。

 構造改革の過程では、石炭や鉄鋼など、過剰な生産や在庫の重圧で赤字続きにもかかわらず生き延びている「ゾンビ企業」で600万人もの失業者が出ることが予想される。失業対策など社会保障が後手に回れば抗議デモが頻発、社会不安が増大する懸念がある。

 ただ、改革を先送りすれば経済失速という決定的な事態を招きかねない。中国共産党は、20年を目標年度として国内総生産と国民平均所得の「倍増計画」を打ち出している。21年に成立100年を迎える党の威信がかかるが、公約を果たさねば習政権の「正統性」まで問われる恐れもある。

 しかし、構造改革で最大のヤマ場となる国有企業のリストラ策が、北京の中央政府からの命令ひとつで順調に進むとはかぎらない。

 鉄鋼、石炭、ガラス、セメント、アルミニウムの5業種が「ゾンビ企業」の代表格。工場閉鎖などリストラ計画をまとめる中で、地元の国有企業が標的になると、資金を支援しあっている周辺地場企業も共倒れになるとの懸念があり、地方政府は早くも及び腰だ。

 解雇などで生じる大量の失業者への社会保障が後手に回ると、真っ先に不満がぶつけられる先は地方政府だ。構造改革の痛みに耐えるどころか、社会不安が一気に広がる懸念もある

 これに対し、財政省の予算案では、「過剰生産能力の解消に全ての責任を中央政府が負う」として、16年は500億元(約8750億円)を計上した。構造改革の痛みをめぐって、「新常態」で攻めの姿勢の中央政府と“旧態依然”で抵抗する地方政府の対立が表面化する場面も予想される。

 李氏は、「(途上国から先進国に脱皮する前に成長が足踏み状態となる)『中所得国のわな』を克服する重要な5年間だ」と指摘した。周辺国へのインフラ輸出や国内の個人消費拡大が次なる成長戦略だが、「わな」に陥らない保証はなく、前途は多難だ。
 全人代が始まり、改革がお題目のように叫ばれ、その深刻さが逆によくわかる。
自由化、構造改革、対外開放といった耳にタコのできるような空虚な言葉には、世界中誰ももはや騙されない。

ジョージソロスの言うところのハードランディングどころか中国自体がクラッシュするのではないかと思っている。
【北京=河崎真澄】中国が2016年からの新たな経済政策「第13次5カ年計画」で、国内総生産(GDP)成長率目標を「年平均6・5%以上を保つ」として、15年までの5カ年計画から0・5ポイント引き下げたのは、痛みの伴う構造改革実行を意味する「新常態(ニューノーマル)」の開始を改めて宣言するためだ。

 初年度の16年は「6・5~7%」と幅をもたせた異例の目標となった。5カ年計画では15年の6・9%からみて、「成長ペースを20年にかけ、年0・1%ずつ下げていくソフトランディング(軟着陸)作戦」(北京の経済学者)という。

 だが、どこまでシナリオ通りにいくかは、構造改革で最大のヤマ場となる国有企業統廃合への既得権益層の反発と、失業者増による社会不安の懸念をどう抑圧するかにかかっている。

 鉄鋼や石炭、セメントなどの業種で過剰な生産能力と在庫を抱えてあえぐ「ゾンビ企業」を精査し、年内に統廃合や閉鎖する工場などをリストアップする方針だ。一方、地方政府からみれば、地元の有力企業が閉鎖されると、相互に資金支援して結びついていた周辺企業も共倒れになりかねない、との危機感がある。

 解雇などで生じる大量の失業者への社会保障が後手に回ると、真っ先に不満がぶつけられる先は地方政府だ。構造改革の痛みに耐えるどころか、社会不安が一気に広がる恐れもある。

 財政省が5日公表した予算案では、「過剰生産能力の解消に全ての責任を中央政府が負う」として、16年は500億元(約8750億円)を計上した。一方で石炭と鉄鋼の業界だけで180万人が失業すると見込まれる。さらにセメントなどの業種や軍も含めれば失業者は600万人に膨らむもよう。構造改革めぐる攻めの中央政府と守りの地方政府の対立が今後、表面化することになりそうだ。
中国の国内需要の落ち込みがより明確に感じ取れるようになり、その深刻さが見え始めた。もし、中国が崩壊しないのなら、最終的に中国は「統制経済」へ逆行するしかないのではない、共産党の本質である統制経済への原点回帰のような気がしてきた。
2015年6月よ以降の株価急落の際に中国は、国有企業の保有株売却禁止、機関投資家への株式購入命令、空売りの実質禁止、違反者の逮捕など強制的な措置を繰り出した。およそ付け焼刃的な「サーキットーブレーカー」が正月早々早速発動された。だが、サーキットーブレーカーが逆に混乱を招きサーキットーブレーカー発動四日目にして市場の急落によるショックを緩和するメカニズムを自ら投げ捨てた。
発動の透明性が高いサーキットーブレーカーよりも政府の思惑で恣意的に発動できる市場管理のほうが得意の様だ。
「市場の自由」からかけ離れた対応だ。世界はそれを「市場混乱のなかでは、中国の場合、やむを得ないのだろう」という目で批判もないまま見過ごしたが、実態は政府が強権で、都合のいいように市場を動かそうというものだ。

 1992年に改革開放路線に沿って上海、深川の株式市場が開設された時、株式市場開設に熱心だった鄧小平は「だめだったらすぐにやめてしまえばいい」と語ったという。 よく言えば、柔軟性だが、株式市場の公共性や重み、企業の資金調達を支える直接金融の意義などはまったく考えない。

中国にとって株式市場は、株価が右肩上がりで、経済成長に貢献している時こそ意味を持つが、暴落した経済全体を混乱させ、共産党の支持基盤を揺るがす場合には必要はないのである。そうしたご都合主義が、習政権で露骨に姿を現したのだ。

習近平は10月にIMFのSDR通貨に正式になった途端に「市場の閉鎖」と「人民元交換停止」になるのではないか・・・そんなことが許されるか否かはわからないが・・・

 習近平が今、株式市場以上に注視し、不安を感じているのは人民元取引である。為替は一国の経済力を相手国と比較している面があり、相場のコントロールはもともと困難だからだ。資本逃避で人民元を売ってドルやユーロ、円を買う動きが加速しているため、人民元の下落基調が定着し、人民元の先安感が資本逃避を一段と加速させるという悪循環で、人民元が下落スパイラルに入っている。輸出振興のための人民元安誘導ではなく、複合要因による落下の様相を深めている。

