イメージ 1

たいへん面白い本だった。うやむやにされている被害総額100億円以上の大事件に初めて光があてられた本である。この事件の背景には日本国内の政界事情と米国政権のスキャンダルイラン・コントラ事件~イランイラク戦争・中米・中東情勢やがて湾岸戦争に繋がる深い闇が存在し、レバノン・スイスとも点と線でつながるのだ。

ただ残念な事に、著者が加治将一氏だったのが気に入らなかった。

彼の著書「あやつられた龍馬」は司馬遼太郎ファンからいえばトンデモ本もしくは単なるノベルズにすぎない。加治氏が主張する、坂本龍馬=フリーメーソンなんて噴飯ものだ。第一その操ったとされるトマスグラバーがフリーメーソンではない。

メーソンには入会名簿がある。「生前」は本人の希望で非公開にするのが普通だが、「故人」になった場合は、遺族への断りなく、フリーメーソンであった事実を公表するのは自由であるのだが、グラバーに関しては、フリーメーソン入会の証拠がない。

グラバーは父親と兄と一緒に、2年間上海に滞在しており、上海で入会した可能性は無くはないが、グラバーがフリーメーソンであったという証拠はない。フリーメーソンの入会儀式は「20才以上の男子」に限られており、スコットランドを離れた19才当時に、入会していた可能性は低い。

「舞い降りた天皇」は読んでいないので批評しがたいが所謂天皇家朝鮮半島出身説更に「幕末維新の暗号」明治天皇の南朝子孫の大室寅之祐すり替え説だが・・・   1948年生まれの加治氏は団塊の世代らしく東京裁判史観にどっぷり浸かり皇室に批判的な世代のフィルターを通した小説に思える・・この話は別な機会にしたい。

本書に関しては加治氏の反骨的面がプラスに機能してるかもしれないが、残念な事に状況証拠だけで決定的な証拠があるわけではない。インタビューと状況証拠で推理している為、ノンフィクションとせず大物政治家は実名で役人や個人の登場人物を仮名とした中途半端な小説とするのが限界であったのであろう。

肝心の事件の全体像だが、これがとてつもなくスケールの大きな話だ。

「昭和天皇御在位60年記念」10万円金貨は、金品位は100%、つまり純金、重さは20g。当時の金相場が1g=1,900円程度だったので、材料原価が38,000円、製造コストを入れても40,000円程度だった。原価4万円のものが10万円として通用するとなれば、当然贋金が出回っても不思議ではない。

誰かがこのことを十分承知で天皇在位60年記念金貨を計画したならば・・・・
確かに面白い筋書きである。

加治氏の「陰謀の天皇金貨(ヒロヒトコイン)説は天皇在位60年記念金貨がイラン・コントラ事件の資金源であったという筋書きであるのだが、米国議会でヒロヒトコインは一切触れられてもいないし、イラン・コントラ事件ではイランが武器代金を支払っているという証言を無視して、この陰謀論を組み立てているので私は少々しらけてしまった。だが、イラン・コントラ事件の詳細を知らない者が読めばノンフィクションに近い小説のような気がして面白い。

イラン・コントラ事件とは、アメリカ合衆国のレーガン政権が、イランへの武器売却代金をニカラグアの反共ゲリラ「コントラ」の援助に流用していた事件。1986年に発覚し、冷戦西側はおろか世界を巻き込む政治的大スキャンダルに発展した事件である。

イラン・コントラ事件はイラン・イラク戦争で米国製の兵器を使用するイランにとって米国製武器の部品は喉から手が出るほど欲しかったし、米国製武器も欲しい最中に、アメリカ軍の兵士や民間人が内戦中のレバノンで、イスラム教シーア派系過激派であるヒズボラに拘束され、人質となる事件が発生した。

時のレーガン大統領は前任のカーター大統領がイラン革命時のアメリカ大使館人質事件の対応が弱腰であるがゆえに強いアメリカを取り戻し、冷戦に勝利する為に大統領選挙に勝利したのであったからイランに頭を下げて人質開放をお願いするわけにはいかなかった。

イラン革命時のアメリカ大使館人質事件により、アメリカはイランを敵視して、イランに対する武器輸出を公式に禁じていた。そこで、人質を救出する為、米国政府はヒズボラの後ろ盾であるイランとイスラエルを仲介し接触し、武器を輸出する事を約束した。

