日経新聞【経済教室】中川淳司東京大学教授
ほころび目立つIMF・WTO体制 G20など機能統合急げ
新たな国際体制構築 企業・個人の関与、制度化を
ポイント
.65年続いた国際経済システムの限界露呈
・今後考えられる体制に3つのシナリオ
.企業.個人巻き込み、透明性・説明責任向上

戦後の国際経済システムは、大恐慌とその後のプロック化が第2次大戦の誘因になったとの反省から、米英主動で構築された。主に国際通貨基金(IMF)、世界銀行、ガット(関税貿易一般協定)の3国際機関が担い、一般に「ブレトンウツズ・ガット体制」と呼ばれてきた。

しかし、このブレトンウッズ・ガット体制の機能低下が薯しい。米国のサブプライムローン危機に端を発した金融危機は世界に波及し、実体経済も深刻な影響を被ったが、危機対処におけるこの体制の役割は限定的だった。

1MFは通貨・金融危機防止のため加盟国の政策を監視しているが、サブプライムローン危機を防止できなかったし、危機の世界的拡大にも無力だった。また、IMFはアイスランドや中東欧諸国を中心に総額500億バの緊急融資を実行したが、この額は主要先進国や新興経済国が国内危機対策に投じた融資総額をはるかに下回る。

ガットを引き継いだ世界貿易機関(WTO〕のドーハ交渉は開始から8年近くたつが、早期妥結のめどが立たない。一方で危機に直面した諸国は保誕主義的措置を相次いで靱入している。さらに、1990年代末以降、二国間地域的な自由貿易協定(FTA)が多数結ばれており、多角的貿易自由化をうたうWTOの機能低下は否めない。

戦後65年、今回の危機で限界を露呈したことは、プレトンウッズ・ガット体制の終罵(しゅうえん)を意味するのか。また世界は再びブロック化と保護主義に向かうのか。筆者の答えは前者に対してはイエス、後者はノーである。

ブレトンウッズ・ガット体制はこのままでは存続できない。では、今後必要な国際経済システムの姿はどんなものか、以下で考えたい。

ブレトンウッズ・ガット体制が存続の危機に直面するのは今回が初めてではない。当初のIMFはドル本位の固定相場制に基づく国際通貨体制を志向した。だが米国経済の圧倒的優位を基礎としたこの体制は71年のニクソンショックで崩壊し、主要国は変動相場制に移行した。IMFは本来業務であった固定相場制維持のための監視に代わり、通貨・金融制度とマクロ経済を監視するようになる。それに伴い、本来業務に付随した加盟国の国際収支上の困難に対する融資業務は債務危機や通貨・金融危機に陥った途上国や新興経済諸国、旧社会主義国への融資業務に変質した。

欧州向けの戦後復興融資の大半はマーシャルプランによって担われたこともあり、世銀は早期に戦後復輿融資を終え、その後は主に途上国向け開発融資を行ってきた。IMFも世銀も発足の四半世紀後には途上国や新興経済諸国、旧社会主義国の開発と市場経済移行を助言・支援する機関に変質したのである。

重要なのはこの結果先進国がブレトンウッズ機構の「顧客」でなくなったことだ。先進国間の通貨・金融制度とマクロ経済政策の協調・調整機能を担ってきたのは主要国首脳会議(サミット)やG7,G20などの枠組み、財務相・中央銀行総裁会議である。経済協力開発機構(OECD)やバーゼル委員会などの先進国で構成される機関が経済政策や金融監督・規制を協調・調整する補完的制度として用いられてきた。このように、通貨・金融制度とマクロ経済政策の協調・調整に関するIMF・世銀の役割は低下する

一方、こうした「先進国クラブ」の役割が増大した。ガットやWTOにはこれと異なる組織・機能変容が起きた。ガットの原加盟国23の大半は先進国だったが、その後途上国の加盟が相次ぎ、80年代末以降は旧社会主義国の加盟も増えた。先進国クラブとして発足したガットはWTOに至ってグローバルな組織に発展したが、貿易自由化機能はかえって低下した。ド-ハ交渉の難航とFTAの増加はその表れである。

