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ナイ教授とアーミテージ氏は日本の友人であり信頼に足る人物ではあるが、基本的には米国の国益がファーストプライオリティーである。
第4章 天皇・原爆・沖縄返還の章を読むと如実にその事実に突き当たる。
我々ととしたら、そこを対立点とはしてはいけないが、いかに親日派を標榜されても言うべきことは言えるのが友人である。
 
ナイ教授は靖国神社の遊就館の歴史観について批判をし、こう主張しています。
米国は1930年台日本封じ込め作戦は行っていなかった。日本を封じ込めるよう意識したのは日独伊三国同盟が成立した1940年以降だと説明する。
 
1937年パナイ号事件 や、1939年の日米通商航海条約の廃棄は、米国による対日制裁ではなかったのか?、ナイ教授やアーミテージ氏は理解したうえで確信犯的に自国の国益を代表し発言しているのだ・・・
 
 
p158-161
アーミテージ: 歴史観にはいくつもの選択肢があるものでしょう。しかし、私が信じる事実はこういうものです。つまり、日本は第一次世界大戦では連合国側に入り、ドイツによる中国での権益などを確保するに至った。当時、まだ英国が世界ナンバー1の座にあり、さらにアジアで急速に力をつける日本があった。だから、我々はロンドン軍縮会議を招集して、日米英三カ国(仏、伊も参加)で話し合いに乗り出したのです。

当時、米国は日本の拡張政策を封じ込めたかったのでしょうか。答えはもちろん、イエスです。しかし、同時に英国の拡張政策も米国は封じ込めたかった。では、なぜ米国と英国は日本よりも軍艦の数で大きな量を確保できたのでしょうか?答えは日本の海軍は太平洋という一つの大海を相手にしているのに対して、米英両国は太平洋と大西洋という二つの大海を相手にしなければならなかったからです。

もうひとつ、言えるのは当時の経済状況です。一九一七年から二五、二六、二七年ぐらいにかけて、経済情勢は非常に悪かった。日本には米英両国と軍拡競争などする余裕はなかったのではないでしようか。もちろん、我々としては日本の拡張政策に歯止めをかけたかったのですが、日本にとっても自主的に規制するのは理にかなったものだったと思います。一九二七年から二八年にかけて、米国は日本における大正デモクラシーの動きも見ていました。それは明治維新よりもはるかに秩序立ったものだったと思います。別の言い方をすれば、明治維新はまだ基盤が弱かつた。我々は「弱さ」を恐れるのです。とはいえ、当時・米国が潜在的な対戦相手と想定し、戦争計画を策定していた相手は日本ではなく、英国でしたが・…-。

春原:今のお二人の話を聞いて、二つのことを思い浮かべました。第一に現在の中国の方向性です。かつての日本が辿った道を今の中国が歩んでいるような気がしてならない時がある。

もうひとつは、やや「陰謀史観的」なものですが、真珠湾攻撃当時、ルーズベルト大統領はその事実を暗号解読などで知っていてなお、知らない振りをして日本にハワイを攻撃させて、対日開戦の口実を作った、と。いわゆる「リメンバー・パール・ハーバー」という言葉で米国民の戦意を煽ったのは米政府の巧みな戦略だった、という見方が日本にはいまだに根強いのです。
 
ナイ:その点については、ロベルタ・ウールステッターの手による慎重な研究結果が出ていますが、確かに日本が対米攻撃を準備しているという事実を何人かの米国人は知っていて、ルーズベルトがそれ(対米攻撃)が起こらないかのようにしていた、という見方もできます。ただ、別の言い方をすれば、いくつかのインテリジェンスが手に入っていたとしても、別の問題に従事している時、それらの情報から全体図をどれほど理解できるのだろうか、という言い方もできます。そして、ロベルタの研究成果はその疑問に対して、「ノー」と答えています。
 
春原:つまりルーズベルト大統領は真珠湾攻撃の可能性を意図的に無視していたのではなく、恐らくホワイトハウスという政府中枢にまで十分な情報が届かなかった、と?
 
ナイ:そうです。
 
春原:十年近くワシントンに滞在し、ジャーナリストとしてホワイトハウスを担当した結果わかったのは、意外なほど重要な情報なり、情勢分析が大統領の手元には届いていないということでした。しかし、それが現実なのだとも知りました。ただ、多くの日本人は米中央情報局(CIA)の前身である米戦略情報局(OSS)が多くの情報を入手していて、それをホワイトハウスが知らないはずはないと思っています。
 
ナイ:いや、実際にはそうではなかった。現実はその通りなのです。
陰謀論の人達の最も愚かな点は、猜疑心を抱く組織が、神の如く正しい選択をして、一つも陰謀達成の為間違いなど犯さない、完璧な組織であると思い込んでいる点だと常々思っています。
 
人間が集まって、集団が形成されると、集団同士他の集団に対し猜疑心を抱いたり、戦いを含む利害対立が起こるのは太古の昔から21世紀の現代まで繰り返されてきました。
 
でも、いつの時代もいずれの集団も完璧ではない。陰謀はあったかもしれないが完璧ではない・・・だから歴史は面白い。
 
陰謀論の人達はそういった人間ドラマなどなく、勝者側が陰謀を完璧にこなしたと思い込んで歴史を断定しています。陰謀論の人達が決め込む完璧な人達による完璧な計画・・・ああなんとツマラナイ人達だろう。
p182-185
原爆投下の「正義」とは?

