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ファーストガンダムを愛する日本人中年男性にとって、非常に楽しい知的エンターテイメント本でした。
217ページを1時間ちょっとで読みきってしまいました。

岡嶋裕史氏は著者紹介によれば
1972(昭和47〕年、東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。富士総合研究所勤務を経て、現在、関東学院大学経済学部准教授。専門は電子政府、Webサーピス、分散ネットワーク、セキュリティマネジメントに関する研究。著書に『構造化するウェブ』(講談社プルーバックス)、『数式を使わないデータマイニング人門』(光文社新書)、『ウチのシステムはなぜ使えない』(光文社新書)
など多数
裏表紙より
失敗する製品か世に出てしまうのはなぜか?エンジニアはもちろん、広く製品開発に携わる人間ならば誰しも直面するその論点を、『機動戦±ガンダム』から学ぶ画期的書籍です。現役エンジニア層にとっては、歴史よりも定石よりもリアリティを感じることができる題材で、「失敗する製品」を生み出さないための叡智を得よう。立てよ!エンジニアよ!

確かにその通りだが、ちょっとおいこら、尾も白いが、そりゃダメでしょう。

ご存知かもしれませんが、エンターテイメント本として、『ウルトラマン研究序説』(1991年)は、若手学者25人による「ウルトラマン」考察本が書かれ、『ウルトラマン』をリアルタイムで視聴した当時30歳前後の世代を中心に40万部(文庫本序文による)のベストセラーとなり、謎本ブームの先駆けとなった本があった。

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ウルトラマンや怪獣が暴れたことによる被害総額・経済波及効果や、ウルトラマン(ハヤタ隊員)の民事上の賠償責任、怪獣の人権、科学特捜隊のコンピュータシステムなど、架空のウルトラマン世界を実在世界と同様に学術的に論じていることから大きな話題となった。その後、空想科学読本シリーズや、エヴァンゲリオンの研究本としてこのジャンルは発展し大成功した。このジャンル私は大ファンである。

面白いがこれは問題ありです。

一番著者である岡嶋准教授が気がついていないようだ。アカデミズムに席を置かれる方が書いてはいけない。ご自身が分析してきた数々の業績を一気に無価値化させてしまう危険がある。また、コンサルティング業の方も同じである。偉そうなご高説がすべて虚構の上に成り立っていることを暴露することと同じだ。プレゼンがいかに空疎な話でしかないか、この本が面白ければ面白いほで、そのことを証明するようなもの、非常に危険な本である。

この本の元ネタのもう一つの源流は名著中公文庫「失敗の本質」
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ではないだろうか?日本軍はなぜ敗戦したかその失敗の分析研究。皆様もご一読しておく本であると思います。

また、上記本の延長線上にある下記本は、技術戦としての側面から第二次世界大戦を分析した。こちらも可能であれば読んで面白い本でございます。

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しかしいずれもノンフィクションであり、実際にあった歴史的事例による技術論的失敗の検証した本である。

ところが、ジオン軍の失敗はSFフィクションとノンフィクションを無節操に合体させてしまった本である。

ガンダムの世界観はリアルで、この本を一読すると、納得してしまうのだが、所詮フィクションなのだ!
それを、今日のエンジニアリングの問題点として、テキスト化するなど言語道断!
アカデミズムの世界の人間が書くべき本ではない。書くときはペンネームを用いるべきである。

また、多くの読者はシャレだと思ってよむであろうが、いないとは思うが、この本が語るサジェスチョンを真に受ける技術者がいたら、その技術者を雇っている企業は不幸だ。

また、だから、経営コンサルタントの話は、机上の空論にすぎないと指摘されても、何等反論が出来ない。

第1章MS06FザクⅡ
<技術においては「寿命の長さ」は必ずしもいいことではない。>

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これは、当に前対戦におけるゼロ戦やメッサーシュミットBf109のことではないだろうか?ザクⅡを当てはめ優秀なマシーンが優秀すぎる場合に起こりうる弊害の説明を試みたのであろうと思う。

あまりにも万能だったザ言に固執したかゆえに、次世代兵器への対応が遅れた。
どんなにマイナーチエンジを繰り返そうとも、旧世代機は旧世代機でしかなかったのである。
一年戦争後半~末期に至っても、公国軍においてMS-06ザクⅡの占めるポジションは大きかつた。後継機が満足に育たなかったことか理由としてあげられるが、ザクⅡの存在が後継機への健全な移行を阻害したとも言える。ザクⅡはその巨大すぎる武勲ゆえに、兵器として劣勢に立たされてからも、何らかの形で開発と生産か進められた。万能機としてのザクⅡの特性も、こうししたマイナーチエンジによく応えたが、大戦後半の視点で見れば結局は前世代の技術であり、度重なる延命措置も戦局を覆すには至らなかった。