今回の危機はブレトンウッズ・ガット体制への重大な挑戦である。危機の規模はIMFの融資能力をはるかに超える。危機が実体経済に及んだため、苦境に陥る途上国はさらに増えやがて世銀の融資能力も超えるだろう。WTOは加盟国が危機対策として導入する保護主義的措置に警鐘を鳴らしているが、この種の措置は後を絶たない。

他方、通貨・金融制度とマクロ経済政策の協調・調整に関する先進国クラブの有効性にも陰りが見える。
金融規制の不備が危機を招いたとして、昨年11月以来、金融サミットで規制強化が検討されているが、多くの国が国内対策に追われ、明確な方針を打ち出せていない。

危機を克服し、世界経済が安定と繁栄を取り戻すにはどうすればよいか。考えられるシナリオは3つある。第1はブレトンウッズ・ガット体制の補強による機能回榎、第2が新たな多国間体制の構築、第3が既存の仕組みを統合し若干の新たな要素を追加することである。

第1のシナリオは現に試みられている。IMFが融資枠倍増を決めたのはその表れである。しかし、このシナリオでは通貨・金融制度とマクロ経済政策の協調・調整に関する先進国クラブの優位は揺るがないし、先進国クラブの有効性にかげりが見える現状は改善されない。WTOの機能回復も期待できない。

第2のシナリオは新たな国際通貨・金融・貿易体制の構築を志向するが、実現の政治的コストが大きすぎるのが最大の難点でIMFなど既存の機構はこぞって反対しよう。

既存機構の業務を新体制が円滑に引き継げるかとの実務的な課題もある。既存機構を解体し世界経済の現状に即した新体制を構築する発想は魅力的だが、実現司能性は低い。

残るは第3のシナリオだ。通貨・金融制度とマクロ政策の協調・調整分野で先進国クラブとIMF・世銀を機能的に統合。貿易自由化分野でWTOとFTAを機能的に統合し、これに若干の新たな要素を加える。

具体的には、①先進国クラブの通貨・金融制度とマクロ経済政策の協調・調整業務に利害関係者である金融業界の関与を認め、②この新たな先進国クラブの協調・調整業務とIMF・世銀の監視・融資業務を統合し、③WT0とFTAの貿易自由化業務に利害関係者である生産者・消費者の関与を認めるというものだ。

非公式にはこのシナリオは既に部分的に案現している。

①は国際金融規制をめぐる市中協議として、②は主な先進国クラブとIMF・世銀で構成される金融安定化理事会(FSB)として、③は貿易交渉・紛争解決における利審関係者の政府へのロビイングとして実践されている。
だがこれらの動きは文字通り非公式で外部からは見えにくく、十分な正統性や継続性、実効性を備えていない。第3のシナリオの利点は、こうした多様な利書関係者の非公式の連携と関与を制度化して世界経済運営体制の透明性と説明責任を高め、運営体制に関係者の声を確実に反映させて実効性を高める点にある。

世界の経営者、政治家、学者などが集い、クローバルな課題を論じるダボス会議は、多様な利富関係者が連携関与する世界経済の運営体制の一つの例といえよう。企業や個人の関与は、各国政府がこれら関係者の声を確実に受け止め運営に反映させる制度として設計するのが現実的だ。

米国発の世界経済危機は、クローバル経済のガバナンス(統治)の将来を検討する重要性を一段と高めたといえよう。8月3日に東京大学で国際会議が開催されるのも、そうした問題意織を踏まえてのことである。
今後の国際経済システムを考える際には、65年前に構想されたブレトンウッズ・ガット体制と先進国クラブの両者を包摂しながら、新たな発想に基づき、政府・企業・個人を含む全世界の多様な利害関係者が連携する必要がある。