 すでに多数の報道が出ているが、人民元の買い支えのために中国が誇ってきた外貨準備高が急激に減少している。2015年12月末で3兆3300億ドルにまで低下した外貨準備は現在の月間800億~1000億ドルの減少ペースで行けば、あと1年余で2兆ドルを切りかねない。

中国の外貨準備はアフリカで焦げ付き、中国高官たちが不正に持ち出したのでその2兆ドルすら怪しい。 とすれば中国にとって外貨準備の取り崩しによって人民元を買い支えられる期間は、今の状況が続けば1~2年しかもたない。

もし、買い支えができなくなれば、人民元は暴落のリスクにさらされる。介入以外の方法で人民元の価値を維持しようとすれば、方法はわずかしかない。 「人民元交換停止」。資本流出がさらに勢いを増し、人民元暴落の危機が迫った時、中国が打てる最大にして最後の防衛策は「人民元交換停止」もちろん市場経済の先進国ではあり得ない選択肢だが、中国が安全保障上の懸念を持てば、外貨保全のために予防的に人民元からドルヘの交換を規制する日が来ることも十分ありえると見ておくべきだ。

 中国指導部の脳裏には外貨準備の減少を見透かされ、投機筋に売り浴びせられ、暴落に追い込まれた1997年アジア通貨危機のタイーバーツの教訓が刻まれている。 エネルギー、食糧の対外依存度が年々高まる一方の中国にとって、為替こそ最高度の安全保障であり、国家管理に移行するシナリオは現実的だ。

ただ、その前に南シナ海で米軍と衝突したり、反政府運動が勃興すれば中国共産党政権は崩壊する可能性もある。もちろん南シナ海では対艦弾道ミサイルDF-21はことごとく見当違いの場所に着弾し米軍の圧勝に終わるだろう。



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【上海=河崎真澄】上海での主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、議長国の中国が防戦に回っている。中国の成長鈍化が世界経済に影を落としたとの指摘や、証券市場や外貨管理の未熟さが震源となり、株式や為替で国際的な混乱を招いたとの批判から“集中砲火”を浴びている。中国は財政出動などで切り抜けたい考えだ。

 初めてG20議長国となった中国。開幕に先立つ26日午前、楼継偉財政相と中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁はそれぞれ、シンポジウムや記者会見でG20参加国へ反撃を試みた。

 楼氏は構造改革がテーマのシンポジウムで、「中国は財政出動への余地があり債務を拡大させることができる」と、中国経済を懸念する国際社会に“公共事業の再加速”を表明した。

 周氏は「輸出規模のなお大きい中国が通貨安競争に加わることはない」と人民元安を求める動きに反論する一方、「中国からの資本流出は正常の範囲だ」として資本移動では現状維持を示唆。米利上げとドル安を背景に中国から資金が逃げ出し、外貨準備高の大幅減につながったが、人民銀行は資本移動の規制強化と自由化のいずれにも消極的姿勢をみせた。

 そこには、(1)独立した金融経済政策(2)為替相場の安定(3)自由な資本移動-という3つの政策は同時に実行できないという国際金融のジレンマに陥っている中国の苦境がうかがえる。

 成長鈍化への不安感を拭い去ることができれば資本逃避は低減するが、利下げなど金融緩和も伴う景気テコ入れ策で財政出動を拡大すれば、重大な構造問題である過剰生産や不良債権を悪化させる副作用は避けられない。利下げなど金融緩和が人民元安に結びついた苦い経験もある。

 人民元の国際化に向けて資本取引の自由化は欠かせないが、しばらく封印せざるを得ない。反対に資本規制の強化に動けば、国際通貨基金(IMF)から人民元の特別引き出し権(SDR)通貨入りを認めてもらった際の金融市場の自由化という条件にも逆行する。

 G20の攻防戦を通じて中国のこうした構造問題があぶり出されそうだ。
上海で開催されているG20は中国の経済停滞と為替政策に対し注目を浴びた。
2016年10月1日からSDRに人民元は採用されるが、人民元の自由化が条件であった。しかし、人民元を切り下げようものなら為替戦争が勃発して、中国は為替操作国認定されてしまう。

G20会合、5つの注目点
【WSJ】By MARK MAGNIER 2016 年 2 月 26 日 13:43 JST

中国の上海で26日・27日に20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。経済成長の低迷、大きな相場変動、為替レート、伝統的な経済政策手段の有効性などをめぐり懸念が広がる中、議論の行方が注目される。以下に五つの注目点を挙げる。

1.中国は懸念をぬぐい去るために何をすべきか

経済運営の統率力にかけては屈指とされてきた中国だが、株式市場への強引な介入や為替政策が一貫性を欠く様子が混乱を呼ぶ中、いまやその手腕が疑問視され、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事から中国には「コミュニケーション(対外説明)に問題」があると警告されるほどのありさまだ。中国共産党指導部はこれからの数日間で、政府として金融改革の推進にコミットしていること(24日に海外機関投資家による債券購入の制限を緩和する方針を発表した)、そして政策や意図に関するコミュニケーションを改善する方針であることをはっきり示す必要があるだろう。中国の世界における地位が上昇する中で、それに見合った体制を整えなければならない。

2.「通貨戦争」回避のために何ができるか

 欧州連合(EU)や日本などでは中央銀行の緩和政策を受けて通貨安が進み、輸出てこ入れを通じた成長浮揚策の一つと受け止められている。エコノミストらはこうした戦略について、通貨安競争の引き金になりかねず、世界経済を不安定にし、最終的に世界全体を苦境に陥れる恐れがあると警告する。G20諸国は今週の会合で、大幅な人民元切り下げは行わないとの確約を中国に求めつつも、通貨の競争的な切り下げを回避すべきとの従来の方針をあらためて強調する見通しだ。

