週刊新潮’12.11.8

石原総理なら譲らない「反米」「反中」「核武装」

齢八十の石原慎太郎氏だが、やはり発信力や突破力において、政界でこの人の右に出る者はいない。そんな人が、かねてより噂されていた新党を立ち上げると宣言したのだ。果して、57年前、小説「太陽の季節」で文壇デビューした頃のような新風を巻き起こせるか。

「80歳の俺が何でこんなことやんなくちやいけないんだ。若い奴しつかりしろよ!」。10月25日、満場の取材陣を前に国政復帰を宣言した石原慎太郎氏。政界からはトウーレイト(遅すぎる)との声もあるが、サプライズを起こしてきたのもこの人である。もしも「石原総理」が実現したら、やっぱり譲れないのは3つの問題だ。

石原氏が”国政乱入”を決めた背景には、尖閣諸島の買収が頓挫したとか、息子・伸晃氏が自民党総裁選で敗れてしがらみが無くなったなど諸説ある。だが、何しろ昨年4月の都知事選で260万票を獲得した実力はご存知の通り。勢いに乗れば、意外な議席数を獲得できると見るのは政治評論家の浅川博忠氏だ。

「『たちあがれ日本』とスムーズに合流し、年内から来年初頭にかけて総選挙が行なわれるとすれば面白いことになります。また、日本維新の会と連携が実現すると。石原新党・は東日本に絞って候補者を立てられる。そうなれば比例と合わせて50~60議席を取る可能性だってあります」
加えて政治家としての実績も見逃せないと言うのは評論家の佐々淳行氏だ。
「石原さんの都知事としての最大の功績は財政再建を成し遂げたことでしょう。
さらに、難しいと言われた環状8号線を完成させたし、東京・歌舞伎町の浄化も断行していますからね」 もちろん、80歳という高齢や、新銀行東京を破綻させ、都政を投げ出したことに対する批判もある。

「第三極」になれるかは未知数だが、もしも「石原総理」が誕生したら何か起きるのか。

米国も毛嫌い 

著書『「NO」と言える日本』でも書いているが、石原氏は自主防衛論者であ
り日米安保については。破棄・すべきとしている。モンデール駐日大使(当時)が
”尖閣諸島が紛争化しても安保の発動はない”と発言した際には、「それなら日米
安保の必要はない」と噛み付いたり、都知事になってからも横田基地の共用化を
公約に掲げ、ことあるごとに米国に要求を突き付けてきた。

外務省関係者が言う。 「石原さんが総理になったら大変なのは日米関係です。
実際、米国からの嫌われようは相当なもので、ワシントンを訪れた際も知日派の
アーミテージ元国務副長官は嫌かって会おうとしなかったし、元大統領特別補佐官のマイケルーグリーン氏も批判していましたから」 もちろん、米国などが要求するTPPへの参加は拒否。米国に都合の良い規制緩和など必要ないというのが持論だからだ。

また、かねてから中国を「シナ」と呼び、度々政府の対中外交を批判してきた石原氏だが、尖閣諸島についても強硬手段に出るのは明白だ。 「もし、総理になったら船溜りや灯台を建設するなんて悠長なことはしない。実効支配を確実なものにするために、基地を建設し100人以上の自衛隊員を常駐させると言い出すでしょう」(政治ジャーナリストの(山村明義氏) そして、石原氏を語るうえで外せないのは「核」である。昨年3月、石原氏は英インディペンデント紙のインタビューでこう話している。 「隣国の中国、北朝鮮、ロシアは核兵器を持っている。同じ状況に置かれた国が他にあるのか」

もっとも石原氏、核武装にまでは言及していないが。 「核兵器が抑止力になるこ
とは軍事上の常識です。自主防衛が持論の石原さんが核保有を言い出してもおかしくありません」(佐々氏) もちろん、これを全部実現したら日本はきっと「別の国」になってしまう。どこまで本気なのか、「石原劇場」第二幕が開くのは間もなくだ。
私は自分の思想を消極的親米保守主義者と表現している。
私も石原閣下同様気持ち的には自主防衛をしたいが、現憲法下現政府(今の外務省がある限り)では非現実的であり、貧しい中国のうちはよかったが、今や強大な軍事力を持つにいたった21世紀の帝国主義者中国に対し、日米同盟は国家存続の為に無くてはならない「魔除けのお札」である。