春原:ドイツと日本の違いというと原爆投下の問題にも触れざるをえません。日本では当時、あるいは今も「日本にだけ原爆を投下して、ドイツにしなかったのはドイツが白人国家だからだ」という、言葉に出せない感情論があります。

ナイ:原爆はあの年の五月までに投下準備が済んでいました。そして、最初の実験が七月。
さらにドイツは原爆投下の是非が検討される前に降伏していました。そうした事実を踏まえ、当時の状況を振り返ってみると、あの爆弾が落とされていなかったら、何と素晴らしいことだっただろうという思いを持ちます。言い換えれぱ、あの時、核兵器というものに十分な理解が浸透していなかった。核を人問に使用することのタブー感はその後から湧いてきたのです。あの時、人々は原爆を単に「より大きな爆発力を持つ兵器」としか見ていなかったのです。

春原:「より大きな爆発力を持つ兵器」ですか……。

ナイ:そうです。たとえぱ、東京大空襲では十万人が犠牲になり、ドイツ・ドレスデンでの空爆でもやはり十三万人が命を失いました。言いたいのは、そこには白人も黄色人種もなかったのです。そのいずれも大変、悲惨な爆撃作戦でした。戦争における大義、あるいは「正しい戦争」が持つ限界が忘れ去られた戦争において、悲惨なことが多々起こるのは事実です。

春原:ハーバード大学でのあなたの同僚であるマイケル・サンデル教授流に言えぱ、「正義はどこにあるのか」と言いたくなりますね。

ナイ:そうですね。だから、そうした文脈で言えば、東京大空襲もドレスデン爆撃も広島・長崎への原爆投下も「大規模な爆弾」という風に捉えられていた。誤解を恐れずに言えば、だからもし、原爆が投下されていなかったら、(当時の戦争状況に鑑みて)それは驚くべきことでもあったと思います。

春原:論理的にはそうかもしれませんが、多くの日本人、特に原爆の犠牲になった人たちは、なかなかそうは受け止められないのもおわかりいただけると思います。

ナイ:よくわかります。これは多くの歴史的事実に関して共通して言えることですが、後で冷静に振り返ってみるとはっきりと見えることがあります。今、核兵盤に対する我々の考え方、そしてそれが持つタブー性を踏まえてみれば、「どうして、あんなものが使えたのか」と人は言うでしょう。しかし、東京やドレスデンに大爆撃作戦を敢行した後、「より大きな爆発力を持つ兵器」を突然手にしたら、どうでしょう?そして、大統領の側近たちは皆、こう口を揃えるのです。「日本の本土上陸作戦には六十万人もの犠牲者が出る。それには米兵だけでなく、日本の民間人も含まれる」と。

春原:それこそ、サンデル教授が批判する「功利主義」の極致ですね。
 
ナイ:全く、その通りです。しかし、そうした文脈で見れぱ、(核使用に関する)今の我々の考え方と当時の考え方は違っていたこともわかるはずです。
 
アーミテージ:「日本が白人国家ではないからだ」という心情を埋解はしますが、その見方には与しません。一九四四年の十、一月前後、ドイツ軍による猛反撃で有名なバルジの戦いに我々は従事していましたが、欧州戦線の先はもう見えていました。そして、翌四五年の一月、欧州での対ドイツ戦はもう終わろうとしていたのです。
 
にもかかわらず、ソ連は我々の反対側から侵攻を始めていました。
一方、太平洋戦線に目を向けると、この翌年の三月、我々は沖縄本島で旧日本軍と血で血を洗う戦いを続けていたのです。これはもう信じられないほどでした。単に死傷者の数だけではなく、日本兵の自ら犠牲になることを厭わない戦い方や、民間人に対する残虐行為に我々はただ、圧倒されたのです。
 
春原:しかも当時の日本軍部はこの後、「本土決戦」の準備もしていた……。
アーミテージ:そうです。沖縄だけでもこの状況なのに。そうしたことがトルーマン(大統領)の考えに大きな影響を与えました。そこには「黄色人種」うんぬんの要素などありません。
 
さらに言えば、日本では(ドイツのように)米ソ両国による挟撃作戦もなかった。まあ、ソ連は終戦段階で突然、対日参戦を宣言するのですが……。
 
春原:それがいまだに日本人による対ロ不信の根っこになっています。
 
アーミテージ:それも当然のことでしょう。いずれにせよ、我々にとって欧州戦線と太平洋戦線は大きな違いがあった。そして、あの沖縄での激戦です。まったく信じられないほどの惨状といったらありません!
ドイツに投下しなかったのは単に原爆が間に合わなかっただけかもしれません。
 
沖縄と硫黄島そしてサイパンはじめ太平洋の島々での激戦は米国に一種のパニックを引き起こし、原爆投下を決意させたのは事実だと思いますであろう。米国は心底日本が怖いのだ。
 
 
広島に投下された原爆は日本に終戦を決意させた要素となったのは事実かもしれません。
 
ただし、長崎に投下した原爆は日本が既にポツダム宣言を受諾すると把握しているにも関わらず投下した。これは犯罪行為に等しい。ゆえに米国は日本の国防の為に尽してもらうのは当然だと考えれば、反米の方々は納得できるかもしれませんね。 
 
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