3.世界経済成長てこ入れに向けて何ができるか

 世界金融危機から7年が経過したいま、コモディティー(国際商品)市場は落ち込み、貿易は低迷し、経済成長には引き続き弾みがつかない。IMFは2016年の世界の成長率見通しを何度も下方修正し、直近では1月に予測を3.4%に引き下げた。信用緩和に頼り過ぎた金融政策は限界に達している。こうした中でG20諸国は、構造改革とインフラ支出の拡大で合意を図る見通しだ。ただ、政治的反発や債務問題が懸念され、各国間の調整は難しそうだ。

4.協調的な通貨政策で合意する可能性はあるか

 あまり期待できない。G20の国内総生産(GDP)を合計すると世界のGDPの80%超を占め、G20の財務相や中銀総裁はもっとうまくコミュニケーションを取って政策協調を図るべきとの声が高まっている。エコノミストからは、先進5カ国による協調的なドル高是正宣言となった1985年の「プラザ合意」と同様の合意を求める意見もある。ただ、G20は2013年に通貨介入は為替操作だと事実上宣言しているため、人民元版「プラザ合意」を取りまとめる公算は小さいとの見方が大勢だ。とはいえ、山積する経済問題に対処するためのロードマップ(行程表)で合意する兆しを市場は探り求めるだろう。

5.中国は議長国として何を達成しようとするか

G20議長国は持ち回りだが、議長国にとって会合は世界の経済システムに自国の影響力を反映させる機会となる。中国は今年の議長国として、中国の時代が到来したこと、中国は世界経済をけん引する信用のおけるリーダーであること、中国のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)は健全であることなどを強調しようとするだろう。同時に、自国も含め世界銀行やIMFにおける新興国の発言権の拡大を求めるほか、「シルクロード経済圏(一帯一路)」構想と呼ばれるアジアインフラ計画を宣伝し、改革や持続可能性を推進する見通しだ。
人民元を早期切り下げを行えばSDR採用もドタキャンになる可能性は否定できない。少なくとも今年の10月1日までは猫を被り人民元切り下げは行わないだろう。

中国当局、早期の人民元切り下げを否定
【ロイター】2016年 02月 25日 20:14 JST 

 2月25日、複数の中国当局者は、人民元の早期切り下げはないとの認識を示した。今週開幕するG20財務相・中央銀行総裁会議を控え、各国の懸念を払しょくする狙いがあるとみられる。

 2月25日、複数の中国当局者は、人民元の早期切り下げはないとの認識を示した。今週開幕するG20財務相・中央銀行総裁会議を控え、各国の懸念を払しょくする狙いがあるとみられる。写真は中国国旗、北京で2015年10月撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)
[上海 25日 ロイター] - 複数の中国当局者は25日、人民元の早期切り下げはないとの認識を示した。今週開幕する20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を控え、各国の懸念を払しょくする狙いがあるとみられる。

チャイナ・デーリーによると、楼継偉財政相は人民元切り下げの提案がG20の議題になることはないと発言。

朱光耀財政次官も「管理フロート制」を維持して為替レートの安定を図る方針を示した。

同次官は国際金融協会(IIF)の会合で「われわれは世界経済が直面するリスクを認識している」と発言。「市場と正しく対話することがいかに重要かも認識している」と述べた。

ルー米財務長官はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで「明確なコミュニケーションが必要だ」と指摘。「(中国)政府は大幅な通貨切り下げのようなことをするつもりはないと言明しなければならない」と述べた。

中国工商銀行(ICBC)の姜建清会長も、人民元の下落が続く根拠は存在しないとの認識を示した。

中国人民銀行(中央銀行)の易綱・副総裁はIIFの会合で「安定した状況は誰にとっても良いものだと思う」と発言。人民銀行は依然として独立した金融政策を運営できるため、国内の金利をまだ管理することができると述べた。

朱財政次官は、今年、財政赤字を拡大する余地があるとの認識も示した。

G20で人民元切り下げを否定したのでなにがなんでもSDR採用は果たすつもりなのだろう。
いまやすっかり有名となった国際金融のトリレンマからSDRに採用されるには金融自由化で中国から資金のキャピタルフライトを阻止することが出来ない。そして人民元下落は避けられない。

仮に人民元がSDR採用を諦め、資本取引を規制し、自由な資本移動をあきらめれば、キャピタルフライは阻止できる。従来通り独立した金融政策と固定為替相場制にもどせばよい。そうすれば、国内物価の安定のために金融政策を使うことが可能となり、為替相場も安定可能なのだが、すでに賽は投げられてしまったのである。

国際金融のトリレンマ(国際金融の三すくみ)
マンデルフレミングの法則から、自由な資本移動*為替相場の安定(固定相場制)*独立した金融政策3つの政策は同時に実現することができず、同時に2つしか実現できない。

中国からの資金流出が止まらない。

 中国の公式統計によれば昨年の資金流出額は5170億ドルである。だが、1月25日付ブルームバーグは、「昨年全体の資金流出額は前年(1343億ドル)の約7倍の1兆ドルに達した」と報じている。

 2月11日付フィナンシャル・タイムズによれば、2016年1月だけで1100億ドル以上の資金が国外に流出したという。資金流出は非公式なチャンネルでも起きており(海外との貿易額の数字を粉飾するなど)、実際の流出額はさらに大きいようだ。

「中国経済のハードランディングは不可避」とソロス氏

 その主な要因は中国経済の低迷である。

 中国の富裕層は、国内の不動産価格の低迷や株安の状況の中、利回りの高い投資商品(米ドル資産など)を求めて資産を海外に移し始めている(2月18日付ロイター)。

 中国企業が昨年(2015年)1年間に海外企業の買収に投じた金額も、約680億ドルと史上空前の規模に達した。今年1月の新規融資額は過去最大の約2.5兆元(約43.5兆円)となったが、増加分の大半は外貨建て債務返済のためである。

 昨年8月の中国政府の人民元切り下げによる通貨の先安感も資金流出に拍車をかけており、「人民元が紙くずになる前の駆け込み的な資金流出」との観測が高まっている。

 その矢先の今年1月に「世界経済フォーラム」年次総会(ダボス会議)で著名な投資家であるジョージ・ソロス氏から「中国売り」発言が飛び出した。ソロス氏と言えば、1992年の「ポンド危機」、1997年の「アジア通貨危機」の仕掛け人と言われている人物である。ソロス氏は「私は予測を口にしているのではない。今それを目撃しているのだ」と発言し、「中国経済のハードランディングは不可避だ」と述べた。

