湊かなえ「告白」

http://www.futabasha.co.jp/introduction/2008/kokuhaku/honya5.gif
http://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/pr/kokuhaku/

http://www.futabasha.co.jp/introduction/2008/kokuhaku/honya5.gif
http://www.futabasha.co.jp/tachiyomi/pr/kokuhaku/
本屋さん大賞の本は、本当に面白い本が取る。今回改めてそう思った次第です。
4月に本屋さん大賞の発表があり、出遅れて図書館に貸し出し予約をしたら1500番台でした。・・・天文学的番号、待つこと半年、それでも500番台まで待ち、この調子だと年明け来春かと諦めかけていましたが・・・ついに我慢できなくなった妻が本書を買いましたので、読むことができました。
一つのフィクションを精緻な筆で書き上げる力量に大感激してしまいました。絶賛です!
一つのフィクションを精緻な筆で書き上げる力量に大感激してしまいました。絶賛です!
今年の本屋さん大賞本が新人なのでリスクが高く図書館で済まそうとした私が愚かでした。あまりの面白さに引き込まれ268ページを1時間半で一気に読んでしまいました!
私は、小説家小川洋子が好きだ、博士の愛した数式は本屋さん大賞を取る前に読み、聞きなれない賞を取ったらしいと知った時は、本屋さんがあの本を一押しするのはむしろ当然だ程度にしか思わなかった。
爾来本屋さん大賞受賞作を読むようになったが、本屋さん大賞受賞作は、外れが少ない。
芥川賞や直木賞も素晴らしい賞だが、いまひとつ世界に入りきれないで途中で挫折する作品も少なくない。
今年の本屋さん大賞は、新人デビュー作と聞いて、期待していなかった為、こんな素晴らしい作品に出会えるのが、半年遅てしまいました。新人離れして凄い!作品でした。またまた好きな作家が増えてしまった。
本書の内容は、保育園児のわが子を、水死事故でなくしてしまった、シングルマザーの中学教師が、娘の死は事故ではなく、自分のクラスの教え子によって意図的に殺害され驚くべき事故の真相を知ってしまった・・・そしてその恐るべき復讐と事件は新たな悲劇をもたらす。
第一章聖職者
において、わが子を亡くした女性教師が、終業式の日のホームルームで、その真相をクラス全員に語ったのでした。
において、わが子を亡くした女性教師が、終業式の日のホームルームで、その真相をクラス全員に語ったのでした。
私が真相を知ったにもかかわらず、AもBも普通に学校に来ています。学校に警察が来た気配もありません。 どうしてか。 私は、悦惚の表情を浮かべながらすべてを告白し終えたAに言いました。それでもこれは事故です。 決して、あなたの望む猟奇的殺人事件なんかにはしません。 すべてを告白し安堵のため息をつくBと、我が子の告白に言葉を失い呆然としている母親に言いました。 母親としてはAもBも殺してやりたい思いです。 しかし私は教師でもあります。 警察に真相を話し、然るべき処罰を受けさせるのは大人としての義務ですが、教師には子供たちを守る義務があります。警察が事故と判断したのなら、今さらそれを蒸し返すつもりはありません。なかなか、聖職者っぽい発一言だと思いませんか? 仕事から帰り事情を知ったBの父親から電話がかかり、賠償金の話をいただきましたが、私はそれを断りました。 私がお金を受け取れば、Bにとってはそれで事件が終わったことになってしまいます。私はBに、自分の犯した罪を忘れず正しい道を歩んでいってほしいのです。Bが罪の重さに耐えきれなくなったときには、どうかお父様方はBを温かく見守り、支えてあげてください。これも、なかなかいいですね。 Aがまた殺人を犯したらどうするんだ? 冷静ですね、ゲーム脳というのでしょうか?HIVの話より殺人事件の話の方が落ち着いて聞けるなんて、私には理解しがたいことです。ただ、Aがまた殺人をというのには誤りがあります。 竹中さんが家に来てくださった晩、私は学校に来てポシェットを分解し、もう一度回線をつなぎ直し電圧を測りました。細かい数値は省いて結論だけ言いますと、心臓を患っている人ならともかく、たとえ四歳の子供でも、あれで心臓を停めることはできません。試しに直接触ってみましたが、以前、外れかけの洗濯機のコードを濡れた手で触って感電してしまったときの方がよっぽどひどかった、という程度でした。 愛美は気を失っていただけだったと思います。先程も言いましたが、愛美の死因は『水死」です。事件の翌日、Aは愛美がプールの中から発見されたことを知り「何で余計なことをしたんだ」とBに詰め寄りました。言葉の意図はまったく違いますが、私も同じことをBに言いたかった。