グローバル化が進む世界経済の現状にふさわしい、正統で実効的な運営体制を構築する作業を今こそ加速すべきだ。

55年生まれ。東大法学博士。専門は国際経済法。社会科学研究所所属

戦後65年続いたIMF・WTO体制の綻び矛盾、制度疲労に対しての中川博士の提言である。

しかしながら、2010年に向かって欧米各国はその腹黒い下心で陰謀を画策しています。それは国際決済銀行基準バーゼルⅡの導入し、邦銀や中国の銀行をターゲットに叩きのめす新会計基準の導入です。現案に従えば日本も中国も相当の自己資本拡大の必要性が生じ、供給されるリスクマネーが細ってしまう恐れがあります。

アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国による金本位制の北米共通通貨そして、USAが消滅してUnion of North Americaの誕生するというシナリオや、ドルのデフォルト話、一見ありそうな金本位制のアメロ通貨導入など様々なポストドル、ポスト基軸通貨としてさまざまな憶測がでている事も事実です。単純で分りやすい解決策を載せた本は、一般素人に人気が集まっていますが、私にはとても荒唐無稽にしか見えません。

もしも、本当にこのような計画があるのなら、わざわざアメロ硬貨をリークしたり情報を細切れのように出したりするでしょうか?ほんの少し考えれば分る事です。

本当に実行するのであれば、もっと秘密裏に計画準備され、そして突如発表されるべきことです。これだけ情報がリークされているということは、アメロ導入など行われないと考える方が正しいと思います。

アメロ構想はある段階まであったが、中止となったので情報が漏れ出したのではないかと私はと推察しています。

アメロの創設は誰でも思いつくことです。アメロは、ヨーロツパーが採用した地域単一通貨「ユーロ」に匹敵するものを創ろうとする考え方が出現するのは自然です。アメロ構想が実現した場合、3カ国の通貨であるUSドル、カナダドル、メキシコ・ペソは統合されることになります。USドルからアメロヘの交換が始まると、USドルの価値は短期間のうちに、半分か3分に1以下に下落することを予測する人達がいます。そしてアメリカの借金が帳消しになるのではないかと単純に考えているようです。

アメリカはそこまでドラスティックに、金融の仕組みを変えるかもしれません。すると日本はどうなるのか。日本は少なく見積もっても、政府と民間の合計で1兆ドルを超えるアメリカ国債を保有していると推計されています。

仮にそのような暴挙が行われたとしたならば、アメロ通貨は予定した数値を超え暴落し失敗すると思います。

なぜならマネーにとって信用こそすべてです。信用を失えば二度と北米には資金が流れなくなることとなり自殺行為です。紙幣は信用が有ってこそ存在を許されます。ニクソンショックの時には圧倒的な軍事力工業力を誇る米国の存在感、徹底した情報隠蔽と下準備で巨大な衝撃波を乗り越えることができました。しかし、2009年2010年の世界ではメリットよりデメリットが圧倒的だと私は思います。

ユーロがドルに取って代わって基軸通貨となる日も遠のいています。昨年の金融危機でユーロが地域通貨であって1中央銀行下に様々な経済状態の国が存在し、財政政策と金融政策がリンクしにくい状態となり、ユーロの脆弱性を皆知ってしまったのです。地域通貨はあの比較的の文化が均質なヨーロッパですら機能しないのに、カナダメキシコと米国それぞれの財務省があって1中央銀行の通貨が上手く行くわけがありません。また、金本位は弊害ばかりが目立ちます。また、通貨の本質からすれば無理に金の裏づけが無くとも信用があれば流通するものです。

米ドルは依然決済通貨、準備通貨、流通通貨とし信用も多少損なったとはいえ、依然基軸通貨として十分に機能しています。十分に機能していないのならアメロ導入も有ると考えますが、少なくとも、2009年7月段階では、アメロを導入し、自らその信用を失うような愚行はありえないと思います。