
『偽善エネルギー 武田邦彦著
(幻冬舎新書)』を読む
武田邦彦氏略歴
一九四三年東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。工学博士。専攻は資源材料工学。名古屋大学大学院教授を経て、現在、中部大学総合工学研究所教授。多摩美術大学非常勤講師を兼任。名古屋市経営アドバイザー、内閣府原子カ委員会および安全委員会専門委員。文部科学省科学技術審則会専門委員。著書に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか1,2,3」(洋泉社)、『偽善エコロジー』(幻冬舎新書)、『大麻ヒステリー』(光文社新書)などがある。『エコロジー幻想』(青春出版社)の一節は、高等学校の国語教科書『新編現代文』(第一学習社)に収録されている。
目から鱗が落ちまくり、視力が24.0ぐらいになった「偽善エコロジー」同様非常に面白い本であった。
【裏表紙より】
日本人がどんなに節約しても、世界各国の大量消費は止まらず、石油は枯渇する。石油頼みのあらゆる分野工業、農業、漁業、医薬品は人打撃を受けること必至。だが今、将来に備えてやるべきは省エネではない。代替資源を探し、技術革新をすることだ。
では何が次世代エネルギーになるのか? 太陽電池や風力か? 安全性が疑問視される原子力か? 政治と利権、各国のエゴで操作さ れた嘘の情報を看破し、資源なき日本の行く末を模索する
チェルノブイリ原発は原爆製造用の原発で、日本が採用している軽水炉とは根本的に違う。マスコミはそんな基本的な情報を分り易く伝えていない!
日本の原発「軽水炉」は安全である
p53~55
p53~55
では日本のような「安全第この国で使われている原発はどうかといえば、安心していいでしょう。欠陥原発などはもちろんなく、当然、きちんとしたものになっています。
原発は、爆発しそうになると、温度が上がってきます。普通は棒を入れますが、入らないときには反応が進んで温度が上がります。そのときに、「原子炉が自分自身で爆発を止める」と いう優れものがあります。一つだけ、その炉の名前を覚えておきましょう。それを「軽水炉」といいます。あるとき、普通の水道水や川の水と同じ水一軽水)を使えぱ、爆発しそうになっ たら水が自動的に反応を止めるということに気がついたのです。
原子炉を水に浸しておくと、爆発が少し起こると温度が上がり、温度が上がると爆発を続ける中性子を吸収して自動的に鎮火します。そのとき、少しの放射線は出ますし、運転は異常になりますが、それでも原子炉は爆発しません。
つまり、異常が起こると、原発の運転には問題が起こりますが、原発の外にはまったく事故の影響はないということです。普通の水が、実は原発の自動安全装置だったのです。
日本の原発はすべてこのタイプです。ですから、日本では50年近くも原発を運転しているのに、小火(ボヤ)とか、人が階段から滑って落ちてケガをしたということが新聞に載ることはあっても、爆発を起こしたことはありません。日本の原発で、人が死んだことがないというのは、エネルギー産業としては実は驚くべきことです。(略)
よく、原発の運転に失敗すると、「メルトダウン」、つまり真っ赤に原子炉が燃え上がり、コンクリートが融け、そのままズルズルと地球に埋まっていき、ついには、地球の反対側まで沈んでいって、その間に大惨事が起こる……などといった話があります。しかしこんなものはSF物語で、現実とはかけ離れています。真面目に理解しなけれぱならない原発の話に、人の恐怖をあおる作り話を持ち込んではいけません。思想や表現は自由ですが、事実を判断する際に、ウソを基にしては何も進みません。
実は「安全なはずの原子炉」でも、かつて一度だけ事故がありました。古い話ですから若い人は知らないと思いますが、一九七九年のアメリカのスリーマイル島にある発電所で事故があり、放射線が少し漏れました。この事故は、日本のように原子炉の運転をしっかり監視して運転していたのではなく、いいかげんに運転していたことから起こりました。微量の放射性物質が、原発の外に出ましたが、住民や環境への影響はありませんでした。
この事故から歴史の教えるところを偏見なく素直に学べば、「原発の安全性は完壁だけれど、若干のことは起こる。しかし環境や人体には影響がない」ということになります。
よく、「スリーマイルのようなことが起こったから原発は危ない」と言われますが、それは正確ではありません。「スリーマイルのようにひどいことが起こっても、環境にはまったく影響がなかった」というのが正しいのです。
反対する人の不安な気持ちはわかりますが、事実を歪曲してはいけません。
しかし、地震に対しては脆弱であることも認識しなくてはならないとのことです。
「太陽電池は無限の光を値うから環境にいい」というトリック
p74~77
p74~77
ところで、計算上はこのようになりますが、「現在の太陽電池は実用化できるか」と考え直すと、これははっきり実現不可能と言えます。なぜ無理なのかと言えば、「太陽電池は、税金で補助すると売れるけれど、補助が止まると売れない」という現実が、太陽電池が有用でないことをはっきり証明しているからです。そのことを簡単にまとめます。
まず、「太陽電池は、タダで無限な太陽の光を使うから環境にいい」という話を聞きますが、これはそもそもの言い方が問違っています。「装置がなくても、光を電気に換えることができれば」という前提が抜けているのです。確かに、太陽の光はタダで無限ですが、光だけなら今でもあります。太古の昔から太陽は光っているのですから、それは当然なのですが、問題は、「電気に換えることができるかどうか」であって、「タダで無隈無限」ということは、すでに実施済みです。