核武装については日米同盟がある限り当面はしない。ただし、核兵器の輸送手段である弾道ミサイルや原子力弾道ミサイル潜水艦を整備しておくべきと考えています。実際には核兵器半年以内に作れる状態にしておいて持たないのがベストだと思っています。そうすることにより、外交カードを一枚余計に持つことができるからです。

私と石原慎太郎氏も橋下徹氏も渡辺喜美氏もすべてにおいて100%意見が一致しない。それが普通である。ある程度の知識をもった人間同士100%意見が一致することはないだろう。

異なる意見を纏めるのが政治というものである。
自民党も永年リベラルからタカ派まで烏合の衆であったし、民主党に至っては社会党から一時保守政党であった自由党までご都合だけであつまったバカの集まり。
今度の第三極も似たようなもの・・・・

「自民」「民主」が疑心暗鬼の「離党者リスト」

傘寿を迎えた老船頭の船に何人が乗り込むのだろうか。11月にも結成される「石原新党」に参加する議員の名前と数が、早くも永田町を駆け巡っている。
中には総選挙で惨敗が予想される民主党、さらには自民党からも”脱藩者”が出るという観測さえあって両党とも戦々恐々なのだ。

すでに参加を表明している「たちあがれ日本」の5人のほか、石原新党にはさっそく減税日本の小林興起代議士や、民主党離党組の中津川博郷代議士も合流を明らかにしている。その中津川氏が言うのだ。「新党結成は大歓迎です。石原さんは都知事として実績を上げていますし、リーダーシップもある。何というか高揚感と躍動感を感じさせますね。非自民・非民主、そして保守の結集に向けての大きな流れが現実味を帯びてきたのではないでしょうか。新党からお声が掛かれば、私も是非力になりたいと思っているんですよ」

中津川氏は先の消費税増税法案に反対して民主党を離党していることから”脱
藩”ではない、だが、総選挙での惨敗が予想される同党にあって、新党立ち上げ
に浮き足立っている議員は少なくない。

現職の民主党議員が打ち明けるのだ。 「まだ名前や数は言えませんが、私の親しい議員の間ではすでに”石原新党”入りを考えている議員が何人もいます。実際、世論調査を独自にゃってみると都民の石原さんに対する人気はすごい」
例えば石原伸晃氏の元秘書で、防衛副大臣の長島昭久氏も名前が取り沙汰されている一人だ。

自民支持層が逃げるその長島氏に聞くと、「新党合流ですか。今はないですよ。現職閣僚が軽々しく動ける立場ではないですからね」と微妙な否定の仕方。さ
らに、新党の立ち上げにっいても、決して批判的ではないのである。

「80歳で決断されたということは止むにゃまれぬ憂国の情があるんだろうと思います。都政を再選されて1年半で投げ出すのはどうかという批判につぃても驚きません。ついに立ったという感慨のほうが大きいですね。もっと若い者が頑張らないといけない。胸に突き刺さる思いです」

さらにこの。脱藩・の動き、政権を狙う自民党にも波及しているのだとか。
「特に石原人気が強い都市部の自民党議員の間では動揺が広がっています。たちあがれ日本の平沼さん(赳夫・代表)らが自民党時代のツテで何人かに声を掛けているそうですよ」(自民党関係者)

だが、よく考えてみると新党の頼みの綱は石原氏の持っている票しかない。うっかり乗って大丈夫なのか。 「石原さんは総選挙で東京の比例区から出ることになりますが、都知事選で獲得した260万票を比例区にあてはめると単純計算して7議席ほど獲得できることになります。しかし、この大半は自民党支持層と見られており、新党で選挙に臨むとなると、この票がごっそり抜けてしまう。石原さんの人気だけで当選者を増やすのは難しいですよ」(政治部記者)

ジャーナリストの角谷浩一氏も言うのだ。
「石原新党といっても現状は。たちあがれ日本が衣替えしただけに過ぎません。
せいぜい5議席プラスアルファでしょう。石原氏自身は当選するでしょうが、最大でも10議席に満たないと思われます」 投票箱を開けてみるまで分からないのが選挙だが、ところで肝心の息子、石原伸晃氏や前代議士の石原宏高氏はというと。「合流の動きは今のところありません」(政治部記者)身内の見立てが一番当たっているのかも知れない。
問題は解散総選挙の時期だろう、いま選挙を行えば自民惨敗、民主壊滅、小沢党消滅となり第三極が躍進することは見えている。そうなると自民・民主は結託して8月ダブル総選挙となるであろう。だがそうなる前に民主党を切り崩し、野田内閣へ不信任案を突きつければよいのだ!