 昨年秋から投機筋が人民元売りを仕掛けている最中の発言だけに、中国側は悪意ある挑戦と受けとめ、国営メデイアを総動員して反論に出た。メディアは「人民元の空売りは袋小路に陥る」(新華社)、「単純な経済的衝撃をもって中国を覆すことは不可能だ」(人民日報)と必死の主張を繰り返した。しかし「資本流出は始まったばかり」と鼻息が荒い投機筋の勢いが衰える気配はない。

人民元のSDR入りが重い十字架に

 中国政府にとって最後の砦は、世界の約3分の1を誇る外貨準備(昨年末時点で3.3兆ドル)である。だが、その外貨準備は昨年1年間で約5130億ドルも減少した。

 3.3兆ドルあるといっても、「使える外貨準備はせいぜい1兆ドルにすぎない」という見立てがある。「中国政府高官の持ち出しで約1兆ドルの資金が消え、アフリカや中米諸国への融資で約1兆ドルが焦げ付いている」(中前忠中前国際経済研究所代表)からだ。仮に今年1月のように毎月1000億ドルのペースで減少すると、年内にも外貨準備が底をつき中国政府は人民元を支えられなくなってしまう。

 中国政府としては資本規制を強化したいところだが、「人民元のSDR入り」という決定が重い十字架としてのしかかっている。

 昨年11月、国際通貨基金(IMF)理事会は、特別引き出し権(SDR)の算定基準となる通貨に中国・人民元を今年10月から組み入れることを決定した。

 中国政府は人民元をSDR入りさせるために、昨年夏から人民元相場を従来よりも市場実勢に従って変動させるなど一連の改革を行った。これによりIMFから「人民元はSDRの基準を満たした」というお墨付きをもらうことができた。しかし、一連の改革によって、8月に人民元が急落した。合法的に海外に資金を移せるようになったため、国内企業や個人投資家がかつてない規模で海外へ資金を流出させたからである。

 そこで、人民元の下支えのために中国政府は、約4000億ドルもの外貨準備を費やすことを余儀なくされた(昨年の外貨準備減少分の約8割)。

「人民元のSDR入り」に尽力し、「中国の最も偉大な改革者の1人」とまで評価されていた周小川人民銀行総裁は、いまや窮地に追い込まれている。

 周氏は、中国誌「財新」のインタビュー記事の中で、海外のヘッジファンドをはじめとする投資家が人民元の売り持ちに殺到している現状を批判すると同時に、人民元の底堅さをアピールして「元安が続く根拠はない」と主張した。

 人民銀行は2月15日に、2005年7月以来最大となる人民元切り上げを行った。しかし、市場関係者にとっては「人民銀行は外貨準備の減少を懸念している」というマイナスのメッセージになってしまった。周氏はこれほど緊迫した状況でも「資本規制を引き締めるつもりはない」としているが、その対応には疑問を感じざるを得ない。

 筆者が以前のコラム(「人民元のSDR採用に潜む落とし穴」)で「人民元のSDR入りの代償は極めて大きい」と懸念したとおり、そのリスクが早くも顕在化してしまったようである。

危機対応能力がない中国の指導者

 ソロス氏は中国政府の無策ぶりを指摘していたが、昨年後半以降、「中国政府の指導者たちは危機対応能力がない」との認識が世界中に広まってしまっている。

 中国共産党はもともと市場との対話の重要性をあまり認識してこなかった。中でも習近平体制は有無を言わさず強権で、すべての問題を抑え込む姿勢が強い。2月18日、人民銀行は1月分の月次報告を行ったが、外貨購入の残高など資金流出の目安となるデータの公表を取りやめた。

 2月20日、中国政府は証券監督管理委員会(証監会)の肖鋼主席を解任した。

 中国の株式市場は、昨年、約5兆ドルの時価総額が失われ、証監会は今年1月に株価が一定の値幅を超えた場合に取引を止める「サーキットブレーカー制度」を導入した。だが、市場を安定させることができず、わずか4日で停止した。そうした状況に対して、個人投資家が「投資家らの財産権を保護する職責を怠った」として肖氏を提訴するなど、証監会に対する国民の不満が高まっていた。政府は肖氏の首を生け贄に差し出した格好である。

 習近平政権は金融業界に対して、全面的な反腐敗キャンペーンを加速させている。同時に、金融業界を監督管理する3つの委員会である証監会、銀監会、保監会、そして人民銀行、いわゆる1行3会に対しても、整理・合併を加速させようとしている(2月18日付大紀元)。早ければ3月の全人代等で議論されるようだが、事態をますます混乱させてしまうだけではないだろうか。

米中間の緊張はさらに高まっている

 国際金融当局者も中国の現状に憂慮し始めている。2月26~27日、中国上海で開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、中国からの資本流出を段階的に止めるための議論が焦点の1つとなっている。

 2月4日付ロイターによれば、中国からの資金流出を加速させている投機的な動きをおさめるため、「人民元の一度限りの大幅切り下げ(中国版プラザ合意)が必要」との声が高まっているという。

 国際的な協調介入を実施するには米国政府の協力が不可欠である。だが、中国軍の東アジア、特に南シナ海でのプレゼンス拡大によって、米中間の緊張はさらに高まっている。

 2月16日、米FOXニュースは衛星写真の分析をもとに、中国による南シナ海の西沙諸島へのミサイル配備を伝えた。地対空ミサイル配備となれば、滑走路整備などとは次元が違う。これまで習近平国家主席はオバマ大統領に対し「南シナ海の軍事化は行わない」との方針を伝えていた。米太平洋軍のハリス司令官は、「習近平主席が約束を守れないことの表れである」と中国への不信感を露わにしている。

 一方、中国側にも言い分がある。米軍は1月30日、西沙諸島の12海里内でイージス駆逐艦を航行させた。西沙諸島は南シナ海の中で最も中国本土に近く(海南島から約300キロメートル)、中国軍は42年間にわたり実効支配している。このため中国は、米軍が西沙諸島の領海に侵入したことに対して、「紅旗9号」長距離地対空ミサイルを急遽配備したというわけだ。その後も中国が南沙諸島に高周波レーダー施設を建設していることや西沙諸島に戦闘機と戦闘爆撃機を展開していることが明らかになってきている。