太陽の光を電気に換えるためには、シリコンの変換素子、そこからのリード線、蓄電池、直流を交流に換える装置など、様々な装備が必要です。そんなこともあって、現在のところは、「太陽電池で作る電気で、次の太陽電池の装置を作ることができない」という性能にとどまっています。どういうことかというと、ある太陽電池が、寿命がくるまでに作ることができる電気の量は決まっています。そして今は、石油があるので、石油を使ってシリコンや変圧器などを作れば問題ありませんが、石油がなくなれば、太陽電池で生み出した電気ですべてを作らなければなりません。現段階ではそれが無理だということです。
つまり、総合収支がマイナスなのですから、太陽電池は「エネルギー発生装置」ではなく、今は「エネルギー消耗装置」と一言えるのです。
このように言うと、自然エネルギー派から次のような反論を受けます。
「政府の計算によると、太陽電池を作るために使う電気は、2年ほどで取り返すことができる」というものです。政府の御用研究所の報告書を見てみますと、確かに「太陽電池を組み立てるのに使った電気を2年で回収できる」と書いてあります。2年なら立派なものです。その太陽電池を20年使うとすると、残りの18年は純粋に電気を起こしているわけですから、それが本当なら万々歳です。
それならなぜ、そんなに性能がいいのに、税金を出したり、将来太陽電池を設置する家が増えるとコストがかさむので、どの家庭の電気代も上がる、などという話が聞こえてくるのでしょうか。実はその計算には何重ものトリックがあるのです。
第一のトリックは、「太陽電池を組み立てるときの電気だけを計算する」ということです。
「シリコンや部材として使う材料を製造するときの電気」はここに含まれていません。
そして第二のトリックは、「電気だけの収支を取っていて、使用する石油や、材料を作るときや輸送するときのエネルギーは計算していない」ことにあります。
風力は少しは役に立ちそうだが、狭い日本では環境破壊になる場合がある。風力水力は日本の電力のほんの数%を担うのが精一杯、バイオも1%程度、地熱潮力は魅力的だがまだ原理的に難しい課題がある。
事実に基づかない温暖化間題
イメージ先行の温暖化報道を再整理
p130~135
イメージ先行の温暖化報道を再整理
p130~135
さて、日本の将来をエネルギーという点から考えるには、地球温暖化問題との関係も整理しておかなければなりません。しかし、考える前に難しい問題があります。それは、エネルギー全体の話と同じように、情報が錯綜していて、「何が本当か」がわからない状態だからです。
【地球温暖化についてのIPCCなどの報告とNHKの報道比較】
●南極は温暖化しているか
NHK一南極は温暖化している
IPCC一南極の気温は変わっていない
日本人の多くが「日本が温暖化しているから、南極も温暖化しているに違いない」と錯覚
していますが、南極の気温の変化がないのは、IPCCもNASA(アメリカ航空宇宙局)も認めています。
●南極の氷は減っているか
NHK一減つている
IPCC一変わっていない
日本人の多くが「南極の氷は融けている」という報道を信用していますが、南極の気温が変わっていないので、氷も同じです。気温の変化がないのに、氷の量が大きく変わったら、その方が大変です。●将来、南極が温暖化すると氷は増えるか、減るか
NHK一減る
IPCC一増える
温暖化すると南極大陸の周囲の海から蒸発する水分が多くなり、蒸発した量は必ず全部地上に落ちるため、雪が増えて氷は増えるとIPCCは報告しています。
●北極の氷が融けると海水面が上がるか
NHK一上がる
IPCC一変わらない
北極の氷のほとんどは北極海の海に浮いた氷で、アルキメデスの原理により、融けても融けなくても海水面には影響がありません。
●現在、北極の氷は減っているか
NHK一歴史的にも記録的にも減っている
IPCC一1978年からの短期間ではやや減っている
IARCとは、アメリカの国際北極圏研究センターで国際的な標準になっています。北極の氷はわずかに減っているが変動幅の中、と解釈されています。
●海水面は上がっているか
NHK一すでに海面が1m50c㎜ほど上昇している
IPCC一これまで7㎝上昇、100年後に40㎝程度上昇
ツバル気象庁一15㎝下がっている
ツバルは、第二次世界大戦のときにアメリカ軍が作った飛行場が崩れて浸水していて、海水面が上がって浸水しているのではありません。もともと、温暖化しても、北極も南極の氷も海水面には関係がないので、広い太平洋や大西洋の海水面を上げるだけの水源は、地球上にはありません。熱膨張などで少し上がるだけです。
温暖化については、北極と南極の氷のことだけでも、これほど事実と違うことが報道されています。多くの日本人は、IPCCの報告(日本語訳あり)もあまり読んでいないし、まして英語で書かれたIARCの報告書など読まないので、NHKの報道を信じて、あらぬ方向に進んでいることがわかります。
●気温の上昇の予測
NHK一100年後に世界の気温は「最悪」6・4℃上がる
IPCC一100年後に「平均的に」2・7℃上がる
世界の主要放送は、平均値か、あるいは1・4℃58℃という幅で報道しましたが、NHKは最悪値だけを報道したため、日本人の多くが、100年でものすごく温度が上がると錯覚しました。
NHKの報道は、あまりに酷い。最近インターネットが普及するようになったとはいえ、英文のIARCの報告書を一般人が読む機会は少ない。武田教授のような専門家が啓蒙することにより、気候環境問題に関心を持つ一般の日本人が注意を払って読むようになると思います。そうすれば、このような報道が少なくなることでしょう。
この一覧表は、いかに我々が情報を操作されてきたか気づかされるとともに、与えられた情報に対しても、吟味する癖を我々は持たねばならないことを示しております。皆さんもネット情報や統計の数字というものは一旦は疑う癖を持つべきだと私は思います。
この「偽善エネルギー」はエネルギー問題に興味がある方にはお勧めの一冊です。

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