
期待先行、とりあえずめでたい。2016年の大発会が582円安、2015年の846円安、2014年383円安とは対照的だ。安倍政権が始まった直後の2013年の大発会が293円高以来だ。素直にトランプ政権の発足歓迎相場であろう。
だが、トランプ次期大統領は一筋縄ではいかない。期待が高い時、懐疑をするのは私の性分だろう。もっとも相場の格言では、トランプ政権発足は悲嘆だったかもしれない。今は、懐疑の最中で、相場が成長している最中かもしれません。
相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく 米著名投資家ジョン・テンプルトン
だが、マーケットは豹変しトランプ次期大統領を称賛し昨年末トランプ相場になりましたが・・・・
いったんどこかで「スピード調整」の局面があるか・・も。

昨年11月9日安値の101.20円から12月15日高値の118.66円まで、ドル円相場はわずか約5週間で17.46円も急騰したが、今日1/5 115円台に一時突入し円高となっている。
これを、スピード違反的な急騰に対する一時的な流れと見做すか、否か1月20日に発足するトランプ政権の政策が、実際に始まってみないとわからない部分も大きい。
今のところのトランプ政権のラインナップは、一癖も二癖もあるCEO達と軍人達をはたしてトランプはうまく制御できるのか?しかし、上手く使いこなせば最強政権になる可能性は高い。対中国強硬派が多い新政権を私は期待したい。
国務長官:レックス・ティラーソン エクソンモービルCEO
財務長官:スティーブン・ムニューチン 元ゴールドマンサックス幹部
商務長官:ウィルバー・ロス 知日派の投資家 幸福銀行買収等
国防長官:ジェームズ・マティス 戦う修道士 元海兵隊中央軍司令官
国家通商会議:ピーター・ナバロ 対中強硬派のエコノミスト
大統領補佐官(国家安全保障担当):マイケル・フリン 元陸軍中将イスラム強硬派
国土安全保障長官:ジョン・ケリー 元海兵隊大将 軍強硬派
中央情報局(CIA)長官:マイク・ポンペオ 元陸軍士官学校卒ベンチャー企業社長
首席戦略官兼上級顧問:スティーブン・バノン 元ゴールドマン 元海軍 保守派ニュースサイト会長
国家経済会議(NEC)委員長:ゲーリー・コーン 元ゴールドマンCOO
労働長官:アンディー・パズダー 大手ファーストフードCEO
大統領首席補佐官:ラインス・プリーバス 共和党全国委員長
中小企業庁長官:リンダ・マクマホン プロレス団体WWEの元CEO
住宅都市開発長官:ベン・カーソン 元共和党大統領候補 黒人医師
環境保護局(EPA)局長:スコット・プルイット 司法長官:ジェフ・セッションズ 国連大使:ニッキー・ヘイリー 教育長官:ベッツィー・デボス 厚生長官:トム・プライス 運輸長官:イレーン・チャオ エネルギー長官:リック・ペリー 内務長官:ライアン・ジンキ 陸軍長官:ビンセント・ビオラ 行政管理予算局(OMB)局長:ミック・マルバニー
トランプ政権にゴールドマンサックス関係者が3人も入閣したラインナップに市場の期待が非常に高すぎて、少々怖い。2月頃からはじまる予算審議で議会とどう折り合いをつけるのか?大統領首席補佐官:ラインス・プリーバス 共和党全国委員長の手腕がどの程度かにもよる。軍事増強(一種の公共投資)のレーガノミクスと大型減税などの供給力重視の政策姿勢が酷似予想される「トランプノミクス」の良さそうな面ばかりを先行して織り込み過ぎている。
当たると評判のみずほ総研「とんでも予想」 2017年1位は「アベノミクスがトランプノミクス採用」「大型減税」 【産経ニュース】2017.1.1 07:00
みずほ総合研究所が昨年12月に発表した、年間の経済・社会情勢を予測する10大予測ランキング「とんでも予想」の結果と予想に注目が集まっている。一昨年12月に発表した2016年予想では、1位に「トランプ氏当選」を打ち出すなど、10の見通しのうち3つを見事に的中させたからだ。17年予想は、1位に「アベノミクスがトランプノミクス採用で大型減税」、「ダウ平均2万3000ドル」(2位)、「政府100年国債発行」(5位)、「ブレグジット撤回」(7位)などを大胆に予想するが果たして結果は…。
