米欧金融規制改の衝撃(上)7月7日(火曜日)【日経新聞】経済-2

「金融保護主義」の兆し
欧米の金融監督当局が規制強化に動いている。行きすぎた信用創造を抑制し、金融大手の破綻を回避するのが目的だ。背景にあるのは金融危機の反省だが、自国・地域の金融安定定化を』優先する「金融保護主義」の兆しも見える。日本の金融機関や監督当局は規制強化の行方に神経をとがらせ始めた。
日本勢に巨額増資の重圧
「やはり出してきたか」。金融庁の幹部がつぶやいた。讐戒していたのは、英金融サービス機構(FSA)が検討していた新規制だ。

英国では昨秋の金融危機の影響で多額の資金が国外に流出。この苦い経唆を踏まえ、FSAは6月、同国内で活動する金融機関に対して、一定の流動性資産を保有するよう今秋から義務づけると発表した。

日本勢を含む外国銀行には来秋までの猶予期間が設けられたが、影響は避けられない。英国内の邦銀支店は国債などの流動性資産をほとんど積んでおらず、海外で調達すればコストは膨らむ。全国銀行協会は「国際的な流動性の収縮や外国銀行の事務コスト増大につながる」と非難。大手銀行幹部は「将来の撤退もあり得る」と漏らす。

ロンドンで4月に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)の首脳宣言には「金融保護主義に逃避しない」との一文が盛られた。その議長国の英国が規制強化へとカジを切る。「自分の庭先だけを掃除している」と映るのが同国だけではないことに、「金融保護主義の予兆」を金融庁は感じ取る。

監督一元化急ぐ

「大恐慌直後の改革以来となる抜本的な金融規制の見直し案だ」。オバマ米大統領は6月17日、危機の再発防止に向けた改革案に胸を張った。

米国は監督機関が細かく分かれ、各業態を複数の政府機関が監督する。これにメスを入れるのが改革案の柱だ。業態にかかわらず、金融大手への監督権限を米連邦準備理事会(FRB)に一元化。厳しい自己資本規制を課すことなどで健全性の底上げを狙う。欧州連合(EU)も各国・業態を横断的に監督する機関をつくる。
改革の焦点はFRBやEUがどのような自己資本規制を打ち出すかだ。
米欧当局が一目置くのは返済義務がなく、資本の質が高い中核的自己資本(Tier1)の中でも普通株を中心とする「コア自己資本」だ。
「コア4%」要求
すでに英FSAは大手銀に対する自已資本規制として、コア自己資本比率4%を確保するよう事実上求めた。FRBも金融大手への健全性審査(ストレステスト)で同比率4%を目安とした。
「公的資金でかさ上げされたコア自己資本は質が高いと言えるのか」。
経営が悪化した欧米銀のコア自己資本比率の方が高くなったことに、日本のメガバンク幹部は不満を隠さない。コア自己資本は定義すら定まっていないだけに、いら立ちは募るばかりだ。

「行きすぎた資本規制の強化は銀行に過度のリスクを抱えさせかねない」。金融庁の佐藤隆文長官も欧米の規制強化論に警鐘を鳴らす。銀行が自己資本拡充を通して保有リスクの拡大に走ると、本末転倒な緒果を招きかねない。金融庁は新しい自己資本規制は十分な議論が必要との立揚だ。

だが、邦銀には余裕がない。メガバンクが相次いで巨額増資に動いたのはコア自己資本比率の引き上げが狙いの一つ。同比率を健全性指標と位置づける市場と向き合わざるを得ないためだ。米欧の規制改革が日本の金融機関を揺さぶっている。
米欧金融規制改の衝撃(下)7月8日(水曜日)【日経新聞】経済-2

監督体制再構築の波
6月上旬、英金融サービス機構(FSA)の局長が日本を訪れ、金融庁や日銀の幹部らと相次ぎ会談した。英国では2007年9月に中堅銀行のノーザン・ロックが実質破綻し、金融混乱が深まっていく。FSAはその責任を議会に追及された。中央銀行と監督当局はいかに連携すべきか。英当局者は日本に処方せんを求めているようでもあった。

三洋証券や北海道拓殖銀行などが資金繰りに行き詰まって破綻したのは1997年。その後の数年間、金融危機が日本を襲う。金融庁と日銀はこれを機に、「危ない金融機関」を共同で監視。資金繰りを日々細かく点検し、情報交換するようになった。「金融機関が突然、資金繰り破綻することがないようにする」。英FSA幹部は日本当局者の話を聞いて「進んでいる」と舌を巻いた。
「全体に目配り」担い手模索
ノンバンクが穴
米欧を発火点に、08年に世界を覆った経済・金融危機。日本は経済こそ揺らいだが、欧米のように金融システムに動揺が走ることはなかった。にもかかわらず、欧米発の金融規制改革の波に、もまれつつある。