 中国と軍事的な緊張が高まっている状況下で、米国が中国の資金流出を防ぐための協調介入に賛同する可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

経済成長がなくなると国民の不満は爆発

 協調介入が不可能であれば、IMFとの約束を反故にしてでも資本規制を強化するしかない。前述のダボス会議で、黒田日銀総裁は中国政府に資本規制を強化することを求めた。IMF専務理事のラガルド氏も暗に同意したようだが、一度緩めた資本取引規制を強化することは副作用が大きい。中国企業の海外での債務の借り換えが困難となるとともに新規の資金調達にも支障をきたすため、経済のハードランディングリスクが高まってしまう。

 毎年18万件の暴動・抗議集会が起きている中国において、共産党の執政の正統性は「経済成長」しかないと言われている。経済のハードランディングが起きれば、抑圧された国民の不満は爆発し、中国共産党は結党以来の危機に直面するだろう。

 国際政治経済が専門の瀬戸岡紘駒澤大学教授は、「すべての戦争は国内矛盾の対外転嫁として引き起こされる」と指摘している。習近平指導部は、国内の矛盾を南シナ海での軍事紛争に振り向ける可能性がこれまでになく高まっているのではないだろうか。

「人民元のSDR入り」の失敗が東アジアの地政学的リスクを高めないことを祈るばかりである。
昨年中国は人民元のSDR採用決定に、中国の国際的な地位向上、改革成果が評価されたと中国は勝利宣言をしていますが、それほど単純ではなかった。やはり、昨年米国がすんなり人民元のSDR採用を認めたのは裏が有ったのだ。

米国が従来の反対を翻して、条件付き賛成に転じた理由は、中国を巨大な国際金融のゴキブリホイホイに誘い込む目的だったのである。ゴキブリは当然中国人民元である。

中国政府は、ここまで為替管理の都合上、資本の流出入を厳しく管理してきたが、為替の自由化とともに、SDR採用条件として資本の自由化も求められた。

人民元は基本的に米ドルにペッグした通貨ですが、SDR通貨入りは、ドル*ユーロに次ぐ第三の通貨が完全変動相場制をしないわけにはいかず、これまでドルに引っ張られて上昇していた分がはげ落ち、人民元が大幅な下落したのは当然の成り行きである。

そうなると、当座は資本の流入より流出が大きくなると見られます。人民元の先安観が強まれば余計拍車がかかる。これは意図しない金融引き締め効果になる。

しかも、人民元の下落は、民間企業や個人の外貨建て債務を水膨れさせ、返済負担がより大きくなる。ドル建て債務やキャリーでの香港ドル債務が膨らむことになる。

中国が本気で改革しようとすると、共産党幹部の巨大な既得権を奪う必要があり、政情不安にもつながりかねない。人民元の暴落を防ぐための買い支えは金融引き締め効果を生むため、景気にバックギアを入れていることになる。さらにドル売りによって、外貨準備も減ることになる。中国の経済政策は八方塞がりになる。輸出力を強化するために人民元を切り下げると資金流出が起る。逆に資金流出を防ごうと人民元を高く維持しようとすると、設備投資が抑えられ経済は失速し、さらに輸出競争力を失うのである。

中国経済は、IMFのSDR採用でとんでもない負のスパイラルに入ってしまったのである。中国から資本流出が止まらず、ジョージソロスが「中国バブル崩壊はもう起こったこと。(中略)中国経済の問題はデフレと過大な債務だ。中国経済の負債はおそらくGDP比300%か、対外債務を合わせれば350%にも上る深刻なもの。しかも中国は輸出主導から内需主導への経済改革を長く放置し過ぎた。ハードランディングは不可避である」と喝破している。

仮になんとか中国共産党習近平政権が崩壊せず奇跡的にこれらの改革がある程度進めば、世界の中央銀行が人民元を準備通貨として持ち始めるので、人民元安にも歯止めがかかり、人民元需要が高まれば、また上昇する可能性もなきしもあるが・・・・。

仮に中共が存続できたとしても次に日本も息の根をとめられたBIS規制の罠が待っている。中国の4大国有銀行( 中国工商銀行、中國銀行、中国建設銀行、中国農業銀行)は、世界での地位が高く、高い自己資本が求められますが、そう簡単にこれを満たせない。資本不足の銀行には欧米資本が参加しようということになり、経営の実権を最終的に国際金融資本が握ることになるかもしれない。

日本の財務省公表の数字から、中国の政府と民間の対外負債は244兆円らしいのだが、中国の対外負債は、そんな程度ではなく500~600兆円という説が飛出している。中国の対外純資産残高は、214兆円ではなく完全にマイナスということになる。ましてや中国の外貨準備高に闇に消えた2兆ドルが含まれている可能性を考えると、中国の実態は大借金国ということになる。

中国はまだ大量に米国債を保有しているので、後1年は持ちこたえるだろうが、2年後、3年後となると、どうなるかわからない。最悪のケース、中国はIMFのSDR採用国からIMFの管理下に置かれているか、その直前の状態になっているかもしれない。




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コラム:中国バブルの「ミンスキーモーメント」=竹中正治氏
【ロイター】2016年 01月 26日 08:37 JST竹中正治龍谷大学経済学部教授

[東京 25日] - 前回のコラム「新興国通貨の対ドル下落はまだ序の口」で、中国をはじめ主要な新興国が2000年代以降、債務を急増させたことを取り上げた。とりわけ天然資源輸出国やドル建て債務比率の大きな国の通貨が対ドルで大幅下落し、その基調がまだ続く見通しを述べた。

今回は各論として中国に焦点を絞ろう。09年以降の中国の経済成長はバブル的な信用(債務)膨張に支えられたものであり、今後厳しい債務調整の長期化が予想される。これをデータと一緒に説明したい。