16年予想のうち、「トランプ氏当選」以外で的中したのは、「ブラジルのルセフ大統領罷免でレアル暴落」(2位)、「消費税増税先送りを決定」(5位)の2つ。「日経平均2万5000円台に」などは外れたが、「訪日外国人3000万人突破、規制緩和で民泊可能に」や「リオデジャネイロ五輪で、(日本は)20個の金獲得、7人制ラグビーのメダル獲得でラグビー人気がさらに高まる」などの惜しい予想(実際は金は12でラグビーはメダルならず)もあった。
ランキングを総括する、みずほ総研の高田創・常務執行役員調査本部長は、「あくまでも題名の通り、『とんでも予想』であって、厳密な根拠はない」ことを強調。「変に真面目に分析してしまっては面白くない予想になるので、と遊び心が半分」であることを明かす。
確かに的中したといっても、「トランプ氏当選」の予想には続きがあり、極論が満載。「オバマ大統領のレームダック期での権力の空白から、世界的規模で地政学的な不安が増大。各地で非常事態宣言が出される状況に」と締めくくっている。「ブラジルのルセフ大統領罷免」も、「理由は準備不足でリオ五輪の開催ができない」ことを挙げており、国家会計の不正操作で罷免された事実とは異なる。
だが、みずほ総研のこうした大胆な予測が“半分”当たる背景には、昨年が「不確実性ばかりで分析しづらい年」(日銀幹部)だったからともいえる。実際、英国のEU離脱やトランプ氏の大統領当選、移民制限を唱える政党の欧州での台頭と、多くの人が想像していなかった出来事が次々に発生した。
さて、今年の1位の「大型減税」の中身は、「アベノミクスがトランプノミクスを採用し、大型減税を断行。カジノ法案を受け、インバウンド観光の目玉策として、超豪華5つ星『トランプ・ホテル』を誘致」。
3位には、「経済的利益から米国が中国に接近。日米両国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加わり、米国で中国製新幹線が導入される」と、大胆に予想する。
物価2%上昇目標の先送りを繰り返す日銀関連の予想では、「(長期金利を0%程度で維持する)イールドカーブ操作が円安誘導と批判を受け、長期金利の上昇範囲を許容。金融政策の出口への警戒から超長期金利が急上昇」を4位に入れた。
5位の「100年債」も注目だ。昨年7月に財務省が50年債を検討していることが判明したが、英国、フランスやオランダ、スイスなどはすでに発行している。極めて長い年限の国債を発行することは永久国債の連想がされやすく、50年債は、日銀が国債買い入れで財政資金を供給する「ヘリコプターマネー」としての側面が意識されるが、「利払負担の軽減」などのメリットもある。100年債は不可能としても、50年債はあり得るかもしれない。
とはいえ、やはり「とんでも予想」だけに、当たってほしくないものが多いが、読者のみなさんはいかがでしょうか。(経済本部 飯田耕司)
米国の新政権が発足する前後の時期には政治的な高揚感が盛り上がってメディアもマーケットも「いいとこ取り」の心理状態に陥りがちだ。
トランプ次期大統領が主張する大規模な減税やインフラ投資に必要な財源問題は、今後の財政協議で議論されるだろう。はたして、財源問題がクリアできるか少々不安だ。
もちろん、好景気 トランプ新政権で米国は好景気になる可能性が高い
【Newsweek】経済ニュースの文脈を読む2016年11月14日(月)16時01分 加谷珪一
<トランプ大統領誕生で、米国経済は、世界経済は、そして日本経済はどうなるか。「公約」の大規模インフラ投資は果たして効果があるのか。保護主義とTPP離脱を掲げるが、日本はどう対応すべきか>
米大統領選は大方の予想に反してトランプ氏が逆転勝利した。市場はクリントン候補の勝利を織り込んでいたことから、9日の日経平均株価は1000円近くも下げた。だが続いて取引を開始した米国の株式市場はトランプ氏の勝利を好感し、ダウ平均株価は大きく値を上げた。
筆者は以前から、トランプ氏が大統領に当選した場合、彼の人格問題は別にして、米国は意外と好景気になるかもしれないと述べてきた。その意味ではトランプ氏勝利を受けた株式市場の反応は極めて自然なものに思える。ただトランプ氏が掲げる保護主義的な政策は、行き過ぎれば世界経済に極めて深刻なダメージを与える。世界貿易が停滞することで、最終的に米国経済も足を引っ張られてしまうリスクは否定できない。日本を初めとする各国にとってトランプ政権の誕生は大きな試練となるだろう。
大規模なインフラ投資は米国経済にプラス?
