よど号・ペルー… 邦人人質救出、歴代政権も苦慮 

2013/1/26 19:36 日経新聞
16日に発生したアルジェリア人質事件は日本人10人が犠牲となる痛ましい結末を迎え、危機管理を重視する安倍晋三政権に強い衝撃を与えた。海外での邦人人質事件はこれまでも歴代の政権を揺るがせてきた。政府は過去の教訓に学び、危機に対応する能力の強化に努めてきたが、今なお多くの課題を残していることが浮き彫りになった。(辻隆史)

■「人命は地球より重い」
イメージ 1 「人の生命は地球より重いからなあ」。1977年9月、日本赤軍メンバーが日航機をハイジャックし、身代金や仲間の釈放を求めた「ダッカ事件」では福田赳夫首相(当時)の発言が議論を呼んだ。

人命最優先の政府は犯人側に身代金600万ドル(約16億円)を渡しただけでなく「超法規的措置」として服役囚らを釈放。国内外で「銃口に屈した」「法治国家の敗北」などと非難され、福田一法相らが辞任する事態となった。

海外での邦人人質事件への対処が難しいのは人命の尊重とテロへの妥協しない姿勢をどう両立させるかのジレンマに直面するためだ。加えて相手国の主権の尊重や自衛隊法などによる活動上の制約なども複雑に絡む。

「もし私が総理だったとして他の手段をとれたか」。安倍首相は文芸春秋1月号への寄稿「新しい国へ」でダッカ事件について自問している。「平和を愛する諸国民が日本人に危害を加えることは最初から想定されていないから、人質を救出しようにも自衛隊や警察にはその能力がなかった」と「平和憲法」が想定する世界観を皮肉り、人質を救う手段の拡充を主張した。

今回の事件でも首相は人命の最優先をアルジェリア政府に要請した。テロへの非難よりも救出作戦を事前に通告しなかった同国政府へのいら立ちが目立つ場面もあった。
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96年のペルー日本大使公邸人質事件でも、特殊部隊が公邸に突入する際にフジモリ大統領側から橋本龍太郎首相(当時)に事前連絡はなかった。政府に救出手段がなかったとの反省から、海外で日本人がテロや誘拐に巻き込まれた際に対応する警察部隊「国際テロ緊急展開チーム(TRT)」の設立につながった。

政府はアルジェリア人質事件で同チームを強化した「国際テロリズム緊急展開班」(TRT―2)を現地に派遣した。犠牲者の身元確認や犯行グループの情報収集に当たったが、人質の救出に直接関与することはできなかった。ダッカ事件から30年以上を経ても、いまだに実効性のある救出手段は確立していない。

■米欧とのパイプ強化課題

イメージ 3 情報の収集と分析の能力もかねての課題だ。キルギス邦人人質事件(99年)やイラク邦人人質事件(2004年)でも、政府が日本から遠く離れた地域での情報集めに苦慮する場面が目立った。インテリジェンス大国の米英仏などと非常時に連携するパイプづくりも一段と強める必要がある。

過去の事件を経て、首相官邸では「政府の危機対応能力は徐々に向上しているが、まだ不十分。幸い英米に比べ海外でテロを受けた経験が少なく、仕方ない面もある」(政府筋)との声が聞かれる。

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海外で危険な状態に陥った日本人を自衛隊が迅速に保護できるようにするための法改正の議論も、各事件が発生するたびに盛り上がり、「いつしか立ち消えとなってしまっているのが現状」(同)。改めて過去の事例から教訓を学び直す時期に来ている。
犠牲になった方々に対して心から冥福を祈ります。
おそらく非難の投稿がなされると思いますが、暴論をすこしだけ書きます。
今回事件が長期化しなかったことが少しだけ救いになった。日本が世界的に非難を受けながら身代金を払って解決しようとする事態に陥らず本当によかった。
結果は最悪であり、人命軽視の作戦は非難されるべきだが、テロリストに一切の妥協を許さない「アルジェリア軍」の対応はテロリスト対策としては適切である。
今回アルジェリア軍」がロシアのように人命軽視と言われようと断固たる作戦をとるであろうことをは予測可能ではなかったのだろうか?
ロシアと関係が深い国が、ロシア式のテロリストと戦い方をするであろうことは、今後覚えておくことが必要なのではないかと思う。
テロリスト達も人質がなんの役に立たないということを学習しただろう。その意味ではお亡くなりになった10名の貴重な命は無駄死にはならないかもしれません。
今朝の報道TV番組で内閣副官房長官世耕 弘成参議院議員は、情報は入っているが分析する能力が無いとも嘆いていた。「全然、情報がとれない」などと首相官邸が嘆いているこの国のインテリジェンス能力はお粗末なままで嘆かわしい限りです。
日本の情報収集はかつては米英に頼るしかすべがなかった。だが、独自に偵察衛星を保有しインテリジェンス能力の充実を図ってきた。だが、まだ日本版のNSC(国家安全保障会議 ”National Security Council”)は無く、早急に設置すべきと思う。
小野寺五典防衛相らは、在外公館の自衛官を増やすよう訴えた。日本は世界に約50人の自衛官を駐在させているが、アフリカではエジプトとスーダンの2人だけ。増員し、軍情報をもっと得ようというわけだ。だが現実的には自衛隊だけで全世界をカバーすることは不可能だろう。MI6やCIAなどの情報機関との連携協力も必要だろう。
インテリジェンスの世界では貴重な情報は「等価交換」でやりとりされていると言う。今後日本は中国や北朝鮮動向をもっとも分析しなくてはいけない。日本のインテリジェンス機関は中国や北朝鮮の情報をMI6やCIAに渡し、同じ価値がある情報をMI6やCIAから貰うことにより世界をカバーすればいいであろう。
 米国防総省のインテリジェンスオフィサーが「日本には中国語の文献を読める専門家が多いうえ、米欧人には分かりづらい中国文化への造詣が深い。日本の中国分析から学べることは多い」と期待しているという。今後日本版のインテリジェンス機関を強化するのであれば、日本ならではのアジア情報をたくわえて、米欧の情報機関と持ちつ持たれつの貸し借り関係を構築することが肝要と思う。
もう一つ、今後海外の邦人保護に特殊部隊を投入する実行部隊の整備と法整備が必要だろう。正確には憲法改正が必要だ。
オプスレイを導入する案が浮上しているが、まだどういった用途に適当なのか研究途上である。今後オプスレイを護衛艦ひゅうが級や22DDH級に搭載し邦人救出用に全世界に派遣できるようになるであろう。
もうひとつC-2による紛争地の邦人救出も視野にいれるべきであろう。

