
p25-27
もともと「帝国」というのは、ネーションーステート(国民国家)の枠に収まらないものです。ネーションーステートは平等な国民によって形成される均質な政治空間を作り出します。それに対して帝国とは、均質的な政治空間だけで支配されているのではない国家です。国家の中でいろいろな空間に密度の差があって、熱力学でいうと、耐エントロピー構造を持つものが必ず含まれている。エントロピーは蒸気が部屋中に広がって部屋のどこでも温度を一定にするように、拡散する物質の属性を指しますが、それを抑えるのが耐エントロピーで、他と区別される特殊なものを維持する。http://www.uniqlo.jp/uniqlock/swf/blog_small.swf?user_id=Bo4uxIuSX6BfwXZC
社会でいえば、底辺か上層部を占有するような集団を作り出して、凸凹な状態にする。 逆にいえば、完全にフラットな国は、帝国にはなれない。異質なもの、外部を含んでいるのが帝国です。
新・帝国主義に向けて比較的早い切り替えをしたのがヨーロとハ、EUです。ネーションーステートという政治的な枠組みは維持するけれども、ユーロという通貨統合をおこなって、一体化した経済圏を作り出すことによって帝国を構成した。帝国というのは、異質な人々の間で、われわれは身内なのだと言うことができるシンボルを持っているということです。そのシンボルが可視化されたのがユーロという通貨なのです。だから、ユーロがないと、たぶんヨーロッパはバラバラになります。
日本は帝国となりうるのか
では日本はフラットなのかというと、そうではない。やはり帝国なのです。なぜなら沖縄があるからです。日本はネーションーステート(国民国家)のように見えているのだけれど、沖縄という地域をうまく統合できていない。今上天皇は沖縄への思いが強く、琉歌を詠み、さまざまな勉強もしておられます。おそらくそれは、沖縄がその歴史をふりかえれば外部領域だとわかっておられるからです。
天皇は国王ではなく皇帝です。その証拠に戦前の日本は大日本帝国を名乗っていました。
皇帝は国家という領域を超える範囲をもっていますから、本来ネーションーステートとは馴染みにくいものです。
なるほど、沖縄があるからこそ日本は未だに帝国であるということに気が付かなかった!補足すれば在日が存在することもある意味では日本が未だに帝国である証拠かもしれません。
p31-34
TPPで日本はどうすべきかTPP加入の賛否は保守主義者の中でも親米保守と反米保守主義者の間で意見が分かれる問題です。
新・帝国主義の時代の基本は、戦争相手ではない国どうして、文化が比較的共通するところが集まって棲み分けしていくことです。EUや、ロシアの提唱するユーラシア同盟がそれです。
では、われわれ日本はどこへ行くのか。東アジア共同体で、中国と一緒になって共栄圏をつくるのか、あるいはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)でアメリカと一緒にアジア・太平洋国家として生きるのか、あるいは孤立主義、一国帝国主義でやっていくのか。その問題がつきつけられているわけです。いまや帝国内と外側を分けるという形で各国は生き残りを図ろうとしています。
近年、急浮上したTPPが典型です。TPP問題は誰の身内になるのかが問われていると考えるべきです。TPPは自由貿易原理主義だから反対という論は、事の本質がわかっていません。逆に賛成派は、TPP反対は保護主義だと主張しますが、これも自由貿易主義のドグマにとらわれている。新・帝国主義の時代においては、TPPはむしろ保護主義だからいいのです。
現在、アメリカは金融緩和によってドル安誘導をおこなっています。為替ダンピングをおこなっているのですから、たしかに反対派がいうようにいまのままの枠組みで日本がTPPに参加すれば、対米貿易で不利になる。アメリカに対しては相当、損をしてしまう。しかし、農業にしても医療にしても金融にしても、政治力を発揮して、日本の国益を反映させる交渉をきちんとおこなえば、相当巻き返せると思います。いずれにせよ、これは交渉術の問題です。
それよりも注視しなければいけないのは、TPP加盟国と外側との関係です。単刀直入にいえば、TPPは新・帝国主義の時代において、アメリカと日本が提携して中国との間に壁をつくる「枠組み」として浮上してきたのです。当初、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの環太平洋地域の小国四力国でスタートしたTPPに、アメリカが加わり、日本もまた加盟するといった事態が生じたのは、新・帝国主義下の「生き残りゲーム」の必然と言えます。軍拡をつづけ東アジアの覇権を握ろうとする中国を安全保障面でおさえると同時に、経済的に中国との間に壁をつくる。われわれはTPP内で日本人雇用を生み出していかなければなりません。そうしなければ、中国との賃金格差がなくなるまで日本国内の格差がひろがっていくことになるのは先に述べた通りです。
しかしTPP内部でも、たとえばアメリカから、あるいば中南米から、あるいはオーストラリアから人目が大はに流人してくる心配はないのか。