筆者がトランプ氏の大統領就任で米国が思いのほか好景気になる可能性が高いと考える最大の理由は、トランプ氏が掲げるインフラ投資である。
トランプ氏は、自著で1兆ドル(約102兆円)という巨額のインフラ投資を主張しており、選挙戦の最中の8月にはクリント氏が主張する金額の少なくとも2倍の金額を投じるとも発言している。クリントン氏は総額で2750億ドルの投資を公約に掲げていたので、この2倍以上ということになれば約6000億ドル近くになる。これを4年で均等に支出した場合、各年度における直接的な経済効果は1500億ドルである。
日本人の感覚からすると大きな金額に思えるが、米国経済の現状を考えると実はそうでもない。米国のGDPはすでに18兆ドルと日本の4倍近くもあり、インフラ投資が直接的にもたらす効果はGDPの0.7%程度に過ぎない。だが、この規模の投資が継続的、かつ重点的に実施されれば、米国の産業基盤は着実に強化される。投資は今後の成長の原動力となるものであり、労働者の所得が増えるなど消費にも好影響を与えるだろう。需要不足が指摘される現状の米国経済において投資を拡大するメリットは大きいはずだ。
クリントン氏は投資の財源として富裕層課税を掲げていたが、トランプ氏は逆に減税を主張している。減税を主張した以上、インフラ投資の財源として税金を充当することは難しく、最終的には国債を増発する形で費用を捻出することになる可能性が高い。増税によるマイナス要因がないので、短期的には経済にプラスに作用するだろう。
【参考記事】アメリカ企業、トランプ勝利で海外利益への大幅減税を期待
国債が追加発行された場合、金利が上昇する可能性が高まってくる。場合によってはインフレ懸念の台頭ということになるが、米国の金利が完全に正常化できていない現状を考えると、国債の追加発行は低金利を脱するよいきっかけとなるかもしれない。そうなれば、FRB(連邦準備制度理事会)による金融政策との整合性も取れるのでむしろ好都合である。
米国は2014年にサウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国となっており、天然ガスなどを含めれば、米国は理論上、すべてのエネルギーを自国で賄うことができる。しかも米国は先進国では珍しく、人口が継続的に増加する見込みとなっている。成長に必要な材料はすべて揃っており、大統領1期目の4年間に限定すれば、トランプ氏の大規模インフラ投資がマイナスに作用する要素はあまり見当たらない。
最初にターゲットとなるのはNAFTAではなくTPP
もちろんトランプ氏の大統領就任には懸念材料もたくさんある。金利上昇が行き過ぎればインフレのリスクが高くなるし、財政出動にも限界はある。だが多くの人が気にしているのは、やはり自由貿易体制からの転換だろう。
トランプ氏は当初、メキシコとの国境に壁を作ると宣言し、NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)について否定的な見解を示していた。これらの公約を本当に実現するということになると、米国を中心とした自由貿易体制は一気に崩れてしまうことになる。世界貿易が大幅に縮小する事態となれば、結果として米国経済も無傷ではいられないだろう。
もっとも、トランプ氏が指名を受諾した共和党大会では、「国益に反する貿易協定には反対する」という曖昧な言い回しに修正された党綱領が発表されており、トランプ氏も最終的には何らかの妥協を迫られる可能性が高い。政策決定のカギを握る首席補佐官に、共和党主流派に極めて近いプリーバス氏の就任が決まったことからも、トランプ氏がある程度、現実路線を意識していることが分かる。
米国経済とメキシコ経済はすでに一体化しており、NAFTAからの完全撤退は非現実的だ。トランプ氏がアリバイ作りとしてターゲットにしやすいのはTPPの方だろう。米国がTPPを離脱すれば、米国にとってもデメリットとなるがNAFTAと比較すれば影響ははるかに少ない。
もっとも、米国がTPPを承認しない場合、日本の製造業にとっては大きな打撃となる。TPPは加盟国のGDPの85%を占める国で承認されなければ発効されない仕組みになっている。TPPがなければ貿易交渉は完全に個別対応ということになるので、米国からどのような要求が出てくるのか現時点ではまったく予想が付かない。
