9月16日 ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会FRB議長は、金融危機と米景気後退の引き金となった米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破たんから1年を迎えた15日、ワシントンD.C.で開かれた米有力シンクタンク「ブルッキングズ研究所」のフォーラムで講演し、米国の景気後退が「終わった可能性が非常に高い」と述べた。

しかしながら、米国経済は商業不動産の焦げ付きや厳しい信用状況や高い失業率は、経済を楽観的に考える事はできないし、追加の景気対策を採らなければ来春二番底を味わうリスクすらある。

バーナンキFRB議長が景気後退終息宣言を出した同日NY金は、1020ドル・トロイオンスの最高値をつけた。

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しかし、原油も70ドル台で足踏みしている中、なぜ金価格だけが上昇しているのであろうか、ドルが売られているだけに、陰謀論を撒き散らす売文家達が主張するように、近々にドルが紙切れになってしまうリスクがあり、その為に金価格上昇しているのだろうか?

私は当然のことながら米ドルが紙切れになると過剰に悲観論を垂れ流す連中とは一線を画したいが、天文学的な財政負担にオバマが国民保険改革を始め、ドルの先安感は非常に高まっていることだけは認めておく。

金価格上昇とドル安は将来のインフレを示唆するものとか、今後の金価格とドルの展開を考察してみたい。

金価格上昇の理由について、巷では金本位制の復活など、庶民的感覚で経済学を無視したの風説が流布されている。経済評論家でもかなり陰謀論に近いような浜田和幸や、ウォール街上がりのエコノミスト松藤民輔あたりは、金本位制の復活を唱えていますが、私から言わせれば金本位制復活はありえません。

①『「1929年大恐慌」の謎:副題:経済学の大家たちはなぜ解明できなかったのか関岡正弘著』を読む。
2009/4/15(水) 午後 11:48  http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/25962973.html

②『「1929年大恐慌」の謎:副題:経済学の大家たちはなぜ解明できなかったのか関岡正弘著』を読む。
2009/4/16(木) 午後 11:45   http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/25994735.html

③『「1929年大恐慌」の謎:副題:経済学の大家たちはなぜ解明できなかったのか関岡正弘著』を読む。
2009/4/17(金) 午前 0:38   http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/25996450.html

「金」の投資価値について、阿修羅版ボーナストラック「マネーの未来、あるいは恐慌という錬金術」松藤民輔著(講談社)の注目加筆訂正
2008/11/1(土) 午後 8:31  http://blogs.yahoo.co.jp/ddogs38/19194919.html

以上で述べたように世界中で流通保管している「金」15万5000トン採掘可能埋蔵量7万トンに対し世界経済は明らかに巨大すぎてしまうと考えるからです。

経済評論家でもかなり陰謀論に近いような浜田和幸は、『オバマの仮面を剥ぐ(Koudansha)』でp199~205まで、部分的金本位制の復活とアメロ通貨導入を主張しています。
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米国は世界一の金保有国である。米国の公表金保有量8134トン(日本765トン)実際は推定25000トンをもって、ドルが下落した場合、部分的金本位制を採用するカナダ・米国・メキシコの地域通貨アメロを導入するという説を実しやかに説明している。

具体的には、2007年、機関誌『フォーリン・アフエアーズ』(5
月6月号)において、同評議会の国際経済部長ベン.ステイル氏による・「国家通貨の終わり」と題する論文がその口火を切った。ベン.ステイル氏は、各国が自国通貨の価値を維持しようとするあまり金融ナシヨナリズムが巻き起こる危険性が高いと指摘し、「そのようなリスクを克服するためには地域的な共同通貨を目指すべきだ」と提案した。つまりここでの「アメロ」はユーロと同じ地域通貨であるが、ゆくゆくはドルに代わる国際基軸通貨の必要性を、外交問題評議会は提唱しているのだ。目標としているのは、「14,5年以内」とのこと。

このような提唱と軌を一にするかのように、ノーベル経済学賞の受賞者ロバート・マンデル教授はカザフスタンのナザルバエフ大統領と共同で、世界の共通通貨として「アクメタル」Acmetal構想を打ち上げた。マンデル教授は、“最適通貨圏理論の父"、“ユー口の父"と呼ばれるだけに、世界共通通貨への期待は大きい。アクメタルとはギリシヤ語で「最高」とか「首都」とかを意味するギリシャ語の「アクメ」acmeからきたもの。

そして、この構想は、2009年4月にロンドンで開催されたG20でも話題に上った。しかし、アクメタルは世界共通通貨としての一構想だが、アメロのほうは世界共通通貨へのステップとしての位置づけよりも、アメリカの借金帳消しという側面が大きい。

『チェンジ』は、通貨切り替えのチェンジだった?