イランに武器を売却した収益を、左傾化が進むニカラグアで反政府戦争(コントラ戦争)を行う反共ゲリラ「コントラ」に与えていた。ニカラグアは1979年7月のニカラグア革命により、40年以上続いた親米のソモサ王朝独裁政権が崩壊し、キューバおよびソ連に支援され、社会主義寄りのサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)政権が統治していた。1979年12月24日にはソ連がアフガニスタンに侵攻しており冷戦を戦い抜こうとする米国にとってはニカラグアを看過出来なかったのであった。

それぞれの行為は、当時民主党が多数を占めた議会の議決に反した。議会はイランへの武器販売およびコントラへの資金提供に反対していた。

当時イスラエルはイラクをもっとも敵対視しておりイラクの原子炉を爆撃している。敵の敵は味方で、イスラエルはイランはつるんでいたので、米国はイスラエル経由で武器を輸出した。また、この時、アメリカのイランとコントラの双方の交渉窓口は当時CIA長官だったジョージ・H・W・ブッシュ(後のパパブッシュ大統領)であったとされ、このブッシュの関与が民主党政権下の連邦議会における公聴会で取りあげられたが、その真相はいまもってうやむやである。

加治氏はここにこのヒロヒトコインを無理やり繋げる。加治氏の説によればレバノンの人質を解放する身代金が必要だったとされ、その資金にこの陰謀コインの資金を充当したのだという。・・・・結局イランは武器代金を払わずその資金は、ペルシャ湾の恩恵を受けながら、ペルシャ湾に軍艦を派遣しない日本に支払ってもらう事にしたのだという。ロンヤス関係の日本がペルシャ湾の日本のタンカーの安全航行と引き換えに製造初期に不良品として鋳潰したことにした90万枚のヒロヒトコインを米国に渡して払った。

1991年の湾岸戦争で日本が130億ドル(当時の為替で約1.7兆円)を日本が支払ったことを考えれば、加治氏の推理は十分にありえる話でもある。ただ証拠がない。

しかも身代金のヒロヒトコインはコインのままヒズボラに渡らずレバノン内戦時レバノン国軍の中からシリア排除を要求するミシェル・アウン将軍に渡り、アウン将軍は金を握ってヒズボラに払わず力ずくで人質を解放させたとの説をとっている。

そして、アウン将軍がスイスUBSでヒロヒトコインを換金して日本国内にそのコインが還流してきたのだという。つまり還流してきたコインは偽造でなく本物だったという奇怪なストーリーなのである。

しかしながら、本書の大部分は、なぜ発覚したか、発覚した後の警視庁や大蔵省の対応がおかしいという矛盾点を整理し、疑われたコイン商 笠貴章氏(仮名)を主軸としていかに謀略であるかを検証している。この点は否定しないし面白い謎解きだ、この大事件の真相に迫っていることは間違いないだろう。

また、事件の発覚も消費税の是非を問う衆議院選挙の最中に発覚し、発覚までも政治的決断によるだろうという推理は見事な推理といえる。

金貨を主に輸入していたのはコイン商ピラミデ(仮名)61億円次のコイン&ゴールド(仮名)が41億円であったが通関の際一切疑われず、発覚した業界最大手の太平屋(仮名)が1億円輸入した時に突如発覚した。

発覚のきっかけは富士銀行の素人の女子行員がなんか変と騒ぎ、鑑識能力のない日銀が警視庁に通報、警視庁が即記者会見を行い、メディアが、消費税導入叩きではなくこの事件に飛びついた為、自民党大勝で選挙終了したというのだ。

ちなみに、1990年の選挙を仕切ったのは小沢一郎である。

興味を持ったら本書を読む価値はあるかもしれません。本書は真相の近くまで迫っていると思うのですが、加治氏のこれまでの著作が矛盾を多く含み、その矛盾に対しては無視した本だった為、どんなに本書が真相に近くとも著者が加治将一氏である限り私はどうしても胡散臭くて信用できない。残念である。

金塊223トン輸入して作った金貨の総量だが天皇在位60年が天皇即位記念硬貨を1100万枚鋳造して20g×1100万枚=220トン売れ残り90万枚(18トン)を引くと202トン。223トン-202トン=21トン=105万枚 売れ残りには製造初期の失敗作が含まれているかのか否かが明確になっていない。

加治氏の説によれば売れ残り90万枚と海外販売分15万枚の計105万枚が行方だが日本に還流したのは10万枚・・・残りはどこにあるというのだろう?説明がない。

天皇陛下御即位記念200万枚×30g=60トンに鋳潰した18トンは含まれるかどうか深く追求していない。その点をもう少し明らかにしていれば、本書の信憑性はあがるのだが・・・

フィクションとして読むには面白い本であった。