場合によっては、日本が農作物の市場開放を実施しなければ自動車に関税をかけるといった交渉パッケージを持ち出してくる可能性はゼロではない。そうなった場合、日本メーカーは米国での生産比率を上げる必要に迫られるが、それは国内雇用の喪失を意味する。
このほかにも、アジア太平洋地域における安全保障政策の見直しなど不透明要素は多い。トランプ大統領の登場は日本にとって大きな試練となりそうだ。だが、不安視したところで問題が解決されるわけではない。日本はトランプ政権の誕生をきっかけに経済構造の転換についてもっと真剣に考えるべきだろう。
【参考記事】トランプ政権の対日外交に、日本はブレずに重厚に構えよ
これまでの日本は何でも受け入れてくれる米国に大量のモノを輸出することで(あるいは現地生産を行うことで)経済を成り立たせてきた。実際、自動車産業を中心とする日本の製造業の業績は、今でも北米市場での売上げに大きく左右される。
トランプ政権が自国中心主義に舵を切ることになった場合、米国はこれまでのように無条件でモノを買ってくれなくなるかもしれない。日本は1980年代から内需主導型経済への移行を模索してきたがうまくいかなかった。米国が好景気になれば、それだけで日本の製造業は儲かるので、そこに頼ることの繰り返しだ。2003年から2007年までの日本の好景気も、結局はリーマンンショック前の米国の過剰消費に支えられていたという現実を忘れてはならないだろう(日本人はよく米国の不動産バブルを批判するが、日本はその最大の受益者の一人である)。
日本は人口が減少しつつあるとはいえ、1億2000万人の消費者を抱える巨大市場が存在している。市場メカニズムが機能するための改革を行い、米国の購買力に依存しない豊かな消費社会を構築することが求められている。
【参考記事】世界の経済学者の「実験場」となりつつある日本
トランプのミクスは景気浮揚効果のある経済政策が採用される可能性が高い。だが、市場が織り込む順番としてプラス面への期待が先行している場合、マイナス方向への削り込みを行う段階になると、今の「トランプ相場」によって上昇は行き過ぎなのか心配だ。
昨年の米大統領選後に観測された「トランプ相場」は、私がトランプ当確前円高と予想したのだが私が培ってきた相場感覚は見事に壊された。
ドル高・円安の「スピード調整」が進む可能性があるが・・・・米国経済が順調なら再び120円台をトライするかもしれない。
しかし、ドル高による米景気下押し圧力に潰されて米国経済がトランプ政権稼動前に失速し、期待の反動でドル安・円高局面が到来する可能性がある。その場合、ドル円相場は昨年半ばに岩盤の堅さを誇った99円台のフロアーを突き抜ける可能性はなくはない。
円高に振れれば日経平均も調整するが、さあ今年の大発会479円高を信じてもいいかもしれない。
【トランプ米大統領登場 世界はこう変わる】米「反中親露」で日本は防衛予算大幅増、TPPは「死に体」 速やかに見切りを
【ZAKZAK】2017.01.05
★(1)
ドナルド・トランプ次期米政権の誕生は、国際情勢の根本的な大変化を引き起こす。変化のスピードは極めて速い。その変化がどのようになるかを3回に分けて分析する。第1回は、日米関係に与える影響である。
選挙中から公言していたように、トランプ氏は日本やNATO(北大西洋条約機構)諸国に対し、共同防衛における財政負担をより多く求めてくる。トランプ氏の言葉をもってすれば「米国は世界の警察官を辞めるとは言わないが、警察官の給料を上げてほしい」ということになる。
NATO諸国では、GDP(国内総生産)の2%を防衛費に充てることが最低限の必要ラインとされている。ところが、この2%の基準を満たしている国は、米国以外にはたった4カ国しかなかった。このため、トランプ氏はNATO加盟国を強く非難している。
振り返って、わが国を見れば、GDPの1%しか防衛費を支出していない。NATO基準に照らしても、あまりに少なすぎることは明らかだ。
トランプ政権は、在日米軍経費の負担増を求めてくるだろうが、日本自身の防衛予算も大幅増額する必要がある。日本としては、NATO並みのGDPの2%を国家目標とすべきだろう。これを数年をかけて実現していけば、トランプ政権が日本に要求する条件は容易に満たすことができる。
そもそも、国防力を高めることは、米国に言われるまでもなく、日本自身がやらなければならない。沖縄を含む南西諸島における対中抑止力の強化は今や急務である。
