[東京 29日 ロイター] 8月第1週のドル/円は、難航する米債務上限引き上げ交渉や米国債格下げリスク、米7月雇用統計というドル安ショックを誘発しかねない材料が目白押しだ。

短期筋も継続してドル・ショートを持ち続けるとみられ、ドルが3月につけた過去最安値を更新する可能性も視野に入ってきた。 

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<ドル・ショック>

「8月第1週はドルにネガティブ・ショックを与えうる材料が目白押しで、ちょっとしたショックでドル/円が最安値を更新する場面がありうる」と野村証券・金融市場調査部シニア為替ストラテジストの池田雄之輔氏は指摘する。「債務上限引き上げ交渉は8月2日には妥結できず、交渉の妥結は週末までずれ込むと見ている。8月第1週のどこかで米国格下げを実施する可能性があり、5日の米雇用統計もショックになりうる」というのが同氏の見方だ。 

市場では、債務上限引き上げ協議が決着した場合には、ドルが反発すると見られているが、反発の持続性については意見が分かれている。岡三証券外国債券グループのグループ長、相馬勉氏は「目先は(短期筋が)相当ショートになっているので、合意されれば若干ドルが戻るかもしれないが、ドル高トレンドに回帰することはないだろう」との予想。同氏は「合意は財政緊縮を意味し、米景気の足を引っ張ることになるだろう。QE3の話も現実味を帯びるとみている」とし、「ドル安と、流動性の過剰供給による資産価格を下支えで時間稼ぎをして、景気の自律回復をまつというのがアメリカのスタンスだろう」と話す。 

これに対し、伊藤忠商事のチーフエコノミスト中島精也氏は「米債務上限引き上げ交渉がもつれ込んでいるが、ドル/円は、この問題で売られるべき水準まで売られた。過去最安値が近づいてはいるが、更新するとすれば米債がデフォルト(債務不履行)になった場合だ」と指摘。「債務上限引き上げ交渉は、大きな政府を志向する民主党と小さな政府を目指す共和党の存在意義をかけた協議だけに、ともに譲歩はしにくい。しかし、週末の国民世論の動向を確認したうえで、どちらかが歩み寄るのだろう」との見方を示した。

米連邦債務上限引き上げ問題で、野党共和党のベイナー下院議長が提出した案は、同党内の反対を崩せず、米下院は採決を見送った。これについて共和党は29日午前10時(日本時間午後11時)に緊急会合を開くことを決めた。

「交渉が合意すれば、ドルはいったん80円近辺まで買い戻されるだろう。合意内容を精査し、米債の格下げの可能性をはかるのは、それからだ」と中島氏は指摘する。 

<日本政府はドル買い介入準備か>

野田佳彦財務相は29日午前の衆議院財務金融委員会で、為替円高について「一方的で偏った動きであり、注視する」としたうえで、「過度な変動があれば断固たる対応をとるという日本の姿勢は明確だ」と述べた。介入の効果については「一時的に一定の効果がある」と語り、介入については、水準ではなく、無秩序で過度な変動に対応するのが基本だとした。

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<日銀追加緩和の可能性> 

白川日銀総裁は25日の講演で世界経済の先行きに対する不確実性から円高が進めば、「輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じて景気に悪影響が及ぶ可能性があり、注意深くみていく必要がある」と強調した。

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日銀は8月4日、5日に金融政策決定会を開催する予定。


この円高ドル安は、円高ではなくドル安、ユーロ安が原因である。
世界の資金がドル離れを起こし、避難先として円を選択したということである。
 
原発問題、迷走を続ける民主党政権、低迷する景気、膨大な財政赤字。日本は国家破綻すると言い切る経済学者も多数存在する。

それなのになぜ円が買われるのであろうか?確かに消去法で行けば円となるが、円に資金をシフト投資家の目は冷静である。円を選択しているのは日本が成熟した債権大国になっているという点を見逃してはならない