「金融システム上、重要なノンバンクをしっかりと監督する必要があるのではないか」。国際通貨基金(IMF)は近くまとめる日本への政策提言で、金融部門についてこんな内容を盛り込む方向で検討に入った。

念頭にあるのは、破綻すると経済への影響が甚大な金融大手を米連邦準備理事会(FRB)が一元的に監督する仕組み。銀行だけでなく、証券、保険、ノンバンクなども対象とする規制案だ。

日本はもともと金融監督の権限が集中している国の代表例だった。業態によって監督当局が細かく分かれる米国と違い、金融庁は銀行、保険、証券の検査・監督を一元的に担っている。

ただ監視体制には"穴"もある。資産規模が上位の地方銀行に匹敵するノンバンクがあるにもかかわらず、監督権限がないのが一例だ。ノンバンクの資金繰りや財務の健全性は、直接監視することができていない。
新しい発想迫る
金融規制改革のうねりが突きつけるのは新しい発想の導入だ。個別金融機関の監視を通して信用秩序を維持する監督手法に加え、金融システム全体のリスクに目配りする「マクロ・プルーデンス」という手法が重視されるようになっている。

例えばデリバティブ(金融派生商品)を使ってある銀行が大きなリスクを回避しても、このリスクが他の金融機関に移るだけでは、システム全体の健全性は盤石とはいえない。「個別の金融機関を監視するだけでは金融危機は防げない」。これが世界の金融当局者の共通認識となっている。

マクロ・ブルーデンスの担い手は誰であるべきか。欧米の改革論議では中央銀行の役割が重視されている。日本の金融庁と日銀も「マクロ経済的な金融規制が重要」との総論では一致するが、担い手は明確ではない。金融規制の新潮流に後れをとることなく、実効ある監督体制を構築できるのか。内容はもちろん、スピード感も問われている。
私は以上の記事を読むと、先日来私が懸念している/ プロシクリカリティ問題は、どこかに忘れさられている。

プロシクリカリティ問題は3月のG20の共同宣言に盛り込まれ、世界経済が回復するのではないかと期待したのだが、愚かな欧州米国の金融当局は、いつか来た地獄へと進む道を選択してしまったと私は思う。

直近の日米の株式の下落・円高は、単にテクニカルや周期的な要因ではなく、マクロ経済への懸念が再び噴出しているのではないだろうか?

米国も欧州も、日本と同じ失われた10年15年へまっしぐら。日本も地獄へ道連れで、日経平均も大回り三年2010年2月~3月6600円になりそうだ。

米国はこれまで、不況期には、積極的な金融緩和政策で住宅、投資や個人消費を刺激し、需要の回復が生産を急増させるという循環によって、深刻な景気後退の後にはV字型回復を実現させてきた。

オバマ政権は2010年度予算教書で「経済成長率は09年後半にはプラスに転じ、年末までには3.5%成長まで回復、10年には年間を通してこの成長が続く」とのオプチにストぶりには少々呆れ、本当に大丈夫だろうか?マーケットは懸念し始めた。年内に景気が底入れしたとしても急回復ではなく、L字型回復・W字型回復程度だろう。へたすりゃM字ではないか?

世界不況は終息するとの期待で上昇してきた米株相場も、多額の財政出動で最も恩恵を受けるはずの住宅
株や地銀株が5月の高値から20%も下落している。ガイトナー財務長官も「米国経済への信頼感は改善しつ
つも、経済回復には長い道のりが必要だ」との認識を示さざるを得なくなってきた。

「バブル崩壊後の日本は、銀行のリストラや不良債権処理を後回しにしたまま、減税や公共投資を繰り返したのが原因で金融正常化を終えるまでに10年を要した」と、あれほど非難していた欧州や米国が今回は足元の銀行リストラや不良債権処理を先送りして財政を拡大している。

90年代の日本は巨額の財政刺激を行ったものの、平均の実質経済成長率は1%程度にとどまった。銀行の
不良債権処理の遅れが融資を滅少させ、企業倒産の増加が新たな不良債権を発生させるという悪循環に陥ってしまったからだ。

当時の日本が悪循環に陥ってしまったのは、バーゼルⅠのプロシクリカリティ問題であったのではないかと認識されています。

欧米当局は、かつての日本と同じように、金融システムの病気を軟膏、絆創膏で治そうとしている。バーゼルⅡ新BIS規制のの導入は、世界経済をバブル崩壊後の日本と同じ失われた10年という地獄への道をまっしぐらに歩んでいる。日本人にとってはデジャブー体験に近いように思います。

まだ間に合う、BISⅡの導入は再度見直し先送りすべきだ。


【日銀:新BIS規制案の特徴】2004
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp04j16.pdf