トランプ政権は、米国の財政的必要から在日米軍を削減傾向とせざるを得ない。日本としては「力の真空」を絶対につくらないことを目標に、対中抑止力を高めるかたちで、日米安保条約体制の強化と再構築を図ることが必要である。
安倍晋三政権がこの方針を明確に打ち出せば、日米安保関係は極めて良好に展開する。その延長で、トランプ氏から「憲法9条改正支持」の発言も引き出せるだろう。
トランプ氏の外交方針の基本は、第1に「反IS(イスラム国)」であり、第2に「反中親露」である。
中東では、ロシアと手を組み、IS徹底壊滅の軍事行動に乗り出すだろう。今年中にもISの領域支配は終焉(しゅうえん)を迎える。
トランプ氏は、中国を経済、軍事両面で「米国を脅かす大いなる脅威」と認識している。日米が基軸となり、東アジアで反チャイナ包囲網をつくることが日米協力の目標となっていくだろう。
選挙戦を通じて、トランプ氏は「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)脱退」を主張してきた。もはやTPPは「死に体」である。この点では、安倍政権は速やかにTPPに見切りをつけるべきだ。自由貿易を推進するならば「日米2国間協議」に切り替えるしか方法はない。
TPPはとりあえず米国抜きで発足させ、そのあと米国が乗るか否かを確認すべきで、TPPを見切るのはあまりに拙速だと思う。TPPはもともと中国包囲網であり、そう簡単に米国がTPP脱落だと思うべきではないが、TPPが有ろうがなかろうが、反中包囲網をトランプは実行していくと思う。
2017年に世界を形作る9つの出来事 トランプ大統領就任、ブレグジットから中国共産党大会まで 【JBpress】2017.1.5(木) Financial Times
政治的な地震が相次いだ年の後、2017年が平穏な1年になる可能性は低い。ドナルド・トランプ氏の権力掌握から、ゆっくりとしたブレグジット(英国のEU離脱)、中東で自称カリフ制国家「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が終焉を迎える可能性まで、向こう1年間、世界で注目すべき出来事の手引きを用意した。
1月:ドナルド・トランプ氏の米大統領就任
その振る舞いから判断すると、第45代米国大統領は足跡を残すことを急ぐだろう。トランプ氏は、米国を環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱させ、医療保険制度改革法(オバマケア)を修正・刷新し、前政権のクリーンエネルギー政策を撤廃するなど、幾多の目標に向けて素早く行動すると約束した。
就任演説での新大統領の言葉遣いと就任当初数日間の行動がトランプ政権の基調を定めることになる。たとえトランプ氏自身が予測不能で奔放な振る舞いを続けたとしても、だ。
もう1つ、特に熱心に見守られる公式行事がある。米国の諜報機関が大統領選でのトランプ氏の予期せぬ勝利を後押ししようとしたと見ているロシアのウラジーミル・プーチン大統領とトランプ氏との初の首脳会談だ。
3月:英国のEU条約第50条発動
半世紀に及ぶ英国の外交・経済政策を事実上廃棄した国民投票から9カ月を経て、英国政府は3月末までに正式な2年間の離脱プロセスを始動することになっている。
現時点では、旅路の方向性は完全にははっきりしていない。だが、テリーザ・メイ首相率いる英政府は、EU条約の第50条に基づく離脱手続きを始動する前に一定の計画を示すことを約束している。その青写真が詳細に示されていなかったとしても、英国は包括的な交渉戦略も描かなければならない。
メイ氏は市場にショックを与えることを避けながら、対内投資を促し、保守党のEU離脱派を味方に付けておくことを目指す。3つの目標をすべて成し遂げるのは難しいかもしれない。
年前半:ラッカを巡る戦い
ISISのジハード(聖戦)主義者たちは、シリアとイラクにおける領土拡大で世界の大部分を恐怖に陥れた後、ほぼ2年間、両国で支配地域を失い続けている。ここ数カ月は、ISISが2014年に制圧したイラク第2の都市モスルの支配を巡る戦いに明け暮れた。
この戦いの進展次第で、恐らくは2017年前半に始まる次の攻勢は、ISISの事実上の首都であるシリアのラッカを巡る戦いになる。