助けを呼びに来てくれなくてもいい、せめて、そのまま逃げてくれればよかったのに……。 そうすれば、愛美は生きていたはずです。 * 私は聖職者になりたいなどと思っていません。 警察に真相を話さなかったのは、AとBの処罰を法に委ねたくなかったからです。 殺意はあつたけれど直接手を下したわけではないA。殺意はなかったけれど直接手を下すことになったB。 警察につきだしたとしても、二人とも施設に入るどころか、保護観察処分、事実上の無罪放免になりかねません。 Aを感電死させてやろうかと思いました。Bを水死させてやろうかと思いました。しかしそんなことをしても愛美は戻ってきません。 そして二人が自らの罪を悔い改めることもできません。私は二人に、命の重さ、大切さを知ってほしい。それを知った上で、自分の犯した罪の重さを知り、それを背負って生きてほしい。では、どうすればいいのか。まさに、そういう生き方をしている人がいるではありませんか。 (略) 牛乳、全部飲み干しているみたいですが、違和感、例えば鉄臭いなとか、変な味がするなとか、感じませんでしたか?中身の見えないパックの牛乳だからできたことなのですが、私は二人の牛乳に今朝採取したての血液を混入しました。 私の血液ではありません。二人がいい子になるように、そんな願いをこめて世直しやんちゃ先生、桜宮正義先生の爪の垢ならぬ血液(HIV感染者)をこっそりいただいてきました。 どうやら、ほとんどの人は気付いているようですね。 効果が出ているかすぐにはわかりません。ぜひ二、三ヶ月後、血液検査を受けてみてください。出ていれば、通常五年から十年と言われていますが、そのあいだじっくりと命の重さと大切さを実感してみてください。二人が白分の犯した罪の重さを知り、愛美に対し心から申し訳なかったと反省し謝罪してくれることを、切に望みます。そしてクラス替えはありませんので、みんなは決して二人を除外しようとせず温かい目で見守ってあげてください。 死にたい、などと軽々しくメールを送る人はこのクラスにはもういなくなるのではないでしょうか。私はこの先どのように生きていくか、まだ決めていません。もしかすると自分で選択する余地などなくなるかもしれませんね。そうなると猶予は効果が現れるまででしょうか。「効果が出なかったら?」そうですね、交通事故にはくれぐれもお気をつけくださいとでも申し上げておきましょう。 この春休み、私は事件後一緒に暮らし始めた結婚するはずだった人、愛美の父親だった人の最期の日まで二人で穏やかに過ごしていきたいと思っています。みんなも有意義な春休みを過ごしてくださいね。一年間ありがとう。これで、終わります。
第二章は殉教者
先生が去ったあとのクラスのことを、Bこと下村直樹の幼馴染で後にAこと渡辺修哉に思いを寄せる委員長の北原美月さんに、語らせる形式で描いた。
先生が去ったあとのクラスのことを、Bこと下村直樹の幼馴染で後にAこと渡辺修哉に思いを寄せる委員長の北原美月さんに、語らせる形式で描いた。
悠子先生が去った後後任お、馬鹿な熱血教師という自己愛におぼれる新米教師寺田良輝がかき回すの殺伐としたクラス、そして下村直の不登校、渡辺修哉へのイジメ、巻き込まれる北原美月さん。
なぜ殉教者なのかは、第二章を読めばわかりますが、五章六章でも北原美月は殉教者となった緻密な伏せんです。
第三章は慈愛者
下村直樹は熱血教師に不登校を追い詰められ、母親を殺してしまった。その姉の視点による、弟が母を殺したいきさつ、真相が母親の日記によって語られる。母が弟を殺したのは正当防衛だった事実がわかる。
下村直樹の母親が息子に対する過剰な慈愛も、今事件の遠因であったことを、圧倒的筆力で下村直樹の生い立ち家庭環境を読者に開示している。
下村直樹は熱血教師に不登校を追い詰められ、母親を殺してしまった。その姉の視点による、弟が母を殺したいきさつ、真相が母親の日記によって語られる。母が弟を殺したのは正当防衛だった事実がわかる。
下村直樹の母親が息子に対する過剰な慈愛も、今事件の遠因であったことを、圧倒的筆力で下村直樹の生い立ち家庭環境を読者に開示している。
しかし、こういった家庭はなにも下村直樹の家庭、母親に限ったことではないことを読者たちは理解している。この「告白」が単なるフィクションを超え、我々の現実である日常に深く迫ってくる迫力に、皆この本に引き込まれるのだろうと思う。
第四章求道者
犯人の下村直樹の視点で語られる、事件の真相。母親を殺した経緯がこれまた事件の本質はこうなのか?と引き込まれれうように書きこまれている。この安易なかわいそうな生き物は、読者(私)自身の代弁でもある。人間は誰でも気高く崇高に生きていると錯覚している。人間の本質には醜くエゴイスティックな感情というものが内在していることになかかなか気がつかないものである。この愚かな少年を通し、私(読者)は己のエゴの存在を確認してしまった。求道者とは己に向き合う、そんな著者のメッセージであろうか?