<日米のバブルも経験した「ミンスキーモーメント」>

まず、一般的な原理を確認しておきたい。経済成長は一般に債務の増加を伴う。企業部門は設備投資、家計は住宅投資など固定資本形成を行い、その多くは債務(クレジット)で賄われるからだ(金融レバレッジ)。債務との見合いで有効な資産が増え、所得の増加や資産からの収益で債務が返済可能である限り問題はない。

しかし、経済成長に伴う社会の楽観的な雰囲気は時に行き過ぎ、過剰な固定資本形成と資産価格の高騰が起こる。これが資産バブルだ。たとえバブルであっても、旺盛な固定資本形成が行われている限り、それ自体が需要を生み出すので、国内総生産(GDP)で計測された経済成長率は高まる。

もっとも、明らかに過剰な固定資本形成は、最終的には生産設備の稼働率の大幅な低下、あるいは投資のインカム(配当や賃料などの)リターンの低下を招き、資産価格が下落に転じる局面が到来する。時価評価した資産価値が低下する一方、債務はキャッシュで返済しない限り減少しないので、企業や家計の時価ベース自己資本(純資産)の減少が始まる。つまり評価損失の発生である。

その損失増加を食い止めるために資産の売却が始まれば、同様の状態にある他の債務者も売り急ぐので、売りが売りを呼んで資産価格の急落となり、債務超過となった企業や家計は債務の返済が不能となる。その結果、銀行をはじめ信用供与者の不良債権が急増し、信用収縮、債務者の破綻、失業者の増加というバブル崩壊過程に特有の現象が続くことになる。

金融レバレッジの生み出すクレジットサイクルと金融の不安定性を強調した経済学者ハイマン・ミンスキーにちなんで、バブルの形成から崩壊(調整)に転じる局面は「ミンスキーモーメント」と呼ばれている。

住宅ローン形態での家計債務の膨張を中心とした2000年代の米国のバブルでは、07年前後がミンスキーモーメントだった。企業部門の不動産関連投資と債務膨張を主とした日本のバブルでは、1990年代初頭がミンスキーモーメントだったと言えるだろう。

<どう見ても長期的に持続不可能な中国バブル>

では、中国はどうか。同国の各セクター別の信用(クレジット)残高推移を名目GDP比率(以下、債務比率)で見てみよう。なお、データは国際決済銀行(BIS)から引用した。

イメージ 1


グラフ上の赤色線で示した民間非金融部門の債務比率は、データのとれる1985年から2008年まで右肩上がりで上昇した。ただし、09年を境に債務比率はそれまでと違った急角度で上昇し、08年12月の117%から15年6月には201%まで急膨張している。一方、政府の公表する実質GDP成長率は07年の14.1%をピークに10%割れとなり、15年には6.9%まで低下した。

具体的に伸び率で言うと、2000年から08年の民間非金融部門の債務残高の伸び率は平均年率15.6%だったが、09年以降は21.7%に加速している。09年以降の名目GDP成長率は平均11.9%であり、債務残高の伸びが名目GDP成長率を約10%ポイントも上回っていることになる。これはどのような基準に照らしても長期的に持続不可能だろう。

誤解を避けるために補足すると、各国の債務比率の水準自体には「これ以上高くなるとバブル」という意味はない。債務比率が高くても見合いとなる資産サイドが健全であれば問題はないからだ。実際、先進国の民間非金融部門の債務比率は途上国のそれに比べて相対的に高い。これは長年の経済成長の結果、債務の見合いにある資産サイドの蓄積が進んでいる結果だ。

しかし、中国の民間非金融部門の債務比率は、09年以降に急角度で上昇したと同時に、201%という15年の水準自体も、主要な先進国、途上国の中で突出した高水準である。

中国の09年以降の債務比率の急上昇は、リーマンショック後の世界不況による景気後退を回避するための大規模な内需拡大景気対策の結果である。この時の景気対策は中央政府の財政支出拡大もあったが、信用拡大(ファイナンス資金)に依存した地方政府などの公共事業(固定資本形成)に拍車をかける形で行われた。

しかし、債券発行などが規制されていた地方政府は簿外ビークルとして「融資平台」を使い、銀行融資と債券発行の双方で資金を調達し、建設投資を推し進めた。融資平台は事実上、地方政府の運営だが形式上は民間非金融部門にカテゴリーされていると思われる。

また、黄色線が示す銀行セクターからの信用(供与)比率と赤色線の非民間金融部門の債務比率が、2000年代以降、特に09年以降、後者が前者を上回る形でギャップが広がっていることにも注意しよう。両者のギャップを埋めるのが、理財商品と呼ばれる各種の債券発行の形態をとった「中国版シャドーバンキング」であり、ギャップの規模は15年6月末時点のGDP比率で50%と巨額なものとなっている。

<バブル崩壊現象は歴然でも、債務比率縮小が始まらない理由>

以上の中国の状態を過去の日本、並びに米国の過去のバブルとその崩壊と比べてみよう。企業部門の債務膨張を主とした1980年代後半から90年代初頭の日本のバブルでは、民間非金融部門の債務比率は86年12月の175%から急勾配で上昇し、94年12月に221%でピークに達した後、減少に転じ、04年3月に176%となった。その後は170%前後の水準で安定化する。つまり、債務比率のピークから安定化までの期間を過剰債務の調整期間とすると、10年弱かかったことになる。

これはまさに日本のバブル形成とその崩壊を跡付ける変化だ。ただし、不動産バブルのピークは不動産価格に見る限り91年であるが、信用の膨張が94年12月まで続いている。これは銀行が過剰債務企業に追い貸しをした結果だろう。

一方、米国の2000年代のバブルの主役は、住宅ローンを積み上げた家計部門である。もともと米国家計の債務比率は穏やかな上昇基調だったが、01年12月の74%から07年12月のピーク時98%まで急勾配で上昇した。その後低下に転じ、13年6月に81%となった以降は80%前後で安定している。

米国ではバブルの対象となった住宅価格のピークは06年半ばであり、債務比率のピークは07年12月、そのタイムラグは約1年半である。一方、日本の不動産価格のピークは91年、債務比率のピークは94年12月であり、約3年半のタイムラグがある。この日米タイムラグの長さの違いは何が原因なのか。