トランプ新政権にとって大きな課題は、ISISをその牙城から引きはがし、ジハード主義者の残忍な支配の後に地域を統治することができるシリア人部隊の連合軍(クルド人、アラブ人双方が参加する連合)を組織することだ。
4~5月:フランスの大統領選挙
ブレグジットとドナルド・トランプ氏の米大統領選出、マッテオ・レンツィ氏の首相在任に終止符を打ったイタリア国民投票での憲法改正案否決の後に、大きな利害がかかった2017年の選挙がやって来る。フランスの政界エスタブリッシュメントは、国民戦線(FN)の大統領候補、マリーヌ・ルペン氏の台頭に抵抗することを目指す。
ルペン氏は第1回投票で勝利を収める可能性がある。だが、一騎打ちの決選投票では、穏健な有権者が反ルペンの旗印の下に結集し、ルペン氏は敗北すると見られている。本命は、保守・共和党の大統領候補、フランソワ・フィヨン氏だ。
だが、主流政党の間には亀裂があり、ルペン氏は労働者階級の有権者の間で支持の鉱脈を掘り起こした。さらに、2016年の選挙のショックは、どんな票も当てにできないことを示している。ルペン氏がどうにかして勝利を収めたら、EUは潜在的に過去最大の危機――ブレグジットをもしのぐ危機――に直面することになるだろう。
5月:イランの大統領選挙
過去4年間、当初の逆の予想にもかかわらず、ハサン・ロウハニ大統領はイランに足跡を残してきた。特に注目されるのは、米国とその他5大国との間で結んだ核合意を通じたものだ。
だが、イランの政策課題を形成するロウハニ氏の力は、旧来秩序の擁護者、具体的にはイラン革命防衛隊と司法界からの絶え間ない攻撃にさらされてきた。
そして今、時折、合意破棄を誓ったトランプ氏の到来で核合意に重圧がかかっている中、ロウハニ氏は大統領再選に挑むことになる。強硬派は大統領選に影響を及ぼそうとするだろう。ロウハニ氏が生き延びるかどうか、そしてイランがより対立的なアプローチを取るかどうかは、中東地域内外に大きな影響を及ぼすことになる。
通年:FRBの利上げ
米国の金利は、原油価格と並び、世界を揺るがす可能性がある経済的事実だ。多くの人、多くの場所にとって、2017年の重大問題は、米国金利がどれほど上昇し得るか、だ。
12月に金融危機以降わずか2度目の利上げに踏み切った米連邦準備理事会(FRB)は、2017年にあと3回金利を引き上げると予想している。市場は、金融引き締めがそこまで進むとは確信していない。だが、金利は実際、一段と上昇する可能性がある。
本人が認めている通り、FRBのジャネット・イエレン議長はまだ、考えられる「トランプ効果」を考慮に入れていない。もし次期大統領が議会で自分が求める莫大な財政刺激策への支持を勝ち取ったら、このトランプ効果は金利をさらに押し上げるかもしれない。
トランプ氏が大統領に選出された後、債券保有者とメキシコペソやトルコリラといった通貨はすでに痛手を受けている。大統領就任後の同氏の政策が全世界で資金コストを上昇させたら、こうした投資家や通貨はさらに試される可能性がある。
年前半:エルドアン大統領の国民投票
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はほぼ15年にわたり、トルコで自身の権限拡大を図り、その過程で近代トルコの建国の父ムスタファ・ケマル・アタチュルク以来、最も影響力のある指導者になった。
2017年にエルドアン氏はついに最大の野望をかなえる可能性がある。つまり、行政権を持った大統領職に正式に就任し、誰もが認める国家元首および政府のトップとして国を支配することだ。
クーデター未遂と一連のテロ攻撃を含む血みどろの1年を経た後、エルドアン氏により大きな権力を与えることへの国民の支持は増大した。国民投票は4月か5月に実施される可能性がある。大統領は恐らく賛成票を、民意に力を与える行為として描くだろう。反対勢力は、ノーを突きつけることが独裁政治を防ぐ最後のチャンスだと訴えることになる。
秋:中国の共産党大会
中国が国際舞台で今日ほど力を持ったことは過去何世紀もなかった。習近平国家主席ほど強大な権力を持った指導者は、毛沢東以来いない。
習氏は、中国共産党第19回党大会でこの権力を固めることを目指す。同氏はほぼ確実に2022年まで共産党総書記の座を維持するが、本当の問題は、ほかにどんな任命があるか、また、味方を昇格させることによって一連の任命が習氏の影響力を拡大させるかどうか、だ。