恐らくそれはないと思います。なぜなら、言語と距離のバリアがあるからです。単純労働をするのにも、コンビニで働くのにも、あるいは宅配業者で働くのにも、日本語を読めないといけない。しかし日本語が複雑な漢字と仮名を両方使っている状況の下では、そう簡単に身に付けることはできない。したがって、TPPの内側から労働力が入ってくるのには限界がある。しかし中国は距離も近いし、文字のバリアが低い分だけ大量流人が可能になってしまいますから、ここには壁をつくる必要があるわけです。
いま、日本は分れ道に差し掛かっているのです。TPP加入か、それとも、あえて中国、韓国と提携して東アジア共同体を構成し、経済的にアメリカとの間、ヨーロッパとの間に壁をつくっていくのか。すなわち、アメリカに軸足をおいて二十一世紀の日本の生き残りを図るのか、あるいは中国に軸足をおいて生き残るのか。
二十年後の世界を考えると、おそらくアメリカと中国が相当に接近することは避けられないでしょう。アメリカと中国が二大国になって、国際関係を動かしていく。その事態に備えて日本の基礎体力を強化するために、いまはアメリカと一緒にTPPを動かしていくべきだと私は考えます。そうでないと中国という「混沌の帝国」に日本はあっという間に呑み込まれてしまいます。
佐藤氏のTPPに対する考え方は私が当blogにて主張していることとほぼ同じである。
TPP反対を唱える人たちは現在の新帝国主義社会と言う現実が見えていないのであろう。新帝国主義の現実では社員の給料が増えず、若者の就活が厳しくなり派遣社員の数が増え格差が拡大するだろう。
これは、新自由主義者がアメリカ陰謀で格差を拡大したのではなく、世界がフラット化した結果なのである。
p42-43
何に怒っているのかわからない巨竜・中国
新・帝国主義時代に入った世界情勢のなかで、日本にとって一番注意しなければいけない国は、言うまでもなく中国です。
いま深刻な問題は、中国が急速に世界帝国として形成されようとしているかに見えるのに、何を目的とした世界帝国なのかわからないことだと思いますo何らかの既成のパターンにはまる法則性があるのならまだしも、中国人自身もよくわからないし、観察者もわからないという状態になっている。たとえばアメリカだったら、自由と民主主義のためにとか、ドルの覇権を維持するためにとか、比較的わかりやすい。しかし中国の目的はわからない。それにもかかわらず彼らはゲームのルールを急速に変更しようとしています。日本との間でも、尖閣問題、TPPをめぐる議論、知的所有権の問題、あるいは北京大使館の移転問題にしても、一事が万事、国際社会のルールを受け入れない。
巨大な竜が突然目覚めて、尻尾を振り回しながら怒って暴れているのに、何に対して怒っているのかわからない。そういう不安定な、急速に台頭しつつある超大国が隣にあるということです。
結局、日本は中国の亜周辺なのです。亜周辺については柄谷行人氏がこう規定しています。「亜周辺は、周辺部の外にあるが、圏外ではない。つまり、亜周辺は、周辺のように中核の文明と直接していないが、疎遠なほどに離れてはいない。また、”海洋的”(maritime)な社会は、亜周辺の条件を満たしやすい。それは、帝国の中核と海上交易によってつながっているが、陸続きでないために直接の侵入を免れ、独自の世界を形成できたからである」「それは文明(文字・技術その他)を受け入れるにもかかわらず、中核に存在する、官僚制のような集権的制度を根本的に拒否したのである」(『世界史の構造』岩波書店、二〇一〇年)。
インドネシアやフィリピンなら「圏外」といえるほど中国から離れていますが、日本は放っておくと中国に引っ張られて、アイデンティティが崩れていく。完全に引っ張られはしないが、完全に離れることもできない。動きながら、均衡を保っていないといけないという関係にありますoしかも相手がはっきりしたゲームのルールで動いているのなら調整もしやすいけれど、相手自身、どこに行くのかわからないのだから難しい。日本と中国の間で演劇をやっているような感じです。いろいろなプレイヤーがいて、誰がシナリオライターで誰が主演で誰が観客なのかよくわからない。
中国では今、『旧体制と大革命』アレクシス・ド・トクビルという19世紀のフランス歴史家が書いた本がベストセラーという。その内容は、フランス大革命の特徴や原因に対する考察である。この本を推薦したのは共産党政治局常務委員の王岐山氏である。
今の中国とフランス革命前のフランスが類似しているというのである。当時のフランス貴族たちが特権にしがみつき、庶民の苦しみにまったく無関心で自分たちの独占的な利益の維持だけに汲々としていた。「社会的不平等」を深刻化させて大革命の発生を招いた。
同じように、今の中国では貧富の格差が拡大して社会的不公平が広がり、階層間の対立が激化している。このような状況下では、「民衆の不平不満が増大して社会が動乱の境地に陥る危険が十分にある」というのである。
共産党幹部は、下からの反乱と革命による「亡国」を恐れているのである。共産党は規律検査委員会を作り腐敗撲滅運動をお顔なっている。しかし「上から」の撲滅運動の推進で共産党幹部の腐敗が根本的に抑止されるようなことはまずないと思う。腐敗の温床はそもそも共産党の敷く一党独裁の政治体制そのものであるから、いわば「旧体制」にメスを入れない限り、腐敗の蔓延は永遠に止まらない。
遅かれ早かれ中国に「大革命」が起きるのは時間の問題であり、日本は中国の混乱に巻き込まれるべきではないのである。

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