万能機が本当に万能であるケースは極めてまれである。万能機はともすれば、工業製品としてクリティカルな要素を犠牲にしている。また、成功体験が長期的な失敗を誘発することはままある。

話は脱線するが、先日NHKの一部売国奴の歴史改竄番組にて、ゼロ戦がいかに欠陥であったか、力説していたが、大笑いだった。ゼロ戦が欠陥なのではなく、当時日本が本気で米国との戦争を準備していなかった結果であろうと思っています。零戦が当時の世界の中で、世界最強の戦闘機であったことは、紛れも無い事実です。米国はゼロ戦の秘密を手に入れる為ありとあらゆる手を使った。中国やアリューシャン列島に不時着した零戦をアメリカが入手し、徹底分析するまではゼロ戦は無敵を誇った。
http://ksa.axisz.jp/Tosho-24TV.htm

地球連邦軍とジオン公国との国力装備の図式は、大東亜戦争開戦当時の日本と米国の力関係と工業力の差を髣髴させる。ザクⅡはゼロ戦に例えられたのであろう。我々がザクに愛着があるのは、どこかゼロ戦的魅力があるからであろう。

開戦当初圧倒的な高性能戦闘能力であったのが、工業力で劣り混乱し、迷走する新型モビルスーツ開発、まるで、大東亜戦争当時の日本(特に海軍)を岡嶋氏は比喩しているのであろう。

第2章MS-06R高機動ザクシリーズ
<技術規格を増やすのは善か悪か>

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戦争という巨大な消費機構の中で、生産ラインを増やすことの罪は大きい。この機体の罪はMS-09Rリック・ドム、MS-14ゲルググなどの次期主カモビルスーツがすてに生産体制に入っていた時期に開発工程が進められていたことにある。公国軍のモビルスーツ開発は生産ラインを増やしすぎ、絶対的な戦力量を低下させてしまった、ことにその主な暇疵(かし)を認めることができる。
一つにはマ・クベ少佐(当時)の統合開発計画により、MSのパーツの流用率が高まつたことが原因であろうが、だとすれぱ統合開発計画は技術者に安易な流用への安心感を与えてしまったデメリツトのほうが大きかったと考えられる。
複数の規格を競争させる戦略は、勢がある規格に定まって以降は、一般的に技術の発展に寄与する。しかし、時代の趨勢がある企画に定まって以降は、そこに収斂(しゅうれん)させるメカニズムが必要である。

岡嶋氏はまだ若く、軍事知識不足は致し方ないであろう。日本軍敗退の大きな原因は規格の乱立不統一も上げられる。例えば38式小銃は6.5mmであるが戦争直前99式小銃7.7mmを採用してしまいその補給に日本軍は苦労したのである。部品のパーツが統一されたメリットは大きい事を考えた時、ジオン公国の戦略は正しかったかもしれない。あくまで架空の物語の敗因分析など、クソの役にもたたない!

第3章MS-07グフ
<進化しすぎた技術は、環境変化で絶滅する。>

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地上戦に特化して戦闘能力高めたグフは、デリケートに戦域を選ぶ機体になつてしまった。地上のなかでも得意とするフィールドは高原地帯や砂漠地帯であり、それ以外の戦域では旧型機であるザクの性能諸元を大幅に上回ることはなかった、とくに、公国軍が地球派遣軍の最終戦略目標として執勘に攻略を企図していたジャブローが湿地帯であつたこととの齟齬(そご)は、ジャブロー会戦において大きな意味を持つた。グフが大量投入された会戦は限られているが、その主要会戦であるジャブローにおいて、グフは目立った戦果をあげることができなかった。
工業製品は環境に適用しきらず、未完の要素を残しておく事が重要である。未熟さとは進化する余地の別名である。

ご教訓のほうは的を得ている。例えば1975年に就役した米海軍のスプールアンス級駆逐艦は当初排水量7800tの排水量で、3000tクラスの兵器と同等の武器しか搭載せず、なんて無駄な駆逐艦であろうと思ったものだったが、イージスシステム、トマホーク巡航ミサイル・VLS次々に新しい機能兵器を搭載していき、現在の米海軍巡洋艦タイコンデロガ級イージスミサイル巡洋艦9590tへと進化したが、基本構造は変化がない。確かにスプールアンス級→キッド級→タイコンデロガ級と進化していった図式はザクシリーズにも当てはまるのである。
その流れで考えると、MS-07グフを非難する著者の意図はまるで不明である。