もし党大会が既存の年齢制限・任期制限を払いのけたら、それは習氏自身が暫定的な退任期限の2022年以降まで共産党の支配をもくろむシグナルかもしれない。そうなれば、この最も野心的な中国指導者にとって、過去とのさらなる決別になる。
一方、中国は成長が四半世紀ぶりの鈍さとなっている経済やトランプ氏との緊張が高まる可能性など、ほかの大きな課題の舵取りもしなければならない。
9~10月:ドイツの選挙
アンゲラ・メルケル首相は、欧州で最も重要な指導者、ことによれば自由世界で最も重要な指導者の地位を確立して久しい。だが、首相4期目を目指す2017年には、選挙で大きな難題に直面する。
安定した連立を組む計算は、既成政党の問題によって著しく複雑になる可能性が高い。移民問題に対するメルケル氏のリベラルな路線への国民の不満は、現在の連立パートナーである社会民主党(SPD)の長期的衰退と、古くからの同盟相手である自由民主党(FDP)の不透明な先行きと重なった。
反ユーロ、反移民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」は、ここにつけ込もうとするだろう。一方のメルケル氏は、同氏が担う重要な国際的な役割が国内での弱さによって損なわれないこと確実にしようとするだろう。
By Daniel Dombey in London
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未曽有の世界経済危機の兆候…中国は資金流出、EU各国は排他主義で分裂、米国急失速 【BusinessJournal】2017.01.05 真壁昭夫・信州大学経法学部教授
2016年11月8日に米国の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が当選して以降、金融市場では米国経済への強気な見方が増えてきた。それは、トランプ氏が財政出動、減税、規制緩和を進め、米国経済の成長率を2~4%程度に押し上げると主張してきたことに影響されている。
リーマンショック後の世界経済では、各国が金融政策を駆使して低金利環境を整備し、投資や消費を促そうとしてきた。エコノミストらの間でもこうした政策の効果にはさまざまな見方がある。そのなかでも世界的に需要は盛り上がりに欠け、需給ギャップが拡大基調にあるというのは多くの専門家が認識しているポイントだろう。
その状況下、トランプ氏が主張する5000億ドルとも1兆ドル(59兆~117兆円程度)ともいわれる大規模なインフラ投資が本当に進むと、世界的に需要は回復し物価も上昇しやすくなる。それが大統領選挙以降の米国株式、ドルの上昇につながった。すでに米連邦準備理事会(FRB)関係者が2017年に3回の利上げを予想していることを踏まえても、トランプ氏の経済政策(トランプノミクス)の潜在的な影響は無視できない。
こうした期待がどうなるかは、今後の政治次第だ。17年、米国だけでなく欧州でも独仏蘭で総選挙などの重要な政治イベントが控える。各国の政治動向次第で世界経済に無視できない影響が及びやすいことは冷静に考えるべきだ。
17年はまさしく政治の年
17年の世界経済の展開を論じる際、無視できないのが主要国の政治動向だ。まず注目されるのは大統領選挙後、急速に先行きの期待が高まってきた米国の動向だろう。1月20日、トランプ氏は正式に大統領に就任する。その後、予算編成や債務上限の引き上げなど、議会との交渉などを通して政治的に解決されなければならない案件は多い。
財政出動を主張しているように、トランプ氏は“大きな政府”を志向している。一方で、伝統的に共和党は“小さな政府”を重視し、経済の営みは市場に任せるべきだとの考えを持っている。選挙戦のなかでトランプ氏と共和党指導部の関係が悪化したことを踏まえると、同氏が共和党や議会との利害調整を円滑に進め、有権者から一定の支持を維持していくことができるかは不透明だ。政治経験の乏しい同氏にとって、それは簡単なことではない。すでに財政出動観測から金利は上昇し、住宅投資や耐久財の消費動向は不透明だ。ドル高が輸出や企業業績に与える影響も無視できない。今後の米国経済はトランプ氏の政治手腕次第だろう。
