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不利な状況の日本株、円安進まずマクロ指標も「ノイジー」に 【ロイター】2014.04.10
[東京 10日 ロイター] -日本株に不利な状況となっている。早期の米利上げ観測が後退し、米株は急伸したが、米金利が上がらないために円安が進まない。
日本経済を測るマクロ指標は消費増税による「ノイズ」が入ることで不透明感が消えず、長期投資家は手掛けにくくなる。中国など新興国経済減速への懸念は「世界の景気敏感株」を相対的に重くさせやすい。政策期待が下値を支えるとしても、しばらくは決算対応の個別株物色が中心になりそうだ。
<日本株、リバウンドできず市場はショック>
10日の日経平均.N225がほぼ横ばいで終わったことは、市場関係者に少なからずショックを与えた。前日までの3日間で764円下げており、米ダウ.DJIが181ドル高と急伸したことで、日本株も反発するとの期待が事前に多かったためだ。予想株価収益率(PER)は13倍台に低下しており、バリュエーション面でも買い戻しが入ってもおかしくない水準だ。
しかし、買い戻しの勢いは弱く、先物に大口の売りが出るとあっさりマイナス圏に沈んでしまった。東証1部売買代金は1兆8321億円と薄商い。「売りがそれほど出ているわけではないが、買いが少ない。海外勢の買いは一服しているほか、新年度に入っても国内機関投資家は様子見だ」(国内投信)という。
日本株の上値を押さえる1つの要因は円安が進まないことだ。前日発表された3月の米公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、早期には利上げに踏み切らない可能性を示唆したことで、米株は急伸したが、一方で米債市場で短中期債の金利が低下。ドル/円は一時102円台を回復したあと、再び101円台後半に沈んでいる。米株高の効果を円高が打ち消す展開だ。
3月日銀短観で示された2014年度の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル99円48銭。足元の実勢レートとの「距離」が縮まれば、今期の企業業績の上積み期待が後退する。「PER13倍台が割安と言えるのは、今期業績が1ケタ増益もしくは横ばいまでだ。もし減益ということになれば、ネガティブインパクトは小さくない」(しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏)という。
<新興国経済、鈍化懸念強まる>
中国など新興国経済の減速懸念も「世界の景気敏感株」と位置づけられる日本株を相対的により圧迫する。日経平均が10日の市場でマイナス圏に沈んだきっかけは3月の中国貿易統計と李克強首相の発言だ。
3月の中国貿易統計は、輸出、輸入ともに予想外のマイナス。輸出は前年同月比6.6%減で2009年以来となる2カ月連続の減少となった。輸入も同11.3%減と下げが大きい。同国の景気減速が懸念される数字だが、李克強首相が「短期的な観点で景気刺激策は講じない」などと述べたことで、政策期待も後退した。
中国以外の新興国も経済に伸びを欠いている。インドは7四半期連続でGDP(国内総生産)の伸び率が5%を下回った。株価は過去最高値圏だが、経済の成長力は2000年代の半分まで鈍化しているのが実態だ。大統領選を迎えるブラジルはインフレに対し利上げで対応する一方で、財政出動により景気を支えているが、選挙が終わっても財政出動を続けるのは難しい。政府債務が急激に増加しているためだ。
中国の貿易統計に関しては「前年に水増しが指摘されていた香港向けを除くと輸出は堅調。輸入もスマートフォンの新製品待ちといった特殊要因が大きい」(SMBC日興証券・投資情報室中国担当の白岩千幸氏)との指摘もある。10日の上海総合指数.SSECはプラスで引けた。しかし、新興国懸念による日本株へのプレッシャーは大きい。コモディティー価格が上昇しなければ、米国の物価も上がりにくく、米国は金融緩和状況を続けやすくなるからだ。米低金利は円安を進みにくくする。
<日本経済、しばらく不透明感ぬぐえず>
足元の日本経済が崩れている証拠はまだない。消費増税による駆け込み需要の反動は大きくないとの強気な見方もある。3月ロイター企業調査では、消費増税の影響はその前後をならせばほぼない、との見方が64%に達した。デフレマインドの復活などに対する警戒は怠れないが、悲観論ばかりではない。
ただ、それを証明するマクロデータが得られるのはしばらく先になる。駆け込み需要とその反動が「ノイズ」となり、日本企業の実力を測るのが当面は難しい。そうした場合、今年1─3月に寒波の影響で経済指標が読みにくくなったときの米市場のように、投資家は積極的にリスクオン・ポジションを傾けにくくなる。
「こうした不透明感があるなかで、投資家の悲観を払しょくするには金融緩和など政策対応が効果的だが、8日の黒田東彦日銀総裁の会見でそれもしぼんでしまった。消費増税の影響は現時点で読みにくいが、緩和効果が薄れてきているだけに、増税の影響が大きくなる可能性もある」とT&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は指摘している。
(伊賀大記 編集:内田慎一)
焦点:物価目標達成へ自信深める日銀、需給改善で物価の「実力」に期待 【ロイター】2014年 04月 8日
日銀の黒田総裁はは4月8日の金融政策決定会合後の会見、2%の物価目標達成を「確信している」と述べたにとどまらず、物価が日銀の想定を上振れれば引き締めに転じる可能性も示唆した。
黒田総裁の態度は従来とほとんど変化はない。もともと4月には追加緩和の期待は無かった。
ただ今回初めて映像でみた投資家にとっては、文字で見ていたよりも、強いトーンを感じたかもしれない。面と向かって話される効果や、消費増税の影響をほとんど気にしないというのは本当だろうか?
追加緩和時期は6月か7月の可能性があると思う。日銀が追加緩和を判断する軸はたった一つで、2%の物価目標が達成できそうかどうかにあり、それは展望リポートと中間評価の時期に限られる。4月の展望リポート時はまだ見極めるには尚早だが、会見後株価が下落し、消費増税の反動減が長引く可能性がつよく、物価上昇を抑制する要因はいくらでもある。
8%に上がったばかりの消費税率は、法律では2015年10月に10%まで引き上げると定めている。「経済状況の好転」を条件としている。政府財務省はどうしても消費税を10%にしたい。どう誰が考えても6-7月に追加緩和は必要だ。どうせするなら、緩和を匂わせない態度をとった方がより効果的であろう。6-7月に追加緩和をやるからこそ逆に黒田総裁の態度は物価上昇に自信を示したのだと思う。
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