火星はすでにアメリカが探査している。日本単独で火星の調査よりは米国と協同するのもよいが、長期的宇宙戦略の10年後、20年後を考えれば、小惑星、彗星、木星の衛星、土星の衛星とリング、天王星、海王星の探査として、日本の目指すべき場所ではないだろうか?

先の事業仕分けで中止となったGXは、LNGガスエンジンとNK-33エンジン(1960年代末にソ連が秘密理に開発していた月ロケットN-1ロケット用に開発・生産されたエンジン100機が保管中)を組み合わせて安価で宇宙ロケットを飛ばす計画が、米民間企業にNK-33エンジンの契約を奪われ、それに代わり、ロッキードマーチン社と組みアトラスIIIロケットを一段目として使用し打ち上げる計画がGX計画であった。

ところが肝心のアトラスIIIロケットが生産停止となり一段目がアトラス Vとなってしまい、再設計の二転三転してコストが上昇し、事業仕分けでトドメを刺されGX計画は中止に追い込まれてしまった。

JAXAには、H-2Bの次の次世代ロケットH-Xの計画がまだ空白である。宇宙ステーション補給機(HTV)が折角成功したのであるから、今後HTVを生かすも殺すもH2Bと次世代ロケットHX如何による。

GXに代わるものとしては次期固体ロケット(イプシロンロケット)には期待しているが、
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HXにしても次期固体ロケットにしても、日本が宇宙開発で、アメリカ・ロシア・中国に競合し、宇宙産業を日本の基幹産業とするには役不足である。

国家目標として日本に希望を齎すプロジェクトとして、軌道エレベーターほど最適なものは無い。

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【東芝エレベーター広報誌】http://www.toshiba-elevator.co.jp/elv/newsnavi/volumes/30/news/special01.html
1991年に飯島澄男氏(名城大学教授)がカーボンナノチューブを発見して、宇宙エレベーターはがぜん現実味を帯びるようになった。必要な強度のケーブルを作れる可能性が出てきたのだ。2004年にはより高性能なグラフェンシートと呼ばれる新素材も登場している。
1999年にはNASAが宇宙エレベーター技術を多角的に検証し、「驚くほど複雑な構想だが、解決不可能な課題は見つからない」というレポートを発表し、各国で実現に向けた研究や普及活動が行われるようになった。建造費は100億ドル、建設は20年弱で可能とするレポートも登場。アメリカでは宇宙エレベーター建造を目的とする企業も誕生しているという。 
 
 現在考えられている宇宙エレベーターの実現イメージは、次のようなものだ。

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 ケーブルの全長は、5~10万km。これは地球の直径の4~8倍の長さに相当する。地上基地は赤道上に設置され、高さ400kmの地点に低軌道ステーション、静止軌道上に静止軌道ステーション、さらに高軌道上に宇宙船の発着用の高軌道ステーションを設置する。  低軌道ステーションには数時間もあれば昇れるので、展望台なども設置して、一般向けに日帰り宇宙旅行用にも利用される。静止軌道上は無重力状態になるので、大型のステーションが建設され、施設全体のエネルギーの供給設備や大型宇宙船の建設基地として利用される。高軌道上には、月や火星、木星などへ向かう探査機や宇宙船の発着用の基地が建設される。

技術的問題、維持・管理やリスクについては、まだまだ超えなくてはいけない課題は幾つか存在する。

日光や宇宙線などにより材料の劣化、スペースデブリ、人工衛星、航空機との衝突による破損も考慮に入れなければならず。人工衛星などとの衝突やテロが起きた場合、軌道エレベータのケーブルの一部でも損傷すれば、損傷箇所に極めて大きな応力がかかって、軌道エレベータ全体が崩壊する可能性がある。

軌道エレベータにスペースデブリが衝突する可能性がある。地上のプラットフォームを固定式ではなくメガフロートで移動可能とすると、大きなデブリは回避が可能となるかもしれない。

また、エレベーターはリニアでケーブルに非接触型が望ましいが、リニアの時速は地上で時速500Km程度で、垂直の場合どこまで加速できるのか未知数だ。軌道エレベーターの実用化はそう容易ではなく道のりは遠いが、リニアとエレベーター技術で技術的蓄積を持つ日本にとっては非常に有利だ。また肝心のケーブルは、1991年に飯島澄男名城大学教授がカーボンナノチューブを発見したことにより、軌道エレベーターが一気に現実味が帯びたもので、ケーブル素材の分野でも日本の技術的に優位にある。

しかし、世界的利権に繋がる、軌道エレベーターに関して、米国NASAや民間団体がすでに動き出しているので、日本政府はもう少し真剣に取り組むべきであろう。

【wiredvision:宇宙空間へ物資や人を運ぶ「宇宙エレベーター」、実現は15年後?】(2003年2月10日)
http://wiredvision.jp/archives/200302/2003021002.html

一方、日本では、宇宙エレベーター協会が2008年に設立された。軌道エレベーターの日本の権威:青木義男 日本大学理工学部教授が副理事ではあるが、大変失礼な言い方かもしれないが、胡散臭い民間団体にすぎない。

軌道エレベーターは、一民間の社団法人にとても任せられるものではなく、JAXAもしくは国家戦略会議と文部科学省が旗を振って取り組むべき課題であると考えます。

軌道エレベーターは、地盤低下で自信喪失ぎみの日本人に希望を与え、日本の国家戦略として最重点に取り組むべき事業として最もふさわしいと事業と私は考えます。