現在、欧州各国では移民や難民に対する反感が追加的に高まっている。特に、ドイツでは首都ベルリンで、クリスマス商戦でにぎわうマーケットにトラックが突入するテロ事件が発生し、難民受け入れを積極的に進めたメルケル政権への批判が高まっている。ドイツ以外のEU加盟国でも自国第一を主張する右派のポピュリズム政党への支持が高まっている。今後の選挙などの結果次第では、金融市場が混乱する可能性も排除できない。
要注意のフランス大統領選挙
なかでも注意が必要なのは、フランスの大統領選挙だ。同国の大統領選挙では、1回目の投票で50%以上の得票率を確保する候補がいない場合、上位2名での決選投票が行われる。各種世論調査などを見ていると、1回目の投票では勝負がつかず、右派・共和党の候補であるフィヨン元首相と、極右・国民戦線のル・ペン党首の一騎打ちになるとの見方が多い。
決選投票に関して、多くの政治アナリストらの見方では、左派の社会党と共和党の反ル・ペン票がフィヨン元首相に流れ、ル・ペン党首は当選しないとの予想が多い。強硬に移民、難民の排斥やEU懐疑主義を唱えるル・ペン党首の主張は、かなり過激だ。理性的に考えると、フィヨン氏の当選がフランスと欧州にとって良い決定であることは確かだ。
しかし、16年6月の英国国民投票、11月の米国大統領選挙のように、想定外の展開もありうる。共和党の候補者選びに関しても、多くのアナリストらはフィヨン氏が大統領候補に選出される可能性は低いと考えていた。それは、フィヨン氏が親ロシア、シリアの考えを持っており、ル・ペン党首ほどではないにせよ反移民の考えを持っているからだろう。
そう考えると、フランスの政治は徐々に自国優先、EUからの離反に向かっている。そして、難民が関与するテロが続いていることを考えると、5月の決選投票にてル・ペン党首が当選する可能性は排除すべきではない。独英に次ぐ欧州第3位、世界第6位の経済規模を誇る同国で極右政党が政権を獲れば、欧州全体に無視できない影響が及ぶ。オセロをひっくり返すように、各国に排他主義、自国優先、反EUの世論が広まりかねない。
先行き不透明かつ不安定な世界経済
11月の米国大統領選挙以降、市場参加者が米国を中心に先行きに強気になってきただけに、「政治が世界経済の足を引っ張るといわれても、にわかには信じがたい」というのが大方の反応だろう。冷静に考えると、金融市場に影響を与えているのは先行き期待を強める投資家心理だ。「噂で買って事実で売る」という相場格言のように、次期大統領と米議会の交渉がうまく進まないなど政治の実態が明らかになるにつれ、強気相場の調整は進みやすい。
そのタイミングで欧州の政治不安が高まると、それなりのマグニチュードで株価やドルが下落し、世界の金融市場がリスクオフに向かう可能性がある。すでに、イタリアのモンテ・パスキ銀行は自力での再建をあきらめ公的支援を申請した。近い将来、イタリアでも総選挙が実施される可能性があり、政治混乱が銀行システムの再建を阻害し、実体経済にマイナスの影響を与えることは十分に考えられる。
また、リーマンショック時と異なり世界経済には十分な支えが見当たらない。中国を筆頭に新興国経済は世界経済の成長のエンジンではなく、重石になっているからだ。中国では過剰な生産能力の解消が不可避な中、鉄鋼や石炭の増産が進んでいる。金融市場ではシャドーバンキング(影の銀行:正規の銀行システムを介さない資金調達)を通した融資が増え、債務のリスクが懸念されている。秋に共産党の党大会を控え、習近平国家主席は自動車減税やインフラ投資など、財政出動により景気を支えようとするだろう。それでも、先行きの経済への懸念を受けて本土市場からは資金が流出している。16年年初のように人民元安、株安などが同時に進むと、世界経済の下振れリスクも高まるはずだ。
注意したいのは、米国への期待剥落から世界経済の先行き懸念が高まるなかで、欧州の政治、中国経済の減速への懸念が同時に高まるシナリオだ。その場合、世界経済は未曽有の経済危機に直面する可能性がある。各国の金融・財政政策に手詰まり感が出ているなか、政策当局がどう金融市場の混乱を鎮静化させ、景気を支えられるかもはっきりしない。基調として世界経済に不安定な部分があり、状況次第で先行き不透明感が高まりやすいことは冷静に考える必要がある。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)