犯人の下村直樹の視点で語られる、事件の真相。母親を殺した経緯がこれまた事件の本質はこうなのか?と引き込まれれうように書きこまれている。この安易なかわいそうな生き物は、読者(私)自身の代弁でもある。人間は誰でも気高く崇高に生きていると錯覚している。人間の本質には醜くエゴイスティックな感情というものが内在していることになかかなか気がつかないものである。この愚かな少年を通し、私(読者)は己のエゴの存在を確認してしまった。求道者とは己に向き合う、そんな著者のメッセージであろうか?
第五章信奉者
犯人の渡辺直哉の生い立ちそして、彼が語る事件の真相、そしてその後の驚くべき展開が語られているが、ここで私が書いてしまったら、水戸黄門が8:10に印籠を出してしまうもので、面白さが半減してしまう。ので申し訳ないが何も示唆しない。ただフロイトの心理学が露骨な形で具現化した人間の生い立ちと心のうちである。
信奉者とはフロイトの信奉者はたまた、母親の愛の信奉者であったろうか。
犯人の渡辺直哉の生い立ちそして、彼が語る事件の真相、そしてその後の驚くべき展開が語られているが、ここで私が書いてしまったら、水戸黄門が8:10に印籠を出してしまうもので、面白さが半減してしまう。ので申し訳ないが何も示唆しない。ただフロイトの心理学が露骨な形で具現化した人間の生い立ちと心のうちである。
信奉者とはフロイトの信奉者はたまた、母親の愛の信奉者であったろうか。
第六章伝道者
さらに復習の鬼となった母親が、最後に渡辺直哉に下した制裁と、その後の事件を氷解させるフィナーレだ!
この伝道者にこめられた著者の意味は、少年犯罪、そして人間のエゴを抉り出し、読者のエゴと偽善を認識させたうえで、魂を磨かせる伝道者をわが子を亡くした女性教師悠子に語らせたのかもしれない。
さらに復習の鬼となった母親が、最後に渡辺直哉に下した制裁と、その後の事件を氷解させるフィナーレだ!
この伝道者にこめられた著者の意味は、少年犯罪、そして人間のエゴを抉り出し、読者のエゴと偽善を認識させたうえで、魂を磨かせる伝道者をわが子を亡くした女性教師悠子に語らせたのかもしれない。
本書は、関係者すべてのリアルな家庭生活、それぞれの視点で語られる事件、そして次ぐ次と明かされていく真相。一つの事件を各視点で語りながら、結果事件全体を読者は俯瞰出来る作品を作り上げた。
それぞれどのように事件を捉え、事件の真相とは、それぞれの視点によって画一ではなく、どんな事件でも真実は一つではないかもしれないことがよく解る。
ああ、すごい書き手が出現した!
今頃になって絶賛するのも恥ずかしいが、とにかく私は絶賛します。
このフィクションの世界は、実は21世紀初頭日本全国各地で繰り広げられる、家族殺人や通り魔、殺人事件の多くの悲劇は、一つ一つ単純な理由ではないのだろう。
加害者、加害者家族、被害者家族のそれぞれの思いがあり、同じ事件も見る角度でまるで違うこともあることを示唆させます。
この事件で真っ先に思い出されるのが、神戸連続児童殺傷事件少年A,佐世保小6女児同級生殺害事件、光市母子殺害事件・・目を覆いたくなるような事件の影には被害者加害者の家族が居て関係者が、誰にも話したくない思いがあるはずである。
そして、リンゼイさん殺害事件の市橋容疑者が逮捕された、リンゼイさんの家族、市橋容疑者の母、それぞれは、「告白」で描写されたような家族の苦悩かかえているのだろう・・・

コメント