GDPが世界3位となっても日本は世界で最大の債権国である。GDPは中国に抜かれたとしても、純貯蓄の規模という意味では、日本が今なお世界最大の国である。

減価していくドルから逃げ出した世界の資金が円に注ぎ込まれ、ドル安の影響が円に集中することになる。円高が進むということは、それだけ円の存在感が為替市場において大きいことを意味している。そう受け止めてしかるべきところだ。

日本が世界で最大の債権大国であり、危機が起きるたびに円がその逃避先になる。これは、実質的に、円はすでに基軸通貨的な性格を帯び始めていたと言えそうである。

日本が軍事力も核も持たない国が覇権を握れるわけではないので、正統な基軸通貨というわけではない。日本も基軸通貨になりたいなどと宣言すらしていない。

また、基軸通貨国としての責任や権限を世界から認められたわけではない。

だが、実態的に世界のマネーが日本に流れ込んできているという厳然足る事実は実質的に基軸通貨的な役割を負い始めたと言って過言ではないだろう。

これが日本経済が圧倒的に強かった1990年であるならば、リアリティを感じるのだが、「がんばろう日本」と言っている国が世界の基軸通貨になれるわけがないだろう
と思うかもしれません。

世界のマネーが円を実質基軸通貨と考え出したのは、「円キャリー・トレード」と、リーマンーショックではなかろうか?

リーマンーショックは、アメリカおよびヨーロッパの金融の中枢を破壊した。

日本はバブル崩壊の学習効果からバブル的な米国不動産価格の上昇に乗らなかった。不動産価格の持続的上昇を前提として、さまざまな金融商品が登場した。サブプライムローンがその典型だった。サブプライムローンやサブプライムローンとプライムローンを組み合わせたCDOCBSなど、日本の銀行や証券会社は手を出してはいたが、ほとんど扱わなかった。

そのおかげで、日本の証券金融業界はリーマンショックの影響は他のG7各国の中では最も軽微であった。

日本のバブル崩壊後90年代終わりからリーマンーショックに至る約10年、日本はゼロ金利、更には量的緩和という政策を取り続けた。

世界一の債権国でゼロ金利では、いくら国内でカネを回しても収益が上がらない。そこで、ジャパンーマネーが世界にあふれ出ていった。

直接海外に工場を作るなどの直接投資も行われたが、その大半が円キャリー・トレードという形で海外に流れ出ていったのである。

円キャリー取引は1996年頃から活発化した。遅々として進まない不良債権問題などで、円が長期的に低金利が続く予想と米国が1995年4月に為替政策をドル高政策へと転換したこと、そして通貨当局の為替介入姿勢からドル安・円高阻止への決定的な動から、魅力的な取引となった。

円キャリー取引は低金利の円を調達して、運用して儲けることができる、株の信用取引みたいなものである。資金の多くは高い金利の債券等で運用し、その差益を儲けることができる。いわば、世界中の投資家が円をドラえもんのポケットとして利用したのである。

主に巨額の資金を個人や法人の投資家から集め、為替や株式、債券など国際金融市場で投機的な売買を行うヘッジファンドが活発に円キャリー取引を行なっていると見られている。

円キャリー取引が多くなれば、円売り・ドル買いが進むため為替相場は円安・ドル高の傾向となり、円キャリーは世界中を低金利化させていった。

日本から溢れ出ていったマネーは、アメリカでもヨーロッパでも、あるいは新興諸国でも、潤沢な投資が行われ経済が活性化したのだが、不動産に過剰な投資資金が投下され、リーマンーショックに至る金融バブルが生まれたのである。

金利が低い状態の中で、それでもカネを回すことで稼がなくてはいけない立場の投資銀行やファンドマネージャーたちが、ハイリスクーハイリターン商品に投資せざるをえない構造となってしまったのである。