アメリカの借金帳消し作戦は、「クラッシュ・プログラム」として、以前から噂に上ってきた。ただし、アメロはいまのところ、アメリカ、カナダ、メキシコのどの国の議会でも、中央銀行や公式機関でも正式に議題、に上ったことはない。

だから、水面下では、さまざまな情報が飛び交っている。
たとえば、ロシアの外交筋によれば」という噂では、アメリカ政府はすでに中国当局との間でアメロ発行に対し、水面下でドルとの交換止ヒ率などをめぐる話し合いを進めているという。また、すでにアメリカは中国に対外債務をアメロで支払ったという話まで出ている。

もし、こうした噂が正しければ、アメリカは最大の債務国である中国には損失補填を事前に約束し、日本とロシアは切り捨てるということを意味している。アメリカは、中国の力を利用し、米中2国による新たな世界秩序の構築を目指していると言えるだろう。(略)アメリカはここまで追いつめられているのである。

アメロが導入されれば、言うまでもなく、ドルは切り捨てられる。たとえどんな交換レートが適用されようと、アメリカはドルによる旧勘定を最大限に減らす方策をとるだろう。

浜田和幸の説は一見信憑性がありそうだが、私はトンデモ論にしか思えない。

本文中にもあるが、アメロはどの国の議会でも、中央銀行や公式機関でも正式に議題、に上ったことはないのである。ユーロに対し有ってもおかしくは無いという発想からであろうが、メキシコ・カナダが承知するとは思えない。日本としては反対だが、どうせやるなら円とドルの融合「ドレン」こそ価値がある。ここ数年でのアメロ導入はありえない。

各国の外貨準備をみると、金ではなく圧倒的にドルを外貨準備として保有している。例えば、日本の外貨準備に占める金の割合は1.7%であり、中国では1.1%、インドでも4.1%に過ぎない(2006 年)。

現在のドル機軸体制においては、米国以外はドルによる支払い能力で十分であるからである。ドルはそれでも基軸通貨でいられるのは、ニクソン大統領によって金との兌換が停止されてとはいえ、米国は世界最大の金保有国であり、外貨準備中の金の割合は75.1%に達し、金を支払い準備として用意している。

ドル基軸体制の中心に立つ米国が、対外的な支払い能力を金で担保しているということであり、ドル価値の最終的なアンカーは実質的には金である。

それゆえ、仮にドルの信用が失墜し、ドルが大幅に下落し紙切れになったとしよう。米国の対外純債務は減少することになるから、その面からは米国は困らないが、困るのはドル建て債権を持つドルとのライバル国である。

仮にドルが紙切れになった時、ドルを外貨準備として積み上げたドル競合国の経済はドルが崩壊する事によって、自壊してしまうのである。そして金を大量保有する米国だけが生き延びる、ということである。当然、リセットされた新世界でも米国が覇権を握る構図にある。

仮にドルが崩壊しても強かに生き延びるよう巧みに戦略的に設計した米ドル基軸通貨体制をアメロ新通貨体制へ移行するなど、狂気の沙汰だ。馬鹿でもしない。目を醒ませ浜田和幸!


今後の金価格の話から脱線してしまった。金融専門家からは、最近の金価格の上昇は、将来のインフレを示唆するものとか、金融規制強化策における商品市場間での温度差など指摘されている。

しかしインフレ期待については、将来のインフレが今、織り込まれているのであれば、原油価格や他のコモディティの価格はもっと高騰してもいいが、現状はデフレを警戒したままの状態となっている。インフレ期待ならと金よりも強い原油価格の方が、金以上に上昇して然るべきであるからである。

穀物など特定市場の規制強化から資金が他の市場に流出するのであれば、流出先は別に金市場でなくとも構わないからである。

金は様々な工業原料となる「商品的性質」と「貨幣的性質」をもっている。

工業原料であれば、インフレ期待と金価格は当然連動するが、金が単純に貨幣的価値を強め、他の商品に対し強くなれば、逆説的だがデフレ期待とほぼ連動するのではないだろうか?

教科書的に通貨の価値を計測するのは、為替による相対評価と、通貨の価値である実質金利により価値を計測される。実質金利は、経済の実質成長率ということになる。実質成長とは、生み出されたインフレ分を除く付加価値の増加を意味するから、実質金利が期待インフレ率を上回る時、ドルはコモディティよりも評価が高まることになる。

実質経済成長率がマイナスの時にインフレ期待も有ったものではないが、金融危機発生以降バーナンキFRB議長は、インフレ対応と信用危機対応の難しい08年春の段階で敢然と信用危機対応を選択し、利下げを断行し市場に過剰なドルを供給した結果、ドルの価値が下落し相対評価としての貨幣的価値の金価格が上昇したのである。

マネーはこのような政策的歪みに対して、貨幣的な価値を持ち、且つ金融政策の影響を直接に受けない資産、すなわち金に相対的な価値を認めた結果、NY金が1トロイオンス1000ドルを再び突破したと思われる。

実際、FRBの利上げ不足度(実質金利-FF金利)と、金価格を比べてみると、景気が回復している中で、FRBが利上げに慎重であるために、その歪みを利用して、金市場に裁定利潤の機会を求めた結果ではないかと推察されるので、金価格の上昇=ドルの紙切化と考えるのは短絡適期すぎる。08年3月18日に1000ドルを突破した時点での金価格の価値の意味合いは違うと思う。

米金融政策と金価格が相関性があるとするならば、結局金価格はFRBの金融政策がポイントということになる。

市場が、FRBの利上げが遠いとみる最大の要因は失業率だ8月の失業率は9.7%に上昇し、近い将来において賃金インフレの可能性は極めて低い、少なくとも失業率が低下するまでは、利上げは見送られる可能性が大きいと予想されるだろう。

現在の景気の回復が継続し、失業率に変化がみえれば、インフレ期待や利上げの機運が高まり、市場の利上げ確率は上昇していく。そうなれば、金のドルに対する妙味は縮小することになり、金価格は下落していくものと考えられる。また、金価格が上昇すると財政難に陥った先進国が金を市場に放出する可能性が高くなります。1トロイオンス1000ドルはあくまでも象徴的な意味しかなく、今後の上昇幅は限定的だと思います。

金の価格上昇はドル安が現在が佳境のように間もなくいったんピークをつけることでしょう。

投資は自己責任でお願いします。