1つの理由として、日本では信用の膨張が銀行部門の信用供与に依存して起こり、銀行が過剰債務企業に追い貸しをした結果、タイムラグが長くなったと推測できる。一方、米国では過剰な信用膨張は伝統的な銀行ローンではなく証券化金融市場で起こった。バブル崩壊局面で投資家が証券化金融市場から一斉に資金を引き上げた結果、激発性の金融危機となったことがタイムラグを短くしたのだろう。

中国のケースに戻ると、株価の急落のみならず、鉄鋼、自動車、造船産業などに代表される未曽有の過剰生産能力(稼働率の激減)、賃借人の入らない集合住宅群や工場団地など実体経済面でのバブル崩壊現象は歴然としている。その一方で、09年以降急増した民間非金融部門の債務比率は15年6月時点まで上がり続けている。つまり、日本や米国で見られた過剰債務の調整過程に中国はいまだ入っていないことをデータが示唆している。 

必要な債務調整規模はどれほどだろうか。仮に債務比率が09年以前の右肩上がりのトレンド線に戻る必要があると考えただけでも、GDPの50%という未曽有の規模の債務処理となる。

バブル崩壊現象は歴然としているのに、なぜ債務比率の縮小は始まっていないのか。これは日本と同様に銀行を中心とする信用構造に加え、指令経済的な色彩が依然として濃い中国の金融市場の性格によって債務処理が先延ばしされているからだろう。

もっと具体的に言えば、中央からの「過剰生産設備整理」のかけ声にもかかわらず、実情は中央政府、地方政府、銀行、債務者大企業が強固な「利害共同体」となり、過剰投資・過剰債務を抱える大企業や融資平台の損失計上や破綻処理を先送りしているのだ。

<軟着陸は困難、過剰債務調整は過酷かつ長期化へ>

今後不可避と思われる中国の過剰債務の調整過程で何が起こるのか。それは日本や米国で起こったことと基本的には同じだろう。おそらく習近平政権は10年、20年という長期の時間をかければ軟着陸は可能だと考えているのだろうが、私は懐疑的である。

過剰債務の調整とは、結局のところ経済的な損失負担の問題であり、貸した金が回収できないという事実を前に、債務者、債権者(含む金融機関)、政府(納税者)がどのように損失を負担するかの問題だ。その過程で債務企業や金融機関の大規模な整理、破綻、失業者の増加などは不可避だろう。

中国国内からの資本逃避が一層強まる恐れもある。年間2000億ドルを超える経常収支黒字にもかかわらず、中国の外貨準備は14年のピーク時の約4兆ドルから15年末には3.3兆ドルに約7000億ドル減少している。これは資本流出により、人民元相場を現在の水準近辺で維持できなくなっていることを示唆している。

資本逃避が一層強まれば、1ドル=7元を超えた元安・ドル高もあり得よう。その場合には、中国の民間非金融部門の1.2兆ドルと推計されるドル建て債務(BIS四半期レビュー、2015年12月)から巨額の為替損(10%の元相場下落で約14兆円相当の損失)も生じる。中国の過剰債務の調整が今後本格化すれば、未曽有の過酷かつ長期的プロセスになると考えておくべきだろう。

*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職、経済学博士(京都大学)。最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社、2013年5月)
中国の株安・人民元安はハイマン・ミンスキー博士の資本主義はねずみ講であるというハイマンミンスキー理論によれば、下のwikiからの図からするとまだ⑤番⑥番あたりであり、ここが底ではなく、まだ地獄の入り口ににすぎないのである。
経済の不安定性は複雑な市場経済が生来的に備えている欠陥であると述べ、金融不安定性の段階を次のように述べている。
①調子のいい時、投資家はリスクを取る。
②どんどんリスクを取る。
③リスクに見合ったリターンが取れなくなる水準まで、リスクを取る。
④何かのショックでリスクが拡大する。
⑤慌てた投資家が資産を売却する。
⑥資産価格が暴落する。
⑦投資家が債務超過に陥り、破産する。
⑧投資家に融資していた銀行が破綻する。
⑨中央銀行が銀行を救済する(‘Minsky Moment’)
⑩1に戻る。
金融には、(1)ヘッジ金融、(2)投機的金融、(3)ポンツィ金融の3つがある。ポンツィとは、1920年代にボストンでねずみ講を組織した詐欺師の名前である。投機的金融やポンツィ金融の比重が高まると、経済は不安定な状態になる、と述べている。


中国の場合中央銀行が救済できるのか疑問である、中国は元々砂上の楼閣、国営企業の債務超過はずっと先送りにされ地方政府の債務、膨大な軍事費、政府幹部が海外に持ち逃げした国富を考えると国全体で債務超過に陥っているのではないか?昨年IMFの通貨バスケットに人民元が採用されたが、統計数字が信用できない中国の人民元が採用されたこと自体疑問なのだが、中国が破綻した場合IMFですら救済できるのか疑問に思える。

日本の円高バブル崩壊は米国や新興国に日本の優れた工場が世界に広がり、世界経済にとってはグローバル化のきっかけとなった。更にウィンドウズ95の発売をきっかけに始まったIT革命と重なり、日本経済の低迷は問題と為らなかった。
米国経済は日本に負けた重工長大産業が退出し、IT産業が活性化して世界経済を支えた。リーマンショックは日本の超円高ドル安で米経済の復活を支えと中国などの新興国が米国バブル崩壊による世界経済の穴を埋めた。だが恐ろしいことに、中国のバブル崩壊を支える次の経済が無いのである。最後の最後に中国はババを引いた、そして誰も中国にファイナンスできないのである。

誰も住まないゴーストタウンを次々作り、作ったインフラも手抜き工事で寿命も短く、20~30年と日米欧のように最低60年も持たないと言われている。巨額な国富を政府幹部が海外に持ち出した中国には負債だけが残り、何も残っていない。気がつけば環境も悪化した巨大な地獄が誕生したのである。
[ロンドン 26日 ロイター] - 中国は人民元の再切り下げを迫られ、人民元の下落率は20─50%に達する──。ごく一部の有力ヘッジファンドがこうした大胆な予想に基づいてポジションを構築しつつある。