リーマンーショックは日本が作り出したと言っても決して過言ではない。そして今や実質的な世界の基軸通貨となってしまった。

これを、アメリカ側の陰謀史観を持つような知能が低い人間からすれば、日本の陰謀であると騒いでもおかしくはないのである。だが、知能が低いがゆえ日本発の日本は沈没し二流国になってしまったという圧倒的な情報量の前では、陰謀と思う人間は少数派に留まっているだけかもしれない。

実を言うと、日本の通産省が米国経済を弱体化させる陰謀を企て、日本がアメリカに復讐しているといった考え方はアメリカの陰謀論者達の間では70年代末から80年代初頭から存在していた。日本陰謀論は、米国当局を動かすようなこととなり、日本封じ込め戦略発動の一要因となった。日米貿易摩擦問題では、米国は過剰に日本に要求を突きつけてきた背景には日本の陰謀という幻想を見たからだといえば納得ができる。

現在日本のネット上にばら撒かれている地震兵器によって東日本震災が引き起こされたなどというトンデモ反米的陰謀論は、我々常識的経済観念を持つ人間が地道に芽を摘まねばならないのである。

陰謀論は、なぜそのような結果になったのかというプロセスを無視して、結果を視て勝手にストーリーを組み、そのストーリーに無理やり意味や役割を与えるものである。うっかり見栄を切って日本が「基軸通貨」とは宣言してしまったら、そういった知恵遅れのアメリカの陰謀史観者に餌を与える結果となるだけなのである。

 閑話休題。円は気がつけば実質的基軸通貨と考えておかしくない状況になっている。

基軸通貨となると責任と負担が発生する。いわゆる「流動性ジレンマ」である。これは1960年代初頭にベルギーのケインジアン経済学者ロバート・トリフィンが発見した矛盾である。

流動性ジレンマを端的に言えば、これは要するに流動性と希少性の綱引き問題である。

流動性があるということは、すなわち量が十分に確保されているということだ。希少性があるというのは、要するに質がきちんと担保されていることを意味している。この両者を両立させることは難しい。だが、それを常に要求されるのが基軸通貨だ。

基軸通貨というのは、決済通貨や外貨準備、そして投資される通貨なのであるから、流動性が確保される量を発行すべきなのである。しかしながら、カミッペラにすぎない紙幣、最近では電子的にしか存在しないが、過剰に流通させると価値が薄れて基軸通貨としての機能を果たせなくなってしまうのである。

流動性が十分であると同時に、希少性を損なわない通貨発行量のレベルをどう見出すか。この至難な問いかけに常に正解を提供できなければいけない。それができないようであれば、基軸通貨国たり得ないのである。

現状では、日本がドルから基軸通貨の地位を勝ち取ったわけではなく、ユーロも人民元も基軸通貨となりえない。

ユーロについては、ギリシャ問題で噴出した構造的矛盾により、将来的に空中分解される可能性がある通貨であるから、基軸通貨としてはもとより、決済通貨としても突出して大きな役割を担うことになるとは考え難い。

人民元は国際的責任を負うことを回避し続け、未だに不当な自国通貨安政策を改めようとはしない。そんな通貨が基軸通貨になりえないことは自明の理である。

実質的基軸通貨的存在感を持つに至っている円も「円の国際化」が新宮澤構想以来進んでいないということだ。

基軸通貨や覇権通貨は政治や政策ましてや陰謀などで意図的にそれを目指してもマーケットという神にも近い怪獣の前では無力に近い。

ユーロの現状を見れば経済的収斂がないまま通貨統合をした結果が現状の混乱である。そういえばトンデモ浜田議員はアメリカはドルを止めアメロ通貨にすると自著の本に書いてあったが、ユーロの構造的欠陥に気がつかないで北米統合通貨など行えば混乱しか生み出さない。北米統合通貨アメロや格段に経済格差が大きい東アジアで通貨統合などありえない話である。
※トンデモ浜田議員は国際経済学者の看板を降ろすべきと私は思う。※

21世紀、世界は基軸通貨がない時代(無基軸通貨化時代)に突入したと考えるのが自然かもしれません。