「俺は昔、こんな怖い目に遭ったことがある」というのは、商社マン定番の自慢話であることが多いです。「湾岸危機の時にイラクに居たために、サダム・フセインの『ゲスト』にされてしまった」とか、「9/11のときに世界貿易センタービルのすぐ隣に居て、後ろでビルが崩れてくる中を一生懸命走った」とか、「アフリカでクーデターに遭って、ジープに日の丸の旗をつけて逃げた。検問に合うと、『ジャパン、じゃぱーん』(われわれは害意のない日本人ですよ~!)と叫んだ」とか、映画に出てくるような話がゴロゴロしています。ひとつ間違えば悲惨な体験になるところを、なぜかカラッと明るい自慢話になってしまうところが、おじさん世代の商社マン気質なんじゃないかと思います。

さて、リスクマネジメント研修では、ひとつ重要なことを教わりました。

「あなたは飛行機の通路に立っています。目の前のハイジャック犯が銃を構えました。伏せなければなりません。さて、前に倒れるか、後ろに倒れるか」

○こんなもん、とっさの判断ですから、たとえ正解を知っていても、その通り動けるかどうかは分からない。でも、いちおう思考実験をしておくことは、けっして無駄ではないと思います。

○正解は後ろに倒れること。つまり犯人が持つ銃に近い側に頭を向けるのではなく、足を向ける方が少しだけリスクが低い、というのが理由です。ゆえに結論はこういうことになります。

「リスクマネジメントは、高度な常識です」

○最近の危険地帯の事情はよく知りませんけれども、会社は「プラント(工場)やコンパウンド(住居)はしっかりガードしているから安全です。ただし通勤のときは注意してください」と教えていたんじゃないかと思います。厳重に防備しているプラントに、武装したテロリストが殴り込んでくるなんて事態は、「常識はずれ」の事態ですから。昨年9月のベンガジ米大使館襲撃事件から、北アフリカの「常識」が変わっちゃったんじゃないかと思います。常識は常に修正が必要。そうでないと「高度」とは言えませんから。
ご生還を果たした方々はその勲章として末代まで今回の生還劇を語り継ぐことができることでしょう。私たち国民は今後そういったインタビューや手記やに対してリスペクトすることが、生還した人達や無言の帰国をされた方々に対するケアであり、次に続く人材を輩出することになると思います。
NEWSWEEKなどによれば隻眼の首謀者、モフタール・ベルモフタール司令官は昨年10月、国際テロ組織アルカイダ系武装勢力「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」からマリ北部担当司令官の地位をはく奪され、分派組織「血判部隊」を発足したばかり。
人質を殺すのをためらわないAQIMと異なり、ベルモフタール司令官は数百万ドルの身代金をせしめるため、人質を殺さず、交渉するのを得意としている。資金稼ぎのためタバコの密輸も手掛け、「ミスター・マルボロ」の異名を持つほどだ。
今回の事件の動機はカネ目当てなのか、功名心だったのかはわからないが、どちらにしてもあまりにも割りきれない動機である。大義を欠く人間の醜い心が優秀なエンジニア達の人命を奪った。アッラーは神のな名を騙る悪人達を地獄の業火で焼き責めることはまちがいないであろう。

専門家「日本憎しでなく、身代金など狙った」  

 中東事情に詳しい国際開発センターの畑中美樹研究顧問は、(略)日本人に銃が向けられたとしても、今回の場合は、憎まれているからとはいえないと言う。
「犯行グループは、対テロ戦争で武力行使やむなしとする欧米とは違い、日本が人命第一と考えていることに着目したと考えられます。日本政府が『手荒なことをしないでほしい』とアルジェリア政府や欧米に働きかけてくれることを期待したのでしょう。また、身代金の交渉において、日本は比較的容易に応じてくれるとの見方をしていたこともあるはずですね。今回日本人に銃を向けたのは、人質に取ったものの計算や思惑とは違い、交渉が進まないことにいら立っていたのだと思います」
平和主義者でリベラル派の諸君、身代金で解決しようとするからますます日本人がテロリストから身代金目的で狙われるのだよ!