欧州債務危機を見ぬいて数億ドルの利益を稼いだテキサス州に拠点を置くコリエンテ・パートナーズは少なくとも昨年9月終盤以降、「ローデルタ」のオプション買いを増やしている。これは最大で50%の人民元安という非常に確率の低い事態への賭けを意味する。

コリエンテの見立てでは、中国政府がいくら3兆3000億ドルという膨大な外貨準備を保有していても、国内の個人資産家や企業による海外への資金シフトは当局が食い止めたりコントロールできないほど強力だという。

ロンドンを本拠とするオムニ・マクロ・ファンドも2014年初め以降人民元安に賭ける取引を続けているほか、市場関係者によると46億ドルを運用するムーア・キャピタル・マクロ・ファンドなどの米ヘッジファンド勢の影もちらついている。

より劇的な人民元安を見込むこれらのファンドの予想が正しいかどうかは、春節(旧正月)休暇明けの2月第2週に海外への資金流出が再び活発化するかどうかではっきりするとの見方が多い。

一連の動きは、ジョージ・ソロス氏が率いるファンドが1990年代初めに欧州各国に対して通貨売りを仕掛けて勝利したケースも彷彿(ほうふつ)させる。

コリエンテの運用担当者マーク・ハート氏は今月のテレビ番組で「中国は非常に急激な通貨切り下げができる機会を得ている。迅速にそれを実行するのが賢明だ」と語っている。

<少数派>

人民元安の予想自体はもはや少数意見とはいえないが、大きく見方が分かれるのは下落ペースと下落率だ。

コリエンテやオムニは、中国当局が人民元の下げ圧力に抵抗を続ければ、外貨準備が目減りしていくので今年中に一度に大幅な切り下げを迫られる可能性があるとみている。

だからこそローデルタのオプションを買うという行動につながる。

一方で正反対の立場にあるのは、中国が落ち着いたペースで人民元安を誘導できると考えるファンド勢で、彼らは緩やかな人民元の下落に賭けるオプションを購入しながらローデルタを売ってヘッジしている。

実際、ファンドマネジャーの中で、年内に人民元が10%以上下落すると想定する向きは乏しい。

ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの新興国市場責任者ゲーリー・グリーンバーグ氏は「一挙に人民元を切り下げても何の解決にもならず、事態を悪化させるだけだ」と話す。コリエンテのハート氏も「多くのマクロ・ファンドは中国が緩やかな人民元安を管理していく方向に賭けている」と認めた。

それでもコリエンテやオムニの行動は変わらない。彼らによると、中国政府は1月に外貨準備を新たに2000億ドル使用した可能性があり、そのペースなら年内に介入原資がほとんど「弾切れ」となり、人民元はさらに18─20%下がるだろうという。

(Patrick Graham記者)
ドルと人民元がリンクする管理通貨制度は人民元安の圧力で崩壊せざるをえなくなる。外貨が払拭した中国は通貨の完全自由化をせざるをえないのである。
更に2割下がるだけで済むのだろうか?

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上海株は暴落、日米の株価の足を引っ張る。グラフが示すように株安を先導するのは人民元安だ。

元安は「管理変動相場制」と呼ばれる中国特有の外国為替制度の限界を示している。同制度は、中国人民銀行が前日の元相場終値を基準とし、元の対ドル相場の変動を基準値の上下各2%以内にとどめるよう市場介入する。人民銀行は、わずかずつ元高に誘導してきた。元がドルに対して強くなれば、中国の元資産に投資している華僑など海外の投資家や国内の富裕層はドルなど外貨資産への転換を思いとどまるからだ。

ところが、元高は国内産業の競争力を低下させると同時に、デフレ圧力を招き入れ、企業の製品価格を押し下げる。生産設備や不動産は過剰となり、企業や地方政府の債務が膨れ上がる。中国の企業債務(金融機関を除く)残高はダントツの世界一で、国内総生産比でバブル時代の日本企業の水準をはるかに超える。

習近平政権はもはや、やけっぱちだろう。元安政策に転換したが、元安を嫌う華僑や国内の資産家は元資産を売って、外貨資産を買う。上海や深●(=土へんに川)の株価が暴落するわけである。

人民銀行は資本逃避が起きるたびに外貨準備を取り崩して元を買い支える。この結果、外貨準備高は2015年末時点で3兆3000億ドル(約388兆7000億円)、前年同期から1080億ドル(約12兆7000億円)減った。香港やシンガポールの金融関係者の間では、このペースで資本逃避が続けば、外準は早晩3兆ドル台を割り込むとの見方が多い。

元安は外貨建ての巨額債務を抱えている中国企業の実質債務負担を増やす。当局がいくら株式市場を管理、売買を規制しても、中国株売り圧力が高まる。こうなると、際限のない元安、株安の連鎖となる。

打開策はただ一つ。管理変動相場制を廃棄して、先進国は当たり前の自由変動相場(フリーフロート)制に転換することだ。となると、当局の介入はなく、元相場は市場の需給を忠実に反映する。相場の変動は激しくなるが、投資家は為替の変動リスクを考慮して投機を控えるようになり、いずれ市場需給に合致する水準に元相場が落ち着く。

習政権が恐れるのは、元が底なしの下落に見舞われるリスクである。資本逃避ラッシュが起き、外準は雲散霧消、輸入物価は急上昇し、悪性インフレに見舞われるかもしれない。すると、党独裁体制崩壊の危機である。それは、習政権の膨張主義を妨げるので、世界にとってはよいことだが、日本の財務官僚や親中メディアは管理変動相場制維持を支持する。中国の市場危機で日本も大きく揺れるとの懸念による。近視眼の平和ぼけの論理だ。

考えてもみよ。現行制度維持では、習政権は大気汚染物質PM2・5同様、市場不安を世界に途方もなくまき散らす。解消のめどは立たない。安倍晋三政権は国際通貨基金(IMF)の場で、元のフロート即時移行を主張すべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
中国は地獄の入り口に過ぎないということを肝にすえてかからないと駄目だと思う。
やがて中国共産党は崩壊すると2001年から思っていた。2008年の北京オリンピック、から2010年の上海万博までは中国経済は持つがそこから先は崩壊するだろうと予想していたのだが、私の予想以上に中国経済は持った。
いよいよ共産党政権が崩壊する可能性シナリオが現実味を帯びてきた。




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